説明

吸気通路内燃料噴射エンジン

【課題】燃焼室内でのスワールを確保しつつ、バルブオーバーラップ時での混合気の吹き抜けを抑制する。
【解決手段】 吸気バルブ3の開口部に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁12を備えた吸気通路内燃料噴射エンジンにおいて、吸気バルブ3が開閉する吸気ポート8の開口部は、燃焼室7の中心からシリンダ2の径方向外方にオフセットした位置に向けて開口し、排気バルブ4が開閉する排気ポート9の開口部は、燃焼室7の中心からシリンダ2の径方向外方にオフセットした位置に向けて開口し、且つ吸気ポート8の開口方向の延長線からシリンダ2の径方向にオフセットして配置されるとともに、排気バルブ4が開閉する排気ポート9の開口部の縁部に燃焼室7内へ突出するシュラウド15を備え、シュラウド15は、排気ポート9の開口部の縁部の全周のうち、吸気ポート8の開口方向の延長線側の一部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気通路内燃料噴射エンジンにおいて、バルブオーバーラップ時での混合気の吹き抜けを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
4ストロークエンジンでは、排気行程の終了直前又は吸気行程の開始直後にバルブオーバーラップが設けられているものがある。バルブオーバーラップは、吸気バルブと排気バルブとが開弁した状態であって、吸気によって燃焼室内に残留する既燃ガスの掃気を促し、全開付近の吸気の充填効率を向上させる効果を有する。
しかしながら、近年では、エンジンの吸入効率及び掃気効率を向上させるために吸気バルブ及び排気バルブの開口面積を極力大きく確保し、吸気バルブと排気バルブとの距離が近接したエンジンが増加している。このように、吸気バルブと排気バルブとの距離が近接して配置されている場合、吸気通路内に燃料を噴射する形式のエンジン、特に吸気バルブの近傍で吸気通路から吸気バルブの開口部を通して燃焼室内に向けて燃料を噴射するセミダイレクト燃料噴射式エンジンでは、バルブオーバーラップ時に燃料が噴射された場合に、混合気が吸気バルブから排気バルブに抜ける、所謂混合気の吹き抜けが発生してしまい、燃費の低下を招いてしまう。
【0003】
そこで、バルブオーバーラップ時に混合気の吹き抜けを抑制するために、吸気通路あるいは排気通路の開口部の周囲にシュラウド(堰)を設ける技術が提案されている(特許文献1)。詳しくは、吸気通路あるいは排気通路の開口部の縁にシュラウドを設け、吸気通路から排気通路への吸気の移動を抑制し、吸気の吹き抜けを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−1554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のエンジンは、吸気バルブ及び排気バルブを夫々2つずつ備えており、上面視で吸気バルブに向かう吸気通路の延長線上に排気通路の開口部が配置され、これらの1組の吸気通路と排気通路が燃焼室の中心を挟んで対称に配置されている。したがって、燃焼室内では吸気にスワールが発生し難い構造となっている。特許文献1では、排気通路の開口部の縁に、吸気通路の開口部と排気通路の開口部との間でシュラウドが設けられているエンジンが記載されており、このエンジンではシュラウドによって燃焼室内にタンブル流を発生させること可能であるものの、スワールを発生させることが困難である。
【0006】
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、燃焼室内でのスワールを確保しつつ、バルブオーバーラップ時での混合気の吹き抜けを抑制する吸気通路内燃料噴射エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の吸気通路内燃料噴射エンジンは、シリンダの側方へ燃焼室から延びる吸気通路及び排気通路を備えるとともに、吸気通路に燃料噴射手段を備えた吸気通路内燃料噴射エンジンであって、吸気バルブが開閉する吸気通路の開口部は、燃焼室の中心からシリンダの径方向外方にオフセットした位置に向けて開口し、排気バルブが開閉する排気通路の