説明

受光増幅回路及びそれを用いた光ピックアップ装置

【課題】光ディスクの高倍速化により高い周波数応答特性が必要な場合においても、RF信号成分の信号振幅を低下させない受光増幅回路を提供することを目的とする。
【解決手段】入力された光電流を電圧に変換するとともに、変換した電圧のうち第1カットオフ周波数より低い周波数に対応する電圧のみを出力する電流電圧変換アンプ102と、電流電圧変換アンプ102の後段に接続され、電流電圧変換アンプ102から出力された電圧のうち第2カットオフ周波数より低い周波数に対応する電圧のみを出力するCRローパスフィルタ回路103と、CRローパスフィルタ回路103の後段に接続され、CRローパスフィルタ回路103から出力された電圧を増幅する電圧増幅アンプ104と、少なくとも電圧増幅アンプ104と接続され、電圧増幅アンプ104から出力された電圧を加算増幅するRF増幅加算アンプ105と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ用PDIC(Photo Detector IC)に構成される受光増幅回路及びそれを用いた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)または、BD(Blu−ray Disc)などの光ディスクを再生、記録する光ディスク装置がある。光ディスク装置には、CD、DVD、BDからの読取光(光信号)を電気信号に変換するための光ピックアップ用PDIC(Photo Detector IC)が用いられている。光ピックアップ用PDICは、光信号を電気信号に変換する受光素子と、受光素子からの光電流を電圧に変換する増幅部とを備える。
【0003】
ここで、例えば、PDICを構成する増幅部として、光ディスクの反射光を受けるフォトダイオードからの受光信号を増幅するフォトダイオード増幅回路が知られている。
【0004】
図6は、フォトダイオード増幅回路を含むPDICの構成の一例を示す図である。同図のPDICは、フォトダイオード801と、電流電圧変換アンプ802と、電圧増幅アンプ804と、RF増幅加算アンプ805とを備えている。
【0005】
フォトダイオード801は、カソードが電流電圧変換アンプ802と接続されている。フォトダイオード801は、入射された光(読取光)を光電流に変換し、変換した光電流を電流電圧変換アンプ802の反転入力端子に出力する。
【0006】
電流電圧変換アンプ802は、その出力が電圧増幅アンプ804を介して出力端子とRF増幅加算アンプ805とに接続されている。電流電圧変換アンプ802は、入力された光電流を電圧に変換し、電圧増幅アンプ804を介して、出力端子とRF増幅加算アンプ805とに出力する。
【0007】
RF増幅加算アンプ805は、少なくとも電圧増幅アンプ804の出力端と接続されている。また、RF増幅加算アンプ805は、電圧増幅アンプ804の出力端以外にも複数の電圧増幅アンプの出力端とも接続されている。ここで、複数の電圧増幅アンプにはそれぞれ、電圧増幅アンプ804と同様に、フォトダイオード、電流電圧増幅アンプからなる出力が入力されている。
【0008】
RF増幅加算アンプ805は、電圧増幅アンプ804を含む複数の電圧増幅アンプからの出力を加算増幅して出力する。
【0009】
また、近年では、1つのPDICに互いに異なる複数のフォトダイオードを備えることで複数種の光ディスクに対応するPDICが主流となっている。
【0010】
そして、それに伴い、PDICの回路規模は大きくなってしまうのを抑制する技術が開示されている(例えば特許文献1)。この特許文献1には、複数のフォトダイオードを備えたPDICの回路規模を削減するために、各フォトダイオードと増幅回路との接続を切り替えるスイッチを備える増幅回路が開示されている。
【0011】
ここで、図7は、特許文献1における増幅回路の構成を示す図である。図7に示す増幅回路901は、オペアンプ910と抵抗916とで構成され、スイッチ941を介してフォトダイオード942又は943に接続されている。オペアンプ910は、差動増幅回路920及びソースフォロア回路930からなり、これらが従属接続された構成を有している。
【0012】
