説明

半導体製造装置用ガス供給装置

【課題】半導体の品質低下を防止できるMOCVD法による半導体製造設備のガス供給装置を提供する。
【解決手段】反応炉PCへの原料ガスを供給するメインガス供給ラインLと前記原料の排気をするべントガス供給ラインLとを備え、前記メインガス供給ラインの入口側に圧力式流量制御装置FCS−Nを設け、当該圧力式流量制御装置により流量制御をしつつ所定流量のキャリアガスC〜Cをメインガス供給ラインへ供給すると共に、前記ベントガス供給ラインの入口側に圧力制御装置FCS−RVを設け、当該圧力制御装置により圧力調整をしつつ所定圧力のキャリアガスをベントガス供給ラインへ供給し、前記圧力式流量制御装置のオリフィスOL下流側で検出したメインガス供給ラインの圧力P10とベントガス供給ラインの圧力P2とを対比し、両者の差が零となるようにベントガス供給ラインのガス圧P2を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用のガス供給装置に関するものであり、有機金属気相成長装置に於けるガス供給装置として主に利用されるものである。
【背景技術】
【0002】
所謂有機金属気相成長法(以下、MOCVD法と呼ぶ)により製造された薄膜積層構造の半導体は、エピタキシャル成長により積層した各薄膜の界面に於ける急峻性を高めることが半導体品質を高める上で必須の要件となる。即ち、各薄膜の界面に於ける急峻性を高めるためには、気相成長反応用原料ガスの切換え操作により原料ガスの種類が変っても、反応炉へ供給されるガスの総流量が変化せず、しかも原料ガスの切換が急峻に行われるようにする必要がある。
【0003】
そのためには、先ず、原料ガス切換時に反応炉内や配管内のガス圧力に変動が生じないようにガス流量を高精度、高応答性でもって制御する必要があり、これ等の必要性に対応するため、従前からMOCVD法による半導体製造装置に於いては、図10に示すような構成のガス供給装置が多く使用されている。
【0004】
即ち、図10は従前のMOCVD法に於けるガス供給系の基本構成の一例を示すものであり、図10に於いて、L1はメインガス供給ライン、L2はベントガスライン、PCは反応炉(プロセスチャンバー)、VPは真空ポンプ、MFC1、MFC2、MFCはマスフローコントローラ、P1〜P4は圧力検出器、P1Sは圧力検出信号、DPは差圧検出器、ΔPは差圧検出信号、VR1、VR2は圧力調整器、V0、V1、V2、V3、V4、Vは制御弁、A1、A2はガス供給機構、B1、B2は切換弁機構、OMは有機金属液、GBはガスボンベ、C0〜C5はキャリアガス、CA、CBは原料ガスである。
【0005】
今、メインガス供給ラインL1のマスフローコントローラMFC1及びベントガス供給ラインL2のマスフローコントローラMFC2の流量設定値を夫々Q1、Q2に設定すると共に、反応炉PCの圧力値等を設定し、キャリアガスC01、C02を各ラインL1、L2へ流している。また、両原料ガス供給機構A1、A2を夫々設定作動させ、原料ガスCAとキャリアガスC3の流量を同一値に調整すると共に、原料ガスCBとキャリアガスC5の流量を同一値に調整する。更に、バルブ切換機構B1、B2を作動させ、V1a及びV2bを開、V1b及びV2aを閉、V3a及びV4bを開、V3b及びV4aを閉とする。
【0006】
その結果、メインガス供給ラインL1には原料ガスCA+原料ガスCB+キャリアガスC01(流量はMFC1の設定値Q1)のガスが流れ、反応炉PCへ供給されている。また、ベントガス供給ラインL2へはキャリアガスC5+キャリアガスC3+キャリアガスC02(総流量MFC2の設定流量Q2)のキャリアガスが流れ、真空ポンプVPを通して排気されている。
【0007】
この状態から、原料ガスCAの供給を停止し、これに換えて他の原料ガス供給機構A3(図示省略)から切換弁機構B3(図示省略)を介して原料ガスCD(図示省略)をメインガス供給ライン1へ供給する場合(原料ガスCAを原料ガスCD(図示省略1に切換)、先ず、バルブV1aを閉、V1bを開にすると共にV2bを閉、V2aを開にする。
【0008】
このバルブV1a、V1b、V2b、V2aの切換操作時にメインガスラインL1とベントガス供給ラインL2を流れているガスとの間に圧力差が生ずると、その後にメインガスラインL1へ新たに供給される原料ガスCDの流量に過渡応答が発生し、これによって、既形成の薄膜と新たな原料ガスCDにより形成された薄膜との界面における急峻性が、低下を来たすことになる。
【0009】
