可変容量型ターボチャージャー
【課題】 ノズルベーンが円滑に摺動することが可能な可変容量型ターボチャージャーを提供する。
【解決手段】 可変容量型ターボチャージャー1は、ハウジング201と、ハウジング201に設けられ、排気の流れを調整するためのノズル42を駆動するための駆動機構202と、駆動機構202に隣接するように設けられる炭化水素吸着体301とを備える。
【解決手段】 可変容量型ターボチャージャー1は、ハウジング201と、ハウジング201に設けられ、排気の流れを調整するためのノズル42を駆動するための駆動機構202と、駆動機構202に隣接するように設けられる炭化水素吸着体301とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可変容量型ターボチャージャーに関し、より特定的には、炭化水素吸着体を備えた可変容量型ターボチャージャーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、主としてディーゼルエンジン向けに、供給する空気量をより的確に制御できる機構を持った可変容量型ターボチャージャーが製造されている。
【0003】
この可変容量型ターボチャージャーの一種として、ベーンの向きをさまざまに変化させることでタービンの回転を調整できる、VNターボ(バリアブルノズルターボ)が知られている。タービンに関しては、たとえば特開平11−229886号公報(特許文献1)、特開2005−98193号公報(特許文献2)および特開平9−112392号公報(特許文献3)に開示されている。
【特許文献1】特開平11−229886号公報
【特許文献2】特開2005−98193号公報
【特許文献3】特開平9−112392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、VNターボのノズルベーンの駆動部に未燃焼の炭化水素(HC)などが侵入しないように、プレートとタービンハウジングの間にシール構造を持たせている。
【0005】
特許文献2では、VNターボのハウジングの表面等に酸化触媒をコーティングし、始動直後の排気の浄化を促進している。
【0006】
特許文献3では、インジェクタの噴射口に、酸化触媒のコーティング層を形成している。
【0007】
上述のようないずれの技術であっても、ノズルを駆動させる駆動機構を円滑に動作させることが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、ベーンを確実に駆動させることが可能な可変容量型ターボチャージャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った可変容量型ターボチャージャーは、ハウジングと、ハウジングに設けられ、排気の流れを調整するためのベーンを駆動する駆動機構と、駆動機構に隣接するように設けられる炭化水素吸着体とを備える。
【0010】
このように構成された可変容量型ターボチャージャーでは、駆動機構に隣接するように炭化水素吸着体が設けられるため、この炭化水素吸着体が未燃焼の炭化水素を吸着することができる。その結果、炭化水素が駆動機構に付着することを防止し、ベーンの円滑な駆動を可能とする。
【0011】
好ましくは、ハウジングには駆動部を収納する内部空間が設けられ、内部空間に炭化水素吸着体が配置される。
【0012】
好ましくは、炭化水素吸着体はベーンを保持するノズルプレートを構成する。
好ましくは、駆動機構は、ベーンに接続されるベーンシャフトと、ベーンシャフトを保持するノズルプレートとを含む。炭化水素吸着体は、ベーンシャフトとノズルプレートとの間に介在するブッシュを構成する。
【0013】
好ましくは、ブッシュを取囲む第一溝と、第一溝に連なり、他の空間まで達する第二溝とがノズルプレートに設けられる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に従えば、ベーンをスムーズに駆動させることが可能な可変容量型ターボチャージャーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従ったディーゼルエンジンシステムを示す概略構成図である。図1のディーゼルエンジンシステムは、ディーゼルエンジンのクリーン排気を実現するために、高圧コモンレール式燃料噴射装置、大容量電子制御EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ、DPNR(Diesel Particulate NOx Reduction)触媒を組合せ、PM(Particulate Matter)およびNOxを連続かつ同時に低減するシステムである。図1において、内燃機関(以下エンジンという)1000は、燃料供給系100、燃焼室200、吸気系300および排気系400とを主要部として構成される直列4気筒のディーゼルエンジンである。なお、シリンダ数は特に限定されるものではなく、またエンジンの形状も、直列型、V型、W型、水平対向型などのさまざまな形状を採用することが可能である。また、DPNR450は、PMを再生するDPF(Diesel Particulate Filter)であっても採用することが可能である。
【0017】
燃料供給系100は、サプライポンプ110、コモンレール120、燃料噴射弁130、遮蔽弁140、調量弁160、燃料添加ノズル170、機関燃料通路800および添加燃料通路810とを備えて構成される。
【0018】
サプライポンプ110は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした上で、機関燃料通路800を介してコモンレール120に供給する。コモンレール120は、サプライポンプ110から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各燃料噴射弁130に分配する。燃料噴射弁130は、その内部に電磁ソレノイドを備え、適宜開弁して燃焼室200内に燃料を噴射供給する。
【0019】
サプライポンプ110は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路810を介して燃料添加ノズル(還元剤噴射ノズル)170に供給する。添加燃料通路810には、サプライポンプ110から燃料添加ノズル170に向かって遮蔽弁140および調量弁160が順次配設されている。遮蔽弁140は、緊急時において添加燃料通路810を遮断し、燃料供給を停止する。調量弁160は、燃料添加ノズル170に供給する燃料の圧力(燃圧)を制御する。燃料添加ノズル170は所定圧以上の燃圧(たとえば0.2MPa)が付与されると開弁し、排気系400(排気ポート410)内に燃料を噴射供給する機械式の開閉弁である。すなわち、調量弁160により燃料添加ノズル170上流の燃圧が制御されることにより、所望の燃料が最適なタイミングで燃料添加ノズル170より噴射供給(添加)される。
【0020】
吸気系300は、各燃焼室200内に供給される吸入空気の通路(吸気通路)を構成する。排気系400は、上流から下流にかけ、排気ポート410、排気マニホールド420、触媒上流側通路430、触媒下流側通路440という各種通路部材が順次接続されて構成され、各燃焼室200から排出される排気ガスの通路(排気通路)を形成する。
【0021】
さらに、このエンジン1000には、過給機(可変容量型ターボチャージャー)1が設けられる。可変容量型ターボチャージャー1は、タービンシャフト7を介してコンプレッサホイール34とタービンホイールアッセンブリ22とが接続された構造を有する。吸気系のコンプレッサホイール34は、吸気系300内の吸気にさらされ、タービンホイールアッセンブリ22は、排気系400内の排気にさらされる。このような構成を有する可変容量型ターボチャージャー1は、タービンホイールアッセンブリ22が受ける排気圧(排気流)を利用して、コンプレッサホイール34を回転させ、吸気圧を高めるという、いわゆる過給を行なう。
【0022】
吸気系300において、可変容量型ターボチャージャー1に設けられたインタークーラ310は、過給によって昇温した吸入空気を強制冷却する。インタークーラ310よりもさらに下流に設けられたスロットル弁320は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有する。
【0023】
また、エンジン1000には、燃焼室200の上流(吸気系300)および下流(排気系400)をバイパスする排気還流通路(EGR経路)600が形成されている。このEGR通路600は、排気の一部を適宜吸気系300に戻す機能を有する。EGR通路600には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGR弁610と、EGR通路600を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ620とが設けられている。
【0024】
排気系400において、排気がタービンホイールアッセンブリ22の下流(触媒上流側通路430と触媒下流側通路440)との間には、DPNRにより構成される触媒450が配置される。この触媒450は排気中のNOxおよびPMを減少させる働きがある。エンジン1000の各部位には、各種センサが取付けられており、それぞれの部位の環境条件やエンジン1000の運転状態に関する信号を出力する。
【0025】
