説明

受信回路、集積回路装置及び電子機器

【課題】簡素な構成で広い受信帯域を有する受信回路、集積回路装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】受信回路は、アンテナ110から整合回路120を介して入力される入力信号を増幅する低雑音増幅器130と、低雑音増幅器130の後段に設けられる周波数変換回路140と、周波数変換回路140の後段に設けられるフィルター150とを含み、整合回路120の共振周波数を第1の周波数とし、低雑音増幅器130が有する共振回路の共振周波数を第2の周波数とした場合に、第2の周波数が、受信帯域の幅によって規定される周波数だけ第1の周波数からシフトされた周波数に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信回路、集積回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などの無線機器では、複数の周波数帯(マルチバンド)で通信可能な機能が求められている。しかし使用する周波数帯毎に送信回路及び受信回路を設けることは、回路構成を複雑にし、消費電力を大きくするなどの問題がある。
【0003】
この課題に対して例えば特許文献1には、整合回路に設けられたキャパシターと増幅器に設けられたキャパシターとを周波数に応じて切り換える手法が開示されている。
【0004】
しかしながらこの手法では、切り換えるための回路が複雑になったり、ゲインを一定にすることが難しくなるなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−325163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、簡素な構成で広い受信帯域を有する受信回路、集積回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、アンテナから整合回路を介して入力される入力信号を増幅する低雑音増幅器と、前記低雑音増幅器の後段に設けられる周波数変換回路と、前記周波数変換回路の後段に設けられるフィルターとを含み、前記整合回路の共振周波数を第1の周波数とし、前記低雑音増幅器が有する共振回路の共振周波数を第2の周波数とした場合に、前記第2の周波数が、受信帯域の幅によって規定される周波数だけ前記第1の周波数からシフトされた周波数に設定される受信回路に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、受信回路は、第1の周波数と第2の周波数との差に対応する幅を有する受信帯域内において、ほぼ一定のゲインを確保することが可能になる。その結果、簡素な構成で受信帯域内の周波数の搬送波を受信することが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記受信帯域は、少なくとも2以上の搬送波の周波数を含んでもよい。
【0010】
このようにすれば、受信帯域内の少なくとも2以上の搬送波を受信することが可能になる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記第2の周波数は、前記受信帯域の下側のカットオフ周波数よりも高い周波数に設定され、前記第1の周波数は、前記第2の周波数よりも高く、且つ前記受信帯域の上側のカットオフ周波数よりも低い周波数に設定されてもよい。
【0012】
このようにすれば、第2の周波数により規定される下側のカットオフ周波数と、第1の周波数により規定される上側のカットオフ周波数とを有する受信帯域内の少なくとも2以上の搬送波を受信することが可能になる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記第1の周波数は、前記受信帯域の下側のカットオフ周波数よりも高い周波数に設定され、前記第2の周波数は、前記第1の周波数よりも高く、且つ前記受信帯域の上側のカットオフ周波数よりも低い周波数に設定されてもよい。
【0014】
このようにすれば、第1の周波数により規定される下側のカットオフ周波数と、第2の周波数により規定される上側のカットオフ周波数とを有する受信帯域内の少なくとも2以上の搬送波を受信することが可能になる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記周波数変換回路は、局所周波数生成回路と、前記局所周波数生成回路の出力と前記低雑音増幅器の出力とのミキシング処理を行うミキサーとを含み、前記受信帯域は、少なくとも2以上の搬送波の周波数を含み、前記局所周波数生成回路は、前記受信帯域内の選択された前記搬送波の周波数に対応して設定される局所周波数の信号を出力してもよい。
【0016】
