周波数特性の調整方法、半導体装置の製造方法及び半導体装置
【課題】寄生容量が回避できないSi半導体基板上に集積回路と一緒に製造するオンチップアンテナにおいて、その周波数特性をウエハプロセス製造工程後に自在に所望値へ制御する。
【解決手段】Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、アンテナ部と集積回路部との間に非連続的な複数の導線パターンを前記第1のプロセスにおいて形成し、第1のプロセスの終了後に、複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的となるようにボンディングワイヤを懸架する。
【解決手段】Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、アンテナ部と集積回路部との間に非連続的な複数の導線パターンを前記第1のプロセスにおいて形成し、第1のプロセスの終了後に、複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的となるようにボンディングワイヤを懸架する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSi(シリコン)半導体基板上に集積回路部と同時につくり込まれるアンテナ部の周波数特性を調整する方法に関する。
更に詳しくは、この発明はCMOS-LSI(Complementary Metal Oxide Semiconductor-Large Scale Integrated Circuit)チップと集積化する超小型オンチップアンテナの半導体装置の設計・製造方法に関し、特にアンテナチップ製造後にアンテナチップに隣接したウエハ上の所望位置にワイヤボンディング法で製作したインダクタの本数を制御することで、アンテナ特性、特に周波数特性を所望値に制御できるオンチップ・チューナブルアンテナを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のユビキタス・センサネットワークは外付けアンテナを用いて、センサノード同士の通信を行っている。このため、センサノードのパッケージが大きくなり、人間の生体情報をワイヤレスでやり取りを行うのは大変困難な状態になっている。特にセンサノードを人体に装着する際には、被装着者に違和感を与えないことが求められており、アンテナを含めた超小型ユビキタス・センサノードのシステムならびにオンチップ・チューナブルアンテナの要求が強くなってきている。
【0003】
従来、該CMOS-LSI上に形成するオンチップアンテナは、設計時にシミュレータ等を用いて特性値の解析や予測を行い、使用周波数領域において効率のよい送信動作や受信動作するように設計を行おうとするが、発生する寄生容量などの寄生成分(L,C,R)が複雑であり、評価・解明できないところもある。このため、寄生成分を含めた正確な設計に基づいたアンテナ特性が得られないのが現状である。
【0004】
特に、各半導体メーカーのLSI製造プロセスによって、基板及び多層配線などによるアンテナの寄生容量が異なって、設計したオンチップアンテナの周波数特性がずれてしまうという問題点の改善が困難な状態にある。例えば、設計したオンチップアンテナはある半導体メーカーで周波数特性が出たが、別の半導体メーカーの製造プロセスで製作するとまた違う周波数特性が出てくるという予測・制御できない状態になっている。そのため、異なる半導体メーカーで製作後にもオンチップアンテナの周波数特性を制御できる技術の要求が強く高まってきている。
【0005】
特許文献1は、線路の電気長が1波長であるマイクロストリップ線路リング共振器を備えた動作周波数の調整可能なアンテナであって、以下の構成になっている。すなわち、高周波信号の入力端子が、該線路上の中心(電気長で半波長の位置)に設けられ、その入力端子から電気長で半波長の位置にある該線路上の点に半導体増幅素子の入力伝送線路が接続され、他方の線路上1/4波長の点には、所定の特性インピーダンスのスタブ部が設けられ、更に該スタブ部に可変キャパシタを接続され、該キャパシタの容量を調整することによって、チューナブルアンテナとして公開された。
【0006】
特許文献2は、プリント配線基板上にマトリックス状に配置されたボンディングパッドが形成され、該マトリックス状パッド間を接続して一つの方向の配線パターンを形成するパターン辺と、該パターン辺と隣り合う配線パターンを構成する任意のボンディングパッド同士を結線すするボンディングワイヤを備えている。つまり、特許文献2はオンチップ・チューナブルアンテナではなく、「インダクタ素子のインダクタンス」の値を調節できる点に特徴がある。
【0007】
非特許文献1および非特許文献2で公開されたのは、VCO(Voltage Controlled Oscillator)の電圧制御発振回路とオンチップアンテナとのインピーダンス整合回路として、ワイヤボンディング法を用いて「インピーダンスマッチング用インダクタ」を形成したものである。
なお、非特許文献の技術では、オンチップアンテナのLC共振器の終端は物理的かつDC(Direct Current:直流)的にアース接続されていない(終端が解放状態)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−142977号公報
【特許文献2】特開2002−75735 号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jong-Wan Kim, Hidekuni Takao, Kazuaki Sawada, Makoto Ishida, “Development of an Integrated Inductor for Impedance Matching on the Fully Integrated Silicon Smart Microsensors”, IEICE Technical Report ED2007-119, SDM2007-124(2007-6), PP. 293〜296
【非特許文献2】Jong-Wan Kim, Hidekuni Takao, Kazuaki Sawada, Makoto Ishida, "Integrated Inductors for RF Transmitters in CMOS/MEMS Smart Microsensor Systems", Sensors, Volume7, Issue 8, PP.1387-1398(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アンテナをシリコンの半導体基板上に製作すると、寄生容量などの発生が回避できないし、またその寄生容量の正確な評価・見積もりも難しいことなどから、所望なアンテナ特性、特に周波数特性を有するアンテナの設計・製作が困難な状況にある。実際に、同じ構成のオンチップアンテナでも違う半導体メーカーのLSI製造プロセスで製作すると、基板と多層配線などで発生する寄生容量により、周波数特性がずれてしまうという問題点が出てくることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた結果、下記構成の本件発明に想到した。
即ち、この発明の第1の局面は次のように規定される。
Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、
前記アンテナ部と前記集積回路部との間に非連続的な複数の導線パターンを前記第1のプロセスにおいて形成し、
前記第1のプロセスの終了後に、前記複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的となるようにボンディングワイヤを懸架する周波数特性の調整方法。
【0012】
このように規定される第1の局面の周波数特性の調整方法によれば、複数の導線パターンの一部又は全部を選択してそれらをボンディングワイヤで連結することによりループ状のインダクタが形成される。導線パターンの選択数を調整することによりインダクタのインダクタンスの大きさを制御可能となる。即ち、Si基板上に集積回路部と同一プロセス(第1のプロセス)において作り込まれたアンテナ部は寄生容量等の影響によってその周波数特性が不定となりやすい。そこで、第1のプロセス終了後に、形成されたアンテナ部の周波数特性を検査し、そのアンテナ部の周波数特性が目的とする仕様から外れていたときには、インダクタンスの大きさの調整可能なインダクタを接続することにより、アンテナ部の周波数特性を調整する。
ここに、インダクタンスの大きさをボンディングワイヤの懸架若しくは非懸架により制御できるので、その制御は簡易かつ安価に行える。
【0013】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
Si半導体基板へ集積回路部とアンテナ部とを形成する第1のプロセスであって、前記集積回路部と前記アンテナ部との間に非連続的な複数の導線パターンを形成するステップを含む第1のプロセスと、
該第1のプロセス終了後に、前記複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的になるようにボンディングワイヤを懸架する第2のプロセスと、を含む半導体装置の製造方法。
このように規定される第2の局面の製造方法によれば、ボンディングワイヤの懸架という比較的安価かつ汎用的な方法によりアンテナ部の周波数特性を調整可能となる。
