説明

呼気分析装置

【課題】被験者の呼気サンプルに含まれる揮発性物質の検出および分析システムにおいて、屋外等の外部環境から受ける影響を最小化し、耐久性を向上したシステムを提供する。
【解決手段】揮発性物質の特定の吸光ピークの波長レンジに調整された少なくとも1つの赤外線光源2と、赤外線のコリメーション用の複数の反射面4、5と、吸光ピークに相当する波長間隔における赤外線の透過光に対応する複数の電気出力信号を提供する少なくとも1つの検出器8、9と、赤外線光源、反射面および検出器の位置を決定する機械的な支持構造6、7を含み呼気サンプルの受取および廃棄を行うよう構成され呼気サンプルを赤外線に曝す少なくとも1つの測定セル17と、揮発性物質の赤外線吸収スペクトルに関する予めプログラムされた情報に従って電機出力信号を分析可能な少なくとも1つの電子信号処理装置12とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者から得られる呼気サンプル中の物質の検出および分析に関するものである。本発明の重要な応用分野の1つに、車両運転者のアルコール濃度の測定があるが、この応用分野は、呼気サンプル中の揮発性物質の検出であれば、いかなる理由によるものも含む。技術的には、特有の赤外線吸収特性を示す揮発性物質に対して本発明を用い、これによって、それら揮発性物質の判定および定量化をするのが好ましい。
【背景技術】
【0002】
被験者の肺から吐かれた呼気の純粋なサンプルの組成は、その被験者の血液の組成に密接に関連していることが一般的に知られている。これは、通常の肺組織の表面積が著しく大きく、毛細血管の網目と一体の肺胞を含んでいることにより、効率的なガス交換を実現しているためである。終末呼気ガス濃度、すなわち呼吸周期の最後に得られるガス濃度値の測定は、したがって、臨床生理学において、動脈血採取に取って代わりつつある。さらに、呼気採取は現在、車両運転者の血中アルコール濃度の測定を証拠立てる方法として、多くの国で採用されつつある。
【0003】
呼気採取の信頼性、迅速性および簡易性は、無論、重要な問題である。例えばアルコール・インターロック装置の場合、誤った分析結果を出力するリスクは、最小限に抑えるべきである。高精度の分析結果を得るには、通常、多量の呼気サンプルが必要となる。しかしその反面、サンプル量を少なくして迅速な結果を得るという要求には反することとなってしまう。ごく少量の呼気サンプルを採取しても、実際には、アルコールの陽性反応が得られるだけであるが、素面の運転者は、煩雑で時間のかかる検査を受け入れようとはしない。さらに面倒なことに、かかる装置は、極限環境条件下でも正確さを保って作動しなければならない。
【0004】
呼気採取は一般的にマウスピースを用いて行われ、これによって呼気サンプルの純粋さを確保している。典型的には、マウスピースは、センサと呼気サンプルとを接触させるための開口を設けたポリマ製の管部材で構成されている。マウスピースは、衛生上の理由から、使い捨ての部材であり、それらを使用すること、およびそれらにかかるコストが、呼気分析装置を例えばアルコール・インターロックシステムに幅広く用いることのできない、大きな制約となってしまっている。
【0005】
最近、被験者近辺の二酸化炭素と、他の関心ある物質とを同時測定することにより、その物質の血中濃度の定量測定の可能性が、新たに証明された。つまり、外部にて測定された2つの濃度の比に、二酸化炭素の肺胞濃度を乗じることによって、その物質の実際の血中濃度を推定できることが証明された。肺胞CO濃度の変動性は小さく、高度に予測可能であるため、相当の正確さで推定可能である。この新たな技術によれば、非常に高い測定精度が要求される場合以外、マウスピースを用いる必要がない。
【0006】
多くのガス状の物質が、約1〜10μmの範囲の赤外波長において、特有の吸収スペクトルを示すことも、一般的に知られている。つまり、吸収分光法は、未知のガスサンプルの組成を決定するための主要なツールである。これは、分子振動のエネルギーレベル間に存在する量子遷移のためである。二酸化炭素は、例えば、約4.26μmの波長において強力な吸光ピークを示し、これは振動の非対称伸縮モードに相当し、このモードでは、中央の炭素原子は、分子の直線軸に沿った2つの酸素原子に対して反対方向に振動する。エチルアルコールは波長3.4μmおよび9.4μmにおいて特有の吸光ピークを示し、これは分子振動状態にも相当する。水蒸気と比較してみると、水蒸気が吸光ピークを示す波長は2.8μmおよび6.2μmである。水蒸気の測定は、絶対湿度の測定に等しい。相対湿度は、温度が分かっていれば、絶対湿度から算出可能である。複数の呼気サンプルの湿度を同時に測定することは、後述するように、興味ある問題である。