このようにすれば、周波数変換回路は、少なくとも2以上の搬送波の周波数を含む受信帯域内の選択された搬送波の周波数に対して周波数変換を行うことが可能になる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記整合回路を構成するキャパシターの容量値及びインダクターのインダクタンス値は共に固定値であり、前記低雑音増幅器が有する前記共振回路を構成するキャパシターの容量値及びインダクターのインダクタンス値は共に固定値であってもよい。
【0018】
このようにすれば、整合回路及び低雑音増幅器のキャパシター又はインダクター(例えばコイル)などを切り換える必要がないから、切り換えのための回路が不要になり回路を簡素化することができる。
【0019】
また本発明の一態様では、前記低雑音増幅器は、前記入力信号を増幅する増幅部と、前記増幅部に流れる電流を設定するバイアス電流源と、前記増幅部に直列に設けられる前記共振回路を含んでもよい。
【0020】
このようにすれば、バイアス電流源により増幅部に流れる電流を可変に設定することができるから、低雑音増幅器のゲインを制御することができる。また、共振回路を設けることにより、共振周波数において低雑音増幅器のゲインを増大することができる。
【0021】
また本発明の一態様では、所望波の信号強度を検出する検出回路を含み、前記検出回路は、固定値に設定されたしきい値に基づいて前記信号強度の検出処理を行い、前記信号強度の前記検出処理の結果に基づいて、前記バイアス電流源の電流値が可変に設定されてもよい。
【0022】
このようにすれば、選択された搬送波の周波数に応じて検出回路のしきい値を切り換える必要がないから、切り換えのための回路が不要になり回路を簡素化できる。
【0023】
本発明の他の態様は、上記に記載の受信回路を含む集積回路装置に関係する。
【0024】
本発明の他の態様は、上記に記載の集積回路装置及び前記整合回路を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】受信回路の基本的な構成例。
【図2】整合回路の構成例。
【図3】低雑音増幅器の詳細な構成例。
【図4】共振回路の一例。
【図5】低雑音増幅器の別の構成例。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、周波数特性を説明する図。
【図7】集積回路装置の一例。
【図8】電子機器の一例。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0027】
1.受信回路
本実施形態の受信回路は、低雑音増幅器(LNA)の共振回路の共振周波数を、整合回路の共振周波数からシフトされた周波数に設定することで、簡素な構成で複数の搬送波の周波数を受信することができる。以下に、受信回路、整合回路、及び低雑音増幅器の各構成例について説明する。
【0028】
図1に本実施形態の受信回路の基本的な構成例を示す。本実施形態の受信回路100は、低雑音増幅器(LNA)130、周波数変換回路140及びフィルター150を含む。なお、本実施形態の受信回路は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えばフィルターを低雑音増幅器130と周波数変換回路140との間に設けてもよい。
【0029】
低雑音増幅器(LNA)130は、アンテナ110から整合回路120を介して入力される入力信号S1a、S1bを増幅する。2つの入力信号S1aとS1bとは、互いに振幅が等しく位相が180度異なる信号、すなわち1対の差動信号を構成する。
【0030】
周波数変換回路140は、低雑音増幅器130の後段に設けられ、低雑音増幅器130の出力信号(1対の差動信号)S2a、S2bを受けて、周波数を変換して出力信号S4a、S4b、S4c、S4dを出力する。出力信号S4a、S4bは1対の差動信号を構成し、また出力信号S4c、S4dは別の1対の差動信号を構成する。そして出力信号S4aとS4cとは互いに位相が90度異なり、また出力信号S4bとS4dとは互いに位相が90度異なる。
【0031】
具体的には、周波数変換回路140は、局所周波数生成回路240及びミキサー210、220、230を含む。局所周波数生成回路240は、発振回路(PLL回路)250及び分周器260を含み、受信帯域内の選択された搬送波の周波数に対応して設定される局所周波数の信号(1対の差動信号)SLa、SLb及び互いに位相が90度異なる2つの信号I、Qを出力する。
【0032】
ミキサー210は、局所周波数生成回路240の出力信号SLa、SLbと低雑音増幅器130の出力信号S2a、S2bとのミキシング処理を行い、出力信号(1対の差動信号)S3a、S3bを出力する。さらに次段のミキサー220は、ミキサー210の出力信号S3a、S3bと局所周波数生成回路240の出力信号Iとのミキシング処理を行って、出力信号(1対の差動信号)S4a、S4bを出力する。またもう1つのミキサー230は、ミキサー210の出力信号S3a、S3bと局所周波数生成回路240の出力信号Qとのミキシング処理を行って、出力信号(1対の差動信号)S4c、S4dを出力する。
【0033】
