説明

原稿両面搬送ユニットにおける離間機構付ローラーの制御方法

【課題】 両面搬送装置を用いた読み取り動作中に、、キャンセル動作が入ったときはすぐにモーターの駆動を停止し、かつ、排紙ローラーの初期化が可能と判断された時に排紙ローラーを閉じる駆動を行なって、離間したたまま放置されることを防ぐ。
【解決手段】 停止命令があった直後に排紙ローラーの初期化を行なわず、搬送路内の原稿が除去されたと判断できる状態になってから、改めて排紙ローラーの初期化を行なう。この排紙ローラーの初期化ができるかどうかの判断は、一定時間おきに行なう。また、排紙ローラーを閉じるために必要なモーターの駆動が、どこまで行なわれたかを保存しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿両面搬送ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
原稿両面搬送ユニットの多くは、排紙口が反転のための給紙口を兼ねている構造になっている。原稿の両面に対して読み取りなどの動作をする場合、まず原稿を原稿台まで搬送して表面の処理を行なったあと、排紙口近くにあるローラー(以下、排紙ローラーとする)で原稿を逆方向に搬送してもう一度原稿台上に送り込み、裏面の処理を行なう。例えば、特許文献1がこれにあたる。
【0003】
従って、排紙ローラーと原稿台までの距離が充分でないと、裏面の処理中に排紙ローラー上で搬送すべき原稿の先端と下端が重なり、原稿が搬送できなくなる。これを解決するために、排紙ローラーはモーターの駆動にあわせて周期的に離間する機構となっている。
【0004】
排紙ローラーの離間機構は、ローラーについたギアなどで、排紙ローラーの上部を持ち上げることで実現されている。ここで、搬送中にキャンセルされるなどしてモーターの駆動が中途半端な位置で停止してしまうと、排紙ローラーは離間したままとなり、この状態のまま放置されると、持ち上げている部品に負荷がかかり、故障の原因となる。
【0005】
従って、動作終了後に必ず排紙ローラーが離間していないかどうか(以下、離間していない状態を閉じている、とする)確認し、離間している(以下、離間している状態を開いている、とする)ならば、それを閉じるためのモーター駆動を入れる必要がある。
【0006】
このため両面搬送ユニットにおいて、例えば両面印刷機能を持つプリンターは、キャンセル動作などが入ってもすぐにはモーターの駆動は停止せず、印刷用紙を排紙し、この駆動で同時に排紙口を閉じてから終了するように設計されている。また、以上を検知して動作を自動的に停止する際も、エラー検知後すぐにはモーターの駆動は停止せず、排紙ローラーを閉じるための駆動がなされる。この時、モーターの駆動をどのようにするかは、排紙ローラーの状態と、排紙ローラーの離間と同じモーターを駆動元とする他のローラーの状態とで決定されている。
【0007】
従来では、キャンセル動作などの搬送動作を停止させるための命令が実行されても、原稿の搬送路内の状態に関わらず、排紙ローラーが閉じるまでモーターを駆動させて(以降、排紙ローラーが閉じるまでモーターを駆動させることを、排紙ローラーの初期化とする。)終了していた。しかし、この方法は内部の原稿の状態を考慮していないため、キャンセル時に搬送路内に原稿が残っていた場合、モーターを駆動させている間に原稿を著しく損なう可能性がある。
【特許文献1】特開平9−86807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
両面搬送装置を用いた読み取り動作中に、キャンセルなどの停止命令があったときは、搬送路内の原稿を破損から守ることを考えれば、モーターを完全に停止してしまうことが望ましい。しかし、この場合、排紙ローラーが離間したままになってしまうことがある。このまま電源が切られるなどして長い期間放置されると、排紙ローラーを離間させている部品に負荷がかかり、破損の原因となる。
【0009】
しかし、キャンセル動作直後に排紙ローラーの初期化を行なえば、今度は搬送機器内の原稿を破損してしまう。
【0010】
本発明は、キャンセル動作が入ったときはすぐにモーターの駆動を停止し、かつ、排紙ローラーの初期化が可能と判断された時に排紙ローラーを閉じる駆動を行なって、離間したたまま放置されることを防ぐ。
【課題を解決するための手段】
【0011】
停止命令があった直後に排紙ローラーの初期化を行なわず、搬送路内の原稿が除去されたと判断できる状態になってから、改めて排紙ローラーの初期化を行なう。この排紙ローラーの初期化ができるかどうかの判断は、一定時間おきに行なう。