たとえば、レール圧センサ700は、コモンレール120内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。燃圧センサ710は、添加燃料通路810内を流通する燃料のうち、調量弁160へ導入される燃料の圧力(燃圧)Pgに応じた検出信号を出力する。エアフローメータ720は、吸気系300内のスロットル弁320の下流において吸入空気の流量(吸気量)Gaに応じた検出信号を出力する。空燃比(A/F)センサ730は、吸気系300の触媒ケーシングの下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ740は、同じく排気系400の触媒ケーシング下流において排気の温度(排気温度)Texに応じた検出信号を出力する。
【0026】
また、アクセル開度センサ750は、エンジン1000のアクセルペダルに取付けられ、同ペダルの踏込み量Accに応じた検出信号を出力する。クランク角センサ760は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力する。これら各センサ700〜760は、電子制御装置(ECU、エンジンコントロールユニットともいう)1100と電気的に接続される。ECU1100は、CPU(中央演算ユニット)、ROM、RAMおよびバックアップRAM、タイマやカウンタなどを備え、これらと、アナログ/デジタル(A/D)変換器を含む外部入力回路および外部出力回路とが双方向性バスにより接続されている。
【0027】
次に、エンジンコントロールユニット1100の実行する燃料添加の基本原理について、その概略を説明する。
【0028】
一般に、ディーゼルエンジンでは、燃焼室内で燃焼に供される燃料および空気の混合気の酸素濃度は、殆どの運転状態で高濃度状態である。
【0029】
燃焼に供される気体中の酸素濃度は、燃焼に供されて酸素を差し引いてそのまま排気中の酸素濃度に反映されるのが通常であり、混合気中の酸素濃度(空燃比)が高ければ、排気中の酸素濃度(空燃比)も基本的には同様に高くなる。
【0030】
一方、上述したように吸蔵還元型NOx触媒は排気中の酸素濃度が高ければNOxを吸収し、低ければNOxをNO2もしくはNOに還元して放出する特性を有するため、排気中の酸素濃度が高濃度状態にある限りNOxを吸収することになる。但し、当該触媒のNOx吸収量に限界量が存在し、同触媒が限界量のNOxを吸収した状態では、排気中のNOxが触媒に吸収されず触媒ケーシングを素通りすることになる。
【0031】
そこで、エンジン1000のように燃料添加ノズル170を備えた内燃機関では、適当な時期に燃料添加ノズル170を通じ排気系400の触媒450上流に燃料を適量添加(以下、排気添加という)することで、一時的に排気中の酸素濃度を低減し、かつ還元成分量(Hcなど)を増大させる。すると、触媒450は、これまでに吸収したNOxをNO2もしくはNOに還元して放出し、自身がNOx吸収能力を回復(再生)するようになる。放出されたNO2やNOが、HCやCOと反応して速やかにN2に還元される。
【0032】
なお、この実施の形態では、燃料添加ノズル170を設けている例を示しているが、このような燃料添加ノズル170を設けなくてもよい。
【0033】
また、コモンレール型のディーゼルエンジンについて説明しているが、これに限られるものではなく、通常の列型または分配型の噴射ポンプを有するディーゼルエンジンに本発明を適用することも可能である。
【0034】
次に、タービンの構造について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーの一部断面を含む斜視図であり、図3は、図2中のIII−III線に沿った断面図である。図2および図3を参照して、この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャー1は可変ノズル式ターボチャージャーであり、ハウジング201と、ハウジング201に回転可能に収納されたタービンシャフト7と、タービンシャフト7に取付けられるコンプレッサホイール34およびタービンホイールアッセンブリ22とを有する。
【0035】
ハウジング201は、コンプレッサハウジング2、センターハウジング36およびタービンハウジング48に分割され、中央のセンターハウジング36の両側にコンプレッサハウジング2およびタービンハウジング48が取付けられる構造とされる。コンプレッサハウジング2では、中央部から空気を取り入れて外部へ放出することが可能な形状とされる。具体的には、コンプレッサハウジング2の中央部に空気が導入され、この空気が回転するコンプレッサホイール34により外部方向(半径方向)に向かって加速されて圧縮され、圧縮された空気がインテークマニホールドに導かれる。
【0036】
コンプレッサハウジング2内にはコンプレッサホイール34が収納される。コンプレッサホイール34はタービンシャフト7に固定されており、タービンシャフト7とともに回転する。コンプレッサホイール34はロックナット35によりタービンシャフト7に固定される。コンプレッサホイール34には複数の羽根が設けられており、コンプレッサホイール34が回転するとこの羽根により、空気が遠心力で半径方向に加速されて圧縮される。
【0037】
コンプレッサホイール34に隣接するようにシールリングカラー25が配置される。シールリングカラー25はタービンシャフト7を取囲む形状とされる。
【0038】
センターハウジング36は可変容量型ターボチャージャー1の中央部に設けられる。センターハウジング36はスラストベアリング26が配置されている。スラストベアリング26はタービンシャフト7のスラスト方向の荷重を受け止めるためのベアリングであり、オイルなどにより潤滑される。
【0039】
センターハウジング36には、タービンシャフト7の回転を保持するためのフローティングベアリング24が設けられる。フローティングベアリング24はタービンシャフト7のラジアル方向の荷重を保持する。フローティングベアリング24とタービンシャフト7との間には油膜が介在しており、フローティングベアリング24はタービンシャフト7と直接接触しない。さらに、フローティングベアリング24とセンターハウジング36との間にも油膜が存在し、フローティングベアリング24はセンターハウジング36と直接接触していない。
【0040】
フローティングベアリング24はリテーナリング30により位置決めがされている。
センターハウジング36およびタービンハウジング48には、リンク機構としての駆動機構202が配置される。駆動機構202は、リンク室6に収納されるユニゾンリング45と、ユニゾンリング45の内周側に位置し、ユニゾンリング45と接触するアーム44と、タービンハウジング48に隣接して設けられるノズルプレート43と、複数本のアーム44を駆動させるためのメインアーム37と、アーム44に接続されてノズルベーン42を駆動するベーンシャフト21と、ベーンシャフト21を保持するノズルプレート43とを有する。
【0041】
駆動機構202は、複数枚のノズルベーン42の角度を調整するための機構であり、ピン40を所定の角度回動させれば、この回動がノズルベーン42に伝わり、ノズルベーン42が回動する構成とされている。具体的には、ピン40には駆動リンク41に接続され、駆動リンク41は駆動シャフト39を中心に回動可能である。駆動シャフト39の外周にはブッシュ38が設けられており、ブッシュ38は駆動シャフト39とセンターハウジング36との間に介在する。駆動シャフト39はメインアーム37と連結されており、駆動シャフト39が回動すれば、この回動がメインアーム37に伝えられる。メインアーム37の内側端部は駆動シャフト39に固定され、外側端部はユニゾンリング45に噛み合っている。そのため、メインアーム37は駆動シャフト39を中心として回動し、この回動がユニゾンリング45に伝えられる。ユニゾンリング45の内周面にはアーム44が嵌まり合っており、ユニゾンリング45が回動すると、この回動はアーム44に伝えられる。アーム44はベーンシャフト21を中心として回動することが可能であり、アーム44の回動はベーンシャフト21に伝えられる。ベーンシャフト21はノズルベーン42と連結されているため、ノズルベーン42はベーンシャフト21およびアーム44とともに回動する。
【0042】
ノズルプレート43はタービンハウジング48と接触しており、タービンハウジング48とセンターハウジング36との間にリンク室6が設けられる。リンク室6は駆動機構を収納するための内部空間である。タービンハウジング48にはタービンハウジング渦室が設けられ、タービンハウジング渦室に排気が供給されて、この排気の流れがタービンホイールアッセンブリ22を回転させる。このタービンホイールアッセンブリ22の回転がタービンシャフト7を介してコンプレッサホイール34へ伝えられる。タービンハウジング48にはスペーサボルト47が取り付けられる。
【0043】
図1を参照して、駆動機構202の駆動リンク41はモータロッド302に接続される。モータロッド302は棒状部材であり、リンク303および可変ノズルコントローラ270に接続される。可変ノズルコントローラ270は直流モータ(DCモータ)に接続されており、直流モータが回転することでこの回転が歯車機構およびウォーム機構を介してリンク303へ伝わり、リンク303からモータロッド302を介して駆動リンク41が動かされる。
【0044】
リンク303の位置は開度センサ304によって検出され、開度センサ304がリンク303の位置を測定する。これにより可変ノズルとしてのノズルベーン42の傾き角度が検出される。
【0045】
