説明

厚さ又は温度の干渉測定装置

【課題】測定物の厚さや温度測定を、非接触により高精度で行うこと。
【解決手段】干渉測定装置は、スーパーコンティニューム光を放射する光源10と、SC光を測定光と参照光とに分割する光ファイバカプラ11と、ミラー12と、ミラー12の位置を調整する位置調整装置13と、測定光と参照光との干渉強度の波長スペクトルを測定する受光装置14と、干渉強度のスペクトルを空間座標に逆フーリエ変換して、干渉強度の空間分布を求め、その空間分布から測定物の厚さや温度を測定する干渉波形解析装置15と、によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定物の厚さや温度を光の干渉により非接触で測定する干渉測定装置及び干渉測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスなどのように、薄膜成長や微細加工を行うプロセスでは、基板の温度が薄膜の膜質や加工精度に大きく影響するため、基板の温度制御が非常に重要であり、高精度に温度を測定することが求められる。基板の温度測定には従来、熱電対や蛍光温度計などが用いられている。しかし、熱電対や蛍光温度計は、基板の裏面に接触させて計測するため、接触のさせ方などによって測定誤差が生じる場合がある。また、基板表面側で熱流入があるプラズマ加工プロセスでは、基板そのものの温度を測定することができない。
【0003】
そこで、非接触での温度測定方法が望まれており、たとえば特許文献1などのような、光による干渉を利用した方法が提案されている。これは、以下のような方法である。まず、低コヒーレンス光をスプリッタによって参照光と測定光とに分割し、測定光は測定物に照射して反射させ、参照光はミラーによって反射させる。ミラーは位置調整装置によって移動させて参照光の光路長を変化させる。測定物により反射された測定光と、ミラーにより反射された参照光とを干渉させ、干渉波形を測定する。そして、屈折率の温度変化や熱膨張による干渉ピーク位置の温度変化から、温度を測定する。また、測定物表面での反射による干渉ピークと、測定物裏面での反射による干渉ピークが得られるため、測定物の厚さの測定も可能である。光源としては、SLD(スーパールミネッセントダイオード)、LED、スーパーコンティニューム光源などが挙げられる。特にスーパーコンティニューム光(SC光)は、帯域が広くて平坦なスペクトルを有した光であり、コヒーレンス長が短いことから、分解能を向上させて測定精度の向上を図ることができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−194679
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方法は、測定物で反射された測定光と参照光との干渉を得るために、参照光の光路長を変化させる必要がある。このために、参照光を反射させるミラーを移動させて、光路長を変化させていた。そのため、ミラーを精密に移動させる装置が必要となる。また、ミラーの移動に時間が係るために、測定時間が長くなるという問題がある。さらには、ミラーの移動機構による振動のために、光路長が微小振動するために、測定にノイズが加わり、測定精度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、装置の構成を簡単化すると共に、測定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、測定物の厚さ又は温度を光の干渉により測定する干渉測定装置において、低コヒーレンス光を放射する光源と、低コヒーレンス光を、測定物に照射する測定光と、参照光とに分割する分割手段と、測定光を測定物に照射して、その反射光と参照光とを干渉させる干渉手段と、参照光と測定光の反射光との干渉波形のスペクトルを求めるスペクトル検出手段と、スペクトル検出手段により検出されたスペクトルを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換手段と、逆フーリエ変換手段による出力から厚さ又は厚さから得られる温度を演算する測量手段と、を有することを特徴とする干渉測定装置である。
【0008】
また、第2の発明は、測定物の厚さ又は温度を光の干渉により測定する干渉測定装置において、低コヒーレンス光を放射する光源と、測定光を測定物に照射して、その反射光のスペクトルを求めるスペクトル検出手段と、スペクトル検出手段により検出されたスペクトルを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換手段と、逆フーリエ変換手段による出力から厚さ又は厚さから得られる温度を演算する測量手段と、を有することを特徴とする干渉測定装置である。
【0009】
また、第3の発明は、低コヒーレンス光のコヒーレンス長は、0.5μm以上、100μm0.5〜100μmであることを特徴とする。また、低コヒーレンス光のコヒーレンス長は、0.5μm以上、10μm以下であっても良い。
【0010】
