説明

半導体製造方法

【課題】複数のウェハをボートに乗せて熱処理を行う際に生じるウェハの反りによるウェハ間の接触傷等を防止する。
【解決手段】半導体製造方法は、複数枚のウェハ60が乗せられたボート50を熱処理炉40内へ導入して、それらのウェハ60を加熱する加熱工程と、熱処理炉40からボート60を導出し、センサ43,44により、複数枚のウェハ60の反り方向を検出する反り方向検出工程と、反り方向が同一のウェハ60を分別し、反り方向が同一のウェハ60を別々のボートへ再収容する分別処理工程と、反り方向が同一のウェハ60が収容されたボートを熱処理炉40へ導入して、所定温度で熱処理を行う熱処理工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の基板(例えば、ウェハ)をボートに収容して熱処理を行う際に生じる基板の反りによる基板間の接触傷等を防止した半導体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、下記の特許文献2、3等に記載された従来の半導体製造方法に用いられる熱処理炉を示す概略の縦断面図である。
【0003】
この熱処理炉10は、縦型の酸化・拡散炉であり、この外側面に加熱ヒータ11が設けられている。熱処理炉10における下部のボート出入口10aの下方向には、昇降可能なボートエレベータ12が配設されている。ボートエレベータ12上には、ボート20が載置される。ボート20は、多数のウェハ30をほぼ平行に隣接して所定間隔(ピッチ)で収容して(乗せて)、一括処理(バッチ処理)を行うものである。ウェハ30には、シリコン(Si)ウェハ、サファイアウェハ等の種々のものがある。
【0004】
例えば、酸化雰囲気でウェハ表面に酸化膜を形成したり、ウェハ表面に導入された不純物を熱により活性化させたり、あるいは、不純物を所定の深さまで拡散させる等の熱処置をバッチ処理にて行う場合、ボート20に多数のウェハ30を収容する。
【0005】
ウェハ30を乗せたボート20は、ボートエレベータ12上に載置され、このボートエレベータ12が上昇してボート20がボート出入口10aから熱処理炉10内に導入される。加熱ヒータ11により、炉内が所定の処理温度(例えば、400°C〜1200°C)に加熱され、ウェハ30に対する熱処理が行われる。熱処理が終了すると、ボートエレベータ12が下降してボート出入口10aからボート20が炉外に引き出される。
【0006】
下記の特許文献1にも記載されているように、前記のような熱処理工程において、高温の熱処理炉10にウェハ30を出し入れすると、炉内と外気の温度差が大きいので、ウェハ30が急熱・急冷されて熱収縮し、反りが生じる。
【0007】
ウェハ30において、特に、サファイアウェハは、熱処理における昇温・降温時に、Siウェハに比べて熱処理により反りやすい。サファイア基板はC軸があり(OFを下にして8時方から右上の方向への軸)、表面が決まるのに関わらず、反りは、図5に示すように、素子形成面を基準に上方向、及び下方向の両方に生じる。
【0008】
このようにウェハ30が凹凸に反ると、隣接した上下のウェハ30の表面と裏面が接触して傷等が生じ、製品が不良になる。特に、ウェハ30を収容したボート20を熱処理炉10のボート出入口10aから下ろす際、温度が高いと反り量が大きく、隣接するウェハ30が接触する。
【0009】
この対策として、ウェハ30を乗せたボート20の出し入れは、ボートエレベータ12等を使って所定の速度で行うようにしたり、熱処理炉10内での加熱処理(例えば、400°C〜1200°C)が終わった後、炉内の温度を下げてから(例えば、400°C程度の低温)、ボート20をボート出入口10aから下ろすような処理(即ち、スタンバイ温度の設定を低温にする処理)を行っている。
【0010】
【特許文献1】特開平6−18242号公報
【特許文献2】特開2003−243313号公報
【特許文献3】特開2007−134518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の半導体製造方法では、ウェハ30の反りを防止するために、スタンバイ温度の低温化を行っているが、これにより半導体製造工程の処理時間が長くなって、生産効率が低下するという課題があった。