そのため、両ラインL1、L2間の差圧ΔPを零にするため、先ずベントガス供給ラインL2を流れるガス流量をマスフローコントローラMFC2によって一定値に設定し、次に差圧計DPによって両ラインL1、L2間の差圧ΔPを検出し、その検出値ΔPを圧力調整器VR2へフィードバックして、ベントガス供給ラインL2の抵抗を調整することにより前記差圧ΔPを零にする。
【0010】
また、別の第2の方法として、図10の一点鎖線で示すように、圧力調整装置VR2の設定値を一定にしておいて、差圧計DPで検出した差圧ΔPをマスフローコントローラMFC2へフィードバックしてベントガス供給ラインL2を流れるガス流量を制御することにより、前記差圧ΔPを零にすることも可能である。勿論この場合には、メインガス供給ラインL1内のガス圧力を一定に保持するため、図10の一点鎖線で示すように、圧力検出器P1でメインガス供給ラインL1内の圧力を検出し、その検出値P1sを圧力調整器VR1へフィードバックしてメインガス供給ラインL1の抵抗を調整することにより、メインガス供給ラインL1のガス圧力を一定にすることが行われる。
【0011】
前記図10に示したガス供給装置では、原料ガスの切換時に、両ラインL1、L2間の差圧ΔPが略零に保持されることになり、その結果、先に形成された薄膜と切換後の原料ガスにより新たに形成された薄膜との間の所謂界面の急峻性が良好に保持されることになり、高品質の半導体が得られるという優れた効用を奏するものである。
【0012】
しかし、図10のガス供給装置にも改善すべき多くの問題点が残されており、その中でも特に問題となる点は、(イ)マスフローコントローラMFC1やマスフローコントローラMFC2の他に差圧計DPや差圧計DP取付けのための分岐管、圧力調整器VR1、VR2、フィードバック制御ラインFBL等を必要とする。そのため、機器装置が複雑化すると共に、差圧計DPの取り付け用に大きなスペースが必要となり、ガス供給装置の小型化を図り難いと云う点、及び(ロ)差圧検出値ΔPによって圧力調整器VR2を介してベントガス供給ラインL2の内圧を調整し、差圧ΔPを零にする必要(或いは、差圧検出器ΔPによって圧力調整器VR1を介してメインガス供給ラインL1の内圧を調整し、差圧ΔPを零にする)があるため、圧力制御の応答性が低いと云う点の二つである。
【0013】
【特許文献1】特開2005−223211号公報
【特許文献2】特開平8−288226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従前のメインガス供給ラインL1とベントガス供給ラインL2とを備えたMOCVD用の原料ガス供給システムに於ける上述の如き問題、即ち(イ)マスフローコントローラMFC1、MFC2や差圧検出器DP、圧力調整器VR1、VR2、フィードバック制御ラインFBL等を必要とし、装置構造の簡素化及び小型化が図り難いこと、及び(ロ)圧力調整の応答性が低く、その結果原料切換え時の薄膜界面の急峻性が低下して半導体製品の品質が低下すること等の問題を解決せんとするものであり、マスフローコントローラMFC1、MFC2に変えて流量及び圧力制御の応答性に優れた圧力式流量制御装置及び圧力制御装置を使用することにより、薄膜のヘテロ界面における急峻性に優れた積層構造の高品質な半導体が得られるようにしたガス供給設備を提供することを、発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本件出願人は先に、熱量式流量制御装置(マスフローコントローラMFC)に代るものとして圧力式流量制御装置(FCS)を開発し、これを特開平8−338546号等として公開している。当該圧力式流量制御装置は、後述するようにオリフィスを流通するガス流が所謂臨界状態下の流れの場合には、オリフィス流通ガス流量QはQ=KP1(但し、Kは定数、P1はオリフィス上流側圧力)で表示され、オリフィス下流側圧力P2に影響されることなしにオリフィス上流側圧力P1に比例すると言うことを基本とするものであり、流量の設定や流量出力、オリフィス上流側圧力P1及び下流側圧力P2等を全て電気信号(電圧信号)でもって設定並びに表示することが出来、しかも流量・圧力の制御応答性を具備すると云う特徴を有している。
【0016】
本願発明者等は、この圧力式流量制御装置(FCS)の有する優れた応答特性をMOCVD法による半導体製造装置のガス供給装置に於いて利用することにより、原料ガス切換え時における薄膜界面の所謂急峻性を高め得ることを着想すると共に、当該着想をベースにしてMOCVD法に用いるガス供給装置を構成し、これを用いて供給原料ガスを切換えした時の流量、圧力の制御特性を多数試験した。