【0014】
この発明の第3の局面は第2の局面で規定の製造方法により得られた半導体装置を規定したものである。即ち、
Si半導体基板と、
該Si半導体基板に対して第1の絶縁膜を共有する集積回路部とアンテナ部とを備え、
前記アンテナ部はLC共振回路を有し、
該LC共振回路の終端側はアースされ、
該LC共振回路と前記集積回路部との間には第2のインダクタが備えられ、
該第2のインダクタは前記第1の絶縁膜の上に形成された複数の非連続導線パターンと、該導線パターンの一部又は全部を直列的につなぐボンディングワイヤとを備える半導体装置。
第3の局面に規定の半導体装置は、ボンディングワイヤの懸架によりアンテナ部の周波数特性が調整されているので、高性能の半導体装置を安価に得られる。
【0015】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、第3の局面に規定の半導体装置において、前記ボンディングワイヤは該ボンディングワイヤが接続される前記導線パターンより長い。
このように規定される第4の局面の半導体装置によれば、ボンディングワイヤを導線パターンより長くしたので、第2のインダクタにループ形状を確保できる。
【0016】
この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、第3又は第4の局面に規定の半導体装置において、前記導線パターンと前記LC共振回路とは同時に形成されたものである。
このように規定される第5の局面の半導体装置によれば、製造工数が削減され、安価な半導体装置の提供が可能となる。
【0017】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、
前記アンテナ部と前記集積回路部との間に第2のインダクタを前記第1のプロセス中に形成し、
前記第1のプロセス終了後に、前記第2のインダクタを分割して、分割した一部を前記アンテナ部と前記集積回路部とに連結する周波数特性の調整方法。
第6の局面に規定の調整方法によれば、Si半導体基板へ形成されるLC共振部に対して、その形成後に第2のインダクタのインダクタンスを調整可能となる。これにより、半導体装置のアンテナ部の周波数特性を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はこの発明の第1の実施例の半導体装置1の構成を示す。
【図2】図2はLC共振器AとボンディングワイヤインダクタBの構成を示す斜視図である。
【図3】図3は第1の実施形態の半導体装置1の高周波特性で、LC共振器A及びボンディングワイヤインダクタB(ボンディングワイヤの懸架数9本)構成の場合のスミスチャート上にプロットしたインピーダンス特性である。
【図4】図4は第1の実施例の半導体装置1の高周波特性で、LC共振器Aのみの場合(ボンディングワイヤインダクタB無し)のスミスチャート上にプロットしたインピーダンス特性である。
【図5】図5は第1の実施例の半導体装置1の高周波特性で、ボンディングワイヤの配設数とアンテナの入力側反射特性(SパラメータS11)を示した図である。
【図6】図6はアンテナの動作周波数と、ボンディングワイヤの本数との関係を示す。
【図7】図7は本発明で試作したオンチップアンテナにおいて、アースに接続しないことに比べ、アースに接続したことの効果を示す図である。
【図8】図8はアースに接続した時のアンテナの入力側反射係数S11の周波数特性を示す(ボンディングワイヤ34の9本の場合)。
【図9】図9はアースに接続していない時の入力側反射係数S11の周波数特性を示す(ボンディングワイヤ34の9本の場合)。
【図10】図10は他の実施形態の半導体装置10のCMOSプロセスにおけるLOCOS酸化膜15形成後の断面図である。
【図11】図11は同じく第1の実施形態の半導体装置10のCMOSプロセスにおけるPoly−Si16堆積の断面図である。
【図12】図12は同じくCMOSプロセスにおけるPoly−Siパターニングの断面図である。
【図13】図13は同じくCMOSプロセスにおけるp−MOSトランジスタ18形成の断面図である。
【図14】図14は同じくCMOSプロセスにおけるn−MOSトランジスタ19形成の断面図である。
【図15】図15は同じくCMOSプロセスにおけるTEOS酸化膜21b形成工程の断面図である。
【図16】図16は同じくCMOSプロセスにおけるAl配線29〜33工程の断面図である。
【図17】図17は図10〜図16のプロセスを実行して得られた半導体装置10におけるLC共振器Aのスパイラルインダクタ25を示す平面図である。
【図18】図18は図17におけるA−A矢視線断面図である。
【図19】図19は同じくLC共振器Aにおけるコンデンサ26を示す平面図である。
【図20】図20は図19におけるB−B矢視線断面図である。
【図21】図21は同じくボンディングワイヤインダクタBを示す平面図である。
【図22】図22は図21におけるC−C矢視線断面図である。
【図23】図23は実施例の半導体装置10を、“無線で電力供給、無線で情報通信”のバッテリーレス・ワイヤレス型マイクロセンサノードに適用した時の概念図と応用概念図である。
【図24】図24は図1に示す半導体装置1をオンチップ・チューナブルアンテナチップを測定用パッケージに装着した外観図(左図)および-31.45dBm(距離10cm)の最大受信電力が得られた受信電力特性(右図)である。
【図25】図25はオンチップアンテナ同士の送受信の測定方法を示したものである。
【図26】図26は図25の測定結果を示す。
【図27】図27は実施例の半導体装置10をキーレスエントリシステムにおけるRF部品と内蔵するオンチップ・チューナブルアンテナとして適用した場合の概念図である。
【図28】図28はPLLという他のRF部品と実装するためのオンチップ・チューナブルアンテンのパッケージである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
Si半導体基板は集積回路用の基板として最も汎用さされるものである。この発明では、Si半導体基板に対し同一のプロセスで集積回路部とアンテナ部とが形成される。そのため、Si半導体基板表面に形成される絶縁膜(第1の絶縁膜)を集積回路部とアンテナ部とで共有している。
集積回路部の構成は任意に選択できる。この集積回路にはアンテナ部へ信号を送るための送信回路及び/又はアンテナ部からの信号を受信する受信回路が含まれる。
アンテナ部はインダクタ(L)とコンデンサ(C)を並列接続したLC共振回路を含み、その他必要に応じて抵抗や整流回路を含むことがあるが、送信回路や受信回路は含まない。
【0020】
この発明では、Si半導体基板において集積回路部とアンテナ部との間に、インダクタンスの大きさ調整可能な第2のインダクタを配置している。この第2のインダクタのインダクタンスの大きさを調整することにより、アンテナ部の周波数特性を最終的に制御可能であるからである。
インダクタンスを調整可能とするため、この発明の第1の局面ではSi半導体基板上に複数の非連続的な導線パターンを形成し、所望のインダクタンスが得られるようにその内の適正な数を選択して直列的にボンディングワイヤを懸架する。
基板表面に描画された導線パターンと立体的に懸架されるボンディングワイヤとで第2のインダクタが形成される。ここに、ボンディングワイヤは平面視直線的に形成されるのに対し導線パターンは任意の形状に形成できるので、例えば後述する実施例のように導線パターンを平行に形成し、隣り合う導線パターンにおいて離れた端へボンディングワイヤを懸架することにより、コイル状のインダクタを形成できる。
また、インダクタンスはコイルの径に影響されるので、ボンディングワイヤの高さを制御することも重要である。従って、ボンディングワイヤの長さは隣り合う導線パターンより長くすることが好ましい。ボンディングワイヤと導線パターンとの接触を防止してループを形成し、インダクタのコイル形状を確保するためである。
【0021】
アンテナ部のLC共振回路の終端側はアースされることが好ましい。これにより、第2のインダクタのインダクタンスがより強くアンテナ部の周波数特性に影響する。換言すれば、LC共振回路の終端側がオープンであると、第2のインダクタのインダクタンスを変えるべくボンディングワイヤの懸架数を制御しても、アンテナ部の周波数特性を充分に制御出来ないおそれがある(図7参照)。
【0022】
集積回路部のPoly−Si電極及びAl電極をアンテナ部のコンデンサの電極として用い、当該コンデンサの絶縁膜はTEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2H5)4を分解してなる二酸化シリコン膜を用いることが好ましい。絶縁膜を形成する際の温度履歴をできるだけ小さくし、電極の分解を防止するためである。
【0023】
この半導体装置はそのアンテナ部を自動車用キーレスエントリシステムにおけるUHF(Ultra High Frequency)帯無線通信用装置とし、その集積回路部をPLL−IC(Phase Locked Loop−Integrated Circuit)とすることができる。
またこの半導体装置はその集積回路部をバッテリーレス・ワイヤレス型ユビキタス・マイクロセンサチップとして、そのアンテナ部をRF送信ユニットのオンチップ送信アンテナとして用いることができる。
またこの半導体装置はその集積回路部をバッテリーレス・ワイヤレス型ユビキタス・マイクロセンサチップとし、UHF帯を利用したRF送信、あるいはRF受信回路をそのアンテナ部とすることもできる。