【0012】
また、排紙ローラーを閉じるために必要なモーターの駆動が、どこまで行なわれたかを保存しておく。
【0013】
例えば、排紙ローラーの初期化に10000パルス分のモーターの正転が必要だった場合を考える。搬送機器を使用した動作が5000パルス分モーターを正転させたところで停止されたとする。制御手段は、この排紙ローラーの初期化が5000パルス分は終了したことを記憶手段に記憶させ、排紙ローラーの初期化が可能と判断された時に、残りの5000パルスの正転を実施する。
【0014】
さらに、この「残りの5000パルス」の正転の実行中も記憶手段に正転量を保存させる。「残り」正転が何らかの理由で2000パルスのところで停止してしまった場合は、さらにその後で初期化が可能となった時に、「残り」の残りの3000パルスを正転させることで、排紙ローラーの初期化を行なう。
【発明の効果】
【0015】
排紙ローラーが離間したままになってしまうことを極力少なくすることができ、かつ原稿などの搬送対象などの破損を防ぐことができる。
【0016】
さらに、排紙ローラーの初期化が途中で中断されても、その「中断された」という情報は保存される。後に再び初期化が実行可能と判断された時に、その残りの動作が実施されることで、排紙ローラーの初期化にかかる時間を短縮する。また、モーターなその他部品は、使用すれば使用されるほど疲弊していく。排紙ローラーの初期化のための駆動をなるべく少なくすることで、この疲弊による劣化を小さくする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図4を用いて、ADFを用いた通常の読取動作を説明する。
【0018】
同図において、スキャナ部419は、光学ユニット418と、画像処理部406と、駆動ローラー414およびモーター413と、モータードライバ412と、先端検出センサ415と、原稿センサ416と、アンプ410と、A/D変換器411とを備える。
【0019】
光学ユニット418は、原稿および白基準を照射するランプ407と、ランプ407を駆動する点灯回路408と、原稿および白基準の反射光を受光するイメージセンサである例えばCCD409とを備える。
【0020】
スキャナ部419は、データバス417によって制御部とつながっている。
【0021】
制御部にはCPU401と、ROM402と、RAM403と、EEPROM404と、I/F制御部405とが接続されている。
【0022】
画像処理部406は前述のCCD409と、アンプ410と、A/D変換器411とを経由して画像処理を実行する。
【0023】
CPU401は点灯回路408、モータードライバ412、RAM403の書き込み読み出し、EEPROM404の書き込み読み出し、I/F制御部405の制御を行なう。
【0024】
ROM402はCPU401を制御するためのプログラムを格納している。また、RAM403は読取られた画像読取り生データ等を一旦格納する。さらに、EEPROM404は、ハード電源を落としても保存されるべき情報を記憶している。
【0025】
CPU401は、ROM402からプログラムを読み出し、モータードライバ412にモーターの駆動パルスを送信する。これによってモーター413が駆動し、それによって駆動ローラーが動いて原稿を搬送する。同時に、CCD409に読取のタイミングをとるパルスを送信し、その瞬間のCCD409の出力を保存する。得られた出力はA/D変換機411によってデジタルデータとされた後、画像処理部406によって処理が施され、最後にRAM403に保存される。
【0026】
RAM403に保存されたデータは、未記入の他のデバイスによって読み出され、画像データとして使用される。
【0027】
図3に示すADF断面図を用いて、ADFの読み取り動作を解説する。
【0028】
図3の読取位置の下には、ADFによるスキャン動作が行なわれる時には読取のためのセンサが待機している。これは、図4における光学センサ部418に相当する。
【0029】
ピックアップローラー301は、原稿を積載台307からADF搬送路304に引き込む機能を持っている。
【0030】
搬送ローラー302は、読み取り中の原稿を搬送する。
【0031】
排紙ローラー303は、読み子が終わった部分から順に原稿をADF外に排紙する。
【0032】
ピックアップローラー301、搬送ローラー302、排紙ローラー303は同じ一つのパルスモーター(未記入)によって駆動する。
【0033】
搬送路304は、原稿が通過する径路である。両面読み込みを行なう際にも、表面も裏面もこの径路を通る仕組みになっている。
