説明

半導体装置

【課題】バイポーラトランジスタにおいてオフ耐圧及び破壊電流量の双方を高くする。
【解決手段】第2のベース領域116は、ディープウェル112の表層に形成されており、平面視において第1のベース領域114とシンカー110との間に位置している。そして第2のベース領域116は、第1のベース領域114に接続しており、第1のベース領域116よりも不純物濃度が高く、かつ第1のベース領域116よりも深さが浅い。埋込層108は、半導体層106に形成され、上面がディープウェル112及びシンカー110に接しており、ディープウェル112よりも不純物濃度が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラトランジスタを含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置には、内部回路を静電気などから保護するために保護素子が設けられている。保護素子は、例えば特許文献1に記載するように、バイポーラトランジスタを用いて構成されることがある。
【0003】
特許文献1に記載の半導体装置において、バイポーラトランジスタのベース領域は2層構造になっている。具体的には、コンタクトに接続する第1のベース領域の周囲には、第2のベース領域が設けられている。第2のベース領域の不純物濃度は、第1のベース領域の封順物領域よりも低い。
【0004】
このバイポーラトランジスタの動作の概略を、図14を用いて説明する。コレクタ引出領域222に印加される電圧がコレクタ−ベース間のアバランシェブレークダウン耐圧に達すると、コレクタとベース214の間でブレークダウンが生じる。この時、コレクタ引出領域222とベース引出領域218の間を流れる電流は、シンカー210、埋込層208、及びディープウェル212を介して流れる(破線(OFF))。
【0005】
さらに電流が増加すると、第1のベース領域214の抵抗成分によりエミッタ領域220直下の電位が電流×抵抗成分分上昇する。この電位上昇によりエミッタ220とベース引出領域218の間のジャンクションがオンし、ベース引出領域218からエミッタ領域220に電流が流れるようになる。これによってバイポーラトランジスタが動作してコレクタ引出領域222からシンカー210、埋込層208、ディープウェル212および第1のベース領域214を介してエミッタ領域220に電流が流れるようになる(破線(ON))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−4763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年は、オフ耐圧及び破壊電流量の双方に高い値が求められる場合がある。本発明者が特許文献1に記載の半導体装置について検討を行った結果、この構造ではオフ耐圧は十分高くできるが、破壊電流量については改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、半導体層と、
前記半導体層に形成された第1導電型のディープウェルと、
前記ディープウェルの表層の一部に形成された第1の第2導電型不純物層と、
前記第1の第2導電型不純物層の表層の一部に形成された第1の第1導電型不純物層と、
前記半導体層のうち前記ディープウェルに接する位置に設けられた第2の第1導電型不純物層と、
前記ディープウェルの表層に形成され、平面視において前記第1の第2導電型不純物層と前記第2の第1導電型不純物層との間に位置し、前記第1の第2導電型不純物層に接続しており、前記第1の第2導電型不純物層よりも不純物濃度が高く、前記第1の第2導電型不純物層よりも深さが浅い第2の第2導電型不純物層と、
前記半導体層に形成され、上面が前記ディープウェル及び前記第2の第1導電型不純物層に接しており、前記ディープウェルよりも不純物濃度の高い第1導電型の埋込領域と、
を備える半導体装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、第1の第2導電型不純物層及び第2の第2導電型不純物層により、二層構造のベース領域が形成される。そして第1の第1導電型不純物層をエミッタとして機能させ、かつ第2の第1導電型不純物層をコレクタとして機能させることができる。ここで第2の第2導電型不純物層は、第1の第2導電型不純物層よりも不純物濃度が高く、かつ深さが浅い。このような構成にすると、バイポーラトランジスタの動作が開始した後にコレクタからエミッタに流れる電流は、第1の第2導電型不純物層の側面ではなく底面を経由してエミッタである第1の第1導電型不純物層に流れやすくなる。これにより、破壊電流量が高くなる。
【0010】