リンク室6内には炭化水素吸着体301が配置される。炭化水素吸着体101は未燃焼の炭化水素を吸着する部材であり、たとえば酸化触媒またはチャコールフィルタにより構成される。炭化水素吸着体301が酸化触媒により構成される場合には、排ガス中に含まれる未燃焼の炭化水素を強制的に酸化することで未燃焼の炭化水素を浄化させる。これにより、ノズルベーン42の摺動不良を回避できる。
【0046】
さらに、炭化水素吸着体301がチャコールフィルタの場合には、ガソリンエンジンの燃焼系で採用されているキャニスタと同様の原理により未燃焼の炭化水素を吸着する。PM再生のために燃料が添加される排気ガス低温時は未燃焼の炭化水素(HC)をこの吸着体で吸着させる。フィルタ自身の再生は、エンジン高負荷時(排ガス温度が高く、フィルタ周辺温度も高い)に行なう。また、吸着した燃料が他の領域に流れるような通路がセンターハウジング36またはタービンハウジング48に設けられていてもよい。
【0047】
図4は、図2中の矢印IVで示す方向から見た可変容量型ターボチャージャーの正面図である。図4を参照して、タービンホイールアッセンブリ22の間に互いに等しい距離を隔てるように可変ノズルとしてのノズルベーン42が配置される。ノズルベーン42はノズルプレート43上に位置決めされており、その中央部のベーンシャフト21を中心として所定の角度回動することが可能である。円盤状のノズルプレート43の外周から内周側へ排気が供給され、この排気は隣り合うノズルベーン42の間を通ってタービンホイールアッセンブリ22へ到達し、タービンホイールアッセンブリ22を回転させる。図4では隣り合うノズルベーン42間が最も開いた状態を示しており、この排気流量が最も大きくなる状態を示している。
【0048】
図5は、この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーの制御機構を示すブロック図である。図5を参照して、可変容量型ターボチャージャー(可変ノズル式ターボチャージャー)1は、可変ノズルコントローラ270およびエンジンコントロールユニット1100により制御される。具体的には、エンジンコントロールユニット1100は、イグニッションスイッチ、アクセル開度、エンジン回転数、大気圧、大気温、過給圧および冷却水温などに基づいて要求可変ノズル開度を決定する。この決定したデータが可変ノズルコントローラ270に伝えられる。可変ノズルコントローラ270は、上記データをもとにDCモータの駆動出力を可変容量型ターボチャージャー1に与え、ノズルの開度が決定される。可変容量型ターボチャージャー1では、モータにより、タービンホイールアッセンブリ外周に設けられた可変ノズルとしてのノズルベーン42を開閉し、ターボチャージャーに入力される排ガスの流速や圧力を調整することにより、エンジン回転数および負荷に応じて背圧と過給圧のバランスを最適に制御することが可能となる。
【0049】
図6は、この発明の実施の形態1に従った炭化水素吸着体の斜視図である。図6を参照して、炭化水素吸着体301は環状であり、中央部に空洞が設けられた形状である。この空洞部分はセンターハウジング36に嵌め合わせられる。炭化水素吸着体301の厚みは、可変ノズル機構と干渉することがないように、できるだけ厚く構成することが好ましい。次に、ノズルベーンの駆動について詳細に説明する。
【0050】
図7は、開かれたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の正面図である。図8は、開かれたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の背面図である。図7および図8を参照して、環状のユニゾンリング45の内周に、円盤形状のノズルプレート43が嵌め合わせられている。ノズルプレート43はタービンハウジングに固定されている。ユニゾンリング45はノズルプレート43に対して摺動可能である。ユニゾンリング45の外周に設けられた凹部245には、メインアーム37およびアーム44が嵌め合わせられている。アーム44の各々はノズルベーン42に接続されており、ノズルベーン42は所定の角度回動することが可能である。ノズルベーン42の回動角度により、タービンハウジング渦室から排気タービン室へ向かう排気の流量および流速を調整することが可能である。
【0051】
ノズルプレート43を貫通するように駆動シャフト39が設けられ、駆動シャフト39はメインアーム37に接続されている。駆動シャフト39を中心としてメインアーム37が回転するとメインアーム37に係合するユニゾンリング45が矢印445で示す方向に回動する。この回動に伴い、アーム44もベーンシャフト21を中心として回動する。ベーンシャフト21が回動し、この回動がノズルベーン42に伝わり、ノズルベーン42が回動する。図7および図8では、矢印403で示す方向にモータロッド302が引かれる。
【0052】
ノズルプレート43にはピン52が差し込まれ、ピン52上部にはローラ51が嵌め合わせられている。ローラ51はユニゾンリング45の内周面をガイドする。これにより、ユニゾンリング45はローラ51に保持されて所定方向に回動することが可能である。
【0053】
図9は、閉じられたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の正面図である。図10は、閉じられたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の背面図である。図9および図10を参照して、ノズルベーン42を閉じる場合には、モータロッド302を矢印503で示す方向に押し込む。この押し込みが駆動リンク41を介して駆動シャフト39に伝わり、駆動シャフト39が回動する。これにより駆動シャフト39の先端部がユニゾンリング45を矢印545で示す方向に回動させる。この回動に伴い、ユニゾンリング45の凹部245に嵌め合わされたアーム44が矢印545で示す方向に回動する。アーム44に接続されたベーンシャフト21およびノズルベーン42も同じ方向に回転することで、隣り合うノズルベーン42の間の空間が閉ざされるようにノズルベーン42が回動する。これにより、ノズルベーン42間の隙間が閉じられてノズルが閉められる。
【0054】
この発明に従った可変容量型ターボチャージャー1は、ハウジング201と、ハウジング201に設けられ、排気の流れを調整するためのベーンとしてのノズルベーン42を駆動する駆動機構202と、駆動機構202に隣接するように設けられる炭化水素吸着体301とを備える。ハウジング201には、駆動機構202を収納する内部空間としてのリンク室6が設けられ、リンク室6に炭化水素吸着体301が配置される。
【0055】
このように構成された実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーでは、駆動機構202の近傍に炭化水素吸着体301が設けられるため、未燃焼の燃料が存在しても、この未燃焼の燃料(炭化水素)は炭化水素吸着体301で吸着される。その結果、ノズルベーン42の摺動不良を防止することができる。
【0056】
なお、本発明では、燃料を噴射する方法として、図1で示すようなエギゾーストマニホールド部へ燃料を添加するインジェクタを配置されるものだけでなく、既存のインジェクタで筒内へポスト噴射を行なってもよい。
【0057】
(実施の形態2)
図11は、この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャーにおける排気ガスの流れを示す図である。実施の形態2では、可変容量型ターボチャージャーの構成部品であるノズルプレート43の材質を炭化水素吸着体に変更する。なお、ノズルプレートの材質は一般的にはステンレス鋼などにより構成される。
【0058】
可変容量型ターボチャージャーの構成部品であるノズルプレートの材質を変更することで、可変容量型ターボチャージャーのノズルベーンの摺動部に、後処理触媒まで流れずに侵入してくる未燃焼の炭化水素をその吸着体で吸着し、ノズルベーンの摺動不良の回避を図る。すなわち、図11で示すように、エンジンから排出された排気ガスに燃料が添加され、この燃料はVNターボ(可変容量型ターボチャージャー)を経由して、後処理触媒へ送られた後に大気に開放される。エンジンから排出された排気ガスに燃料が添加され、その添加燃料の一部がVNターボ内部に侵入し、その添加燃料がノズルベーン摺動部に侵入し、摺動不良を引起す。この実施の形態では、ターボ内部の構成部品であるノズルプレートの材質を未燃焼の炭化水素を吸着する活性炭などに変更することで、可変容量型ターボチャージャーの内部に侵入した添加燃料をトラップし、ノズルベーンの摺動不良の回避を図ることができる。
【0059】
再生は排ガス高温時に行なう。または、プレートの鉛直下方に通路を設け、そこから吸着した炭化水素をスクロール側またはユニゾンリング側に排出することも可能である。
【0060】
図12は、この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャーの断面図である。図12を参照して、この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャー1では、ノズルプレート343が炭化水素吸着体を構成している点で、実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーと異なる。ノズルプレート43は酸化触媒またはチャコールフィルタなどにより構成することができる。ノズルプレート343で吸着された未燃焼の炭化水素は領域501または領域502へ排出されてもよい。具体的には、ノズルプレート343、またはタービンハウジング48に通路を設けて、その通路により、吸着した炭化水素(HC)成分をユニゾンリング側の領域501またはスクロール室側の領域502へ送ってもよい。
