説明

含フッ素エーテルおよびその用途

【課題】使用時の劣化の問題を防ぎ、潤滑剤、界面活性剤、撥水撥油剤等の表面改処理等として有用に用いうる化合物を提供する。
【解決手段】式[W−Q(O)e(CHf(CFgO(Qh−]aY[−O(Qqbで表され、式中に−(OCFO)−構造が存在しない含フッ素エーテル。ただし、aは2〜20の整数、bは0〜18の整数であり、かつ(a+b)は2〜20の整数;Qは単結合等;Qは−CFCFO−;eは0または1、fは0〜4の整数、gは1〜6の整数、hは0〜200の整数。ただし、eとgが1である場合のfは1〜4の整数;qは3〜200の整数;Rは1価のペルフルオロ化飽和炭化水素基またはエーテル性酸素原子を含む1価のペルフルオロ化飽和単価水素基;Yは(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基;Wは(CHO)Si(CH−等の基。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤、撥水撥油剤、防汚剤等の表面処理剤として有用な新規な含フッ素エーテルおよび含フッ素エーテルの反応物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素エーテルは、潤滑剤、撥水撥油剤等として広く使用される。たとえば、下式(A)で表される化合物、下式(B)で表される化合物(ただし、式中のr1、r2、およびr3は、それぞれ独立に1以上の整数を示す。)が挙げられる。
【0003】
HO−CHCFO−(CFCFO)r1−(CFO)r2−CFCHOH(A)
CFCFCFO−(CFCFCFO)r3−CFCFCHOH(B)。
【0004】
磁気ディスク等のダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)が表面に形成された部材に、式(A)で表される化合物または式(B)で表される化合物を塗布した場合、DLC膜表面と化合物の末端の水酸基とが水素結合によって比較的強い結合を形成する。しかし、上記化合物が有する水酸基は1または2個であるため、化合物と部材表面との結合強度が不充分であり、物理的接触によって、表面の化合物が失われる問題があった。
【0005】
また、下式(C)で表される化合物(ただし、式中のr4は0〜20の整数、r5はr5/r4=0.5〜2を満たす数、XおよびXはハロゲン原子、Tは炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基を示す。)も提案されている(特許文献1参照。)。
【0006】
−O(CFCFO)r4(CFO)r5CXCHOC(O)CH=CH
・・・(C)。
【0007】
しかし、式(C)で表わされる化合物は−(OCFO)−で表される構造に起因する分解反応により、化合物が劣化する問題があった(たとえば、非特許文献1、非特許文献2、および非特許文献3参照。)。
【0008】
−(OCFO)−で表される構造が存在しない化合物として、末端に−COOH基を有する下式(D)で表される化合物(ただし、式中のr6は1以上の整数を示す。)が報告されている。
【0009】
HOCO−CHCFO−(CFCFO)r6−CFCHCOOH・・・(D)。
【0010】
しかし、式(D)で表される化合物は、部材表面との高い密着性が得られない問題があった。また、該化合物は、高温条件下におかれると−COOH基が脱炭酸して失われるため、部材表面との水素結合を形成できなくなる問題があった。さらに、該化合物は、−COOH基に由来して酸性度が大きいため、部材の腐食原因となる問題もあった。
【0011】
【特許文献1】米国特許第6156937号明細書
【非特許文献1】W.Fongら、「IEEE Transactions on Magnetics」、1999年3月、第35巻、第2号、p.911−912
【非特許文献2】J.Scheirs著、「Modern Fluoropolymers」、John Wiley & Sons Ltd.,1997年、p.466−468
【非特許文献3】P.H.Kasai、「Macromolecules」、1992年、第25巻、p.6791
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題を解決する目的でなされたものであり、使用時の劣化の問題がなく、撥水撥油性、防汚性等に優れ、潤滑油またはコーティング剤等として有用に用いうる新規な含フッ素エーテルおよび含フッ素エーテルの反応物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下の発明を提供する。
<1>下式(1)で表される含フッ素エーテル。
[W−Q(O)e(CHf(CFgO(Qh−]aY[−O(Qqb(1)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
a、b:aは2〜20の整数、bは0〜18の整数であり、かつ(a+b)は2〜20の整数。
:−(OCHCHc・(OCHCH(OW)CHd−(ただし、cは0〜100の整数。dは0〜100の整数。Wは後述する基を示す。)を示す。
:−CFCFO−を示す。
e〜f:eは0または1、fは0〜4の整数、gは1〜6の整数、hは0〜200の整数。ただし、eとgが1である場合のfは1〜4の整数。
q:3〜200の整数。
:1価のペルフルオロ化飽和炭化水素基またはエーテル性酸素原子を含む1価のペルフルオロ化飽和単価水素基であり、後者の基である場合には、式−O(Qqで表される基中に−(OCFO)−構造は存在しない。
【0014】
Y:(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、後者の基である場合には、該基中に−(OCFO)−構造は存在しない。
【0015】
W:下式(W1)〜(W6)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、eが1である場合のWの一部は水素原子であってもよい。
【0016】
CH=C(R)CO−・・・(W1)
OCN(CH−・・・(W2)
NC(CH−・・・(W3)
(R3−m(RSi(CH−・・・(W4)
【0017】
【化1】

【0018】
(ただし、Rは水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のアルキル基。Rは水酸基、イソシアネート基、または加水分解される基。Rは水素原子または1価の炭化水素基。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基。i、j、およびpはそれぞれ独立に、0以上の整数。kは2以上の整数。mは1〜3の整数。)
<2>(a+b)が3または4である<1>に記載の含フッ素エーテル。
【0019】
<3>式(1)で表わされる化合物が、下式(1−1)で表される化合物〜式(1−5)で表される化合物から選ばれるいずれかの化合物である<1>に記載の含フッ素エーテル。
[WO(CH(CFO(Q−]・・・(1−1)
[W(CFO(Q−]・・・(1−2)
[WCFO(Q−]・・・(1−3)
[W(O)(CHCFO(Q−]・・・(1−4)
[WOCHCFO(Qh−]・・・(1−5)。
【0020】
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
、e、f、g、h:前記と同じ意味を示す。
:3価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、3価のペルフルオロ化飽和炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、後者の基である場合には、該基中に−(OCFO)−構造は存在しない。
:水素原子または前記式(W1)で表される基であり、3つのWの少なくとも一つは式(W1)で表される基。
:前記式(W2)で表される基を示す。
:前記式(W3)で表される基を示す。
:前記式(W4)で表される基であり、eが1である場合のWの1または2個は水素原子であってもよい。
:水素原子または前記式(W5)で表される基であり、3つのWの少なくとも一つは式(W5)で表される基。
【0021】
<4>ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した分子量が500〜100万である<1>〜<3>のいずれかに記載の含フッ素エーテル。
<5><1>〜<4>のいずれかに記載の式(1)で表される含フッ素エーテルの2分子以上を反応させてなる、または<1>〜<4>に記載の式(1)で表される含フッ素エーテルの1分子以上と該式(1)で表される含フッ素エーテルと反応しうる他の化合物の1分子以上とを反応させてなる含フッ素エーテルの反応物。
<6><1>〜<4>のいずれかに記載の含フッ素エーテルおよび/または<5>に記載の含フッ素エーテルの反応物、ならびに有機溶媒を含む溶液組成物。
【0022】
<7>含フッ素エーテルおよび含フッ素エーテルの反応物の総量が、溶液組成物に対して0.001〜50質量%である<6>に記載の溶液組成物。
<8><1>〜<4>のいずれかに記載の含フッ素エーテルおよび/または<5>に記載の含フッ素エーテルの反応物を必須成分とする表面処理剤。
<9><8>に記載の表面処理剤を部材表面に処理することによって、部材表面に被膜を形成させてなる処理部材。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、使用時の劣化の問題がなく、撥水撥油剤、潤滑剤、防汚剤等の表面処理剤として有用な新規な含フッ素エーテルおよび含フッ素エーテルの反応物が提供される。また、本発明の含フッ素エーテルまたは含フッ素エーテルの反応物を用いることにより、部材表面と高い密着性を有する強固な被膜を形成できる。該被膜は耐久性に優れることから、部材表面に良好な撥水撥油性、潤滑性、防汚性等の機能を長期にわたり安定に付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書においては、式(1)で表される含フッ素エーテルを化合物(1)とも記す。また、式(X)で表される基を基(X)とも記す。他の式で表される化合物および基についても同様に記す。
【0025】
本発明は下記化合物(1)を提供する。また、本発明は下記化合物(1)の1分子以上を反応させてなる、または下記化合物(1)の1分子以上と該化合物(1)と反応しうる他の化合物(以下、他の化合物とも略記する。)の1分子以上とを反応させてなる化合物(以下、これらの化合物を総称して含フッ素エーテルの反応物とも記す。)を提供する。
【0026】
化合物(1)は、基(Y)に、a個の下式(X)で表される基、およびb個の下式(Z)で表される基が結合した化合物である。
W−Q(O)e(CHf(CFgO(Qh−・・・(X)
(QqO−・・・(Z)。
【0027】
aは2〜20の整数である。化合物(1)に存在する2以上の基(X)は、同一であっても異なっていてもよい。aは2〜10の整数が好ましく、2または3が特に好ましく、3がとりわけ好ましい。
【0028】
bは0〜18の整数であり、0または1が好ましく、特に後述するhが1以上の整数である場合のbは0が好ましい。bが2以上である場合には、式中の基(Z)は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
基(X)におけるQは、式−(OCHCHc・(OCHCH(OW)CHd−で表される2価の基を示す。cは−(OCHCH)−の数を示し、0〜100の整数であり、0〜10の整数が好ましい。dは−(OCHCH(OW)CH)−(ここで、Wは後述する意味を示す。)の数を示し、0〜100の整数であり、0〜10が好ましい。cとdとは、cとdとが0、cが0でありdが1以上(dは1が好ましい。)、cが1以上(cは1が好ましい。)でありdが0が好ましく、特にcとdが0(すなわち、基Qは存在しない。)であるのが好ましい。基(Q)等の基が存在しないとは、該基部分が単結合であることを意味する。
【0030】
における「−(OCHCHc・(OCHCH(OW)CHd−」部分は、−(OCHCH)−および−(OCHCH(OW)CH)−がそれぞれ1単位以上存在する場合に、2つの単位の並び方が限定されないことを意味する。たとえば−(OCHCH)−および−(OCHCH(OW)CH)−が1単位以上存在する場合には、基(X)の末端基であるWに結合する単位は、−(OCHCH)−であっても−(OCHCH(OW)CH)−であってもよい。また、−(OCHCH)−および−(OCHCH(OW)CH)−がそれぞれ1単位以上存在し、かつ、一方または両方の単位が2単位以上存在する場合には、2つの単位の並び方はブロック状であってもランダム状であってもよい。このうち該並び方は、ブロック状であるのが好ましく、ブロック状であり、かつ−(OCHCHc−基が基(W)と結合するのが好ましい。
【0031】
基(X)におけるeは−O−の数を示し、0または1であり、合成が容易である点からは1が好ましく、化合物(1)の安定性の点からは0が好ましい。fは−(CH)−の数を示し、0〜5の整数であり、0〜3の整数が好ましい。gは−(CF)−の数を示し、1〜6の整数であり、1または2が好ましい。ただし、本発明の化合物の構造中には−OCFO−が存在しないことから、eとgが1である場合のfは1〜4の整数である。
【0032】
基(X)におけるhはQの数、すなわち−(CFCFO)−の数、を示し、0〜200の整数であり、3〜200の整数が好ましく、3〜100の整数が特に好ましく、3〜70の整数がとりわけ好ましく、5〜50の整数がさらに好ましい。hが1〜200である場合、Qは−(CFCFO)−の酸素原子でRと結合する。
基(X)におけるc、d、e、f、g、hがそれぞれ0である場合は、対応する該単位が存在しないことを意味する。
【0033】
基(X)におけるWは、下式(W1)〜(W6)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、eが1である場合のWの一部は水素原子であってもよい。以下、式(W1)〜(W6)で表される基を総称して反応性の官能基ともいう。
【0034】
CH=C(R)CO−・・・(W1)
OCN(CH−・・・(W2)
NC(CH−・・・(W3)
(R3−m(RSi(CH−・・・(W4)
【0035】
【化2】

