説明

反射防止フィルム、並びに該反射防止フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置

【課題】大量生産に適し、反射率が低く、防汚性、耐擦傷性に優れた塗布型の反射防止フィルムを提供すること、このような反射防止フィルムを偏光膜の保護フィルムとして用いた偏光板を提供すること、及びその最表面にこのような反射防止フィルム又は偏光板に用いることにより、表面の防汚性、耐擦傷性に優れ反射が防止された画像表示装置を提供すること。
【解決手段】主鎖に特定のポリシロキサン構造を有する構成成分及び側鎖に水酸基を含有する構成成分を含み、且つフッ素を含まない共重合体と、含フッ素共重合体とを含有する塗布液組成物を硬化させることによって形成された低屈折率層を有する反射防止フィルム、そのような反射防止フィルムが、偏光板における偏光膜の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられている偏光板、及びそのような反射防止フィルム又は偏光板がディスプレイの最表面に用いられている画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板及び、該反射防止フィルム又は該偏光板をディスプレイの最表面に用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)などのような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する様ディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止フィルムは、一般的には、支持体又はその上に形成されている高屈折率層の上に、適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低屈折率層の素材としては、反射防止性能の観点から、できる限り屈折率の低い素材が望まれ、同時にディスプレイの最表面に用いられるため高い防汚性、耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度を高めることが重要である。
【0004】
低屈折率層を形成するポリマーとして、低屈折率の含フッ素ポリマーを硬化させて用いることはよく知られているが、またその硬化手段も種々の方法が知られており、例えば水酸基等を有するポリマーを種々硬化剤によって硬化させることが一般に行われてきた(特許文献1〜3)。しかしながら、皮膜硬度の点で十分とはいえず、改良が望まれていた。
【0005】
材料の屈折率を下げる手段としては、上記の特許文献1〜3の様に(1)フッ素原子を導入する手段の他にも(2)密度を下げる(空隙を導入する)という手段もあるが、いずれも皮膜強度が損なわれ耐擦傷性が低下するという問題がある。
【0006】
低屈折率を保ちながら防汚性、耐擦傷性を大きく向上させる手段として、表面への滑り性付与が有効である。滑り性付与に対しては、フッ素の導入、珪素の導入等の手法が有効である。特に、低屈折率素材に対して少量のシリコーン系化合物を添加することにより、滑り性発現効果、防汚性向上効果及び耐擦傷性改良効果は顕著に現れる。しかし一方で、低屈折率層素材との相溶性、経時又は高温条件下でのブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写、これらに伴う性能の劣化、製造ラインの汚染等さまざまな問題があった。
【0007】
特に反射防止フィルムにおいては、相溶性不足によるヘイズ発生が光学性能を悪化させるため大きな問題である。また低屈折率層塗布後のフィルムを巻き取った際に、フィルムの裏面にシリコーン系化合物が付着することがあり、そのことがその後の加工工程に支障をきたすため大きな問題になっている。すなわち、シロキサン部位のみ効果的に表面に偏析させて、珪素に結合した残りの部位は低屈折率層皮膜中に効果的にアンカリングさせる技術が求められている。
【0008】
この問題に対して、シリコーン系マクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入した、含フッ素オレフィン共重合体及びその反射防止フィルム用途へ適用する技術(特許文献4〜7)が提案されている。
【特許文献1】特開昭57−34107号公報
【特許文献2】特開昭61−275311号公報
【特許文献3】特開平8−92323号公報
【特許文献4】特開平11−189621号公報
【特許文献5】特開平11−228631号公報
【特許文献6】特開2000−17028号公報
【特許文献7】特開2000−313709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの技術により皮膜の均一性、耐久性は大幅に向上するが、素材の滑り性を任意に制御しようとする際に、シリコーン系マクロアゾ開始剤量を増やす等、含フッ素オレフィン共重合体の製造段階において対処することが必要であり、煩雑であった。そのため、既存の含フッ素オレフィン共重合体に対し、滑り性を適宜に制御しうる技術の開発が求められていた。
【0010】
以上のような背景から、低屈折率層皮膜の均一性を損なうことなく、シリコーン成分の導入量を意のままに制御しうる技術が求められていた。
【0011】
本発明の目的は、第1に、大量生産に適した塗布型の反射防止フィルムを提供することであり、第2に、反射率が低く、防汚性、耐擦傷性に優れた反射防止フィルムを提供することにあり、第3に、偏光膜の保護フィルムとしてこのような反射防止フィルムを用いた偏光板を提供することに有り、第4に、その最表面にこのような反射防止フィルム又は偏光板に用いることにより、表面の防汚性、耐擦傷性に優れ反射が防止された画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、下記[1]〜[7]の本発明によって達成された。
【0013】
[1]主鎖に下記一般式(1)で表わされるポリシロキサン構造を有する構成成分及び側鎖に水酸基を含有する構成成分を含み、且つフッ素を含まない共重合体と、
含フッ素共重合体
とを含有する塗布液組成物を硬化させることによって形成された低屈折率層を有することを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(1)中、R11、R12は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。
【0016】
[2]フッ素を含まない共重合体が、下記一般式(2)で表される上記[1]に記載の反射防止フィルム。
一般式(2):
【0017】
【化2】

【0018】
一般式(2)中、Xは上記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を含む単位を表す。Yは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。R21は水素原子又はメチル基を表し、L21は単結合又は2価の連結基を表す。x〜zはそれぞれ各構成成分のモル分率(%)を表し、10≦x<100
、0≦y≦50、0<z≦50、0<y+z≦90を満たす値を表す。
【0019】
[3]含フッ素共重合体が、下記一般式(3)で表される上記[1]または[2]に記載の反射防止フィルム。
一般式(3):
【0020】
【化3】

