説明

半導体装置

【課題】基板上に複数の半導体素子が積層された半導体装置において、基板表面の凹凸に対する埋め込み性を良好なものとしつつ、各半導体素子に対してワイヤーボンディングを良好に行うことができる半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置100は、絶縁基板5上に複数の半導体素子71、171、271、371、471が積層され、絶縁基板5に隣り合う半導体素子71と絶縁基板5とが、接着層31を介して接着され、隣り合う2つの半導体素子71、171同士等は、接着層31とは異なる特性を有する接着層131等を介して接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等に対応して、半導体装置の高密度化、高集積化の要求が強まり、半導体パッケージの大容量高密度化が進んでいる。
【0003】
このような要求に対応するため、例えば、基板上に複数の半導体素子を多段で積層することで、半導体パッケージの小型化、薄型化、大容量化を実現する方法が検討されている。こうしたパッケージでは、基板として、ビスマレイミド−トリアジン基板やポリイミド基板のような有機基板が主に使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されているように、このような半導体パッケージにおいて、半導体素子と有機基板との接着や半導体素子と半導体素子との接着には、従来のペースト状の接着剤では半導体素子からはみ出さないよう適量に塗布することは困難であることから、フィルム状接着剤が主に用いられている。
【0005】
しかしながら、従来では、配線基板と半導体素子を接着する場合、配線基板の表面に金属配線の有無によって形成される凸凹を埋めることができず、配線基板と半導体素子間に間隙(ボイド)として残ってしまい、半導体パッケージの信頼性を悪化させる場合があった。
【0006】
具体的に説明すると、半導体用接着フィルムによる配線基板表面の凹凸への埋め込みは、半導体素子と配線基板とを半導体用接着フィルムを介して積層し、半導体素子と配線基板との間のワイヤーボンディングを行った後、封止材封入時の加熱・加圧を利用して行うため、半導体用接着フィルムは封止材封入時のフロー性が重要となる。
【0007】
近年、半導体素子の多段化が進み、ワイヤーボンディング工程により多くの時間がかかるため、従来に比べ、封止材を封入するまでの半導体用接着フィルムにかかる熱履歴が長くなってきており、封止材を封入する前に半導体用接着フィルムの硬化が進行し、フロー性が低下するため、配線基板表面の凸凹を埋め込むことができないという不良を発生する場合があった。
【0008】
また、複数の半導体素子を多段で積層する場合においては、ワイヤーボンディング工程時に、各半導体素子に対して良好にワイヤーボンディングを行えるように、積層後の半導体素子がその下段の半導体素子に対して安定的に支持されていることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−73982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、基板上に複数の半導体素子が積層された半導体装置において、基板表面の凹凸に対する埋め込み性を良好なものとしつつ、各半導体素子に対してワイヤーボンディングを良好に行うことができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
(1) 基板上に複数の半導体素子が積層された半導体装置であって、
前記複数の半導体素子のうち前記基板に隣り合う半導体素子と前記基板とが、第1接着層を介して接着され、
隣り合う2つの前記半導体素子同士は、前記第1接着層とは異なる特性を有する第2接着層を介して接着されていることを特徴とする半導体装置。
【0012】
(2) 前記第1接着層は、熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含んで構成されている上記(1)に記載の半導体装置。
【0013】
(3) 前記第1接着層に含まれる前記熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂である上記(2)に記載の半導体装置。
【0014】
(4) 前記硬化剤は、フェノール樹脂を含んで構成されている上記(3)に記載の半導体装置。
【0015】
(5) 前記第2接着層は、アクリル系樹脂を含んで構成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の半導体装置。
【0016】
(6) 前記第2接着層に含まれる前記アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル共重合体である上記(5)に記載の半導体装置。
【0017】
(7) 前記第2接着層に含まれる前記アクリル酸エステル共重合体は、カルボキシル基を有するモノマー単位を含む繰り返し単位を有する上記(6)に記載の半導体装置。
【0018】
(8) 前記第2接着層は、前記アクリル系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を含む上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の半導体装置。
【0019】
(9) 前記アクリル系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である上記(8)に記載の半導体装置。
【0020】
(10) 前記第2接着層は、熱硬化性樹脂を実質的に含まないで構成されている上記(5)ないし(9)のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基板と半導体素子を接着する第1接着層と、半導体素子と半導体素子とを接着する第2接着層とを異なる特性を有するものとすることで、基板と半導体素子とを接着する第1接着層の粘度を抑え、基板表面の凹凸に対する第1接着層の埋め込み性を優れたものとすることができる。
【0022】
また、半導体素子と半導体素子とを接着する第2接着層の粘度を高め、半導体装置の製造に際し、隣接する半導体素子同士を第2接着層を介して安定的に接着し、各半導体素子に対するボンディング性を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の実施形態に係る半導体用フィルム(第1接着層用)を製造する方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る半導体用フィルム(第2接着層用)を説明するための図(縦断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の半導体装置について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図、図2ないし図4は、それぞれ、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)、図5は、本発明の実施形態に係る半導体用フィルム(第1接着層用)を製造する方法を説明するための図、図6は、本発明の実施形態に係る半導体用フィルム(第2接着層用)を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1ないし図6中の上側を「上」、下側を「下」という。
【0026】
[半導体装置]
図1に示す半導体装置100は、1つのパッケージ内に複数の半導体素子を搭載したチップスタック型の半導体装置である。
【0027】
このような半導体装置100は、絶縁基板5と、絶縁基板5の上面に接着層(第1接着層)31を介して載置された半導体素子(第1半導体素子)71と、半導体素子71の上面に接着層(第2接着層)131を介して載置された半導体素子(第2半導体素子)171と、半導体素子171の上面に接着層(第2接着層)231を介して載置された半導体素子(第2半導体素子)271と、半導体素子271の上面に接着層(第2接着層)331を介して載置された半導体素子(第2半導体素子)371と、半導体素子371の上面に接着層(第2接着層)431を介して載置された半導体素子(第2半導体素子)471とを有している。
【0028】
また、半導体装置100では、絶縁基板5の下面に設けられた複数の端子(図示せず)上には、それぞれ、ボール状電極86が設けられている。また、絶縁基板5の上面に設けられた複数の端子(図示せず)は、それぞれ対応して、ボンディングワイヤーで構成された複数のワイヤー84(84a〜84e)を介して、複数の半導体素子71、171、271、371、471に電気的に接続されている。
【0029】
そして、絶縁基板5の上面上には、前述したような複数の半導体素子71、171、271、371、471および複数のワイヤー84の周囲を封止するモールド層85が設けられている。
【0030】
特に、かかる半導体装置100においては、後に詳述するが、接着層131、231、331、431と、接着層31とが互いに異なる特性を有している。
【0031】
これにより、絶縁基板5と半導体素子71とを接着する接着層31の粘度を抑え、絶縁基板5表面の凹凸に対する接着層31の埋め込み性を優れたものとすることができる。
【0032】
また、接着層131、231、331、431の粘度をそれぞれ高め、半導体装置100の製造に際し、隣接する半導体素子同士を接着層131、231、331、431を介して安定的に接着し、各半導体素子71、171、271、371、471に対するボンディング性を良好なものとすることができる。
【0033】
このような絶縁基板5と半導体素子71とを接着する接着層31は、後述するような半導体用フィルム10の接着層3が個片化されることにより得られたものである。
【0034】
一方、接着層131、231、331、431は、それぞれ、後述するような半導体用フィルム10Aの接着層3Aが個片化されることにより得られたものである。なお、接着層131、231、331、431は、互いに異なる半導体用フィルムの接着層を個片化されることにより得られたものであってもよいが、以下では、接着層131、231、331、431は、それぞれ、後述するような半導体用フィルム10Aの接着層3Aが個片化されることにより得られたものである場合を例に説明する。
【0035】
以下、半導体用フィルム10、10Aを用いて半導体装置100を製造する方法を説明する。なお、以下では、説明の便宜上、前述した半導体素子271、371、471および接着層231、331、431を省略した半導体装置100Aを製造する場合を例に説明するが、半導体素子271、371、471および接着層231、331、431に関する事項は、半導体素子171および接着層131と同様である。
【0036】
[半導体用フィルム]
(第1接着層用の半導体用フィルム)
まず、前述した半導体装置100の接着層31を形成するための半導体用フィルム10について説明する。
【0037】
図2に示す半導体用フィルム10は、支持フィルム4と、第1粘着層1と、第2粘着層2と、接着層3とを有している。より詳しくは、半導体用フィルム10は、支持フィルム4上に、第2粘着層2と、第1粘着層1と、接着層3とをこの順で積層してなるものである。
【0038】
この半導体用フィルム10は、後に詳述するが、接着層3の上面に半導体ウエハー7を貼着させ、この状態で半導体ウエハー7および接着層3を切断(ダイシング)してそれぞれ個片化し、得られた個片(半導体素子71と接着層31とを積層してなる個片83)を支持フィルム4からピックアップする際に用いるものである。このような半導体用フィルム10は、半導体ウエハー7をダイシングにより個片化する際に半導体ウエハー7を支持する機能を有する。また、半導体用フィルム10は、個片化された半導体ウエハー7(半導体素子71)および接着層3(接着層31)をピックアップする際に、第1粘着層1と接着層3との間が選択的に剥離するものである。このような半導体用フィルム10は、ピックアップした半導体素子71に、絶縁基板5上に接着するための接着剤(接着層31)を提供する機能を有する。
【0039】
また、支持フィルム4の外周部41および第2粘着層2の外周部21は、それぞれ第1粘着層1の外周縁11を越えて外側に存在している。
【0040】
このうち、外周部21には、後述する半導体装置100の製造時におけるダイシング時に、ウエハーリング9が貼り付けられる。これにより、半導体ウエハー7が確実に支持されることとなる。