【0036】
以下の説明において、基の定義は特に記載しない限り、前記と同じ意味を示し、好ましい態様も同じである。
【0037】
基(W1)において、Rは、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のアルキル基である。Rがアルキル基である例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0038】
基(W1)としては、CH=CHCO−、CH=CFCO−、CH=C(CH)CO−、またはCH=C(CF)CO−が挙げられる。基(W1)は反応性が良好である点から、Rが水素原子またはメチル基である基が好ましい。また化合物(1)または後述する化合物(1)の反応物が、近紫外領域または真空紫外領域光に曝露される環境下で使用される場合には、耐光性が向上することからRはフッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0039】
基(W1)を有する基(X)においては、cおよびdが0、eが1であるのが好ましく、下記基(X10)が特に好ましい。ただし、fは1〜4の整数を示す。
CH=C(R)COO(CH(CFO(Q− ・・・(X10)
基(X10)としては以下の基が挙げられ、下記基(X10−1)が好ましい。
CH=CHCOO−CHCFO(CFCFO)−・・・(X10−1)、
CH=C(CH)COO−CHCFO(CFCFO)−、
CH=CHCOO−CHCHCFO(CFCFO)−、
CH=C(CH)COO−CHCHCFO(CFCFO)−。
【0040】
基(W2)において、iは0以上の整数であり、0または1が好ましく、耐光性が向上するため0が特に好ましい。基(W2)としては、OCN−またはOCNCH−が挙げられる。
【0041】
基(W2)を有する基(X)においては、cおよびdが0、eおよびfが0であるのが好ましく、下記基(X20)が特に好ましい。
OCN(CH(CFO(Q− ・・・(X20)
基(X20)としては、以下の基が挙げられる。
OCN−CFO(CFCFO)−、
OCN−CHCFO(CFCFO)−。
【0042】
基(W3)において、jは0または1が好ましく、耐光性の点から0が特に好ましい。基(W3)としては、NC−またはNCCH−が挙げられる。基(W3)を有する基(X)においては、cおよびdが0、eおよびfは0、gは1が好ましく、下記基(X30)が特に好ましい。
【0043】
NC(CHCFO(Q−・・・(X30)
基(X30)としては、以下の基が挙げられ、下記基(X30−1)が好ましい。
NC−CFO(CFCFO)−・・・(X30−1)、
NC−CHCFO(CFCFO)−。
【0044】
基(W4)におけるRが加水分解される基である場合の該基とは、加水分解反応により水酸基に変換される基をいい、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基またはエトキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。Rとしては、水酸基またはアルコキシ基が好ましく、水酸基またはメトキシ基が特に好ましい。
【0045】
が1価の炭化水素基である場合、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、およびアリール基が挙げられ、アルキル基またはアルケニル基が好ましい。Rがアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。Rがアルケニル基である場合、炭素数2〜4のアルケニル基が好ましく、ビニル基またはアリル基が特に好ましい。
【0046】
mは1〜3の整数であり、mは3(すなわち、Rが存在しない)が好ましい。後述する含フッ素エーテルの反応物を得る反応において、mが3である場合、化合物(1)は反応性が良好であり、かつ反応速度を均一にできる。kは2以上の整数であり、2〜4の整数が好ましく、2または3が特に好ましい。
【0047】
基(W4)としては、下記基(W40)が好ましい。ただし、R20は加水分解される基を示し、kは前記と同じ意味を示す。
(R20Si(CH−・・・(W40)
基(W4)としては、以下の基が好ましく、下記基(W40−3)が特に好ましい。
(CHO)SiCHCH−、
(CHCHO)SiCHCH−、
(CHO)Si(CH−・・・(W40−3)、
(CHCHO)Si(CH−、
(CHO)Si(CH−、
(CHCHO)Si(CH−、
(CHO)(CH)Si(CH−、
(CHCHO)(CH)Si(CH−。
【0048】
基(W4)を有する基(X)においては、cおよびdが0、gは1が好ましく、下記基(X40)が特に好ましい。fは1〜4の整数を示す。
(R20Si(CH(O)(CHCFO(Q−・・・(X40)
基(X40)としては、以下の基が挙げられ、下記基(X40−1)が好ましい。
(CHO)SiCHCHCFO(Q−、
(CHCHO)SiCHCHCFO(Q−、
(CHO)Si(CHOCHCFO(Q−・・・(X40−1)、
(CHCHO)Si(CH−OCHCFO(Q−。
【0049】
基(W5)において、Rは水素原子が好ましい。pは0以上の整数であり、1または2が好ましい。基(W5)としては、下記基(W5−1)が好ましい。
【0050】
【化3】