【0034】
反転パス305は、原稿の両面読み込みを行なう際にのみ使用される径路である。原稿の裏面を読み込む直前のみ、原稿はこの径路を通ることになる。
【0035】
原稿センサ306は、積載台上に、原稿が有るか無いかを判断するためにあるセンサである。図中にはその明確な記載はないが、センサの位置のみが示してある。
【0036】
原稿先端センサ307は、原稿がADF内のどの位置にあるかを正確に把握するためにある。例えば、センサ307の出力を絶えずチェックしていて、モーターを駆動している時に出力がOFFからONに変化すれば、原稿の先端が搬送路305内に進入してきたことが分かる。さらに出力をチェックしつづけ、今度はONからOFFに変化した時は、原稿の後端がセンサ307を通り過ぎたと判断できる。
【0037】
積載台307は、一括して読み込む原稿を待機させておくための台である。ピックアップローラー301によって、ここに積載された原稿がADF内に取り込まれる。
【0038】
次に、各ローラーがどのように駆動して原稿を搬送するのかについて解説する。
【0039】
ピックアップローラー301は、モーターの駆動によって図2のような状態遷移をする。
【0040】
Pos_Aの状態にピックアップローラー301がある場合は、モーターを正転させれば、原稿をADF搬送路内に引き込むことができる。ただし、ピックアップローラー301の上下がしっかりと閉じているので、搬送開始直後にピックアップローラー301にはさまれていた原稿は搬送可能だが、搬送開始後に積載台にセットされた原稿を引き込むことはできない。ローラー301がPos_Bにあるときに、モーターを正転させることでこの状態に遷移する。
【0041】
Pos_Bは、Pos_Aに状態を移行するための通過ポジションである。ローラー301がPos_Dにあるときに、モーターを一定量逆転させることでこの状態に遷移する。この一定量をchangeパルスとする。
【0042】
Pos_Cは、ピックアップローラー301の待機状態である。このままモーターを回転しても原稿を搬送することはできないが、ピックアップローラーがこの状態であれば、積載台に置かれた原稿が、原稿センサ306にまで到達することができる。ローラー301がどのような状態にあっても、モーターをopenパルス逆転させることでこの状態に遷移する。
【0043】
Pos_Dは、モーターを正転させても原稿センサ306上の原稿を搬送路内に引き込みたくない場合に用いる状態である。ローラー301がPos_Cにあるときに、モーターを正転させるとこの状態に遷移する。
【0044】
搬送ローラー302は、モーターが正転しても逆転しても、同じ方向に回転して原稿を搬送する。
【0045】
排紙ローラー303は、モーターが正転すると原稿を下流側に排出する方向に回転し、モーターが逆転すると逆方向に回転する。逆方向に回転している間は、原稿を反転パス305に導くことができる。また、図5中のローラー506が回転することで、排紙ローラー303の片側が持ち上げられ、
以上のような動作を、一つのモーターでどのように実現するかを解説する。
【0046】
はじめに、ピックアップローラー301の状態遷移と、モーターの駆動の関係について解説する。
【0047】
図5において、ローラー500は、モーターと直接つながっているモーターである。
【0048】
ローラー501aと、ローラー501bは、ローラー502をそれぞれ正転、逆転させるためのローラーである。
【0049】
ローラー502は、ピックアップローラー301を駆動させるためのローラーである。
【0050】
ローラー503は、ローラー504aと504bを駆動させるためのローラーである。
【0051】
ローラー504aは、通常状態でモーターが回転している場合にローラー506とかみあっている。
【0052】
ローラー504bは、特殊な状況下でのみローラー506とかみあう。
【0053】
ローラー505は、排紙ローラー303を駆動させるためのローラーである。
【0054】
ローラー506は、排紙ローラー303を離間させるローラーである。ローラー506が回転すると、排紙ローラー303の片側が、ローラー506についているギアに持ち上げられて離間する。さらに回転すると、排紙ローラー303は元に戻る。ローラー506が一回転すると、排紙ローラー303は一度離間してから元に戻る。この、ローラー506が排紙ローラー303の片側を持ち上げている状態で停止すると、ローラー503についているギアに負荷がかかってしまう。
【0055】
ローラー507は、ローラー505を駆動させるモーターである。