【0021】
一般式(3)中、Rf11は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf12は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。Bは水酸基含有モノマーに基づく重合単位を表す。Aは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。a〜dはそれぞれ各構成成分のモル分率(%)を表し、30≦a+b≦90、5≦a≦90、0≦b≦70、0≦c≦50、10≦dを満たす値を表す。
【0022】
[4]低屈折率層を形成する塗布液組成物が、さらに水酸基と反応可能な架橋剤を含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の反射防止フィルム。
[5]架橋剤が1分子中に窒素原子に隣接する、アルコキシ基で置換された炭素原子が2個以上存在する化合物である上記[4]に記載の反射防止フィルム。
【0023】
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の反射防止フィルムが、偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
[7]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の反射防止フィルム、又は上記[6]に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明で用いられる組成物は、屈折率が低く、滑り性が付与され、強度に優れた皮膜を形成する。この組成物を硬化させて得られる低屈折率層を含有する反射防止フィルムは、反射防止性能が高く、防汚性、耐擦傷性にも優れており、基材との密着性にも優れる。この反射防止フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置は、外光の映り込みが十分に防止されているうえ、防汚性、耐擦傷性も高いという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<反射防止フィルム>
本発明の反射防止フィルムは、一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成成分、及び側鎖に水酸基を含有する構成成分を含み、且つフッ素を含まない共重合体と、含フッ素共重合体とを含有する組成物を硬化させることによって形成された低屈折率層を有している。該反射防止フィルムは反射防止層として低屈折率層のみからなる単層構成でもよく、また、中・高・低屈折率層、ハードコート層などと積層した多層構成の反射防止層を有していてもよい。好ましくは多層構成の形態であり、特に好ましくは中・高・低屈折率層の3層以上の層を積層してなる形態である。前もって透明な支持体上に反射防止層を形成して反射防止フィルムとしてから画像表示装置に配置することが好ましい。
【0026】
〔反射防止フィルムの代表的層構成〕
以下に、本発明の実施の一形態として好適な反射防止フィルムの基本的な構成を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1(a)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例であり、反射防止フィルム1aは、透明支持体2、ハードコート層3、高屈折率層4、そして低屈折率層5の順序の層構成を有する。高屈折率層4の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあ
ることが好ましく、低屈折率層5の屈折率は1.30〜1.44の範囲にあることが好ましい。
【0028】
本発明においてハードコート層は、このように高屈折率層とは別に設置されもよいし、高屈折率層の機能を併せ持つ高屈折率ハードコート層でもよい。またハードコート層は1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。さらにハードコート層はなくてもよい。従って、図1に示したハードコート層は必須ではないが、フィルム強度付与のためにこれらのハードコート層のいずれかが塗設されることが好ましい。低屈折率層は最外層に塗設される。
【0029】
図1(b)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの別の一例であり、反射防止フィルム1bは、透明支持体2、ハードコート層3、中屈折率6、高屈折率層4、低屈折率層(最外層)5の順序の層構成を有する。透明支持体2、中屈折率層6、高屈折率層4及び低屈折率層5は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0030】
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
【0031】
図1(b)のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記数式(1)、高屈折率層が下記数式(2)、低屈折率層が下記数式(3)をそれぞれ満足することがより優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
数式(1):(hλ/4)×0.7<n11<(hλ/4)×1.3
数式(2):(iλ/4)×0.7<n22<(iλ/4)×1.3
数式(3):(jλ/4)×0.7<n33<(jλ/4)×1.3
【0032】
数式(1)〜(3)において、hは正の整数(一般に1、2又は3)であり、iは正の整数(一般に1、2又は3)であり、jは正の奇数(一般に1)である。n1、n2及びn3は、それぞれ中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の屈折率であり、そして、d1、d2及びd3は、それぞれ中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。
【0033】
図1(b)のような層構成では、中屈折率層が下記数式(1−1)、高屈折率層が下記数式(2−1)、低屈折率層が下記数式(3−1)をそれぞれ満足することが、特に好ましい。ここで、λは500nm、hは1、iは2、jは1である。
【0034】
数式(1−1):(hλ/4)×0.80<n11<(hλ/4)×1.00
数式(2−1):(iλ/4)×0.75<n22<(iλ/4)×0.95
数式(3−1):(jλ/4)×0.95<n33<(jλ/4)×1.05
【0035】
なお、ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは、層相互の相対的な屈折率の高低をいう。また図1(b)では、高屈折率層を光干渉層として用いており、極めて優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる。
【0036】
〔低屈折率層〕
次ぎに、本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層について以下に説明する。 本発明における低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。
【0037】
さらに、低屈折率層は前記のように数式(3)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(3):(jλ/4)×0.7<n33<(jλ/4)×1.3
【0038】
数式(3)中、j、n3、d3及びλは前記のとおりであり、λは380〜680nmの範囲の値である。
なお、上記数式(3)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(3)を満たすj(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0039】
[低屈折率層用材料]
{主鎖に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成成分、及び側鎖に水酸基を含有する構成成分を含み、且つフッ素を含まない共重合体:ポリシロキサン構造含有共重合体(S)}
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層は、滑り性付与による耐擦傷性向上、及び防汚性の付与を目的として、主鎖に一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成成分、及び側鎖に水酸基を含有する構成成分を含み、且つフッ素を含まない共重合体(S)(以下、単にフッ素を含まない共重合体またはポリシロキサン構造含有共重合体(S)とも言う。)を含有する組成物を、含フッ素共重合体と共に硬化させることによって形成される。このポリシロキサン構造を有する共重合体(S)は、添加量を適宜調節することにより、シロキサン成分の導入量を自在に制御することができる。さらに、シロキサンの表面偏在性及び水酸基の存在により、シロキサン部位のみを効果的に表面に偏析させて低屈折率層皮膜中に効果的にアンカリングさせることができる。
一般式(1):
【0040】
【化4】

【0041】
一般式(1)中、R11、R12は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。アルキル基としては炭素数1〜4が好ましく、例としてメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等が挙げられる。アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基及びフェニル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。pは10〜500の整数を表わし、好ましくは50〜300であり、特に好ましくは100〜250の場合である。
【0042】
一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成成分(X)を含有する共重合体の合成法としては、従来よりいくつかの方法が提案されている。
【0043】
例えば、J.C.Saamらは"Macromolecules",3巻、1頁(1970年)において、アニオン重合法によりスチレン−ジメチルシロキサンブロック共重合体を得たことを報告している(以下この方法をアニオン重合法と呼ぶ)。
【0044】
また、手塚育志らは"Makromol.Chem.,Rapid Commun.",5巻、559頁(1984年)において、官能基を有するプレポリマー同士のカップリング反応により、酢酸ビニル−ジメチルシロキサンブロック共重合体を得たことを報告している(以下この方法をプレポリマー法と呼ぶ)。
【0045】
さらに、井上弘らは「高分子学会予稿集」、34巻、293頁(1984年)において、ラジカル重合開始能を有するアゾ基含有ポリシロキサンアミドによるラジカル重合により、メチルメタクリレート−ジメチルシロキサンブロック共重合体を得たことを報告している(以下この方法を高分子開始剤法と呼ぶ)。
【0046】
しかし、上記アニオン重合法やプレポリマー法では、反応に適応できるビニル基単量体が限られており、反応工程が多段階になったり、反応条件が工業的に利用するには困難に
なったりしうる。工業的にブロック共重合体を製造するためには、ラジカル重合を用いて合成することが可能で、多くのビニル型単量体に適用でき、反応工程が少ないことが好ましい。
【0047】
以上のような観点から、本発明で用いられるポリシロキサン含有共重合体(S)は高分子開始剤法で製造されることが好ましい。こうした高分子開始剤は、例えばアゾ基、ペルオキシ基等のラジカル発生可能な基を有するポリシロキサン化合物である。なお、こうした開始剤は、例えば特公平6−104711号公報、特開平6−93100号公報等に記載のごとくに合成できる。
【0048】
(高分子開始剤の好適例)
こうした高分子開始剤のうち好ましいものの例を以下に示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0049】
【化5】