またベース領域となる第2の第2導電型不純物層とコレクタとなる第2の第1導電型不純物層の距離を確保することにより、十分なオフ耐圧を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オフ耐圧及び破壊電流量の双方を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した半導体装置の平面図である。
【図3】図1に示した半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】図1に示した半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】図1に示した半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】図1に示した半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】TLP(Transmission Line Pulse)測定におけるESD保護素子に求められる特性要求を示す図である。
【図8】図14に示した構造でのTLP測定結果例を示す図である。
【図9】図1に示した構造でのTLP測定結果例を示す図である。
【図10】電位分布を表すシミュレーションの結果を示す図である。
【図11】図14の構造と図1の構造のブレークダウン電圧(Vb)測定時のI−V特性を示す図である。
【図12】図14の構造と図1の構造のブレークダウン電圧(Vb)とトリガー電圧(Vt)の関係を示す図である。
【図13】変形例に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図14】特許文献1に記載の半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図1および図2は、本実施の形態における半導体装置の構成を示す図である。図2は半導体装置100の上面図である。図1は、図2のA−A'断面図である。
【0015】
半導体装置100は、半導体層106、第1導電型(n)のディープウェル112、第1の第1導電型不純物層(nのエミッタ領域120)、第2の第1導電型不純物層(コレクタ領域となるnのシンカー110)、第1の第2導電型不純物層(pの第1のベース領域114)、第2の第2導電型不純物層(pの第2のベース領域116)、及び第1導電型(n)の埋込層108を備える。
【0016】
半導体層106は、第2導電型(p)の半導体基板102と、半導体基板102上に形成された第1導電型(n)のエピタキシャル層104とにより構成されている。ディープウェル112は半導体層106の表層の一部に形成されている。第1のベース領域114は、ディープウェル112の表層の一部に形成されている。エミッタ領域120は、第1のベース領域114の表層の一部に形成されている。シンカー110は、半導体層106のうちディープウェル112に接する位置に設けられている。第2のベース領域116は、ディープウェル112の表層に形成されており、平面視において第1のベース領域114とシンカー110との間に位置している。そして第2のベース領域116は、第1のベース領域114に接続しており、第1のベース領域116よりも不純物濃度が高く、かつ第1のベース領域116よりも深さが浅い。埋込層108は、半導体層106に形成され、上面がディープウェル112及びシンカー110に接しており、ディープウェル112よりも不純物濃度が高い。以下、詳細に説明する。
【0017】
シンカー110は平面視でディープウェル112の外周の全体に接しつつ、ディープウェル112を囲んでいる。そしてシンカー110の表層には、第1導電型(n)のコレクタ引出領域122が形成されている。コレクタ引出領域122の表層には、シリサイド123が形成されている。
【0018】
第1のベース領域114の表層には、pのベース引出領域118(第3の第2導電型不純物層)が形成されている。ベース引出領域118の不純物濃度は、第1のベース領域114及び第2のベース領域116のいずれよりも高い。ベース引出領域118はエミッタ領域120に接している。またベース引出領域118及びエミッタ領域120には、シリサイド119がこれら2つの領域に連続して形成されている。
【0019】
本実施形態において、埋込層108は、半導体基板102の表層からエピタキシャル層104の下部に渡って形成されている。そしてシンカー110、ディープウェル112、第1のベース領域114、第2のベース領域116、ベース引出領域118、エミッタ領域120、及びコレクタ引出領域122はエピタキシャル層104に形成されている。
【0020】