また、第4の発明は、測定物の厚さ又は温度を光の干渉により測定する干渉測定方法において、低コヒーレンス光を、測定物に照射する測定光と、参照光とに分割し、測定光を測定物に照射して、その反射光と参照光とを干渉させ、参照光と測定光の反射光との干渉波形のスペクトルを求め、求められたスペクトルを逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換の結果から厚さ又は厚さから得られる温度を演算することを特徴とする干渉測定方法である。
【0011】
また、第5の発明は、測定物の厚さ又は温度を光の干渉により測定する干渉測定方法において、低コヒーレンス光を、測定物に照射して、その反射光のスペクトルを求め、求められたスペクトルを逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換の結果から厚さ又は厚さから得られる温度を演算することを特徴とする干渉測定方法である。
【0012】
また、第6の発明は、上記の方法発明において、低コヒーレンス光のコヒーレンス長は、0.5μm以上、100μmであることを特徴とする。また、低コヒーレンス光のコヒーレンス長は、0.5μm以上、10μm以下であっても良い。
【0013】
低コヒーレンス光の光源としては、SLD(スーパールミネッセントダイオード)、LED、スーパーコンティニューム光源などを用いることができる。特にスーパーコンティニューム光(SC光)は、帯域が広くて平坦なスペクトルを有した光であり、コヒーレンス長が短いことから、分解能を向上させて測定精度の向上を図ることができると考えられる。スーパーコンティニューム光(SC光)とは、帯域の広いスペクトルを有し、位相が揃った光である。帯域幅は50〜2600nmであることが望ましく、コヒーレンス長は0.5μm以上、100μm以下であることが望ましい。さらに望ましくは、0.5μm以上、10μm以下である。さらに望ましいのは0.5〜2μmである。
【0014】
測定物は任意であるが、例えば、Si基板、サファイア基板、SiC基板、GaAsやGaNなどのIII-V族半導体基板や、基板上に成膜された層や膜である。これらの基板や層や薄膜の厚さと、温度を測定することができる。層は、単層でも複層でもよい。薄膜は、半導体、絶縁体、金属などの膜であり、それらの単膜でもよいし、複合膜でもよい。測定は、それらの薄膜の成膜プロセス中であってもよいし、エッチングプロセス中であってもよい。分割手段は、フォトカプラ、ハーフミラーなどを用いることができる。
【0015】
第1の発明と第4の発明は、測定光の測定物による反射光と参照光との干渉波形のスペクトルを逆フーリエ変換して、その結果から、測定物の厚さ又は温度を測定することを特徴としている。また、第2の発明と第5の発明は、測定光の測定物による多重反射光の干渉波形のスペクトルを逆フーリエ変換して、その結果から測定物の厚さ又は温度を測定することを特徴としている。逆フーリエ変換は、スペクトルが周波数であれば、時間座標への変換であり、スペクトルが波数であれば空間座標への変換となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の干渉測定装置及び干渉測定方法によれば、参照光の光路長を変化させる必要がないことから、ミラーを移動させる装置が不要となる。また、ミラーを移動させないことから、振動による干渉波形への影響が、ノイズとして加わらないので、測定精度が向上する。また、ミラーの移動がないので、測定時間が短縮される。また、第2の発明の干渉測定装置及び第5の発明の干渉測定方法によると、参照光自体を必要としていないため、参照光を得るためのミラーなどの参照光の光学系が必要でないので、測定装置が極めて簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の具体的な実施例1に係る干渉測定装置の構成を示した図。
【図2】SC光のスペクトルを示した図。
【図3】測定された干渉強度の波長スペクトルを示した波形図。
【図4】測定された干渉強度の波数スペクトルを逆フーリエ変換した干渉強度の空間分布関数を示した特性図。
【図5】実施例2の干渉測定装置により測定光と参照光との干渉強度の波数スペクトルの逆フーリエ変換から測定される厚さと温度との関係を示した特性図。
【図6】本発明の実施例3に係る干渉測定装置の構成を示した図。
【図7】実施例3に係る干渉測定装置により、測定光の干渉による干渉強度(自己相関)の波数スペクトルを逆フーリエ変換した、干渉強度の空間関数を示した特性図。
【図8】実施例3の干渉測定装置により測定された厚さと温度との関係を示した特性図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施例について図を用いて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1の干渉測定装置1の構成を示した図である。実施例1の干渉測定装置1は、厚さ測定装置である。光源10と、光ファイバカプラ11と、ミラー12と、受光装置14と、干渉波形解析装置15とによって構成されている。測定対象である測定物16は、Si基板160上にSiO2 膜161が形成されたものであり、真空装置18中に置かれている。Si基板160の厚さは800μm、SiO2 膜161の厚さは2μmである。