フィルター150は、例えば複素フィルターであって、周波数変換回路140の後段に設けられ、互いに位相が90度異なる信号S4a〜S4dを受けて、不要な周波数の信号(イメージ信号)を除去して所望波の信号を出力信号(1対の差動信号)S5a、S5b及び出力信号(1対の差動信号)S5c、S5dとして出力する。
【0034】
なお、図1の構成では、整合回路120の出力を差動信号とし、低雑音増幅器130を差動型として、それ以後の各回路も差動信号を扱っているが、これは必須のものではない。整合回路120の出力をシングルエンドの信号(非差動信号)とし、低雑音増幅器130及び他の回路をシングルエンドの信号に対応する回路としてもよい。
【0035】
さらに本実施形態の受信回路100は、検出回路160及び復調回路170を含むことができる。
【0036】
検出回路160は、フィルター150の出力信号S5a〜S5dを受けて所望波の信号強度を検出する。検出された信号強度に基づいて、低雑音増幅器(LNA)130の利得(ゲイン)が制御される。具体的には、検出回路160は固定値に設定されたしきい値に基づいて信号強度の検出処理を行い、上記信号強度の検出処理の結果に基づいて、低雑音増幅器130に含まれるバイアス電流源の電流値が可変に設定される。
【0037】
復調回路170は、所望波の信号を復調して必要なデータを取り出す。復調回路170は、送信側の変調方式(例えば振幅変調、周波数変調など)に応じた復調を行うことができる。
【0038】
局所周波数生成回路240は、上述したように受信帯域内の選択された搬送波の周波数に対応して設定される局所周波数の信号SLa、SLbを出力する。例えば、搬送波の周波数すなわち信号S2a、S2bの周波数がf0である場合には、局所周波数すなわち信号SLa、SLbの周波数はfLに設定される。そしてミキサー210がミキシング処理を行って、上記2つの周波数の差すなわちfL−f0の周波数の信号S3a、S3bが出力される。
【0039】
分周器260の分周比が例えばNである場合には、上記局所周波数fLの1/Nの周波数の信号が分周器260により生成される。分周器260から出力された周波数fL/Nの信号I、Qと、ミキサー210から出力された周波数fL−f0の信号S3a、S3bとが、ミキサー220、230でミキシング処理されて、fL−f0−fL/Nの周波数の信号S4a〜S4dが出力される。
【0040】
このように搬送波の周波数f0に対して、上記のように局所周波数fLを設定することで、所望の周波数に変換することができる。また、搬送波が他の周波数である場合には、局所周波数fLを別の周波数に設定することで、同一周波数に変換することができる。したがって、局所周波数を受信帯域内の選択された搬送波の周波数に対応する周波数に設定することで、受信帯域内の複数の搬送波の信号を受信することができる。
【0041】
図2に、整合回路120の構成例を示す。図2の構成例では、整合回路120は2つのインダクター(コイル)LA1、LA2と、並列共振回路を構成するキャパシターCA1及びインダクター(コイル)LA3とを含む。なお、本実施形態の整合回路120は図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0042】
整合回路120は、アンテナ110と低雑音増幅器130との間に設けられ、インピーダンス整合(インピーダンスマッチング)を行う。具体的には、アンテナ110のインピーダンスが低い値(例えば50Ω)であり、低雑音増幅器130の入力インピーダンスが高い値(例えば数kΩ)である場合に、低インピーダンスから高インピーダンスへの変換を行う。
【0043】
図3に、低雑音増幅器(LNA)130の詳細な構成例を示す。低雑音増幅器130は、入力信号を増幅する増幅部280と、増幅部280に流れる電流を設定するバイアス電流源IBと、増幅部280に直列に設けられる共振回路270を含む
具体的には、図3の構成例は差動型の低雑音増幅器であって、増幅部280は、カスコード接続された2つのN型(広義には第1の導電型)トランジスターT1、T3及びカスコード接続された別の2つのN型トランジスターT2、T4を含む。共振回路270は、インダクター(コイル)L1及びキャパシターC1で構成される並列共振回路と、インダクター(コイル)L2及びキャパシターC2で構成されるもう1つの並列共振回路とを含む。また、共振回路270、増幅部280及びバイアス電流源IBは、第1の電源ノード(高電位側電源ノード)VDDと第2の電源ノード(低電位側電源ノード)VSSとの間に直列に設けられる。
【0044】
なお、本実施形態の低雑音増幅器130は図3の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、整合回路120の出力をシングルエンドの信号(非差動信号)とし、低雑音増幅器130をシングルエンド型(非差動型)の回路としてもよい。またトランジスターT3、T4を設けない構成としてもよい。
【0045】
整合回路120からの信号(1対の差動信号)S1a、S1bは、それぞれトランジスターT1、T2のゲートに入力される。低雑音増幅器130により増幅された出力信号S2a、S2bは、ミキサー210に入力される。