差動増幅回路920は、カレントミラー接続されたPチャンネルMOSのトランジスタ921及び922と、トランジスタ921及び922にそれぞれ直列接続されたNチャンネルMOSのトランジスタ923及び924と、トランジスタ923及び924のソースに接続された定電流源925とで構成されている。
【0013】
ソースフォロア回路930は、差動増幅回路920の出力がゲートに供給されるNチャンネルMOSのトランジスタ931と、トランジスタ931のソースに接続された定電流源932とで構成されている。
【0014】
ところで、CDからDVD、BDへと光ディスクの記録容量が大きくなるとともに、光ディスクの再生倍速及び記録倍速が速くなっている。それに伴い、光ディスクの情報信号であるRF(Radio Frequency)信号も高周波化している。そのため、PDICには高い周波数特性が求められている。換言すると、PDICは、光ディスクの高倍速化対応のため、増幅回路の周波数特性を高帯域まで伸ばすよう求められている。
【0015】
それに対して、従来、増幅回路の高周波応答特性を改善する手法として、増幅回路に用いられるトランジスタの高速化、プロセスの微細化、増幅回路の回路構成または回路定数の最適化を行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−88585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に開示された増幅回路の高周波応答特性を従来の手法を用いて単純に改善するだけでは光ピックアップとして不具合が発生することが予想される。
【0018】
具体的には、光ピックアップで用いられるレーザダイオードの駆動電流は、高周波重畳モジュールにより高周波信号が重畳されている。そのため、増幅回路の周波数特性が高周波重畳モジュールの発振周波数まで伸びた場合には問題が生じてしまう。
【0019】
高周波重畳モジュールは、光ディスクからの反射光によって発生する戻り光ノイズと、光ピックアップ用レーザダイオードの温度変動によって発生するモード・ホッピング・ノイズを低減するために使われる。そして、高周波重畳モジュールは、レーザダイオードの駆動電流に数百MHzの高周波電流を重畳して、レーザダイオードの発振モードをシングル・モードからマルチ・モードに変えることによってレーザの出力を安定させている。ここで、この高周波重畳モジュールの発振周波数は、300MHz〜400MHz程度である。
【0020】
そのため、増幅回路の周波数特性が300MHz〜400MHzまで伸びると、増幅回路が高周波重畳成分まで検出してしまうことになり、高周波重畳成分がRF信号成分に影響してしまい、RF信号成分の信号品質が劣化する。その結果、光ピックアップのジッター、再生エラーレートが悪化するという不具合が発生する。
【0021】
それに対して、PDICが備える電流電圧変換アンプの帰還容量の値を大きくすることなどにより高周波重畳成分が影響しなくなるまで増幅回路の周波数特性を下げる手法も考えられる。しかし、増幅回路の周波数特性を下げると、増幅回路のカットオフ周波数も低下してしまい、RF信号成分の信号振幅が小さくなってしまう。それによりRF信号成分の信号品質が劣化し、ドライブのジッター、再生エラーレートが悪化してしまう不具合が発生する。
【0022】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、光ディスクの高倍速化により高い周波数応答特性が必要な場合においても、RF信号成分の信号振幅を低下させない受光増幅回路及びそれを備えた光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る増幅回路は、光ピックアップに用いられる増幅回路であって、コンデンサと抵抗とオペアンプとで構成された電流電圧変換増幅回路であって、入力された光電流を電圧に変換するとともに、変換した前記電圧のうち第1カットオフ周波数より低い周波数に対応する電圧のみを出力する電流電圧変換増幅回路と、前記電流電圧変換増幅回路の後段に接続され、前記電流電圧変換増幅回路から出力された電圧のうち第2カットオフ周波数より低い周波数に対応する電圧のみを出力するローパスフィルタ回路と、前記ローパスフィルタ回路の後段に接続され、前記ローパスフィルタ回路から出力された電圧を増幅する電圧増幅回路と、少なくとも前記電圧増幅回路と接続され、前記電圧増幅回路から出力された電圧を加算増幅する増幅加算回路と、を備える。