【0020】
光源10は、帯域幅が広く位相が揃った連続スペクトルを有した光であるスーパーコンティニューム光(SC光)を放射する光源である。また、このSC光は、発信周波数50MHzのパルス光である。図2は、SC光のスペクトルを示したグラフである。中心波長は約1.6μmであり、波長1.3〜1.9μmまでの広帯域で平坦なスペクトルであることがわかる。コヒーレンス長は約2μmである。
【0021】
なお、SC光のコヒーレンス長は、0.5〜10μmが望ましい。この範囲であると、干渉ピークの幅が広がってしまったり、干渉ピーク同士が重なってしまうなどの問題を防止することができ、また干渉ピークも良好に測定することができるため、測定精度を向上させることができる。より望ましいSC光のコヒーレンス長は、0.5〜2μmである。 また、波長帯域の幅は、50〜2600nmであることが望ましい。50nm以下では、含まれる波長成分が少なく、スペクトルによる測定物16の物性解析が困難となるからである。また、2600nm以上では、光源、受光素子の帯域で制限があり望ましくない。
【0022】
光ファイバカプラ11は、2×2ポートの構造であり、入力ポートの一方には光源10からのSC光が入力され、測定光と参照光に分波されて2つの出力ポートから放射される。2つの出力ポートには、それぞれコリメータ17が接続されている。また、他方の入力ポートには受光装置14が接続されている。測定光は測定物16の裏面(Si基板160側の露出面)に垂直に照射され、測定物16裏面、Si基板160とSiO2 膜161との界面、測定物16表面(SiO2 膜161側の露出面)により反射され、参照光はミラー12によって反射される。反射された測定光、参照光は元の出力ポートにそれぞれ入射され、測定光と参照光とが合波されて受光装置14に入力される。
【0023】
ミラー12は、参照光を反射させる面が参照光の光軸に対して垂直となるよう位置調整装置13に取り付けられており、参照光の光軸方向へミラー12を直進移動させて、参照光の光路長と、測定光の光路長とを等しくすることが可能となっている。測定時には、ミラー12の位置は固定された状態となる。また、ミラー12は、前面でのみ全反射される物質で構成されている。位置調整装置13は、光学的ガイドレールに、ミラー12の位置が移動可能なものであれば良い。必要により、ボイスコイルモータ型ディレイライン、ピエゾチューブ型ディレイライン、直動ステージ型ディレイライン、積層ピエゾ型ディレイライン、などを用いることができる。参照光は、ミラー12により反射されて光ファイバカプラ11に入力され、受光装置14に入力される。
【0024】
受光装置14は、分光装置であり、測定光と参照光との干渉波形や、多重反射される測定光の干渉強度の波長特性を測定する装置である。干渉強度は、光源10から出力される多数のパルス光の干渉波形の光強度の足し合わせである。つまり、干渉強度は、各周波数成分毎に、同一周波数の参照光の光強度の時間関数(正弦波)と測定光の光強度の時間関数(正弦波)との和の振幅(光路差の関数)となる。したがって、干渉強度も周波数(波長)の関数となる。受光装置14としては、波長により回折角が変換する回折格子と、回折された光(干渉強度)を受光するCCDで構成することができる。CCDの受光位置により波長を、受光強度により干渉強度を特定することができる。また、モノクロメータで波長スペクトルを測定しても良い。
【0025】
干渉波形解析装置15は、受光装置14により測定された干渉強度の波長スペクトルA(λ)を、波数スペクトルによる干渉強度I(k)に変換した後、干渉強度I(k)を逆フーリエ変換し、その結果から測定物16の厚さや温度を演算する装置である。ただし、k=2π/λである。この干渉波形解析装置15は、コンピュータシステムにより構成されている。図3は、実施例1の干渉測定装置1の受光装置14により得られた干渉強度の波長スペクトルA(λ)を表している。次に、干渉波形解析装置15により、波数スペクトルI(k)が逆フーリエ変換される。
【0026】
次に、本発明の原理について説明する。測定光は測定物16の裏面(Si基板160側の露出面)に垂直に照射され、測定物16の裏面、Si基板160とSiO2 膜161との界面、測定物16表面(SiO2 膜161側の露出面)により多重反射されて、受光装置14にはこれらの多重反射光が入射する。光源10から受光装置14に至る測定光の光路長を2zn ,2zm とし、参照光の光路長2zR とする。光路長を2zn ,2zm 、2zR で表しているのは、zn −zR ,zn −zm が、測定物16のSi基板160や、SiO2 膜161の厚さを表すようにするためである。n,mは、測定物16の第n,m界面で反射される測定光に付された識別番号である。受光装置14における波数kの測定光の電界成分は、次式で表される。
【数1】