【0007】
赤外吸収分光法は、光源から照射される赤外線のうち、呼気サンプルを透過して検出器に到達する透過光の強度測定を含んでいる。一般的には、光分散素子も赤外線の経路に導入され、これにより、所定間隔の波長を有する照射光だけが検出器まで到達する。光分散素子としては、回折格子や干渉フィルタを用いることができる。入射角度を変更することによって、透過可能な波長間隔を変更可能である。スキャニング分光器を用いる場合は、波長間隔は連続的にスキャンされ、これによって一定範囲の波長間隔を分析可能である。このように、検出された複数の吸光ピークは、1つ以上の物質に対応している。特定の物質だけを観測する場合、通常、光分散素子として干渉フィルタを用い、光分散素子は、それらの物質の吸光ピークに対応する透過光特性を有する。現在の干渉フィルタは優れた特性を有し、低コストで製造可能であり、例えば熱電対型の赤外線検出器に一体化することが可能である。
【0008】
光音響分光器の場合は、一定の吸光ピークに対応するフィルタを有するパルス光源が用いられている。光吸収物質に直面すると、照射光のパルス化と同時に発生するヒートパルスが、感応性マイクロフォンによって検出される。この方式は、好ましいノイズ特性を利用することにより、非常に濃度の低い物質も検出できる点で魅力的である。他方、特に複数の物質を扱うときには、却って複雑でコストがかかる方式となってしまう。
【0009】
透過光の測定は、信頼性の観点からは有利な方法である。透過分光器は、あらゆる損傷しやすい要素の自己観測機能を有してよい。例えば、赤外線光源からの出力を観測し、長期間の使用によっていずれ生じるドリフトを補償することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在の赤外線分光器をもってしても未解決の技術的な問題は、高い測定精度と分析結果取得の迅速性とを両立させることである。理想的には、かかるシステムは、通常の人間の知覚と同等の速さ、すなわち数秒以内に応答し、復帰すべきである。他方、光吸収性が低い物質を高い測定精度で測定する必要上、数十センチメートル程度の比較的長い赤外線の経路を要することが推測される。既に指摘したように、これらの要求は相反するものである。
【0011】
また、被験者から呼気サンプルを収集および分析することについて、法的な問題もある。システムの信頼性と、最終的なエラーの追跡可能性に対する要求も非常に高い。妥当な測定が行われるように分析工程を操作するよう試みるべきである。
【0012】
呼気サンプルの分析、ならびに、同時に行われるCOの測定に、とりわけ関連する問題は、呼気サンプル中のCO濃度が一般的にパーセンテージの範囲にある一方、他の物質の濃度が一般的にそれより数桁も小さいという事実である。そこでクロス感度、すなわち様々な測定間における相互依存は最小限にする必要があるが、測定対象である物質間の濃度が大きく異なるため、問題が複雑化している。
【0013】
呼気採取を屋外で、しかも極限環境下で行うことは、興味深い問題である。現在の赤外線分光器は、主として実験室などの環境下で用いられているからである。したがって本発明は、環境から受ける影響を最小化し、極限環境下でも耐久性を向上させることを目的とする。
【0014】
また本発明は、本発明によるシステムによって、高い生産量を非常に安い製造コストで実現することを目的とする。物理的には、本システムは、手で持てる大きさの独立した装置として、あるいは、例えば車両に組み込まれたシステムとして使用可能なものとすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上述の問題を直接的に解決しようとするものであり、とりわけ、被験者近辺の自由空気中から収集された呼気サンプルの分析を目的とするものである。ただし本発明による方法およびシステムは、収集用マウスピースを用いた純粋な呼気サンプルの分析にも、同様に適用可能である。
【0016】
本発明による呼気分析装置は、分析対象の物質が吸光ピークを示す波長レンジに調節された少なくとも1つの赤外線光源と、反射面と、波長分散素子と、特定の波長間隔における透過光に相当する出力信号を生成する検出器と、赤外線吸収スペクトルに関する事前にプログラムされた情報についての信号分析が可能な電子信号処理装置と、呼気サンプルを即座に光に曝すことができるよう構成された支持構造とを含む。