【0041】
以下、半導体用フィルム10の各部の構成について順次詳述する。
(第1粘着層)
第1粘着層1は、一般的な粘着剤で構成されている。具体的には、第1粘着層1は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を含む第1樹脂組成物で構成されている。
【0042】
アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルと、それらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル等)との共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合してもよい。
【0043】
また、これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルからなる群から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、第1粘着層1が粘着する相手(被着体)との密着性や粘着性の制御が容易になる。
【0044】
また、第1樹脂組成物には、粘着性(接着性)を制御するためにウレタンアクリレート、アクリレートモノマー、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)等のイソシアネート化合物等のモノマーおよびオリゴマーを添加してもよい。
【0045】
さらに、第1樹脂組成物には、第1粘着層1を紫外線等により硬化させる場合、光重合開始剤としてメトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾインイソブチルエーテル系化合物、ベンゾイン安息香酸メチル系化合物、ベンゾイン安息香酸系化合物、ベンゾインメチルエーテル系化合物、ベンジルフィニルサルファイド系化合物、ベンジル系化合物、ジベンジル系化合物、ジアセチル系化合物等を添加してもよい。
【0046】
また、第1樹脂組成物には、接着強度およびシェア強度を高める目的で、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂等の粘着付与材等を添加してもよい。
【0047】
このような第1粘着層1の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、特に3〜50μm程度であるのがより好ましい。厚さが前記下限値未満であると十分な粘着力を確保するのが難しくなる場合があり、前記上限値を超えてもあまり特性に影響が無く、利点も得られない。厚さが前記範囲内であると、特に、ダイシング時に剥離せず、ピックアップ時には引っ張り荷重に伴って比較的容易に剥離可能になることから、ダイシング性、ピックアップ性に優れた第1粘着層1が得られる。
【0048】
(第2粘着層)
第2粘着層2は、前述した第1粘着層1よりも粘着性が高いものである。これにより、接着層3に対する第1粘着層1の密着力よりも、第1粘着層1および支持フィルム4に対する第2粘着層2の密着力が大きくなる。そのため、後述する半導体装置100の製造におけるピックアップ工程において、剥離を生じさせるべき所望の界面(すなわち第1粘着層1と接着層3との界面)で剥離を生じさせることができる。また、第2粘着層2の粘着性を高めることにより、後述する半導体装置100の製造の第2の工程においては、半導体ウエハー7をダイシングして個片化する際に、第2粘着層2とウエハーリング9との間が確実に固定されることとなる。その結果、半導体ウエハー7の位置ずれが確実に防止され、半導体素子71の寸法精度を高めることができる。
【0049】
この第2粘着層2の構成材料には、前述した第1粘着層1と同様のものを用いることができる。具体的には、第2粘着層2は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を含む第2樹脂組成物で構成されている。
【0050】
アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルで構成される樹脂、(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルと、それらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル等)との共重合体等が用いられる。また、これらの共重合体を2種類以上混合してもよい。
【0051】
また、これらの中でも(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルからなる群から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、第2粘着層2が粘着する相手(被着体)との密着性や粘着性の制御が容易になる。
【0052】
また、第2粘着層2を構成する第2樹脂組成物には、粘着性(接着性)を制御するためにウレタンアクリレート、アクリレートモノマー、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)等のイソシアネート化合物等のモノマーおよびオリゴマーを添加してもよい。
【0053】
さらに、第2樹脂組成物には、第1樹脂組成物と同様の光重合開始剤を添加してもよい。
【0054】
また、接着強度およびシェア強度を高める目的で、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂等の粘着付与材等を添加してもよい。
【0055】
このような第2粘着層2の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、特に3〜20μm程度であるのがより好ましい。厚さが前記下限値未満であると十分な粘着力を確保するのが困難となる場合があり、前記上限値を超えても特に優れた効果が得られない。また、第2粘着層2は、第1粘着層1よりも柔軟性が高いため、第2粘着層2の平均厚さが前記範囲内であれば、第2粘着層2の形状追従性が確保され、半導体用フィルム10の半導体ウエハー7に対する密着性をより高めることができる。
【0056】
(接着層)
接着層(第1接着層)3は、後述する接着層(第2接着層)3Aとは異なる特性を有する。具体的には、接着層3Aが半導体素子同士の接着に適した特性を有するのに対し、接着層3は、基板と半導体素子との接着に適した特性を有する。
【0057】
このような接着層3は、室温から10℃/分の昇温速度で昇温したときの50℃以上180℃以下の範囲における最低溶融粘度が1Pa・s以上1000Pa・s以下であり、かつ、揮発分が5.0%以下であるのが好ましい。
これにより、接着層3は、接着時に凹凸を効果的に埋め込むことができる。
【0058】
また、接着層3の50℃以上180℃以下の範囲における最低溶融粘度は、10[Pa・s]以上500[Pa・s]以下であるのがより好ましく、50[Pa・s]以上500[Pa・s]以下であるのがさらに好ましい。また、接着層3の揮発分は、3.0%以下であるのがより好ましい。
【0059】
さらに、接着層3の120℃で1時間加熱処理したあとの175℃での溶融粘度は8000以上30000Pa・s以下であるのがより好ましく、10000Pa・s以上20000Pa・s以下であるのがさらに好ましい。
【0060】
ここで、溶融粘度は、例えば、粘弾性測定装置であるレオメーターを用いて、フィルム状態のサンプルに10℃/分の昇温速度で、周波数1Hzのずり剪断を与えて測定することができる。また、揮発分は、例えば50mm×50mmの正方形に切断した接着層3を200℃/2hで加熱処理した場合に、加熱前後での質量減少分を揮発分として測定することができる。
【0061】
また、接着層3の接着後のダイシェア強度は、1MPa以上であるのが好ましく、2MPa以上であるのがより好ましい。
【0062】
ここで、ダイシェア強度は、接着層3を4×4mmの大きさの厚さ550μmのシリコンチップとソルダーレジスト(太陽インキ製造(株)社製:商品名:AUS308)をコーティングしたビスマレイミド−トリアジン基板の間にはさんで、130℃、5N、1秒間で熱圧着し、熱処理によって硬化させたサンプルを260℃の熱盤上に、20秒間保持した後、シリコンチップ側より0.5mm/分の速度にてせん断応力をかけた時のせん断強度にて測定される。
【0063】
このような接着層3は、(A1)熱可塑性樹脂、(B1)エポキシ樹脂、および(C1)硬化剤を含む第3樹脂組成物で構成されているのが好ましい。これにより、前述したような範囲の最低溶融粘度を容易に実現することができる。
【0064】
より具体的には、前述したような範囲の最低溶融粘度を実現するには、例えば、(A1)熱可塑性樹脂として重量平均分子量が低いポリマーを用いるか、もしくは(B1)エポキシ樹脂または(C1)硬化剤として、流動性の高い、25℃で液状である低分子モノマーを用いるのが好ましい。これらの樹脂は併用しても良い。この場合、25℃で固形のモノマーを併用することにより、前述したような範囲の最低溶融粘度を実現しつつ、接着層3の室温でのタック性が増大するのを抑制し、作業性を向上させることができる。
【0065】
(A1)熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有し、例えば、主鎖骨格が線状の化学構造を有する高分子の樹脂である。
【0066】
具体的には、(A1)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等のポリイミド系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等のポリアミド系樹脂、アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0067】
これらの中でも、(A1)熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が低い。そのため、(A1)熱可塑性樹脂としてアクリル系樹脂を用いると、接着層3の初期密着性を向上させることができる。ここで、初期密着性とは、接着層3(接着層31)で半導体素子71と絶縁基板5とを接着した際の初期段階における密着性であり、接着層3の硬化処理前の密着性を意味する。
【0068】
アクリル系樹脂は、アクリル酸およびその誘導体を主成分原料モノマーとする樹脂である。
【0069】
具体的には、アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド等の重合体および他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0070】
特に、(A1)熱可塑性樹脂に用いるアクリル系樹脂としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基等の官能基を有するアクリル系樹脂(特に、アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。これにより、接着層3の被着体に対する密着性をより向上させることができる。
【0071】
このような官能基を有するアクリル系樹脂の具体例としては、例えば、グリシジルエーテル基を有するグリシジルメタクリレート、水酸基を有するヒドロキシメタクリレート、カルボキシル基を有するアクリル酸、ニトリル基を有するアクリロニトリル等が挙げられ、これらの中でも、特にニトリル基を有するアクリル酸エステル共重合体が好ましい。これにより、接着層3の被着体に対する密着性を特に向上させることができる。
【0072】
また、(A1)熱可塑性樹脂の質量平均分子量は、1万以上が好ましく、特に5万〜80万が好ましい。かかる質量平均分子量がこの範囲内であると、特に第3樹脂組成物の成膜性を向上させることができる。また前述したような範囲の最低溶融粘度を実現する上で5万から15万であることがさらに好ましい。また、かかる質量平均分子量がこの範囲内であると、熱可塑性樹脂中に熱硬化性の官能基を含んでいる場合にも熱処理により樹脂単独で硬化挙動を示すことはほとんどない。
【0073】
