説明

吐出弁およびこれを備えた圧縮機械

【課題】かしめの良否をノギス等の測定具を用いることなく、目視による外観検査のみで容易に判定することができる吐出弁およびこれを備えた圧縮機械を提供する。
【解決手段】弁座12に形成した吐出口14を開閉自在に弁座12上に設けられる板ばね状の弁体18と、弁体18の上面に設けられる弁押さえ20とを有し、弁体18と弁押さえ20とが1本のリベット26により弁座12にかしめ固定される吐出弁10であって、弁押さえ20のかしめ面20aに、予め定めたリベット26のかしめ頭の外径の上限を示す目印32aと下限を示す目印32bの少なくとも一方を設けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機や冷蔵庫の冷却装置に使用するロータリ圧縮機などの密閉型回転式圧縮機に用いる吐出弁およびこの吐出弁を備えた圧縮機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリ圧縮機やスクロール圧縮機などの圧縮機に備わる吐出弁が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1に示されるロータリ圧縮機は、図5に示すように、密閉ケース1内に収納された圧縮機構2と電動機3とを備える。圧縮機構2は、電動機3のロータ3aの駆動軸3bと連結してあり、仕切板4を挟んで重ね合わされた一対のシリンダ5a、5bを備える。シリンダ5a、5bは、略円筒形状をなし、その内側を駆動軸3bが貫通してあり、各シリンダ5a、5b内にはローラ6a、6bが設けられる。各ローラ6a、6bは、駆動軸3bの軸線に対して偏心して取り付けられ、駆動軸3bの回転に伴いシリンダ5a、5b内壁を転動するようになっている。
【0004】
また、一対のシリンダ5a、5bを挟んだ上下に主軸受7aと副軸受7bとが設けてある。各軸受7a、7bは、図6および図7に示すように、対応するシリンダ5a、5bの端面に対して取り付けられるフランジ部8aと駆動軸3bを支持するボス部8bとを有している。軸受のフランジ部8aには上下に貫通した吐出ポート8cが形成してある。吐出弁9aは、軸受のフランジ部8aに取り付けられる板ばね状のものであり、吐出ポート8cに対応した開閉部9bを有する。吐出弁9aの外面には、開閉部9bの開度を制限するための弁押さえ9cが重なるように取り付けてある。
【0005】
吐出弁9aと弁押さえ9cは、開閉部9b側とは反対側の端部においてリベット9dによって軸受のフランジ部8aに片持ち式に固定される。フランジ部8aには、これら吐出弁9aと弁押さえ9cに対応して凹部8dが形成してある。
【0006】
上記の構成において、各シリンダ5a、5b内で圧縮された作動流体の圧力が所定の吐出圧を超えると、吐出弁9aがその前後の差圧で弁押さえ9c側へ弾性変形して開閉部9bが吐出ポート8cの出口を開き、圧縮された作動流体が吐出ポート8cを通って密閉ケース1内に吐き出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−110763号公報
【特許文献2】特開2007−255302号公報
【特許文献3】特開2008−101503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の従来の特許文献1等の圧縮機の製造過程において、吐出弁9aと弁押さえ9cは、リベット9dをかしめ機で押し潰すことによりフランジ部8aに固定している。所定の締付力でかしめられなかった場合など、かしめが正常に行えなかった場合には、圧縮機の稼働中に、吐出弁9aのズレやリベット9dの破断を引き起こすおそれがあることから、かしめ後にリベット9dのかしめ頭の外径や高さをノギス等の測定具で測定し、かしめ頭の外径が正常範囲にあるか否かを調べることで、かしめの良否を判定していた。この場合、ノギス等の測定具をリベット9dのかしめ頭に合わせる手間を要し、製造時の作業効率の低下を招いてしまう。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、かしめの良否をノギス等の測定具を用いることなく、目視による外観検査のみで容易に判定することができる吐出弁およびこれを備えた圧縮機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る吐出弁は、弁座に形成した吐出口を開閉自在に前記弁座上に設けられる板ばね状の弁体と、前記弁体の上面に設けられる弁押さえとを有し、前記弁体と前記弁押さえとが1本のリベットにより前記弁座にかしめ固定される吐出弁であって、前記弁押さえのかしめ面に、予め定めた前記リベットのかしめ頭の外径の上限を示す目印と下限を示す目印の少なくとも一方を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