説明

印刷配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、及びこれを用いたプリント配線板

エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、硬化促進剤およびシリカフィラーからなるエポキシ樹脂組成物であって、該シリカフィラーとして形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が8m/g以上30m/g以下のシリカフィラーを用いることを特徴とする印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、見かけの樹脂粘度を上昇させて乾燥機内での樹脂タレを抑制し、且つ、局部的には樹脂そのものの粘度は増加していないため補強材への浸透性は損なわれず、プリプレグの外観を改良する効果を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電気用積層板の製造に用いられる印刷配線板用エポキシ樹脂組成物、印刷配線板用プリプレグおよびこれを用いた電子機器等に用いられる印刷配線板用積層板、プリント配線板、多層プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
印刷配線板用エポキシ樹脂の硬化剤としては、従来からDICY(ジシアンジアミド)が用いられてきた。しかし近年のプリント配線板の高密度配線化に伴い、長期絶縁信頼性の優れた(CAFが発生し難い)材料や鉛フリーはんだに対応するために熱分解温度の高い材料が求められるようになり、これらの特性に優れているフェノール系硬化剤が用いられるようになってきた。
しかし、フェノール系硬化剤は、ガラス基材への含浸性が悪く、プリプレグの外観が悪いといった問題があった。
プリプレグの外観改良については、特公平07−48586号公報や特公平07−68380号公報においてプリプレグの製造時にテトラブロモビスフェノールAとビスフェノールA型エポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂とを反応させることにより、プリプレグへの含浸性を改善した例や、特許第3395845号公報において、軟化点60℃〜90℃のビスフェノールノボラック樹脂を用いることによるプリプレグの外観改良等が挙げられる。
【発明の開示】
本発明者らは、フェノール硬化樹脂積層板用プリプレグにおいて、特定のシリカフィラーを用いることにより、プリプレグの外観改良に効果のあることを見出し、本発明に到達した。
従来、フィラー(充填材)は、積層板の低α化や高剛性化、あるいは低吸水化を実現するために用いられることは良く知られている。具体的には特開平06−216484号公報のように比表面積が小さく(0.2m/g〜2.0m/g)、球状の無機充填材を用いることによって低吸水化を達成していた。
しかし、本発明者らは、フェノール系硬化剤を用いたエポキシ樹脂系において特定形状で、所定範囲の平均粒径、所定範囲の比表面積をもつシリカフィラーを含有させることにより、見かけの樹脂粘度を上昇させて乾燥機内での樹脂タレを抑制し、且つ、局部的には樹脂そのものの粘度は増加していないため補強材への浸透性は損なわれず、プリプレグの外観を改良できることを見いだすに至った。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、その目的とするところは耐熱性に優れたフェノール系硬化剤を使用する系において、良好な外観を呈するプリプレグを提供することであり、更に、上記プリプレグを用いた金属箔張積層板を提供し、その金属箔張積層板を用いたプリント配線板を提供することにある。
発明の概要
上記目的を達成するために、本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、硬化促進剤およびシリカフィラーからなるエポキシ樹脂組成物であって、該シリカフィラーとして形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が8m/g以上30m/g以下のシリカフィラーを用いることを特徴とする印刷配線板用エポキシ樹脂組成物である。
本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が10m/g以上20m/g以下のシリカフィラーを使用している。
本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、上記シリカフィラーを樹脂固形分に対して3重量%以上80重量%以下含有している。
本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、上記シリカフィラーとして、電気伝導度が15μs/cm以下のものを使用している。
本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、上記シリカフィラーとして、好ましくは、1800℃以上の温度で溶融し、ガラス化したものを使用している。
本発明の別の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、臭素含有率がシリカフィラーを含まない樹脂固形分に対して5重量%以上20重量%以下であり、2官能フェノール類とビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させたエポキシ樹脂含有率がエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下のものを使用している