【0012】
例えば、通常のSiウェハは、スタンバイ温度が800°C程度の高温である。これに対し、特に、サファイアウェハは、スタンバイ温度が400°C程度であり、低温化のために処理時間がかなり長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の半導体製造方法は、複数枚の基板がほぼ平行に隣接して所定間隔で収容されたボートを熱処理炉内へ導入して、前記複数枚の基板を所定温度で加熱する加熱工程と、前記熱処理炉から前記ボートを導出し、センサにより、前記複数枚の基板の反り方向を検出する反り方向検出工程と、前記複数枚の基板の内の反り方向が同一の基板を分別し、反り方向が同一の複数枚の前記基板を、前記ボート又は他のボートへ再収容する分別処理工程と、反り方向が同一の前記複数枚の基板が収容された前記ボートを前記熱処理炉へ導入して、前記複数枚の基板に対して所定温度で熱処理を行う熱処理工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体製造方法によれば、本工程の処理前に基板を加熱して反りを起こさせ、この反りの方向をセンサで検出し、同じ反り方向の基板を分別(グルーピング)して別々のボートに乗せて本工程の熱処理を行うようにしたので、高温スタンバイ温度でも、それぞれのボートに乗った複数の基板の反り方向が同じであるため、隣接基板同士が接触せず、傷等の発生を防止できる。しかも、熱処理しながら基板の反り方向を検出できるので、別途、反りチェック工程の追加が不要となり、更に、処理のRPT(RAW PROCESS TIME)を大幅に短縮できるので、半導体製造工程の処理時間を短縮して生産効率を向上することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0016】
(装置の構成)
図1は、本発明の実施例1の半導体製造方法に用いられる熱処理炉を示す概略の縦断面図である。
【0017】
この熱処理炉40は、縦型の酸化・拡散炉であり、この外側面に加熱ヒータ41が設けられている。熱処理炉40における下部のボート出入口40aの下方向には、昇降可能なボートエレベータ42が配設されている。又、ボート出入口40a付近には、ウェハ反り方向検出用のセンサが設けられている。センサは、例えば、ボート出入口40aの中心軸方向へ光を出射する投光器43と、この投光器43に対向する位置に配置され、その出射光を受光して電気信号に変換する受光器44とにより構成されている。
【0018】
ボートエレベータ42上には、ボート50が載置される。ボート50は、多数の基板(例えば、サファイアウェハ)60(=60−1〜60−n)をほぼ平行に隣接して所定ピッチで乗せてバッチ処理を行うものであり、例えば、垂直方向に立設された支持枠51を有し、この支持枠51の対向する内側において垂直方向に所定ピッチ隔てて複数段の係止溝52(=52−1〜52−n)が形成されている。各段の係止溝52は、これに各ウェハ60の周縁部を係止することにより、各ウェハ60を隣接してほぼ水平に保持する構造になっている。
【0019】
(半導体製造方法)
図2は、図1の熱処理炉40を用いた半導体製造方法の一例を示す工程図である。
【0020】
半導体製造方法の一例として、高温の熱処理炉40内にウェハ60(=60−1〜60−n)を導入し、ウェハ表面に酸化膜等を形成する場合は、次の(1)〜(4)の製造工程が実行される。
【0021】
(1) 加熱工程(ステップS1)
処理対象となる複数のウェハ60が乗せられたボート50をボートエレベータ42上に載置する。定速でボートエレベータ42を上昇させて、ボート50をボート出入口40aから熱処理炉40内に導入する。加熱ヒータ41により、炉内を所定の温度(例えば、800°C程度)に加熱し、ウェハ60に対して最初の熱処理を行う。
【0022】
本発明者の実験によると、サファイアウェハの反りにはボート位置依存がなく、ウェハ個々で反る方向が決まっているが、これを処理前に予め検出することが困難である。そこで、本実施例1では、ウェハ60を処理する前に最初に加熱して、ウェハ60の反る方向を調査するようにしている。
【0023】
(2) ウェハ反り方向検出工程(ステップS2)