る吐出弁は、上述した請求項1において、前記目印を、プレス加工により形成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る吐出弁は、上述した請求項1において、前記目印を、圧縮機械に用いる冷媒成分および油成分に悪影響を与えない塗料により形成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る圧縮機械は、上述した請求項1〜3のいずれか一つに記載の吐出弁を備えた圧縮機械である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る吐出弁は、弁座に形成した吐出口を開閉自在に前記弁座上に設けられる板ばね状の弁体と、前記弁体の上面に設けられる弁押さえとを有し、前記弁体と前記弁押さえとが1本のリベットにより前記弁座にかしめ固定される吐出弁であって、前記弁押さえのかしめ面に、予め定めた前記リベットのかしめ頭の外径の上限を示す目印と下限を示す目印の少なくとも一方を設けたので、かしめ後にかしめ面に形成されるリベットのかしめ頭の大きさと、かしめ頭が潰れる大きさに応じて予め設けた目印の大きさとを目視にて容易に比較することができる。
【0015】
この場合、かしめ頭の外径の大きさが上限を示す目印を超える場合や、下限を示す目印を超えない場合には、かしめが不良であったとの判定を下すことができ、逆に、上限を示す目印をかしめ頭の全周にわたって超えないで、しかも下限を示す目印を全周にわたって超える場合には、かしめが正常であったとの判定を下すことができる。例えば、上限と下限を示す目印として二重円を用いた場合、かしめ頭によって内側の円が完全に隠れて見えないと同時に外側の円が完全に現れて視認できるときには、かしめが正常に行われたとの判定を下すことができる。このように本発明は、ノギス等の測定具を用いることなく、目視による外観検査のみで容易にかしめの良否を判定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る吐出弁の実施例を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る吐出弁の実施例を示す上面図である。
【図3】図3は、本発明に係る吐出弁の実施例を示す側断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る吐出弁によるかしめの良否の判定の一例を示す上面図であり、(a)はOKを、(b)および(c)はNGを示す図である。
【図5】図5は、従来のロータリ圧縮機の側断面図である。
【図6】図6は、従来の吐出弁が設けられた軸受の平面図である。
【図7】図7は、図6のA−A線に沿う側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る吐出弁およびこれを備えた圧縮機械の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
図1、図2および図3に示すように、本発明に係る吐出弁10は、図示しない圧縮機械の軸受に設けられるものであり、弁座としての軸受のフランジ部12に形成した吐出口14を開閉自在に、このフランジ部12上に形成した凹部16に設けられる板ばね状の弁体18と、弁体18の上面に重ねて設けられる弁押さえ20とを有する。
【0019】
弁体18と弁押さえ20は、一方側の基部22に設けたリベット孔24に通される1本のリベット26によりフランジ部12にかしめ固定され、他方側の開閉部28は自由端としてある。弁体18は、吐出口14からの流体圧により弁押さえ20側へ弾性変形し、開閉部28を開いて図示しないシリンダの圧縮流体を吐出可能としてある。
【0020】
弁押さえ20のかしめ面20aのリベット孔24の周囲には、リベット26のかしめ頭30が潰れる面方向の外径サイズに対応して予め定めた外径の正常範囲の上限および下限を示す二重円32(二重の円環状のライン)が同軸に形成してある。二重円32の外側の円は、かしめ頭30の外径の正常範囲の上限を示す目印のライン32aであり、内側の円は、かしめ頭30の外径の正常範囲の下限を示す目印のライン32bである。
【0021】
上記のように構成した本発明の吐出弁10のかしめの良否を判定する場合には、二重円32の外観を目視にて検査し、かしめ後にかしめ面20aに形成されるリベット26のかしめ頭30の外周が、上限と下限のライン32a、32bの間に収まっていれば、かしめが良好になされたと判定することができる。つまり、かしめ頭30によって内側の円が完全に隠れて見えないと同時に外側の円が完全に現れて視認できるときには、かしめが良好になされたと判定することができる。逆に、かしめ頭30が一部でも上限を示すライン32aを超える場合や、下限を示すライン32bを超えない場合には、かしめが不良であったと判定することができる。