本願発明は上記着想並びにこれを適用したガス供給設備による流量・圧力制御試験の結果を基にして創作されたものであり、請求項1の発明は、反応炉への原料ガスを供給するメインガス供給ラインと前記原料ガスの排気をするべントガス供給ラインとを備え、両ガスラインの中間部に複数のガス供給機構を配設して成る有機金属気相成長法による半導体製造設備用のガス供給装置に於いて、前記メインガスラインの入口側に圧力式流量制御装置を設け、当該圧力式流量制御装置により流量制御をしつつ所定流量のキャリアガスをメインガスラインへ供給すると共に、前記ベントガス供給ラインの入口側に圧力制御装置を設け、当該圧力制御装置により圧力調整をしつつ所定圧力のキャリアガスをベントガス供給ラインへ供給し、前記圧力式流量制御装置のオリフィス下流側で検出したメインガス供給ラインのガスP10とベントガス供給ラインの圧力P2とを対比し、両者の差が零となるように圧力制御装置によりベントガス供給ラインのガス圧P2を調整することを発明の基本構成とするものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、メインガス供給ラインに設ける圧力式流量制御装置をバルブ駆動部を設けたコントロールバルブと、コントロールバルブの下流側に設けたオリフィスと、オリフィスの上流側とコントロールバルブとの間に設けた圧力検出器P1と、オリフィスの下流側に設けた圧力検出器P10と、圧力検出器P1からの圧力信号によりオリフィスを流通するガス流量Qを演算すると共に、外部から入力された設定流量Qsと前記演算流量Qとの差Yを演算し、当該差Yをコントロールバルブの駆動部へ入力して前記差Yが零となる方向にコントロールバルブを開閉制御する制御回路部とから構成すると共に、前記ベントガス供給ラインに設けた圧力制御装置を、バルブ駆動部を設けたコントロールバルブと、その下流側に設けた圧力検出器P2と、前記圧力検出器P2の検出圧力信号と前記圧力式流量制御装置のオリフィス下流側に設けた圧力検出器P10の検出圧力信号とが入力され、両者の差P10−P2を演算すると共にその差Xをバルブ駆動部へ入力して、前記差Xが零となる方向にコントロールバルブを開閉制御する制御回路部とから構成し、両ラインL1、L2間の圧力差が零となるようにベントガス供給ラインのガス圧力を調整するようにしたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、メインガス供給ラインに設ける圧力式流量制御装置を、ガス流が臨界状態下でオリフィスを流通する構成のものとしたものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、メインガス供給ラインの圧力式流量制御装置に設けたオリフィス下流側の圧力検出信号P10を、何れかのガス供給機構による供給ガス種の切換操作前にベントガス供給ラインの圧力制御装置の制御回路部へ入力し、両ラインL1、L2間の圧力差を零になるように調整する構成としたものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、圧力制御装置又は圧力式流量制御装置の何れかに、両ラインL1、L2間の圧力差の表示機構を設けたものである。
【発明の効果】
【0021】
本願発明においては、圧力式流量制御装置及びこれと類似の構成を有する圧力制御装置を利用してメインガス供給ラインL1の流量制御とベントガス供給ラインL2の圧力制御を行う構成としているため、圧力式流量制御装置と圧力制御装置に固有の高応答性を有効に活用して両ガス供給ラインL1、L2間の圧力差を瞬時に零に調整保持することが可能となる。
その結果、供給する原料ガスの切換時に、両ライン間に圧力差が生じることが皆無となり、新たに供給原料ガスの過渡流通現象が発生しなくなり、所謂薄膜界面の急峻性の低下が防止されて、高品質な半導体製品を得ることが出来る。
【0022】
また、圧力式流量制御装置や圧力制御装置そのものに具備されている圧力検出器や演算制御部をそっくりそのまま使用することが出来ると共に、従前の如き両ラインL1、L2に圧力調整器やフィードバック制御ラインFBL等を設ける必要が全くないため、設備の小型化及び低コスト化を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る半導体製造設備用ガス供給装置の実施形態を示すものであり、図1に於いて、ECS−Nは圧力式流量制御装置、FCS−RVは圧力制御装置、A1は有機金属の原料ガス供給機構、A2は他の原料ガス供給機構、L1はメインガス供給ライン、L2はベントガス供給ラインであり、その他の各構成部材は、前記図10に示した従前のガス供給装置の場合と同一であるため、ここではその説明を省略する。