半導体装置がバッテリーレス構造のときには、アンテナ部を介して集積回路部へ給電できるようにすることが好ましい。
【0024】
インダクタンスを調整する観点からいえば、集積回路部及びアンテナ部との同一プロセスにおいてインダクタを形成しておいて、このインダクタを適当に分割し、分割した一部をアンテナ部へつなげることによりアンテナ部の周波数特性を制御することもできる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0026】
この実施例では、図1に示すように、Si半導体基板上にアンテナ部としてLC共振器Aと第1のインダクタとしてボンディングワイヤインダクタBとを備える半導体装置1を準備した。LC共振器AとボンディングワイヤインダクタBとでオンチップ・チューナブルアンテナが構成される。ここに、集積回路部は省略されているが、集積回路部をアンテナ部と同時に、即ち同一のプロセスで形成可能なことは当業者であれば明らかである。なお、アンテナ部と同時に集積回路部を形成する実施例は後述する。
この例では、アンテナの周波数特性をボンディングワイヤインダクタBで調整可能なことを実証する。
【0027】
図1において、LC共振器AとボンディングワイヤインダクタBとは一対のグランド配線33、33の間に配置されている。各グランド線33、33はSMAコネクタのグランド端子G,Gにボンディングワイヤを介して接続され、ボンディングワイヤインダクタBはSMAコネクタの信号端子Sに同じくボンディングワイヤを介して接続される。
【0028】
図2はLC共振器AとボンディングワイヤインダクタBの構成を示す斜視図である。
LC共振器Aはスパイラルインダクタ25(第1のインダクタ)とコンデンサ26とを並列に接続してなる。符号29はスパイラルインダクタ25のターン配線を示し、符号36はコンデンサ電極を示す。このLC共振器Aの終端はグランド配線33にボンディングワイヤ37を介して接続される。
上記においてLC共振器Aを構成する各インダクタ及びコンデンサは任意に設計できる。即ち、第1のインダクタ25を構成する巻き線29の巻数、径、材質並びにコンデンサ26を構成する電極36の面積、形状、個数、材質等は、LC共振器Aに求められる周波数特性に応じて適宜設計される。
【0029】
ボンディングワイヤインダクタBは基板上に形成された複数の導線パターン32とボンディングワイヤ34からなる。基板の絶縁膜の上には複数の直線状の導線パターン32が平行かつ非連続的に形成されている。各導線パターン32の終端にはボンディングパッド32aが形成されている。この導線パターン32は複数のものが非連続的であり、かつそれらをボンディングワイヤ34で直列的に接続可能であれば、その形状、模様は任意に設計できる。例えば、導線パターンとして波状や弧状のものを採用することもできる。
ボンディングワイヤ32は隣り合う導線パターン32においてより離隔したボンディングパッド32aを繋ぐことにより、導線パターン32を直列的に接続する。接続する導線パターン32を選択することによりボンディングワイヤインダクタBの長さが調整され、もってそのインダクタンスが制御される。
このボンディングワイヤインダクタBはLC共振器Aの入力側に直列的に接続される。ボンディングワイヤインダクタンスBとLC共振器Aとにより新たなLC共振回路が形成され、これがアンテナの機能を有する。
図1の例ではSMAコネクタへ直接接続されているが、半導体装置においては集積回路部の入出力ポートに接続される。
【0030】
図3は、図1の半導体装置1の(LC共振器A及びボンディングワイヤインダクタB(ボンディングワイヤ34:9本構成の場合))の高周波特性で、スミスチャート上にプロットしたインピーダンス特性である。
図4は、同じく、図1の例においてボンディングワイヤがゼロのとき、即ちLC共振器Aのみの高周波特性を示す。
なお、LC共振器Aにおいてスパイラルインダ25の巻き数は4.5ターン、線幅は30μm、線間隔は5μmである。コンデンサ26において下部電極の半径は150μm、上部電極の半径は180μm、上下電極の間には0.5μm厚さの酸化シリコン膜が形成される。この酸化シリコン膜はTEOS由来である。
また、ボンディングワイヤインダクタBにおいて配線パターンの線幅は30μmであり、線間隔は300μmとした。ボンディングワイヤ34には直径30μmの金線を使用した。
【0031】
図5は第1の実施形態の半導体装置1の高周波特性で、ボンディングワイヤとアンテナの入力側反射特性S11を示した図である。図中、ボンディングワイヤ34の本数は0〜9で示している。なお、ボンディングワイヤはLC共振器A側から順次懸架され、最後の導線パターンにおいてボンディングワイヤがつながれていないボンディングパッドとSMAコネクタの信号ターミナルとが連結される。
図5の結果より、ボンディングワイヤの懸架数により、アンテナの入力側反射係数S11が変化すること、並びにその極小値が動作周波数で変化することがわかる。反射係数S11、が極小値を示す周波数帯域がアンテナの動作周波数帯域になり、かつ極小値が小さい程、優れたアンテナ特性を示す。
図6はアンテナの動作周波数とボンディングワイヤの本数との関係を示す。図6の結果から、ボンディングワイヤの1本あたりで動作周波数を約100MHz変化させられることがわかる。
【0032】
図7は図1及び図2に示すLC共振器Aにおいてその終端が解放(OPENの状態)の場合、ボンディングワイヤインダクタBにおいてワイヤボンディングの懸架数数を変えても周波数特性が大きく変化しないことを示している。
即ち、LC共振器Aの終端側をアースに接続することにより、入力側反射係数S11が大幅に低減されることがわかる。
【0033】
図8はLC共振器Aの終端側をアースに接続した時のアンテナの入力側反射係数S11の周波数特性を示したものである(ボンディングワイヤの数:9本)。左下図は、スミスチャート表示で、点線丸印が水平軸の中心(入力側反射係数が最小になる理想の点)に近く、送・受信側回路とアンテナとの送・受が円滑になることを示している。下図の入力側反射特性(定在波比SWRの周波数特性)、上図の入力側反射係数S11の周波数特性もアース接続のないもの(図9参照)に比べて大幅に改善されていることを示している。
【0034】
図9はLC共振器Aの終端側をアースに接続していない時の入力側反射係数S11の周波数特性を示したもので、左下図は、スミスチャート表示で、点線丸印が水平軸の中心(入力側反射係数が最小になる理想の点)から距離があることを示している。右下図は入力側反射特性を定在波比SWR(Standing Wave Ratio)の周波数特性を示したもの、上図は入力側反射係数S11の周波数特性を示したもので、いずれも図8に示す同様な特性と比べて悪くなっている。
【0035】
次に、集積回路部としてのCMOS集積回路領域10aと、LC共振器A及びボンディングワイヤインダクタBからなるオンチップ・チューナブルアンテナ領域10bとを備える半導体装置10の製造方法を図10〜図16に基づき説明する。
【0036】
図10は、汎用的なCMOS製造プロセスによって、Si半導体基板(n型Si(100))11にLOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化膜15が形成された状態を示す。図10において符号12はp−well、符号13はn−MOSのチャーネルストッパ、符号14はp−MOSのチャーネルストッパである。
次に、図11に示すように、CMOS集積回路10aのゲート電極16aおよびアンテナの平行平板型コンデンサ26の下部電極16cのためにLP−CVD(Low Pressure−Chemical Vapor Deposition)法でPoly−Si16を堆積する。
【0037】
図12に示す工程では、必要な部分だけ残すために、Si系RIE(Reactive Ion Etching)装置を用いて、Poly−Si16をパターニングする。図中、16aはゲート電極(Poly−Si)を示し、16bはスパイラルインダクタのターン配線用Poly−Siを示し、16cはコンデンサのPoly−Si下部電極をしめし、17はレジストを示す。
それから、図13に示すように、CMOS集積回路領域10aに、p−MOS(p-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ18を形成するためには、B(ボロン)のイオン注入を行う。
【0038】
同様に、図14に示すように、CMOS集積回路領域10aに、n−MOS(n-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ19を形成するためには、P(リン)のイオン注入を行う。
【0039】
図15に示すように、アンテナのコンデンサ26の絶縁膜を形成するため、LP−CVD法でTEOS21bを用いてSi酸化膜SiO2膜を形成する。また、CMOS集積回路10aのソース・ドレイン電極のコンタクトホール20およびアンテナのPoly−Si電極16cのコンデンサのコンタクトホール20bを形成する。
【0040】