【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
また、本発明で用いられるポリシロキサン構造を含有する共重合体(S)は、側鎖に水酸基を含有する構成成分(Z)を含むことが必須である。該水酸基を有することにより、架橋が可能となり、転写を防ぐという効果が得られる。また、ポリシロキサン構造を含有する共重合体(S)は、一般式(2)で表される構造であることが好ましい。
一般式(2):
【0057】
【化12】

【0058】
一般式(2)中、Xは上記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を含む単位を表す。Yは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。R21は水素原子又はメチル基を表し、L21は単結合又は2価の連結基を表す。x〜zはそれぞれ各構成成分のモル分率(%)を表し、10≦x<100、0≦y≦50、0<z≦50、0<y+z≦90を満たす値を表す。
【0059】
以下、本発明で用いられる共重合体(S)中の、下記一般式(4)で表される重合単位について説明する。
一般式(4):
【0060】
【化13】

【0061】
一般式(4)中、R21は水素原子又はメチル基を表す。L21は、単結合又は、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−COO−、−O−COO−、置換もしくは無置
換のアルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、及びそれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を表し、中でも−COO−とアルキレン基の組み合わせが好ましい。
【0062】
以下、上記一般式(4)で表される重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0063】
【化14】

【0064】
前記一般式(2)で表される本発明で用いられるポリシロキサン構造を含有する共重合体(S)は、基材への密着性、溶媒への溶解性、他の塗布液組成物との相溶性、透明性等種々の観点から上述した以外にも、他の構成成分(Y)を有してもよく、こうした重合単位を構成する単量体の例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0065】
以上のような観点から、本発明におけるポリシロキサン含有共重合体(S)は、ポリシロキサン構造を有する構成成分(X)に加え、前記一般式(4)で表される水酸基を含む構成成分(Z)、及び任意の構成成分(Y)からなる形態が好ましい。
【0066】
各成分のモル分率(%)は、10≦x<100、0≦y≦50、0<z≦50、0<y+z≦90の関係を満たすように選択される。
【0067】
本発明におけるポリシロキサン含有共重合体(S)中、構成成分(X)は素材に十分な耐擦傷性を付与し、かつ透明性、防汚耐久性を付与するための必須成分であり、(X)のモル分率(%)を表すxは、50≦x<100であることが好ましく、85≦x<100であることがより好ましい。
【0068】
上記共重合体(S)中、構成成分(Z)は転写を防ぐための架橋基である水酸基を含む単位であるが、(Z)の導入量は(X)の比率が低くなりすぎて、十分な耐擦傷性、防汚耐久性、透明性が得られにくくなることがないような範囲で適宜選択することが好ましい。そのため、(Z)の好ましいモル分率の範囲は、0<z≦40であり、より好ましくは0<z≦15である。
【0069】
上記共重合体(S)中、(X)及び(Z)以外の構成成分(Y)は、基材への密着性、溶媒への溶解性、他の塗布液組成物との相溶性、透明性等種々の性能を付与するために適宜導入してもよいが、(Y)の導入量は(X)の比率が低くなりすぎて、十分な耐擦傷性、防汚耐久性、透明性が得られにくくなることがないような範囲で適宜選択することが好ましい。そのため、(Y)の好ましいモル分率の範囲は、0≦y≦40であり、より好ましくは0≦y≦15である。
【0070】
表1に、本発明で有用なポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表1中の数字はそれぞれの重合単位のモル分率を表す。
【0071】
【表1】

【0072】
なお、表中の略語は以下を表す。
t−BuMA:t−ブチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
【0073】
(ポリシロキサン構造含有共重合体(S)の合成)
本発明に用いられるポリシロキサン含有共重合体(S)の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって行なうことができる。またこの際、回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で合成することができる。
【0074】
重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0075】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。 溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒の単独あるいは2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0076】
重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜120℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
【0077】
高分子開始剤を用いてポリシロキサン部位を導入する場合、必要に応じて、他のラジカル開始剤を併せて使用することもできる。
【0078】
併用できるラジカル開始剤としては、例えばアセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシアセタト、t−ブチルペルオキシピバラト等のペルオキシエステル類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩を挙げることができる。
【0079】
また上記ラジカル重合開始剤には、必要に応じて、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等の無機還元剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン等の有機還元剤を併用することができる。
【0080】
得られたポリマーの再沈殿溶媒としては、水、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール、及び、これらの混合溶媒が好ましい。
【0081】
本発明に用いられる塗布液組成物においては、フッ素を含まない共重合体が、含フッ素共重合体に対して0.01〜20質量%の割合で含まれることが好ましく、0.05〜15質量%の割合で含まれることがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で含まれることがさらに好ましい。
【0082】
{含フッ素共重合体}
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層は、前述の主鎖に一般式(1)で表され
るポリシロキサン構造を有する構成成分、及び側鎖に水酸基を含有する構成成分を含み、且つフッ素を含まない共重合体(S)と共に、含フッ素共重合体とを含有する組成物を硬化させることによって形成される。また、含フッ素共重合体は、一般式(3)で表される構造であることが好ましい。
一般式(3):
【0083】
【化15】