図3(a)、(b)は、図2中のウェハ反り方向検出方法を説明するための図であり、同図(a)は光によるウェハ反り検出の概念図、及び、同図(b)は受光器信号パターンを示す図である。
【0024】
前記(1)の熱処理が終了すると、ボートエレベータ42を定速で下降してボート出入口40aからボート60を炉外に引き出す。この際、ウェハ60が冷却されて反るので、次のようにしてウェハ60の反り方向を検出する。
【0025】
ボート出入口40aからボート50を定速で降下させながら、図3(a)に示す投光器43及び受光器44間を通過させる。投光器43から受光器44へ向けて出射された投光量Haの光は、一定のピッチで上下に隣接するウェハ60間を透過し、又は遮光される。受光器44では、ウェハ60間を透過した光を受光すると、この受光量Hbを電気信号に変換して図示しない測定部へ出力する。
【0026】
測定部において、受光量Hbからなる受光器信号パターンを観察すると、図3(b)に示すように、ウェハ60間を光りが透過した場合には、矩形の受光量波形(斜線部)が形成され、ウェハ60間で遮光された場合には、その受光量波形が形成されない。
【0027】
例えば、図3(a)、(b)において、ウェハ60−1,60−2間の最下段では、下のウェハ60−1が凸形、上のウェハ60−2が凹形なので、この間で光が遮光されて受光量Hbがゼロ、ウェハ60−2,60−3間の2段目では、下のウェハ60−2が凹形、上のウェハ60−3が凹形なので、この間を光が僅かに遮光されつつ透過するため、受光量Hbが時間幅の短い矩形波形となる。ウェハ60−3,60−4間の3段目では、下のウェハ60−3が凹形、上のウェハ60−4が凸形なので、この間を光が遮光されずにそのまま透過するため、受光量Hbが時間幅の長い矩形波形となる。更に、ウェハ60−4,60−5間の4段目では、下のウェハ60−4が凸形、上のウェハ60−4が凹形なので、この間で光が遮光されて受光量Hbがゼロとなる。
【0028】
このような受光量波形(斜線部)の透過時間tの長さと、透過時間tのパターンにより、測定部において、反った凹/凸ウェハと位置が判明する。
【0029】
(3) 分別処理工程(ステップS3)
前記(2)の工程において反った凹/凸ウェハと位置が判明するので、同じ反り方向(ウェハ60の素子形成面を基準にして同じ方向に反っているもの。)のウェハ60をグルーピングし、ウェハ60の素子形成面を基準にして、例えば上方向に反ったものを第1のボートへ、下方向に反ったものを第2のボートへと、搭載するボートを変える。
【0030】
(4) 熱処理工程(ステップS4)
前記(3)の工程においてグルーピングした第1のボートをボートエレベータ42に載置し、熱処理炉40内に導入して所定温度(例えば、1000°C前後)で酸化処理等の所定の熱処理を行う。加熱処理後、炉内の温度を下げてから(例えば、スタンバイ温度が高温の800°C程度)、第1のボートをボート出入口40aから下ろす。第2のボートについても、同様の熱処理が行われる。これにより、酸化処理等の熱処理が終了する。
【0031】
(実施例1の効果)
本実施例1の半導体製造方法によれば、次の(a)〜(c)のような効果がある。
【0032】
(a) 本工程の処理前にウェハ60を加熱して反りを起こさせ、この反りを投光器43及び受光器44により検出し、同じ反り方向のウェハ60をグルーピングし、上方向に反ったウェハ60と下側に反ったウェハ60とを別々のボートに乗せて本工程の熱処理(ステップS4)を行うようにしたので、高温スタンバイ温度(例えば、800℃程度)でも、それぞれのボートに乗った複数のウェハ60の反り方向が同じであるため、隣接ウェハ同士が接触せず、傷等の発生を防止できる。
【0033】
(b) 加熱工程(ステップS1)において、熱処理しながら(即ち、ボート50を定速で降下させながら)、ウェハ60の反り方向を検出できるので、別途、反りチェック工程の追加が不要となる。更に、処理のRPTを大幅に短縮(例えば、48時間程度に短縮)できる。従って、半導体製造工程の処理時間を短縮して生産効率を向上することが可能になる。
【実施例2】
【0034】
図4は、本発明の実施例2の半導体製造方法に用いられる熱処理炉を示す概略の構成図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0035】