本発明の別の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、臭素含有率がシリカフィラーを含まない樹脂固形分に対して5重量%以上20重量%以下であり、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂含有率がエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下のものを使用している。
本発明の別の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、臭素含有率がシリカフィラーを含まない樹脂固形分に対して5重量%以上20重量%以下であり、ノボラック型エポキシ樹脂含有率がエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下のものを使用している。
本発明の別の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、臭素を含有していない。
本発明のプリプレグは、上記印刷配線板用エポキシ樹脂組成物を補強材に含浸・乾燥させ、Bステージ化して作製される。
本発明の積層板は、上記プリプレグを金属箔表面に張り合わせ、加熱・加圧して作製される。
本発明のプリント配線板は、上記金属箔張積層板を用いて作製される。
発明の詳細な開示
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に用いる印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、硬化促進剤、シリカフィラーを含有することが必要であり、有機溶媒、その他、必要に応じてUV遮蔽剤や蛍光発光剤等を含有しても良い。
エポキシ樹脂としては特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂、あるいはそれらの臭素化タイプ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、あるいはそれらの臭素化タイプ、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂や4官能型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、あるいはそれらの臭素化タイプ等を用いることができ、これらは単独、若しくは2種以上混合して使用しても良い。
上記臭素化エポキシ樹脂として、臭素含有率を樹脂固形分全体(シリカフィラーを含まない)に対して5重量%以上20重量%以下とし、2官能フェノール類とビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させたエポキシ樹脂の含有率をエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下とすると、硬化物としてコストと難燃性のバランスの優れたものが得られ、好ましい。
又、臭素化エポキシ樹脂として、臭素含有率を樹脂固形分全体(シリカフィラーを含まない)に対して5重量%以上20重量%以下とし、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂の含有率をエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下とすると、硬化物の難燃性を確保しつつ低吸湿化が図れるので好ましい。
又、臭素化エポキシ樹脂で、臭素含有率を樹脂固形分全体(シリカフィラーを含まない)に対して5重量%以上20重量%以下とし、ノボラック型エポキシ樹脂の含有率をエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下とすると、硬化物のガラス転移温度が高くなり、難燃性も確保できるため好ましい。
又、臭素を含有しないエポキシ樹脂を用いたものはいわゆるハロゲンフリーで、環境負荷が少なく、好ましい。
本発明の硬化剤であるフェノールノボラック樹脂としては、特に限定はされないが、例えばフェノール、クレゾール等のフェノール類とホルムアルデヒドを反応させて得られるフェノールノボラック樹脂や、ビスフェノールA等のビスフェノール類とホルムアルデヒドを反応させて得られるビスフェノールノボラック樹脂が挙げられ、これらは単独で使用しても良く、若しくは2種以上併用しても良い。
又、硬化剤であるフェノールノボラック樹脂を、本発明のエポキシ樹脂組成物の1成分として混合する場合、エポキシ基とフェノール性水酸基との当量比を1:1.2〜1:0.7の範囲とすることで、硬化物のガラス転移温度やピール強度等性能のバランスが良くなり、好ましい。
本発明の有機溶媒としては、メチルエチルケトンやシクロヘキサノン等のケトン類や、メトキシプロパノール等のセロソルブ類を使用するのが好ましい。
本発明の硬化促進剤としては、特に限定するものではないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、イミダゾールシラン類が例示でき、これらは単独で用いても良く、2種類以上併用しても良い。
本発明のシリカフィラーとしては、形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が8m/g以上30m/g以下、好ましくは10m/g以上20m/g以下のものが用いられる。