図16に示すように、CMOSプロセスのAl配線29〜33工程を使って、アンテナのスパイラルインダクタ25および導電パターン32およびパッド32a領域を形成する。なお、該ボンディングワイヤインダクタBは、従来のオンチップアンテナ10b形成の本質的な難しさを解決する役割を成している。即ち、半導体基板11上にCMOS集積回路10aに加えてオンチップアンテナ10bであるLC共振器Aを集積化する際には、設計・作製したコンデンサ26、インダクタ25特性に加えて寄生成分、特に寄生容量の発生を回避することが極めて難しく、かつその値を正しく評価・解析・設計することが困難な状況にある。このため、アンテナの周波数特性などが設計値と大幅にずれる。そこで、寄生成分の発生を前提にしたLC共振器Aの特性に該ボンディングワイヤインダクタBの特性を合成することで、周波数の制御が可能でかつ優れた高周波特性を有するオンチップアンテナ10bが実現できる。
【0041】
図17は第1の実施例の半導体装置10のスパイラルインダクタ25を示す平面図である。スパイラルインダクタ25の巻き数は4.5ターン29、各ターン29の線幅は30μm、線間隔は5μmとした。
【0042】
図18は上記の平面図にA−A面から見た断面図である。断面図に示すように、スパイラルインダクタ25の一番内側のターン38は、下層のPoly−Si16bを用いて、外側の配線35に繋がれている。
【0043】
図19は第1の実施形態の半導体装置10のコンデンサ26を示す平面図である。三つのコンデンサ26は並列に配置され、図20に示すように、Poly−Siからなる下部電極16cの半径は150μmであり、Alからなる上部電極30の半径は180μmとなっている。コンデンサ26の絶縁体は0.5μm厚さのSiO2(TEOS)酸化膜21bである。
【0044】
図21は第1の実施形態の半導体装置10のボンディングワイヤインダクタBを示す平面図である。ボンディングワイヤインダクタBの導線パターン32の線幅は30μmであり、導線パターン32の間隔は300μmで設計した。
【0045】
図22は図21におけるC−C面から見た断面図である。この断面図に示すように、導線パターン32を直径30μmのワイヤ34(Au)で結んで、ボンディングワイヤインダクタBが構成される。
【0046】
このようにして形成された半導体装置10においては、CMOS集積回路領域10aとオンチップ・チューナブルアンテナ領域10bにおいてSiO2(LOCOS)層(第1の絶縁層)とSiO2(TEOS)(第2の絶縁層)とは共有されている。
【実施例2】
【0047】
本発明の第2実施形態として、CMOS集積回路10aのリングオシレータ型VCOと送信用オンチップ・チューナブルアンテナ10bとして一体化プロセスで製造したユビキタス・マイクロセンサノードの例について説明する。
【0048】
図23に示すように、人間の体に装着するため、センサチップだけは超小型化することが必要不可欠であるが、まだ不十分なため実現できないので、これを可能にする送受信オンチップ・チューナブルアンテナ10bが必要不可欠となっている。
【0049】
本発明はセンサチップの半導体プロセスの製造後に、例えば送信用の所望周波数である300MHzあるいは受信用の所望周波数800MHzへ簡単に調整することが可能であることを特徴としたものである。
【0050】
これによって、例えば動作周波数帯域800MHz携帯電話からの電波を本発明の受信用オンチップ・チューナブルアンテナ10b(受信用の周波数800MHz帯)で受信できることも可能になる。
【0051】
この受信用の周波数800MHz帯を調整するためには、図23に示すように、本発明で提供しているLC共振器A(終端をアースに接続)と隣接した5本のボンディングワイヤインダクタBのオンチップ・チューナブルアンテナ10bを用いて実現することが可能である。
【0052】
このため、このオンチップ・チューナブルアンテナ10bで受信した電力を、チップ上に別途設計・製作したワイヤレス給電・電源回路により電圧を発生させて、バッテリーレスでセンサチップを駆動することが可能になる。
【0053】
図24は、センサチップから300MHz帯の送信用オンチップ・チューナブルアンテナ10bを通して電波が飛ばせたことを示している。
【0054】
図25及び図26は、センサチップの信号を送信用オンチップ・チューナブルアンテナ10bから発射されてきた電波を、受信用オンチップ・チューナブルアンテナ10bで受信できたことを示している。
【実施例3】
【0055】
本発明の第3実施例として、図27及び図28に示すUHF帯の電波を利用したキーレスエントリシステムの基板に内蔵するための「オンチップ・チューナブルアンテナ10b」をパッケージに実装した例について説明する。
【0056】
キーレスエントリシステムにおいて、例えばPLL−ICというRF部品と本発明のオンチップ・チューナブルアンテナ10bを同一基板上に実装するためには、該アンテナをIC専用パッケージに実装すれば、はんだ付けなどで実現が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、民間企業で現在実用化されているサイズで(本発明の約10倍)、かつハイブリッド型の送受信装置で行われている評価基準に沿って、インピーダンス特性および電波特性を測定し、仕様を満たす特性を得ている。今後、自動車のスマートキーにおけるマイクロアンテナとして製品化される可能性がある。そのための製品サイズの要求である現行品の約1/10という仕様は、現時点で満たしている。
【0058】
本発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10 半導体装置
10aCMOS集積回路領域
10b オンチップ・チューナブルアンテナ領域
11 半導体基板(n 型 Si(100))
12 p−well領域
13 n−MOSのチャーネルストッパ
14 p−MOSのチャーネルストッパ
15 SiO2絶縁膜(CMOS酸化膜)
15a ゲート絶縁膜(SiO2)
16 Poly−Si膜
16a ゲート電極(Poly−Si)
16b スパイラルインダクタのターン配線用Poly−Si
16c コンデンサのPoly−Si下部電極
17 レジスト
18 p−MOSのソース・ドレイン領域
18a チャーネルストッパ(p+)
19 n−MOSのソース・ドレイン領域
19a チャーネルストッパ(n+)
20 ソース・ドレイン電極のコンタクトホール
20a スパイラスインダクタのターン配線用コンタクトホール
21 SiO2絶縁膜(TEOS膜)
21aスパイラルインダクタ領域におけるSiO2絶縁膜(TEOS膜)
21b コンデンサ電極間のSiO2絶縁膜(TEOS膜)
21c 側壁絶縁膜
22 p−MOS及びn−MOSの配線
23 p−MOSトランジスタ
24 n−MOSトランジスタ
25 LC共振器のスパイラルインダクタ
26 LC共振器のコンデンサ
27 ボンディングワイヤインダクタ
28 ソース電極(Al)
28aドレイン電極(Al)
29 スパイラルインダクタのターン配線(Al)
29a スパイラルインダクタの配線(Al)
30 コンデンサの上部電極(Al)
31 コンデンサのPoly-Si下部電極用Al
32 ボンディングパッド間に予め製作したAl配線
32a ボンディングパッド
33 オンチップアンテナ全体のグランド配線
34 インダクタを構成するボンディングワイヤ(Au)
35 スパイラルインダクタの外側配線(Al)
36 コンデンサ電極
37 アンテナの終端をアースに接続するためのワイヤ(Au)
38 スパイラルインダクタの一番内側のターン(Al)
39 コンデンサのPoly−Si下部電極のコンタクトホール
40 GND(グラウンド)に落すピン
41 オンチップ・チューナブルアンテナに給電するピン
【技術分野】
【0001】
本発明はSi(シリコン)半導体基板上に集積回路部と同時につくり込まれるアンテナ部の周波数特性を調整する方法に関する。
更に詳しくは、この発明はCMOS-LSI(Complementary Metal Oxide Semiconductor-Large Scale Integrated Circuit)チップと集積化する超小型オンチップアンテナの半導体装置の設計・製造方法に関し、特にアンテナチップ製造後にアンテナチップに隣接したウエハ上の所望位置にワイヤボンディング法で製作したインダクタの本数を制御することで、アンテナ特性、特に周波数特性を所望値に制御できるオンチップ・チューナブルアンテナを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のユビキタス・センサネットワークは外付けアンテナを用いて、センサノード同士の通信を行っている。このため、センサノードのパッケージが大きくなり、人間の生体情報をワイヤレスでやり取りを行うのは大変困難な状態になっている。特にセンサノードを人体に装着する際には、被装着者に違和感を与えないことが求められており、アンテナを含めた超小型ユビキタス・センサノードのシステムならびにオンチップ・チューナブルアンテナの要求が強くなってきている。
【0003】
従来、該CMOS-LSI上に形成するオンチップアンテナは、設計時にシミュレータ等を用いて特性値の解析や予測を行い、使用周波数領域において効率のよい送信動作や受信動作するように設計を行おうとするが、発生する寄生容量などの寄生成分(L,C,R)が複雑であり、評価・解明できないところもある。このため、寄生成分を含めた正確な設計に基づいたアンテナ特性が得られないのが現状である。
【0004】