また、(A1)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、特に限定されないが、−30℃以上60℃以下が好ましく、特に−20℃以上30℃以下が好ましい。かかるガラス転移温度が−20℃ 以上であると、接着層3の粘着力を抑制できるため、作業性を向上させる効果が高まる。また、かかるガラス転移温度が60℃以下であると、接着層3の低温接着性を向上させることができる。
【0074】
また、(A1)熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されないが、(A1)熱可塑性樹脂の含有量をa[質量部]とし、(B1)エポキシ樹脂の含有量をb[質量部]とし、(C1)硬化剤の含有量をc[質量部]とした場合、
0.05≦a/(a+b+c)≦0.45を満たすのが好ましく、
0.1≦a/(a+b+c)≦0.35を満たすのがより好ましく、
0.15≦a/(a+b+c)≦0.30を満たすのがさらに好ましい。
【0075】
上記の関係式を満たすことにより、第3樹脂組成物の成膜性を向上させ、接着層3の靭性を向上させることができる。また、接着層3の貼り付け時の流動性が向上し、熱圧着した際に絶縁基板5の段差に接着剤を充填させることができる。
【0076】
また、(B1)エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、変性フェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0077】
また、(B1)エポキシ樹脂の含有量は、(A1)熱可塑性樹脂10質量部に対して5質量部以上500質量部以下が好ましく、特に10質量部以上200質量部以下が好ましい。これにより、接着層3の貼り付け時の流動性が向上し、接着層3の靭性を向上させることができる。
【0078】
また、(C1)硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能するものである。
このような(C1)硬化剤の具体例としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレリレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド等を含むポリアミン化合物等のアミン系硬化剤、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂肪族酸無水物、無水トリトメット酸、無水ピロリメット酸ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族酸無水物等の酸無水物系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビス(モノまたはジt−ブチルフェノール)プロパン、メチレンビス(2−プロペニル)フェノール、プロピレンビス(2−プロペニル)フェノール、ビス[(2−プロペニルオキシ)フェニル]メタン、ビス[(2−プロペニルオキシ)フェニル]プロパン、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−−(2−プロペニル)フェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(1−フェニルエチル)フェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−(2−プロペニル)フェノール]、4,4'−(1−メチルテトラデシリデン)ビスフェノール等のフェノール系硬化剤等が挙げられる。
【0079】
この中でもフェノール系硬化剤が好ましい。これらを単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
さらに(C1)硬化剤としては、25℃における粘度が30Pa・s(30,000cps)以下の液状の硬化剤を併用して用いても構わない。これにより、接着層3の初期貼付性や信頼性を向上させることができる。
【0081】
液状フェノール化合物の具体例としては、例えば、ビス(モノまたはジt−ブチルフェノール)プロパン、メチレンビス(2−プロペニル)フェノール、プロピレンビス(2−プロペニル)フェノール、ビス[(2−プロペニルオキシ)フェニル]メタン、ビス[(2−プロペニルオキシ)フェニル]プロパン、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−−(2−プロペニル)フェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(1−フェニルエチル)フェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−(2−プロペニル)フェノール]、4,4'−(1−メチルテトラデシリデン)ビスフェノール等が挙げられる。これらの液状フェノール化合物は、その粘度を核体数nやベンゼン環置換基の種類により制御することができる。
【0082】
また、(C1)硬化剤の添加量は、エポキシ当量と硬化剤の当量比を計算して決めることができる。
【0083】
具体的には、(B1)エポキシ樹脂のエポキシ当量と(C1)硬化剤の官能基の当量(例えばフェノール樹脂であれば水酸基当量)の比が0.5以上1.5以下が好ましく、特に0.7以上1.3以下が好ましい。これにより、接着層3の耐熱性を向上させるとともに、接着層3の保存性を向上させることができる。
【0084】
このような第3樹脂組成物は、前述したものの他、硬化反応を促進させるため、必要に応じて硬化促進剤を含んでもよい。
【0085】
硬化促進剤の具体例としては、例えば、イミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン等アミン系触媒、トリフェニルホスフィン等リン系触媒が挙げられる。
【0086】
また、接着層3を構成する第3樹脂組成物は、無機充填剤を含んでいてもよい。この場合、基板と半導体素子との熱圧着時に接着層3のフロー性を適度に保ちつつ、加熱処理時の熱時弾性率を高め、ボイドの発生を抑えることができる。
【0087】
このような第3樹脂組成物に含まれる無機充填剤としては、例えば、銀、酸化チタン、シリカ、マイカ、酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、シリカが好ましい。無機充填剤としてシリカフィラーを用いることにより、無機充填材の接着層内への分散性がよく、外観のよい接着層が得られ、また、接着層の線膨張係数を低減し、半導体素子を積層した場合の半導体素子の反りを低減させることができ、さらに、接着層の製造時の作業性を向上させることができる。
【0088】
シリカフィラーは、破砕シリカおよび溶融シリカのいずれを用いてもよいが、接着層内での均一分散の観点から、溶融シリカを用いるのが好ましい。
【0089】
また、第3樹脂組成物に含まれる無機充填剤の平均粒径は、接着層中で無機充填材の凝集を抑制し、外観を向上させる観点では、例えば、0.01μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましく、また、熱圧着時に接着層からの無機充填剤の突出により半導体素子を破壊することを確実に抑制する観点では、例えば、20μm以下であるのが好ましく、5μm以下であるのがより好ましい。
【0090】
また、第3樹脂組成物に含まれる無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、第3樹脂層性物中の無機充填剤以外の組成物10質量部に対して、例えば、0.5質量部以上であるのが好ましく、1質量部以上であるのがより好ましい。かかる無機充填剤の含有量を上記範囲とすることで、加熱処理時の接着層の熱時弾性率が高くなり、ボイドの発生を抑えることができる。
【0091】
また、かかる無機充填剤の含有量は、第3樹脂組成物中の無機充填剤以外の組成物10質量部に対して、例えば、30質量部以下であるのが好ましく、25質量部以下であるのがより好ましい。(C2)無機充填剤の含有量を上記範囲とすることで、基板と半導体素子との熱圧着時の接着層のフロー性を適度に保つことができる。
【0092】
また、第3樹脂組成物は、必要に応じてさらにカップリング剤を含むことができる。これにより、接着層3の被着体に対する密着性を向上させることができる。
【0093】
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられるが、中でも、シラン系カップリング剤が好ましい。
【0094】
シラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0095】
第3樹脂組成物中におけるカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、第3樹脂組成物がアクリル酸エステル共重合体を含む場合、アクリル酸エステル共重合体10質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、特に0.01〜1質量部が好ましい。これにより、接着層3の被着体に対する密着性を向上させる効果が高まるとともに、接着層3のアウトガスやボイドの発生を抑制することができる。
【0096】
また、第3樹脂組成物は、必要に応じて、他の成分としてシアネート基を有する有機化合物を含んでも良い。これにより、接着層3の被着体に対する密着性と耐熱性とをより向上させることができる。
【0097】
このようなシアネート基を有する有機化合物としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ビスフェノールFジシアネート、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル、ビスフェノールEジシアネート、シアネートノボラック樹脂等が挙げられる。
【0098】
接着層3を成膜するにあたっては、このような第3樹脂組成物を、例えばメチルエチルケトン、アセトン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド等の溶剤に溶解して、ワニスの状態にした後、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いてキャリアフィルムに塗工し、乾燥することで接着層3を得ることができる。
【0099】
接着層3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜100μm程度であるのが好ましく、特に5〜70μm程度であるのがより好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に厚さ精度の制御を容易にできる。
【0100】
(支持フィルム)
支持フィルム4は、以上のような第1粘着層1、第2粘着層2および接着層3を支持する支持体である。
【0101】
このような支持フィルム4の構成材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢ビ共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ビニルポリイソプレン、ポリカーボネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0102】
支持フィルム4の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、30〜150μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム4は、適度な剛性を有するものとなるため、第1粘着層1、第2粘着層2および接着層3を確実に支持して、半導体用フィルム10の取扱いを容易にするとともに、半導体用フィルム10が適度に湾曲することで、半導体ウエハー7との密着性を高めることができる。
【0103】
(半導体用フィルムの特性)
第1粘着層1、第2粘着層2および接着層3は、それぞれ異なる密着力(粘着力)を有しているが、以下では、それらについて詳述する。
【0104】
前述したように、第1粘着層1および支持フィルム4に対する第2粘着層2の密着力は、接着層3に対する第1粘着層1の密着力よりも大きい。これにより、個片83をピックアップした際に、第1粘着層1と第2粘着層2との界面が不本意にも剥離してしまうのを防止することができる。すなわち、第1粘着層1と接着層3との界面で選択的に剥離を生じさせることができる。
【0105】
