説明

同軸二輪車

【課題】より安全性を高めた同軸二輪車を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる同軸二輪車10は、搭乗者が足を載せるステップ1a,1bを有し、同軸上に配置された一対の車輪2a,2bを駆動制御することにより、移動する。当該同軸二輪車10は、搭乗者の膝の屈伸状態を検出し、検出信号を出力する屈伸状態検出機構8と、検出信号に含まれる屈伸状態の情報に基づいて、減速させる減速手段として機能する制御部5やブレーキ11を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭乗者を乗せて走行する同軸二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータで駆動される一対の同軸車輪を有し、人が立位姿勢でステップに搭乗した状態でバランスを保ちながら走行する同軸二輪車が知られている(例えば、特許文献1)。このような従来の同軸二輪車では、例えば、搭乗者の体重移動により、移動を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−315666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の同軸二輪車において、搭乗者がパニック状態に陥ると、図6に示されるように、体を硬直させ、前屈みになる場合がある。これは、何かにしがみついたり、握りこむという動作等、危険な振る舞いをしてしまう、パニック状態の人間の特性によるものである。このような状態では、搭乗者の体重が前方に移動するため、搭乗者が同軸二輪車を停止させたいと考えていても、同軸二輪車はその考えに反して前方向に加速してしまう。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、より安全性を高めた同軸二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる同軸二輪車は、搭乗者が足を載せるステップを有し、同軸上に配置された一対の車輪を駆動制御することにより、移動する同軸二輪車であって、搭乗者の膝の屈伸状態を検出し、検出信号を出力する屈伸状態検出手段と、前記検出信号に含まれる屈伸状態の情報に基づいて、減速させる減速手段とを備えたものである。
【0006】
ここで、減速手段は、膝の屈伸量が予め定めた値以上である場合に、減速を開始することが望ましい。
【0007】
また、減速手段は、前記車輪の駆動を制御する制御部が、前記検出信号に基づいて減速を行うように前記車輪の駆動を制御することによって実現することもできる。
【0008】
さらに、前記検出信号に基づいて減速を行うように前記車輪を制動する制動手段を備えるようにしてもよい。
【0009】
前記屈伸状態検出手段は、搭乗者の膝が押し当てられる膝押し当て部の車両本体に対する相対位置を検出することにより当該搭乗者の膝の屈伸状態を検出することが望ましい。
【0010】
典型的な例にかかる前記同軸二輪車は、移動を操作する操作レバーを有し、前記屈伸状態検出手段は、当該操作レバーに設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より安全性を高めた同軸二輪車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】発明の実施の形態1にかかる同軸二輪車の側面図である。
【図2】発明の実施の形態1にかかる同軸二輪車の正面図である。
【図3】発明の実施の形態1にかかる同軸二輪車に搭乗者が搭乗した状態を説明するための説明図である。
【図4】発明の実施の形態1にかかる同軸二輪車の制御を示すブロック図である。
【図5】発明の実施の形態2にかかる同軸二輪車の制御を示すブロック図である。
【図6】従来の問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の実施の形態1.