【0056】
ローラー508は、ローラー511と512を駆動させる。
【0057】
ローラー509は、ローラー510を駆動させる。ローラー509は、ローラー511と512によっていつも一定方向にしか回転しない。
【0058】
ローラー510は、搬送ローラー302を駆動している。ローラー509が一定方向にしか回転しないので、ローラー509も一方方向にしか回転しない。
【0059】
ローラー511は、ローラー509を回転させるためのローラーである。
【0060】
ローラー512は、ローラー509を回転させるためのローラーである。
【0061】
図5において、ローラー502が正転すると、ピックアップローラー301は正転して、このとき積載台にある原稿が引き込まれる(Pos_Aの状態)。また、ローラー502が逆転すると、ピックアップローラーは逆転して先が持ち上がったような状態になり、このとき原稿はセンサ306に到達できるようになる(Pos_Cの状態)。
【0062】
モーター500が正転すると、ローラー501aがローラー502とかみ合い、ローラー502が正転するようになる。また、モーター500が逆転すると、ローラー501bがローラー502とかみ合い、ローラー502が逆転する。モーター500が逆転してから正転すると、ローラー501aとローラー501bのどちらもローラー502とかみ合わず、このときローラー502は駆動しない(Pos_Dの状態)。ローラー502が駆動しない状態になってから、再び正転中に501aとかみ合うようにするためには、モーター500をchangeパルス逆転してから正転する必要がある。
【0063】
搬送ローラー302は、ローラー510によって駆動されている。ローラー509はモーターが正転しても逆転してもローラー11とローラー12によって、モーターが正逆どちらの方向に駆動しても、いつも一定方向に回転する。
【0064】
排紙ローラー303は、ローラー305と306によって構成される。排紙ローラー303はローラー505によって駆動し、ローラー506によって離間する。
【0065】
ローラー505は、モーター500が正転すれば正転して、逆転すれば逆転する。
【0066】
ローラー506が回転すると、506と同軸にあるローラーについているギアの突起が排紙ローラー303の上側を持ち上げ、ローラーを離間させる。さらに506が回転すると、突起は通り過ぎるので排紙ローラー303の上側はまた下側と接するようになる。このような機構で排紙ローラー303の離間は行なわれる。
【0067】
ローラー506は、通常はローラー504aとかみ合っている。しかし、ローラー506とローラー504aのかみ合う部分は、506側の方の歯が一部かけている。そのため、この歯が欠けた部分でローラー506と504aがかみ合っていると、ローラー506は回転しない。歯が欠けているのはローラー506の外周一周のうち一部であり、ローラー506と504aが歯の欠けていない部分でかみ合っていれば、ローラー506はモーター500が駆動することで回転する。このとき、モーターがどちらの方向に駆動しても、504aは一定の方向に回転する。
【0068】
モーターがchangeパルス逆転すると、ローラー506とローラー504bが、かみ合うようになる。ローラー504bと506のかみ合う部分は、歯が欠けていないため、この両者がかみ合うことでローラー506は回転するようになる。(以下、この状態を「離間トリガがかかった状態」と表現する)この状態でモーターの逆転が正転になると、今度はローラー504aによって506は回転し、一回転して停止する(506の、歯がない部分に到達するため)。506が回転することで、排紙ローラー303の片側が、506についているギアに持ち上げられ、結果排紙ローラー303は離間する。
【0069】
図3は、ADF搬送路の断面図である。中の各部品について、簡単に説明する。
【0070】
原稿は、積載台307から搬送路305を通り、最後は排紙ローラー303によってADF外に排紙される。この間、読み取り位置308に配置された読み取りセンサ(図4中の光学ユニット418にあたる)で原稿上の画像が保存される。
【0071】
図3に図示された搬送ユニットと図4に図示された読取システムによって原稿片面読み込みを行なう場合、その動作は以下のようになる。
【0072】
1.光学センサ部418が、図3中の読み取り位置308に移動する
2.図3中のピックアップローラー301が、積載台307上の原稿を一枚ずつ分離して搬送路305にとりこむ
3.搬送ローラー305に原稿の先端が到達する。
【0073】