特に、各半導体メーカーのLSI製造プロセスによって、基板及び多層配線などによるアンテナの寄生容量が異なって、設計したオンチップアンテナの周波数特性がずれてしまうという問題点の改善が困難な状態にある。例えば、設計したオンチップアンテナはある半導体メーカーで周波数特性が出たが、別の半導体メーカーの製造プロセスで製作するとまた違う周波数特性が出てくるという予測・制御できない状態になっている。そのため、異なる半導体メーカーで製作後にもオンチップアンテナの周波数特性を制御できる技術の要求が強く高まってきている。
【0005】
特許文献1は、線路の電気長が1波長であるマイクロストリップ線路リング共振器を備えた動作周波数の調整可能なアンテナであって、以下の構成になっている。すなわち、高周波信号の入力端子が、該線路上の中心(電気長で半波長の位置)に設けられ、その入力端子から電気長で半波長の位置にある該線路上の点に半導体増幅素子の入力伝送線路が接続され、他方の線路上1/4波長の点には、所定の特性インピーダンスのスタブ部が設けられ、更に該スタブ部に可変キャパシタを接続され、該キャパシタの容量を調整することによって、チューナブルアンテナとして公開された。
【0006】
特許文献2は、プリント配線基板上にマトリックス状に配置されたボンディングパッドが形成され、該マトリックス状パッド間を接続して一つの方向の配線パターンを形成するパターン辺と、該パターン辺と隣り合う配線パターンを構成する任意のボンディングパッド同士を結線すするボンディングワイヤを備えている。つまり、特許文献2はオンチップ・チューナブルアンテナではなく、「インダクタ素子のインダクタンス」の値を調節できる点に特徴がある。
【0007】
非特許文献1および非特許文献2で公開されたのは、VCO(Voltage Controlled Oscillator)の電圧制御発振回路とオンチップアンテナとのインピーダンス整合回路として、ワイヤボンディング法を用いて「インピーダンスマッチング用インダクタ」を形成したものである。
なお、非特許文献の技術では、オンチップアンテナのLC共振器の終端は物理的かつDC(Direct Current:直流)的にアース接続されていない(終端が解放状態)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−142977号公報
【特許文献2】特開2002−75735 号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jong-Wan Kim, Hidekuni Takao, Kazuaki Sawada, Makoto Ishida, “Development of an Integrated Inductor for Impedance Matching on the Fully Integrated Silicon Smart Microsensors”, IEICE Technical Report ED2007-119, SDM2007-124(2007-6), PP. 293〜296
【非特許文献2】Jong-Wan Kim, Hidekuni Takao, Kazuaki Sawada, Makoto Ishida, "Integrated Inductors for RF Transmitters in CMOS/MEMS Smart Microsensor Systems", Sensors, Volume7, Issue 8, PP.1387-1398(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アンテナをシリコンの半導体基板上に製作すると、寄生容量などの発生が回避できないし、またその寄生容量の正確な評価・見積もりも難しいことなどから、所望なアンテナ特性、特に周波数特性を有するアンテナの設計・製作が困難な状況にある。実際に、同じ構成のオンチップアンテナでも違う半導体メーカーのLSI製造プロセスで製作すると、基板と多層配線などで発生する寄生容量により、周波数特性がずれてしまうという問題点が出てくることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた結果、下記構成の本件発明に想到した。
即ち、この発明の第1の局面は次のように規定される。
Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、
前記アンテナ部と前記集積回路部との間に非連続的な複数の導線パターンを前記第1のプロセスにおいて形成し、
前記第1のプロセスの終了後に、前記複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的となるようにボンディングワイヤを懸架する周波数特性の調整方法。
【0012】
このように規定される第1の局面の周波数特性の調整方法によれば、複数の導線パターンの一部又は全部を選択してそれらをボンディングワイヤで連結することによりループ状のインダクタが形成される。導線パターンの選択数を調整することによりインダクタのインダクタンスの大きさを制御可能となる。即ち、Si基板上に集積回路部と同一プロセス(第1のプロセス)において作り込まれたアンテナ部は寄生容量等の影響によってその周波数特性が不定となりやすい。そこで、第1のプロセス終了後に、形成されたアンテナ部の周波数特性を検査し、そのアンテナ部の周波数特性が目的とする仕様から外れていたときには、インダクタンスの大きさの調整可能なインダクタを接続することにより、アンテナ部の周波数特性を調整する。
ここに、インダクタンスの大きさをボンディングワイヤの懸架若しくは非懸架により制御できるので、その制御は簡易かつ安価に行える。
【0013】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
Si半導体基板へ集積回路部とアンテナ部とを形成する第1のプロセスであって、前記集積回路部と前記アンテナ部との間に非連続的な複数の導線パターンを形成するステップを含む第1のプロセスと、
該第1のプロセス終了後に、前記複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的になるようにボンディングワイヤを懸架する第2のプロセスと、を含む半導体装置の製造方法。
このように規定される第2の局面の製造方法によれば、ボンディングワイヤの懸架という比較的安価かつ汎用的な方法によりアンテナ部の周波数特性を調整可能となる。
【0014】
この発明の第3の局面は第2の局面で規定の製造方法により得られた半導体装置を規定したものである。即ち、
Si半導体基板と、
該Si半導体基板に対して第1の絶縁膜を共有する集積回路部とアンテナ部とを備え、
前記アンテナ部はLC共振回路を有し、
該LC共振回路の終端側はアースされ、
該LC共振回路と前記集積回路部との間には第2のインダクタが備えられ、
該第2のインダクタは前記第1の絶縁膜の上に形成された複数の非連続導線パターンと、該導線パターンの一部又は全部を直列的につなぐボンディングワイヤとを備える半導体装置。
第3の局面に規定の半導体装置は、ボンディングワイヤの懸架によりアンテナ部の周波数特性が調整されているので、高性能の半導体装置を安価に得られる。
【0015】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、第3の局面に規定の半導体装置において、前記ボンディングワイヤは該ボンディングワイヤが接続される前記導線パターンより長い。
このように規定される第4の局面の半導体装置によれば、ボンディングワイヤを導線パターンより長くしたので、第2のインダクタにループ形状を確保できる。
【0016】
この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、第3又は第4の局面に規定の半導体装置において、前記導線パターンと前記LC共振回路とは同時に形成されたものである。
このように規定される第5の局面の半導体装置によれば、製造工数が削減され、安価な半導体装置の提供が可能となる。
【0017】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、
前記アンテナ部と前記集積回路部との間に第2のインダクタを前記第1のプロセス中に形成し、
前記第1のプロセス終了後に、前記第2のインダクタを分割して、分割した一部を前記アンテナ部と前記集積回路部とに連結する周波数特性の調整方法。
第6の局面に規定の調整方法によれば、Si半導体基板へ形成されるLC共振部に対して、その形成後に第2のインダクタのインダクタンスを調整可能となる。これにより、半導体装置のアンテナ部の周波数特性を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はこの発明の第1の実施例の半導体装置1の構成を示す。
【図2】図2はLC共振器AとボンディングワイヤインダクタBの構成を示す斜視図である。
【図3】図3は第1の実施形態の半導体装置1の高周波特性で、LC共振器A及びボンディングワイヤインダクタB(ボンディングワイヤの懸架数9本)構成の場合のスミスチャート上にプロットしたインピーダンス特性である。
【図4】図4は第1の実施例の半導体装置1の高周波特性で、LC共振器Aのみの場合(ボンディングワイヤインダクタB無し)のスミスチャート上にプロットしたインピーダンス特性である。
【図5】図5は第1の実施例の半導体装置1の高周波特性で、ボンディングワイヤの配設数とアンテナの入力側反射特性(SパラメータS11)を示した図である。
【図6】図6はアンテナの動作周波数と、ボンディングワイヤの本数との関係を示す。