すなわち、第1粘着層1および第2粘着層2の2層で構成された粘着層を用いているため、それぞれの密着力を異ならせることで、上記のように、積層体8の確実な固定と個片83の容易なピックアップとを両立させることが可能になる。換言すれば、ダイシング性とピックアップ性の両立を図ることができる。
【0106】
また、第1粘着層1の第2粘着層2に対する密着力は、特に限定されないが、40〜400N/m程度であるのが好ましく、特に120〜240N/m程度であるのがより好ましい。密着力が前記範囲内であると、特にダイシング性やピックアップ性に優れる。
【0107】
なお、上記密着力(粘着力)の単位である「N/m」は、支持フィルム4上の第2粘着層2の表面に第1粘着層1を積層して貼り付けたサンプルを25mm幅の短冊状にし、その後、23℃(室温)において、この積層体において第1粘着層1の部分を剥離角180°でかつ引っ張り速度1000mm/minで引き剥がしたときの荷重(単位N)を1m幅当たりに換算した(1000mm/25mm=40倍した)値である。すなわち、ここでは、第1粘着層1の第2粘着層2に対する密着力は、180°ピール強度として説明する。
【0108】
また、第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、接着層3の半導体ウエハー7に対する密着力よりも小さいことが好ましい。これにより、個片83をピックアップした際に、半導体ウエハー7と接着層3との界面が不本意にも剥離してしまうのを防止することができる。すなわち、第1粘着層1と接着層3との界面で選択的に剥離を生じさせることができる。
【0109】
また、接着層3の半導体ウエハー7に対する密着力は、特に限定されないが、20〜500N/m程度であるのが好ましく、特に50〜400N/m程度であるのがより好ましい。密着力が前記範囲内であると、特にダイシング時に振動や衝撃で半導体素子71が飛んで脱落する、いわゆる「チップ飛び」の発生を十分に防止することができる。
【0110】
なお、上記密着力(粘着力)の単位である「N/m」は、半導体ウエハー7の表面に25mm幅の短冊状の接着層3を貼り付け、その後、23℃(室温)において、この接着層3を剥離角180°でかつ引っ張り速度1000mm/minで引き剥がしたときの荷重(単位N)を1m幅当たりに換算した(1000mm/25mm=40倍した)値である。すなわち、ここでは、接着層3の半導体ウエハー7に対する密着力は、180°ピール強度として説明する。
【0111】
また、第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、第2粘着層2のウエハーリング9に対する密着力よりも小さいことが好ましい。これにより、後述する第3の工程において、個片83をピックアップした際に、第2粘着層2とウエハーリング9との間は剥離することなく、接着層3と第1粘着層1との間が選択的に剥離する。そして、ダイシングの際には、ウエハーリング9により積層体8を確実に支持し続けることができる。
【0112】
なお、第1粘着層1の接着層3に対する密着力や第2粘着層2のウエハーリング9に対する密着力は、それぞれ、前述したアクリル系樹脂等の種類(組成)、モノマー等の種類、含有量、硬度等を変化させることで調整することができる。
【0113】
また、ダイシング前における第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、特に限定されないが、密着界面の平均で0.1〜50N/m程度であるのが好ましく、特に0.5〜15N/m程度であるのがより好ましい。密着力が前記範囲内であると、後述するように積層体8を引き伸ばしたり(エキスパンド)、積層体8をダイシングした際に、半導体素子71が第1粘着層1から脱落する等の不具合が防止されるとともに、優れたピックアップ性が確保される。
【0114】
なお、上記密着力(粘着力)の単位である「N/m」は、第1粘着層1の表面に接着層3を貼り付けたサンプルを25mm幅の短冊状にし、その後、23℃(室温)において、この積層フィルムにおいて接着層部分を剥離角180°でかつ引っ張り速度1000mm/minで引き剥がしたときの荷重(単位N)を1m幅当たりに換算した(1000mm/25mm=40倍した)値である。すなわち、ここでは、第1粘着層1の接着層3に対する密着力は、180°ピール強度として説明する。
【0115】
上記のような特性を有する第1粘着層1の組成としては、例えば、アクリル系樹脂100質量部に対して、アクリレートモノマー1〜50質量部と、イソシアネート化合物0.1〜10質量部とを配合したものが挙げられる。
【0116】
一方、第2粘着層2のウエハーリング9に対する密着力は、特に限定されないが、密着界面の平均で40〜800N/m程度であるのが好ましく、特に160〜480N/m程度であるのがより好ましい。密着力が前記範囲内であると、後述するように積層体8を引き伸ばしたり(エキスパンド)、積層体8をダイシングした際に、第1粘着層1と第2粘着層2との界面の剥離が防止され、結果として半導体素子71の脱落等が確実に防止される。また、ウエハーリング9により積層体8を確実に支持することができる。
【0117】
なお、上記密着力(粘着力)の単位である「N/m」は、ウエハーリング9の上面に第2粘着層2が接するように、25mm幅の短冊状の第2粘着層2を積層した支持フィルム4を23℃(室温)で貼り付け、その後、23℃(室温)において、この第2粘着層2を積層した支持フィルム4を、剥離角180°でかつ引っ張り速度1000mm/minでウエハーリング9から引き剥がしたときの荷重(単位N)を1m幅当たりに換算した(1000mm/25mm=40倍した)値である。すなわち、ここでは、第2粘着層2のウエハーリング9に対する密着力は、180°ピール強度として説明する。
【0118】
上記のような特性を有する第2粘着層2の組成としては、例えば、アクリル系樹脂100質量部に対して、ウレタンアクリレート1〜50質量部と、イソシアネート化合物0.5〜10質量部とを配合したものが挙げられる。
【0119】
また、第1粘着層1の接着層3に対する密着力をAとし、第2粘着層2の第1粘着層1に対する密着力をAとしたとき、A/Aは、特に限定されないが、5〜200程度であるのが好ましく、10〜50程度であるのがより好ましい。これにより、第1粘着層1、第2粘着層2および接着層3は、ダイシング性およびピックアップ性において特に優れたものとなる。
【0120】
(半導体用フィルムの製造方法)
以上説明したような半導体用フィルム10は、例えば以下のような方法で製造される。
【0121】
まず、図5(a)に示す基材4aを用意し、この基材4aの一方の面上に第1粘着層1を成膜する。これにより、基材4aと第1粘着層1との積層体61を得る。第1粘着層1の成膜は、前述した第1樹脂組成物を含む樹脂ワニスを各種塗布法等により塗布し、その後塗布膜を乾燥させる方法や、第1樹脂組成物からなるフィルムをラミネートする方法等により行うことができる。また、紫外線等の放射線を照射することにより、塗布膜を硬化させるようにしてもよい。
【0122】
上記塗布法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0123】
また、積層体61と同様にして、図5(a)に示すように、用意した基材4bの一方の面上に接着層3を成膜し、これにより、基材4bと接着層3との積層体62を得る。
【0124】
さらに、各積層体61、62と同様にして、図5(a)に示すように、用意した支持フィルム4の一方の面上に第2粘着層2を成膜し、これにより、支持フィルム4と第2粘着層2との積層体63を得る。
【0125】
次いで、図5(b)に示すように、第1粘着層1と接着層3とが接するように積層体61と積層体62とを積層し、積層体64を得る。この積層は、例えばロールラミネート法等により行うことができる。
【0126】
次いで、図5(c)に示すように、積層体64から基材4aを剥離する。そして、図5(d)に示すように、前記基材4aを剥離した積層体64に対して、基材4bを残して、前記接着層3および前記第1粘着層1の有効領域の外側部分をリング状に除去する。ここで、有効領域とは、その外周が、半導体ウエハー7の外径よりも大きく、かつ、ウエハーリング9の内径よりも小さい領域を指す。
【0127】
次いで、図5(e)に示すように、第1粘着層1の露出面に第2粘着層2が接するように、基材4aを剥離し有効領域の外側部分をリング状に除去した積層体64と積層体63を積層する。その後、基材4bを剥離することにより、図5(f)に示す半導体用フィルム10が得られる。
【0128】
(第2接着層用の半導体用フィルム)
次に、前述した半導体装置100の接着層131、231、331、431を形成するための半導体用フィルム10Aについて説明する。なお、前述した半導体用フィルム10と同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、図6では、図1と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0129】
図6に示す半導体用フィルム10Aは、支持フィルム4と、第1粘着層1と、第2粘着層2と、接着層3Aとを有している。この半導体用フィルム10Aは、接着層3Aの構成が異なる以外は、前述した半導体用フィルム10と同様である。
【0130】
以下、半導体用フィルム10Aの接着層3Aについて詳述する。
この接着層(第2接着層)3Aは、その175℃で6時間熱処理した後の175℃における粘度が、前述した接着層(第1接着層)3の175℃で6時間熱処理した後の175℃における粘度よりも低い。言い換えると、接着層3の175℃で6時間熱処理した後の175℃における粘度は、接着層3Aの175℃で6時間熱処理した後の175℃における粘度よりも高い。
【0131】
これにより、後述するワイヤーボンディング時において、隣接する半導体素子同士を接着する接着層131、231、331、431の粘度の上昇を抑え、後述する封止材封入時において各半導体素子171、271、371、471表面の凹凸に対する接着層131、231、331、431の埋め込み性を優れたものとすることができる。
【0132】
また、後述するワイヤーボンディング時において、直前に加熱処理を行うことなく接着層131、231、331、431の粘度をそれぞれ高め、隣接する半導体素子同士を接着層131、231、331、431を介して安定的に接着し、各半導体素子171、271、371、471に対するボンディング性を良好なものとすることができる。これにより半導体装置の製造時間を大幅に削減することが可能となる。
【0133】
また、接着層3Aの175℃で6時間熱処理した後の175℃における粘度は、前述した接着層3の175℃で6時間熱処理した後の175℃における粘度よりも低ければ特に限定されないが、3000Pa・s以上であるのが好ましく、5000〜30000Pa・sであるのがより好ましい。これにより、半導体素子に対する接着層131、231、331、431の密着性を良好なものとしつつ、隣り合う半導体素子同士を安定的に接着することができる。
【0134】
また、接着層3Aの測定開始後10分から6時間の領域での剪断ひずみ量は、0.10以上0.30以下であるのが好ましく、0.12以上0.25以下がより好ましく、0.15以上0.20以下がさらに好ましい。これにより、封止材封入時の接着層131、231、331、431のフロー性が良好となり、封入圧力による半導体素子171、271、371、471のずれを抑制することができる。
【0135】
このような接着層3Aは、アクリル系樹脂を含むのが好ましく、アクリル系樹脂としてアクリル酸エステル共重合体を含むのがより好ましい。
【0136】
特に、接着層3Aは、(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、(B2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体と異なる熱可塑性樹脂とを含む第4樹脂組成物で構成されているのが好ましい。これにより、接着層3Aの剪断ひずみ量γを所定の範囲とすることができる。
【0137】
具体的には、(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体の添加量と、(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体よりも熱時弾性率の高く、流動性の高い(B2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体と異なる熱可塑性樹脂の種類および配合量を適宜調製することにより、剪断ひずみ量γを所定の範囲とすることができる。