4.読み取り位置308に配置されたセンサによって原稿が読み取られる。この間の原稿の搬送は、搬送ローラー302とピックアップローラー301である
5.原稿の先端から、排紙ローラー303によってADF外に排紙される。
【0074】
また、同システムによって原稿の両面読み取りが行なわれる場合、以下のような手順で行なわれる。
【0075】
1.ピックアップローラー301によって、原稿がADF内に引き込まれる。
【0076】
2.搬送ローラー302によって、原稿が搬送路4を通って読み取り位置308に達し、その後排紙ローラー303まで搬送される。
【0077】
3.排紙ローラー303で原稿の先端から外に排紙されていく
4.原稿の読取終了後、排紙ローラーによって原稿が搬送され、後端のみ排紙ローラー303に、はさまれた状態で停止する。
【0078】
5.排紙ローラーが逆回転することで、原稿が反転路305に引きこまれる
6.そのまま原稿が搬送路304に引き込まれ、裏面が読み込まれ、読取終了後、排紙される。
【0079】
ここで、駆動モーターをopenパルス逆転させると、排紙ローラー303を離間させるためのトリガがかかる。その後モーターを駆動させると、それに排紙ローラー303の上下に配置されたローラー間の幅は段々大きくなっていき、一度開ききってしまった後は、また駆動に応じて閉じた状態に戻っていく。この周期をcloseパルスとする。再び排紙ローラー303の離間トリガがかかるのは、もう一度モーターがopenパルス分逆転した後になる。従って、排紙ローラー303を動作後閉じる処理(排紙ローラーの初期化)を確実にするためには、逆転の動作後に、モーターをcloseパルス以上正転させればよい。
【0080】
そのために、モーターが駆動するたびに、モーターの逆転が入ったか、それは何パルスだったか、また、その逆転駆動回転数がopenパルス以上であれば、そのあとの正転数はいくつであったかを保存する必要がある。
【0081】
本発明では、図1のフローを使ってこれを行なう。
【0082】
このフローは、パルスモーターを駆動させるパルスが何パルスだったか、正逆どちらの方向に発生させたかを、記憶していくものである。図中、drv_cntに、排紙ローラー303の離間トリガがかかってからの正転量が保存される。初期化を行なう際には、排紙ローラー303の初期化に必要な正転数からdrv_cntの値を、引いた値が用いられる。また、rev_cntには逆転量が保存される。rev_cntがopen以上になった時、排紙ローラーが離間するトリガがかかったと判断する。
【0083】
このフローでは、離間するトリガがかかったところからdrv_cntをカウントするために、トリガがかかったと判断された時にdrv_cntを0にする。
【0084】
モーターの駆動命令が出されると、まず01で回転方向がどちらかが判断される。逆転であった場合は、排紙ローラー303の離間トリガがかかっているかどうかを03で判断する。逆転が連続でopenパルス以上されていない場合は、トリガはかかっていないのでrev_cntを駆動パルス分増やす(07)。トリガがかかっていた場合は、ここからdrv_cntをカウントするために各値を0にする(06)。
【0085】
駆動が正転だった場合も、まず排紙ローラー303の離間トリガがかかっているかという判断から始まる(02)。かかっていた場合は、そのままどちらの変数も0にして終了する(04)。rev_cntがopen以下の場合は、そのままrev_cntをカウントするどうかという判断をする。05のrev_cntがopen以上になる前に、drv_cntがopenになる、ということは、離間トリガがかかる前に、正転されてしまい、トリガがかからなかったと判断して次の08でrev_cntを0にする。09より、正転されたときは、その正転量だけdrv_cntがカウントされる。しかし、このように04や05で、トリガがかかったと判断された時にdrv_cntは初期化されるために、その値は排紙ローラー303の離間トリガがかかってからの正転量とみなすことができる。
【0086】
このようにしてモーターが駆動するたびにdrv_cntを保存する。
【0087】
動作が終了した際に、drv_cntがcloseパルスを超えていなければ、排紙ローラー303の初期化が必要と判断できる。
【0088】
初期化が必要と判断された後で、初期化が可能となった時に、排紙ローラー303の初期化を行なう。
【0089】
排紙ローラーの初期化が可能か否かの判断を以下のように設定する。
【0090】
(1) 搬送路内の原稿検知センサ307で原稿が検出されないこと