【図7】図7は本発明で試作したオンチップアンテナにおいて、アースに接続しないことに比べ、アースに接続したことの効果を示す図である。
【図8】図8はアースに接続した時のアンテナの入力側反射係数S11の周波数特性を示す(ボンディングワイヤ34の9本の場合)。
【図9】図9はアースに接続していない時の入力側反射係数S11の周波数特性を示す(ボンディングワイヤ34の9本の場合)。
【図10】図10は他の実施形態の半導体装置10のCMOSプロセスにおけるLOCOS酸化膜15形成後の断面図である。
【図11】図11は同じく第1の実施形態の半導体装置10のCMOSプロセスにおけるPoly−Si16堆積の断面図である。
【図12】図12は同じくCMOSプロセスにおけるPoly−Siパターニングの断面図である。
【図13】図13は同じくCMOSプロセスにおけるp−MOSトランジスタ18形成の断面図である。
【図14】図14は同じくCMOSプロセスにおけるn−MOSトランジスタ19形成の断面図である。
【図15】図15は同じくCMOSプロセスにおけるTEOS酸化膜21b形成工程の断面図である。
【図16】図16は同じくCMOSプロセスにおけるAl配線29〜33工程の断面図である。
【図17】図17は図10〜図16のプロセスを実行して得られた半導体装置10におけるLC共振器Aのスパイラルインダクタ25を示す平面図である。
【図18】図18は図17におけるA−A矢視線断面図である。
【図19】図19は同じくLC共振器Aにおけるコンデンサ26を示す平面図である。
【図20】図20は図19におけるB−B矢視線断面図である。
【図21】図21は同じくボンディングワイヤインダクタBを示す平面図である。
【図22】図22は図21におけるC−C矢視線断面図である。
【図23】図23は実施例の半導体装置10を、“無線で電力供給、無線で情報通信”のバッテリーレス・ワイヤレス型マイクロセンサノードに適用した時の概念図と応用概念図である。
【図24】図24は図1に示す半導体装置1をオンチップ・チューナブルアンテナチップを測定用パッケージに装着した外観図(左図)および-31.45dBm(距離10cm)の最大受信電力が得られた受信電力特性(右図)である。
【図25】図25はオンチップアンテナ同士の送受信の測定方法を示したものである。
【図26】図26は図25の測定結果を示す。
【図27】図27は実施例の半導体装置10をキーレスエントリシステムにおけるRF部品と内蔵するオンチップ・チューナブルアンテナとして適用した場合の概念図である。
【図28】図28はPLLという他のRF部品と実装するためのオンチップ・チューナブルアンテンのパッケージである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
Si半導体基板は集積回路用の基板として最も汎用さされるものである。この発明では、Si半導体基板に対し同一のプロセスで集積回路部とアンテナ部とが形成される。そのため、Si半導体基板表面に形成される絶縁膜(第1の絶縁膜)を集積回路部とアンテナ部とで共有している。
集積回路部の構成は任意に選択できる。この集積回路にはアンテナ部へ信号を送るための送信回路及び/又はアンテナ部からの信号を受信する受信回路が含まれる。
アンテナ部はインダクタ(L)とコンデンサ(C)を並列接続したLC共振回路を含み、その他必要に応じて抵抗や整流回路を含むことがあるが、送信回路や受信回路は含まない。
【0020】
この発明では、Si半導体基板において集積回路部とアンテナ部との間に、インダクタンスの大きさ調整可能な第2のインダクタを配置している。この第2のインダクタのインダクタンスの大きさを調整することにより、アンテナ部の周波数特性を最終的に制御可能であるからである。
インダクタンスを調整可能とするため、この発明の第1の局面ではSi半導体基板上に複数の非連続的な導線パターンを形成し、所望のインダクタンスが得られるようにその内の適正な数を選択して直列的にボンディングワイヤを懸架する。
基板表面に描画された導線パターンと立体的に懸架されるボンディングワイヤとで第2のインダクタが形成される。ここに、ボンディングワイヤは平面視直線的に形成されるのに対し導線パターンは任意の形状に形成できるので、例えば後述する実施例のように導線パターンを平行に形成し、隣り合う導線パターンにおいて離れた端へボンディングワイヤを懸架することにより、コイル状のインダクタを形成できる。
また、インダクタンスはコイルの径に影響されるので、ボンディングワイヤの高さを制御することも重要である。従って、ボンディングワイヤの長さは隣り合う導線パターンより長くすることが好ましい。ボンディングワイヤと導線パターンとの接触を防止してループを形成し、インダクタのコイル形状を確保するためである。
【0021】
アンテナ部のLC共振回路の終端側はアースされることが好ましい。これにより、第2のインダクタのインダクタンスがより強くアンテナ部の周波数特性に影響する。換言すれば、LC共振回路の終端側がオープンであると、第2のインダクタのインダクタンスを変えるべくボンディングワイヤの懸架数を制御しても、アンテナ部の周波数特性を充分に制御出来ないおそれがある(図7参照)。
【0022】
集積回路部のPoly−Si電極及びAl電極をアンテナ部のコンデンサの電極として用い、当該コンデンサの絶縁膜はTEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC2H5)4を分解してなる二酸化シリコン膜を用いることが好ましい。絶縁膜を形成する際の温度履歴をできるだけ小さくし、電極の分解を防止するためである。
【0023】
この半導体装置はそのアンテナ部を自動車用キーレスエントリシステムにおけるUHF(Ultra High Frequency)帯無線通信用装置とし、その集積回路部をPLL−IC(Phase Locked Loop−Integrated Circuit)とすることができる。
またこの半導体装置はその集積回路部をバッテリーレス・ワイヤレス型ユビキタス・マイクロセンサチップとして、そのアンテナ部をRF送信ユニットのオンチップ送信アンテナとして用いることができる。
またこの半導体装置はその集積回路部をバッテリーレス・ワイヤレス型ユビキタス・マイクロセンサチップとし、UHF帯を利用したRF送信、あるいはRF受信回路をそのアンテナ部とすることもできる。
半導体装置がバッテリーレス構造のときには、アンテナ部を介して集積回路部へ給電できるようにすることが好ましい。
【0024】
インダクタンスを調整する観点からいえば、集積回路部及びアンテナ部との同一プロセスにおいてインダクタを形成しておいて、このインダクタを適当に分割し、分割した一部をアンテナ部へつなげることによりアンテナ部の周波数特性を制御することもできる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0026】
この実施例では、図1に示すように、Si半導体基板上にアンテナ部としてLC共振器Aと第1のインダクタとしてボンディングワイヤインダクタBとを備える半導体装置1を準備した。LC共振器AとボンディングワイヤインダクタBとでオンチップ・チューナブルアンテナが構成される。ここに、集積回路部は省略されているが、集積回路部をアンテナ部と同時に、即ち同一のプロセスで形成可能なことは当業者であれば明らかである。なお、アンテナ部と同時に集積回路部を形成する実施例は後述する。
この例では、アンテナの周波数特性をボンディングワイヤインダクタBで調整可能なことを実証する。
【0027】
図1において、LC共振器AとボンディングワイヤインダクタBとは一対のグランド配線33、33の間に配置されている。各グランド線33、33はSMAコネクタのグランド端子G,Gにボンディングワイヤを介して接続され、ボンディングワイヤインダクタBはSMAコネクタの信号端子Sに同じくボンディングワイヤを介して接続される。
【0028】
図2はLC共振器AとボンディングワイヤインダクタBの構成を示す斜視図である。
LC共振器Aはスパイラルインダクタ25(第1のインダクタ)とコンデンサ26とを並列に接続してなる。符号29はスパイラルインダクタ25のターン配線を示し、符号36はコンデンサ電極を示す。このLC共振器Aの終端はグランド配線33にボンディングワイヤ37を介して接続される。
上記においてLC共振器Aを構成する各インダクタ及びコンデンサは任意に設計できる。即ち、第1のインダクタ25を構成する巻き線29の巻数、径、材質並びにコンデンサ26を構成する電極36の面積、形状、個数、材質等は、LC共振器Aに求められる周波数特性に応じて適宜設計される。
【0029】
ボンディングワイヤインダクタBは基板上に形成された複数の導線パターン32とボンディングワイヤ34からなる。基板の絶縁膜の上には複数の直線状の導線パターン32が平行かつ非連続的に形成されている。各導線パターン32の終端にはボンディングパッド32aが形成されている。この導線パターン32は複数のものが非連続的であり、かつそれらをボンディングワイヤ34で直列的に接続可能であれば、その形状、模様は任意に設計できる。例えば、導線パターンとして波状や弧状のものを採用することもできる。
ボンディングワイヤ32は隣り合う導線パターン32においてより離隔したボンディングパッド32aを繋ぐことにより、導線パターン32を直列的に接続する。接続する導線パターン32を選択することによりボンディングワイヤインダクタBの長さが調整され、もってそのインダクタンスが制御される。