【0061】
すなわち、実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャー1は、炭化水素吸着体は、ノズルベーン42を保持するノズルプレート343を構成する。
【0062】
(実施の形態3)
図13は、この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーの断面図である。図14は図13中のXIVで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図13および図14を参照して、この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャー1では、ベーンシャフト21の周りにブッシュ421が設けられ、このブッシュ421が炭化水素吸着体を構成している点で、実施の形態1および2に従った可変容量型ターボチャージャー1と異なる。ブッシュ421は円筒形状であり、ベーンシャフト21を取囲む。なお、ブッシュ421の数箇所に穴が設けられていてもよい。ブッシュ421はベーンシャフト21とノズルプレート43との間に介在してベーンシャフト21に付着する未燃焼の炭化水素を吸収する働きを有する。この実施の形態では、複数のベーンシャフト21が設けられるが、この複数のベーンシャフト21のすべてにブッシュ421を設ける必要はなく、複数のベーンシャフト21のいずれかにブッシュ421を設ければよい。
【0063】
図15は図14中のXVで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図15を参照して、ブッシュ421を取囲むようにノズルプレート43に環状の溝321を設けてもよい。なお、図15では環状の溝321はほぼ同一平面上で延びるように構成されるが、これに限られるものではなく、スパイラル状の環状の溝321を設けてもよい。環状の溝321には排出用の溝521が設けられる。排出用の溝521は上方向から下方向へ延びており、一方端が環状の溝321に接続され、他方端がタービンハウジング渦室側へ開放している。
【0064】
ブッシュ421は未燃焼の炭化水素を吸着するが、この吸着した炭化水素が溝321,521を経由してタービンハウジング渦室側へ排出される。
【0065】
図16は、この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーの別の断面図である。図16を参照して、溝521がリンク室6へ連なるように設けられていてもよい。溝521の一方端が環状の溝321に接続され、他方端がリンク室6側へ開放されている。
【0066】
すなわち、実施の形態3では、可変容量型ターボチャージャー1の構成部品であるノズルプレート43の摺動部に、未燃焼の炭化水素を吸着するためのブッシュ421を挿入する。これにより、可変容量型ターボチャージャー1内部に侵入した添加燃料をトラップし、ノズルベーン42の摺動不良の回避を図る。
【0067】
未燃焼の炭化水素を吸着したブッシュ421の再生方法はさまざまなものが考えられるが、排ガス高温時の酸化還元反応を利用するか、あるいはブッシュ421部に鉛直した方向に通じる溝521を設けて、そこから吸着した炭化水素成分をユニゾンリング側、またはスクロール側へ排出する。
【0068】
実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーでは、駆動機構202は、ノズルベーン42に接続されるベーンシャフト21と、ベーンシャフト21を保持するノズルプレート43とを含み、炭化水素吸着体は、ベーンシャフト21とノズルプレート43との間に介在するブッシュ421を構成している。また、ブッシュ421を取囲む溝321と、溝321に連なり他の空間まで達する溝521がノズルプレート43に設けられる。
【0069】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、ここで示した実施の形態は様々に変形することが可能である。まず、本発明の可変容量型ターボチャージャー1は、主としてディーゼルエンジンとともに搭載されるものであるが、これに限られず、ガソリンエンジンまたはロータリエンジンなどに本発明に従った可変容量型ターボチャージャー1を設けてもよい。さらに、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンを用いるハイブリッド自動車に本発明を適用してもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
この発明は、タービンに供給する吸気量を適宜変更することが可能である、可変容量型のターボチャージャーの分野で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明の実施の形態1に従ったディーゼルエンジンシステムを示す概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーの一部断面を含む斜視図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2中の矢印IVで示す方向から見た可変容量型ターボチャージャーの正面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーの制御機構を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態1に従った炭化水素吸着体の斜視図である。
【図7】開かれたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の正面図である。
【図8】開かれたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の背面図である。
【図9】閉じられたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の正面図である。
【図10】閉じられたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の背面図である。
【図11】この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャーにおける排気ガスの流れを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャーの断面図である。
【図13】この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーの断面図である。
【図14】図13中のXIVで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【図15】図14中のXVで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【図16】この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーの別の断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 可変容量型ターボチャージャー、2 コンプレッサハウジング、3 タービンハウジング渦室、6 リンク室、7 タービンシャフト、21 ベーンシャフト、22 タービンホイールアッセンブリ、24 フローティングベアリング、25 シールリングカラー、26 スラストベアリング、30 リテーナリング、34 コンプレッサホイール、35 ロックナット、36 センターハウジング、37 メインアーム、38 ブッシュ、39 駆動シャフト、40 ピン、41 駆動リンク、42 ノズルベーン、43 ノズルプレート、44 アーム、45 ユニゾンリング、47 スペーサボルト、48 タービンハウジング、148 排気タービン室、201 ハウジング、202 駆動機構、245 凹部、301 炭化水素吸着体、302 モータロッド、303 リンク、304 開度センサ、421 ブッシュ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、可変容量型ターボチャージャーに関し、より特定的には、炭化水素吸着体を備えた可変容量型ターボチャージャーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、主としてディーゼルエンジン向けに、供給する空気量をより的確に制御できる機構を持った可変容量型ターボチャージャーが製造されている。
【0003】
この可変容量型ターボチャージャーの一種として、ベーンの向きをさまざまに変化させることでタービンの回転を調整できる、VNターボ(バリアブルノズルターボ)が知られている。タービンに関しては、たとえば特開平11−229886号公報(特許文献1)、特開2005−98193号公報(特許文献2)および特開平9−112392号公報(特許文献3)に開示されている。
【特許文献1】特開平11−229886号公報
【特許文献2】特開2005−98193号公報
【特許文献3】特開平9−112392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、VNターボのノズルベーンの駆動部に未燃焼の炭化水素(HC)などが侵入しないように、プレートとタービンハウジングの間にシール構造を持たせている。