【0017】
上記の支持構造は、赤外線が透過する測定セルを画成していて、この測定セルにより呼気サンプルは、最小の通過時間にて収集および排出される。この通過時間によって、本システムの応答・復帰時間が決定される。応答時間は検出および分析処理によって決まる。復帰時間は測定セルから呼気サンプルを洗い流す処理に関連する。これらの処理が両方とも完了して初めて、本システムは、次の呼気サンプルを受け入れる準備が整う。一般的には、準備が整うか否かは、安定した入力信号が得られるか否かに依存する。よって、ユーザや被験者に呼気サンプルを供給するよう指示を与えることとなる。
【0018】
測定セルは、被験者近辺の呼気の流れに接触する範囲内に設置される。本発明によるシステムの、物質の検出および分析に関する応答は、実質的に即座に得られ、数秒しかかからない。測定セルは一般的には管構造を有し、通過ガスの流れを妨げないよう、十分な大きさの入口および出口を備えている。流れが停滞する最後の部分は、赤外線の透過光路の10%を超えるものであってはならない。本システムは、被験者の近辺から支持構造まで呼気サンプルを迅速に移送する移送手段も含んでよい。
【0019】
呼気サンプルが測定セルを通過する通過時間によって、システムの応答・復帰時間τrrが決まる。その計算のおおよその関係式は以下の通りである。
【0020】
τrr=L/K・v (1)
Lは測定セルの物理的な長さであり、vは呼気サンプルの流速、Kは流入速度と流出速度との比である。壁の薄い管構造が用いられる理想的なケースでは、Kは1に近づく。現実に、一般的なシステム設計ではK=0.1〜0.2となる。L=100mmおよびv=1m/秒を代入するとτrr=0.5〜1秒となる。システムの応答・復帰時間を、一般的な被験者の視覚の反応時間に調和させるという要求は、このように、現実的なものになると考えられる。
【0021】
応答時間に影響を与える可能性のある他の要因としては、赤外線光源の調節の周期性がある。しかし、赤外線光源として高温フィラメントを用いる場合であっても、調節時間は、通常の被験者の視覚の反応時間より著しく短くすることが可能である。
【0022】
入力および出力される赤外線の強度、すなわち測定セルのIおよびIの関係は次の式で与えられる。
【0023】
=I・exp(−C・αλ・l) (2)
lは赤外線の経路の長さ、Cは濃度、αλは波長λにおけるその物質の吸光係数である。IおよびIを測定し、既知の値αλおよびlを用いることによって、物質の濃度Cを求めることが可能である。この計算の信頼性は、次の方法で著しく信頼性を向上させることが可能である。すなわち、種類および濃度の両方が完全に判明している、あるいは部分的に判明している、基準となる物質を含めた複数の物質について並行して計算を行う方法である。呼気サンプルは常に水蒸気と二酸化炭素とを含んでいるため、これらを、上述の方法における基準となる物質としてよい。
【0024】
赤外線の経路長lは、測定セルの物理的な寸法より著しく大きくするとよい。これは、反射面すなわちミラーを配置することによって実現可能である。好適には、複数の反射面を少なくとも部分的に凹状にし、反射係数(反射光と入射光の強度比)が0.95を超えるようにするとよい。その結果、赤外線は少なくとも部分的にコリメートされる。
【0025】
光分散素子は、回折格子、干渉フィルタ、あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。光分散素子は、特有の吸収特性を有する母材、例えば、規模の大きな回折または干渉を抑制する母材の一部としてもよい。MEMS技術(micro electro-mechanical systems)を用いれば、高精度の回折格子の光散乱特性を電子工学的に制御可能である。かかるデバイスを用いれば、的確なスペクトル特性を正確に調節可能であり、様々なモード間のスイッチングも可能である。
【0026】
一般的には複数の検出素子を用い、熱電対や焦電素子を用いるとよい。本発明による最良のシステムの精度は、環境による干渉よりむしろ、検出素子内にもともと存在する熱雑音によって制限される。
【0027】