(2) 搬送路内の原稿検知センサ307で原稿の後端が検出されてから、モーターが一定パルス以上正転され、原稿が搬送路内に残っていないと確認できること
(3) 原稿センサ306に原稿がない、もしくはピックアップローラー301の状態が、Pos_Aにないこと
(4) 反転パス307に原稿がないこと
この4つの条件が満たされていれば、モーターを駆動しても原稿が搬送路内に進入してくることはない。
【0091】
(1)の条件については、定期的に原稿センサ306と原稿先端センサ307に原稿がないかを定期的にチェックする事で解決される。
【0092】
(2)の条件については、モーターが駆動するたびに原稿先端センサ307の状態をチェックして、原稿の位置を管理することで解決される。具体的な方法は、センサ307の状態が、モーターを駆動中に原稿なし状態(以下、OFF状態とする)から原稿あり状態(以下、ON状態とする)に変化すれば、モーターの駆動中に原稿が搬送路内に進入してきたと判断できる。さらに、その後の駆動パルス数を駆動毎に更新していけば、原稿の先端がどこにあるかをその駆動数から知ることができる。同様に、モーターの駆動中にセンサ307の出力がON状態からOFF状態に変化すれば、原稿が搬送路を通過した、と判断できる。さらに、その後の駆動数から原稿の後端の位置を推定することができる。センサ307から排紙ローラー303の距離は常に一定なので、センサ307がOFF状態になってからの駆動パルス数がその距離に達すれば、原稿は排紙ローラー303を通過したと判断し、搬送路内にないと判断できる。
【0093】
(3)の条件については、ピックアップローラー301の状態を以下のようにしてソフト的に保存しておくことで解決する。モーターが駆動するたびに、ピックアップローラー301がどの状態にあるかを更新する。電源立ち上げ時のソフト的な初期状態は暫定的にPos_Cとし、電源立ち上げ時にも排紙ローラー303の初期化を行い、その後ピックアップローラー301の状態をPos_Cにするためにモーターをinitパルス逆転させる。このような初期動作を行なってからピックアップローラー301の状態を更新していくことで、電源立ち上げ時の状態が分からなくても、確実にピックアップローラーの状態を追跡できるようにする。
【0094】
(4)の条件については、(2)と同様の方法で、反転パスに原稿が入った時と出た時を保存することでチェックすることができる。反転パスに入るタイミングは、反転パスに入るための逆転をモーターが始めた時とすることができる。原稿は裏面読み取り時もセンサ307を通過することから、原稿が反転パスにあるのは、反転パスに原稿が入ってからセンサ307を通過するまで、と判断できる。この間、ソフト的なフラグを立てておけば、そのフラグが立っていないことを(4)の条件とできる。
【0095】
読み取り動作終了後にdrv_cntがcloseパルスを超えていなかった場合、これら(1)〜(4)の条件をチェックする。全てが真であるとき、排紙ローラーの初期化を行なう。
【0096】
具体的にすると、読取動作が終了した際に図1のフロー中のdrv_cntが6000パルスだったとする。この場合は、残りのclose - 6000パルスのモーター正転駆動を行なう。
【0097】
さらに、この閉鎖動作自体が停止された場合も同様にdrv_cntは増加しているので、またその後で条件がそろった時に、close - drv_cnt分のパルスの正転が行なわれる。
【0098】
以上のような処理を行なうことで、排紙ローラーが離間したまま長期間に渡って放置されることを極力避けることができる。
【0099】
さらに、ピックアップローラー301は駆動モーターの回転によって図2のように遷移する。ここで、Pos_Aの状態以外ピックアップローラーは原稿を搬送路に導くことができない。しかし、Pos_Cの状態になっていないと、原稿センサ306に原稿が届かない。排紙ローラー303の初期化のあとは、ピックアップローラーの状態はPos_AもしくはPos_Dである。この状態からピックアップローラー1をPos_Cにするためには、モーターを逆回転すればよいので、このために排紙ローラー303の初期化が終わったあと、モーターを逆転させる。この状態では、排紙ローラー303の離間トリガはかかっているが、まだ離間自体は始まっていないので、このまま放置されても部品が破損することはない。(ローラー504bがローラー506とかみ合っただけの状態であり、まだローラー506のギアは排紙ローラー303の片側を持ち上げていない)