【0005】
特許文献2では、VNターボのハウジングの表面等に酸化触媒をコーティングし、始動直後の排気の浄化を促進している。
【0006】
特許文献3では、インジェクタの噴射口に、酸化触媒のコーティング層を形成している。
【0007】
上述のようないずれの技術であっても、ノズルを駆動させる駆動機構を円滑に動作させることが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、ベーンを確実に駆動させることが可能な可変容量型ターボチャージャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った可変容量型ターボチャージャーは、ハウジングと、ハウジングに設けられ、排気の流れを調整するためのベーンを駆動する駆動機構と、駆動機構に隣接するように設けられる炭化水素吸着体とを備える。
【0010】
このように構成された可変容量型ターボチャージャーでは、駆動機構に隣接するように炭化水素吸着体が設けられるため、この炭化水素吸着体が未燃焼の炭化水素を吸着することができる。その結果、炭化水素が駆動機構に付着することを防止し、ベーンの円滑な駆動を可能とする。
【0011】
好ましくは、ハウジングには駆動部を収納する内部空間が設けられ、内部空間に炭化水素吸着体が配置される。
【0012】
好ましくは、炭化水素吸着体はベーンを保持するノズルプレートを構成する。
好ましくは、駆動機構は、ベーンに接続されるベーンシャフトと、ベーンシャフトを保持するノズルプレートとを含む。炭化水素吸着体は、ベーンシャフトとノズルプレートとの間に介在するブッシュを構成する。
【0013】
好ましくは、ブッシュを取囲む第一溝と、第一溝に連なり、他の空間まで達する第二溝とがノズルプレートに設けられる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に従えば、ベーンをスムーズに駆動させることが可能な可変容量型ターボチャージャーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従ったディーゼルエンジンシステムを示す概略構成図である。図1のディーゼルエンジンシステムは、ディーゼルエンジンのクリーン排気を実現するために、高圧コモンレール式燃料噴射装置、大容量電子制御EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ、DPNR(Diesel Particulate NOx Reduction)触媒を組合せ、PM(Particulate Matter)およびNOxを連続かつ同時に低減するシステムである。図1において、内燃機関(以下エンジンという)1000は、燃料供給系100、燃焼室200、吸気系300および排気系400とを主要部として構成される直列4気筒のディーゼルエンジンである。なお、シリンダ数は特に限定されるものではなく、またエンジンの形状も、直列型、V型、W型、水平対向型などのさまざまな形状を採用することが可能である。また、DPNR450は、PMを再生するDPF(Diesel Particulate Filter)であっても採用することが可能である。
【0017】
燃料供給系100は、サプライポンプ110、コモンレール120、燃料噴射弁130、遮蔽弁140、調量弁160、燃料添加ノズル170、機関燃料通路800および添加燃料通路810とを備えて構成される。
【0018】
サプライポンプ110は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした上で、機関燃料通路800を介してコモンレール120に供給する。コモンレール120は、サプライポンプ110から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各燃料噴射弁130に分配する。燃料噴射弁130は、その内部に電磁ソレノイドを備え、適宜開弁して燃焼室200内に燃料を噴射供給する。
【0019】
サプライポンプ110は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路810を介して燃料添加ノズル(還元剤噴射ノズル)170に供給する。添加燃料通路810には、サプライポンプ110から燃料添加ノズル170に向かって遮蔽弁140および調量弁160が順次配設されている。遮蔽弁140は、緊急時において添加燃料通路810を遮断し、燃料供給を停止する。調量弁160は、燃料添加ノズル170に供給する燃料の圧力(燃圧)を制御する。燃料添加ノズル170は所定圧以上の燃圧(たとえば0.2MPa)が付与されると開弁し、排気系400(排気ポート410)内に燃料を噴射供給する機械式の開閉弁である。すなわち、調量弁160により燃料添加ノズル170上流の燃圧が制御されることにより、所望の燃料が最適なタイミングで燃料添加ノズル170より噴射供給(添加)される。
【0020】
吸気系300は、各燃焼室200内に供給される吸入空気の通路(吸気通路)を構成する。排気系400は、上流から下流にかけ、排気ポート410、排気マニホールド420、触媒上流側通路430、触媒下流側通路440という各種通路部材が順次接続されて構成され、各燃焼室200から排出される排気ガスの通路(排気通路)を形成する。
【0021】
さらに、このエンジン1000には、過給機(可変容量型ターボチャージャー)1が設けられる。可変容量型ターボチャージャー1は、タービンシャフト7を介してコンプレッサホイール34とタービンホイールアッセンブリ22とが接続された構造を有する。吸気系のコンプレッサホイール34は、吸気系300内の吸気にさらされ、タービンホイールアッセンブリ22は、排気系400内の排気にさらされる。このような構成を有する可変容量型ターボチャージャー1は、タービンホイールアッセンブリ22が受ける排気圧(排気流)を利用して、コンプレッサホイール34を回転させ、吸気圧を高めるという、いわゆる過給を行なう。
【0022】
吸気系300において、可変容量型ターボチャージャー1に設けられたインタークーラ310は、過給によって昇温した吸入空気を強制冷却する。インタークーラ310よりもさらに下流に設けられたスロットル弁320は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有する。
【0023】
また、エンジン1000には、燃焼室200の上流(吸気系300)および下流(排気系400)をバイパスする排気還流通路(EGR経路)600が形成されている。このEGR通路600は、排気の一部を適宜吸気系300に戻す機能を有する。EGR通路600には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGR弁610と、EGR通路600を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ620とが設けられている。
【0024】
排気系400において、排気がタービンホイールアッセンブリ22の下流(触媒上流側通路430と触媒下流側通路440)との間には、DPNRにより構成される触媒450が配置される。この触媒450は排気中のNOxおよびPMを減少させる働きがある。エンジン1000の各部位には、各種センサが取付けられており、それぞれの部位の環境条件やエンジン1000の運転状態に関する信号を出力する。
【0025】
たとえば、レール圧センサ700は、コモンレール120内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。燃圧センサ710は、添加燃料通路810内を流通する燃料のうち、調量弁160へ導入される燃料の圧力(燃圧)Pgに応じた検出信号を出力する。エアフローメータ720は、吸気系300内のスロットル弁320の下流において吸入空気の流量(吸気量)Gaに応じた検出信号を出力する。空燃比(A/F)センサ730は、吸気系300の触媒ケーシングの下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ740は、同じく排気系400の触媒ケーシング下流において排気の温度(排気温度)Texに応じた検出信号を出力する。
【0026】
また、アクセル開度センサ750は、エンジン1000のアクセルペダルに取付けられ、同ペダルの踏込み量Accに応じた検出信号を出力する。クランク角センサ760は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力する。これら各センサ700〜760は、電子制御装置(ECU、エンジンコントロールユニットともいう)1100と電気的に接続される。ECU1100は、CPU(中央演算ユニット)、ROM、RAMおよびバックアップRAM、タイマやカウンタなどを備え、これらと、アナログ/デジタル(A/D)変換器を含む外部入力回路および外部出力回路とが双方向性バスにより接続されている。
【0027】
次に、エンジンコントロールユニット1100の実行する燃料添加の基本原理について、その概略を説明する。
【0028】
一般に、ディーゼルエンジンでは、燃焼室内で燃焼に供される燃料および空気の混合気の酸素濃度は、殆どの運転状態で高濃度状態である。
【0029】
燃焼に供される気体中の酸素濃度は、燃焼に供されて酸素を差し引いてそのまま排気中の酸素濃度に反映されるのが通常であり、混合気中の酸素濃度(空燃比)が高ければ、排気中の酸素濃度(空燃比)も基本的には同様に高くなる。