【0046】
バイアス電流源IBは、検出回路160による信号強度の検出処理の結果に基づいて、その電流値が可変に設定され、低雑音増幅器130のゲインが制御される。具体的には、バイアス電流源IBの電流値が増加することで低雑音増幅器130のゲインが増加し、バイアス電流源IBの電流値が減少することで低雑音増幅器130のゲインが減少する。
【0047】
共振回路270は、図3に示すように、L1、C1及びL2、C2で構成される2つの並列共振回路だけではなく、配線容量C3、C4及びミキサー210の入力容量を含む。これらの寄生容量が共振周波数に影響を与えるからである。図4に、ミキサー210の入力容量C5、C6を付加した共振回路270の一例を示す。後述するように、低雑音増幅器130の周波数特性は、この共振回路270の共振周波数に依存する。
【0048】
図5に、低雑音増幅器130をディスクリート回路(個別回路)とした構成例を示す。すなわち図5の構成例では、低雑音増幅器130は、周波数変換回路140など他の回路と共に同一チップ(集積回路装置)上に集積化されるのではなく、個別の回路として形成される。1つの個別回路と他の個別回路との接続は、低インピーダンス(例えば50Ω)の伝送線路を用いる場合が多い。そのため低雑音増幅器130の出力は、図5に示す整合回路(出力側)190によりインピーダンス変換してから次段の回路に入力される。この場合には、共振周波数は整合回路(出力側)190の特性にも依存するから、共振回路270には整合回路(出力側)190も含める。
【0049】
上述したように、周波数の異なる複数の搬送波を受信するためには、選択された搬送波(受信しようとする搬送波)の周波数に応じて局所周波数を切り換える必要があるが、さらに整合回路及び低雑音増幅器の周波数特性を考慮する必要がある。以下に、整合回路、低雑音増幅器及び受信回路の周波数特性について図6(A)〜図6(C)を用いて説明する。
【0050】
整合回路120の周波数特性は、例えば図6(A)に示すように整合回路120の共振周波数(第1の周波数)f1でゲインが最大となる(図6(A)のA1)。また低雑音増幅器130の周波数特性は、図6(B)に示すように低雑音増幅器130に含まれる共振回路270の共振周波数(第2の周波数)f2でゲインが最大となる(図6(B)のA2)。
【0051】
従来の受信回路では、第1の周波数f1及び第2の周波数f2を受信しようとする搬送波(選択された搬送波)の周波数に一致するように設定していた。2つの共振周波数f1、f2を一致させることで、一致した共振周波数において最大のゲインを得ることができるからである。
【0052】
しかしこのような整合回路では、周波数の異なる複数の搬送波を受信するためには、受信しようとする搬送波に応じて第1、第2の周波数f1、f2を可変に設定する必要がある。例えば特許文献1には、整合回路及び低雑音増幅器の共振回路に複数のキャパシターを設けて、それらの接続を切り換えることで共振周波数を可変に設定する方法が開示されている。しかし、この方法では、ゲインが共振周波数毎に変化するために所望波の信号強度を一定に制御することが難しい、切り換えのための回路が複雑になるなどの問題がある。
【0053】
本実施形態の受信回路100では、第2の周波数f2が、受信帯域の幅によって規定される周波数だけ第1の周波数f1からシフトされた周波数に設定される。こうすることで、f1とf2との差に対応する幅を有する受信帯域内において、ほぼ一定のゲインを確保することができる。さらに上記の受信帯域を少なくとも2以上の搬送波の周波数を含むようにすることで、整合回路及び低雑音増幅器のキャパシターを切り換えることなく、受信帯域内の複数の周波数を選択して受信することが可能になる。
【0054】
具体的には、図6(C)に示すように、第2の周波数f2は受信帯域(図6(C)のA5)の下側のカットオフ周波数fc1よりも高い周波数に設定され、第1の周波数f1は第2の周波数f2よりも高く、且つ受信帯域の上側のカットオフ周波数fc2よりも低い周波数に設定される。すなわちfc1<f2<f1<fc2に設定される。
【0055】
さらに整合回路120を構成するキャパシターの容量値及びインダクターのインダクタンス値は共に固定値であり、低雑音増幅器130が有する共振回路270を構成するキャパシターの容量値及びインダクターのインダクタンス値は共に固定値である。具体的には、例えば整合回路120が図2に示す構成である場合に、キャパシターCA1の容量値は固定値であって、インダクター(コイル)LA1〜LA3のインダクタンス値も固定値である。また低雑音増幅器130が有する共振回路270が図4に示す構成である場合に、キャパシターC1〜C6の各容量値は固定値であって、インダクターL1、L2のインダクタンス値も固定値である。
【0056】