本実施例2では、図2の分別処理工程(ステップS3)において、リソータ機能を有するウェハ装置70により、反り方向が同じウェハ60を自動的にボートへ再搭載する構成になっている。このようなウェハ装置70を使用すれば、分別処理工程(ステップS3)を簡易化できる。又、リソータ機能を有するウェハ装置70に代えて、ウェハ60の凹凸の判別機能とリソータ機能とを有する図示しない装置(例えば、凹凸判別リソータ装置)を使用すれば、生産効率をより向上できる。
【0036】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(i)〜(iii)のようなものがある。
【0037】
(i) 処理対象のウェハ60として、サファイアウェハを使用したが、本発明はこれに限定されず、熱収縮によって反るような他の基板にも適用できる。
【0038】
(ii) 熱処理炉40は、横型炉を使用しても良い。また、ボート50としては、ウェハ60を縦方向に並列に収容できる構造のものにも適用可能である。
【0039】
(iii) ウェハ60の凹凸の検出は、投光器43及び受光器44以外の他のセンサを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1の半導体製造方法に用いられる熱処理炉を示す概略の縦断面図である。
【図2】図1の熱処理炉40を用いた半導体製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】図2中のウェハ反り方向検出方法を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例2の半導体製造方法に用いられる熱処理炉を示す概略の構成図である。
【図5】従来の半導体製造方法に用いられる熱処理炉を示す概略の縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
40 熱処理炉
43 投光器
44 受光器
50 ボート
60 ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板がほぼ平行に隣接して所定間隔で収容されたボートを熱処理炉内へ導入して、前記複数枚の基板を所定温度で加熱する加熱工程と、
前記熱処理炉から前記ボートを導出し、センサにより、前記複数枚の基板の反り方向を検出する反り方向検出工程と、
前記複数枚の基板の内の反り方向が同一の基板を分別し、反り方向が同一の複数枚の前記基板を、前記ボート又は他のボートへ再収容する分別処理工程と、
反り方向が同一の前記複数枚の基板が収容された前記ボートを前記熱処理炉へ導入して、前記複数枚の基板に対して所定温度で熱処理を行う熱処理工程と、
を有することを特徴とする半導体製造方法。
【請求項2】
前記反り方向検出工程では、
前記ボートを前記熱処理炉から一定速度で導出させながら、前記センサにより、前記基板の反り方向を検出することを特徴とする請求項1記載の半導体製造方法。
【請求項3】
前記反り方向検出工程において、
前記センサとして、前記基板間に光を出射する投光器と、前記光を受光して電気信号に変換する受光器と、により構成された光センサを用い、
前記受光器の出力信号に基づき、前記基板間における前記光の透過時間を測定して、前記基板の反り方向を検出することを特徴とする請求項1又は2記載の半導体製造方法。
【請求項4】
前記光の透過時間における長さとパターンにより、前記基板の反りを検出すると共に、反りが生じた前記基板の位置を検出することを特徴とする請求項3記載の半導体製造方法。
【請求項5】
前記基板は、サファイア基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−129811(P2010−129811A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303612(P2008−303612)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【出願人】(390008855)OKIセミコンダクタ宮崎株式会社 (151)
【Fターム(参考)】