【数2】

ここで、s(k,ω)は、光源の電界の振幅、rn は、測定物16の各界面での電界反射率である。干渉強度I(k)は次式で表される。
【数3】

【0027】
ここで、Idc(k)は、光路差に依存しない直流成分項、Iac(k)は、測定光と参照光との干渉(以下、相互相関という)による干渉強度成分(以下、相互相関成分という)項と、Icc(k)は測定物16の多数の反射光自身の干渉(以下、自己相関という)による干渉強度成分(以下、自己相関成分という)項であり、それぞれ、次式で表される。
【数4】

【数5】

【数6】

【0028】
ここで、S(k)は光源のパワースペクトルであり、Rn は、測定物16の各界面での強度反射率であり、次式が成立する。
【数7】

【数8】

【0029】
(3)式で表される干渉強度I(k)の逆フーリエ変換を次式で定義する。(3)式のそれぞれの項の逆フーリエ変換の和で表される。
【数9】

cos(kz0 )の逆フーリエ変換は、δ関数であり、k空間での関数の積の逆フーリエ変換は、それぞれの関数の逆フーリエ変換関数の畳み込み積分で表される。よって、次式が成立する。
【数10】

【数11】

【0030】
(11)式のx(z)とy(z)との結合子は、畳み込み積分演算子を表している。また、(10)、(11)式の左辺と右辺とを結合する記号は、相互に、フーリエ変換であることを示している。(10)、(11)式を用いると、直流成分項Idc(k)の逆フーリエ変換idc(z)、相互相関成分項Iac(k)の逆フーリエ変換iac(z)、自己相関成分項Icc(k)の逆フーリエ変換icc(z)は、それぞれ、次式で表される。なお、直流成分idc(z)、相互相関成分iac(z)、自己相関成分icc(z)は、それぞれ、干渉強度の空間分布を表している。
【数12】

【数13】

【数14】

【0031】
ここで、γ(z)は、光源10から出力される光のパワースペクトル密度S(k)の逆フーリエ変換、すなわち、光強度の空間波形である。パワースペクトル密度をガウス関数と仮定する。
【数15】

となり、(15)式の逆フーリエ変換は、次式となる。
【数16】

ここで、lc は、光源のコヒーレント長を表し、次式で表される。
【数17】

【0032】
(12)式から直流成分idc(z)は、z0 =0 を中心にして、関数γ(z)が現れる関数である。(13)式より、相互相関成分iac(z)は、(Rn 1 /2倍された関数γ(z)が±2(zR −zn )を中心位置として現れる関数である。すなわち、測定物16の各界面で反射された測定光の光路長の参照光の光路長に対する光路長偏差の位置に、γ(z)が現れる関数となる。また、自己相関成分icc(z)は、(Rn m 1 /2倍された関数γ(z)が±2(zm −zn )を中心位置として現れる関数である。
【0033】
干渉強度の波数スペクトルI(k)の逆フーリエ変換である関数i(z)を図示すると、図4のようになる。各ピークの位置±2(zR −z1 )、±2(zR −z2 )、±2(zR −z3 )、…が得られる。±2(zR −z1 )は、Si基板160の裏面(前面)で反射された測定光と参照光との干渉により得られた干渉強度から求まる値である。±2(zR −z2 )は、Si基板160とSiO2 膜161との界面で反射された測定光と参照光との干渉により得られた干渉強度から求まる値である。±2(zR −z3 )は、SiO2 膜161の表面で反射された測定光と参照光との干渉により得られた干渉強度から求まる値である。そして、それらのピークの位置の間隔(z2 −z1 )、(z3 −z2 )が、Si基板160の厚さd1 、SiO2 膜161の厚さd2 を表している。
【0034】
【数18】