【0138】
(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他の単量体との共重合体であることが好ましく、(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることが特に好ましい。これにより、接着層3Aの被着体に対する密着性をより向上させることができる。
【0139】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、グリシジルエーテル基を有するグリシジルメタクリレート、水酸基を有するヒドロキシメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、アミド基を有するN,N−ジメチルアクリルアミド、ニトリル基を有するアクリロニトリル等が挙げられる。
【0140】
これらの中でも、特に、カルボキシル基を有するモノマー単位を含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いることが好ましい。これにより、接着層3Aのシリコンとの密着性が向上するため、半導体パッケージの信頼性を向上させることができる。
【0141】
(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、ガラス転移温度が低いため、第4樹脂組成物中に配合することにより、接着層3Aの初期密着性を向上させることができる。
【0142】
ここで、初期密着性とは、接着層3Aで半導体素子同士を接着した際の初期段階における密着性であり、接着層3Aを硬化処理する前の密着性を意味する。
【0143】
(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体の質量平均分子量は、第4樹脂組成物の成膜性を向上させる観点では、例えば、10万以上、より好ましくは20万以上であり、また、接着層3Aを作製する際の樹脂溶液の粘度を適度に保ち、また、封止材封入時の接着層3Aのフロー性を確保する観点では、例えば、200万以下、より好ましくは100万以下である。
【0144】
また、(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度は、特に限定されないが、接着層3Aの粘着が強くなりすぎることを抑制して作業性をさらに向上させる観点では、例えば、0℃以上、好ましくは5℃以上であり、また、接着層3Aの低温での接着性をさらに向上させる観点では、例えば、30℃以下、好ましくは20℃以下である。
【0145】
一方、(B2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体と異なる熱可塑性樹脂は、半導体素子を熱圧着した直後の接着層3Aの熱時弾性率を高め、封止材封入時に接着層3Aを介して固定された半導体素子が封入圧力に耐え得るため、また、封止材封入時の接着層3Aのフロー性を確保する目的で使用される。
【0146】
(B2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体と異なる熱可塑性樹脂の具体例としては、フェノキシ樹脂、ニトリルブタジエンゴム、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられ、1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0147】
これらの中でも、上述の効果に加えて、アクリル酸エステル共重合体との相溶性が良いことから外観のよいフィルムを作製することができ、有機基板との密着性を向上させることができるフェノキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0148】
また、接着層3Aを構成する第4樹脂組成物において、(B2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体と異なる熱可塑性樹脂の配合量は、上記(A2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、3質量部以上20質量部以下が特に好ましい。これにより、接着層3Aの外観と封止材封入時のフロー性を両立することが可能となる。
【0149】
また、接着層3A(第4樹脂組成物)は、熱硬化性樹脂を実質的に含まないのが好ましい。
【0150】
ここで、「熱硬化性樹脂を実質的に含まない」とは、第4樹脂組成物全体に対して熱硬化性樹脂の含有量が3質量%以下のものをいう。なお、3質量%以下であれば、半導体素子との密着性を向上させるため、また、接着層3Aの耐熱性を向上させ、半導体装置の信頼性を確保する目的で、熱硬化性樹脂を第4樹脂組成物に添加してもよい。その際、第4樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量は、2質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下がより好ましい。これにより、ワイヤーボンディング工程の熱履歴による熱硬化性樹脂の硬化反応を少なくし、封止材封入時の接着層3Aのフロー性が低下してしまうのを抑制することができる。
【0151】
第4樹脂組成物に添加する熱硬化性樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル化フェノールノボラック樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等のアクリレート類、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられるが、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0152】
また、例えば、第4樹脂組成物に添加する熱硬化性樹脂としてノボラック型エポキシ樹脂を用いることにより、接着層3Aのガラス転移温度を高めることができ、また、接着層3Aの弾性率を低下させることができる。また、第4樹脂組成物に添加する熱硬化性樹脂としてナフトール型エポキシ樹脂を用いることにより、接着層3Aのガラス転移温度を高めることができ、また、接着層3Aと被着体との密着性を向上させることができる。
【0153】
また、接着層3Aを構成する第4樹脂組成物は、(C2)無機充填剤を含んでいてもよい。この場合、半導体素子同士を熱圧着した直後の接着層の熱時弾性率を高め、封止材封入時に半導体素子が封止材の封入圧力に耐えることができ、かつ、封止材封入時の接着層のフロー性を適度に保つことができる。
【0154】
(C2)無機充填剤としては、例えば、銀、酸化チタン、シリカ、マイカ、酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、シリカが好ましい。(C2)無機充填剤としてシリカフィラーを用いることにより、(C2)無機充填材の接着層内への分散性がよく、外観のよい接着層が得られ、また、接着層の線膨張係数を低減し、半導体素子を積層した場合の半導体素子の反りを低減させることができ、さらに、接着層の製造時の作業性を向上させることができる。
【0155】
シリカフィラーは、破砕シリカおよび溶融シリカのいずれを用いてもよいが、接着層内での均一分散の観点から、溶融シリカを用いるのが好ましい。
【0156】
また、(C2)無機充填剤の平均粒径は、接着層中で無機充填材の凝集を抑制し、外観を向上させる観点では、例えば、0.01μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましく、また、熱圧着時に接着層からの無機充填剤の突出により半導体素子を破壊することを確実に抑制する観点では、例えば、20μm以下であるのが好ましく、5μm以下であるのがより好ましい。
【0157】
また、(C2)無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、第4樹脂層性物中の無機充填剤以外の組成物100質量部に対して、例えば、5質量部以上であるのが好ましく、10質量部以上であるのがより好ましい。(C2)無機充填剤の含有量を上記範囲とすることで、半導体素子同士を熱圧着した直後の接着層の熱時弾性率が高くなり、封止材封入時に半導体素子が封止材の封入圧力に耐えることができる。
【0158】
また、(C2)無機充填剤の含有量は、第4樹脂組成物中の無機充填剤以外の組成物100質量部に対して、例えば、100質量部以下であるのが好ましく、80質量部以下であるのがより好ましい。(C2)無機充填剤の含有量を上記範囲とすることで、封止材封入時の接着層のフロー性を適度に保つことが可能となる。
【0159】
また、接着層3Aを構成する第4樹脂組成物は、(D2)カップリング剤を含んでいてもよい。この場合、接着層中の樹脂と被着体との密着性および接着層中の樹脂と無機充填材との密着性をより一層向上させることができる。
【0160】
(D2)カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられるが、半導体素子のシリコンとの密着性の観点からシラン系カップリング剤が好ましい。
【0161】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0162】
(D2)カップリング剤の配合量は、第4樹脂組成物100質量部に対して、前述したような密着性をさらに高める観点では、例えば、0.01質量部以上であるのが好ましく、0.1質量部以上であるのがより好ましく、また、分解ガス(アウトガス)やボイドの発生を抑制する観点では、例えば、10質量部以下であるのが好ましく、5質量部以下であるのがより好ましい。
【0163】
また、接着層3Aを構成する第4樹脂組成物は、タック性を付与し、仮接着性を高める目的で、低分子モノマーである(E2)フェノール樹脂等を含んでいてもよい。
【0164】
(E2)フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0165】
なお、接着層3Aを構成する第4樹脂組成物は、作業性や物性を調整する目的で、適宜、上記(A2)〜(E2)以外の成分を含んでいてもよい。
【0166】
また、接着層3Aの平均厚さは、特に限定されないが、前述した接着層3よりも薄いのが好ましい。これにより、接着層131、231、331、431は、半導体素子同士を安定的に接着することができる。
【0167】
具体的には、接着層3Aの平均厚さは、1〜80μm程度であるのが好ましく、特に3〜60μm程度であるのがより好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に厚さ精度の制御を容易にできる。
【0168】
以上、接着層131、231、331、431を形成するための半導体用フィルム10Aの構成について説明したが、このような半導体用フィルム10Aは、前述した半導体用フィルム10と同様にして製造することができる。
【0169】
[半導体装置の製造方法]
次に、上述したような半導体用フィルム10、10Aを用いて半導体装置100を製造する方法について説明する。
【0170】
図2ないし図4に示す半導体装置の製造方法は、半導体ウエハー7と半導体用フィルム10とを積層(貼着)し、積層体8を得る第1の工程と、半導体用フィルム10の外周部21をウエハーリング9に貼り付けた状態で、半導体ウエハー7側から積層体8に切り込み81を設ける(ダイシングする)ことにより、半導体ウエハー7および接着層3を個片化し、半導体素子71および接着層31からなる複数の個片83を得る第2の工程と、個片83の少なくとも1つをピックアップする第3の工程と、ピックアップされた個片83を絶縁基板5上に載置し、半導体装置100を得る第4の工程とを有する。以下、各工程について順次詳述する。
【0171】
[1]
[1−1]まず、半導体ウエハー7および半導体用フィルム10を用意する。
【0172】
半導体ウエハー7は、あらかじめ、その表面に複数個分の回路が形成されたものである。かかる半導体ウエハー7としては、シリコンウエハーの他、ガリウムヒ素、窒化ガリウムのような化合物半導体ウエハー等が挙げられる。