【0084】
一般式(3)中、Rf11は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf12は炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜15の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基であり、エーテル結合を有していてもよい。
【0085】
Rf11を有する重合単位及びRf12を有する重合単位は、いずれも含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位であり、具体的な含フッ素ビニルモノマーの例としては、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオリド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類{例えばペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)}、ペルフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類{例えばペルフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)}を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0086】
屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から、特に好ましくはヘキサフルオロプロピレン単独、又は、ヘキサフルオロプロピレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類もしくはペルフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類の併用である。
【0087】
一般式(3)中、Aは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体に基づく構成成分であれば、特に制限はなく、低屈折率化、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜50モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0088】
Aとして併用可能なビニルモノマー単位には、特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、含フッ素ビニルエーテル類、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0089】
上記併用可能なビニルモノマーのうち、さらなる低屈折率化という観点から、ビニルエーテル類又は含フッ素ビニルエーテル類を導入するのが好ましい。
【0090】
本発明で用いられる共重合体は、一般式(3)中のBで表される水酸基含有モノマーに基づく重合単位(以下、B成分ともいう)を、構成成分として有することが好ましい。該水酸基は架橋剤と反応して硬化する機能を有するため、水酸基の含率が高いほど硬い膜を形成できて好ましい。水酸基含有ビニルモノマーは、前述した含フッ素モノマー重合単位と共重合可能なものであれば、ビニルエーテル類、(メタ)アクリレート類、スチレン類など、特に制限なく使用することができる。例えば含フッ素モノマーとしてペルフルオロオレフィン(ヘキサフルオロプロピレンなど)を用いた場合には、共重合性が良好な水酸基含有ビニルエーテルを用いることが好ましく、具体的には2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、8−ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチルビニルエーテルなどが好適である。これら水酸基含有ビニルモノマーは単独で導入してもよいし、2種以上を組み合わせてもよく、その含率は10モル%以上であることが好ましく、20〜60モル%がより好ましく、25〜50モル%が特に好ましい。
【0091】
a、b、c、dはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦a+b≦90、5≦a≦90、0≦b≦70、0≦c≦50、10≦dを満たす値を表す。好ましくは、35≦a+b≦70、30≦a≦60、0≦b≦30、0≦c≦40、20≦d≦60の場合であり、特に好ましくは40≦a+b≦60、40≦a≦55、0≦b≦20、0≦c≦30、25≦d≦50の場合である。
【0092】
前記一般式(3)で表わされる含フッ素共重合体の質量平均分子量(Mw)は、103〜106であることが好ましく、より好ましくは5×103〜5×105であり、特に好ましくは104〜105の場合である。
【0093】
本発明に用いられる含フッ素共重合体の特に好ましい形態として、一般式(3')が挙げられる。一般式(3')においてRf11、Rf12、A、a、b、c、d、は一般式(3)と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
一般式(3'):
【0094】
【化16】

【0095】
一般式(3')中、L31は2価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
【0096】
連結基L31の好ましい例としては、*−(CH22−O−**、*−(CH22−NH−**、*−(CH24−O−**、*−(CH26−O−**、*−(CH22−O−(CH22−O−**、−CONH−(CH23−O−**、*−CH2CH(OH)CH2−O−*、*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は水酸基側の連結部位を表す)等が挙げられる。
【0097】
(各重合単位の好適例)
以下に、上記一般式(3')で示される、本発明に用いられるペルフルオロオレフィン共重合体における各重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
【化19】

【0101】
【化20】

【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

【0104】
表2に本発明で有用なポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表2には重合単位の組み合わせとして表記するが、表中の記号、Q、N、M1、H及びa〜dは、何れも前記一般式(3')に示されるものである。
【0105】
【表2】

【0106】
(含フッ素共重合体の合成)
本発明に用いられる、一般式(3)で表される含フッ素共重合体の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合によって行うことができる。また回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で合成することができる。
【0107】
重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
【0108】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒のそれぞれ単独、又は2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0109】
重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
【0110】
反応圧力は適宜選定可能であるが、通常は0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜5MPa、より好ましくは0.1〜2MPa程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0111】
得られたポリマーは、反応液をそのまま本発明の用途に用いることもできるし、再沈殿や分液操作によって精製して用いることもできる。
【0112】
(硬化剤(架橋剤))
本発明の反射防止フィルムに用いられる低屈折率層用塗布液組成物は、含フッ素共重合体および/またはポリシロキサン含有共重合体の水酸基と反応し得る化合物(硬化剤)を含むことが好ましい。硬化剤は水酸基と反応する部位を2個以上有することが好ましく、4個以上有することが更に好ましい。硬化剤の構造は、水酸基と反応しうる官能基を前記
個数有するものであれば特に限定はなく、例えばポリイソシアネート類、イソシアネート化合物の部分縮合物、多量体や、多価アルコール、低分子量ポリエステル皮膜などとの付加物、イソシアネート基をフェノールなどのブロック化剤でブロックしたブロックポリイソシアネート化合物、アミノプラスト類、多塩基酸又はその無水物などを挙げることができる。
【0113】
(アミノプラスト類)
本発明で、架橋剤として特に好ましく用いることができるものはアミノプラスト類であり、前記アミノプラスト類は、含フッ素共重合体中に存在する水酸基と反応可能なアミノ基、すなわちヒドロキシアルキルアミノ基もしくはアルコキシアルキルアミノ基、又は窒素原子に隣接し、且つアルコキシ基で置換された炭素原子を含有する化合物である。具体的には、例えばメラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。
【0114】
上記メラミン系化合物は、一般にトリアジン環に窒素原子が結合した骨格を有する化合物として知られているもので、具体的にはメラミン、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、アルコキシ化メチルメラミン等を挙げることができる。特に、メラミンとホルムアルデヒドを塩基性条件下で反応して得られるメチロール化メラミン及びアルコキシ化メチルメラミン、並びにその誘導体が好ましく、特に保存安定性からアルコキシ化メチルメラミンが特に好ましい。またメチロール化メラミン及びアルコシ化メチルメラミンについて特に制約はなく、例えばプラスチック材料講座[8]ユリア・メラミン樹脂(日刊工業新聞社)に記載されているような方法で得られる各種樹脂の使用も可能である。
【0115】
また、上記尿素化合物としては尿素の他、ポリメチロール化尿素その誘導体であるアルコキシ化メチル尿素、さらには環状尿素構造であるグリコールウリル骨格や2−イミダゾリジノン骨格を有する化合物も好ましい。前記尿素誘導体等のアミノ化合物についても前記「ユリア・メラミン樹脂」等に記載の各種樹脂の使用が可能である。
【0116】
本発明で用いられる硬化性低屈折率層用塗布液組成物の製造に用いられるアミノ化合物としては、含フッ素共重合体およびポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体との相溶性の点から特にメラミン化合物又はグリコールウリル化合物が好ましく、さらに反応性からアルコキシ化メチル化されたメラミン化合物、或いはグリコールウリル化合物が好ましい。その中でも、架橋剤が分子中に窒素原子を含有し、且つ該窒素原子に隣接するアルコキシ基で置換された炭素原子を2個以上含有する化合物であることが好ましい。特に好ましい化合物は下記構造式(H−1)及び(H−2)で表される化合物、及びそれらの部分縮合体である。式中Rは炭素数1〜6のアルキル基、又は水酸基を表す。
構造式(H−1)及び(H−2):
【0117】
【化23】