またエピタキシャル層106の表層には、素子分離膜124が形成されている。素子分離膜124は例えばLOCOS酸化法により形成されており、コレクタ引出領域122と、エミッタ領域120及びベース引出領域118とを互いに分離している。なおエミッタ領域120とベース引出領域118の間には素子分離膜124が形成されていない。そして第1のベース領域114の周辺部及び第2のベース領域116の全体は、素子分離膜124によって覆われている。
【0021】
第1のベース領域114の不純物濃度は、例えば1e16cm−3以上5e16cm−3以下であり、第2のベース領域116の不純物濃度は、例えば5e16cm−3以上1e17cm−3以下である。第2のベース領域116は、第1のベース領域114よりも空乏化されやすくなっておればよく、第2のベース領域116の濃度、深さ、および幅は、必要なアバランシェブレークダウン耐圧を達成できるように設計される。すなわち、第2のベース領域116は、コレクタ引出領域122にバイポーラトランジスタのアバランシェブレークダウン電圧以下の所定の電圧が印加されたときに、ディープウェル112中の第1導電型の不純物により完全に空乏化されるように構成される。たとえば、第2のベース領域116の横方向の幅Dは、約3〜8μmである。
【0022】
一方、第1のベース領域114の濃度は、コレクタ−エミッタ間がパンチスルーするように設計される。なお、第1のベース領域114の幅Dは、約5〜10μmである。
【0023】
次に、図3〜図6の断面図を用いて、図及び図2に示した半導体装置100の製造方法を説明する。
【0024】
まず図3(a)に示すように、P型の半導体基板102上に所定の領域を開口した第1の保護膜130を形成し、第1の保護膜130をマスクとして、半導体基板102にAsなどのn型の不純物を注入する。これにより、半導体基板102の表層の一部に第1の不純物注入領域108aが形成される。ここで、第1の不純物注入領域108aは、後述する熱処理工程を経ることにより、埋込層108となる。第1の不純物注入領域108aは、例えばディープウェル112およびシンカー110が形成される領域全面(BJT領域)に形成される。Asの注入条件は、たとえば50〜100keV、5×1013〜5×1015(5e13〜5e15)cm−2である。第1の保護膜130は、たとえば酸化シリコン膜である。この後、第1の保護膜130を除去する。
【0025】
つづいて図3(b)に示すように、約1100℃程度の熱を例えば3〜4時間加えながら半導体層をエピタキシャル成長させることにより、半導体基板102上にN型のエピタキシャル層104(たとえば膜厚5〜10μm)を形成する。ここで、エピタキシャル層104中のN型不純物イオンの濃度は、たとえば1×1015〜1×1016(1e15〜1e16)cm−2となるようにすることができる。これにより、半導体層106が形成される。
【0026】
このときかかる熱により、このエピタキシャル層104の成長と同時に、第1の不純物注入領域108a中のAsがエピタキシャル層104に拡散する。これにより、半導体層106に埋込層108が形成される。
【0027】
次いで図4(a)に示すように、エピタキシャル層104上に、開口を有する第2の保護膜132を形成する。第2の保護膜132は、例えばレジスト膜である。次いで、第2の保護膜132をマスクとして半導体層106にn型の不純物、例えばリン(P)を注入する。これによりエピタキシャル層104には、ディープウェル112が形成される。
【0028】
次いで図4(b)に示すように、第2の保護膜132を除去する。次いで、半導体層106の表面に素子分離膜124(LOCOS)を選択的に形成する。
【0029】
次いで図5(a)に示すように、所定パターンのマスク(図示せず)を用いて、N型の不純物を注入してシンカー110を形成する(図4(a))。シンカー110は、例えばPを注入することにより形成することができ、Pの注入条件は、たとえば50〜100keV、5×1013〜5×1015(5e13〜5e15)cm−2である。この後、1000℃を超える(例えば1200℃)熱処理を約1〜2時間程度行い、不純物を拡散させて、シンカー110と埋込層108とを接続させる。
【0030】
次いで図5(b)に示すように、所定パターンの開口部を有する第3の保護膜134を形成する。次いで、第3の保護膜134をマスクとして、半導体層106表面にP型の不純物(例えばボロン)を注入して、第1のベース領域114(深さは例えば約0.3〜0.5μm)を形成する。
【0031】
その後図6に示すように、所定パターンの開口部を有する第4の保護膜136を用いて、エピタキシャル層104表面にP型の不純物、例えばボロンを注入する。これにより、第2のベース領域116(約0.4〜0.8μm)が形成される。このとき、第1のベース領域114にもボロンが打ち込まれるため、第1のベース領域114中の不純物濃度は、図5(b)に示した注入工程および図6に示した注入工程それぞれで注入される不純物の和となる。なお、第4の保護膜136の開口幅と、第3の保護膜134の開口幅とを調整することにより、第2のベース領域116の幅(図2のD)を、所望のブレークダウン耐圧を達成できる幅となるようにすることができる。