図6(C)では第1の周波数f1は第2の周波数f2よりも高く設定されているが、第1の周波数f1を第2の周波数f2よりも低く設定してもよい。すなわち第1の周波数f1は、受信帯域の下側のカットオフ周波数fc1よりも高い周波数に設定され、第2の周波数f2は、第1の周波数f1よりも高く、且つ受信帯域の上側のカットオフ周波数fc2よりも低い周波数に設定される(すなわちfc1<f1<f2<fc2)。
【0057】
上記のようにf1<f2とした場合でも、f2<f1である場合と同様に、少なくとも2以上の搬送波の周波数を含む受信帯域内の任意の周波数を受信することが可能になる。もっとも受信帯域内のゲインを考えると、f2<f1とした方が望ましい。その理由は、整合回路120の入射波に対する反射波の比が、共振周波数f1より高い周波数で大きくなるからである。つまり整合回路120は、f1より低い周波数の信号を通過させやすいので、f2<f1とした方が受信帯域内のゲインを確保しやすいからである。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の受信回路100では、第2の周波数f2を、受信帯域の幅によって規定される周波数だけ第1の周波数f1からシフトされた周波数に設定することで、キャパシターを切り換える(共振周波数を切り換える)ことなしに、受信帯域内の周波数の異なる複数の搬送波を受信することができる。また整合回路及び低雑音増幅器の共振回路のキャパシターなどを切り換えるための回路が不要になるから、回路を簡素化することができる。
【0059】
さらに本実施形態の受信回路100では、受信帯域内のゲインをほぼフラットにすることができるから、所望波の信号強度を一定に制御することが容易になる。具体的には、検出回路160は、固定値に設定されたしきい値に基づいて信号強度の検出処理を行うことができる。すなわち受信する搬送波の周波数に応じてしきい値を可変に設定する必要がなくなる。
【0060】
2.集積回路装置
図7に、本実施形態の受信回路100を含む集積回路装置300(無線通信用LSI)の一例を示す。図7の集積回路装置300は、受信回路100、送信回路340、制御回路350を含む。さらに送信回路340は、パワーアンプ(PA)310、変調回路320、発振回路(PLL回路)330を含む。なお、整合回路120を集積回路装置300の内部に設けてもよい。
【0061】
発振回路(PLL回路)330は、基準クロックから必要な周波数(搬送波周波数など)の信号を生成する。変調回路320は送信データに基づいて搬送波を変調(例えば周波数変調)し、パワーアンプ(PA)310は変調された送信信号を増幅して、アンテナ110から送信する。なお、発振回路(PLL回路)330は、周波数変換回路140に含まれる発振回路250(図1)と共用することもできる。
【0062】
制御回路350は、無線通信の制御処理や集積回路装置300の外部の回路(ホストなど)とのデータ通信を行う。具体的には、例えば制御回路350は、周波数変換回路140の局所周波数を切り換えて、受信帯域内の選択された搬送波(受信したい搬送波)の周波数に対応する局所周波数に設定する処理などを行う。
【0063】
上述したように、本実施形態の受信回路100によれば、整合回路及び低雑音増幅器の共振回路のキャパシターを切り換えることなしに、受信帯域内の周波数の異なる複数の搬送波を受信することができる。その結果、キャパシターを切り換えるための回路が不要になるから、回路を簡素化することができる。さらに受信帯域内のゲインをほぼフラットにすることができるから、所望波の信号強度を一定に制御することが容易になる。
【0064】
3.電子機器
図8に、本実施形態の集積回路装置300を含む電子機器400の一例を示す。本実施形態の電子機器400は、集積回路装置300、整合回路120、センサー部410、A/D変換器420、記憶部430、ホスト440、操作部450を含む。
【0065】
電子機器400は、例えば温度・湿度計、脈拍計、歩数計等であって、検出したデータを無線により送信することができる。センサー部410は、温度センサー、湿度センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、フォトセンサー、圧力センサー等を含み、電子機器400の用途に応じたセンサーが用いられる。センサー部410は、センサーの出力信号(センサー信号)を増幅し、フィルターによりノイズを除去する。A/D変換器420は、増幅された信号をデジタル信号に変換して集積回路装置300へ出力する。ホスト440は、例えばマイクロコンピューター等で構成され、デジタル信号処理を行ったり、記憶部430に記憶された設定情報や操作部450からの信号に基づいて電子機器400の制御処理を行う。記憶部430は、例えばフラッシュメモリーなどで構成され、設定情報や検出したデータ等を記憶する。操作部450は、例えばキーパッド等で構成され、使用者が電子機器400を操作するために用いられる。
【0066】
本実施形態の受信回路100によれば、整合回路及び低雑音増幅器の共振回路のキャパシターを切り換えることなしに、受信帯域内の周波数の異なる複数の搬送波を受信することができる。したがって電子機器400は、簡素な回路で、受信帯域内の最適な周波数の搬送波を選択して受信を行うことができる。また、回路を簡素化することで、消費電力を低減することが可能になり、その結果、電池駆動の電子機器を長時間動作させることが可能になる。