開口部は、燃焼室の中心からシリンダの径方向外方にオフセットした位置に向けて開口し、且つ吸気通路の開口方向の延長線からシリンダの径方向にオフセットして配置されるものを含んで構成されるとともに、排気バルブは、吸気バルブとのバルブオーバーラップ期間を有し、該排気バルブが開閉する排気通路の開口部の縁部に燃焼室内へ突出するシュラウドを備え、シュラウドは、縁部の全周のうち、吸気通路の開口方向の延長線側の一部に配置されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の吸気通路内燃料噴射エンジンは、請求項1において、1つの気筒に吸気バルブを2つ、排気バルブを少なくとも1つ備え、燃料噴射手段は、バルブオーバーラップ時には吸気通路から2つの吸気バルブのうち一方の吸気バルブの開口部を通して燃焼室に向けて燃料を噴射し、シュラウドは、縁部の全周のうち、バルブオーバーラップ時に燃料噴射手段から噴射された燃料が通過する吸気バルブの開口方向の延長線側の一部に配置されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の吸気通路内燃料噴射エンジンは、請求項1又は2において、1つの気筒に吸気バルブ及び排気バルブを夫々2つずつ備え、所定の高負荷時には2つの吸気バルブ及び排気バルブの全てが開閉し、所定の低負荷時には2つの吸気バルブ及び排気バルブのうち、シリンダの中心を挟んで互いに対角に配置された1対の吸気バルブ及び排気バルブを開閉する切換手段を備え、シュラウドは、所定の低負荷時に開閉する排気バルブの開口部の縁部に設けられ、当該縁部の全周のうち、所定の低負荷時に開閉する吸気バルブの開口部の開口方向の延長線側の一部に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、吸気通路の開口部が、燃焼室の中心から前記シリンダの径方向外方にオフセットした位置に向けて開口するので、吸気通路から流入した吸気が燃焼室内でスワールを発生させる。また、排気バルブが開閉する排気通路の開口部が、燃焼室の中心から前記シリンダの径方向外方にオフセットした位置に向けて開口し、且つ吸気通路の開口方向の延長線からシリンダの径方向にオフセットして配置されており、更に排気バルブが開閉する排気通路の開口部の縁部に燃焼室内へ突出するシュラウドを備えているので、吸気バルブと排気バルブの両方が開弁するバルブオーバーラップ時に吸気通路から排気通路への吸気の直線的な移動が妨げられる。したがって、バルブオーバーラップ時に燃料噴射手段から吸気通路に燃料が噴射されていても、燃料を含む吸気(混合気)が排気通路に吹き抜け難くなり、燃費を低減させることができる。
【0011】
更に、シュラウドは排気通路の開口部の縁部の全周のうち、吸気通路の開口方向の延長線側の一部に配置されるので、吸気通路から排気通路への混合気の吹き抜けを十分に防ぐことが可能である。排気通路の開口部の縁部の全周に設ける場合と比較して、燃焼室から燃焼後の排気の排気通路への排出を妨げることなく、スワールの維持を図り、掃気効率を向上させることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、1つの気筒に吸気バルブが2つ備えられ、バルブオーバーラップ時にはそのうちの一方の吸気バルブの開口部に向けて燃料が噴射され、シュラウドが開口部の縁部の全周のうち、燃料噴射手段から燃料を通過させる吸気バルブの開口部の開口方向の延長線側の一部に配置されるので、燃料を含む開口部からの吸気に対して、シュラウドによって排気バルブの開口部への吹き抜けを妨げることができる。
【0013】
したがって、1つの気筒に吸気弁2つ、排気弁が少なくとも1つのエンジンにおいて、バルブオーバーラップ時に燃料の吹き抜けを抑制しつつ、掃気効率を十分に確保することができる。
請求項3の発明によれば、所定の低負荷時に、シリンダの中心を挟んで互いに対角に配置された1対の吸気バルブ及び排気バルブを開閉するので、燃焼室内で吸気にスワールを発生させることができる。また、所定の高負荷時には2つの吸気バルブ及び排気バルブの全てが開閉するので、吸気流量を十分に確保して高出力を得ることが可能となる。
【0014】