【0030】
一方、上述したように吸蔵還元型NOx触媒は排気中の酸素濃度が高ければNOxを吸収し、低ければNOxをNO2もしくはNOに還元して放出する特性を有するため、排気中の酸素濃度が高濃度状態にある限りNOxを吸収することになる。但し、当該触媒のNOx吸収量に限界量が存在し、同触媒が限界量のNOxを吸収した状態では、排気中のNOxが触媒に吸収されず触媒ケーシングを素通りすることになる。
【0031】
そこで、エンジン1000のように燃料添加ノズル170を備えた内燃機関では、適当な時期に燃料添加ノズル170を通じ排気系400の触媒450上流に燃料を適量添加(以下、排気添加という)することで、一時的に排気中の酸素濃度を低減し、かつ還元成分量(Hcなど)を増大させる。すると、触媒450は、これまでに吸収したNOxをNO2もしくはNOに還元して放出し、自身がNOx吸収能力を回復(再生)するようになる。放出されたNO2やNOが、HCやCOと反応して速やかにN2に還元される。
【0032】
なお、この実施の形態では、燃料添加ノズル170を設けている例を示しているが、このような燃料添加ノズル170を設けなくてもよい。
【0033】
また、コモンレール型のディーゼルエンジンについて説明しているが、これに限られるものではなく、通常の列型または分配型の噴射ポンプを有するディーゼルエンジンに本発明を適用することも可能である。
【0034】
次に、タービンの構造について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーの一部断面を含む斜視図であり、図3は、図2中のIII−III線に沿った断面図である。図2および図3を参照して、この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャー1は可変ノズル式ターボチャージャーであり、ハウジング201と、ハウジング201に回転可能に収納されたタービンシャフト7と、タービンシャフト7に取付けられるコンプレッサホイール34およびタービンホイールアッセンブリ22とを有する。
【0035】
ハウジング201は、コンプレッサハウジング2、センターハウジング36およびタービンハウジング48に分割され、中央のセンターハウジング36の両側にコンプレッサハウジング2およびタービンハウジング48が取付けられる構造とされる。コンプレッサハウジング2では、中央部から空気を取り入れて外部へ放出することが可能な形状とされる。具体的には、コンプレッサハウジング2の中央部に空気が導入され、この空気が回転するコンプレッサホイール34により外部方向(半径方向)に向かって加速されて圧縮され、圧縮された空気がインテークマニホールドに導かれる。
【0036】
コンプレッサハウジング2内にはコンプレッサホイール34が収納される。コンプレッサホイール34はタービンシャフト7に固定されており、タービンシャフト7とともに回転する。コンプレッサホイール34はロックナット35によりタービンシャフト7に固定される。コンプレッサホイール34には複数の羽根が設けられており、コンプレッサホイール34が回転するとこの羽根により、空気が遠心力で半径方向に加速されて圧縮される。
【0037】
コンプレッサホイール34に隣接するようにシールリングカラー25が配置される。シールリングカラー25はタービンシャフト7を取囲む形状とされる。
【0038】
センターハウジング36は可変容量型ターボチャージャー1の中央部に設けられる。センターハウジング36はスラストベアリング26が配置されている。スラストベアリング26はタービンシャフト7のスラスト方向の荷重を受け止めるためのベアリングであり、オイルなどにより潤滑される。
【0039】
センターハウジング36には、タービンシャフト7の回転を保持するためのフローティングベアリング24が設けられる。フローティングベアリング24はタービンシャフト7のラジアル方向の荷重を保持する。フローティングベアリング24とタービンシャフト7との間には油膜が介在しており、フローティングベアリング24はタービンシャフト7と直接接触しない。さらに、フローティングベアリング24とセンターハウジング36との間にも油膜が存在し、フローティングベアリング24はセンターハウジング36と直接接触していない。
【0040】
フローティングベアリング24はリテーナリング30により位置決めがされている。
センターハウジング36およびタービンハウジング48には、リンク機構としての駆動機構202が配置される。駆動機構202は、リンク室6に収納されるユニゾンリング45と、ユニゾンリング45の内周側に位置し、ユニゾンリング45と接触するアーム44と、タービンハウジング48に隣接して設けられるノズルプレート43と、複数本のアーム44を駆動させるためのメインアーム37と、アーム44に接続されてノズルベーン42を駆動するベーンシャフト21と、ベーンシャフト21を保持するノズルプレート43とを有する。
【0041】
駆動機構202は、複数枚のノズルベーン42の角度を調整するための機構であり、ピン40を所定の角度回動させれば、この回動がノズルベーン42に伝わり、ノズルベーン42が回動する構成とされている。具体的には、ピン40には駆動リンク41に接続され、駆動リンク41は駆動シャフト39を中心に回動可能である。駆動シャフト39の外周にはブッシュ38が設けられており、ブッシュ38は駆動シャフト39とセンターハウジング36との間に介在する。駆動シャフト39はメインアーム37と連結されており、駆動シャフト39が回動すれば、この回動がメインアーム37に伝えられる。メインアーム37の内側端部は駆動シャフト39に固定され、外側端部はユニゾンリング45に噛み合っている。そのため、メインアーム37は駆動シャフト39を中心として回動し、この回動がユニゾンリング45に伝えられる。ユニゾンリング45の内周面にはアーム44が嵌まり合っており、ユニゾンリング45が回動すると、この回動はアーム44に伝えられる。アーム44はベーンシャフト21を中心として回動することが可能であり、アーム44の回動はベーンシャフト21に伝えられる。ベーンシャフト21はノズルベーン42と連結されているため、ノズルベーン42はベーンシャフト21およびアーム44とともに回動する。
【0042】
ノズルプレート43はタービンハウジング48と接触しており、タービンハウジング48とセンターハウジング36との間にリンク室6が設けられる。リンク室6は駆動機構を収納するための内部空間である。タービンハウジング48にはタービンハウジング渦室が設けられ、タービンハウジング渦室に排気が供給されて、この排気の流れがタービンホイールアッセンブリ22を回転させる。このタービンホイールアッセンブリ22の回転がタービンシャフト7を介してコンプレッサホイール34へ伝えられる。タービンハウジング48にはスペーサボルト47が取り付けられる。
【0043】
図1を参照して、駆動機構202の駆動リンク41はモータロッド302に接続される。モータロッド302は棒状部材であり、リンク303および可変ノズルコントローラ270に接続される。可変ノズルコントローラ270は直流モータ(DCモータ)に接続されており、直流モータが回転することでこの回転が歯車機構およびウォーム機構を介してリンク303へ伝わり、リンク303からモータロッド302を介して駆動リンク41が動かされる。
【0044】
リンク303の位置は開度センサ304によって検出され、開度センサ304がリンク303の位置を測定する。これにより可変ノズルとしてのノズルベーン42の傾き角度が検出される。
【0045】
リンク室6内には炭化水素吸着体301が配置される。炭化水素吸着体101は未燃焼の炭化水素を吸着する部材であり、たとえば酸化触媒またはチャコールフィルタにより構成される。炭化水素吸着体301が酸化触媒により構成される場合には、排ガス中に含まれる未燃焼の炭化水素を強制的に酸化することで未燃焼の炭化水素を浄化させる。これにより、ノズルベーン42の摺動不良を回避できる。
【0046】
さらに、炭化水素吸着体301がチャコールフィルタの場合には、ガソリンエンジンの燃焼系で採用されているキャニスタと同様の原理により未燃焼の炭化水素を吸着する。PM再生のために燃料が添加される排気ガス低温時は未燃焼の炭化水素(HC)をこの吸着体で吸着させる。フィルタ自身の再生は、エンジン高負荷時(排ガス温度が高く、フィルタ周辺温度も高い)に行なう。また、吸着した燃料が他の領域に流れるような通路がセンターハウジング36またはタービンハウジング48に設けられていてもよい。
【0047】
図4は、図2中の矢印IVで示す方向から見た可変容量型ターボチャージャーの正面図である。図4を参照して、タービンホイールアッセンブリ22の間に互いに等しい距離を隔てるように可変ノズルとしてのノズルベーン42が配置される。ノズルベーン42はノズルプレート43上に位置決めされており、その中央部のベーンシャフト21を中心として所定の角度回動することが可能である。円盤状のノズルプレート43の外周から内周側へ排気が供給され、この排気は隣り合うノズルベーン42の間を通ってタービンホイールアッセンブリ22へ到達し、タービンホイールアッセンブリ22を回転させる。図4では隣り合うノズルベーン42間が最も開いた状態を示しており、この排気流量が最も大きくなる状態を示している。
【0048】