【0024】
この構成によれば、初段の電流電圧変換アンプに含まれる帰還抵抗と帰還容量とで構成されるローパスフィルタと、後段に接続するローパスフィルタ回路とによりフィルタを2段化して2次フィルタを形成することができる。それにより、増幅回路のフィルタ特性をシャープにすることが可能となる。その結果、増幅回路のカットオフ周波数を低下することなく高周波重畳帯域のゲインを下げることができるので、RF信号成分の信号振幅を低下させることなく高周波重畳成分のみをカットすることが可能となる。
【0025】
したがって、光ディスクの高倍速化により高い周波数特性が必要な場合においても、RF信号成分の信号振幅を低下させない受光増幅回路を実現することができる。
【0026】
ここで、前記ローパスフィルタ回路は、抵抗とコンデンサとを組み合わせて構成されるCRローパスフィルタ回路であるとしてもよい。
【0027】
この構成により、CRローパスフィルタのカットオフ周波数と前記電流電圧変換アンプのカットオフ周波数の関係を最適に設計することにより本発明の効果を得やすくすることができる。
【0028】
また、前記第2カットオフ周波数は、前記第1カットオフ周波数に比べて小さいとしてもよい。
【0029】
また、前記電圧増幅回路は、帰還抵抗をもつ非反転電圧増幅回路であり、前記帰還抵抗の抵抗値は、前記CRローパスフィルタ回路を構成する前記抵抗の抵抗値と等しいとしてもよい。
【0030】
なお、以下に示す実施の形態では、電流電圧変換アンプ102の後段にCRローパスフィルタ回路103を接続する。しかしながら、ローパスフィルタ回路を構成する容量が電流電圧変換アンプの負荷容量となり位相余裕を低下させる恐れがあるため、従来はこのような発想がなかったと考えられる。それに対して、本願発明者らは、上記の構成により、RF信号成分の信号振幅を低下させることなく高周波重畳成分のみをカットすることが可能となる利点があることを見出した。また、上記の構成を実施する上では、電流電圧変換アンプ内の位相補償容量、位相補償抵抗の定数最適化を行い、電流電圧変換アンプの後段にローパスフィルタ回路を接続した場合においても十分な位相余裕を確保することが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、光ディスクの高倍速化により高い周波数特性が必要な場合においても、RF信号成分の信号振幅を低下させない受光増幅回路及びそれを備えた光ピックアップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明における光ピックアップ部の構成例を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1における受光増幅回路の構成を示す図である。
【図3】従来技術及び本発明の受光増幅回路の周波数特性を概念的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2における受光増幅回路の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3における受光増幅回路の構成を示す図である。
【図6】フォトダイオード増幅回路を含むPDICの構成の一例を示す図である。
【図7】特許文献1における増幅回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施例における増幅回路について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明における光ピックアップ部の構成例を説明するための図である。
【0035】
図1に示す光ピックアップ部1は、PDIC2と、プリズム3と、半導体レーザ4と、レンズ5とを備える。この光ピックアップ部1は、CD、DVDまたはBDなどの光ディスクを再生、記録する光ディスク装置に構成される。
【0036】
半導体レーザ4は、光ディスク6に、付加情報を記録するまたは光ディスク6に記録されている情報を読み取るためのレーザ光を発する。
【0037】
プリズム3は、半導体レーザ4からのレーザ光をレンズ5側に反射させる。また、プリズム3は、レンズ5からの読取光(反射光)を屈折させ、PDIC2に導く。
【0038】