【0051】
基(W5)を有する基(X)においては、eとfとgがいずれも1である場合が好ましく、下記基(X50)が特に好ましい。ただし、Wは前記基(W5)を示し、基(W5−1)が好ましい。
OCHCFO(Qh−・・・(X50)。
【0052】
基(W6)を有する基(X)としては、cおよびdが0であり、e、f、gが1である下記基(X60)が特に好ましい。ただし、Wは前記の基(W6)を示す。
OCHCFO(Qh−・・・(X60)。
【0053】
化合物(1)中に存在する基(W)の一部が水素原子である場合、基(W)の総数に対する反応性の官能基である基(W)の数は、目的とする用途に応じて適宜変更でき、通常の場合には70%以上が好ましく、80%以上が特に好ましく、化合物(1)の用途によっては99%〜100%であってもよい。また基(W)が反応性の官能基である場合には、基(W1)、基(W4)、または基(W5)が好ましく、特に基(W4)が好ましく、とりわけ前記基(W40)が好ましい。
【0054】
化合物(1)は、基(Y)にb個の下式(Z)で表される基が結合した化合物である。
−O(Qq・・・(Z)
基(Z)におけるRは1価のペルフルオロ化飽和炭化水素基またはエーテル性酸素原子を含む1価のペルフルオロ化飽和炭化水素基であり、後者の基である場合には、基(Z)中に−(OCFO)−構造は存在しない。Rとしては、直鎖構造、分岐構造、環構造、または部分的に環構造を有するペルフルオロアルキル基が好ましく、直鎖構造または分岐構造のペルフルオロアルキル基が特に好ましく、直鎖構造のペルフルオロアルキル基基がとりわけ好ましい。Rの炭素数は1〜16が好ましい。
【0055】
がエーテル性酸素原子を含む1価のペルフルオロ化飽和炭化水素基である場合、直鎖構造の基が好ましく、炭素数3〜20のペルフルオロアルキル基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基が好ましい。エーテル性酸素原子の数は1〜7個が好ましく、1〜4個が特に好ましい。また、化合物(1)中には−OCFO−構造が存在しないことから、該Rの結合末端部分には−CFO−(ただし該基は、基の左側でQと結合する。)は存在しない。またR基中にも−OCFO−構造は存在しない。また、R−基とQ(−CFCFO−)とは区別して定義されることから、R基のQが結合する末端には−CFCFO−(ただし、該基は左側でQと結合する。)は存在しない。該Rが直鎖構造である場合、エーテル性酸素原子とエーテル性酸素原子との間に存在する炭素原子の数は2個以上であり、2〜6個が好ましい。
【0056】
としては直鎖構造の炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基、すなわち式CF(CF−(uは0〜15の整数が好ましい。)で表される基、が好ましい。該基以外のRとしては、Cy−(CF−(Cyはペルフルオロシクロヘキシル基を示し、vは0〜15の整数を示す。)等の基が挙げられる。
基(Z)におけるqはQ単位の数、すなわち−(CFCFO)−の数、を示し、3〜200の整数であり、5〜50の整数がとりわけ好ましい。基(Z)中のQは、−(CFCFO)−の酸素原子でRと結合する。
【0057】
基(Z)としては、以下の例が挙げられる。
CF−O−(CFCFO)−・・・(3−1)、
CFCF−O−(CFCFO)−・・・(3−2)、
CF(CF−O−(CFCFO)−・・・(3−3)、
CF(CF−O−(CFCFO)−・・・(3−4)。
【0058】
基(Z)としては、撥水撥油性、潤滑性が良好なことから前記基(3−1)または前記基(3−2)が好ましく、合成が容易であることから基(3−2)が特に好ましい。
基(Z)の数であるbの好ましい態様は、基(X)の構造により異なり、bは0または1であるのが好ましい。hが1以上である場合には、bが0である(すなわち、化合物(1)中に基(Z)が存在しない)のが好ましい。
【0059】
基(Y)は(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基である。基(Y)が後者の基である場合には、該基中には−(OCFO)−構造は存在しない。基(Y)、基(X)、および基(Z)はそれぞれ異なる基として定義されることから、基(Y)の基(X)側の末端部分には−(CF−O−(CFCFO)−(ただし、該基の右側で基(X)に結合する。)に該当する構造は存在せず、基(Y)の基(Z)に結合する末端部分に−(OCFCF)−または−(CFCFO)−は存在しない。
【0060】
基(Y)は(a+b)価の基であり、aおよびbは、それぞれ基(X)の数であるa、基(Z)の数であるbに対応する。aおよびbがそれぞれ2以上である場合の基(X)および基(Z)はそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく、基(X)は合成のしやすさから異なる基であることが好ましく、原料の入手のしやすさから異なる基であることが好ましい。
【0061】
基(Y)の価数である(a+b)は2〜20の整数であり、3〜10の整数が好ましく、3または4の整数が特に好ましく、とりわけaが3でありbが0または1であることが好ましく、さらにはaが3でありbが0であるのが好ましい。(a+b)は、化合物(1)の用途に応じて適宜調節できる。化合物(1)を潤滑剤等の表面処理剤として使用する場合の(a+b)は3〜10の整数が好ましく、3または4が特に好ましく、3がとりわけ好ましい。
【0062】
基(Y)が(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基である場合の該基とは、炭素原子とフッ素原子のみからなる飽和の基である。たとえば2価の基である場合は、ペルフルオロアルキレン基である。基(Y)がエーテル性酸素原子を含む基である場合のエーテル性酸素原子の数は、1個以上であり、1〜3個が好ましい。基(Y)の炭素数は1〜20が好ましい。基(Y)の具体例は、化合物(1)の例中に示される。
【0063】
化合物(1)は、aが3であり、bが0であり、基(Y)が3価である下記化合物(1A)が好ましい。
[X (1A)
ただし、Xは、前記基(X10)〜基(X60)から選ばれるいずれかの基である。Xは、基(X10)、基(X30)、基(X40)、および基(X50)が特に好ましく、基(X40)がとりわけ好ましい。
【0064】
化合物(1A)は、下式で示される化合物である。
[WO(CH(CFO(Q−]・・・(1−1)
[W(CFO(Q−]・・・(1−2)
[WCFO(Q−]・・・(1−3)
[W(O)(CHCFO(Q−]・・・(1−4)
[WOCHCFO(Qh−]・・・(1−5)。
【0065】
ただし、式中の記号のうち、f、YおよびW〜Wは以下の意味を示す。
f:1〜5の整数。
:3価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、3価のペルフルオロ化飽和炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、後者の基である場合には、該基中に−(OCFO)−構造は存在しない。
:水素原子または前記式(W1)で表される基であり、3つのWの少なくとも一つは式(W1)で表される基。
:前記式(W2)で表される基を示す。
:前記式(W3)で表される基を示す。
:前記式(W4)で表される基であり、eが1である場合のWの1または2個は水素原子であってもよい。
:水素原子または前記式(W5)で表される基であり、3つのWの少なくとも一つは式(W5)で表される基。
【0066】
化合物(1)は、単一の化合物であっても、2種以上の化合物からなっていてもよく、後者であるのが好ましい。化合物(1)が2種以上の化合物からなる場合、化合物(1)中のc、d、e、f、g、およびhから選ばれるいずれかが異なる化合物(1)の2種以上からなるのが好ましい。化合物(1)が2種以上の化合物からなる場合、cの平均は0〜5の整数が好ましく、dの平均は0〜5の整数が好ましく、hの平均は1〜20の整数が好ましい。また、基(Z)におけるqの平均は3〜100の整数が好ましい。
【0067】
本発明における化合物(1)の分子量は500〜100万が好ましく、1000〜2万が特に好ましい。また化合物(1)が2種以上の化合物からなる場合、化合物(1)の分子量分布(M/M)は1.0〜1.7が好ましく、1.0〜1.25が特に好ましい。化合物(1)の分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定できる。測定条件は、後述する実施例に記載した条件が採用できる。
【0068】
本発明における化合物(1)としては、下記化合物が挙げられる。ただし、下式中のXは基(X)を示し、Zは基(Z)を示す。下式中のsは1〜10の整数を示し、同一分子中にsが2個以上存在する場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
【化4】