発明の実施の形態1にかかる同軸二輪車は、いわゆる自走倒立二輪車である。
図1は、発明の実施の形態1にかかる同軸二輪車の側面図であり、また、図2は、その正面図である。当該同軸二輪車10は、車両本体1と、左右一対の車輪2L、2Rと、左右一対の車輪駆動ユニット3L、3Rと、操作レバー4とを備えている。
【0014】
一対の車輪2L、2Rは、車両本体1の走行方向と直交する方向の両側において同軸上に配置されるとともに回転自在に車両本体1に支持されている。なお、以下の説明において、一対の車輪2L、2Rの車軸に相当する軸をピッチ軸とし、車両本体1の中心を通って同軸二輪車10の走行方向と平行をなす軸をロール軸とする。
【0015】
車両本体1の上面には、搭乗者の足を夫々乗せる2つのステップ部1a、1bが設けられている。車両本体1の側面には、各車輪2L、2Rを独立して回転駆動する左右一対の車輪駆動ユニット3L、3Rが設けられている。各車輪駆動ユニット3L、3Rは、例えば、車輪駆動モータと、その車輪駆動モータの回転力を減速して各車輪2L、2Rへ伝達する減速機と、によって構成される。
【0016】
車両本体1には、ロール軸回転方向へ回転自在に操作レバー4が取り付けられている。
操作レバー4がピッチ軸回転方向(前後方向)へ傾斜すると同軸二輪車10の前進又は後退操作が実行され、操作レバー4がロール軸回転方向(左右方向)へ傾斜すると、同軸二輪車10の旋回操作が実行される。
【0017】
本実施の形態にかかる同軸二輪車10は、搭乗者の膝の屈伸状態を検出する屈伸状態検出機構8を備えている。本例の屈伸状態検出機構8は、ベース部材81、第1のロッド82、第2のロッド83、膝当て部材84を備えている。
【0018】
ベース部材81は、円柱状の外形状を有し、操作レバー4に固定されている。ベース部材81の長手方向は、操作レバー4を操作しない状態において、ピッチ軸と平行である。即ち、ベース部材81の長手方向は、操作レバー4の上端に設けられたハンドル部分の左右方向に延在した部材と実質的に平行である。
【0019】
第1のロッド82は、2組のロッド82a、82bより構成され、それぞれベース部材81の両端部近傍から後方やや上側に向かって延在している。第1のロッド82は、パイプ状の形状を有する。
【0020】
第2のロッド83は、2組のロッド83a、83bより構成され、それぞれロッド82a、82bと相対位置が変動可能なように、当該ロッド82a、82bに弾性的に保持されている。即ち、ロッド83a、83bがロッド82a、82b側(即ち、ベース部材81側)に付勢されると、その力に応じてロッド83a、83bはロッド82a、82b側へ相対的に移動する。それとともに、第1のロッド82或いは第2のロッド83は、この相対的な移動量を測定する手段(図示せず)を備えており、測定した移動量を搭乗者の屈伸状態を示す情報として後述する制御装置5及びブレーキ11に出力する。移動量の測定手段としては、周知の変位センサや光センサを用いて構成することが可能である。
【0021】
膝当て部材84は、2組の部材84a、84bより構成され、それぞれ、ロッド83a、83bと固定されている。膝当て部材84には、搭乗者の膝の前側を少なくとも保持する構成を有する。膝当て部材84は、搭乗者の膝が確実に接し、その位置が検出できるように膝の形状に沿った形状を有している。例えば、半円状に屈曲していてもよい。膝当て部材84は、装着感を向上させるために、搭乗者の膝と接する部分に衝撃を緩和する部材を設けてもよい。
【0022】
図3に、本実施の形態1にかかる同軸二輪車10に搭乗者が搭乗した状態を示す。図に示される状態では、搭乗者は膝を曲げていないので、第1のロッド82と第2のロッド83は初期位置のままである。従って、この場合には、当該同軸二輪車10は通常の移動動作を行う。
【0023】
図4は、同軸二輪車10のシステム構成を示すブロック図である。
同軸二輪車10は、制御装置5と、角度検出センサ61と、姿勢センサユニット62と、一対の車輪速度センサ7L、7Rと、屈伸状態検出機構8と、一対の駆動回路9L、9Rと、ブレーキ11を備えている。
【0024】
姿勢センサユニット62は、車両本体1に配設されており、同軸二輪車10の走行時における車両本体1のピッチ角度、ピッチ角速度、加速度等を検出する。姿勢センサユニット62は、例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ等から構成されている。
操作レバー4が前方もしくは後方に傾斜すると、車両本体1も操作レバー4に連動して同方向へ傾斜する。姿勢センサユニット62は、操作レバー4の傾斜に対応した車両本体1のピッチ角度やピッチ角速度(姿勢値)を検出する。
【0025】