レンズ5は、プリズム3で反射されたレーザ光を光ディスク6に集光させ、光ディスク6からの読取光(反射光)をプリズム3に導く。
【0039】
PDIC2は、光ディスク6の読取光(光信号)を電気信号に変換するための光ピックアップ用のPDICであり、受光増幅回路を備えている。
【0040】
なお、光ディスク6は、例えばCD、DVD、BD等であり、再生専用の光ディスクでも書き換え可能型の光ディスクであってもよい。
【0041】
以上のように、光ピックアップ部1は構成される。
【0042】
図2は、本発明の実施の形態1における受光増幅回路の構成を示す図である。
【0043】
図2に示す受光増幅回路10は、フォトダイオード101と、電流電圧変換アンプ102と、CRローパスフィルタ回路103と電圧増幅アンプ104と、RF増幅加算アンプ105とを備える。ここで、受光増幅回路10は、PDIC2に構成される。
【0044】
フォトダイオード101は、アノードが接地され、カソードが電流電圧変換アンプ102の反転入力端子と接続されている。フォトダイオード101は、光ディスク6からの読取光(反射光)を光電流に変換し、変換した光電流を電流電圧変換アンプ102の反転入力端子に出力する。具体的には、フォトダイオード101は、光ディスク6に反射されたレーザ光を受けて、電流電圧変換アンプ102から光電流I1を引き抜く。
【0045】
電流電圧変換アンプ102は、本発明の電流電圧変換増幅回路に相当し、コンデンサと抵抗とオペアンプとで構成され、入力された光電流を電圧に変換するとともに、変換した電圧のうちカットオフ周波数より低い周波数に対応する電圧のみを出力する。具体的には、電流電圧変換アンプ102は、オペアンプの帰還ループに挿入された帰還抵抗102bと、帰還抵抗102bと並列に接続された帰還容量102aとを有し、その出力端がCRローパスフィルタ回路103に接続されている。ここで、帰還抵抗102bの抵抗(帰還抵抗)をR1、帰還容量102aの容量(帰還容量)をC1とする。電流電圧変換アンプ102は、入力された光電流(信号電流)を電圧(信号電圧)に変換し、変換した信号電圧をCRローパスフィルタ回路103に出力する。
【0046】
具体的には、電流電圧変換アンプ102では、I1が帰還抵抗102bを流れ、帰還抵抗102bの両端にはI1×R1の電圧が発生する。なお、帰還抵抗102bの抵抗値R1は光ピックアップの仕様により決定される値である。
【0047】
ここで、電流電圧変換アンプ102の出力のカットオフ周波数fc1は、電流電圧変換アンプ102内の周波数特性が無限大である場合、fc1=1/(2π×R1×C1)と表すことができる。しかし、実際には電流電圧変換アンプ102内の周波数特性は無限大ではなく、fc1は電流電圧変換アンプ内部の周波数特性により決まってしまう。そのため、電流電圧変換アンプ102の高周波化応答性対応を改善することを目指す場合はfc1<1/(2π×R1×C1)となる場合が多い。また、帰還容量102aの容量C1及び電流電圧変換アンプ102内の回路定数は、電流電圧変換アンプ102の出力の周波数特性及び電流電圧変換アンプ102内の位相余裕が最適になるように調整される。
【0048】
CRローパスフィルタ回路103は、本発明のローパスフィルタ回路に相当し、電流電圧変換アンプ102の後段に接続され、電流電圧変換アンプ102から出力された電圧のうちカットオフ周波数より低い周波数に対応する電圧のみを出力する。CRローパスフィルタ回路103の出力は電圧増幅アンプ104に入力される。
【0049】
また、CRローパスフィルタ回路103は、抵抗103aと容量103bとを組み合わせて構成される。典型的には図3に示すように、信号線に並列すなわち入力端と出力端とに接続された抵抗103aと、入力信号と直列すなわち出力端とグラントとに接続された容量103bとで構成される。
【0050】
ここで、抵抗103aの抵抗をR2、容量103bの容量をC2とすると、CRローパスフィルタ回路103のカットオフ周波数fc2はfc2=1/(2π×R2×C2)で表される。
【0051】
このようにして、電流電圧変換アンプ102とCRローパスフィルタ回路103とは2次フィルタを形成する。
【0052】
電圧増幅アンプ104は、本発明の電圧増幅回路に相当し、CRローパスフィルタ回路103に接続され、CRローパスフィルタ回路103から出力された電圧を増幅する。
