説明

可変容量型排気ターボ過給機及び可変ノズル機構構成部材の製造方法

【課題】 ろう付け作業をきわめて少ない工数で可能として低い製造コストを保持でき、かつろう付け部分の剥離がなく品質が安定した可変ノズル機構構成部材をそなえた排気ターボ過給機を提供する。
【解決手段】 タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と該貫通穴に挿入される軸状部材との結合部をろう付けにて結合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ターボ過給機に用いられ、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機及び該可変ノズル機構構成部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ターボ過給機、特に車両用内燃機関に用いられる小型排気ターボ過給機において、該過給機の構成部材のうち高温下で作動する排気タービンにセラミックス材を使用し、このセラミックス材製排気タービンと低温下で作動する金属製のコンプレッサとをろう付けにて結合するように構成された排気ターボ過給機が、特許文献1(特開昭59−78983号公報)にて提案されている。
【0003】
かかる排気ターボ過給機においては、セラミックス材からなる排気タービンの軸部先端に先細の円錐突部を形成し、金属製のコンプレッサに前記円錐突部と嵌合可能な円錐窪部
を形成し、さらに前記円錐突部及び円錐窪部の一方または双方にろう充填用凹部を設け、前記円錐突部と円錐窪部とを嵌合しろう材を介して両者を結合するように構成して、セラミックス材と金属材との間の接合寸法精度を高く保持するとともに、ろう材を介することによってセラミックス材製の排気タービンと金属製のコンプレッサとよりなるタービンロータの接合強度を増大せしめている。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−78983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気ターボ過給機、特に車両用内燃機関に用いられる小型排気ターボ過給機においては、機関からの排ガス流量と過給機の最適作動条件となるガス流量とのマッチングをなすために、渦巻状のスクロールからタービンロータに送られる排ガス流量を機関の運転状態に応じて可変とする可変容量タービンを備えた可変容量型排気ターボ過給機が、近年多く用いられている。
かかる可変容量型排気ターボ過給機において、複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構の構成部材のうち、ノズルベーン側のレバープレートに連結されるドライブリングとドライブピンとの結合部、該ドライブリングに連結されるコントロールスリーブとアクチュエータに連結されるレバーとの結合部は、通常、前記ドライブピン、コントロールスリーブ等の軸側部材と前記ドライブリング、レバー等の穴側部材とを溶接やかしめによって結合する構造が採られている。
【0006】
然るに、前記のように、排気ターボ過給機の構成部材の結合手段として、セラミックス材製の排気タービンと金属製のコンプレッサとをろう付けにて固着する手段が特許文献1(特開昭59−78983号公報)にて提案されているが、かかる結合手段には次のような問題点があり、可変ノズル機構の構成部材の結合手段としては適用できない。
即ち、特許文献1のろう付けによる結合手段は、高温下で高トルクが作動するタービンロータの結合であるため、排気タービン側の円錐突部とコンプレッサ側の円錐窪部との結合部は、結合面の全面に亘ってろう充填用凹部を形成して該凹部にろうを充填して結合する構造となっているが、結合面の一部にろうの充填が不充分な部位がある場合には、この部分からタービンロータの破損発生の恐れがある。
【0007】
このため、かかるタービンロータの結合手段にあっては、前記排気タービン側の円錐突部とコンプレッサ側の円錐窪部との結合部のろう付けを結合面の全面に亘って均一かつ確実に行なう必要があることから、タービンロータのろう付け作業に多大な作業工数を必要とする。
また、かかるタービンロータの結合手段にあっては、コンプレッサ側が先詰まりの円錐窪部であるため、結合部の奥側におけるろうの浸透状況を確認することが困難であり、タービンロータ結合部の品質不良があっても抽出困難で、タービンロータの品質の安定性に課題がある。