【0070】
本発明の化合物(1)中には−(OCFO)−で表される構造は存在しない。−(OCFO)−で表される構造が存在しない、とは通常の分析手法(19FNMR等)では検出できないことを意味する。
【0071】
本発明の化合物(1)は、表面処理剤等として有用な新規な化合物である。表面処理剤等として化合物(1)を用いる場合、化合物(1)をそのまま用いてもよい。また表面処理剤として、化合物(1)の1分子以上を反応させた化合物、または化合物(1)の1分子以上と化合物(1)と他の化合物を反応させた生成物(以下、両化合物を総称して「含フッ素エーテルの反応物」とも記載する。)を用いてもよい。
【0072】
含フッ素エーテルの反応物を得る場合の他の化合物としては、化合物(1)中の基(W)と同一の基を有する化合物、化合物(1)中の基(W)とは異なる基を有する他の化合物のいずれであってもよい。他の化合物としては、フッ素原子を含まない化合物から選択するのが好ましく、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、およびノルボルネン等であってフッ素原子を含まない化合物が挙げられる。他の化合物と反応させる場合、化合物(1)との量比は特に限定されない。化合物(1)の量が少量であったとしても、他の化合物と化合物(1)との反応で得られた含フッ素エーテルの反応物は、良好な潤滑性、撥水撥油性、および防汚性等の機能を発現する。
【0073】
化合物(1)と他の化合物を反応させる方法は、基(W)の種類に応じて適宜変更されうる。たとえば、基(W1)である化合物(1)においては、光または熱による重合反応、基(W4)である化合物(1)においては縮合反応、基(W5)である化合物(1)においては開環重合反応が採用できる。該反応においては、全ての化合物や、全ての基(W)が反応する必要はなく、また生成物中には未反応の化合物(1)や他の化合物が含まれていてもよい。
【0074】
化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物は、有機溶媒中に含ませて、溶液組成物として使用してもよい。溶液組成物は、溶液、懸濁液、または乳化液のいずれであってもよく、溶液であることが好ましい。
【0075】
有機溶媒としては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等のペルフルオロアルキルアミン類、フロリナート(3M社製)、バートレル(デュポン社製)等のフルオロカーボン類が好ましい。また、前記の溶媒にフッ素原子を含まない有機溶媒(炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、および塩素化化炭化水素類等)を添加して使用してもよい。フッ素原子を含まない有機溶媒の添加量は、有機溶媒全量に対して40質量%以下であることが好ましい。有機溶媒は1種のみを使用してもよく、2種以上を混合した混合溶媒として使用してもよい。混合溶媒に共沸組成が存在する場合、該組成で使用することが好ましい。
【0076】
化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物を溶液組成物として使用する場合、溶液組成物中の化合物(1)および含フッ素エーテルの反応物の総量は0.001〜50質量%が好ましい。このうち化合物(1)の濃度は0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%が特に好ましい。含フッ素エーテルの反応物の量は0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%が特に好ましい。
【0077】
本発明は、化合物(1)および./または含フッ素エーテルの反応物を含む表面処理剤を提供する。該表面処理剤中には、前記有機溶媒が含まれていてもよい。表面処理剤としては、潤滑剤、防汚剤、撥水撥油剤、指紋除去性能付与剤等が挙げられる。撥水撥油剤としては、紙、布等の防水剤、半導体用保護コート剤(防湿コート剤、半田這い上がり防止剤等)、撥インク剤(インクジェットプリンタ等の印刷機器用)、塗料への添加剤等が挙げられる。塗料への添加剤として用いる場合には、化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物の量は、塗料の全量に対して0.01〜5質量%とするのが好ましい。
【0078】
化合物(1)または含フッ素エーテルの反応物は、他の用途にも有用である。他の用途としては、半導体素子用接着剤(たとえば、リードオンチップテープ用接着剤等)、レジスト用反射防止膜等が挙げられる。また、ペリクル用材料に添加することによって、ペリクルに低反射機能を付与する例、ディスプレイ用反射防止膜用材料に添加することによって、該反射防止膜に指紋除去性を付与する例が挙げられる。さらに、含フッ素エーテルの反応物そのものを電線被覆材として使用する例が挙げられる。
【0079】
また、ガラス、金属、樹脂等の部材表面に、本発明の化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物を必須成分とする表面処理剤を適用することによって、部材表面に種々の機能を付与できる。たとえば、潤滑剤として光学記録用ヘッドに塗布し、ディスクとの摩擦を軽減する例、ガラス等の光学材料表面に塗布して防汚性を付与する例が挙げられる。
【0080】
部材表面への処理方法としては、化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物を必須成分とする表面処理剤を部材表面に下記処理方法1〜2のいずれかの処理方法によって処理して、部材表面に被膜を形成させる方法によるのが好ましい。この表面処理剤には、有機溶媒が含まれていてもよい。
【0081】
具体的な処理方法としては、表面処理剤を部材表面に塗布する処理方法1、表面処理剤を部材表面に塗布した後、部材表面において化学反応をさせる処理方法2が挙げられる。このうち、処理方法2が部材との密着性が高く強固な被膜を形成できる点から好ましい。さらに処理方法2における表面処理剤は、化合物(1)と他の化合物と有機溶媒を含む組成物であるのが好ましい。
【0082】
塗布方法としては、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、スピンコート法、水上キャスト法、ダイコート法、ラングミュア−プロジェット法、および真空蒸着法等が挙げられ、均一な被膜を形成できる点からスピンコート法、ディップコート法、または真空蒸着法が好ましい。
【0083】
表面処理剤が有機溶媒を含む溶液組成物である場合には、有機溶媒として、塗布方法に適した沸点を有する有機溶媒を選択することが好ましい。また溶液組成物中の化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物の濃度は、被膜の厚さによって調整することが好ましく、たとえば厚さ250nmの被膜を形成する場合の溶液組成物中の該化合物の総濃度は1.5〜3.0質量%が好ましい。
【0084】
化合物(1)、含フッ素エーテルの反応物、またはこれらの溶液組成物には添加剤を加えてもよい。たとえば、被膜を形成させる場合には、被膜の耐久性、機能の持続性を高める目的で添加する添加剤が挙げられる。該添加剤としては、テトラアルコキシシランおよびその部分加水分解生成物等のシリコン化合物;シリカゾル;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の超微粒子金属酸化物;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の各種樹脂が挙げられる。また、被膜形成の作業性を高める添加剤としては、界面活性剤が挙げられる。これらの添加剤は1種を使用しても、2種以上を使用してもよい。添加剤としてのシリコン化合物の量は、化合物(1)および含フッ素エーテルの反応物の総量に対して、10〜40質量%が好ましく、シリカゲルおよび超微粒金属酸化物はそれぞれ5〜20質量%が好ましく、樹脂は0.5〜5質量%が好ましい。
【0085】
上記処理方法1〜2の塗布に際しては、必要に応じて部材表面の前処理を行ってもよい。前処理方法としては、フッ酸、塩酸等による酸処理;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等によるアルカリ処理;フッ化セリウム等による研磨処理等が挙げられる。
【0086】
化合物(1)または含フッ素エーテルの反応物は、部材の種類および機能に応じて選択するのが好ましい。たとえば、樹脂部材に対しては、基(W1)、基(W2)、もしくは基(W5)を有する化合物(1)、または該化合物(1)から得た含フッ素エーテルの反応物を使用して被膜を形成することが好ましい。なかでも基(W1)を有する化合物(1)は、該化合物(1)を部材表面に塗布した後に紫外線照射を行う簡便な操作によって含フッ素エーテルの反応物の被膜を形成できるので好ましい。さらに、樹脂に放射線を照射することによって樹脂の構造中にラジカルを発生させる技術が知られており、該技術を応用すれば化合物(1)と樹脂部材とが化学結合にて結合した強固な被膜を形成できる。
【0087】
処理方法2にしたがって、ガラスもしくは石材等の無機部材、または、PVA、PVB、およびEVA等の水酸基を有する樹脂部材に対して塗布を行う場合には、基(W4)を有する化合物(1)を選択し、部材表面に塗布した後、大気中、50〜150℃で保持する方法によるのが好ましい。特に、ガラスまたは水酸基を有する樹脂部材は、部材表面の水酸基と基(W4)とがシロキサン結合を形成し、かつ基(W4)を有する化合物(1)間での反応や、該化合物(1)と他の化合物との反応も起こりうるため、部材との密着性が高く強固な被膜を形成することができる。基(W4)を有する化合物(1)としては、トリシラノール末端(−Si(OH))を有する化合物を選択するのが好ましい。
【0088】
本発明の化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物を用いて形成した被膜は、強固な被膜であり、部材との高い密着性を有する。さらに、該被膜は透明性に優れ、屈折率が低く、耐熱性および耐薬品性に優れる。被膜の膜厚は、通常0.001〜50μmが好ましい。
【0089】
本発明の化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物の被膜が形成された部材としては、光ディスク、光ファイバ等の光学部材、鏡、太陽電池、タッチパネル、感光ドラム、定着ドラム、フィルムコンデンサ、ガラス窓用反射防止フィルム等の各種フィルム等が挙げられる。
【0090】
本発明の化合物(1)および/および含フッ素エーテルの反応物中には、−(OCFO)−構造が存在しないことから、使用条件下で劣化が少なく、長期にわたり安定した性能を維持できる。さらに、本発明の化合物(1)および/または含フッ素エーテルの反応物を用いて部材表面に形成された被膜は、部材表面と高い密着性を有する強固な被膜であることから耐久性に優れる。
【0091】
本発明の化合物(1)は、市販または公知の方法により製造した多価ポリオキシアルキレンに公知の手法を適用することによって入手できる。多価ポリオキシアルキレンとしてポリオキシエチレントリオールが特に好ましい。
【0092】
化合物(1)の製造方法としては、多価ポリオキシアルキレンから公知の反応により製造できる下記化合物(E)を出発物質とする方法が挙げられる。該化合物(E)の製造方法は後述する。ただし、式中のY、Q、a、b、hは前記と同じ意味を示し、Zは基(Z)を示す。
[FCOCFO(Q−]Y[−Z] (E)。
【0093】
本発明の化合物(1)は、化合物(E)を出発物質として製造できる中間体に対して基(W1)〜基(W5)を導入する方法により製造できる。化合物(1)の製造中間体である化合物(H1)〜(H5)は以下の製造方法により製造するのが好ましい。ただし、下記製造方法の説明中、式中の記号は特に記載しないかぎり前記と同じ意味を示す。
【0094】
<化合物(H1)の製造方法(その1)>
下記化合物(E)に下記化合物(F)(ただし、Rはアルキル基を示す。)を反応させて下記化合物(G1)を得て、該化合物(G1)を還元的することにより化合物(H1)を得る方法。
[FCOCFO(Q−]Y[−Z] (E)+ROH (F)
→[ROCOCFO(Q−]Y[−Z] (G1)
→[HOCHCFO(Q−]Y[−Z] (H1)。
【0095】
<化合物(H1)の製造方法(その2)>
下記化合物(D)と前記化合物(F)とを反応させることによって下記化合物(G1)を得て、該化合物(G1)を還元的に分解することにより化合物(H1)を得る方法。
[RbFCOOCFCFO(Q−]Y[−Z] (D)+ ROH (F)
→(G1)→(H1)
【0096】
<化合物(H1)の製造方法(その3)>
下記化合物(E)を加水分解して下記化合物(G2)を得て、つぎに化合物(G2)を還元して化合物(H1)を得る方法。
[FCOCFO(Q−]Y[−Z] (E)
→[HOCOCFO(Q−]Y[−Z] (G2)
→[HOCHCFO(Q−]Y[−Z] (H1)。
【0097】
<化合物(H2)の製造方法>
下記化合物(E)にIまたはLiI等を反応させることにより、末端−COF基をヨウ素原子に変換して下記化合物(J1)を得る。該化合物(J1)に任意のモル数のエチレンおよび/またはテトラフルオロエチレンを付加反応させて下記化合物(J2)とし、該化合物(J2)の末端のヨウ素原子を発煙硫酸またはベタインによって水酸基に変換して下記化合物(H2)を得る方法。
[FCOCFO(Q−]Y[−Z] (E)
→[ICFO(Q−]Y[−Z] (J1)
→[I(CH(CFO(Q−]Y[−Z] (J2)
→[HO(CH(CFO(Q−]Y[−Z] (H2)。
【0098】
<化合物(H3)の製造方法>
前記方法によって得た化合物(H1)にエチレンカーボネ−トおよび/またはエチレンオキシドを付加することにより化合物(H3)を得る方法。
[HOCHCFO(Q−]Y[−Z] (H1)
→[H(OCHCHcOCHCFO(Q−]Y[−Z] (H3)。
【0099】
<化合物(H4)の製造方法>
前記方法によって得た化合物(H2)にエチレンカーボネ−トおよび/またはエチレンオキシドを付加することに化合物(H4)を得る方法。
[HO(CH(CFO(Q−]Y[−Z] (H2)
[H(OCHCHO(CH(CFO(Q−]Y[−Z] (H4)。
【0100】
<化合物(H5)の製造方法>
前記の方法で得た化合物(H1)〜(H2)に、エチレンカーボネ−ト、エチレンオキシド、およびグリシジルアルコールから選ばれる1種以上をブロック状またはまたはランダム状に付加して化合物(H5)(ただし、cまたはdのいずれか一方は1以上の整数である。)を得る方法。または、前記の方法で得た化合物(H1)〜(H2)にグリシジルアルコールを付加させて化合物(H5)(ただし、dは1以上の整数である。)を得る方法。
[H-(OCH2CH2c・(OCH2CH(OH)CH2d−O(CH2f(CF2gO(Q2h−]aY[−Z]b (H5)。
【0101】
本発明の化合物(1)は、前記方法で得た化合物(H1)〜(H5)、化合物(J1)〜(J2)、および化合物(E)に、それぞれ基(W)を導入する反応を行うことにより製造できる。ただし下式中のTはハロゲン原子を示し、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0102】
<基(W1)を有する化合物(1)の製造方法>
化合物(H1)〜(H5)と式CH=C(R)COTで表される化合物とのエステル化反応による方法。または化合物(H1)〜(H5)と式CH=C(R)COOHで表される化合物とを脱水縮合反応させる方法。
【0103】
<基(W2)を有する化合物(1)の製造方法>
化合物(E)にアンモニアを反応させて下記化合物(K1)を得て、該化合物(K1)にホスゲンを反応させて基(W2)を有する化合物を製造する方法。
[HNCOCFO(Q−]Y[−Z] (K1)
OCNCFO(CFCFO)−]Y[−Z]
【0104】
<基(W3)を有する化合物(1)の製造方法>
化合物(H1)〜(H5)と、シアン化塩素(NCCl)を反応させる方法。または前記化合物(K1)の脱水による方法。
【0105】
<基(W4)を有する化合物(1)の製造方法(その1)>
化合物(H1)〜(H5)と、式T(CHSi(R(R(3−m)で表される化合物とを置換反応させる方法。
【0106】
<基(W4)を有する化合物(1)の製造方法(その2)>
下記化合物(J1)と式CH=CHCHOC(O)CHで表される化合物を反応させて下記化合物(J3)とし、該化合物(J3)の脱離反応により下記化合物(J4)を得て、さらに該化合物(J4)と式HSi(R(R(3−m)で表される化合物とをヒドロシリル化反応させて化合物(1−40)を得る方法。または化合物(J1)を前記の方法で得た化合物(J2)に変更して同様の反応を行う方法。
[ICFO(Q−]Y[−Z] (J1)
[CHCOOCHCHICHCFO(Q−]Y[−Z] (J3)
[CH=CHCHCFO(Q−]Y[−Z] (J4)
[(R3−m(RSi(CHCFO(Q−]Y[−Z](1−40)。
【0107】
<基(W4)を有する化合物(1)の製造方法(その3)>
下記化合物(J1)と式CH=CH(CHk−2Si(R(R(3−m)で表される化合物とを付加反応させて化合物(J5)を得て、該化合物(J5)を還元する方法。または化合物(J1)を化合物(J2)に変更して同様の反応を行う方法(ただし、kは0以上の整数を示し、0〜4の整数が好ましく、0または1が特に好ましい。)。
[ICFO(Q−]Y[−Z] (J1)
[(R3(3-m)(R2mSi(CH2kCHICH2CF2O(Q2h-]aY[-Z]b (J5)
[(R(3−m)(RSi(CHCFO(Q−]Y[−Z]
【0108】
<基(W5)を有する化合物(1)の製造方法>
化合物(H1)〜(H5)に下式(w5)で表される化合物を反応させる方法。
【0109】
【化5】