【0053】
電圧増幅アンプ104は、CRローパスフィルタ回路103に接続され、出力端子106及びRF増幅加算アンプ105に接続されている。
【0054】
RF増幅加算アンプ105は、本発明の増幅加算回路に相当し、電圧増幅アンプ104に接続され、電圧増幅アンプ104から出力された電圧を加算増幅する。
【0055】
具体的には、RF増幅加算アンプ105は、少なくとも電圧増幅アンプ104の出力端と接続されている。また、RF増幅加算アンプ105は、電圧増幅アンプ104の出力端以外にも複数の電圧増幅アンプの出力端とも接続されている。ここで、複数の電圧増幅アンプにはそれぞれ、電圧増幅アンプ104と同様に、フォトダイオード、電流電圧増幅アンプ、CRローパスフィルタからなる出力が入力されている。
【0056】
RF増幅加算アンプ105は、電圧増幅アンプ104を含む複数の電圧増幅アンプからの出力を加算増幅して出力する。
【0057】
以上のように、受光増幅回路10は構成される。
【0058】
次に、本実施の形態1における受光増幅回路10の周波数特性について説明する。
【0059】
図3は、従来技術及び本発明の受光増幅回路の周波数特性を概念的に示す図である。
【0060】
図3において、特性Aは、従来技術において電流電圧変換アンプ102の回路定数を最適化し、可能な限り高帯域まで周波数特性を伸ばした場合の周波数特性を示している。特性Bは従来技術において電流電圧変換アンプ102の帰還容量102aの容量C1を大きくすることなどにより特性Aに対して周波数特性を低下させた場合の周波数特性を示している。それに対して、特性Cは本発明における受光増幅回路10の周波数特性を示している。
【0061】
特性Aに示すように、電流電圧変換アンプ102の回路定数を最適化して受光増幅回路10の周波数特性を高帯域まで延ばした場合には、受光増幅回路は、高周波重畳成分まで検出してしまうのがわかる。つまり、受光増幅回路が特性Aを示す場合には、高周波重畳成分がRF信号成分に影響してしまい、RF信号成分の信号品質が劣化してしまう。
【0062】
一方、特性Bに示すように、電流電圧変換アンプ102の回路定数を最適化するとともに電流電圧変換アンプ102の帰還容量102aの容量C1を大きくして受光増幅回路10の周波数特性を高帯域まで延ばした場合には、高周波重畳の帯域である300MHz〜400MHzの帯域のゲインを高周波重畳成分の影響が出なくなるまで下げることができる。しかし、電流電圧変換アンプ102の帰還容量102aの容量C1を大きくすることにより高周波重畳の帯域のゲインを下げようとすると、特性Bに示すように受光増幅回路のカットオフ周波数も低下するという弊害が生じる。それによりRF信号成分の信号振幅が小さくなってしまい、結果、RF信号成分の信号品質が劣化してしまう。
【0063】
これらに対して、本発明における受光増幅回路10は、初段の電流電圧変換アンプ102が有する帰還抵抗102bの抵抗値R1及び帰還容量102aの容量C1で構成されるローパスフィルタと、その後段に接続されるCRローパスフィルタ回路103とで2次フィルタを形成する。この構成により、特性Cに示すように、受光増幅回路10のフィルタ特性が特性Aに比較してシャープになるため、この受光増幅回路10のカットオフ周波数を低下することなく高周波重畳帯域のゲインを下げることができる。その結果、RF信号成分の信号振幅を低下させることなく高周波重畳成分のみをカットすることが可能となる。
【0064】
以上、本実施の形態によれば、光ディスクの高倍速化により高い周波数応答特性が必要な場合においても、RF信号成分の信号振幅を低下させない受光増幅回路およびそれを備えた光ピックアップ装置を実現することができる。
【0065】
具体的には、初段の電流電圧変換アンプ102に含まれる帰還抵抗102b及び帰還容量102aで構成されるローパスフィルタと、その後段に接続されるCRローパスフィルタ回路103でフィルタを2段化して2次フィルタを形成する。それにより、受光増幅回路10のフィルタ特性を、図3の特性Cに示すように、シャープにすることが可能となる。その結果、増幅回路のカットオフ周波数を低下することなく高周波重畳帯域のゲインを下げることができるため、RF信号成分の信号振幅を低下させることなく高周波重畳成分のみをカットすることが可能となる。