このボンディングワイヤインダクタBはLC共振器Aの入力側に直列的に接続される。ボンディングワイヤインダクタンスBとLC共振器Aとにより新たなLC共振回路が形成され、これがアンテナの機能を有する。
図1の例ではSMAコネクタへ直接接続されているが、半導体装置においては集積回路部の入出力ポートに接続される。
【0030】
図3は、図1の半導体装置1の(LC共振器A及びボンディングワイヤインダクタB(ボンディングワイヤ34:9本構成の場合))の高周波特性で、スミスチャート上にプロットしたインピーダンス特性である。
図4は、同じく、図1の例においてボンディングワイヤがゼロのとき、即ちLC共振器Aのみの高周波特性を示す。
なお、LC共振器Aにおいてスパイラルインダ25の巻き数は4.5ターン、線幅は30μm、線間隔は5μmである。コンデンサ26において下部電極の半径は150μm、上部電極の半径は180μm、上下電極の間には0.5μm厚さの酸化シリコン膜が形成される。この酸化シリコン膜はTEOS由来である。
また、ボンディングワイヤインダクタBにおいて配線パターンの線幅は30μmであり、線間隔は300μmとした。ボンディングワイヤ34には直径30μmの金線を使用した。
【0031】
図5は第1の実施形態の半導体装置1の高周波特性で、ボンディングワイヤとアンテナの入力側反射特性S11を示した図である。図中、ボンディングワイヤ34の本数は0〜9で示している。なお、ボンディングワイヤはLC共振器A側から順次懸架され、最後の導線パターンにおいてボンディングワイヤがつながれていないボンディングパッドとSMAコネクタの信号ターミナルとが連結される。
図5の結果より、ボンディングワイヤの懸架数により、アンテナの入力側反射係数S11が変化すること、並びにその極小値が動作周波数で変化することがわかる。反射係数S11、が極小値を示す周波数帯域がアンテナの動作周波数帯域になり、かつ極小値が小さい程、優れたアンテナ特性を示す。
図6はアンテナの動作周波数とボンディングワイヤの本数との関係を示す。図6の結果から、ボンディングワイヤの1本あたりで動作周波数を約100MHz変化させられることがわかる。
【0032】
図7は図1及び図2に示すLC共振器Aにおいてその終端が解放(OPENの状態)の場合、ボンディングワイヤインダクタBにおいてワイヤボンディングの懸架数数を変えても周波数特性が大きく変化しないことを示している。
即ち、LC共振器Aの終端側をアースに接続することにより、入力側反射係数S11が大幅に低減されることがわかる。
【0033】
図8はLC共振器Aの終端側をアースに接続した時のアンテナの入力側反射係数S11の周波数特性を示したものである(ボンディングワイヤの数:9本)。左下図は、スミスチャート表示で、点線丸印が水平軸の中心(入力側反射係数が最小になる理想の点)に近く、送・受信側回路とアンテナとの送・受が円滑になることを示している。下図の入力側反射特性(定在波比SWRの周波数特性)、上図の入力側反射係数S11の周波数特性もアース接続のないもの(図9参照)に比べて大幅に改善されていることを示している。
【0034】
図9はLC共振器Aの終端側をアースに接続していない時の入力側反射係数S11の周波数特性を示したもので、左下図は、スミスチャート表示で、点線丸印が水平軸の中心(入力側反射係数が最小になる理想の点)から距離があることを示している。右下図は入力側反射特性を定在波比SWR(Standing Wave Ratio)の周波数特性を示したもの、上図は入力側反射係数S11の周波数特性を示したもので、いずれも図8に示す同様な特性と比べて悪くなっている。
【0035】
次に、集積回路部としてのCMOS集積回路領域10aと、LC共振器A及びボンディングワイヤインダクタBからなるオンチップ・チューナブルアンテナ領域10bとを備える半導体装置10の製造方法を図10〜図16に基づき説明する。
【0036】
図10は、汎用的なCMOS製造プロセスによって、Si半導体基板(n型Si(100))11にLOCOS(Local Oxidation of Silicon)酸化膜15が形成された状態を示す。図10において符号12はp−well、符号13はn−MOSのチャーネルストッパ、符号14はp−MOSのチャーネルストッパである。
次に、図11に示すように、CMOS集積回路10aのゲート電極16aおよびアンテナの平行平板型コンデンサ26の下部電極16cのためにLP−CVD(Low Pressure−Chemical Vapor Deposition)法でPoly−Si16を堆積する。
【0037】
図12に示す工程では、必要な部分だけ残すために、Si系RIE(Reactive Ion Etching)装置を用いて、Poly−Si16をパターニングする。図中、16aはゲート電極(Poly−Si)を示し、16bはスパイラルインダクタのターン配線用Poly−Siを示し、16cはコンデンサのPoly−Si下部電極をしめし、17はレジストを示す。
それから、図13に示すように、CMOS集積回路領域10aに、p−MOS(p-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ18を形成するためには、B(ボロン)のイオン注入を行う。
【0038】
同様に、図14に示すように、CMOS集積回路領域10aに、n−MOS(n-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ19を形成するためには、P(リン)のイオン注入を行う。
【0039】
図15に示すように、アンテナのコンデンサ26の絶縁膜を形成するため、LP−CVD法でTEOS21bを用いてSi酸化膜SiO2膜を形成する。また、CMOS集積回路10aのソース・ドレイン電極のコンタクトホール20およびアンテナのPoly−Si電極16cのコンデンサのコンタクトホール20bを形成する。
【0040】
図16に示すように、CMOSプロセスのAl配線29〜33工程を使って、アンテナのスパイラルインダクタ25および導電パターン32およびパッド32a領域を形成する。なお、該ボンディングワイヤインダクタBは、従来のオンチップアンテナ10b形成の本質的な難しさを解決する役割を成している。即ち、半導体基板11上にCMOS集積回路10aに加えてオンチップアンテナ10bであるLC共振器Aを集積化する際には、設計・作製したコンデンサ26、インダクタ25特性に加えて寄生成分、特に寄生容量の発生を回避することが極めて難しく、かつその値を正しく評価・解析・設計することが困難な状況にある。このため、アンテナの周波数特性などが設計値と大幅にずれる。そこで、寄生成分の発生を前提にしたLC共振器Aの特性に該ボンディングワイヤインダクタBの特性を合成することで、周波数の制御が可能でかつ優れた高周波特性を有するオンチップアンテナ10bが実現できる。
【0041】
図17は第1の実施例の半導体装置10のスパイラルインダクタ25を示す平面図である。スパイラルインダクタ25の巻き数は4.5ターン29、各ターン29の線幅は30μm、線間隔は5μmとした。
【0042】
図18は上記の平面図にA−A面から見た断面図である。断面図に示すように、スパイラルインダクタ25の一番内側のターン38は、下層のPoly−Si16bを用いて、外側の配線35に繋がれている。
【0043】
図19は第1の実施形態の半導体装置10のコンデンサ26を示す平面図である。三つのコンデンサ26は並列に配置され、図20に示すように、Poly−Siからなる下部電極16cの半径は150μmであり、Alからなる上部電極30の半径は180μmとなっている。コンデンサ26の絶縁体は0.5μm厚さのSiO2(TEOS)酸化膜21bである。
【0044】
図21は第1の実施形態の半導体装置10のボンディングワイヤインダクタBを示す平面図である。ボンディングワイヤインダクタBの導線パターン32の線幅は30μmであり、導線パターン32の間隔は300μmで設計した。
【0045】
図22は図21におけるC−C面から見た断面図である。この断面図に示すように、導線パターン32を直径30μmのワイヤ34(Au)で結んで、ボンディングワイヤインダクタBが構成される。
【0046】
このようにして形成された半導体装置10においては、CMOS集積回路領域10aとオンチップ・チューナブルアンテナ領域10bにおいてSiO2(LOCOS)層(第1の絶縁層)とSiO2(TEOS)(第2の絶縁層)とは共有されている。
【実施例2】
【0047】
本発明の第2実施形態として、CMOS集積回路10aのリングオシレータ型VCOと送信用オンチップ・チューナブルアンテナ10bとして一体化プロセスで製造したユビキタス・マイクロセンサノードの例について説明する。
【0048】
図23に示すように、人間の体に装着するため、センサチップだけは超小型化することが必要不可欠であるが、まだ不十分なため実現できないので、これを可能にする送受信オンチップ・チューナブルアンテナ10bが必要不可欠となっている。
【0049】
本発明はセンサチップの半導体プロセスの製造後に、例えば送信用の所望周波数である300MHzあるいは受信用の所望周波数800MHzへ簡単に調整することが可能であることを特徴としたものである。
【0050】
これによって、例えば動作周波数帯域800MHz携帯電話からの電波を本発明の受信用オンチップ・チューナブルアンテナ10b(受信用の周波数800MHz帯)で受信できることも可能になる。
【0051】