【0110】
<基(W6)を有する化合物(1)の製造方法>
化合物(H1)〜(H5)と、下記化合物(w6)との置換反応によって得る方法。
【0111】
【化6】

【0112】
上記において行う化合物(E)の変換反応、基(W)の導入反応は、公知の方法(たとえばC.Tonelliら、「Journal of Fluorine Chemistry」、1999年、第95巻、p.51−70に記載の方法)にしたがって実施できる。
【0113】
また化合物(H3)〜(H5)の製造において、化合物(H1)または化合物(H2)のフッ素含有量が高い場合には、エチレンカーボネ−トおよび/またはエチレンオキシドとの相溶性が低いため、付加反応の反応系が2相分離することがある。相分離が起こると、反応時間が長くなり効率的ではないため、相溶性を高めるためにヒドロフルオロカーボン類(HFC類)等の相溶化溶媒を反応系中に添加して反応を行うのが好ましい。
【0114】
上記の製造方法の出発物質となる化合物(E)は、つぎの方法により調製できる。すなわち、下記化合物(A)を下記化合物(B)と反応させて下記化合物(C)を得て、該化合物(C)をペルフルオロ化して下記化合物(D)を得て、該化合物(D)においてエステル結合の分解反応を行うことによって化合物(E)を合成できる。
【0115】
【化7】