【0066】
なお、電流電圧変換アンプ102の出力のカットオフ周波数fc1とCRローパスフィルタ回路103のカットオフ周波数fc2との関係性はfc1>fc2となるように設定することが望ましい。なぜなら、fc1>fc2と設定した方が、fc1<fc2と設定した場合に対して2次フィルタの特性がよりシャープになり、本発明の効果を得やすいからである。
【0067】
また、本実施の形態における受光増幅回路10は、以下の点を注意して設計する必要がある。すなわち、CRローパスフィルタ回路103を構成する容量103bが付加された場合においても十分な位相余裕が確保されるように電流電圧変換アンプ102内の回路定数を最適化する必要がある。なぜなら、本実施の形態では電流電圧変換アンプ102の後段に直列にCRローパスフィルタ回路103が接続されているため、CRローパスフィルタ回路103を構成する容量103bの容量C2が電流電圧変換アンプ102の負荷容量となる。そして、電流電圧変換アンプ102に負荷容量が付加されるとアンプ内部の位相が変化し、位相余裕が低下して、周波数特性にピーキングが発生してしまい最悪の場合発振してしまう可能性があるからである。
【0068】
したがって、電流電圧変換アンプ102内の帰還容量、位相補償容量及び位相補償抵抗の調整を行うことにより、周波数特性にピーキングが発生しないようにし、さらに目標帯域の周波数特性を確保した上で、位相余裕の目標値を確保するように設計する必要がある。
【0069】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における受光増幅回路の構成を示す図である。図2と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0070】
図4に示す受光増幅回路12は、フォトダイオード101と、電流電圧変換アンプ102と、CRローパスフィルタ回路103と、電圧増幅アンプ124と、RF増幅加算アンプ105とを備える。
【0071】
図4に示す受光増幅回路12は、図2に示す受光増幅回路10に対して、電圧増幅アンプ124の構成が異なる。具体的には、電圧増幅アンプ124は、実施の形態1で説明した電圧増幅アンプ104の構成に、帰還抵抗124aを加えている点が異なる。それにより、電圧増幅アンプ124は、増幅率1倍の非反転バッファアンプとして機能する。ここで、電圧増幅アンプ124の帰還抵抗124aの抵抗値R3は、CRローパスフィルタ回路103を構成する抵抗103aの抵抗値R2と値が等しい。
【0072】
換言すると、電圧増幅アンプ124は、帰還抵抗124aが構成された非反転電圧増幅回路であり、帰還抵抗124aの抵抗値R3は、CRローパスフィルタ回路103を構成する抵抗103aの抵抗値R2と等しい。
【0073】
以上のように、受光増幅回路12は構成される。
【0074】
本実施の形態では、上記のように構成されることにより、実施の形態1の効果に加えて、次に説明するような効果がある。
【0075】
実施の形態1のように電流電圧変換アンプ102の後段にCRローパスフィルタ回路103を接続した場合、CRローパスフィルタ回路103を構成する抵抗103aの抵抗値R2と、その後段に接続される電圧増幅アンプ104の入力端に流れる入力電流I2との電圧降下I2×R2によって、電圧増幅アンプ104の出力にオフセット電圧I2×R2が発生してしまう。
【0076】
しかし、本実施の形態では、図4に示すように電圧増幅アンプ104(非反転バッファアンプ)の帰還部として構成した帰還抵抗124aの抵抗値R3の値を、CRローパスフィルタ回路103を構成する抵抗103aの抵抗値R2と等しくする。それにより、電圧増幅アンプ104(非反転バッファアンプ)の反転入力端子に流れる電流I3と抵抗値R3との電圧降下I3×R3が、抵抗値R2と入力電流I2との電圧降下I2×R2を相殺するため、出力オフセット電圧を0にすることが可能となる。
【0077】
以上、本実施の形態によれば、光ディスクの高倍速化により高い周波数特性が必要な場合においても、RF信号成分の信号振幅を低下させない受光増幅回路及びそれを備えた光ピックアップ装置を実現できる。さらに、本実施の形態によれば、受光増幅回路の出力がオフセット電圧により変化することを防止することができるという効果を奏する。