【数19】

である。このようにして、Si基板160、SiO2 膜161との厚さを測定することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、Si基板160の温度測定について説明する。ヒータによって測定物16のSi基板160を加熱して、実施例1の干渉測定装置1を用いてSi基板160の温度を測定した。本実施例では干渉測定装置1は温度測定装置である。所定温度におけるSi基板160の厚さ、線膨張係数及び屈折率は既知であり、線膨張係数及び屈折率の温度係数も既知であるとする。実施例1の方法でSi基板160の厚さを求め、既知の厚さとの偏差が温度によるものとして、温度を測定するものである。
【0036】
具体的には、干渉波形解析装置15によって、以下のようにして測定した。温度がT0 からΔT変化したときの測定光の光路長の変化量ΔLは、温度T0 におけるSi基板160の屈折率をn0 、厚さをd1 (T0 )、線膨張係数をα、屈折率の温度変化の係数をβとして、次式で表される。
【数20】

【数21】

1 (T0 )は、正確に温度が分かっている時の温度T0 でのSi基板160の厚さの上記の測定値である。d1 (T0 +ΔT)は、温度が不明である場合のSi基板160の厚さの上記の測定値である。
よって、ΔTは次式により求められる。
【数22】

【0037】
図5は、温度T0 +ΔTと、Si基板160の厚さd1 (T0 +ΔT)との関係を測定した結果である。Si基板160の温度の測定結果、0〜600℃の範囲で測定値は理論値にほぼ一致しており、高精度にSi基板160の温度を測定できることがわかった。同様にして、SiO2 膜161の温度を測定することも可能である。(22)式において、実施例1で求めた厚さd2 (T0 +ΔT)、d2 (T0 )が、d1 の代わりに用いられる。
【実施例3】
【0038】
次に、参照光を用いずに、測定物16の厚さ、温度を測定する干渉測定装置2及び方法について説明する。図6に示すように、光源10から出力されたパルス光を、方向性光結合20を用いて、測定物16に入射させる。そして、測定物16から反射された光は、方向性光結合器20に入射させて、受光装置14へ導く。他の構成は、図1の干渉測定装置1と同一である。また、方向性光結合20の代わりに、ハーフミラーを用いても同様な装置を構成することができる。さらに、図1の構成において、ミラー12の代わりに、光吸収物質を置くか、参照光の光学系を排除するようにしても良い。
【0039】
受光装置14で測定される(3)式で表される干渉強度I(k)には、(5)式の相互相関項Iac(k)が存在しない。その結果、干渉強度I(k)の逆フーリエ変換による干渉強度の空間分布関数i(z)は、(12)式の直流成分と、(13)式の自己相関成分だけとなる。この空間分布関数i(z)は、図7に示すものとなる。各ピークの位置±2(z1 −z1 )、±2(z3 −z2 )、±2(z2 −z1 )、±2(z3 −z1 )…と、小さい順に現れる。±2(z1 −z1 )は、直流成分から求まる値である。±2(z3 −z2 )は、SiO2 膜161の表面で反射された測定光とSi基板160とSiO2 膜161との界面で反射された測定光との干渉により得られた干渉強度から求まる値である。(19)式により、SiO2 膜161の厚さd2 を求めることができる。また、±2(z2 −z1 )は、Si基板160とSiO2 膜161との界面で反射された測定光とSi基板160の裏面(前面)で反射された測定光との干渉により得られた干渉強度から求まる値である。(18)式により、Si基板160の厚さd1 を求めることができる。±2(z3 −z1 )は、SiO2 膜161の表面で反射された測定光とSi基板160の裏面(前面)で反射された測定光との干渉により得られた干渉強度から求まる値である。(z3 −z1 )により、Si基板160の厚さとSiO2 膜161の厚さの和(d1 +d2 )を求めることができる。
【0040】
また、自己相関のみにより温度測定も上記と同様にして可能である。自己相関から求めた光路長差と温度との関係の測定結果を図8に示す。精度の高い温度測定が得られたのが分かる。
【0041】
なお、上記実施例では、干渉強度の波数スペクトルI(k)を測定して、これを空間座標zに逆フーリエ変換して、その結果から測定物の厚さと、温度とを測定するようにしている。この他、受光装置14により検出される干渉強度の波長スペクトルA(λ)を、周波数スペクトルB(ω)に変換し、周波数スペクトルB(ω)を、時間座標に、逆フーリエ変換しても良い。この場合には、上述した各式において、空間座標zを時刻t、波数kを角周波数ωに、置換すれば良い。γ(ω)が、光強度の周波数特性、γ(t)が光強度の時間特性、すなわち、パルス波形となる。そして、zr −zn 、zn −zm は、tr −tn 、tn −tm となる。これらは、参照光と測定光の受光装置14における伝搬遅延時間差、測定光の多重反射光の間の伝搬遅延時間差を表している。これに、測定物内での光速度c/nを考慮して、d1 =(t2 −t1 )c/n1 、d2 =(t3 −t2 )c/n2 により、Si基板160の厚さd1 、SiO2 膜161の厚さd2 を求めることができる。温度は、これらの厚さが求まるので、上記(22)式により求めることができる。