図5は、この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーの制御機構を示すブロック図である。図5を参照して、可変容量型ターボチャージャー(可変ノズル式ターボチャージャー)1は、可変ノズルコントローラ270およびエンジンコントロールユニット1100により制御される。具体的には、エンジンコントロールユニット1100は、イグニッションスイッチ、アクセル開度、エンジン回転数、大気圧、大気温、過給圧および冷却水温などに基づいて要求可変ノズル開度を決定する。この決定したデータが可変ノズルコントローラ270に伝えられる。可変ノズルコントローラ270は、上記データをもとにDCモータの駆動出力を可変容量型ターボチャージャー1に与え、ノズルの開度が決定される。可変容量型ターボチャージャー1では、モータにより、タービンホイールアッセンブリ外周に設けられた可変ノズルとしてのノズルベーン42を開閉し、ターボチャージャーに入力される排ガスの流速や圧力を調整することにより、エンジン回転数および負荷に応じて背圧と過給圧のバランスを最適に制御することが可能となる。
【0049】
図6は、この発明の実施の形態1に従った炭化水素吸着体の斜視図である。図6を参照して、炭化水素吸着体301は環状であり、中央部に空洞が設けられた形状である。この空洞部分はセンターハウジング36に嵌め合わせられる。炭化水素吸着体301の厚みは、可変ノズル機構と干渉することがないように、できるだけ厚く構成することが好ましい。次に、ノズルベーンの駆動について詳細に説明する。
【0050】
図7は、開かれたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の正面図である。図8は、開かれたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の背面図である。図7および図8を参照して、環状のユニゾンリング45の内周に、円盤形状のノズルプレート43が嵌め合わせられている。ノズルプレート43はタービンハウジングに固定されている。ユニゾンリング45はノズルプレート43に対して摺動可能である。ユニゾンリング45の外周に設けられた凹部245には、メインアーム37およびアーム44が嵌め合わせられている。アーム44の各々はノズルベーン42に接続されており、ノズルベーン42は所定の角度回動することが可能である。ノズルベーン42の回動角度により、タービンハウジング渦室から排気タービン室へ向かう排気の流量および流速を調整することが可能である。
【0051】
ノズルプレート43を貫通するように駆動シャフト39が設けられ、駆動シャフト39はメインアーム37に接続されている。駆動シャフト39を中心としてメインアーム37が回転するとメインアーム37に係合するユニゾンリング45が矢印445で示す方向に回動する。この回動に伴い、アーム44もベーンシャフト21を中心として回動する。ベーンシャフト21が回動し、この回動がノズルベーン42に伝わり、ノズルベーン42が回動する。図7および図8では、矢印403で示す方向にモータロッド302が引かれる。
【0052】
ノズルプレート43にはピン52が差し込まれ、ピン52上部にはローラ51が嵌め合わせられている。ローラ51はユニゾンリング45の内周面をガイドする。これにより、ユニゾンリング45はローラ51に保持されて所定方向に回動することが可能である。
【0053】
図9は、閉じられたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の正面図である。図10は、閉じられたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の背面図である。図9および図10を参照して、ノズルベーン42を閉じる場合には、モータロッド302を矢印503で示す方向に押し込む。この押し込みが駆動リンク41を介して駆動シャフト39に伝わり、駆動シャフト39が回動する。これにより駆動シャフト39の先端部がユニゾンリング45を矢印545で示す方向に回動させる。この回動に伴い、ユニゾンリング45の凹部245に嵌め合わされたアーム44が矢印545で示す方向に回動する。アーム44に接続されたベーンシャフト21およびノズルベーン42も同じ方向に回転することで、隣り合うノズルベーン42の間の空間が閉ざされるようにノズルベーン42が回動する。これにより、ノズルベーン42間の隙間が閉じられてノズルが閉められる。
【0054】
この発明に従った可変容量型ターボチャージャー1は、ハウジング201と、ハウジング201に設けられ、排気の流れを調整するためのベーンとしてのノズルベーン42を駆動する駆動機構202と、駆動機構202に隣接するように設けられる炭化水素吸着体301とを備える。ハウジング201には、駆動機構202を収納する内部空間としてのリンク室6が設けられ、リンク室6に炭化水素吸着体301が配置される。
【0055】
このように構成された実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーでは、駆動機構202の近傍に炭化水素吸着体301が設けられるため、未燃焼の燃料が存在しても、この未燃焼の燃料(炭化水素)は炭化水素吸着体301で吸着される。その結果、ノズルベーン42の摺動不良を防止することができる。
【0056】
なお、本発明では、燃料を噴射する方法として、図1で示すようなエギゾーストマニホールド部へ燃料を添加するインジェクタを配置されるものだけでなく、既存のインジェクタで筒内へポスト噴射を行なってもよい。
【0057】
(実施の形態2)
図11は、この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャーにおける排気ガスの流れを示す図である。実施の形態2では、可変容量型ターボチャージャーの構成部品であるノズルプレート43の材質を炭化水素吸着体に変更する。なお、ノズルプレートの材質は一般的にはステンレス鋼などにより構成される。
【0058】
可変容量型ターボチャージャーの構成部品であるノズルプレートの材質を変更することで、可変容量型ターボチャージャーのノズルベーンの摺動部に、後処理触媒まで流れずに侵入してくる未燃焼の炭化水素をその吸着体で吸着し、ノズルベーンの摺動不良の回避を図る。すなわち、図11で示すように、エンジンから排出された排気ガスに燃料が添加され、この燃料はVNターボ(可変容量型ターボチャージャー)を経由して、後処理触媒へ送られた後に大気に開放される。エンジンから排出された排気ガスに燃料が添加され、その添加燃料の一部がVNターボ内部に侵入し、その添加燃料がノズルベーン摺動部に侵入し、摺動不良を引起す。この実施の形態では、ターボ内部の構成部品であるノズルプレートの材質を未燃焼の炭化水素を吸着する活性炭などに変更することで、可変容量型ターボチャージャーの内部に侵入した添加燃料をトラップし、ノズルベーンの摺動不良の回避を図ることができる。
【0059】
再生は排ガス高温時に行なう。または、プレートの鉛直下方に通路を設け、そこから吸着した炭化水素をスクロール側またはユニゾンリング側に排出することも可能である。
【0060】
図12は、この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャーの断面図である。図12を参照して、この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャー1では、ノズルプレート343が炭化水素吸着体を構成している点で、実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーと異なる。ノズルプレート43は酸化触媒またはチャコールフィルタなどにより構成することができる。ノズルプレート343で吸着された未燃焼の炭化水素は領域501または領域502へ排出されてもよい。具体的には、ノズルプレート343、またはタービンハウジング48に通路を設けて、その通路により、吸着した炭化水素(HC)成分をユニゾンリング側の領域501またはスクロール室側の領域502へ送ってもよい。
【0061】
すなわち、実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャー1は、炭化水素吸着体は、ノズルベーン42を保持するノズルプレート343を構成する。
【0062】
(実施の形態3)
図13は、この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーの断面図である。図14は図13中のXIVで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図13および図14を参照して、この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャー1では、ベーンシャフト21の周りにブッシュ421が設けられ、このブッシュ421が炭化水素吸着体を構成している点で、実施の形態1および2に従った可変容量型ターボチャージャー1と異なる。ブッシュ421は円筒形状であり、ベーンシャフト21を取囲む。なお、ブッシュ421の数箇所に穴が設けられていてもよい。ブッシュ421はベーンシャフト21とノズルプレート43との間に介在してベーンシャフト21に付着する未燃焼の炭化水素を吸収する働きを有する。この実施の形態では、複数のベーンシャフト21が設けられるが、この複数のベーンシャフト21のすべてにブッシュ421を設ける必要はなく、複数のベーンシャフト21のいずれかにブッシュ421を設ければよい。
【0063】