【0078】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における受光増幅回路の構成を示す図である。図2と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0079】
図5に示す受光増幅回路13は、フォトダイオード101と複数の切替可能な帰還抵抗を備える電流電圧変換アンプ132と、CRローパスフィルタ回路133と、電圧増幅アンプ104と、RF増幅加算アンプ105とを備える。
【0080】
図5に示す受光増幅回路13は、図2に示す受光増幅回路10に対して、電流電圧変換アンプ132と、CRローパスフィルタ回路133との構成が異なる。
【0081】
電流電圧変換アンプ132は、本発明の電流電圧変換増幅回路の一例であり、抵抗値の異なる複数の抵抗を切り替えることでゲインが切り替わる。具体的には、電流電圧変換アンプ132は、複数の帰還抵抗すなわち帰還抵抗132b及び帰還抵抗132cを切り替えるためのスイッチ132dを備えている。スイッチ132dは、帰還抵抗132b及び帰還抵抗132cを切り替えることにより、電流電圧変換アンプ132のゲインを切り替えることができる。
【0082】
CRローパスフィルタ回路133は、CRローパスフィルタ回路の機能をオンまたはオフするためのスイッチを有する。具体的には、CRローパスフィルタ回路133は、スイッチ133aと、スイッチ133bと、スイッチ133cと、抵抗103aと、容量103bとを備える。ここで、抵抗103aと容量103bとを組み合わせて構成されるCRローパスフィルタ回路部133dは、実施の形態1のCRローパスフィルタ回路103に相当する。
【0083】
スイッチ133a及びスイッチ133cは、CRローパスフィルタ回路部133dのそれぞれ入力端及び出力端に配置され、CRローパスフィルタ回路部133dと直列に接続されている。
【0084】
スイッチ133bは、CRローパスフィルタ回路部133dを迂回する接続線に配置され、CRローパスフィルタ回路部133dに並列に接続されている。
【0085】
スイッチ133a及びスイッチ133cと、スイッチ133bとは、電流電圧変換アンプ132のスイッチ132dと連動して動作して、CRローパスフィルタ回路部133dの動作をON/OFFと切り替えることができる。
【0086】
以上のように、受光増幅回路13は構成される。
【0087】
本実施の形態では、上記のように構成することにより、実施の形態1の効果に加えて、次に説明するような効果がある。
【0088】
図5に示す電流電圧変換アンプ132は、必要に応じて複数の帰還抵抗を切り替えるゲイン切替機能を備えている。例えば、受光増幅回路13が構成されるPDIC2のモード(記録モードまたは再生モード)に応じて複数の帰還抵抗を切り替えるなどが考えられる。その場合、全モードにおいてCRローパスフィルタ回路103が接続されていると不都合を生じる場合がある。
【0089】
記録モードでは、受光増幅回路13の出力には速いパルス応答特性が求められる。この場合にCRローパスフィルタ回路103が接続され動作していると、CRローパスフィルタ回路103を構成する容量103bの容量C2が負荷容量となり、受光増幅回路13の出力のパルス応答特性が訛ってしまう。また、この記録モードでは、通常、高周波重畳モジュールはOFFとなっている。そのため、シャープなフィルタ特性は必要なく、CRローパスフィルタ回路103の動作はOFFとなっていることが好ましい。
【0090】
本実施の形態の受光増幅回路13では、電流電圧変換アンプ132のゲイン切替に応じて、必要なタイミングでCRローパスフィルタ回路103の動作をON/OFF切替することができる。それにより、CRローパスフィルタ回路103の動作を再生モード時ではONし、記録モード時ではOFFするように設定すれば、再生モードにおいては不要な高周波重畳成分をカットし、記録モードにおいては電流電圧変換アンプの負荷容量を低減することによりパルス応答波形の訛りを防ぐことができる。
【0091】
以上、本実施の形態によれば、光ディスクの高倍速化により高い周波数応答特性が必要な場合においても、RF信号成分の信号振幅を低下させない受光増幅回路およびそれを備えた光ピックアップ装置を実現することができる。
【0092】