角度検出センサ61は、操作レバー4の回動軸に取り付けられている。角度検出センサ61としては、例えば、ポテンショメータやバリコン構造のセンサ等を適用することができる。角度検出センサ61は、搭乗者によって旋回したいと思う所望の方向へ操作レバー4が回動されたとき、その操作量及び操作方向を検出する。操作レバー4が操作されると、角度検出センサ61は、その操作量及び操作方向に応じた操作信号を制御装置5に出力する。
【0026】
左右の車輪速度センサ7L、7Rは、左右の車輪2L、2Rにそれぞれ配設されており、各車輪2L、2Rの車輪速度をそれぞれ検出する。車輪速度センサ7L、7Rは、検出した各車輪2L、2Rの車輪速度を、制御装置5に出力する。
【0027】
一対の駆動回路9L、9Rは、車両本体1に内蔵されており、左右の車輪駆動ユニット3L、3Rをそれぞれ駆動する。
ブレーキ11は、車輪2L、2Rの回転を制動する制動手段である。当該ブレーキ11は、例えば、油圧ブレーキである。本実施の形態1におけるブレーキ11は、屈伸状態検出機構8より屈伸状態を示す検出信号を入力し、屈伸状態に応じた制動動作を行う。例えば、搭乗者の屈伸量が所定値以上であると、車輪2L、2Rの回転が減速するように制動する。さらに、搭乗者の屈伸量が増えると、制動を強くする。搭乗者の屈伸量と制動の強さは、様々な関係に設定することが可能である。例えば、屈伸量に応じて制動の強さが段階的に大きくなるようにしてもよく、屈伸量が一定以上の場合には制動の強さを一定にしてもよい。
【0028】
制御装置5は、駆動回路9L、9Rを介して車輪駆動ユニット3L、3Rを駆動制御する。制御装置5は、制御処理、演算処理等を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUによって実行される制御プログラム、演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)、処理データ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を有し、倒立制御部51を含む構成である。
【0029】
倒立制御部51は、姿勢センサユニット62によって検出された車両本体1のピッチ角度およびピッチ角速度等に基づいて、操作レバー4の傾斜方向(前方又は後方)及び対応する移動速度を算出する。そして、倒立制御部51は、同軸二輪車10がバランスを保ちつつ、算出した傾斜方向および移動速度で同軸二輪車10が移動するように各車輪駆動ユニット3L、3Rを駆動制御する。これにより、同軸二輪車10は、バランスを保ちながら所望の移動速度で前進または後退することができる。
【0030】
また、倒立制御部51は、角度検出センサ61からの操作信号に応じて、一対の車輪駆動ユニット3L、3Rの駆動を制御し、左右の車輪2L、2Rに回転差を生じさせる。これにより、同軸二輪車10は、所望の車速度で所望の方向へ旋回走行する。
【0031】
さらに、倒立制御部51は、屈伸状態検出機構8からの検出信号に応じて、倒立姿勢制御を実行する。具体的には、屈伸状態検出機構8からの検出信号に含まれる屈伸量に関する情報を取得し、屈伸量が所定値以上の場合に、目標速度を低くし、車輪2L、2Rの回転が減速するように制御を行う。
【0032】
続いて、本実施の形態1にかかる同軸二輪車に搭乗した搭乗者が膝を曲げた場合における当該同軸二輪車の動作について説明する。
搭乗者が膝を曲げて屈伸すると、搭乗者の膝が膝当て部84を前方、即ち操作レバー4側へ付勢する。これに応じて、膝当て部84に固定された第2のロッド83は、第1のロッド側82に移動し、第2のロッド83と第1のロッド82の相対的な位置が移動する。この移動量を図示しない測定手段により測定する。測定手段は、屈伸状態情報を含む検出信号を、制御装置5及びブレーキ11に出力する。
【0033】
検出信号を入力した制御装置5は、屈伸量が所定値以上の場合に、目標速度を低くし、車輪2L、2Rの回転が減速するように制御を行う。また、検出信号を入力し、屈伸状態に応じた制動動作を行う。
【0034】
本実施の形態1にかかる同軸二輪車は、このように搭乗者の屈折状態に応じて減速動作を行うようにしたので、操作に慣れないユーザであっても膝を曲げる(落とす)ことで容易に減速させることができる。また、搭乗者がパニックになった場合に、同軸二輪車は、前屈みになった搭乗者の状態を検知し、減速させることができるので、安全性を高めることができる。特に、本実施の形態1では、倒立制御と、ブレーキ制御のそれぞれにおいて搭乗者の屈折状態に応じた減速動作を実現しているので、いずれか一方の動作に不具合があった場合にも、同軸二輪車を減速させることができ、さらに安全性を高めることが可能となる。
【0035】
発明の実施の形態2.