上記シリカフィラーの形状は、少なくとも2面以上の平面を有するもので、いわゆる球体ではなく、例えば破砕によって得られる不定形なものが挙げられる。
上記シリカフィラーにおいて、同様の粒径で比表面積が8m/g以下のものは樹脂の見かけの粘度上昇が少なく、乾燥時の樹脂タレ抑制効果が見られない。又、比表面積が30m/gを超えるものは工業製品としては見当たらないため使用できない。
上記シリカフィラーの添加量は、樹脂固形分全体に対して3重量%以上80重量%以下であることが好ましい。
上記シリカフィラーの添加量が3重量%未満の場合、添加するメリットが発揮できない場合があり、80重量%を超えた場合は基板としてのピール強度やドリル加工性に問題が発生する可能性がある。
又、上記シリカフィラーの電気伝導度は、絶縁信頼性を確保するため、15μs/cm(マイクロジーメンス/センチメートル)以下であることが好ましい。
又、上記シリカフィラーは、1800℃以上の温度で溶融しガラス化したものが、硬化物の熱膨張率を低下させる効果があり、好ましい。又有害物質である結晶質が削除できるため、好ましい。
又、上記シリカフィラーは、シランカップリング剤等で表面処理を施し、樹脂とシリカフィラーとの界面強度を増すのが好ましい。
本発明の印刷配線板用プリプレグは、例えば上記の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物を、前述した有機溶媒によってワニス化してガラスクロスに含浸し、120℃〜180℃の乾燥機中でプリプレグの硬化時間が60秒以上180秒以下になるように乾燥させることによって半硬化状態(Bステージ)にすることにより製造することができる。
本発明の印刷配線板用積層板は、例えば、上記プリプレグを所要枚数重ね、これを140℃〜200℃、0.98MPa〜4.9MPa(メガパスカル)の条件化で加熱・加圧して積層成形することによって、製造することができる。
このとき、所要枚数重ねた印刷配線板用プリプレグの片側、又は両側に金属箔を重ねて積層成形することにより、プリント配線板に加工するための金属箔張り積層板を製造することができる。ここで、金属箔としては銅箔、銀箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等が用いられる。
そして、上記のようにして製造した印刷配線板用積層板の外層に回路形成(パターン形成)することによって本発明のプリント配線板を製造することができる。具体的には、例えば金属箔張り積層板の外層の金属箔に対してサブトラクティブ法等を行うことによって回路形成することができ、プリント配線板に仕上げることができる。
又、印刷配線板用プリプレグ、印刷配線板用積層板、及びプリント配線板のうち少なくとも何れかを用いて積層成形することによって多層プリント配線板を製造することができる。具体的には、例えば上記のように回路形成して仕上げたプリント配線板を内層用基板として用い、この内層用基板の片側、又は両側に所要枚数の印刷配線板用プリプレグを重ねると共にその外側に金属箔を配置し、金属箔の金属箔側を外側に向けて配置し、これを加熱・加圧して積層成形することによって多層積層板を製造することができる。このとき、成形温度は150℃〜180℃の範囲に設定しておくことが望ましい。
又、ワニス化したエポキシ樹脂組成物を金属箔上にバーコーターを用いて塗布した後、160℃で約10分程度乾燥することにより、樹脂付き金属箔を製造することができる。
【実施例】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明する。
まず、使用したエポキシ樹脂、硬化剤、シリカフィラー、硬化促進剤、添加剤、有機溶媒を順に示す。
エポキシ樹脂として、以下のものを使用した。
エポキシ1:大日本インキ化学工業製 Epiclon153−60M
エポキシ当量400g/eq、臭素含有量48%(臭素化エポキシ樹脂)
エポキシ2:Shell製 EPON1124−A−80
エポキシ当量435g/eq、臭素含有量19.5%(2官能フェノール類とビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させたエポキシ樹脂)
エポキシ3:大日本インキ化学工業製 Epiclon1120−80M
エポキシ当量485g/eq、臭素含有量20%(2官能フェノール類とビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させたエポキシ樹脂)
エポキシ4:日本化薬製 BREN−S
エポキシ当量285g/eq、臭素含有量35.5%
(臭素化エポキシ樹脂)
エポキシ5:東都化成製 YDCN−703
エポキシ当量210g/eq (ノボラック型エポキシ樹脂)
エポキシ6:大日本インキ化学工業製 HP−7200H
エポキシ当量280g/eq (ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)
エポキシ7:大日本インキ化学工業製 Epiclon 850
エポキシ当量190g/eq (ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
エポキシ8:大日本インキ化学工業製 Epiclon N660
エポキシ当量210g/eq (クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)
硬化剤として、以下のものを使用した。
硬化剤1:ジャパンエポキシレジン製 YLH129B70
ビスフェノールA型ノボラック、水酸基当量118g/eq
硬化剤2:大日本インキ化学工業製 TD−2093
フェノールノボラック、水酸基当量105g/eq