電子信号処理装置はさらに、揮発性または不揮発性の情報記録用のメモリ装置と、複数の物質についてアルゴリズム(式(2))を実行するなど、予めプログラムされた論理演算および算術計算の順次処理を実行する装置とを含む。これらの処理は一般的には従来のコンピュータアーキテクチャを用いて順番に実行されるが、システムの応答時間をさほど延長するものではない。
【0028】
本発明による方法では、呼気採取ポイントは、被験者の口/鼻の近辺に設定してよいが、口/鼻に物理的に接触する必要はない。好適には、多変量測定セルの適切な位置調節も含めて行い、これによって呼気に多変量測定セルを通過させるとよい。このとき被験者は積極的な協力をしてもよいししなくてもよい。呼気サンプルは、測定ポイントに到達すると、周囲の空気によってやや希釈される。呼気の特徴、例えば、流速、温度、湿度および二酸化炭素濃度などの経時変化する特性は分析し、特定の事象、すなわちその呼気サンプルが是か非かによって、呼気サンプルの分類を行う。
【0029】
呼気採取は、特定の検知エリアに向かって被験者に息を吐くよう指示を与えて行ってもよい。かかる方法によれば、協力的な被験者の場合、力のこもった呼気が得られ、20〜50cmの距離で0.5〜1.5リットルの呼気が採取可能である。非協力的な被験者からの消極的な呼気採取も可能であるが、一般的には10〜20cmの、非常に接近した状態での呼気採取が必要である。これは、力のこもらない呼気の場合、呼気の流速および体積は小さくなるからである。
【0030】
上述の呼気採取手順によれば、呼気採取装置に不可欠であったマウスピースは不要である。希釈された呼気サンプルを用いて、肺胞の二酸化炭素濃度を適切に予測できると考えられる。測定精度を高める必要がある場合には、上述の手順に続いて、1つのマウスピースを用い、これによって、予測から生じる変動を除去してよい。
【0031】
判定すべき未知の物質はエチルアルコールとしてもよいし、被験者の健康および挙動に影響を与えるいかなる薬品としてもよい。既に述べたように、二酸化炭素および水蒸気の濃度測定は、基準として含めるとよい。本システムは、既知の物質による吸収を行うことなく、一定の赤外波長間隔において作動する他の基準検出器を含んでもよい。かかる検出器を用いることにより、例えば、凝縮した水滴や粉塵が反射面に溜まることによって生じる、揮発性または不揮発性の信号損失を検出する役に立つ。このような基準となる検出器にとって適切な波長間隔は3.9μmであり、これは、検出の対象となるほとんどすべての物質によっても影響を受けない。
【0032】
また本発明によるシステムは、表示手段や、信号通信用の他の手段を含む。かかる手段は部分的に被験者に向けてもよく、これによって、力のこもった呼気による測定セルへの呼気サンプルを提供する。
【0033】
好適には、支持構造は、呼気サンプルを受ける少なくとも1つの開口が設けられている、積極的な作動状態と、赤外線光源、反射面、光分散素子および検出器が周囲へ露出しないように守られている、消極的な作動状態との間を変形可能である。この変形は、電気機械的な手段によって行うのが好ましく、これにより、上記の作動状態いずれかの選択は、部分的に、あるいは全体的に、自動化可能である。
【0034】
本発明によるシステムは、広範な温度範囲にわたって作動するように設計されている。呼気サンプルが反射面に水滴として凝縮したり氷となって付着したりすることは、これら反射面を加熱することによって防止可能である。この加熱は、抵抗皮膜としても機能させてよい反射面に電流を流すことで、実現してよい。著しく高温の条件下で作動させることは、各検出器の熱雑音によって制限されるおそれがある。この点、小型のペルチェ素子を用いて熱電冷却することにより、作動可能な温度範囲を拡張可能である。
【0035】
本システムはすべての要素を収容する1つの収容体を含むのが好ましく、これによって、限定された物理的に一体の装置が形成される。支持構造は、収容体の不可欠な一部としてよい。支持構造は、好ましくは、マウスピースに接続される、漏れを防いだ接続部として構成すべきである。
【0036】
本システムでは、複数の物質を判定するにあたって生じるクロス感度は最小となる。これは、システム設計の最適化によって実現する。すなわち、予想される濃度範囲に赤外線の経路長が適合するよう、各要素を組み合わせる。赤外線の角度分布も重要であり、なぜなら、これは分散特性に影響を及ぼすからである。他の重要な要因としては、光分散素子のスペクトル幅や、透過窓の外における光分散素子の赤外線の抑制がある。
【0037】