【0024】
即ち、本発明に於いては、従前のガス供給設備におけるマスフローコントローラMFC1、MFC2や差圧検出器ΔP、圧力調整器VR1、VR2、差圧信号ΔPのフィードバック制御ラインFBL及び圧力検出信号P1sのフィードバック制御ラインFBL等が削除されており、これに替えて圧力式流量制御装置FCF−N及び圧力制御装置FCS−RVが夫々利用されている点のみが異なっている。
【0025】
図2は、図1の圧力式流量制御装置FCS−N、圧力制御装置FCS−RVの具体的な構成を示すものであり、圧力式流量制御装置FCS−Nは、コントロールバルブVC1、バルブ駆動部D1、オリフィスOL、オリフィス上流側の圧力検出器P1、オリフィス下流側の圧力検出器P10及び制御回路部10等から構成されている。また、圧力制御装置FCS−RVはコントロールバルブCV2、バルブ駆動部D2、コントロールバルブ下流側の圧力検出器P2及び制御回路部11等から形成されている。
【0026】
圧力式流量制御装置FCS−Nでは、制御回路部10に於いてオリフィスOLを流通する流量QがQ=KP1(但しKはオリフィスOL等によって決まる定数、P1は圧力検出器P1の検出圧力)として演算されると共に、外部から入力された設定流量Qsと前記演算値Qとが制御回路部10で対比され、その差Y=Qs−Qが零となるようにバルブ駆動部D1へ制御信号Yが供給され、コントロールバルブVC1が開度制御される。
【0027】
また、圧力制御装置(FCS−RV)においても同様であり、制御回路部11において、メインガス供給ラインL1の圧力検出器P10の検出値P10とベントガス供給ラインL2の検出器P2による検出値P2が比較され、両者の差X=P10−P2が零となるように、コントロールバルブVC2の駆動部D2へ制御信号Xが送られコントロールバルブVC2の開度制御が行われる。
尚、圧力制御装置FCS−RVへは外部設定圧力Psを入力することも出来、この場合にはPS−P2が零となるようにコントロールバルブVC2が開度制御されることになる。また、設定圧力PsがP10と異なる値に設定される場合には、前記圧力検出器P10からの入力P10は遮断されることになる。
【0028】
本発明に係る原料ガス供給装置によれば、メインガス供給ラインL1の流量Q1を所定の流量値に設定することにより、ラインL1を通してリアクターPCへ流量Q1の原料ガスが必要な一定圧力P10でもって供給される。
一方、ベントガス供給ラインL2の方では、ベントガス供給ラインL2を介して所定の圧力P2でもってベントガスが流通することになり、メインガス供給ラインL1の圧力検出値P10を制御回路部11へ入力することにより、ベントガス供給ラインL2の圧力P2は、コントロールバルブVC2の開閉制御によって自動的にP10−P2=0となるように瞬時に調整されることになる。即ち、両ラインL1、L2間の圧力差が瞬時に零となるように調整されることになる。
【0029】
尚、メインガス供給ラインの検出圧力P10の入力を遮断することにより、ベントガス供給ラインL2の圧力P2は外部設定圧力PSに自動制御できることは勿論であるが、通常はメインガス供給ラインL1との圧力検出値P10をベントガス供給ラインL2の制御回路部11へ入力することにより、両ラインL1、L2間の圧力差を零に保持した状態で原料ガス供給装置の運転が行われる。
【0030】
また、本発明で使用する圧力式流量制御装置FCS−N及び圧力制御装置FCS−RVの応答特性は極めて優れており、後述する実験結果からも明らかなように、原料ガスの切換時に切換弁機構Bを作動した場合においても、両ガスラインL1、L2間の圧力差が殆ど生じないこと、即ち、より高い応答性でもって両ラインL1、L2間の圧力差が零に調整されることとなる。
【0031】
図3は、本発明に係る原料ガス供給装置に於ける原料ガス切換時の両ガスラインL1、L2における圧力差の発生状況の確認に使用した差圧調整機構の試験装置の全体系統図である。
【0032】
図3に於いて、12はキャリアガス源(N2)、RGは圧力調整器、PTは圧力計(250KPas)、CV1及びCV2のシート径6mmφ、メインガス供給ラインL1及びベントガス供給ラインL2の下流側容積約38cc、NV1、NV2は圧力調整弁、VP1、VP2は真空排気ポンプである。