【0032】
この後、所定パターンのマスク(図示せず)を用いて、半導体層106表面にN型の不純物を注入する。これにより、図1に示したように、第1のベース領域114およびシンカー110中にそれぞれエミッタ領域120およびコレクタ引出領域122が形成される。さらに、所定パターンのマスクを用いて、半導体層106表面にP型の不純物を注入する。これにより、図1に示したように、第1のベース領域114中にベース引出領域118を形成する。
【0033】
その後、シリサイド形成用の金属膜を例えばスパッタリング法により形成する。次いで半導体層106を熱処理する。これにより、図1に示したように、シリサイド119,123が形成される。このようにして、図1に示した半導体装置100が得られる。
【0034】
次に、本実施形態における半導体装置100の動作について説明する。まず、コレクタ引出領域122を介してシンカー110に電圧を印加すると、第2のベース領域116の下方および側方から空乏化が進行し、比較的低い電圧で第2のベース領域116が完全に空乏化される。
【0035】
ディープウェル112の不純物濃度は、半導体層106表面付近で内部よりも高くなっている。そのため、ベース−コレクタ間のアバランシェブレークダウン耐圧は、半導体層106表面付近でのベース−コレクタによるP−N接合部分で決定される。ここで、第2のベース領域116が第1のベース領域114よりも深さが浅く形成されているため、コレクタに電圧を印加したときに、第2のベース領域116が完全に空乏化されやすくなる。このため、B−C間のアバランシェ耐圧をさらに高くすることができる。
【0036】
コレクタに印加される電圧がコレクタ−ベース間のアバランシェブレークダウン耐圧に達すると、ブレークダウンが生じる。このときに、図1に示すように、コレクタ引出領域122とベース引出領域118の間を流れる電流は、半導体層106表面ではなくシンカー110、埋込層108、ディープウェル112、及び第1のベース領域114を介して流れるようになる(図中の破線(OFF))。このとき電流は、第1のベース領域114の側面を通りやすい。
【0037】
さらに電流が増加すると、第1のベース領域114の抵抗成分により、第1のベース領域114のうちエミッタ領域120の直ぐ下の部分の電位が電流×抵抗成分分上昇する。この電位上昇により、エミッタ−ベース間のP−Nジャンクションがオンし、ベース引出領域118からエミッタ領域120に電流が流れるようになる。これにより、バイポーラトランジスタの動作が開始し、コレクタ引出領域122から、シンカー110、埋込層108、ディープウェル112、および第1のベース領域114を介してエミッタ領域120に電流が流れるようになる(図中の破線(ON))。
【0038】
本実施の形態における半導体装置100によれば、コレクタに電圧を印加したときに、第2のベース領域116が完全空乏化するため、B−C間のアバランシェブレークダウン耐圧を高くすることができ、100Vを超える高いオフ耐圧を得ることができる。また、B−C間のアバランシェブレークダウン耐圧は、第2のベース領域116の横方向の幅(図2のD2)で決定することができるので、レイアウト調整のみでオフ耐圧の調整を行うことができる。さらに、アバランシェブレークダウンが、半導体層106表面ではなく内部でおこるため、バイポーラトランジスタを長時間動作時でも、特性変動が起こりにくいようにすることができる。
【0039】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。まず本発明者は、特許文献1に記載のバイポーラトランジスタ、すなわち図14に記載の構造において破壊電流量(例えばESD耐量)が低い理由を検討した。
【0040】
図7に、TLP(Transmission Line Pulse)測定におけるESD保護素子に求められる特性要求を示す。TLP測定では半導体装置のスナップバック特性を測定することで、どの程度の電圧からどれくらいのサージ電流を流すことができるかを知ることができ、それに基づきおおよそのESD耐量を予測することができる。TLP測定ではブレークダウン電圧(Vb)、トリガー電圧(Vt)、ホールド電圧(Vh)、破壊電流(It2)の値が判定の目安となる。特に破壊電流(It2)値が高いことはESD耐量も高いことを意味する。
【0041】