有利には、本システムによれば、上気道または下気道のいずれから特定の物質が発せられているのかを判断可能である。通常の成人被験者の場合、上気道は約150mlの体積を有し、これは、呼気全体の体積の約30%に相当する。力のこもった呼気および力のこもらない呼気のいずれにおいても、上気道による寄与は、絶対尺度においてほとんど変化しない。下気道から発せられる呼気はCO濃度と湿度の両方が上昇している一方、上気道から吐かれる呼気は、通常、湿度は上昇しているもののCO濃度は上昇しない。
【0038】
有利には、重複判定機能を設けることによって、本システムを、一般的なエラー発生のメカニズムに対する、あるいは意図的な操作による、自己検査可能なものにするとよい。
【0039】
有利には、支持構造は、ポリマの射出成形によって製造される少数の部品から組み立てられるものとするのがよい。
【0040】
本発明のある側面によれば、呼気サンプル中の少なくとも1つの揮発性物質の検出を行うシステムが提供されることとなる。本システムは、被験者からの呼気が通過可能な流路を画成する1つ以上の面と、赤外線光源とを含む。上記の1つ以上の面は、赤外線光源から照射される赤外線の少なくとも一部を実質的に反射し、上記の赤外線光源は、赤外線光源から照射される赤外線の少なくとも一部が上記の呼気流路を通過し、少なくとも1つの面によって多重に反射されるように構成されている。本システムはさらに少なくとも1つの検出器を含み、これは、赤外線光源から照射され上記の1つ以上の面によって多重反射された後の赤外線を受け、赤外線光源から照射されて以来吸収された赤外線の一部の分析が可能となるよう、配置されている。
【0041】
有利には、呼気の流路は十分に大きな断面を有し、これによって、流路を通過する呼気を実質的に層流にし、上述の呼気の流路内の滞流域が、呼気の流路を通過した透過光路の10%以上にならないようにする。
【0042】
好適には、本システムは第1の検出器を含み、これは、赤外線光源から照射され呼気の流路に沿った第1の距離を通過した後の赤外線を受け、赤外線光源から照射されて以来、COまたは水蒸気によって吸収された赤外線の一部の分析が可能となるよう、配置されている。本システムはまた、第2の検出器を含み、これは、赤外線光源から照射され呼気の流路に沿った第2の距離を通過した後の赤外線を受け、赤外線光源から照射されて以来、少なくとも1つの揮発性物質によって吸収された赤外線の一部の分析が可能となるよう、配置されている。
【0043】
第2の距離が第1の距離より長いと都合がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明によるシステムの1つの実施形態を、添付図面を参照しながら詳しく説明する。
【0045】
本発明によるシステムの1つの好適な実施形態の概略を図1に示す。本システムのすべての素子は、物理的な収容体1の内部に閉じ込められている。収容体1のサイズは比較的小さく、小型化されていることと、収容される素子のほとんどが小さなサイズであることから、一般的には100mm×50mm×40mmを超えない。収容体は、移動可能な、例えば手で持てる大きさの装置として、あるいは、例えば車両に固定された装置として構成および設計可能である。
【0046】
機械的な支持構造6、7によって測定セル17は画成されていて、測定セル17は、高い赤外反射率を有する反射面4、5を有し、これらは例えば金皮膜を用いたプレートであり、0.95以上の赤外線反射係数を示すものとする。支持構造6、7は、精密な位置調節手段として用いられ、これによって、赤外線光源2、凹状反射部3、例えば干渉フィルタ13、14などの光分散素子、例えば熱電対や焦電素子などの検出器8、9が位置調節される。
【0047】
支持構造6、7を含む測定セル17の光学的な配置によって、反射面4、5の間にはジグザグの点線で示すように多重反射が生じる。凹状ミラー3によって、赤外線光源2から生じた赤外線はコリメートされた光線となる。COや水蒸気を検出するように構成された第1の干渉フィルタ13を含む第1の検出器8は、比較的短い、一般的には10cm程度の経路を通過した後の赤外線を受けるよう、配置されている。エチルアルコールを検出するように構成された第2の干渉フィルタ14を含む第2の検出器9は、比較的長い、一般的には15〜50cm程度の経路を通過した後の赤外線を受けるよう、配置されている。これらの経路の長さは、一般的な呼気サンプル中に含まれていると想定される物質濃度の範囲に適合するよう、決定されている。また、これらの経路の長さは、それぞれの物質の吸光係数に適合するよう、決定されている。10回以上の反射を用いれば、物理的なサイズを一桁小さくした支持構造内に赤外線の経路を閉じ込めることが可能である。好ましい実装方法は、互いに対向する複数の凹状反射面を用いることであり、各反射面は、対向する1つの反射面の曲率半径の中心と、1点において一致する。