【0173】
このような半導体ウエハー7の平均厚さは、特に限定されず、好ましくは0.01〜1mm程度、より好ましくは0.03〜0.5mm程度とされる。前述したような半導体用フィルム10を用いた半導体装置の製造方法によれば、このような厚さの半導体ウエハー7に対しても欠けや割れ等の不具合を生じさせることなく、簡単かつ確実に切断して個片化することができる。
【0174】
[1−2]次に、図2(a)に示すように、上述したような半導体用フィルム10の接着層3と、半導体ウエハー7とを密着させつつ、半導体用フィルム10と半導体ウエハー7とを積層する(第1の工程)。なお、図2に示す半導体用フィルム10では、接着層3の平面視における大きさおよび形状が、半導体ウエハー7よりも大きく設定されている。このため、半導体ウエハー7の下面全体が接着層3の上面全体と密着し、これにより半導体ウエハー7が半導体用フィルム10で支持されることとなる。なお、接着層3の平面視における大きさおよび形状は、半導体ウエハー7と等しくまたはそれよりも大きく、かつ、ウエハーリング9の内径よりも小さい形状に、あらかじめ設定されていていればよい。
【0175】
上記積層の結果、図2(b)に示すように、半導体用フィルム10と半導体ウエハー7とが積層されてなる積層体8が得られる。
【0176】
[2]
[2−1]次に、ウエハーリング9を用意する。続いて、第2粘着層2の外周部21の上面とウエハーリング9の下面とが密着するように、積層体8とウエハーリング9とを積層する。これにより、積層体8の外周部がウエハーリング9により支持される。
【0177】
ウエハーリング9は、一般にステンレス鋼、アルミニウム等の各種金属材料等で構成されるため、剛性が高く、積層体8の変形を確実に防止することができる。
【0178】
半導体用フィルム10が上述したように粘着性の異なる2層の粘着層(第1粘着層1および第2粘着層2)を有していることにより、これらの粘着性の違いを利用して、ダイシング性とピックアップ性の両立を図ることができる。
【0179】
[2−2]次に、ダイサーテーブル302を用意し、ダイサーテーブル302と支持フィルム4とが接触するように、ダイサーテーブル302上に積層体8を載置する。
【0180】
続いて、図2(c)に示すように、ダイシングブレード82を用いて積層体8に複数の切り込み81を形成する(ダイシング)。ダイシングブレード82は、円盤状のダイヤモンドブレード等で構成されており、これを回転させつつ積層体8の半導体ウエハー7側の面に押し当てることで切り込み81が形成される。そして、半導体ウエハー7に形成された回路パターン同士の間隙に沿って、ダイシングブレード82を相対的に移動させることにより、半導体ウエハー7が複数の半導体素子71に個片化される(第2の工程)。また、接着層3も同様に、複数の接着層31に個片化される。このようなダイシングの際には、半導体ウエハー7に振動や衝撃が加わるが、半導体ウエハー7の下面が半導体用フィルム10で支持されているため、上記の振動や衝撃が緩和されることとなる。その結果、半導体ウエハー7における割れや欠け等の不具合の発生を確実に防止することができる。
【0181】
切り込み81の先端(最深部)は、支持フィルム4に達している。これにより、半導体ウエハー7および接着層3の双方を確実に個片化して、半導体素子71および接着層31を得ることができる。なお、切り込み81の深さは、半導体ウエハー7と接着層3とを貫通し得る深さであればよく、例えば、切り込み81の深さを高精度に制御可能である場合には、切り込み81の最深部は、第1粘着層1内または第2粘着層2内に位置していてもよい。
【0182】
[3]
[3−1]次に、複数の切り込み81が形成された積層体8を、図示しないエキスパンド装置により、放射状に引き伸ばす(エキスパンド)。これにより、図2(d)に示すように、積層体8に形成された切り込み81の幅が広がり、それに伴って個片化された半導体素子71同士の間隔も拡大する。その結果、半導体素子71同士が干渉し合うおそれがなくなり、個々の半導体素子71をピックアップし易くなる。なお、エキスパンド装置は、このようなエキスパンド状態を後述する工程においても維持し得るよう構成されている。
【0183】
[3−2]次に、図3に示すダイボンダ250により、個片化された半導体素子71のうちの1つを吸着して上方に引き上げる。その結果、図3(e)に示すように、接着層31と第1粘着層1との界面が選択的に剥離し、半導体素子71と接着層31とが積層されてなる個片83がピックアップされる(第3の工程)。
【0184】
[4]
[4−1]次に、半導体素子71(チップ)を搭載(マウント)するための絶縁基板5を用意する。
【0185】
この絶縁基板5としては、半導体素子71を搭載し、半導体素子71と外部とを電気的に接続するための配線や端子等を備えた絶縁性を有する基板が挙げられる。
【0186】
具体的には、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板、アラミド銅張フィルム基板等の可撓性基板や、ガラス布・エポキシ銅張積層板等のガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等の耐熱・熱可塑性基板といった硬質性基板の他、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等のセラミックス基板などが挙げられる。
なお、絶縁基板5に代えて、リードフレーム等を用いるようにしてもよい。
【0187】
次いで、図3(f)に示すように、ピックアップされた個片83を、ダイボンダ250により絶縁基板5上に載置する。
【0188】
ここで、ダイボンダ250について説明する。
図3に示すダイボンダ250は、ダイシング工程を経て得られた個片83をピックアップした後、後述する絶縁基板5上に移送するものである。
【0189】
このダイボンダ250は、個片83を吸着するコレット(チップ吸着部)260と、絶縁基板5を下方から加熱するヒーター270と、コレット260を支持する装置本体280とを有する。コレット260は、個片83を吸着した状態で、積層体8の載置部から絶縁基板5の載置部まで移動し得るようになっている。
【0190】
本工程では、図3(e)に示すように、コレット260により個片83をピックアップし、この個片83を絶縁基板5上に載置する。そして、ヒーター270で加熱しつつ個片83を絶縁基板5に圧着することにより、個片83を絶縁基板5に接着する(図3(f)参照)。
【0191】
なお、このようなピックアップの際に、接着層31と第1粘着層1との界面が選択的に剥離する理由は、前述したように、第2粘着層2の粘着性が第1粘着層1の粘着性より高いため、支持フィルム4と第2粘着層2との界面の密着力、および、第2粘着層2の第1粘着層1との界面の密着力は、第1粘着層1と接着層3との密着力より大きいからである。すなわち、半導体素子71を上方にピックアップした場合、これらの3箇所のうち、最も密着力の小さい第1粘着層1と接着層3との界面が選択的に剥離することとなる。
【0192】
また、個片83をピックアップする際には、半導体用フィルム10の下方から、ピックアップすべき個片83を選択的に突き上げるようにしてもよい。これにより、積層体8から個片83が突き上げられるため、前述した個片83のピックアップをより容易に行うことができるようになる。なお、個片83の突き上げには、半導体用フィルム10を下方から突き上げる図示しない針状体(ニードル)等が用いられる。すなわち、ダイボンダ250は、この針状体を有していてもよい。
【0193】
[4−2]次に、図4(g)に示すように、絶縁基板5上に載置された個片83を加熱・圧着する。これにより、接着層31を介して半導体素子71と絶縁基板5とが仮接着(ダイボンディング)される(第4の工程)。
【0194】
仮接着における加熱・圧着の条件としては、半導体素子71の破壊を防止するため、低温、低荷重、短時間で熱圧着することが好ましく、例えば、加熱温度は80〜150℃程度であるのが好ましい。また、圧着時間は0.1〜5秒程度であるのが好ましい。
【0195】
半導体素子71と絶縁基板5との接着において、加熱・圧着する工程において、絶縁基板5表面の凹凸を接着層31により実質的に完全に埋め込むことが望ましい。ここで、「実質的に完全に埋め込む」とは絶縁基板5表面の凹凸に対し、接着層31との界面の空隙が接着面積全体の5%以下であることをいう。
【0196】
[4−3]
その後、加熱処理を行うことにより接着層31を硬化させる。これにより後述するワイヤーボンディング工程[4−4]において、接着層31が空隙を発生することなく、安定してワイヤーボンディングできることが可能となる。接着層31の硬化において、硬化後の絶縁基板5表面の凹凸に対し、接着層31との界面の空隙が実質的にないことが望ましい。ここで「空隙が実質的にない」とは、硬化後の絶縁基板5表面の凹凸に対し、接着層31との界面の空隙が接着面積全体の5%以下であることをいう。加熱温度としては80〜180℃程度であるのが好ましい。また加熱時間は5〜240分程度であるのが好ましい。
【0197】
[4−4]その後、図4(h)に示すように、半導体素子71の端子(図示せず)と絶縁基板5上の端子(図示せず)とをワイヤー84により電気的に接続する。このワイヤー84は、ボンディングワイヤーであり、ワイヤーボンディング装置を用いて行われる。
【0198】
また、この工程(ワイヤーボンディング工程)は、150〜175℃の熱板上に載置した状態で行われる。
【0199】
[4−5]そして、図4(i)に示すように、半導体素子71上に接着層131を介して半導体素子171を仮接着する。具体的には、半導体素子171および接着層131からなる個片183を半導体素子71上に載置し、その個片183を加熱・圧着する。これにより、接着層131を介して半導体素子171と半導体素子71とが仮接着(ダイボンディング)される。
【0200】
仮接着における加熱・圧着の条件としては、前述した工程[4−2]と同様にして行われる。ただし、このような接着層131を用いた仮接着においては、半導体素子71と接着層131の間を完全に空隙なく貼りつけることは難しく、また半導体素子71表面の凹凸は絶縁基板5表面の凹凸より小さいため、後述の[4−6]の工程でこの空隙を埋め込むことが可能なため、半導体素子71と接着層131の間に空隙があっても構わない。
【0201】
ここで、半導体素子171および接着層131は、前述した半導体用フィルム10Aおよび半導体ウエハーを用い、前述した半導体素子71および接着層31と同様にして得られたものである。
【0202】
本実施形態では、半導体素子171および接着層131の形状および大きさは、半導体素子71および接着層31と等しく設定されている。そのため、平面視における半導体素子71の中心と半導体素子171の中心とをずらすことにより、半導体素子71の上面から引き出されたワイヤー84を避けるように、半導体素子171を半導体素子71上に載置することができる。
【0203】
[4−6]
次に、図4(j)に示すように、半導体素子171の端子(図示せず)と絶縁基板5上の端子(図示せず)とをワイヤー84により電気的に接続する。
本工程[4−6]は、前述した工程[4−4]と同様にして行われる。
【0204】
ここで、接着層131は、その仮接着した直後の175℃における粘度が、接着層31の接着した直後の175℃における粘度よりも高い。そのため、接着層131の加熱処理を行うことなく隣接する半導体素子71、171を接着層131を介して安定的に接着し、半導体素子171に対するボンディング性を良好なものとすることができる。
【0205】
なお、半導体素子が3段以上積層される半導体装置を製造する場合には、前述した工程[4−5]および[4−6]を交互に繰り返し行えばよい。
【0206】
[4−7]
その後、図4(k)に示すように、絶縁基板5上に載置された個片83、183およびワイヤー84を樹脂材料で被覆し、モールド層85を形成する。これにより、半導体素子71、171およびワイヤー84が封止される。
【0207】
このモールド層85を構成する樹脂材料(封止樹脂)としては、エポキシ系樹脂等の各種モールド樹脂が挙げられる。
【0208】
かかる封止は、例えばトランスファー成形機を用いて、150〜200℃、50〜100kg/mmの高温、高圧で行われる。
【0209】
このような高温、高圧により、モールド層85の形成とともに、接着層131が軟化し、半導体素子71の上面との空隙が接着層131により完全に埋め込まれ、半導体素子71の上面に対する密着性が高められる。