【0116】
ただし、YはYと同一の基、または、Yのフッ素原子の1部または全部が水素原子に置換された基を示す。RはRと同一の基、またはRのフッ素原子の1部または全部が水素原子に置換された基を示し、Rと同一の基が好ましい。Rは、1価の含フッ素有機基を示し、RbFはRがフッ素化された基またはRと同一の基であり、RbとbFは、ペルフルオロアルキル基またはエーテル性酸素原子を含有するペルフルオロアルキル基が好ましい。Tは塩素原子またはフッ素原子を示す。
【0117】
化合物(E)の合成におけるエステル化反応、フッ素化反応、エステル結合の分解反応は、公知の反応の手法および条件(たとえばWO02/4397号等に記載される方法)にしたがって実施できる。
【0118】
前記の製造方法の出発物質である化合物(A)は、通常の場合、−(CHCHO)−単位の数が異なる2種以上の混合物であるものが入手しやすい。混合物である化合物(A)を用いて前記製造方法を実施した場合には、生成する化合物(1)もまた混合物として得られる。
【0119】
前記製造方法で得た化合物(1)を含む生成物は、通常の場合、目的に応じた精製処理を行って高純度の化合物(1)を得た後に目的とする用途に用いるのが好ましい。
【実施例】
【0120】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。以下において、テトラメチルシランをTMS、CClFCClFをR−113、ジクロロペンタフルオロプロパンをR−225、CClFCFCClCFCFをR−419、リットルをLと記す。Mは数平均分子量を示し、Mは重量平均分子量を示す。なお、Rは−CF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFである。
【0121】
また、平均分子量は数平均分子量(M)で表し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと記す。)によって測定した。
GPCの測定方法は、特開2001−208736に記載する方法にしたがった。具体的には、R−225(旭硝子社製、商品名:アサヒクリンAK−225SECグレード1)およびヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)の(99:1、容量比)混合溶媒を移動相として用い、PLgel MIXED−Eカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を2本直列に連結して分析カラムとした。分子量測定用標準試料として、M/Mで表される分子量分布が1.1未満である分子量が2000〜10000のペルフルオロポリエーテル4種および分子量分布が1.1以上である分子量が1300のペルフルオロポリエーテル1種を用いて分析した。移動相流速を1.0mL/分、カラム温度を37℃とし、検出器としては蒸発光散乱検出器を用いた。
【0122】
[例1]化合物(H1−1)の合成例
[例1−1]エステル化反応による化合物(C1)の合成例
【0123】
【化8】

【0124】
ポリオキシエチレングリセロールエーテル(日本油脂製、商品名:ユニオックスG−1200)(25g)、R−225(50g)、およびNaF(2.88g)をフラスコに入れ、内温を25℃に保ち、激しく撹拌しながら窒素をバブリングした。つぎに、内温を10℃以下に保ちながら、FCOCF(CF)OCFCF(CF)O(CFF(34.3g)を1.0時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で24時間撹拌して、粗液を回収した。粗液を減圧ろ過し、回収液を真空乾燥機(100℃、666.5Pa(絶対圧))で12時間乾燥して粗油を得た。得られた粗油をR−225(100mL)に溶解し、飽和重曹水(1000mL)で3回洗浄した後、有機層を回収した。つぎに、回収した有機層に硫酸マグネシウム(1.0g)を加え、12時間撹拌した。撹拌終了後、加圧ろ過を行って硫酸マグネシウムを除去し、エバポレータでR−225を留去し、室温で液体の化合物(C1)(52.8g)を得た。化合物(C1)の構造は1HNMR法および19FNMR法により決定した。ただし、(w+x+y)の平均値は27.0であり、化合物(C1)のMは2600であった。
【0125】
化合物(C1)のNMRスペクトル;
1HNMR(300.4MHz,溶媒:CDCl,基準:TMS)δ(ppm):3.4〜3.8,4.5。
19FNMR(282.7MHz,溶媒:CDCl,基準:CFCl)δ(ppm):−76.0〜−81.0,−81.0〜−82.0,−82.0〜−82.5,−82.5〜−85.0,−128.0〜−129.2,−131.1,−144.7。
【0126】
[例1−2a]フッ素化反応による化合物(D1)の合成例(その1)
【0127】
【化9】

【0128】
内容積500mLのハステロイ製オートクレーブに、R−113(312g)を加えて撹拌し、25℃に保った。オートクレーブガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−20℃に保持した冷却器を直列に設置した。なお、−20℃に保持した冷却器からは、凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。窒素ガスを1.0時間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、20%フッ素ガスと記す。)を、流速16.97L/hで1時間吹き込んだ。
【0129】
つぎに、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例1で得た化合物(C1)(15g)をR−113(200g)に溶解した溶液を11時間かけて注入した。続けて、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、ベンゼン(0.5g)をR−113(50mL)に溶解した溶液(6mL)を注入した。さらに、窒素ガスを1.0時間吹き込んだ。
【0130】
反応終了後、粗液を回収し、溶媒を真空乾燥(60℃、6.0h、1kPa)にて留去して、室温で液体の化合物(D1)(21.4g)を得た。化合物(D1)の構造は19FNMR法により決定し、化合物(D1)は化合物(C1)中の水素原子の99.9モル%がフッ素原子に置換された化合物であること、および、化合物(D1)中に−(OCFO)−が含まれていないことを確認した。なお、GPCから求まるMは4600であった。式(D1)中の(w+x+y)は、本実施例の条件で測定するMが4600となりうる値である。
【0131】
化合物(D1)のNMRスペクトル;
19FNMR(282.7MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):−77.5〜−86.0,−89.5,−90.0〜−92.0,−120.0〜−139.0,−142.0〜−146.0。
【0132】
[例1−2b]フッ素化反応による化合物(D1)の合成例(その2)
R−113をR−419に変更する以外は、例1−2aと同様に反応および後処理を行った。得られた生成物の19FNMRスペクトル解析の結果、化合物(D1)の生成を確認し、該化合物中に−(OCFO)−が含まれていないことを確認した。化合物(D1)の収率は例1−2aと同等であった。
【0133】
[例1−2c]フッ素化反応による化合物(D1)の合成例(その3)
R−113をFCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFに変更する以外は、例1−2aと同様に反応および後処理を行った。得られた生成物の19FNMRスペクトル解析の結果、化合物(D1)の生成を確認し、該化合物中に−(OCFO)−が含まれていないことを確認した。化合物(D1)の収率は例1−2aと同等であった。
【0134】
[例1−3]熱分解反応による化合物(E1)の合成例
【0135】
【化10】

【0136】
50mLの丸底フラスコにスターラーチップを投入し、内部を充分に窒素置換した。丸底フラスコ出口には、20℃に保持した冷却器、および、ドライアイス−エタノール冷却管を直列に設置し、冷却管の出口を窒素でシールした。丸底フラスコに1,1,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタン(25g)、フッ化カリウム(0.20g)、および例1−2aで得た化合物(D1)(20g)を加え、内温を120℃に保ちながら激しく撹拌した。8時間後、加熱を停止し室温まで冷却した。続いて冷却管に真空ポンプを設置し、1,1,3,4−テトラクロロヘキサフルオロブタンおよび副生成物であるRCOFを減圧留去し、室温で液体の化合物(E1)(13.3g)を得た。化合物(E1)の構造は19FNMR法により決定し、化合物(E1)は化合物(D1)中の−CFCFOCOR構造の99モル%以上が−CFCOF構造に置換され、該化合物中には−(OCFO)−が含まれていないことを確認した。
【0137】
化合物(E1)のNMRスペクトル;
19FNMR(282.7MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):12.7,−78.1,−89.5,−90.0〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0138】
[例1−4a]エステル化反応による化合物(G1−1)の合成例
【0139】
【化11】

【0140】
丸底フラスコに例1−3で得た化合物(E1)(20g)を仕込み、KF(0.9g)、R−113(5.0g)を加え、内温を25℃に保ちながら激しく撹拌した。さらに、メタノール(0.5g)を、内温を10℃以下に保ちながらゆっくりと滴下した。8時間後、撹拌を停止し、粗液を加圧ろ過器にてろ過してKFを除去した。続いて、エバポレータでR−113および過剰のメタノールを除去して、室温で液状の化合物(G1−1)(13.5g)を得た。化合物(G1−1)の構造は1HNMR法および19FNMR法により決定し、化合物(G1−1)は化合物(E1)中に存在する−COF基の99モル%以上が−COCH基に変換された化合物であること、および、該化合物中に−(OCFO)−が含まれていないことを確認した。GPCから求まる化合物(G1−1)のMは3200であった。
【0141】
化合物(G1−1)のNMRスペクトル;
1HNMR(300.4MHz,溶媒:R−113,基準:TMS)δ(ppm):3.95,5.9〜6.4。
19FNMR(282.7MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):−78.3,−89.5,−90.0〜−92.0,−135.0〜−139.0。
【0142】
[例1−4b]化合物(D1)とメタノールとの反応による化合物(G1−1)の合成例
50mLの丸底フラスコにスターラーチップを投入し、内部を充分に窒素置換した。丸底フラスコ出口には、20℃に保持した冷却器、および、ドライアイス−エタノール冷却管を直列に設置し、冷却管の出口を窒素でシールした。フラスコに例1−2aと同様の方法で得た化合物(D1)(20.0g)およびメタノール(1.0g)を仕込み、窒素をバブリングさせながら、室温で激しく撹拌した。8時間後、冷却管に真空ポンプを設置し、過剰のメタノールおよび副生成物であるRCOFを減圧留去し、室温で液体の化合物(G1−1)(13.6g)を得た。化合物(G1−1)の構造は1HNMR法および19FNMR法によって決定し、化合物(D1)中の−CFCFOCOR構造の99.9モル%が−CFCOCH構造に変換された化合物であること、および、該化合物中に−(OCFO)−が含まれていないことを確認した。GPCから求まる化合物(G1−1)のMは3200であった。
【0143】
[例1−5]還元反応による化合物(H1−1)の合成例
【0144】
【化12】