硬化剤3:大日本インキ化学工業製 VH−4170
ビスフェノールA型ノボラック、水酸基当量118g/eq
硬化剤4:大日本インキ化学工業製 TD−2090
フェノールノボラック、水酸基当量105g/eq
硬化剤5:郡栄化学工業製 レジトップPSM−4324
フェノールノボラック、水酸基当量105g/eq
硬化剤6:大日本インキ化学工業製 LA−7052
変性フェノールノボラック、水酸基当量120g/eq
シリカフィラーとして、以下のものを使用した。
シリカフィラー1:デンカ製 FS−2DC
熱処理有り、平均粒径;2.0μm、比表面積;11.4m/g
形状;破砕、電気伝導度;5.1μs/cm
シリカフィラー2:龍森製 クリスタライト 5X
熱処理無し、平均粒径;1.5μm、比表面積;16.5m/g
形状;破砕、電気伝導度;2μs/cm
シリカフィラー3:龍森製 ヒューズレックス AS−1
熱処理有り、平均粒径;3.0μm、比表面積;16.2m/g
形状;破砕、電気伝導度;1μs/cm
シリカフィラー4:龍森製 ヒューズレックス WX
熱処理有り、平均粒径;1.2μm、比表面積;15.3m/g
形状;破砕、電気伝導度;7μs/cm
シリカフィラー5:デンカ製 FS−30
熱処理有り、平均粒径;6.1μm、比表面積;4.5m/g
形状;破砕、電気伝導度;2.8μs/cm
シリカフィラー6:アドマテックス製 SO−C2
熱処理有り、平均粒径;0.5μm、比表面積;8m/g
形状;球状、電気伝導度;7.8μs/cm
なお、比表面積はBET法による測定値、平均粒径はレーザー回折法により求めたd50の値とした。又、電気伝導度は、試料10gを100mlの精製水に加え、30分間振動後、抽出水を伝導度計にて測定した。
硬化促進剤としては以下のものを使用した。
促進剤1:四国化成製 2−エチル−4−メチルイミダゾール
添加剤としては以下のものを使用した。
添加剤1:大八化学工業製 PX−200(難燃剤)
有機溶媒としては以下のものを使用した。
有機溶媒1:メチルエチルケトン
有機溶媒2:メトキシプロパノール
[実施例1〜10]、[比較例1〜3]
表1に示した物質を、表1に示した所定量(単位;重量部)を配合し、約90分間撹拌した後、ナノミルにてワニス中のシリカフィラーを均一に分散させ、実施例1〜10、比較例1〜3の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物(ワニス)を得た。
なお、エポキシ樹脂組成物の臭素含有率は以下の方法により算出した。
{(各エポキシ樹脂の臭素含有率×固形分での配合量)の合計}を各エポキシ樹脂、硬化剤の固形分配合量の合計で割って100を掛ける。
〈印刷配線板用プリプレグの製造方法〉実施例1〜10、及び比較例1〜3で得られた印刷配線板用樹脂組成物のワニスを、厚さ0.2mmのガラスクロス(日東紡(株)製「WEA7628」)にそれぞれ含浸させ、乾燥機中(120℃〜180℃)でプリプレグの硬化時間が60秒以上180秒以下、樹脂量が40重量%あるいは50重量%になるように乾燥させることによって半硬化状態(Bステージ)の印刷配線板用プリプレグを製造した。
〈印刷配線板用積層板の製造方法〉上記のようにして得られた印刷配線板用プリプレグの樹脂量40重量%品を、4枚あるいは5枚準備し、それらの両面に銅箔を重ね、これを140℃〜180℃、0.98MPa〜3.9MPaの条件でプレスにより加熱・加圧して積層成形することによって板厚0.8mmあるいは1.0mmの銅張り積層板を製造した。積層成形時の加熱時間は、印刷配線板用プリプレグ全体の温度が160℃以上となる時間が少なくとも60分間以上となるように設定した。なお、銅箔としては、古河サーキットフォイル(株)製「GT」(厚さ;18μm)を用いた。
以上のようにして得られた印刷配線板用プリプレグ、印刷配線板用積層板について、次に示すような物性評価を行った。結果を表2に示した。
〈プリプレグ外観〉上記の製造方法によって得られた印刷配線板用プリプレグの樹脂量50重量%品の外観を目視により観察した。
〈ガラス転移温度〉上記で得られた印刷配線板用積層板の銅箔をエッチングにより除去し、IPC−TM−650の2.4.25項に従い、DSC法により測定した。
〈難燃性〉難燃性の評価は、板厚0.8mmの銅張り積層板から表面の銅箔をエッチングにより除去し、これを長さ125mm、幅13mmに切断し、UL法(UL94)垂直燃焼試験に従って行った。
〈硬化時間測定〉上記によって作成したプリプレグをもみほぐして粉末とし、ガラス繊維等の異物を取り除くため、60メッシュのフィルターを通した後、JIS−C6521の5.7項に従って測定した。
〈吸水率測定〉吸水率の評価は、板厚1.0mmの銅張り積層板から表面の銅箔をエッチングにて除去し、これを50mm角に切断したものを用い、PCT3気圧、3時間で処理し、下記計算式にて吸水率を求めた。
吸水率={(処理後の重量−初期重量)/初期重量}×100 (%)
〈銅箔ピール強度〉銅箔ピール強度は、板厚1.0mmの銅張り積層板をJIS−C6481に準じて測定した。
〈評価結果〉表2に見られるように、形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が8m/g以上30m/g以下、好ましくは10m/g以上20m/g以下のシリカフィラーを含有している実施例1〜10は、シリカフィラーが添加されていない比較例1や上記範囲外のシリカフィラーが添加されている比較例2、比較例3と比較してプリプレグの外観が良好であることを示した。