特許文献1のろう付けによる結合手段は、以上のような問題点を有しているため、可変ノズル機構の構成部材の結合手段としては適用できないこととなる。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、ろう付け作業をきわめて少ない工数で可能として低い製造コストを保持でき、かつろう付け部分の剥離がなく品質が安定した可変ノズル機構構成部材をそなえた排気ターボ過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と、該貫通穴に挿入される軸状部材との結合部をろう付けにて結合したことを特徴とする。
かかる発明において、前記貫通穴と軸状部材との結合部を、前記貫通穴と軸状部材とを常温において締め代を有する嵌合形態に構成するとともに、前記貫通穴の前記軸状部材挿入の入口側にテーパ部を形成し、該テーパ部からろうを流し込み該貫通穴内に軸状部材を固着するように構成するのが好ましい。
【0010】
また、前記可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機を製造する方法の発明は、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材の貫通穴の入口側にテーパ部を加工形成し、該テーパ部の周上の一点あるいは数点にろうを付け、軸状部材を常温にて一定の締め代を与えて該貫通穴内に挿入し、次いで前記貫通穴形成部材と軸状部材との結合体を真空炉内で1000℃〜1100℃に加熱して前記貫通穴の内周と軸状部材の外周との間に形成される微小隙間に前記ろうを浸透せしめ、次いで前記結合体を徐冷して前記貫通穴形成部材と軸状部材とを固着することを特徴とする。
かかる発明は、ドライブリングとドライブピンとの結合部及びコントロールスリーブとレバーとの結合部のいずれか一方または双方に適用するのが好適である。
【0011】
かかる発明は、動力伝達部材のように大きなトルクが掛からない可変ノズル機構の構成部材を簡単な手法でかつ確実にろう付け結合することに着目したもので、かかる発明によれば、可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と軸状部材とを、該貫通穴形成部材の貫通穴入口側に加工形成したテーパ部の周上の一点あるいは数点にろうを付けて、常温にて一定の締め代を与えて両者を嵌合した後に、前記貫通穴形成部材と軸状部材との結合体を真空炉内で1000℃〜1100℃の高温に加熱するという、前記特許文献1にくらべてきわめて簡単な手法で、貫通穴形成部材と軸状部材との結合部つまりドライブリングとドライブピンとの結合部あるいはアクチュエータに連結されるレバーとコントロールスリーブとの結合部を固着することができる。
これにより、貫通穴形成部材と軸状部材とのろう付け作業をきわめて少ない工数で行なうことが可能となって、可変ノズル機構を低い製造コストを保持して製作できる。
【0012】
また、貫通穴形成部材の貫通穴入口側に加工形成したテーパ部の周上の一点あるいは数点にろうを付けて貫通穴形成部材と軸状部材とを嵌合してから、この結合体を高温の真空炉内で加熱するので、前記テーパ部の周上の一点あるいは数点にろうを付けるのみで、該ろうを前記高温加熱により貫通穴の内周と軸状部材の外周との間に形成される微小隙間全体に万遍なく浸透させることが可能となり、前記結合部を確実にろう付けすることができてろう付け部分の剥離のない結合構造が得られる。
また、貫通穴内に軸状部材をろう付けするので、貫通穴の入口から出口に亘る貫通穴内全体におけるろうの浸透状況を確認することが容易であり、ろう付け部の品質不良があっても簡単にこれを抽出でき、品質の安定性を保持できる。
従ってかかる発明によれば、ろう付け部の品質が安定し、かつ該ろう付け部の締結強度の高い可変ノズル機構を得ることができる。
【0013】
また、かかる発明において好ましくは、前記貫通穴形成部材と軸状部材との結合部は、前記貫通穴の内周面の1箇所または円周方向に沿って複数箇所に、該貫通穴の内周面から0.05〜0.5mmの微小深さで陥没したろう材注入隙間を形成してなる。
このように構成すれば、前記貫通穴形成部材と軸状部材との結合体を真空炉内で高温に加熱する際において、該貫通穴形成部材と軸状部材との間に熱膨張率の差が小さく、前記高温加熱により貫通穴の内周と軸状部材の外周との間の半径差による微小隙間が小さい場合でも、該高温加熱時に該貫通穴の内周面から微小深さで陥没したろう材注入隙間にろうが侵入できるので、前記貫通穴の内周と軸状部材の外周との間にろうを万遍なく浸透させることが可能となり、前記のような貫通穴形成部材と軸状部材との間の熱膨張率の差が小さい場合でも、これに影響されることなく結合部を確実にろう付けすることができる。