【0210】
ここで、接着層131の175℃で6時間熱処理した後の175℃における粘度は、接着層31の175℃で6時間熱処理した後の175℃における粘度よりも低い。そのため、長い熱履歴を受けても良好なフロー性を有しているので、半導体素子71と半導体素子171とを接着する接着層131の粘度を抑え、半導体素子71の上面との空隙に対する接着層131の埋め込み性を優れたものとすることができる。
【0211】
その後、必要に応じて、モールド層85を熱処理により本硬化させる。このとき、接着層31、131が熱硬化性を有する場合、モールド層85の本硬化とともに、接着層31、131も本硬化される。
【0212】
かかる本硬化の条件は、かかる本硬化が可能な条件であれば特に限定されないが、例えば、温度100〜200℃、時間5〜300分の条件が好ましく、特に温度120〜180℃、時間30〜240分の条件が好ましい。
【0213】
さらに、絶縁基板5の下面に設けられた端子(図示せず)にボール状電極86を接合することにより、半導体素子71をパッケージ内に収納してなる図4(k)に示すような半導体装置100Aが得られる。
【0214】
以上のような方法によれば、第3の工程において、半導体素子71に接着層31が付着した状態、すなわち個片83の状態で、ピックアップされることから、第4の工程において、この接着層31をそのまま絶縁基板5との接着に利用することができる。このため、別途接着剤等を用意する必要がなく、半導体装置100の製造効率をより高めることができる。
【0215】
特に、絶縁基板5と半導体素子71とを接着する接着層31の粘度を抑え、絶縁基板5表面の凹凸に対する接着層31の埋め込み性を優れたものとすることができる。
【0216】
また、接着層131の粘度を高め、隣接する半導体素子71、171を接着層131を介して安定的に接着し、各半導体素子71、171に対するボンディング性を良好なものとすることができる。このようなボンディング性を向上させる効果は、半導体素子の積層数が多くなるほど、顕著となる。
【0217】
以上、本発明の半導体装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0218】
例えば、パッケージの形態は、BGA(Ball Grid Array)、LGA(Land Grid Array)等のCSP(Chip Size Package)、TCP(Tape Carrier Package)のような表面実装型のパッケージ、DIP(Dual Inline Package)、PGA(Pin Grid Array)のような挿入型のパッケージ等であってもよく、特に限定されない。
【0219】
前述した実施形態では、半導体用フィルムが2層の粘着層を有する場合を例に説明したが、粘着層の数は、1層であってもよい。例えば、前述した実施形態における半導体用フィルムにおいて、第1粘着層1を省略してもよい。この場合、例えば、半導体用フィルムを製造するにあたっては、第2粘着層2の上面のうち、接着層3と接する領域(半導体ウエハー7を積層する領域)にあらかじめ紫外線を照射しておく。これにより、この領域の粘着性が失活し、結果として第2粘着層2と接着層3との密着力が低下する。その結果、第3の工程において個片83をピックアップする際に、大きな荷重をかけなくても個片83をピックアップすることが可能になることから、ピックアップ性の向上を図ることができる。
【0220】
一方、第2粘着層2の上面のうち、接着層3と接しない領域には紫外線が照射されないため、この領域では第2粘着層2の本来の粘着力が維持されることとなる。このため、第2粘着層2とウエハーリング9との密着力も維持され、ダイシング性の低下は防止されることとなる。
【実施例】
【0221】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
1.半導体装置の製造
(実施例1)
<1>第1粘着層の形成
アクリル酸2−エチルヘキシル30質量%と酢酸ビニル70質量%とを共重合して得られた質量平均分子量300,000の共重合体100質量部と、分子量が700の5官能アクリレートモノマー45質量部と、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン5質量部と、トリレンジイソシアネート(コロネートT−100、日本ポリウレタン工業(株)製)3質量部と、を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムに対して、乾燥後の厚さが10μmになるように塗布し、その後、80℃で5分間乾燥した。そして、得られた塗布膜に対して紫外線500mJ/cmを照射し、ポリエステルフィルム上に第1粘着層を成膜した。
【0222】
<2>第2粘着層の形成
アクリル酸ブチル70質量%とアクリル酸2−エチルヘキシル30質量%とを共重合して得られた質量平均分子量500,000の共重合体100質量部と、トリレンジイソシアネート(コロネートT−100、日本ポリウレタン工業(株)製)3質量部と、を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムに対して、乾燥後の厚さが10μmになるように塗布し、その後、80℃で5分間乾燥した。そして、ポリエステルフィルム上に第2粘着層を成膜した。その後、支持フィルムとして厚さ100μmのポリエチレンシートをラミネートした。
【0223】
<3>接着層(第1接着層)の形成
(A1)熱可塑性樹脂としてアクリルポリマーX(エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル−アクリル酸−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、Tg:−20℃、質量平均分子量:80,000)10質量部と、(B1)エポキシ樹脂としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N670、エポキシ当量210g/eq、DIC(株)製)26質量部、(C1)硬化剤として固形フェノール樹脂(PR−HF−3、水酸基当量104g/OH基、住友ベークライト(株)製)13質量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物(2PHZ−PW、四国化成工業(株)製)0.4質量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403E、信越化学(株)製)0.06質量部、無機充填剤としてシリカフィラー(SE−2050LE、平均粒径0.5μm、アドマテックス(株)製)93質量部をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して樹脂固形分65%の樹脂ワニスを得た。
【0224】
次に、得られた樹脂ワニスを、バーコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、品番ピューレックスA43、厚さ38μm)に塗布した後、温度140℃で3分間乾燥して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚さ20μmの接着層(第1接着層)を成膜した。
【0225】
なお、この第1接着層の最低溶融粘度は77Pa・sであり、120℃で1時間熱処理した後の175℃での粘度は、19990Pa・s、さらに175℃で6時間熱処理した後の175℃の粘度は178000Pa・sであった。
【0226】
<4>接着層(第2接着層)の形成
(A2)アクリル系樹脂として、アクリル酸エステル共重合体(エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル−アクリル酸−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体のメチルエチルケトン(MEK)溶解品、ナガセケムテックス社製、SG−708−6、Tg:6℃、質量平均分子量:500,000)の固形成分として100質量部;
(B2)アクリル系樹脂と異なる熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂(JER1256、Mw:50000、三菱化学社製)10質量部;
無機充填剤として、球状シリカ(SC1050−LC、平均粒径0.3μm、アドマテックス社製)78質量部;
カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM403E、信越化学工業社製)2質量部をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、樹脂固形分20%の樹脂ワニスを得た。
【0227】
次に、得られた樹脂ワニスを、バーコーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、品番ピューレックスA43、厚さ38μm)に塗布した後、温度150℃で3分間乾燥して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚さ20μmの接着層(第2接着層)を成膜した。
【0228】
なお、この第2接着層の175℃で6時間熱処理した後の175℃での粘度は、22000Pa・sであった。
【0229】
<5>第1の半導体用フィルムの製造
第1粘着層を成膜したフィルムと、第1接着層を成膜したフィルムとを、第1粘着層と第1接着層とが接するようにラミネート(積層)し、第1粘着層側のポリエステルフィルムを剥離して、積層体を得た。
【0230】
次にロール状の金型を用いて、第1粘着層と第1接着層を半導体ウエハーの外径よりも大きく、かつウエハーリングの内径よりも小さく打ち抜き、その後不要部分を除去して、第2積層体を得た。
【0231】
さらに第2粘着層の一方の面側にあるポリエステルフィルムを剥離する。そして前記第2積層体の第1粘着層と第2粘着層とが接するように、これらを積層した。これにより、ポリエチレンシート(支持フィルム)、第2粘着層、第1粘着層、第1接着層およびポリエステルフィルムの5層がこの順で積層してなる第1の半導体用フィルムを得た。
【0232】
<6>第2の半導体用フィルムの製造
第1粘着層を成膜したフィルムと、第2接着層を成膜したフィルムとを、第1粘着層と第2接着層とが接するようにラミネート(積層)し、第1粘着層側のポリエステルフィルムを剥離して、積層体を得た。
【0233】
次にロール状の金型を用いて、第1粘着層と第2接着層を半導体ウエハーの外径よりも大きく、かつウエハーリングの内径よりも小さく打ち抜き、その後不要部分を除去して、第2積層体を得た。
【0234】
さらに第2粘着層の一方の面側にあるポリエステルフィルムを剥離する。そして前記第2積層体の第1粘着層と第2粘着層とが接するように、これらを積層した。これにより、ポリエチレンシート(支持フィルム)、第2粘着層、第1粘着層、第2接着層およびポリエステルフィルムの5層がこの順で積層してなる第2の半導体用フィルムを得た。
【0235】
<7>半導体装置の製造
次に、厚さ50μm、8インチのシリコンウエハーを2枚用意した。
【0236】
そして、第1の半導体用フィルムからポリエステルフィルムを剥離し、その剥離面に2枚のうちの一方のシリコンウエハーを60℃で積層した。これにより、ポリエチレンシート(支持フィルム)、第2粘着層、第1粘着層、第1接着層およびシリコンウエハーの5層がこの順で積層してなる積層体を得た。
【0237】
一方、第2の半導体用フィルムからポリエステルフィルムを剥離し、その剥離面に2枚のうちの他方のシリコンウエハーを60℃で積層した。これにより、ポリエチレンシート(支持フィルム)、第2粘着層、第1粘着層、第2接着層およびシリコンウエハーの5層がこの順で積層してなる積層体を得た。
【0238】
次いで、第1の半導体フィルムとシリコンウエハーとを積層した積層体をシリコンウエハー側から、ダイシングソー(DFD6360、(株)ディスコ製)を用いて以下の条件でダイシング(切断)した。これにより、シリコンウエハーが個片化され、第1半導体素子を得た。
【0239】
<ダイシング条件>
・ダイシングサイズ :10mm×10mm角
・ダイシング速度 :50mm/sec
・スピンドル回転数 :30,000rpm
【0240】
なお、このダイシングにより形成された切り込みは、その先端がポリエチレンシート(支持フィルム)内に達していた。