この受信用の周波数800MHz帯を調整するためには、図23に示すように、本発明で提供しているLC共振器A(終端をアースに接続)と隣接した5本のボンディングワイヤインダクタBのオンチップ・チューナブルアンテナ10bを用いて実現することが可能である。
【0052】
このため、このオンチップ・チューナブルアンテナ10bで受信した電力を、チップ上に別途設計・製作したワイヤレス給電・電源回路により電圧を発生させて、バッテリーレスでセンサチップを駆動することが可能になる。
【0053】
図24は、センサチップから300MHz帯の送信用オンチップ・チューナブルアンテナ10bを通して電波が飛ばせたことを示している。
【0054】
図25及び図26は、センサチップの信号を送信用オンチップ・チューナブルアンテナ10bから発射されてきた電波を、受信用オンチップ・チューナブルアンテナ10bで受信できたことを示している。
【実施例3】
【0055】
本発明の第3実施例として、図27及び図28に示すUHF帯の電波を利用したキーレスエントリシステムの基板に内蔵するための「オンチップ・チューナブルアンテナ10b」をパッケージに実装した例について説明する。
【0056】
キーレスエントリシステムにおいて、例えばPLL−ICというRF部品と本発明のオンチップ・チューナブルアンテナ10bを同一基板上に実装するためには、該アンテナをIC専用パッケージに実装すれば、はんだ付けなどで実現が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、民間企業で現在実用化されているサイズで(本発明の約10倍)、かつハイブリッド型の送受信装置で行われている評価基準に沿って、インピーダンス特性および電波特性を測定し、仕様を満たす特性を得ている。今後、自動車のスマートキーにおけるマイクロアンテナとして製品化される可能性がある。そのための製品サイズの要求である現行品の約1/10という仕様は、現時点で満たしている。
【0058】
本発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10 半導体装置
10aCMOS集積回路領域
10b オンチップ・チューナブルアンテナ領域
11 半導体基板(n 型 Si(100))
12 p−well領域
13 n−MOSのチャーネルストッパ
14 p−MOSのチャーネルストッパ
15 SiO2絶縁膜(CMOS酸化膜)
15a ゲート絶縁膜(SiO2)
16 Poly−Si膜
16a ゲート電極(Poly−Si)
16b スパイラルインダクタのターン配線用Poly−Si
16c コンデンサのPoly−Si下部電極
17 レジスト
18 p−MOSのソース・ドレイン領域
18a チャーネルストッパ(p+)
19 n−MOSのソース・ドレイン領域
19a チャーネルストッパ(n+)
20 ソース・ドレイン電極のコンタクトホール
20a スパイラスインダクタのターン配線用コンタクトホール
21 SiO2絶縁膜(TEOS膜)
21aスパイラルインダクタ領域におけるSiO2絶縁膜(TEOS膜)
21b コンデンサ電極間のSiO2絶縁膜(TEOS膜)
21c 側壁絶縁膜
22 p−MOS及びn−MOSの配線
23 p−MOSトランジスタ
24 n−MOSトランジスタ
25 LC共振器のスパイラルインダクタ
26 LC共振器のコンデンサ
27 ボンディングワイヤインダクタ
28 ソース電極(Al)
28aドレイン電極(Al)
29 スパイラルインダクタのターン配線(Al)
29a スパイラルインダクタの配線(Al)
30 コンデンサの上部電極(Al)
31 コンデンサのPoly-Si下部電極用Al
32 ボンディングパッド間に予め製作したAl配線
32a ボンディングパッド
33 オンチップアンテナ全体のグランド配線
34 インダクタを構成するボンディングワイヤ(Au)
35 スパイラルインダクタの外側配線(Al)
36 コンデンサ電極
37 アンテナの終端をアースに接続するためのワイヤ(Au)
38 スパイラルインダクタの一番内側のターン(Al)
39 コンデンサのPoly−Si下部電極のコンタクトホール
40 GND(グラウンド)に落すピン
41 オンチップ・チューナブルアンテナに給電するピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、
前記アンテナ部と前記集積回路部との間に非連続的な複数の導線パターンを前記第1のプロセスにおいて形成し、
前記第1のプロセスの終了後に、前記複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的となるようにボンディングワイヤを懸架する周波数特性の調整方法。
【請求項2】
Si半導体基板へ集積回路部とアンテナ部とを形成する第1のプロセスであって、前記集積回路部と前記アンテナ部との間に非連続的な複数の導線パターンを形成するステップを含む第1のプロセスと、
該第1のプロセス終了後に、前記複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的になるようにボンディングワイヤを懸架する第2のプロセスと、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項3】
Si半導体基板と、
該Si半導体基板に対して第1の絶縁膜を共有する集積回路部とアンテナ部とを備え、
前記アンテナ部はLC共振回路を有し、
該LC共振回路の終端側はアースされ、
該LC共振回路と前記集積回路部との間には第2のインダクタが備えられ、
該第2のインダクタは前記第1の絶縁膜の上に形成された複数の非連続導線パターンと、該導線パターンの一部又は全部を直列的につなぐボンディングワイヤとを備える半導体装置。
【請求項4】
前記ボンディングワイヤは該ボンディングワイヤが接続される前記導線パターンより長い、ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記導線パターンと前記LC共振回路とは同時に形成されたものである、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の半導体装置。
【請求項6】
Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、
前記アンテナ部と前記集積回路部との間に第2のインダクタを前記第1のプロセス中に形成し、
前記第1のプロセス終了後に、前記第2のインダクタを分割して、分割した一部を前記アンテナ部と前記集積回路部とに連結する周波数特性の調整方法。
【請求項1】
Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、
前記アンテナ部と前記集積回路部との間に非連続的な複数の導線パターンを前記第1のプロセスにおいて形成し、
前記第1のプロセスの終了後に、前記複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的となるようにボンディングワイヤを懸架する周波数特性の調整方法。
【請求項2】
Si半導体基板へ集積回路部とアンテナ部とを形成する第1のプロセスであって、前記集積回路部と前記アンテナ部との間に非連続的な複数の導線パターンを形成するステップを含む第1のプロセスと、
該第1のプロセス終了後に、前記複数の導線パターンの一部又は全部を選択して、選択した前記導線パターンが直列的になるようにボンディングワイヤを懸架する第2のプロセスと、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項3】
Si半導体基板と、
該Si半導体基板に対して第1の絶縁膜を共有する集積回路部とアンテナ部とを備え、
前記アンテナ部はLC共振回路を有し、
該LC共振回路の終端側はアースされ、
該LC共振回路と前記集積回路部との間には第2のインダクタが備えられ、
該第2のインダクタは前記第1の絶縁膜の上に形成された複数の非連続導線パターンと、該導線パターンの一部又は全部を直列的につなぐボンディングワイヤとを備える半導体装置。
【請求項4】
前記ボンディングワイヤは該ボンディングワイヤが接続される前記導線パターンより長い、ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記導線パターンと前記LC共振回路とは同時に形成されたものである、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の半導体装置。
【請求項6】
Si半導体基板に対して第1のプロセスで形成される集積回路部及びアンテナ部を備える半導体装置において、該アンテナ部の周波数特性を調整する方法であって、
前記アンテナ部と前記集積回路部との間に第2のインダクタを前記第1のプロセス中に形成し、
前記第1のプロセス終了後に、前記第2のインダクタを分割して、分割した一部を前記アンテナ部と前記集積回路部とに連結する周波数特性の調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−80016(P2012−80016A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226062(P2010−226062)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】
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