【0118】
低屈折率層用塗布液組成物におけるアミノプラストの添加量としては、含フッ素共重合体及びポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体の合計100質量部当り、1〜50質量部であり、好ましくは3〜40質量部であり、さらに好ましくは5〜30質量部である。1質量部以上であれば、本発明の特徴である、薄膜としての耐久性を十分に発揮することができ、50質量部以下であれば、光学用途に利用する際に本願材料の特徴である低屈折率を維持することができるので好ましい。硬化剤を添加しても屈折率を低く保つという観点からは、添加しても屈折率の上昇が少ない硬化剤が好ましく、その観点では上記化合物のうち、H−2で表される骨格を有する化合物がより好ましい。
【0119】
(硬化触媒)
本発明における低屈折率層は、酸触媒により硬化が促進されるので、酸性物質を添加することが望ましい。保存安定性と硬化活性を両立するために、加熱により酸を発生する化合物(熱酸発生剤)及び/又は光照射により酸を発生する化合物(感光性酸発生剤)を添加することがより好ましい。
【0120】
(熱酸発生剤)
本発明で用いられる、硬化性の低屈折率層用塗布液組成物(以下、低屈折率層用硬化性樹脂組成物、又は単に硬化性樹脂組成物ともいう)に配合することができる熱酸発生剤は、当該硬化性樹脂組成物の塗膜等を加熱して硬化させる場合に、その加熱条件を、より穏和なものに改善することができる物質である。
【0121】
この熱酸発生剤の具体例としては、例えば、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、アルキルベンゼンスルホン酸とそのアンモニウム塩、各種金属塩、リン酸や有機酸のリン酸エステル等を挙げることができる。
【0122】
この熱酸発生剤の使用割合は、硬化性樹脂組成物中の含フッ素共重合体及びポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体の合計100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。この割合が過大となると、硬化性樹脂組成物の保存安定性が劣るものとなるので好ましくない。
【0123】
(感光性酸発生剤)
本発明で用いられる硬化性樹脂組成物に配合することができる感光性酸発生剤は、当該硬化性樹脂組成物の塗膜に感光性を付与し、例えば、光等の放射線を照射することによって当該塗膜を光硬化させることを可能にする物質である。
【0124】
代表的な感光性酸発生剤としては、例えば、(1)ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等の各種オニウム塩;(2)β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物等のスルホン化合物;(3)アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等のスルホン酸エステル類;(4)下記一般式(5)で示されるスルホンイミド化合物類;(5)下記一般式(6)で示されるジアゾメタン化合物類;その他を挙げることができる。
一般式(5):
【0125】
【化24】

【0126】
式中、U51は、アルキレン基、アリレーン基、アルコキシレン基等の2価の基を示し、R51は、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等の1価の基を示す。
【0127】
一般式(6):
【0128】
【化25】