【0022】
このように本発明は、かしめ頭30のサイズが予め定めた正常範囲になっているか否かのかしめの良否を、ノギス等の測定具を用いることなく、目視による外観検査のみで容易に判定することができる。
【0023】
次に、かしめの良否の判定の一例について図4を参照しながら説明する。
図4は、本発明に係る吐出弁によるかしめの良否の判定の一例を示す上面図であり、(a)はOK、(b)および(c)はNGを示す図である。
【0024】
図4(a)に示すように、かしめ面20aにリベット26のかしめ頭30が形成されており、上限を示す目印のライン32aは完全に視認できる状態となっている。しかも、下限を示す目印のライン32bはかしめ頭30に完全に隠れて視認できない。この場合、かしめは良好である(OK)と判定することができる。
【0025】
一方、図4(b)に示すように、リベット26のかしめ頭30が面方向に波打つように形成されており、下限を示す目印のライン32bの一部が視認できる状態となっている。この場合、かしめ頭30の外径が正常範囲の下限を下回るので、かしめは不良である(NG)と判定することができる。
【0026】
また、図4(c)に示すように、上限を示す目印のライン32aの一部しか視認できない場合には、かしめ頭30の外径が部分的に正常範囲の上限を超えることになる。この場合、かしめは不良である(NG)と判定することができる。
【0027】
上記の実施の形態において、かしめ面20aに設ける目印のライン32a、32bは、プレス加工により形成したり、吐出弁10が設けられる圧縮機械に用いる冷媒成分や油成分などへ悪影響を及ぼさない塗料により構成することが好ましい。また、この目印のライン32a、32bは、かしめ頭30の外径サイズの正常範囲を示す上限、下限の少なくとも一方を設けるようにしてもよい。また、上限と下限を区別する色彩、光沢、線種を施してもよいし、文字、図形、記号等を目印のライン32a、32bの近傍に施してもよい。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、弁座に形成した吐出口を開閉自在に前記弁座上に設けられる板ばね状の弁体と、前記弁体の上面に設けられる弁押さえとを有し、前記弁体と前記弁押さえとが1本のリベットにより前記弁座にかしめ固定される吐出弁であって、前記弁押さえのかしめ面に、予め定めた前記リベットのかしめ頭の外径の上限を示す目印と下限を示す目印の少なくとも一方を設けたので、かしめ後にかしめ面に形成されるリベットのかしめ頭の大きさと、かしめ面に予め設けた外径の目印の大きさとを目視にて容易に比較することができる。このため、ノギス等の測定具を用いることなく、目視による外観検査のみで容易にカシメの良否を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る吐出弁は、圧縮機械に用いる吐出弁に有用であり、特に、空気調和機や冷蔵庫の冷却装置に使用するロータリ圧縮機やスクロール圧縮機などの密閉型回転式圧縮機に用いる吐出弁に適している。
【符号の説明】
【0030】
10 吐出弁
12 フランジ部(弁座)
14 吐出口
16 凹部
18 弁体
20 弁押さえ
20a かしめ面
22 基部
24 リベット孔
26 リベット
28 開閉部
30 かしめ頭
32 二重円
32a 上限を示す目印のライン(目印)
32b 下限を示す目印のライン(目印)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に形成した吐出口を開閉自在に前記弁座上に設けられる板ばね状の弁体と、前記弁体の上面に設けられる弁押さえとを有し、前記弁体と前記弁押さえとが1本のリベットにより前記弁座にかしめ固定される吐出弁であって、
前記弁押さえのかしめ面に、予め定めた前記リベットのかしめ頭の外径の上限を示す目印と下限を示す目印の少なくとも一方を設けたことを特徴とする吐出弁。
【請求項2】
前記目印を、プレス加工により形成したことを特徴とする請求項1に記載の吐出弁。
【請求項3】
前記目印を、圧縮機械に用いる冷媒成分および油成分に悪影響を与えない塗料により形成したことを特徴とする請求項1に記載の吐出弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の吐出弁を備えた圧縮機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−236564(P2010−236564A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82007(P2009−82007)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】