ドライブピンをドライブプレートの穴に圧入する際、圧入による強大な荷重が穴内面及びピン側面等、圧入面全体にかかる。この荷重は両部品の圧入面にキズ、クラック、面荒れを生じさせる可能性がある。例えばピン径を大きく、圧入穴径を小さくするなど、圧入代を大きく取りたい時や、部品にクロマイズなどの表面処理を施していて圧入面が荷重の影響を受けやすい場合は、面荒れの可能性があり、強度上若干不利になる。ここではろう材注入隙間を配し、その部位が圧入時の荷重の影響を全く受けず良好な表面状態のまま、ろう材が進入するため安定した締結力を確保できる。
【0014】
また、かかる発明において好ましくは、前記ろう材注入隙間を、前記深さが0.2〜1mmの半円形状溝で形成してなる。
このように構成すれば、貫通穴形成部材の熱膨張率がきわめて大きくかつ軸状部材の熱膨張率がきわめて小さく貫通穴形成部材と軸状部材との熱膨張率差が大きい場合に、前記高温加熱後に冷却した際にろう付け部に発生する引張応力を、前記半円形状溝からなるろう材注入隙間によって緩和することが可能となって、かかるろう付け部の過大な引張応力による破損の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と軸状部材とを、該貫通穴形成部材の貫通穴入口側に加工形成したテーパ部の周上の一点あるいは数点にろうを付け、締め代を与えて常温嵌合した後に該貫通穴形成部材と軸状部材との結合体を高温に加熱するという、きわめて簡単な手法でドライブリングとドライブピンとの結合部あるいはレバーとコントロールスリーブとの結合部等の該貫通穴形成部材と軸状部材との結合部を固着することができる。これにより、該貫通穴形成部材と軸状部材とのろう付け作業をきわめて少ない工数で行なうことが可能となって、可変ノズル機構を低い製造コストを保持して製作できる。
【0016】
また、貫通穴形成部材の貫通穴入口側に加工形成したテーパ部の周上にろうを付けて貫通穴形成部材と軸状部材とを嵌合してから、この結合体を高温の真空炉内で加熱するので、前記テーパ部の周上の一点あるいは数点にろうを付けるのみで、該ろうを前記高温加熱により貫通穴の内周と軸状部材の外周との間に形成される微小隙間全体に万遍なく浸透させることが可能となり、前記結合部を確実にろう付けすることができて、ろう付け部分の剥離がなく品質が安定し、かつ該ろう付け部分の締結強度の高い可変ノズル機構を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0018】
図1は本発明に係る可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機の要部縦断面図である。
図1において、10はタービンケーシング、11は該タービンケーシング10の外周部に渦巻状に形成されたスクロールである。12はラジアル流型のタービンロータで、図示しないコンプレッサと同軸に設けられこれのタービンシャフト12aが軸受ハウジング13に軸受13aを介して回転自在に支持されている。100aは該排気ターボ過給機の回転軸心である。
2はノズルベーンで、前記スクロール11の内周側にタービンの円周方向等間隔に複数枚配置されるとともに、これの翼端部に形成されたノズル軸02が前記タービンケーシング10に固定されたノズルマウント4に回動可能に支持され、可変ノズル機構100によりその翼角を変化せしめられるようになっている。
【0019】
3は円盤状に形成されたドライブリングで、前記タービンケーシング10に回転可能に支持されるとともに、円周方向等間隔にドライブピン32が固着されている。1はレバープレートで、入力側の溝が該ドライブピン32に係合され、出力側が前記ノズル軸02に固定されている。
8は前記ノズルベーン2の駆動源であるアクチュエータ(図示省略)に連結されるクランク機構、5は該クランク機構8に連結されるレバー、6は該レバー5に固定されて前記ドライブリング3に係合し該ドライブリング3を回動駆動するコントロールスリーブである。
【0020】
かかる構成からなる可変ノズル機構付き可変容量型排気ターボ過給機において、内燃機関(図示省略)からの排ガスは前記スクロール11に入り、該スクロール11の渦巻きに沿って周回しながらノズルベーン2に流入する。そして、該排ガスは、前記ノズルベーン2の翼間を流過して前記タービンロータ12にその外周側から流入し、中心側に向かい半径方向に流れて該タービンロータ12に膨張仕事をなした後、軸方向に流出してガス出口10bに案内されて機外に送出される。