【0129】
式中、R61及びR62は、互いに同一でも異なってもよく、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等の1価の基を示す。
【0130】
感光性酸発生剤は、単独で、又は2種以上を併用することができ、さらに前記熱酸発生剤と併用することもできる。感光性酸発生剤の使用割合は、硬化性樹脂組成物中の含フッ
素共重合体及びポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体の合計100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。この割合が該上限値以下であれば、得られる硬化膜の強度が優れたものとなり、透明性も良好なので好ましい。
【0131】
本発明における低屈折率層は、以上延べた少なくとも2種の共重合体、すなわち含フッ素共重合体及びポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体、硬化剤、並びに硬化触媒を含む硬化性樹脂組成物に、さらに無機微粒子や、後述するオルガノシラン化合物を含有することも好ましい。
【0132】
(低屈折率層用無機微粒子)
低屈折率層中への無機微粒子の配合量は、1〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5〜80mg/m2、更に好ましくは10〜60mg/m2である。無機微粒子の配合量が該下限値以上であれば、耐擦傷性の改良効果が顕著であり、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じないので、上述の範囲内とするのが好ましい。
【0133】
上記無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。
【0134】
これら無機微粒子のサイズは、好ましくは1〜200nm、更に好ましくは5〜90nmである。該無機微粒子の粒径が該下限値以上であれば、耐擦傷性の改良効果が大きくなり、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じないので、上述の範囲内とするのが好ましい。
【0135】
無機微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
【0136】
(オルガノシラン化合物)
本発明においては、低屈折率層はさらにオルガノシラン化合物を含む硬化性樹脂組成物から形成されてもよい。オルガノシラン化合物の定義や好ましい化合物の構造などは特開2004−331812号公報の[0137]〜[0138]に記載されている内容と同じである。
【0137】
(その他の添加剤)
本発明における低屈折率層用塗布液組成物である硬化性樹脂組成物は、前述の含フッ素共重合体、ポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体を少なくとも含み、必要性に応じて硬化剤、硬化触媒、無機微粒子及びオルガノシラン化合物と共に、さらには各種添加剤及びラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤を添加し、これらを適当な溶媒に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが、一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1〜20質量%程度である。
【0138】
低屈折率層と直接接する下層との界面密着性等の観点からは、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸又はその無水物等の硬化剤を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して30質量%以下の範囲とすることが好ましく、20質
量%以下の範囲とすることがより好ましく、10質量%以下の範囲とすることが特に好ましい。
【0139】
また、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、上記オルガノシラン化合物以外にも公知のシリコーン系化合物又はフッ素系化合物の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には、低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0140】
(シリコーン系化合物)
シリコーン系化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む、化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。また、ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。
【0141】
置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。
【0142】
シリコーン系化合物の分子量には特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3,000〜30,000であることが最も好ましい。
【0143】
シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量には特に制限はないが、18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。
【0144】
好ましいシリコーン系化合物の例としては、信越化学工業(株)製の"X−22−174DX"、"X−22−2426"、"X−22−164B"、"X22−164C"、"X−22−170DX"、"X−22−176D"、"X−22−1821"(以上商品名);チッソ(株)製の"FM−0725"、"FM−7725"、"FM−4421"、"FM−5521"、"FM−6621"、"FM−1121";Gelest製"DMS−U22"、"RMS−033"、"RMS−083"、"UMS−182"、"DMS−H21"、"DMS−H31"、"HMS−301"、"FMS121"、"FMS123"、"FMS131"、"FMS141"、"FMS221"(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0145】
(フッ素系化合物)
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖{例えば−CF2CF3、−CH3(CF34H、−CH2(CF28CF3、−CH2CH2(CF24H等}であっても、分岐構造{例えば−CH(CF32、−CH2CF(CF32、−CH(CH3)CF2CF3、−CH(CH3)(CF25CF2H等}であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(例えば−CH2OCH2CF2CF3、−CH2CH2OCH248H、−CH2CH2OCH2CH2817、−CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0146】
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成又は相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。
【0147】
フッ素系化合物中のフッ素原子含有量には特に制限はないが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としては、ダイキン工業(株)製、"R−2020"、"M−2020"、"R−3833"、"M−3833"(以上商品名);大日本インキ化学工業(株)製、「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−179A」、「ディフェンサMCF−300」(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0148】
(防塵剤、帯電防止剤等) 低屈折率層形成用の硬化性樹脂組成物には、防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、さらに公知のカチオン系界面活性剤又はポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は、上記のシリコーン系化合物やフッ素系化合物に、その構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。
【0149】
これらを添加剤として添加する場合には、低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0150】
好ましい化合物の例としては、大日本インキ化学工業(株)製「メガファックF−150」(商品名)、東レダウコーニング(株)製"SH−3748"(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0151】
(低屈折率層塗設用の溶媒)
本発明において、低屈折率層を形成するための塗布液組成物に用いられる溶媒としては、各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶媒が使用できる。乾燥にかかる負荷の少なさの観点からは、常圧、室温における沸点が100℃以下の溶媒を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶媒を少量含有することが好ましい。
【0152】
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プ
ロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0153】
沸点が100℃を以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン{メチルイソブチルケトン(MIBK)と同じ、115.9℃}、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0154】
〔光学フィルムの層構成〕
本発明の反射防止フィルムは、透明な基材上に、必要に応じて後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されている。
【0155】
低反射性の反射防止フィルムは、最も単純な構成では、基材上に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、基材よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。
【0156】
本発明の反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成において基材フィルムは、支持体として機能している。
・基材フィルム/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/防眩層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層。
【0157】
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。高屈折率層は防眩性のない光拡散性層であってもよい。また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子又は金属酸化物微粒子(例えば、ATO、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布又は大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
【0158】
〔低屈折率層以外の層〕
[皮膜形成バインダー]
本発明において、低屈折率層以外の層を形成する皮膜形成組成物の主たる皮膜形成バインダー成分としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いることが、皮膜強度、塗布液の安定性、塗膜の生産性、などの点で好ましい。主たる皮膜形成バインダーとは、無機粒子を除く皮膜形成成分のうち10質量%以上をしめるものをいう。好ましくは、20質量%以上100質量%以下、更に好ましくは30質量%以上95%以下である。
【0159】
飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0160】
形成される皮膜を高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0161】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等)、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。 なお本明細書においては、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を表す。
【0162】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0163】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0164】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0165】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
【0166】
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0167】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
【0168】
また、「最新UV硬化技術」のP.159{発行人;高薄一弘、発行所;(株)技術情報協会、1991年発行}にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0169】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア(651,184,907)」等が好ましい例として挙げられる。
【0170】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0171】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
【0172】
熱ラジカル開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド;無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として2−アゾビスイソブチロニトリル、2−アゾビスプロピオニトリル、2−アゾビスシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0173】
熱ラジカル開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0174】
本発明においてはポリエーテルを主鎖として有するポリマーを使用することもできる。多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、感光性酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0175】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0176】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン
基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
【0177】
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0178】
[ハードコート層]
(ハードコート層用材料)
本発明にはハードコート層を設けることが好ましい。ハードコート層は、バインダー並びに必要に応じて防眩性を付与するためのマット粒子、及び高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーから形成されることができる。
【0179】
(マット粒子)
ハードコート層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が0.1〜5.0μm、好ましくは1.5〜3.5μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有させることができる。
【0180】
マット粒子とバインダー間の屈折率差は大きすぎるとフィルムが白濁し、小さすぎると十分な光拡散効果をえることができないため、0.02〜0.20であることが好ましく、0.04〜0.10であることが特に好ましい。マット粒子のバインダーに対する添加量も屈折率同様、大きすぎるとフィルムが白濁し、小さすぎると十分な光拡散効果をえることができないため、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0181】
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。 マット粒子の形状は、真球又は不定形のいずれも使用できる。
【0182】
異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。 2種類以上のマット粒子を用いる場合には両者の混合による屈折率制御を効果的に発揮するために屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。またより大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0183】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては、単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましく
は0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0184】
上記マット粒子は、形成されたハードコート層中のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるようにハードコート層に含有される。
【0185】
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0186】
(無機フィラー)
ハードコート層には、層の屈折率を高めるため、及び硬化収縮を低減するために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
【0187】
また、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いたハードコート層では、層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は上記の無機フィラーと同じである。
【0188】
ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO、SiO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。
【0189】
無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0190】
これらの無機フィラーの添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜70%である。
【0191】
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0192】
本発明におけるハードコート層の、バインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を該範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0193】
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が3〜70%、好ましくは4〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が3.0%以下、好ましくは2.5%以下である。本発明の反射防止フィルムが該範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴わずに良好な防眩性及び反射防止性が得られる。
【0194】
〔支持体〕
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル{例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム
(株)製"TAC−TD80U"、"TAC−TD80UF"等}、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂{「アートン」(商品名)、JSR(株)製}、非晶質ポリオレフィン{「ゼオネックス」(商品名)、日本ゼオン(株)製}などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0195】
また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルム、及びその製造法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
【0196】
[鹸化処理]
本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。反射防止フィルムの透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は、偏光板の偏光膜を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0197】
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用したりする場合には、十分に接着させるため、透明支持体上にポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体及び含フッ素共重合体を主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。
【0198】
鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗し、また希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
【0199】
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に、偏光膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
【0200】
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の、透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0201】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止フィルム面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れている。
【0202】
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前又は後に、アルカリ液を反射防止フィルムの反射防止層を形成する面とは反対側の面に塗
布し、加熱、水洗及び/又は中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0203】
〔塗膜形成方法〕
本発明の反射防止フィルムは、以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
【0204】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)等により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。
【0205】
これらの塗布方式のうち、グラビアコート法での塗布では、反射防止フィルムの各層のような、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができるので好ましい。グラビアコート法の中でも、マイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。
【0206】
またダイコート法を用いても、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、さらにダイコート法は、前計量方式のため膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶媒の蒸散が少ないため、好ましい。
【0207】
複数の層からなる反射防止フィルムにおいては、2層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2,761,791号、同第2,941,898号、同第3,508,947号、同第3,526,528号の各明細書、及び原崎勇次著「コーティング工学」、253頁、{朝倉書店(1973年)}に記載がある。
【0208】
<反射防止フィルムの用途>
〔偏光板〕
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0209】
[偏光膜]
偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。
【0210】
偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は、以下の方法により作製される。すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45゜傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0211】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
【0212】
〔画像表示装置〕
本発明の画像表示装置は、前記反射防止フィルムまたは前記偏光板をディスプレイの最表面に用いたものである。例えば、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた態様では、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0213】
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{"SID97,Digest of tech.Papers"(予稿集)、28集(1997年)、p.845記載}、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)が含まれる。
【0214】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを、本発明の反射防止フィルムと組み合わせて作製した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば、特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0215】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許第4,583,825号、同第5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0216】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」{東レリサーチセンター発行(2001年)}などに記載されている。
【0217】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを、偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0218】
以下に実施例に基づき本発明について更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の実施例、合成例中、特に断らない限り%は質量%を表す。
【0219】
<反射防止フィルムの作製>
〔ポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体の合成〕
合成例1:(P−1)の合成
内容量200mLの三口フラスコに、メチルエチルケトン10gを入れ、攪拌しながら温度を80℃に昇温した。フラスコ内を窒素で十分に置換してから、前記の構造式{S−(1)}のポリシロキサン構造を有する高分子開始剤"VPS−1001"{和光純薬(株)製}10.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.5g、メチルエチルケトン30gの混合溶液を、攪拌しながらケミカルポンプにて3時間で全量滴下した。滴下後、さらに5時間攪拌し、室温まで冷却した。重合溶液を、水/メタノール=400mL/40mLの混合溶媒に投入し、ポリマーを析出させた後、50℃にて真空乾燥を行って8.5gのポリシロキサン構造を有する水酸基含有共重合体(P−1)を得た。得られたポリマーの質量平均分子量は3.8万であった。
【0220】
合成例2〜7:(P−2)、(P−3)、(P−5)、(P−9)、(P−17)及び(P−19)の合成
合成例1における(P−1)の合成とほぼ同様にして(P−2)、(P−3)、(P−5)、(P−9)、(P−17)及び(P−19)を合成した。それぞれの重合単位のモル分率(モル%)と質量平均分子量は、前記の表1に示したとおりである。
【0221】
〔含フッ素共重合体の合成〕
合成例11:(T−1)の合成
内容量100mLのステンレス製撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が3.2kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションで溶媒を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから、2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ヘキサフルオロプロピレンとヒドロキシエチルビニルエーテルのモル比1:1の含フッ素共重合体(T−1)の28gを得た。得られたポリマーの質量平均分子量は2.5万であった。
【0222】
合成例12〜4:(T−2)、(T−4)、(T−5)及び(T−8)の合成
合成例11における(T−1)の合成とほぼ同様にして、(T−2)、(T−4)、(T−5)及び(T−8)を合成した。それぞれの各構成成分のモル分率(モル%)と質量平均分子量は、前記の表2に示したとおりである。
【0223】
比較合成例1:比較共重合体(U−1)の合成
合成例11と同様の条件において、さらに高分子開始剤"VPS−1001"を0.6g加えて重合を行うことにより、ポリシロキサン構造を有する共重合体部位が2質量%導入された、下記の比較共重合体(U−1)を得た。得られたポリマーの質量平均分子量は6.0万であった。
比較共重合体(U−1):
【0224】
【化26】