図15は図14中のXVで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図15を参照して、ブッシュ421を取囲むようにノズルプレート43に環状の溝321を設けてもよい。なお、図15では環状の溝321はほぼ同一平面上で延びるように構成されるが、これに限られるものではなく、スパイラル状の環状の溝321を設けてもよい。環状の溝321には排出用の溝521が設けられる。排出用の溝521は上方向から下方向へ延びており、一方端が環状の溝321に接続され、他方端がタービンハウジング渦室側へ開放している。
【0064】
ブッシュ421は未燃焼の炭化水素を吸着するが、この吸着した炭化水素が溝321,521を経由してタービンハウジング渦室側へ排出される。
【0065】
図16は、この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーの別の断面図である。図16を参照して、溝521がリンク室6へ連なるように設けられていてもよい。溝521の一方端が環状の溝321に接続され、他方端がリンク室6側へ開放されている。
【0066】
すなわち、実施の形態3では、可変容量型ターボチャージャー1の構成部品であるノズルプレート43の摺動部に、未燃焼の炭化水素を吸着するためのブッシュ421を挿入する。これにより、可変容量型ターボチャージャー1内部に侵入した添加燃料をトラップし、ノズルベーン42の摺動不良の回避を図る。
【0067】
未燃焼の炭化水素を吸着したブッシュ421の再生方法はさまざまなものが考えられるが、排ガス高温時の酸化還元反応を利用するか、あるいはブッシュ421部に鉛直した方向に通じる溝521を設けて、そこから吸着した炭化水素成分をユニゾンリング側、またはスクロール側へ排出する。
【0068】
実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーでは、駆動機構202は、ノズルベーン42に接続されるベーンシャフト21と、ベーンシャフト21を保持するノズルプレート43とを含み、炭化水素吸着体は、ベーンシャフト21とノズルプレート43との間に介在するブッシュ421を構成している。また、ブッシュ421を取囲む溝321と、溝321に連なり他の空間まで達する溝521がノズルプレート43に設けられる。
【0069】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、ここで示した実施の形態は様々に変形することが可能である。まず、本発明の可変容量型ターボチャージャー1は、主としてディーゼルエンジンとともに搭載されるものであるが、これに限られず、ガソリンエンジンまたはロータリエンジンなどに本発明に従った可変容量型ターボチャージャー1を設けてもよい。さらに、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンを用いるハイブリッド自動車に本発明を適用してもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
この発明は、タービンに供給する吸気量を適宜変更することが可能である、可変容量型のターボチャージャーの分野で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明の実施の形態1に従ったディーゼルエンジンシステムを示す概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーの一部断面を含む斜視図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2中の矢印IVで示す方向から見た可変容量型ターボチャージャーの正面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に従った可変容量型ターボチャージャーの制御機構を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態1に従った炭化水素吸着体の斜視図である。
【図7】開かれたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の正面図である。
【図8】開かれたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の背面図である。
【図9】閉じられたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の正面図である。
【図10】閉じられたノズルベーンを説明するために示す駆動機構の背面図である。
【図11】この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャーにおける排気ガスの流れを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2に従った可変容量型ターボチャージャーの断面図である。
【図13】この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーの断面図である。
【図14】図13中のXIVで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【図15】図14中のXVで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【図16】この発明の実施の形態3に従った可変容量型ターボチャージャーの別の断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 可変容量型ターボチャージャー、2 コンプレッサハウジング、3 タービンハウジング渦室、6 リンク室、7 タービンシャフト、21 ベーンシャフト、22 タービンホイールアッセンブリ、24 フローティングベアリング、25 シールリングカラー、26 スラストベアリング、30 リテーナリング、34 コンプレッサホイール、35 ロックナット、36 センターハウジング、37 メインアーム、38 ブッシュ、39 駆動シャフト、40 ピン、41 駆動リンク、42 ノズルベーン、43 ノズルプレート、44 アーム、45 ユニゾンリング、47 スペーサボルト、48 タービンハウジング、148 排気タービン室、201 ハウジング、202 駆動機構、245 凹部、301 炭化水素吸着体、302 モータロッド、303 リンク、304 開度センサ、421 ブッシュ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、排気の流れを調整するためのベーンを駆動する駆動機構と、
前記駆動機構に隣接するように設けられる炭化水素吸着体とを備えた、可変容量型ターボチャージャー。
【請求項2】
前記ハウジングには前記駆動部を収納する内部空間が設けられ、前記内部空間に前記炭化水素吸着体が配置される、請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャー。
【請求項3】
前記炭化水素吸着体は前記ベーンを保持するノズルプレートを構成する、請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャー。
【請求項4】
前記駆動部は、前記ベーンに接続されるベーンシャフトと、前記ベーンシャフトを保持するノズルプレートとを含み、前記炭化水素吸着体は前記ベーンシャフトと前記ノズルプレートとの間に介在するブッシュを構成する、請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャー。
【請求項5】
前記ブッシュを取囲む第一溝と、前記第一溝に連なり他の空間まで達する第二溝とが前記ノズルプレートに設けられる、請求項4に記載の可変容量型ターボチャージャー。
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、排気の流れを調整するためのベーンを駆動する駆動機構と、
前記駆動機構に隣接するように設けられる炭化水素吸着体とを備えた、可変容量型ターボチャージャー。
【請求項2】
前記ハウジングには前記駆動部を収納する内部空間が設けられ、前記内部空間に前記炭化水素吸着体が配置される、請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャー。
【請求項3】
前記炭化水素吸着体は前記ベーンを保持するノズルプレートを構成する、請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャー。
【請求項4】
前記駆動部は、前記ベーンに接続されるベーンシャフトと、前記ベーンシャフトを保持するノズルプレートとを含み、前記炭化水素吸着体は前記ベーンシャフトと前記ノズルプレートとの間に介在するブッシュを構成する、請求項1に記載の可変容量型ターボチャージャー。
【請求項5】
前記ブッシュを取囲む第一溝と、前記第一溝に連なり他の空間まで達する第二溝とが前記ノズルプレートに設けられる、請求項4に記載の可変容量型ターボチャージャー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−77965(P2007−77965A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270304(P2005−270304)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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