図8に、図14の構造におけるTLP測定結果を示す。図14の構造では100V程度の耐圧を得ることができるが、破壊電流(図8のA)は2A程度しか得られない。この時のESD耐量はHBMで2〜3kVに相当し、4kV以上を確保できない。
【0042】
図10の右側に、図14に示す構造における電位分布を表すシミュレーションの結果を示す。図14に示す構造では、図8のTLP測定結果に示すように、スナップバック動作に入った後は図14中の破線(ON)状態のように、コレクタ引出領域222からシンカー210、不純物埋込層208、ディープウェル212および第1のベース領域214を介してエミッタ領域220に電流が流れるようになる。この時、第1のベース領域214は第2のベース領域216よりも不純物濃度が高く抵抗が低くなっているため、電流は第1のベース領域214との境界のうち、第2のベース領域216に近い領域に集中して流れる(図10の(b))。このため、スナップバック動作に入った後、この電流集中の発生により半導体装置はすぐに熱破壊を起こしてしまい、その結果、高い破壊電流が得られず、ESD耐量がHBM4kV以上を満たすことができないと考えられる。
【0043】
次に、本実施形態にかかる半導体装置の特性について説明する。
【0044】
図9は、図1に示した本実施形態でのTLP測定結果例を示す。図1の構造ではトリガー電圧は100V程度(図9のB)が得られ、TLP測定での破壊電流が8.0A程度(図9のC)を得ることができる。この時のESD耐量はHBM4kV以上を満たすことができる。
【0045】
以下、本実施形態に係る半導体装置において、トリガー電圧及びESD耐量の双方が高くなる理由について説明する。
【0046】
図10の左側に、図1に示す構造における電位分布を表すシミュレーションの結果を示す。図10(c)に示すように、第1のベース領域114の不純物濃度が第2のベース領域116よりも低いため、エミッタ−コレクタ間でパンチスルーが生じる。しかし、耐圧は第2のベース領域116の不純物濃度と図2に示した幅D2で決まるため、ブレークダウン耐圧は変わらないと考えられる。また、エミッタ−コレクタ間でパンチスルーが生じている状態ではベースが完全に空乏化しているのでベース抵抗が高くなり、バイポーラ動作しやすくなるためブレークダウンに至ると同時にトリガーに至りスナップバックに入りやすい状態を作っていると考えられる。このため、ブレークダウン電圧(Vb)とトリガー電圧(Vt)との差が小さくなると考えられる。
【0047】
そして図10(d)に示すように、スナップバック動作に入った後では、電流は第1のベース領域114の下を回りこむように流れ、図14の構造で見られたような電流集中(図10(b))が発生しにくくなる。具体的には、図1中の破線(ON)状態に示すような経路でコレクタ引出領域122からシンカー110、不純物埋込層108、ディープウェル112および第1のベース領域114を介してエミッタ領域120に電流が流れるようになると考えられる。このため、図9を用いて説明したように、半導体装置は、スナップバック動作に入った後、すぐには熱破壊には至ることなく、その結果、高い破壊電流を得ることができる。
【0048】
図11に、図14の構造と図1の構造のブレークダウン電圧(Vb)測定時のI−V特性を示す。図1の構造(E)では、第1のベース領域114の濃度が低いためエミッタ−コレクタ間のパンチスルーが発生し、図14の構造(D)に比べてブレークダウン電圧に至る前に電流リークが生じている。しかし、最終的なブレークダウン耐圧は図14の構造(D)と同等となる。
【0049】
図12に、図14の構造と図1の構造のブレークダウン電圧(Vb)とトリガー電圧(Vt)の関係を示す。図14構造(F)では両者の電圧差が10V程度あるのに対して、図1の構造(G)では両者の電圧が同程度となる。一方、回路設計において、図7に示すように被保護素子の耐圧に対してブレークダウン電圧(Vb)とトリガー電圧(Vb)の差が小さい方が、被保護素子の耐圧に対してESD保護素子としての耐圧の設定をしやすくなる。このため、図1に示す構造のほうが、図14に示す構造より回路が設計しやすくなる。
【0050】
以上の例では、半導体基板102上にN型のエピタキシャル層104を形成する例を示した。しかし、他の例として、半導体基板102上にP型のエピタキシャル層を形成し、後にN型不純物イオンをイオン注入することにより、ディープウェル112を形成することもできる。
【0051】