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】パルスモーターが駆動した量を保存するためのフローチャートである。
【図2】実施例中のピックアップローラーの状態遷移図である。
【図3】実施例中の両面ADF搬送ユニットの断面図である。
【図4】実施例中のADFスキャナの概略図である。
【図5】実施例中のモーターとその駆動するローラーの配置図である。
【符号の説明】
【0101】
301 ピックアップローラー
302 搬送ローラー
303 排紙ローラー
304 搬送路
305 反転パス
306 原稿センサ
307 原稿先端センサ
308 読み取り位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の薄い搬送対象の両面側に対し読み取りや書き込みの動作を行なうための搬送機器において、
搬送対象を複数部積載するための積載台を持ち、
前記搬送装置は通常の搬送のための搬送路と、対象の裏面に対して動作を行なうための、対象を反転させるための搬送路(以下、反転パス)を持ち、
前記搬送装置は幾つかの搬送のためのローラーを持ち、
前記搬送装置は、前記ローラーの駆動源となるモーターを持ち、
前記搬送装置は、前記モーターを駆動させるのためのモータードライバを持ち、
前記搬送装置は、両面搬送を可能にする制御装置を持ち、
第一のローラーは、搬送対象を搬送路内で一方向に移動させるためのローラーであり、
第二のローラーは、搬送対象を搬送機器外へ送り出すためのローラーであり、かつ、前記反転パスに対象を引き込む機能を持ち、
第三のローラーは、前記積載台に積載された搬送対象を一枚ずつ分離し、搬送路内に順番に引き込む機能を持ち、
前記第一のローラーは、駆動源のモーターが正転しても逆転しても同じ方向に駆動し、
前記第二のローラーは、駆動源のモーターが正転すると排紙方向に駆動し、モーターが逆転すると前記反転パスに搬送対象を引き込む方向に駆動し、
前記第一のローラーと前記第二のローラーは、前記第二のローラーが搬送対象の反転のために前記反転パスに搬送対象を引き込んだあと、搬送対象が第一のローラーによってもう一度搬送されるよう設置され、
前記第二のローラーは、前記第一のローラーと前記第二のローラー間で搬送対象を引っ張りあってしまうことを防ぐため、離間する機能を持ち、
前記第二のローラーが離間を始めるトリガは、駆動源の前記モーターが一定量逆転することであり、
前記制御手段は、モーターを駆動した際に、その駆動数と方向を別々に保存しておく記憶手段をもち、
前記制御手段は、前記第二のローラーの状態を閉じた状態に初期化する手段をもち、
前記制御手段は、前記記憶手段に保存されたデータを用いて、前記第二のローラー初期化時の駆動量を変更する手段をもつことを特徴とする搬送機器。
【請求項2】
請求項1の搬送機器において、
前記制御手段は、前記搬送路内に設置した搬送対象検知センサによって、搬送対象が搬送路内で搬送できない状態になってしまったことを検知する手段を持ち、
前記制御回路には、前記検知センサによって異常を検知した場合に、搬送動作を停止する手段をもち、
前記制御手段は、前記搬送対象検知センサによって、前記第二のローラーを初期化できる状態か判断できる手段をもち、
前記制御手段は、搬送動作をユーザーが中止したい場合に、その動作を即停止する機能を持ち、
前記制御手段は、何らかの理由で搬送動作が停止したあと、前記第二ローラーが初期化できるか判断し、初期化ができるようになった時点で前記第二のローラーの初期化を行なうことを特徴とする搬送機器。
【請求項3】
請求項2の搬送機器において、
前記制御手段は、前記第二のローラーの初期化動作が中断された場合でも、その後初期化可能となれば、前記記憶領域に保存されたデータにもとづいて前記第二のローラーの初期化を行なうことを特徴とする搬送機器。
【請求項4】
請求項3の搬送機器において、
前記搬送機器は、幾つかの状態を持つ第三のローラーを持ち、
前記第三のローラーは、搬送動作や第二のローラーの初期化後に、その中の一つの状態に遷移される(以下、初期化される)必要があり、
前記制御手段は、第二のローラーの初期化後に第三のローラーの初期化を行なうことを特徴とする搬送機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−217103(P2007−217103A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38187(P2006−38187)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】