【0033】
尚、真空排気ポンプVP1は流量Q=4SLM(H2に換算)の時に排気圧を75,100,125torrに調整可能なものであり、また、真空排気ポンプVP2は、圧力100Torrの時に排気流量を3SLM、4SLM及び5SLMに調整可能なものを使用している。
更に、圧力式流量制御装置FCS−Nの流量設定入力は0,3,4,5,10SLM(H2に換算)とした。
【0034】
(実験結果1)
先ず、メインガス供給ラインL1の圧力調整弁NV1を一定及びFCS−Nを4SLHに設定し、VP1の排気圧を100Torrとした。また、ベントガス供給ラインL2のNV2を調整及びFCS−RVを100Torrに設定して、真空排気ポンプVP2の排気流量を3SLM(H2換算)とした。
この状態から、メインガス供給ラインL1の流量設定値をQsを0→3→4→5→10SLMの順に切換したときのFCS−Nの設定流量Qsと流量出力Qの変化(曲線F)、流量測定器MFMの流量出力Q0(曲線G)、圧力制御装置FCS−RVの圧力出力P2(曲線H)及び両ラインL1・L2間の圧力差ΔP=P10−P2(曲線I)を測定した。上記結果を図示したものが図4であり、差圧ΔPは殆ど零であることが判る。尚、図4の1目盛は500msである。また、曲線F及び曲線Hは、二種のデータが略重なって表示されている。
【0035】
図5は、ベントガス供給ラインの真空排気ポンプVP2の排気量を3SLM(H2換算)とした場合の、また、図6は、VP2の排気量を5SLMとした場合の図4と同じ条件下におけるテスト結果を夫々示すものである。
【0036】
(実験結果2)
次に、圧力調整弁NV1を調整及び圧力式流量制御装置FCS−Nを4SLM(H2換算)に設定して、真空排気ポンプVP1の排気圧を75Torrとした。また、ベントガス供給ラインL2の圧力調整弁NV2を一定及び圧力制御器FCS−RVを100Toorに設定して、真空排気ポンプVP2の排気量を4SLM(H2換算)とした。
この状態から、実験1の場合と同様にメインガス供給ラインL1の流量設定値QSを0,3,4,5,10SLMと順に切換変化させた場合の前記実験1の場合と同じ各部の変化状況をしめしたものが、図7である。
【0037】
また、図8及び図9は、図7に於いてメインガス供給ラインL1側の真空排気ポンプVP1の排気圧を100Torr及び125Torrに変化させた場合の、図7と同じ各値を図示したものである。
【0038】
図7乃至図9からも明らかなようにメインガス供給ラインL1側の真空排気側の圧力値が変った場合に於いても、ガス流量の切換時に於ける両ラインL1・L2間の差圧ΔPは略零に保持されることが判る。
産業上の利用可能性
【0039】
本発明は、MOCVD法やMOVPE法等による半導体製造設備のみならず、並列状に配置した複数のガス配管路間のガス圧力差を零に調整、保持する装置に、広く適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る半導体製造用原料ガス供給装置の全体系統図である。
【図2】図1のガス供給ガス供給装置に於ける差圧調整部の構成の詳細説明図である。
【図3】作動確認用試験装置の全体系統図である。
【図4】本発明に係る原料ガス供給装置の差圧調整試験の結果の一例を示す線図である。
【図5】図4の試験においてベントガス供給ラインL2の排気量を4SLMとした場合の、図4と同内容を示す線図である。
【図6】図4の試験において、ベントガス供給ラインL2の排気量を5SLMとした場合の、図4と同内容を示す線図である。
【図7】本発明に係る原料ガス供給装置の差圧調整試験の結果の他の例を示す線図である。
【図8】メインガス供給ラインL1側の真空排気ポンプVP1の排気圧を100Torrとした場合の、図7の場合と同じ内容を示す線図である。
【図9】メインガス供給ラインL1側の真空排気ポンプVP1の排気圧を75Torrとした場合の、図7の場合と同じ内容を示す線図である。
【図10】従前のマスフローコントローラを使用したMOCVD法による半導体製造用ガス供給装置の一例を示す全体系統図である。
【符号の説明】
【0041】
1 メインガス供給ライン
2 ベントガス供給ライン
PC 反応炉(プロセスチャンバー)
VP 真空ポンプ
MFC1 メインガス供給ラインのマスフローコントローラ
MFC2 ベントガス供給ラインのマスフローコントローラ
1・Q2 マスフローコントローラMFC1及びMFC2の流量設定値
MFC マスフローコントローラ