そして、シュラウドが所定の低負荷時に開閉する排気バルブの開口部の縁部に設けられ、排気バルブの開口部の縁部の全周のうち、所定の低負荷時に開閉する吸気バルブの開口部の開口方向の延長線側の一部に配置されるので、所定の低負荷時に当該吸気バルブの開口部から開口方向に向けて燃焼室内に流入した吸気が、バルブオーバーラップ時であっても排気通路に吹き抜け難くなる。シュラウドは、排気バルブの開口部の縁部の全周に設けられておらず、また所定の高負荷時においては2つの排気バルブが開閉するので、吸入効率及び掃気効率を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態の吸気通路内燃料噴射エンジンの概略構造図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のエンジンの吸排気系の概略構成を示す横断面図である。
【図3】バルブ開弁期間及び燃料噴射期間の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態のエンジンの吸排気系の概略構成を示す横断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態のエンジンの吸排気系の概略構成を示す横断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態のエンジンの2弁開閉モード時での燃焼室内での吸気の流動方向を示す横断面図である。
【図7】4弁開閉モードと2弁開閉モードとの切換用マップである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の吸気通路内燃料噴射エンジン(以下、エンジン1という)の概略構造図である。図2は、本発明の第1の実施形態のエンジン1の吸排気系の概略構成を示す横断面図である。なお、図2では、燃焼室7内での吸気の流動方向を白抜き矢印で示している。
【0017】
図1、2に示すように、本発明の第1の実施形態のエンジン1は、円筒状の1つのシリンダ2に吸気バルブ3と排気バルブ4とを1つずつ備えた2バルブ式のエンジンである。
エンジン1のシリンダヘッド5には、点火プラグ6が備えられるとともに、燃焼室7の中心を挟んで吸気ポート8(吸気通路)及び排気ポート9が1つずつ備えられている。また、シリンダヘッド5には、吸気ポート8を開閉する吸気バルブ3と、排気ポート9を開閉する排気バルブ4が備えられ、これらの吸気バルブ3及び排気バルブ4は、シリンダヘッド5上の図示しない動弁機構によりクランク軸の回転に同期して開閉駆動される。
【0018】
吸気ポート8に接続される吸気マニホールド10(吸気通路)は、シリンダ2の側方から吸気バルブ3に向かって延び、排気ポート9に接続される排気マニホールド11は、吸気マニホールド10とは反対側のシリンダ2の側方から排気バルブ4に向かって延びている。
更に、エンジン1には、吸気バルブ3に近接して吸気ポート8内に燃料を噴射する燃料噴射弁12(燃料噴射手段)が設けられている。燃料噴射弁12は、吸気バルブ3の開口部に向って燃料を噴射するように噴射方向が設定されている。燃料噴射弁12は、燃料タンク13からフィードポンプ14によって燃料が供給される。
【0019】
図2に示すように、吸気マニホールド11及び吸気バルブ3と、排気マニホールド11及び排気バルブ4とは、上方視で一直線上に配置されず、燃焼室7の中心を挟んでシリンダ2の径方向(図2中、上下方向)にオフセットするように配置されている。
詳しくは、吸気バルブ3が開閉する吸気ポート8は、燃焼室7の中心からシリンダ2の径方向外側(図2中、下方向)にオフセットした位置に向けて開口し、当該吸気ポート8の開口方向の延長線からオフセットして排気バルブ4が配置されている。
【0020】
また、本実施形態では、排気ポート9の開口部の縁部に燃焼室7側に突出する円弧形状の堰体であるシュラウド15が備えられている。シュラウド15の上下高さ寸法は、吸気の吹き抜けが抑制可能であれば特に限定されるものではないが、一例として排気バルブ4の最大リフト位置より若干高めに設定されている。更に、シュラウド15は、排気ポート9の開口部の縁部の全周のうち、吸気ポート8の開口方向の延長線側の一部に配置されている。
【0021】