【0021】
かかる可変容量タービンの容量を制御するにあたっては、前記アクチュエータに対し、記ノズルベーン2を流れる排ガスの流量が所要の流量になるような該ノズルベーン2の翼角を、翼角制御手段(図示省略)により設定する。かかる翼角に対応するアクチュエータの往復変位はクランク機構8、レバー5、コントロールスリーブ6を介してドライブリング3に伝達され該ドライブリング3が回転駆動される。
該ドライブリング3の回転により、該ドライブリング3に円周方向等間隔に固着されているドライブピン32がレバープレート1を前記ノズル軸02廻りに回動させ、該ノズル軸02の回動によりノズルベーン2が回動して前記アクチュエータにて設定された翼角に変化せしめられる。
【0022】
本発明は、以上のように構成された可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機におけるドライブリングとドライブピンとの結合部及びコントロールスリーブとレバーとの結合部等の貫通穴形成部材と軸状部材との結合部の改良に係るものである。
【実施例1】
【0023】
図2は本発明の第1実施例を示し、(A)はドライブリングの正面図、(B)は(A)におけるA−A線断面図である。図3は前記第1実施例におけるドライブリングとドライブピンとの結合部の詳細を示す拡大断面図(図2(B)のZ部相当図)、図4は前記第1実施例におけるドライブリング貫通穴の拡大正面図である。
図2〜4において、3は可変ノズル機構100(図1参照)のドライブリング(貫通穴形成部材)、31は該ドライブリング3の円周方向mに沿って等間隔に穿孔された貫通穴からなるピン穴で、図3のように、各ピン穴31にはにはドライブピン(軸状部材)32がろう付けによって固着されている。前記貫通穴からなるピン穴31の入口側にはテーパ部31aが加工形成されている。
【0024】
次に、かかる第1実施例におけるドライブリング3とドライブピン32との結合方法について説明する。
先ず、前記ドライブリング3のピン穴(貫通穴)31を、図4のように内径D1の真円に加工した後、該ピン穴(貫通穴)31の入口側にテーパ部31aを加工形成する。そして、図3のように該テーパ部31aの円周上の一点あるいは数点にろう31bを付け、別個に製作した前記ドライブピン32を常温にて一定の締め代(つまり前記ドライブピン32の外径D21をピン穴31の内径D1よりも微小量大きくする)を与えて該ピン穴31内に挿入する。これにより、ドライブリング3にこれの円周方向に沿ってドライブピン32が挿入された結合体が得られる。
次いで、前記結合体を真空炉内で1000℃〜1100℃に加熱する。前記真空炉を用いるのは、加熱時におけるドライブリング3及びドライブピン32の酸化を防止するためである。
【0025】
かかる真空炉内での高温加熱によって、ドライブリング3のピン穴(貫通穴)31の内径D1がドライブピン32の外径D21よりも大きくなって、ピン穴31の内周とドライブピン32の外周との間に微小隙間が形成され、該微小隙間に前記テーパ部31aからのろう31bが前記微小隙間内を浸透する。次いで、前記結合体を炉内で徐冷して前記ろう31bを凝固させ、ドライブリング3のピン穴31内に各ドライブピン32が強固に固着される。
この場合、ドライブリング3はクロマイズ処理等によって既に高温に晒されているので、ろう付け時の熱変形の影響は小さい。
【0026】
本発明は、動力伝達部材のように大きなトルクが掛からない可変ノズル機構100の構成部材を簡単な手法でかつ確実にろう付け結合することに着目したものであり、かかる第1実施例によれば、可変ノズル機構100の構成部材のうち貫通穴を備えたドライブリング3とドライブピン32とを、該ドライブリング3のピン穴31入口側に加工形成したテーパ部31aの円周上の一点あるいは数点にろう31bを付けて、常温にて一定の締め代を与えて両者を嵌合した後に、前記ドライブリング3とドライブピン32との結合体を真空炉内で1000℃〜1100℃の高温に加熱するという、前記特許文献1のような従来技術にくらべてきわめて簡単な手法で、ドライブリング3とドライブピン32との結合部を固着することができる。
これにより、ドライブリング3とドライブピン32とのろう付け作業をきわめて少ない工数で行なうことが可能となる。
【0027】