【0225】
比較合成例2:比較共重合体(U−2)の合成
内容量100mLのステンレス製撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル40mL、及び、HEVE2.20g、前記の構造式{S−(1)}のポリシロキサン構造を有する高分子開始剤"VPS−1001"{和光純薬(株)製}12.92g及び過酸化ジラウロイル0.40gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)4.2gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は4.4kg/cm2であった。温度を65℃に保持し、10時間反応を続け、圧力が2.2kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。
【0226】
反応液を大過剰のメタノールに投入し、得られたポリマーを少量の酢酸エチルに溶解して2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。該ポリマーを減圧下乾燥させることにより、ポリシロキサンセグメントを有するフッ素含有共重合体(U−2)を得た。得られたポリマーの質量平均分子量は3.1万であった。
比較共重合体(U−2)
【0227】
【化27】

【0228】
〔反射防止フィルムの作製〕
実施例1−1〜1−20及び比較例1−1〜1−5
[低屈折率層用塗布液(Ln−1〜Ln−20)の調製]
表3に示す各成分を混合し、2−ブタノンに溶解して固形分6質量%の低屈折率層形成用組成物を作製した。表3中の( )内の数字は各成分の固形分の質量部を表す。
【0229】
【表3】

【0230】
なお表3中、コロイダルシリカは日産化学工業(株)製"MEK−ST"を表し、CY303は「サイメル303」、日本サイテックインダストリーズ(株)製メチロール化メラミンを表す。H−11、H−21はそれぞれ下記構造の化合物を表す。また、PTSはp−トルエンスルホン酸一水和物を表す。
【0231】
【化28】

【0232】
[比較例用低屈折率層用塗布液(Lnr−1〜Lnr−5)の調製]
上記の低屈折率層用塗布液の例と同じように、表4に示す各成分を混合し、2−ブタノンに溶解して固形分6%の比較例低屈折率層用塗布液を作製した。表4中の( )内は各成分の固形分の質量部を表し、略号の意味は前述したとおりである。
【0233】
【表4】