ECU30は、エンジン1のクランク角を検出するクランク角センサ31や吸気流量を検出するエアフローセンサ32、その他スロットル開度を検出するスロットルセンサ、アクセル操作量を検出するアクセルポジションセンサ等のセンサ類と電気的に接続されており、これらのセンサ類からの情報に基づき、燃料噴射弁12による燃料噴射量や燃料噴射時期及び点火プラグ6による点火時期等を制御する。
【0022】
図3は、バルブ開弁期間及び燃料噴射期間の一例を示す説明図である。
本実施形態では、燃料噴射弁12から噴射する単位時間あたりの燃料噴射量は略一定であって、噴射時間を増減制御することで、燃料噴射量を制御する。例えば、低負荷時には燃料噴射時間が短く、高負荷時には燃料噴射時間が長く設定される。
図3に示すように、本実施形態のエンジン1は、排気行程と吸気行程との境界前後で吸気バルブ3と排気バルブ4の両方が開弁するバルブオーバーラップ期間が設けられている。そして、ECU30は、低回転低負荷時には、吸気行程の前半で燃料を噴射するように設定し、高回転高負荷時には、排気行程の後半と吸気行程の前半とを連続して燃料を噴射するように設定している。
【0023】
以上のような構成とすることで、本実施形態では、吸気ポート8が、燃焼室7の中心からシリンダ2の径方向外側にオフセットした位置に向けて開口するので、吸気ポート8から流入した吸気が燃焼室7内でスワールを発生させる。また、吸気マニホールド10と排気マニホールド11とが上面視で一直線上になく、排気バルブ4が吸気ポート8の開口方向の延長線からオフセットして配置されているので、バルブオーバーラップ時に吸気ポート8から流入した吸気は、排気ポート9へ直線的に燃焼室7を通過することができない構成となっている。したがって、バルブオーバーラップ時に吸気ポート8から吸気が排気ポート9に流出し難くなっている。
【0024】
更に、排気バルブ4が開閉する排気ポート9の開口部の縁部に燃焼室7側へ突出するシュラウド15が備えられているので、排気ポート9への吸気の流出が更にし難いものになっている。
したがって、例えば高回転高負荷時のように、バルブオーバーラップ時に燃料噴射弁12から燃料を噴射した場合に、排気ポート9への燃料の吹き抜け量を減少させることができる。よって、排気を悪化させずに燃料による吸気冷却が可能となり、高圧縮化を図ることができ、燃費を低減させることができる。
【0025】
特に、本実施形態では、シュラウド15が排気ポート9の開口部の縁部の全周ではなく、吸気ポート8の開口方向の延長線側の一部に配置されるので、吸気ポート8から燃焼室7内に流入してくる吸気に対して、排気ポート9への排出を妨げるのに適切な位置に配置されている。そして、排気バルブ4の開口部の縁部の全周に設ける場合と比較して、燃焼室7内に残留する燃焼後の排気の排気ポート9への排出を妨げることなく、スワールの維持を図り、掃気性能を向上させることが可能となり、特に高回転時にシュラウド15を設けることによる出力低下を抑えることができる。
【0026】
図4は、本発明の第2の実施形態のエンジン40の吸排気系の概略構成を示す横断面図である。
本発明の第2の実施形態の吸気通路内燃料噴射エンジン(以下、エンジン40という)は、第1の実施形態のエンジン1に対して、1つの気筒に吸気バルブ(第1の吸気バルブ41、第2の吸気バルブ42)が2個備えられている点が相違する。
【0027】
吸気バルブが2個備えられていることに伴い、吸気マニホールド10は、下流側の端部で第1の吸気バルブ41が開閉する第1の吸気ポート43と、第2の吸気バルブが開閉する第2の吸気ポート44に接続されている。
排気バルブ4は、第1の吸気バルブ41と第2の吸気バルブ42との中間位置から吸気マニホールド10の延長方向に位置している。これにより、第2の実施形態についても、排気バルブ4が第1の吸気ポート43の開口方向の延長線からオフセットして配置されているので、バルブオーバーラップ時に第1の吸気ポート43から排気ポート9へ吸気が直線的に燃焼室7を通過することができない構成となっている。
【0028】
また、燃料噴射弁12は、第1の吸気バルブ41の開口部に向けて燃料を噴射するように配置されている。シュラウド15は、第1の吸気バルブ41が開閉する第1の吸気ポート43の開口方向の延長線側の一部に配置されている。これにより、燃料噴射弁12から噴射された燃料を含み第1の吸気ポート43から燃焼室7内に流入してくる混合気に対して、排気ポート9への排出を妨げるのに適切な位置に配置されており、バルブオーバーラップ時に燃料の吹き抜けを効果的に防止することができる。