1〜P4 圧力検出器
1S 圧力検出器P1の検出信号
DP 差圧検出器
ΔP 差圧検出器DPの検出信号
VR1〜VR4 圧力調整器
0〜V4 切換弁
1・A2 ガス供給機構
1・B2 切換弁機構
OM 有機金属液(原料ガス)
GB 原料ガスボンベ
01・C02 各ラインL1・L2へ供給するキャリアガス
1〜C5 キャリアガス
CA・CB 原料ガス
1 メインガス供給ライン
2 ベントガス供給ライン
FBL フィードバック制御ライン
FCS−N 圧力式流量制御装置
FCS−RV 圧力制御装置
Ps 外部からの設定圧力
Qs 外部からの設定入力
0 外部への圧力出力信号
0 外部への流量出力信号
1・D2 バルブ駆動装置
VC1・VC2 コントロールバルブ
OL オリフィス
1 メインガス供給ラインL1のオリフィス上流側のガス圧力
10 メインガス供給ラインL1のオリフィス下流側のガス圧力
2 ベントガス供給ラインL2のガス圧力
10、11 制御回路部
12 キャリアガス供給源
RG 圧力調整器
PT 圧力計
NV1・NV2 圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉への原料ガスを供給するメインガス供給ラインと前記原料の排気をするべントガス供給ラインとを備え、両ガスラインの中間部に複数のガス供給機構を配設して成る有機金属気相成長法による半導体製造設備用のガス供給装置に於いて、前記メインガスラインの入口側に圧力式流量制御装置を設け、当該圧力式流量制御装置により流量制御をしつつ所定流量のキャリアガスをメインガスラインへ供給すると共に、前記ベントガス供給ラインの入口側に圧力制御装置を設け、当該圧力制御装置により圧力調整をしつつ所定圧力のキャリアガスをベントガス供給ラインへ供給し、前記圧力式流量制御装置のオリフィス下流側で検出したメインガス供給ラインのガス圧P10とベントガス供給ラインの圧力P2とを対比し、両者の差が零となるように圧力制御装置によりベントガス供給ラインのガス圧P2を調整する構成としたことを特徴とする半導体製造設備用のガス供給装置。
【請求項2】
メインガス供給ラインに設ける圧力式流量制御装置をバルブ駆動部を設けたコントロールバルブと、コントロールバルブとの下流側に設けたオリフィスと、オリフィスの上流側とコントロールバルブとの間に設けた圧力検出器P1と、オリフィスの下流側に設けた圧力検出器P10と、圧力検出器P1からの圧力信号によりオリフィスを流通するガス流量Qを演算すると共に、外部から入力された設定流量Qsと前記演算流量Qとの差Yを演算し、当該差Yをコントロールバルブの駆動部へ入力して前記差Yが零となる方向にコントロールバルブを開閉制御する制御回路部とから構成すると共に、前記ベントガス供給ラインに設けた圧力制御装置を、バルブ駆動部を設けたコントロールバルブと、その下流側に設けた圧力検出器P2と、前記圧力検出器P2の検出圧力信号と前記圧力式流量制御装置のオリフィス下流側に設けた圧力検出器P10の検出圧力信号とが入力され、両者の差P10−P2を演算すると共にその差Xをバルブ駆動部へ入力して、前記差Xが零となる方向にコントロールバルブを開閉制御する制御回路部とから構成し、両ラインL1、L2間の圧力差Xが零となるようにベントガス供給ラインのガス圧力を調整するようにした請求項1に記載の半導体製造設備用のガス供給装置。
【請求項3】
メインガス供給ラインに設ける圧力式流量制御装置を、ガス流が臨界状態下でオリフィスを流通する構成のものとした請求項1に記載の半導体製造設備用のガス供給装置。
【請求項4】
メインガス供給ラインの圧力式流量制御装置に設けたオリフィス下流側の圧力検出信号P10を、何れかのガス供給機構による供給ガス種の切換操作前にベントガス供給ラインの圧力制御装置の制御回路部へ入力し、両ラインL1、L2間の圧力差を零になるように調整する構成とした請求項1に記載の半導体製造設備用のガス供給装置。
【請求項5】
圧力制御装置又は圧力式流量制御装置の何れかに、両ラインL1、L2間の圧力差の表示機構を設けたことを特徴とする半導体製造設備用のガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−76807(P2009−76807A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246558(P2007−246558)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】