また、前記ドライブリング3のピン穴31入口側に加工形成したテーパ部31aの円周上の一点あるいは数点にろうを付けて該ドライブリング3とドライブピン32とを嵌合してから、この結合体を高温の真空炉内で加熱するので、前記テーパ部31aの円周上の一点あるいは数点にろう31bを付けるのみで、該ろう31bを前記高温加熱によりピン穴31の内周とドライブピン32の外周との間に形成される微小隙間全体に万遍なく浸透させることが可能となり、前記結合部を確実にろう付けすることができて、ろう付け部分の剥離のない結合構造が得られる。
また、貫通穴からなるピン穴31内にドライブピン32をろう付けするので、ピン穴31の入口から出口に亘る穴内全体におけるろう31bの浸透状況を確認することが容易であり、ろう付け部の品質不良があっても簡単にこれを抽出でき、品質の安定性を保持でき、ろう付け部の品質が安定し、かつ該ろう付け部の締結強度の高いドライブリング3とドライブピン32との結合構造を得ることができる。
【実施例2】
【0028】
図5は、本発明の第2実施例を示すドライブリング貫通穴の拡大正面図である。
かかる第2実施例においては、前記ドライブリング3とドライブピン32との結合部を、該ドライブリング3のピン穴31内周面の1箇所または円周方向に沿って複数箇所(この例では6箇所)に、該ピン穴31内周面(内径D2)から0.05〜0.5mm(好ましくは0.05〜0.1mm)の微小深さaで陥没したろう材注入隙間31cを形成している。
【0029】
かかる第2実施例によれば、前記ドライブリング3とドライブピン32との結合体を真空炉内で高温に加熱する際において、該ドライブリング3とドライブピン32との間に熱膨張率の差が小さく、前記真空炉内での高温加熱によりピン穴31の内周とドライブピン32の外周との間の半径差による微小隙間が小さい場合でも、該高温加熱時に該ピン穴31の内周面から微小深さaで陥没したろう材注入隙間31cにろう31bが侵入できるので、前記ピン穴31の内周とドライブピン32の外周との間にろう31bを万遍なく浸透させることが可能となり、前記のようなドライブリング3とドライブピン32との間の熱膨張率の差が小さい場合でも、これに影響されることなく該ドライブリング3とドライブピン32との結合部を確実にろう付けすることができる。
【実施例3】
【0030】
図6は、本発明の第3実施例を示すドライブリング貫通穴の拡大正面図である。
かかる第3実施例においては、前記ドライブリング3とドライブピン32との結合部を、該ドライブリング3のピン穴31内周面の1箇所または円周方向に沿って複数箇所(この例では6箇所)に、該ピン穴31内周面(内径D3)から0.2〜0.5mmの微小深さaで陥没した半円形状溝に形成されたろう材注入隙間31dを設けている。
かかる第3実施例によれば、ドライブリング3の熱膨張率がきわめて大きくかつドライブピン32の熱膨張率がきわめて小さく、該ドライブリング3とドライブピン32との熱膨張率差が大きい場合に、前記高温加熱後に冷却した際にろう付け部に発生する引張応力を、前記半円形状溝からなるろう材注入隙間31dによって緩和することが可能となって、かかるろう付け部の過大な引張応力による破損の発生を防止できる。
【実施例4】
【0031】
図7は、本発明の第4実施例を示し、(A)はドライブリングの正面図、(B)はコントロールスリーブとレバーとの嵌合部の拡大断面図である。
かかる第4実施例においては、アクチュエータ(図示省略)に連結されるクランク機構8に連結されるレバー5と前記ドライブリング3に係合し該ドライブリング3を回動駆動するコントロールスリーブ6との結合部を、前記第1実施例と同様な(但し第1実施例におけるテーパ部31aの加工はない)ろう付けによって固着している。図において6bがろう付け部で、Z矢の方向にろう付けを行なう。
かかる第4実施例の作用効果は、前記第1実施例と同様である。
【0032】
尚、前記各実施例においては、ドライブリング3とドライブピン32との結合、あるいはコントロールスリーブ6とレバー5との結合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、可変ノズル機構100の構成部材のうち、貫通穴を備えた貫通穴形成部材と該貫通穴に挿入される軸状部材との結合部の全てに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、ろう付け作業がきわめて少ない工数で可能となり、低い製造コストを保持できて、かつろう付け部分の剥離がなく品質が安定した可変ノズル機構構成部材をそなえた排気ターボ過給機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機の要部縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施例を示し、(A)はドライブリングの正面図、(B)は(A)におけるA−A線断面図である。