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、硬化促進剤からなる樹脂組成物において、形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が8m/g以上30m/g以下のシリカフィラーを用いたことで、見かけの樹脂粘度を上昇させて乾燥機内での樹脂タレを抑制し、且つ、局部的には樹脂そのものの粘度は増加していないため補強材への浸透性は損なわれず、プリプレグの外観を改良する効果を得ることができる。
本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物において、形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が10m/g以上20m/g以下のシリカフィラーを、樹脂固形分に対して3重量%以上80重量%以下含有させたことで、見かけの樹脂粘度を上昇させて乾燥機内での樹脂タレを抑制し、且つ、局部的には樹脂そのものの粘度は増加していないため補強材への浸透性は損なわれず、プリプレグの外観を改良する効果を得ることができる。
本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、シリカフィラーとして、電気伝導度が15μs/cm以下のものを使用することにより、長期絶縁信頼性の優れたものが得られる。
本発明の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物は、シリカフィラーとして、1800℃以上の温度で溶融し、ガラス化したものを使用することにより有害物質である結晶質を削除することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、硬化促進剤およびシリカフィラーからなるエポキシ樹脂組成物であって、該シリカフィラーとして形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が8m/g以上30m/g以下のシリカフィラーを用いることを特徴とする印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のシリカフィラーとして、形状が少なくとも2面以上の平面を有し、平均粒径が0.3μm以上10μm以下で、且つ、比表面積が10m/g以上20m/g以下のシリカフィラーを用いることを特徴とする請求項1記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のシリカフィラーの添加量が、樹脂固形分に対して3重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1記載のシリカフィラーとして、電気伝導度が15μs/cm以下のシリカフィラーを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のシリカフィラーとして、1800℃以上の温度で溶融し、ガラス化したシリカフィラーを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂組成物として、臭素含有率がシリカフィラーを含まない樹脂固形分に対して5重量%以上20重量%以下であり、且つ、2官能フェノール類とビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるエポキシ樹脂の含有率がエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下であるエポキシ樹脂を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂組成物として、臭素含有率がシリカフィラーを含まない樹脂固形分に対して5重量%以上20重量%以下であり、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂含有率がエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下であるエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂組成物として、臭素含有率がシリカフィラーを含まない樹脂固形分に対して5重量%以上20重量%以下であり、且つノボラック型エポキシ樹脂含有率がエポキシ樹脂固形分全体に対して40重量%以上100重量%以下であるエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂組成物が、臭素を含有していないエポキシ樹脂組成物であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の印刷配線板用エポキシ樹脂組成物を補強材に含浸・乾燥させ、Bステージ化して作製されてなることを特徴とする印刷配線板用プリプレグ。
【請求項11】
請求項10記載のプリプレグを金属箔表面に張り合わせ、加熱・加圧して作製されてなることを特徴とする印刷配線板用積層板。
【請求項12】
請求項11記載の印刷配線板用積層板を用いて作製されてなることを特徴とするプリント配線板。

【国際公開番号】WO2005/007724
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511778(P2005−511778)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004723
【国際出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】