【0042】
なお、上記実施例では、測定物16としてSi基板160上にSiO2 膜161を形成したものを用いたが、本発明の干渉測定装置は、SC光を反射可能な任意の材料からなる測定物からの反射による測定物の温度、厚さの測定に利用することができる。また、実施例の温度測定装置は、Si基板などの基板上にSiO2 などの絶縁膜や、半導体膜、金属膜などの薄膜を成膜するプロセスの最中において、薄膜の温度測定を行うことに用いることができる。また同時に薄膜の厚さを測定することで、薄膜の成長速度を測定することも可能である。また、同様に、薄膜をエッチングするプロセスの最中においても、薄膜の温度測定と同時に薄膜の厚さを測定することで、エッチング速度を測定することも可能である。また、実施例では、ミラー12の位置を、位置調整装置13によって調整可能にしたが、逆にミラー12を固定し、測定物16を移動し得るようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の温度測定装置は、半導体プロセスにおけるなどに用いることができ、絶縁膜や半導体膜などの薄膜の成膜プロセス中において、薄膜の厚さや温度測定を行うのに用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
10:光源
11:光ファイバカプラ
12:ミラー
13:位置調整装置
14:受光装置
15:干渉波形解析装置
16:測定物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定物の厚さ又は温度を光の干渉により測定する干渉測定装置において、
低コヒーレンス光を放射する光源と、
前記低コヒーレンス光を、前記測定物に照射する測定光と、参照光とに分割する分割手段と、
前記測定光を前記測定物に照射して、その反射光と前記参照光とを干渉させる干渉手段と、
前記参照光と前記測定光の前記反射光との干渉波形のスペクトルを求めるスペクトル検出手段と、
前記スペクトル検出手段により検出されたスペクトルを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換手段と、
前記逆フーリエ変換手段による出力から前記厚さ又は厚さから得られる温度を演算する測量手段と、
を有することを特徴とする干渉測定装置。
【請求項2】
測定物の厚さ又は温度を光の干渉により測定する干渉測定装置において、
低コヒーレンス光を放射する光源と、
前記測定光を前記測定物に照射して、その反射光のスペクトルを求めるスペクトル検出手段と、
前記スペクトル検出手段により検出されたスペクトルを逆フーリエ変換する逆フーリエ変換手段と、
前記逆フーリエ変換手段による出力から前記厚さ又は厚さから得られる温度を演算する測量手段と、
を有することを特徴とする干渉測定装置。
【請求項3】
前記低コヒーレンス光のコヒーレンス長は、0.5μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の干渉測定装置。
【請求項4】
測定物の厚さ又は温度を光の干渉により測定する干渉測定方法において、
低コヒーレンス光を、前記測定物に照射する測定光と、参照光とに分割し、
前記測定光を前記測定物に照射して、その反射光と前記参照光とを干渉させ、
前記参照光と前記測定光の前記反射光との干渉波形のスペクトルを求め、
求められた前記スペクトルを逆フーリエ変換し、
前記逆フーリエ変換の結果から前記厚さ又は厚さから得られる温度を演算する
ことを特徴とする干渉測定方法。
【請求項5】
測定物の厚さ又は温度を光の干渉により測定する干渉測定方法において、
低コヒーレンス光を、前記測定物に照射して、その反射光のスペクトルを求め、
求められた前記スペクトルを逆フーリエ変換し、
前記逆フーリエ変換の結果から前記厚さ又は厚さから得られる温度を演算する
ことを特徴とする干渉測定方法。
【請求項6】
前記低コヒーレンス光のコヒーレンス長は、0.5μm以上、100μmであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の干渉測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−209223(P2011−209223A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79272(P2010−79272)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度採択課題、文部科学省、知的クラスター創成事業「東海広域ナノテクものづくりクラスター構想」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【出願人】(508016295)NUシステム株式会社 (4)
【Fターム(参考)】