【0145】
2000mLのフラスコに、例1−4aで得た化合物(G1−1)(13.0g)、R−225(240mL)およびテトラヒドロフラン(200mL)を仕込み溶解した。窒素気流下でボラン・テトラヒドロフラン錯体(4.0g)を加え、室温で一夜撹拌した。テトラヒドロフランおよびR−225を留去して得られた残さに2mol/Lの塩酸を加えた後に、R−225で抽出した。R−225を濃縮して粗生成物(11.95g)を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:R−225/ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、99/1、容量比)で精製し、化合物(H1−1)(10g)を得た。
【0146】
化合物(H1−1)の構造は1HNMR法および19FNMR法により決定し、化合物(H1−1)中に−(OCFO)−が存在しない化合物であることを確認した。なお、GPCから求まる化合物(H1−1)のMは3000であった。
【0147】
化合物(H1−1)のNMRスペクトル;
1HNMR(300.4MHz,溶媒:R−113,基準:TMS)δ(ppm):3.94。
19FNMR(282.65MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):−80.1,−88.2。
【0148】
[例2]基(W1)を有する化合物(1−1A)の合成例
滴下ロートを備えた250mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、例1−5と同様の方法で得た化合物(H1−1)(10g)、R−225(25.0g)、トリエチルアミン(1.0g)、およびハイドロキノン(0.03g)を投入し、均一な溶液になるまで撹拌した。丸底フラスコ出口には20℃に冷却した還流装置を設置し、装置出口を窒素でシールした状態に保った。つぎに、滴下ロートからアクリル酸クロリド(1.34g)を滴下し、室温にて12時間撹拌した。撹拌終了後、R−225および未反応のアクリル酸クロリドを減圧留去し、得られた残さにR−225(100mL)を加えて溶解させ、加圧ろ過を行った。回収したろ液を飽和重曹水(500mL)に滴下して中和し、有機層を回収した。有機層を蒸留水(500mL)で2回洗浄し、さらに硫酸マグネシウムによって乾燥した後、エバポレータでR−225を留去して、25℃で液体の化合物(1−1A)(11.08g)を得た。
【0149】
化合物(1−1A)の構造は1HNMR法および19FNMR法により決定した。化合物(H1−1)中の−CFCHOH構造の99.1モル%が−CFCHOCOCH=CH構造に変換され、−(OCFO)−が存在しない化合物であることを確認した。なお、GPC分析の結果から化合物(1−1A)のMは3100であった。
【0150】
化合物(1−1A)のNMRスペクトル;
1HNMR(300.4MHz,溶媒:R−113,基準:TMS)δ(ppm):4.36、5.79,6.05,6.40。
19FNMR(282.65MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):−77.1,−88.2。
【0151】
[例3]基(W4)を有する化合物(1−4A)の合成例
250mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でナトリウムハイドライド(0.36g)を仕込み、ヘキサン(25mL)で洗浄し、ヘキサンを回収した。この操作をさらに2回繰り返したのち、残留するヘキサンを減圧留去した。つぎに、R−419(25.0g)を仕込み、内温を5℃以下に保持した。そこに例1−5と同様の方法で得た化合物(H1−1)(10g)をR−419(25.0g)に溶解した溶液を1時間かけて穏やかに滴下し、約10時間撹拌した。さらにCl(CHSi(OCH(0.85g)を滴下して室温で2時間撹拌した後、72時間加熱還流を行った。還流終了後、室温まで冷却し、未反応の水素化ナトリウムおよび副生した塩化ナトリウムを加圧ろ過し、R−419および過剰のCl(CHSi(OCHを減圧留去し、室温で液体の化合物(1−4A)(10.70g)を得た。
【0152】
化合物(1−4A)の構造は1HNMR法および19FNMR法により決定した。化合物(H1−1)中の−CFCHOH構造の98.5モル%が−CFCHO(CHSi(OCH構造に変換され、−(OCFO)−が存在しない化合物であることを確認した。なお、GPCの分析結果から、化合物(1−4A)のMは3100であった。
【0153】
化合物(1−4A)のNMRスペクトル;
1HNMR(300.4MHz,溶媒:R−113,基準:TMS)δ(ppm):0.76,1.79,3.36,3.8,5.6。
19FNMR(282.65MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):−80.8,−88.2。
【0154】
[例4]基(W5)を有する化合物(1−5A)の合成例
還流管を備えた250mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、水素化ナトリウム(0.6g)を仕込み、ヘキサン(25mL)を加えて洗浄し、ヘキサンを回収した。この操作をさらに2回行った後、残留するヘキサンを減圧留去(40℃、1kPa)し、R−225(25.0g)および1,2−ジメトキシエタン(50.0g)を加え、1時間加熱還流した。そこに例1−5と同様の方法で得た化合物(H1−1)(10g)をR−225(25.0g)に溶解した溶液を1時間かけて穏やかに滴下し、約5時間撹拌した。さらに1−ブロモ−2,3−エポキシプロパン(1.5g)を1,2−ジメトキシエタン(5.0g)に溶解した溶液を0.5時間かけて滴下し、24時間加熱還流を行った。加熱還流終了後、反応粗液を加圧ろ過し、回収したろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を蒸留水(100mL×3回)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過によって除去し、室温で液体の化合物(1−5A)(10.61g)を得た。
【0155】
化合物(1−5A)の構造は1HNMR法および19FNMR法によって決定した。化合物(H1−1)中の−CFCHOH構造の86.3モル%が下記基(W5−2)に変換され、−(OCFO)−が含まれない化合物であることを確認した。なお、GPCから求まる化合物(1−5A)のMは3150であった。
【0156】
【化13】

【0157】
化合物(1−5A)のNMRスペクトル;
1HNMR(300.4MHz,溶媒:R−113,基準:TMS)δ(ppm):2.5,2.9,3.5,5.6。
19FNMR(282.65MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):−80.7,−88.2。
【0158】
[例5]基(W3)を有する化合物(1−3A)の合成例
[例5−1]末端に基−CFCONHを有する化合物(K1−1)の製造例
ガス導入管を備えた250mLのPFA製丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、例1−4と同様の方法で得た化合物(G1−1)(10g)およびR−225(20.0g)を投入し、均一混合するまで撹拌し、氷冷して内温を5℃に保持した。丸底フラスコ出口には20℃に冷却した還流装置を設置し、装置出口を窒素ガスでシールした状態に保った。
【0159】
つぎにガス導入管よりアンモニア(0.2g)を吹き込み、室温で12時間撹拌した。撹拌終了後、R−225および未反応のアンモニアを減圧留去した。得られた反応粗生成物をR−225(50mL)で希釈したのち加圧ろ過を行った。回収したろ液をエバポレータで濃縮して、25℃で液体の下記化合物(K−1)(9.56g)を得た。
【0160】
KBr法によって化合物(K−1)の赤外吸収スペクトルを測定した結果、エステル結合に由来する吸収が消失し、1745cm−1に−CONH構造に由来する強い吸収が観測された。また、1HNMR法および19FNMR法によって化合物(G1−1)中の−CFCOOCH構造の99.1モル%が−CFCONH構造に変換されていることを確認した。
【0161】
[例5−2]末端に基(W3)を有する化合物(1−3A)の製造例
つぎに、250mLの丸底フラスコに窒素雰囲気下で、化合物(K−1)(9g)およびR−225(50g)を仕込み溶解させた。ピリジン(15g)および無水トリフルオロ酢酸(20g)を滴下して6時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、反応粗液を氷水に注ぎ、R−225(150mL)で抽出した。R−225層を分離し、エバポレータでR−225を留去し、さらに減圧乾燥を行うことによって化合物(1−3A)を得た。
【0162】
KBr法によって化合物(1−3A)の赤外吸収スペクトルを測定した結果、−CONH構造に由来する吸収が消失し、2255cm−1に−CN基に由来する強い吸収が観測された。また、19FNMR法に、化合物(K−1)中の−CFCONH構造のうち、91.0モル%が−CFCN構造に変換されていること、および、該化合物中に−(OCFO)−が含まれていないことを確認した。なお、GPCから求まる化合物(1−3A)のMは3000であった。
【0163】
化合物(1−3A)のNMRスペクトル;
19FNMR(282.65MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):−59.0,−88.2。
【0164】
[例6]エチレンカーボネート付加反応による化合物(H3−1)の合成例
【0165】
【化14】