【0029】
図5は、本発明の第3の実施形態のエンジン50の吸排気系の概略構成を示す横断面図である。
本発明の第3の実施形態の吸気通路内燃料噴射エンジン(以下、エンジン50という)は、第1の実施形態のエンジン1に対して、1つの気筒に吸気バルブ(第1の吸気バルブ41、第2の吸気バルブ42)が2個、排気バルブ(第1の吸気バルブ51、第2の吸気バルブ52)が2個備えられている点が相違する。
【0030】
本発明のエンジン50では、吸気マニホールド10側に第1の吸気バルブ41、第2の吸気バルブ42が並べて配置され、排気マニホールド11側に第1の排気バルブ51、第2の排気バルブ52が並べて配置されている。
吸気バルブ41、42が2個備えられていることに伴い、吸気マニホールド10は、先端部で2又に分岐し、その先端(吸気下流側端部)が第1の吸気バルブ41が開閉する第1の吸気ポート43と、第2の吸気バルブ42が開閉する第2の吸気ポート44に接続されている。また、排気バルブ51、52が2個備えられていることに伴い、排気マニホールド11は、先端部で2又に分岐し、その先端(排気上流側端部)が第1の排気バルブ51が開閉する第1の排気ポート53と、第2の排気バルブ52が開閉する第2の排気ポート54に接続されている。
【0031】
燃料噴射弁12は、第1の吸気バルブ41の開口部に向けて燃料を噴射する第1の燃料噴射弁12aと第2の吸気バルブ42の開口部に向けて燃料を噴射する第2の燃料噴射弁12bにより構成されている。
更に、本実施形態では、吸気バルブ41、42及び排気バルブ51、52を開閉する動弁機構に、1つの気筒で2つの吸気バルブ41、42及び2つの排気バルブ51、52を開閉する4弁開閉モードと、吸気バルブ41、42及び排気バルブ51、52のうち1つずつ閉止させ、1つずつ開閉する2弁開閉モードとを、図示しないアクチュエータにより切り換え可能な機能が備えられている。
【0032】
上記4弁開閉モードでは、図5に示すように、1つの気筒で2つの吸気バルブ41、42及び2つの排気バルブ51、52を開閉するので、吸気バルブ41、42及び排気バルブ51、52を共に開弁するバルブオーバーラップ時に、2つの吸気バルブ41、42から流入した吸気が夫々向かい合う排気バルブ51、52に向かって略直線的に移動し、燃焼室7内に残留する排気が迅速に排気ポート53、54から排出される。
【0033】
図6は、2弁開閉モード時での燃焼室7内での吸気の流動方向を示す上面図である。図6では、吸気の流動方向を白抜き矢印で示している。
上記2弁開閉モードでは、図6に示すように、第1の吸気バルブ41を開閉するとともに、当該第1の吸気バルブ41と対角にある第2の排気バルブ52を開閉し、第2の吸気バルブ42及び第1の排気バルブ51を閉止する。また、2弁開閉モードでは、閉止する第2の吸気バルブ42に向かっては燃料を噴射しないように、第2の燃料噴射弁12bの作動を規制する。
【0034】
ECU30(切換手段)は、エンジン50の運転状態に基づいて、4弁開閉モードと2弁開閉モードに切換える。
図7は、4弁開閉モードと2弁開閉モードとの切換用マップである。
ECU30は、図7に示すマップを用いて、エンジン50の回転速度と負荷に基づき、4弁開閉モード及び2弁開閉モードのいずれかを判定する。図7に示すように低負荷時あるいは低回転時に2弁開閉モードが選択され、高負荷時あるいは高回転時に4弁回転モードが選択される。
【0035】
以上のように構成及び制御することで、2弁開閉モード時では、第1の吸気バルブ41と第2の排気バルブ52が開弁するので、開弁する第2の排気バルブ52が、開弁する第1の吸気バルブ41の開口部の開口方向の延長線からオフセットして配置されており、バルブオーバーラップ時に第1の吸気ポート43から第2の排気ポート54へ吸気が直線的に燃焼室7を通過することができない構成となっている。
【0036】
また、シュラウド15は、第2の排気バルブ52の開口部の縁部に配置され、当該開口部の縁部の全周のうち、第1の吸気バルブ41が開閉する第1の吸気ポート43の開口方向の延長線側の一部に配置されている。