【0048】
収容体1および測定セル17は、一般的には管形状であり、入口および出口(図1における左右)を有し、入口および出口の断面積は、測定セル17内に層流を維持するほど十分に大きい。赤外線光源2およびミラー3によって設けられるもののような凹部は、滞流区域として作用し、これは、流れの通過時間に逆効果を及ぼし、その結果、システムの応答・復帰時間にも悪影響を及ぼしてしまう。こうした凹部は最小化すべきであり、透過光路の10%を越えないようにすべきである。
【0049】
呼気サンプルは、図1の左側の矢印で示すように、支持構造6、7を呼気サンプルが通過可能とすることによって、収集される。ポンプ16によって、呼気流を積極的に増加させることが可能であり、これにより、気流の運搬によって生じる、最終的な応答の遅延を最小化する。作動条件にあるとき、支持構造6、7は、赤外線への曝しが行われる領域の左右両側において、比較的大きな開口を有する。これは呼気流の抵抗を最小にするために必要な措置である。その一方、粉塵その他の汚染物質を支持構造に進入させてしまうことにもなる。かかる汚染により、本システムの作動性能が低下するおそれがある。したがって、支持構造6、7には開閉を行う蓋10、11が設けられ、これにより、呼気の採取中を除いて、常に、いかなる汚染物質の進入も防止している。蓋10、11は、このように、支持構造を、積極的および消極的な作動状態のいずれかに変更する選択手段の役割を果たす。蓋10、11は、部分的あるいは完全に、電機機械的な手段で自動化するのが好ましい。
【0050】
本システムには電子信号処理装置12も設けられている。熱電対式または焦電式の検出器8、9からの信号は、一般的には10〜100μvの大きさであり、物質の吸収による透過光の減衰は、この信号のごくわずかだが損失になる。したがって、電子的なノイズおよび干渉を最小化して、適切な信号精度を得ることが必要である。好ましい技術は、赤外線光源を調節し、典型的には100000以上もの高い増幅率を有する同期増幅器を用いることである。
【0051】
赤外線光源の調節は、基本的には、これら光源の熱時定数によって制限される。レーザ光源およびダイオード光源は、高周波数で調節可能であるが、ほとんどの懸案の物質の吸光ピークが存在する3〜10μmの波長レンジでは、かかる光源の有用性は乏しい。黒体放射体は、10Hzに調節可能であり、これはシステム応答時間にとって満足のゆくものである。システム応答時間は、好ましくは、一般的な被験者の視覚的な刺激に対する反応時間、すなわち1秒以下にすべきである。かかる応答時間であれば、応答が実質上、即座になされたと被験者が感じるからである。10Hzのレンジでの調節は、多くの低周波数の検出器および増幅器において広く浸透している1/fノイズの観点からも適切なものである。
【0052】
信号処理にはさらに、アナログ−デジタル変換が含まれる。また、信号処理をマイクロプロセッサ環境で行い、これによって、順次的に行われる、高度に複雑な算術計算および論理演算を、装置中の揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいて行う。順次的な処理がこれに続き、これらの処理では、検出器8、9からの信号が、不揮発性または揮発性のメモリセルに保存された基準データと比較される。電子ユニット12は、回路基板上に複数の標準的な集積回路を含んでいるものとしてもよく、あるいは、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)のように、シリコンダイに全体を集積したものとしてもよい。
【0053】
表示手段15が設けられているのは、ユーザにコマンドまたは測定結果を伝えるためでもある。あるコマンドは被験者に対して、支持構造6、7に向かって力のこもった呼気を行うよう指示を与えることが可能である。これにより、実際の呼気採取を行うことができる。
【0054】