以上、本実施の形態によれば、光ディスクの高倍速化により高い周波数特性が必要な場合においても、RF信号成分の信号振幅を低下させない受光増幅回路及びそれを備えた光ピックアップ装置を実現できる。さらに、本実施の形態によれば、ゲイン切替機能を備え、それぞれのゲインモードに応じて最適な周波数特性を選択することが可能となるという効果も奏する。
【0093】
以上、本発明の受光増幅回路およびそれを備えた光ピックアップ装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、フォトダイオードからの受光信号を増幅する増幅回路に利用でき、特にCD、DVD、またはBDなどの光ディスクの読み出しまたは書き込みを行うPDIC及びそれを備える光ディスクドライブに利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 光ピックアップ部
2 PDIC
3 プリズム
4 半導体レーザ
5 レンズ
6 光ディスク
10、12、13 受光増幅回路
101、801 フォトダイオード
102、132、802 電流電圧変換アンプ
102a 帰還容量
102b、124a、132b、132c 帰還抵抗
103、133 CRローパスフィルタ回路
103a、916 抵抗
103b 容量
104、124、804 電圧増幅アンプ
105、805 RF増幅加算アンプ
106 出力端子
132d、133a、133b、133c、941 スイッチ
133d CRローパスフィルタ回路部
901 増幅回路
910 オペアンプ
914 基準電圧源
920 差動増幅回路
921、922、923、924、931 トランジスタ
925、932 定電流源
930 ソースフォロア回路
942、943 フォトダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップに用いられる増幅回路であって、
コンデンサと抵抗とオペアンプとで構成された電流電圧変換増幅回路であって、入力された光電流を電圧に変換するとともに、変換した前記電圧のうち第1カットオフ周波数より低い周波数に対応する電圧のみを出力する電流電圧変換増幅回路と、
前記電流電圧変換増幅回路の後段に接続され、前記電流電圧変換増幅回路から出力された電圧のうち第2カットオフ周波数より低い周波数に対応する電圧のみを出力するローパスフィルタ回路と、
前記ローパスフィルタ回路の後段に接続され、前記ローパスフィルタ回路から出力された電圧を増幅する電圧増幅回路と、
少なくとも前記電圧増幅回路と接続され、前記電圧増幅回路から出力された電圧を加算増幅する増幅加算回路と、を備える
増幅回路。
【請求項2】
前記ローパスフィルタ回路は、抵抗とコンデンサとを組み合わせて構成されるCRローパスフィルタ回路である
請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記第2カットオフ周波数は、前記第1カットオフ周波数に比べて小さい
請求項2に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記電圧増幅回路は、帰還抵抗をもつ非反転電圧増幅回路であり、
前記帰還抵抗の抵抗値は、前記CRローパスフィルタ回路を構成する前記抵抗の抵抗値と等しい
請求項2に記載の増幅回路。
【請求項5】
前記ローパスフィルタ回路は、前記ローパスフィルタ回路の機能をオンまたはオフするためのスイッチを有し、
前記電流電圧変換増幅回路は、抵抗値の異なる複数の抵抗を切り替えることで電流電圧変換におけるゲインを切り替え、
前記スイッチは、前記ゲインの切り替わりに連動して、前記ローパスフィルタ回路の機能をオンまたはオフする
請求項1または2に記載の増幅回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の増幅回路を備える
光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−20673(P2013−20673A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153279(P2011−153279)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】