【図3】前記第1実施例におけるドライブリングとドライブピンとの結合部の詳細を示す拡大断面図(図2(B)のZ部相当図)である。
【図4】前記第1実施例におけるドライブリング貫通穴の拡大正面図である。
【図5】本発明の第2実施例を示すドライブリング貫通穴の拡大正面図である。
【図6】本発明の第3実施例を示すドライブリング貫通穴の拡大正面図である。
【図7】本発明の第4実施例を示し、(A)はドライブリングの正面図、(B)はコントロールスリーブとレバーとの嵌合部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 レバープレート
2 ノズルベーン
02 ノズル軸
3 ドライブリング
4 ノズルマウント
5 レバー
6 コントロールスリーブ
10 タービンケーシング
12 タービンロータ
31 ピン穴
31a テーパ部
31b ろう
31c、31d ろう材注入隙間
32 ドライブピン
100 可変ノズル機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と該貫通穴に挿入される軸状部材との結合部をろう付けにて結合したことを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項2】
前記貫通穴と軸状部材との結合部は、前記貫通穴と軸状部材とを常温において締め代を有する嵌合形態に構成するとともに、前記貫通穴の前記軸状部材挿入の入口側にテーパ部を形成し、該テーパ部からろうを流し込み該貫通穴内に軸状部材を固着するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項3】
前記貫通穴形成部材と軸状部材との結合部は、前記貫通穴の内周面の1箇所または円周方向に沿って複数箇所に、該貫通穴の内周面から0.05〜0.5mmの微小深さで陥没したろう材注入隙間を形成したことを特徴とする請求項1記載の可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項4】
前記ろう材注入隙間を、前記深さが0.2〜1mmの半円形状溝で形成したことを特徴とする請求項3記載の可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項5】
前記貫通穴形成部材と軸状部材との結合部が、ドライブリングとドライブピンとの結合部及びコントロールスリーブとレバーとの結合部のいずれか一方または双方によって構成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの項に記載の可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項6】
タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材の貫通穴の入口側にテーパ部を加工形成し、該テーパ部の周上の一点あるいは数点にろうを付け、軸状部材を常温にて一定の締め代を与えて該貫通穴内に挿入し、次いで前記貫通穴形成部材と軸状部材との結合体を真空炉内で1000℃〜1100℃に加熱して前記貫通穴の内周と軸状部材の外周との間に形成される微小隙間に前記ろうを浸透せしめ、次いで前記結合体を徐冷して前記貫通穴形成部材と軸状部材とを固着することを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法。
【請求項7】
前記貫通穴形成部材が前記可変ノズル機構のドライブリング、前記軸状部材が可変ノズル機構のドライブピンにて構成されたことを特徴とする請求項6記載の可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−207526(P2006−207526A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22995(P2005−22995)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】