【0067】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また受信回路、集積回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0068】
100 受信回路、110 アンテナ、120 整合回路、130 低雑音増幅器、
140 周波数変換回路、150 フィルター、160 検出回路、170 復調回路、
190 整合回路(出力側)、210、220、230 ミキサー、
240 局所周波数生成回路、250 発振回路、260 分周器、270 共振回路、
280 増幅部、300 集積回路装置、310 パワーアンプ、320 変調回路、
330 発振回路、340 送信回路、350 制御回路、400 電子機器、
410 センサー部、420 A/D変換器、430 記憶部、440 ホスト、
450 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナから整合回路を介して入力される入力信号を増幅する低雑音増幅器と、
前記低雑音増幅器の後段に設けられる周波数変換回路と、
前記周波数変換回路の後段に設けられるフィルターとを含み、
前記整合回路の共振周波数を第1の周波数とし、前記低雑音増幅器が有する共振回路の共振周波数を第2の周波数とした場合に、
前記第2の周波数が、受信帯域の幅によって規定される周波数だけ前記第1の周波数からシフトされた周波数に設定されることを特徴とする受信回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記受信帯域は、少なくとも2以上の搬送波の周波数を含むことを特徴とする受信回路。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第2の周波数は、前記受信帯域の下側のカットオフ周波数よりも高い周波数に設定され、
前記第1の周波数は、前記第2の周波数よりも高く、且つ前記受信帯域の上側のカットオフ周波数よりも低い周波数に設定されることを特徴とする受信回路。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記第1の周波数は、前記受信帯域の下側のカットオフ周波数よりも高い周波数に設定され、
前記第2の周波数は、前記第1の周波数よりも高く、且つ前記受信帯域の上側のカットオフ周波数よりも低い周波数に設定されることを特徴とする受信回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記周波数変換回路は、
局所周波数生成回路と、
前記局所周波数生成回路の出力と前記低雑音増幅器の出力とのミキシング処理を行うミキサーとを含み、
前記受信帯域は、少なくとも2以上の搬送波の周波数を含み、
前記局所周波数生成回路は、前記受信帯域内の選択された前記搬送波の周波数に対応して設定される局所周波数の信号を出力することを特徴とする受信回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記整合回路を構成するキャパシターの容量値及びインダクターのインダクタンス値は共に固定値であり、
前記低雑音増幅器が有する前記共振回路を構成するキャパシターの容量値及びインダクターのインダクタンス値は共に固定値であることを特徴とする受信回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記低雑音増幅器は、
前記入力信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部に流れる電流を設定するバイアス電流源と、
前記増幅部に直列に設けられる前記共振回路を含むことを特徴とする受信回路。
【請求項8】
請求項7について、
所望波の信号強度を検出する検出回路を含み、
前記検出回路は、固定値に設定されたしきい値に基づいて前記信号強度の検出処理を行い、
前記信号強度の前記検出処理の結果に基づいて、前記バイアス電流源の電流値が可変に設定されることを特徴とする受信回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の受信回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項10】
請求項9に記載の集積回路装置及び前記整合回路を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−97514(P2011−97514A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251951(P2009−251951)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】