【0234】
[ハードコート層形成用組成物(HC−1)の調製]
"PET−30" 50.0g
「イルガキュア184」 2.0g
"SX−350"(30質量%) 1.5g
架橋アクリル−スチレン粒子(30質量%) 13.9g
"KBM−5103" 10.0g
トルエン 38.5g
【0235】
上記の混合液を、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層形成用組成物(HC−1)を調製した。
【0236】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
"PET−30":ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物{日本化薬(株)製}
「イルガキュア184」:重合開始剤{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}
"SX−350":平均粒径3.5μm架橋ポリスチレン粒子{屈折率1.60、綜研化学(株)製、30質量%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}。
架橋アクリル−スチレン粒子:平均粒径3.5μm{屈折率1.55、綜研化学(株)製、30質量%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用}。
"KBM−5103":アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン{信越化学工業(株)製}。
【0237】
[反射防止フィルムの作製]
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム"TAC−TD80U"{富士写真フイルム(株)製}を、ロール形態で巻き出して、直接、上記のハードコート層形成用組成物(HC−1)を、線数180本/in、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールと、ドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.1体積%で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量110mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの層を形成し、巻き取った。このようにして作製した試料得られたハードコート層の表面粗さは、Ra=0.18μm、Rz=1.40μm、ヘイズ35%であった。
【0238】
このようにして得られたハードコート層の上に、前記低屈折率層形成用組成物(本発明Ln1〜20及び比較例Lnr1〜5)を用いて、低屈折率層膜厚が95nmになるように調節して反射防止フィルム(101)〜(120)及び(R01)〜(R05)を作製した。低屈折率層の乾燥条件は120℃、10分とし、紫外線硬化条件は、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度120mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。得られたそれぞれの反射防止フィルムに用いられた、ハードコート層形成用組成物及び低屈折率層形成用組成物の組み合わせを表5に示す。
【0239】
[反射防止フィルムの鹸化処理]
得られた反射防止フィルムは以下の鹸化標準条件で処理・乾燥した。
(1)アルカリ浴:1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液、55℃−120秒
(2)第1水洗浴:水道水、60秒
(3)中和浴:0.05mol/L硫酸、30℃−20秒
(4)第2水洗浴:水道水、60秒
(5)乾燥:120℃−60秒
【0240】
[反射防止フィルムの評価]
このようにして得られた鹸化済みの反射防止フィルムを用いて、以下の評価を行った。得られた結果を表5に示す。
【0241】
(評価1)平均反射率の測定
分光光度計"V−550"{日本分光(株)製}を用い、380〜780nmの波長領域において、積分球を用いて、入射角5°における分光反射率を測定した。分光反射率の評価において、450〜650nmの平均反射率を用いた。
測定は、反射防止フィルムの裏面を粗面化処理した後、黒色のインクで光吸収処理(380〜780nmにおける透過率が10%未満)を行い、黒色の台上にて行った。
【0242】
(評価2)耐擦傷性(1)−スチールウール耐性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH、
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール"No.0000"{(株)日本スチールウール製}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、
荷重:200g/cm2
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
【0243】
(評価3)耐擦傷性(2)−消しゴム擦り耐性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にプラスチック消しゴム{(株)トンボ鉛筆製"MONO"}を固定した。
移動距離(片道):4cm、こすり速度:2cm/秒、荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:100往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
××:一面膜が傷ついている。
【0244】
(評価4)「マジックインキ」付着性評価
表面の耐汚染性の指標として、光学材料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、サンプル表面に「マジックインキ」(商品名)を付着させてから、それをクリーニングクロスで拭き取ったときの状態を観察して、以下のように「マジックインキ」付着性
を評価した。
◎:「マジックインキ」の跡が完全に拭き取れる。
○:「マジックインキ」の跡がわずかに見える。
△:「マジックインキ」の跡が少し見える。
×:「マジックインキ」の跡がほとんど拭き取れない。
【0245】
【表5】

【0246】
本実施例で明らかなように、本発明の反射防止フィルムは、非常に低い表面反射率で、且つ十分に強靭な膜強度を有し、防汚性にも優れていることがわかる。また、本発明の反射防止フィルムは、表面偏在性に優れる本発明のポリシロキサン含有共重合体を含むため、比較例(フィルムNo.R01、R02、R03、R04、R05)に比べて防汚性に優れている。
また、本発明の反射防止フィルムは、水酸基含有率が高いため、比較例(フィルムNo.R01、R02、R04、R05)と比較して耐擦傷性に優れている。
【0247】
<画像表示装置の作製>
実施例2−1〜2−20及び比較例2−1〜2−5
上記実施例及び比較例で作製した反射防止フィルム(フィルムNo.101〜120及びR01〜R05)を、日本電気(株)より入手したパーソナルコンピューター"PC9821NS/340W"の液晶ディスプレイ表面に貼り付け、画像表面装置サンプルを作製し、その表面反射による風景映り込み程度を目視にて評価した。
【0248】
本発明の実施例の反射防止フィルム(フィルムNo.101〜120)を設置した画像表示装置は、周囲の風景映り込みが殆どなく、快適な視認性を示しかつ充分な表面強度を有するものであったのに対し、比較例の反射防止フィルム(フィルムNo.R01〜R05)を設置した画像表示装置は、周囲の映り込みはある程度低減できるものの表面強度に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】図1は、本発明の反射防止膜が複合膜の場合の層構成を示す断面模式図であり、(a)は4層構成、(b)は5層構成の例を示す。
【符号の説明】
【0250】
1a:反射防止フィルム
1b:反射防止フィルム
2:透明支持体
3:ハードコート層
4:高屈折率層
5:低屈折率層(最外層)
6:中屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を有する構成成分、及び側鎖に水酸基を含有する構成成分を含み、且つフッ素を含まない共重合体と、
含フッ素共重合体
とを含有する塗布液組成物を硬化させることによって形成された低屈折率層を有することを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):
【化1】

一般式(1)中、R11、R12は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。
【請求項2】
フッ素を含まない共重合体が、下記一般式(2)で表される請求項1に記載の反射防止フィルム。
一般式(2):
【化2】

一般式(2)中、Xは上記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造を含む単位を表す。Yは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。R21は水素原子又はメチル基を表し、L21は単結合又は2価の連結基を表す。x〜zはそれぞれ各構成成分のモル分率(%)を表し、10≦x<100、0≦y≦50、0<z≦50、0<y+z≦90を満たす値を表す。
【請求項3】
含フッ素共重合体が、下記一般式(3)で表される請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
一般式(3):
【化3】

一般式(3)中、Rf11は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf12は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよい。Bは水酸基含有モノマーに基づく重合単位を表す。Aは任意のビニルモノマーに基づく重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。a〜dはそれぞれ各構成成分のモル分率(%)を表し、30≦a+b≦90、5≦a≦90、0≦b≦70、0≦c≦50、10≦dを満たす値を表す。
【請求項4】
低屈折率層を形成する塗布液組成物が、さらに水酸基と反応可能な架橋剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
架橋剤が、1分子中に、窒素原子に隣接する、アルコキシ基で置換された炭素原子が2個以上存在する化合物である請求項4に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルムが、偏光板における偏光膜の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム、又は請求項6に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−171924(P2007−171924A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274978(P2006−274978)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】