したがって、第3の実施形態では、2弁開閉モード時において、第1の燃料噴射弁12aから噴射された燃料を含み第1の吸気ポート43から燃焼室7内に流入してくる吸気に対して、第2の排気ポート54への排出を妨げるのに適切な位置に配置されており、バルブオーバーラップ時での燃料の吹き抜けを効果的に防止することができる。
【0037】
一方、4弁開閉モード時では、第1の吸気バルブ41、第2の吸気バルブ42、第1の排気バルブ51、及び第2の排気バルブ52が開閉するので、吸気流量を確保することができるとともに、掃気性も確保することができ、高回転時や高負荷時に適した特性とすることができる。
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。
【0038】
上記実施形態では、燃料噴射弁12が燃焼室7内に向けて燃料を噴射するセミダイレクト燃料噴射エンジンであるが、吸気通路で燃料を噴射するエンジンであれば、本発明を適用可能であって、バルブオーバーラップ時に吸気通路から排気通路への燃料の吹き抜けを効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 エンジン
2 シリンダ
3 吸気バルブ
4 排気バルブ
7 燃焼室
8 吸気ポート
12 燃料噴射弁
15 シュラウド
41 第1の吸気バルブ
52 第2の排気バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの側方へ燃焼室から延びる吸気通路及び排気通路を備えるとともに、前記吸気通路に燃料噴射手段を備えた吸気通路内燃料噴射エンジンであって、
吸気バルブが開閉する前記吸気通路の開口部は、前記燃焼室の中心から前記シリンダの径方向外方にオフセットした位置に向けて開口し、
排気バルブが開閉する前記排気通路の開口部は、前記燃焼室の中心から前記シリンダの径方向外方にオフセットした位置に向けて開口し、且つ前記吸気通路の開口方向の延長線から前記シリンダの径方向にオフセットして配置されるものを含んで構成されるとともに、
前記排気バルブは、前記吸気バルブとのバルブオーバーラップ期間を有し、該排気バルブが開閉する排気通路の開口部の縁部に前記燃焼室内へ突出するシュラウドを備え、
前記シュラウドは、前記縁部の全周のうち、前記吸気通路の開口方向の延長線側の一部に配置されることを特徴とする吸気通路内燃料噴射エンジン。
【請求項2】
1つの気筒に前記吸気バルブを2つ、前記排気バルブを少なくとも1つ備え、前記燃料噴射手段は、前記バルブオーバーラップ時には前記吸気通路から前記2つの吸気バルブのうち一方の吸気バルブの開口部を通して前記燃焼室に向けて燃料を噴射し、
前記シュラウドは、前記縁部の全周のうち、前記バルブオーバーラップ時に前記燃料噴射手段から噴射された燃料が通過する前記吸気バルブの開口方向の延長線側の一部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の吸気通路内燃料噴射エンジン。
【請求項3】
1つの気筒に前記吸気バルブ及び前記排気バルブを夫々2つずつ備え、
所定の高負荷時には2つの前記吸気バルブ及び前記排気バルブの全てが開閉し、所定の低負荷時には2つの前記吸気バルブ及び前記排気バルブのうち、前記シリンダの中心を挟んで互いに対角に配置された1対の前記吸気バルブ及び前記排気バルブを開閉する切換手段を備え、
前記シュラウドは、前記所定の低負荷時に開閉する前記排気バルブの開口部の縁部に設けられ、当該縁部の全周のうち、前記所定の低負荷時に開閉する前記吸気バルブの開口部の開口方向の延長線側の一部に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸気通路内燃料噴射エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92136(P2013−92136A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236091(P2011−236091)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】