【0166】
50mLの丸底フラスコに、例1−5で得た化合物(H1−1)(10.0g)、R−419(10mL)、およびエチレンカーボネ−ト(1.0g)を投入して撹拌した。フラスコ上部には20℃に冷却した還流装置を設置し、装置出口を窒素でシールした状態に保った。つぎに窒素雰囲気下でフッ化カリウム(0.9g)を加え、150℃で加熱撹拌しながら、36時間反応させて反応粗液を得た。反応粗液をフィルター(孔径0.1μm、PTFE製)を用いて加圧ろ過し、得られたろ液をエバポレータで減圧濃縮することによって、25℃で液体の化合物(H3−1)(10.80g)を得た。
【0167】
化合物(H3−1)の構造は1HNMR法および19FNMR法によって決定し、化合物(H3−1)は化合物(H1−1)中の−CFCHOH構造の97.3モル%にエチレンカーボネートの付加反応が起こった化合物であること、および、化合物(H3−1)中に−(OCFO)−が含まれていないことを確認した。化合物(H3−1)は、式中のy1、x1、およびw1がそれぞれ異なる2種以上の化合物からなり、式(H3−1)中の(w+x+y+w1+x1+y1)は、本実施例の条件で測定するMが3050となりうる値である。
【0168】
化合物(H3−1)のNMRスペクトル;
1HNMR(300.4MHz、溶媒:R−113、基準:TMS)δ(ppm):4.31、3.9,3.76。
19FNMR(282.65MHz,溶媒:R−113,基準:CFCl)δ(ppm):−77.0,−88.2。
【0169】
[例7]基(W1)を有する化合物(1−1B)の合成例
化合物(H1−1)を化合物(H3−1)に変更する以外は例2と同様の操作を行い、化合物(H3−1)中の−CFCHOH構造の99モル%以上が−CFCHOCOCH=CH構造に変換され、−(OCFO)−が存在しない化合物(1−1B)を得る。収率は例2と同等である。
【0170】
[例8]基(W4)を有する化合物(1−4B)の合成例
化合物(H1−1)を化合物(H3−1)に変更する以外は例3と同様の操作を行い、化合物(H3−1)中の−CFCHOH構造の98モル%以上が−CFCHO(CHSi(OCH構造に変換され、−(OCFO)−が存在しない化合物(1−1B)を得る。収率は例3と同等である。
【0171】
[例9]基(W5)を有する化合物(1−5B)の合成例
化合物(H1−1)を化合物(H3−1)に変更する以外は例4と同様の操作を行い、化合物(H3−1)中の−CFCHOH構造の86モル%以上が前記基(W5−2)に変換され、−(OCFO)−が含まれない化合物(1−1B)を得る。収率は例4と同等である。
【0172】
[例10]化合物(1−4A)の評価例
[例10−1a]撥水撥油性の評価例(その1)
例3で得た化合物(1−4A)(0.1g)、および1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン(2g)を混合し、コーティング溶液aを調製した。フッ化セリウムで洗浄した50mm四方のガラス板表面にスピンコートにてコーティング溶液を塗布した。スピン回転速度は1500rpmであった。塗布後のガラス板を100℃の恒温槽に入れて12時間保持し、試験片aを作製した。
【0173】
つぎに、20℃および湿度65%の乾燥状態に試験片aをおいた。試験片aのコーティングされた表面に直径1.0mmの蒸留水およびオレイン酸の液滴を形成させ、それらの接触角および転落角を接触角計を用いて測定した。蒸留水接触角は111度、オレイン酸接触角は88度、蒸留水転落角は13度であり、化合物(1−4A)をコーティングすることによって、ガラス表面には撥水撥油性が付与されていた。
【0174】
[例10−1b]撥水撥油性の評価例(その2)
例3で得た化合物(1−4A)(0.1g)、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン(2g)、イソプロピルアルコール(0.5g)を混合する。これに1質量%のHCl水溶液(1.0g)を徐々に滴下する。滴下終了後、25℃に保温し7日間放置してコーティング溶液bを調製する。コーティング溶液bを用いて、例7−1aと同様に試験片bを作製し、評価を行うと、ガラス表面に撥水撥油性が付与される。
【0175】
[例10−2]油性汚れの拭き取り性試験例
油性ペン(寺西化学工業(株)製、商品名:マジックインキ細書き用No.500)を用いて、例7−1aで作製した試験片のコーティングされた表面に長さ1cmの直線を書いた。油性ペンの付着状態について目視判定を行ったところ、コーティングされた表面で油性ペンが球状にはじかれていた。試験片表面に付着した油性ペンを、セルロース製不織布(旭化成(株)社製、商品名:ベンコットM−3)で拭き取ったところ、油性ペンを完全に拭き取ることができた。
【0176】
[例10−3]指紋除去性の評価例
オレイン酸スタンプによる模擬試験によって指紋除去性の評価を行った。例13で作製した試験片のコーティングされた表面にオレイン酸スタンプを押しつけ、オレイン酸を付着させた。スタンプ痕をセルロース製不織布にて拭取り、ヘーズ値の変化を観察したところ、7回の拭取りでスタンプ痕を完全に除去できた。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明は、使用時の劣化が少なく、潤滑剤、防汚剤、または撥水撥油剤等の表面改質剤として有用な含フッ素エーテルおよび含フッ素エーテルの反応物を提供する。また、本発明の含フッ素エーテルおよび含フッ素エーテルの反応物を用いて部材表面に形成された被膜は、部材との高い密着性を有することから、部材表面に撥水撥油性、潤滑性、防汚性等の機能を有効に付与しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表される含フッ素エーテル。
[W−Q(O)e(CHf(CFgO(Qh−]aY[−O(Qqb(1)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
a、b:aは2〜20の整数、bは0〜18の整数であり、かつ(a+b)は2〜20の整数。
:−(OCHCHc・(OCHCH(OW)CHd−(ただし、cは0〜100の整数。dは0〜100の整数。Wは後述する基を示す。)を示す。
:−CFCFO−を示す。
e〜f:eは0または1、fは0〜4の整数、gは1〜6の整数、hは0〜200の整数。ただし、eとgが1である場合のfは1〜4の整数。
q:3〜200の整数。
:1価のペルフルオロ化飽和炭化水素基またはエーテル性酸素原子を含む1価のペルフルオロ化飽和単価水素基であり、後者の基である場合には、式−O(Qqで表される基中に−(OCFO)−構造は存在しない。
Y:(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、(a+b)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、後者の基である場合には、該基中に−(OCFO)−構造は存在しない。
W:下式(W1)〜(W6)で表される基から選ばれるいずれかの基を示し、eが1である場合のWの一部は水素原子であってもよい。
CH=C(R)CO−・・・(W1)
OCN(CH−・・・(W2)
NC(CH−・・・(W3)
(R3−m(RSi(CH−・・・(W4)
【化1】

(ただし、Rは水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のアルキル基。Rは水酸基、イソシアネート基、または加水分解される基。Rは水素原子または1価の炭化水素基。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基。i、j、およびpはそれぞれ独立に、0以上の整数。kは2以上の整数。mは1〜3の整数。)
【請求項2】
aが3、bが0または1であり、(a+b)が3または4である請求項1に記載の含フッ素エーテル。
【請求項3】
式(1)で表わされる化合物が、下式(1−1)で表される化合物〜式(1−5)で表される化合物から選ばれるいずれかの化合物である請求項1に記載の含フッ素エーテル。
[WO(CH(CFO(Q−]・・・(1−1)
[W(CFO(Q−]・・・(1−2)
[WCFO(Q−]・・・(1−3)
[W(O)(CHCFO(Q−]・・・(1−4)
[WOCHCFO(Qh−]・・・(1−5)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
、e、f、g、h:前記と同じ意味を示す。
:3価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、3価のペルフルオロ化飽和炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基であり、後者の基である場合には、該基中に−(OCFO)−構造は存在しない。
:水素原子または前記式(W1)で表される基であり、3つのWの少なくとも一つは式(W1)で表される基。
:前記式(W2)で表される基を示す。
:前記式(W3)で表される基を示す。
:前記式(W4)で表される基であり、eが1である場合のWの1または2個は水素原子であってもよい。
:水素原子または前記式(W5)で表される基であり、3つのWの少なくとも一つは式(W5)で表される基。
【請求項4】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した分子量が500〜100万である請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素エーテル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の式(1)で表される含フッ素エーテルの2分子以上を反応させてなる、または請求項1〜4に記載の式(1)で表される含フッ素エーテルの1分子以上と該式(1)で表される含フッ素エーテルと反応しうる他の化合物の1分子以上とを反応させてなる含フッ素エーテルの反応物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素エーテルおよび/または請求項5に記載の含フッ素エーテルの反応物、ならびに有機溶媒を含む溶液組成物。
【請求項7】
含フッ素エーテルおよび含フッ素エーテルの反応物の総量が、溶液組成物に対して0.001〜50質量%である請求項6に記載の溶液組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素エーテルおよび/または請求項5に記載の含フッ素エーテルの反応物を必須成分とする表面処理剤。
【請求項9】
請求項8に記載の表面処理剤を部材表面に処理することによって、部材表面に被膜を形成させてなる処理部材。

【公開番号】特開2006−45159(P2006−45159A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230932(P2004−230932)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】