また図13に示すように、半導体層106に図1に示したバイポーラトランジスタと、MOSトランジスタ150とが形成することもできる。MOSトランジスタ150は、ソース領域152、ドレイン領域154、第1のチャネル領域156、第2のチャネル領域158、及びゲート電極160を有している。ソース領域152及びドレイン領域154は、半導体層106表面に形成されている。第1のチャネル領域156は、ソース領域152周囲に形成されている。第2のチャネル領域158は、ドレイン領域154の周囲に形成されており、第1のチャネル領域156よりも不純物濃度が低い。ゲート電極160は、ソース領域152とドレイン領域154との間の領域において半導体層106上に形成されている。MOSトランジスタ150は、高い耐圧と低いオン抵抗を達成するためにPN接合の空乏化を利用する、いわゆるRESURF構造を有する。
【0052】
MOSトランジスタ150の下方には、埋込層108と同様の埋込層が形成される。また、第2のチャネル領域158下方のディープウェル領域(Deep NW(n))は、ディープウェル112と同様に形成される。このような構成にすれば、MOSトランジスタ150の第2のチャネル領域158を完全空乏化するのと同じ条件で第2のベース領域116を完全空乏化することができる。そのため、第2のチャネル領域158と第2のベース領域116とを同時に形成することができる。すなわちRESURF構造を有するMOSトランジスタと混載する場合、新たな工程を追加することなく、第2のベース領域116を形成することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 半導体装置
102 半導体基板
104 エピタキシャル層
106 半導体層
108 埋込層
108a 不純物注入領域
110 シンカー
112 ディープウェル
114 第1のベース領域
116 第2のベース領域
118 ベース引出領域
119 シリサイド
120 エミッタ領域
122 コレクタ引出領域
123 シリサイド
124 素子分離膜
130 第1の保護膜
132 第2の保護膜
134 第3の保護膜
136 第4の保護膜
150 トランジスタ
152 ソース領域
154 ドレイン領域
156 第1のチャネル領域
158 第2のチャネル領域
160 ゲート電極
200 半導体装置
202 半導体基板
204 エピタキシャル層
206 半導体層
208 埋込層
210 シンカー
212 ディープウェル
214 第1のベース領域
216 第2のベース領域
218 ベース引出領域
220 エミッタ領域
222 コレクタ引出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層に形成された第1導電型のディープウェルと、
前記ディープウェルの表層の一部に形成された第1の第2導電型不純物層と、
前記第1の第2導電型不純物層の表層の一部に形成された第1の第1導電型不純物層と、
前記半導体層のうち前記ディープウェルに接する位置に設けられた第2の第1導電型不純物層と、
前記ディープウェルの表層に形成され、平面視において前記第1の第2導電型不純物層と前記第2の第1導電型不純物層との間に位置し、前記第1の第2導電型不純物層に接続しており、前記第1の第2導電型不純物層よりも不純物濃度が高く、前記第1の第2導電型不純物層よりも深さが浅い第2の第2導電型不純物層と、
前記半導体層に形成され、上面が前記ディープウェル及び前記第2の第1導電型不純物層に接しており、前記ディープウェルよりも不純物濃度の高い第1導電型の埋込領域と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1の第2導電型不純物層の表層に形成され、前記第1の第1導電型不純物層に接しており、前記第1の第2導電型不純物層より不純物濃度が高い第3の第2導電型不純物層をさらに備える半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1の第1導電型不純物層と前記第3の第2導電型不純物層に連続して形成されるシリサイドをさらに備える半導体装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の半導体装置において、
前記第1の第1導電型不純物層及び前記第3の第2導電型不純物層と、前記第2の第1導電型不純物層とを分離する素子分離膜をさらに備える半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置において、
前記第2の第2導電型不純物層は、前記第2の第1導電型不純物層に、アバランシェブレークダウン電圧以下の所定の電圧が印加されたときに完全に空乏化される半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−33657(P2012−33657A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171132(P2010−171132)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】