発明の実施の形態2にかかる同軸二輪車は、制御に特徴を有する。本実施の形態2にかかる同軸二輪車は、構造は基本的に発明の実施の形態1にかかる同軸二輪車と同様であるが、必ずしもブレーキ11を具備しなくてもよい。
【0036】
図5は、本実施の形態2にかかる同軸二輪車の制御を示すブロック図である。図に示されるように、屈伸状態検出機構8の検出信号は、制御装置5の倒立制御部51のみに入力されている。
【0037】
倒立制御部51は、屈伸状態検出機構8からの検出信号に応じて、倒立姿勢制御を実行する。具体的には、屈伸状態検出機構8からの検出信号に含まれる屈伸量に関する情報を取得し、屈伸量が所定値以上の場合に、目標速度を低くし、車輪2L、2Rの回転が減速するように制御を行う。
【0038】
本実施の形態2にかかる同軸二輪車は、このように搭乗者の屈折状態に応じて減速動作を行うようにしたので、操作に慣れないユーザであっても膝を曲げる(落とす)ことで容易に減速させることができる。また、搭乗者がパニックになった場合に、同軸二輪車は、前屈みになった搭乗者の状態を検知し、減速させることができるので、安全性を高めることができる。特に、本実施の形態2では、ブレーキ機構が不要のため、低コストを実現できる。
【0039】
その他の実施の形態.
屈伸状態検出機構8は、発明の実施の形態1、2で説明した構成に限らず、他の構成を採用することも可能である。例えば、屈伸状態検出機構8は、搭乗者の膝の位置を非接触で検出するものであってもよい。この場合には、屈伸状態検出機構8は、レーザセンサにより構成したり、イメージセンサ等の撮像手段と撮影画像を分析する分析手段により構成することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 車両本体
1a,1b ステップ部
2L,2R 車輪
3L,3R 車輪駆動ユニット
4 操作レバー
5 制御装置
61 角度検出センサ
62 姿勢センサユニット
7L,7R 車輪速度センサ
8 屈伸状態検出機構
9L,9R 駆動回路
10 同軸二輪車
11 ブレーキ
51 倒立制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者が足を載せるステップを有し、同軸上に配置された一対の車輪を駆動制御することにより、移動する同軸二輪車であって、
搭乗者の膝の屈伸状態を検出し、検出信号を出力する屈伸状態検出手段と、
前記検出信号に含まれる屈伸状態の情報に基づいて、減速させる減速手段とを備えた同軸二輪車。
【請求項2】
前記減速手段は、膝の屈伸量が予め定めた値以上である場合に、減速を開始することを特徴とする請求項1記載の同軸二輪車。
【請求項3】
前記減速手段は、前記車輪の駆動を制御する制御部が、前記検出信号に基づいて減速を行うように前記車輪の駆動を制御することによって実現することを特徴とする請求項1又は2記載の同軸二輪車。
【請求項4】
前記検出信号に基づいて減速を行うように前記車輪を制動する制動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の同軸二輪車。
【請求項5】
前記屈伸状態検出手段は、搭乗者の膝が押し当てられる膝押し当て部の車両本体に対する相対位置を検出することにより当該搭乗者の膝の屈伸状態を検出することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の同軸二輪車。
【請求項6】
前記同軸二輪車は、移動を操作する操作レバーを有し、
前記屈伸状態検出手段は、当該操作レバーに設けられていることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の同軸二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−215198(P2010−215198A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67295(P2009−67295)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】