【0241】
一方、上記と同様にして、第2の半導体フィルムとシリコンウエハーとを積層した積層体をシリコンウエハー側から、ダイシングソー(DFD6360、(株)ディスコ製)を用いてダイシング(切断)して、第2の半導体素子を得た。
【0242】
次いで、第1の半導体素子の1つを半導体用フィルムの裏面からニードルで突き上げ、突き上げた第1の半導体素子の表面をダイボンダのコレットで吸着しつつ上方に引き上げた。これにより、第1の半導体素子および第1接着層からなる第1の個片をピックアップした。
【0243】
次に、ピックアップした第1の個片を、ソルダーレジスト(太陽インキ製造(株)製、商品名:AUS308)をコーティングしたビスマレイミド−トリアジン樹脂基板(回路段差5〜10μm)に、温度130℃、荷重5Nで、1.0秒間圧着して、ダイボンディング(仮接着)した。
【0244】
次に120℃で1時間熱処理を行い、第1接着層の硬化処理を行った。
次いで、第1の半導体素子と樹脂基板とをワイヤーボンディングにより電気的に接続した。このとき、ワイヤーボンディングは、175℃の熱板上にて行った。
【0245】
そして、第2の半導体素子の1つを半導体用フィルムの裏面からニードルで突き上げ、突き上げた第2の半導体素子の表面をダイボンダのコレットで吸着しつつ上方に引き上げた。これにより、第2の半導体素子および第2接着層からなる第2の個片をピックアップした。
【0246】
次に、ピックアップした第2の個片を、樹脂基板上に仮接着された第1の半導体素子に、温度130℃、荷重5Nで、1.0秒間圧着して、ダイボンディング(仮接着)した。
【0247】
その後、第2の半導体素子と樹脂基板とをワイヤーボンディングにより電気的に接続した。このとき、ワイヤーボンディングは、175℃の熱板上にて行った。
【0248】
このような第2の半導体素子の仮接着とワイヤーボンディングを5回繰り返した。これにより、1個の第1の半導体素子と5個の第2半導体素子との合計6個の半導体素子を樹脂基板上に積層した。かかる積層体を30個作製した。
【0249】
このとき、全ての半導体素子の積層およびワイヤーボンディングに要した時間は、約6時間であり、その間、樹脂基板は上記熱板による熱を受けていた。
【0250】
そして、樹脂基板上の6個の半導体素子およびボンディングワイヤーを、低圧トランスファー成形機を用い、成形温度175℃、圧力70kg/cm、硬化時間2分で、封止樹脂(EME−G760L、住友ベークライト(株)製)により封止し、さらに、温度175℃で2時間の熱処理を行って封止樹脂を完全硬化させた。これにより、半導体装置を得た。なお、本実施例では、かかる半導体装置を30個作製した。
【0251】
(実施例2〜8)
表1に示すように第1接着層の構成材料が異なるとともに、表2に示すように第2接着層の構成材料が異なる以外は、前述した実施例1と同様にして半導体装置を製造した。
【0252】
【表1】

【0253】
【表2】

【0254】
なお、表1において、(B1)エポキシ樹脂「RE−810NM」は液状エポキシ樹脂(エポキシ当量223g/eq、日本化薬(株)製)であり、(C1)硬化剤「MEH−8000H」は、液状フェノール化合物(水酸基当量141g/OH基、明和化成(株)製)である。
【0255】
また、表2において、(A2)アクリル系樹脂「SG−70L」は、アクリル酸エステル共重合体(エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル−アクリル酸−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体の酢酸エチルとトルエンの混合溶媒の溶解品、ナガセケムテックス(株)製、Tg:−17℃、質量平均分子量:800,000)である。
【0256】
また、各実施例の第1接着層の熱処理前の最低溶融粘度、120℃で1時間熱処理した後の175℃の粘度、120℃で1時間さらに175℃で6時間熱処理した後の175℃の粘度、および第2接着層の熱処理前の175℃の粘度、175℃で6時間熱処理した後の175℃での粘度を、それぞれ、表3に示す。
【0257】
【表3】

【0258】
(比較例1)
第2接着層を第1接着層と同様に形成し、第2接着層の構成が異なる以外は、前述した実施例1と同様にして半導体装置を製造した。
【0259】
(比較例2)
第1接着層を第2接着層と同様に形成し、第1接着層の構成が異なる以外は、前述した実施例1と同様にして半導体装置を製造した。
【0260】
2.評価
2.1 溶融粘度
各実施例および比較例で得られた接着層に対し、それぞれ、25mm×25mmに切断して80μmの厚みになるように数枚重ねたものをサンプルとし、粘弾性測定装置((株)HAAKE社製 MARSII)を用い、100℃〜250℃の昇温測定下、直径20mmの平行プレートにて、周波数1Hz、ひずみ量γが0.02±0.01%の範囲で測定した複素溶融粘度(|η|*)の値を評価した。なお第1接着層に関しては熱処理前の最低溶融粘度、120℃1時間熱処理したものの175℃での溶融粘度、及び120℃1時間さらに175℃で6時間熱処理したものの175℃での溶融粘度、第2接着層に関しては熱処理前、及び175℃6時間熱処理したものの175℃での溶融粘度を評価した。
【0261】
2.2 密着強度
各実施例および比較例で得られた半導体用フィルムを、それぞれ、4×4mmの大きさのシリコンチップ(厚さ550μm)と、ソルダーレジスト(太陽インキ製造社製:商品名:AUS308)をコーティングしたビスマレイミド−トリアジン基板との間にはさんで、温度130℃、荷重5Nで、1秒間熱圧着し、120℃1時間さらに175℃で6時間熱処理を行ったサンプルを作成した。そして、各サンプルを260℃の熱板上に載置した状態で、20秒間保持した後、プッシュプルゲージで0.5mm/分の速度にてせん断応力をかけた時のせん断強度(ダイシェア強度)を測定し、樹脂基板および半導体素子に対する接着層の密着強度を評価した。
【0262】
2.3 基板埋め込み性
各実施例および比較例で得られる第4工程後の絶縁基板5表面の凹凸に対して接着層31が接着された半導体装置を、絶縁基板5の裏面から走査型超音波探傷機により、樹脂基板(配線基板)上の段差に接着層が充填されている率に基づき、下記のようにして、樹脂基板の表面の凹凸に対する埋め込み性を評価した。
【0263】
接着直後;
◎:充填率が、95〜100%
○:充填率が、90〜95%
△:充填率が、80〜90%
×:充填率が、80%未満もしくは接着フィルム内が全面ボイド状になったもの
【0264】
熱硬化後;
◎:充填率が、95〜100%
○:充填率が、90〜95%
△:充填率が、80〜90%
×:充填率が、80%未満もしくは接着フィルム内が全面ボイド状になったもの
【0265】
2.4 半導体素子間埋め込み性
各実施例および比較例で得られる樹脂封止後の半導体装置を、基板裏面から平面研磨を行い、絶縁基板5と接着層31を除去したのち、走査型超音波探傷機により、半導体素子間に接着層が充填されている率に基づき、下記のようにして、半導体素子間に対する埋め込み性を評価した。
【0266】
樹脂封止後;
◎:充填率が、95〜100%
○:充填率が、90%以上95%未満
△:充填率が、80%以上90%未満
×:充填率が、80%未満もしくは接着フィルム内が全面ボイド状になったもの
【0267】
2.5 ボンディング性
各実施例および比較例の半導体装置の製造において、全ての半導体素子に対してワイヤーボンディングを完了した後、封止する前に、形成されたボンディングワイヤーの状態を観察し、ワイヤーボンディング性を下記のようにして、評価した。
【0268】
◎:全ての半導体素子に対して高精度にワイヤーが形成されていた。
○:精度は若干劣るものの、全ての半導体素子に対して実用上問題ない状態でワイヤーが形成されていた。
△:実使用上問題が生じる可能性がある状態で形成されたワイヤーが1つ以上あった。
×:実使用上問題が生じる可能性が高い状態で形成されたワイヤーが1つ以上あった。
これらの評価結果を表3に示す。
【0269】
表3からわかるように、各実施例においては、第1接着層がダイシェア強度1MPa以上の強い密着強度を発揮しつつ、樹脂基板表面の凹凸に対する接着層の埋め込み性に優れている。また第2接着層が直前に熱処理を行うことなく、ワイヤーボンディングを行うことができ、さらにワイヤーボンディング時に高温で長時間(175℃6時間)の熱履歴を受けた後においても半導体素子表面の凹凸に対する接着層の埋め込み性に優れている。その結果各実施例においては、ボンディング性が良好であった。
【0270】
一方、各比較例においては、ボンディング性と、樹脂基板表面の凹凸に対する接着層の埋め込み性および密着強度との両立を図ることができなかった。
【符号の説明】
【0271】
1 第1粘着層
2 第2粘着層
3 接着層
3A 接着層
4 支持フィルム
4a 基材
4b 基材
5 絶縁基板
7 半導体ウエハー
8 積層体
9 ウエハーリング
10 半導体用フィルム
10A 半導体用フィルム
11 外周縁
21 外周部
31 接着層
41 外周部
61 積層体
62 積層体
63 積層体
64 積層体
71 半導体素子
81 切り込み
82 ダイシングブレード
83 個片
84(84a〜84e) ワイヤー
85 モールド層
86 ボール状電極
100 半導体装置
100A 半導体装置
131 接着層
171 半導体素子
183 個片
231 接着層
250 ダイボンダ
260 コレット
270 ヒーター
271 半導体素子
280 装置本体
302 ダイサーテーブル
331 接着層
371 半導体素子
431 接着層
471 半導体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の半導体素子が積層された半導体装置であって、
前記複数の半導体素子のうち前記基板に隣り合う半導体素子と前記基板とが、第1接着層を介して接着され、
隣り合う2つの前記半導体素子同士は、前記第1接着層とは異なる特性を有する第2接着層を介して接着されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1接着層は、熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含んで構成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1接着層に含まれる前記熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂である請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記硬化剤は、フェノール樹脂を含んで構成されている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2接着層は、アクリル系樹脂を含んで構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2接着層に含まれる前記アクリル系樹脂は、アクリル酸エステル共重合体である請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2接着層に含まれる前記アクリル酸エステル共重合体は、カルボキシル基を有するモノマー単位を含む繰り返し単位を有する請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2接着層は、前記アクリル系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を含む請求項5ないし7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記アクリル系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2接着層は、熱硬化性樹脂を実質的に含まないで構成されている請求項5ないし9のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−216651(P2012−216651A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80364(P2011−80364)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】