本システムは典型的には温度センサ18も含んでいて、温度センサは測定セル内の温度を測定する。温度センサは、その熱容量を小さくして応答時間を最短にするのが好ましく、抵抗型のもの、またはサーモエレメントとしてよい。温度センサは電子ユニット12に接続されていて、電子ユニットは信号を適切にフォーマットする。センサ18は発熱機能を含んでいてもよく、これによって、熱線風速計の原理を用いた気流速度の測定が可能になる。気流速度の測定は、赤外線光源3が不適切に気流に依存してしまうのを補償するために用いてよい。かかる補償は、計算アルゴリズム中に補償が設けられた、負帰還ループまたはオープンソリューションを含んでよい。
【0055】
本システムは冗長に設計されるのが好ましい。すなわち、クリティカルな重要変数は複数の処理で決定される。これにより、エラーのリスクを最小限になる。例えば、出力強度とスペクトル分布との観点からは、主たるエラーソースは、赤外線光源とそれに生じうる変動性とに関係している。特定の波長用に調整された、1つ以上の追加検出器を用いることにより、かかる変動性を、その発生から間髪入れずに検出し、警告信号を発することが可能となる。このような方法を用いれば、偶然または意図的な操作によって生じうる他のあらゆるタイプのエラーからシステムを保護することが可能となる。
【0056】
図1および上述の機能説明から、以下のことが言える。すなわち、本実施形態によるシステムは、汎用的な組立技術を用い、限られた数の素子で構成されたものである。使用する材料として高価なものを用いる必要はなく、あるいは、材料費が低廉になるよう、高価なものは少量にしてよい。
【0057】
図2は、赤外線波長レンジに調整した本システムの様々な構成要素の一般的な作動性能を示す図である。曲線20は、約600℃の温度で作動させた場合の、一般的な黒体光源の放射輝度を示す。この種の光源は、ブロードバンド光源として、比較的広範囲なレンジにわたって作動する。様々な温度下で作動する複数の赤外線光源を用いることにより、このレンジをさらに拡張可能である。
【0058】
曲線21は、研磨された金の反射率を波長の関数として示したものであり、約0.99の反射係数を示している。これと対応するアルミニウムの値は0.98である。これによれば、0.95程度以上の反射係数を有するものであれば、両方の材料に置換しうるものであることが分かる。5回あるいはそれ以上の反射回数が、したがって、現実的であり、信号強度の深刻な損失も生じることがない。
【0059】
曲線22、23および24は、アルコール、COおよび水のそれぞれの吸光ピークである3.4、4.26および2.8μmに調整した、一般的な干渉フィルタの透過光を示す。透過光の吸光ピークの一般的な幅は、50〜200nmである。現在の技術によれば、干渉フィルタは非常に精度よく、高い再現可能性をもって設計可能である。これは、干渉フィルタの複数の層を目的に応じて改変することと、それらの厚みの許容誤差とによって、達成される。様々な物質間のクロス感度は、これらのフィルタの実際の設計パラメータに大きく依存している。クロス感度は、例えば干渉フィルタ用の母材など、曲線25で示す急勾配の吸収端を有する材料を加えることによっても影響を受ける。急勾配の吸収端を有するハイパスフィルタは、明瞭なエネルギーバンドギャップを有する半導体から成るものとしてよい。ローパスエッジは限定された分子振動に依存するものとしてよい。
【0060】
図3は、被験者の近辺から採取された呼気サンプルに関連する複数の物量の経時変化を概略的に示す。変化する物量は、a)気流速度、b)温度、c)相対湿度、d)CO濃度、およびe)被験者の血中に含まれる物質Xからの予想出力値である。
【0061】
気流速度(図3a)は、ポンプ機構が作動していない場合には、ゼロに近いバックグラウンドレベルを有する。Time=1秒において、被験者は力のこもった呼気を約1.5秒間にわたって提供している。これによって気流速度は急激に1〜数m/s以上まで立ち上がり、そして下降する。力のこもらない呼気の場合、継続する時間はこれよりある程度短く、気流速度も小さくなるはずである。単一の呼気の各々は、10〜50cmの測定距離において容易に識別可能である。なぜなら、吸気流は変化に影響を与えないからである。信号の強度は距離とともに下降し、「開口」のサイズにも依存する。
【0062】
気流速度の上昇と同時に、温度がバックグラウンドレベル(図3bにおける室温23℃)から体温に近いレベルまで上昇する。しかし、呼気サンプルは希釈されているため、体温には到達しない。さらに、温度変化の下降線は、気流を積極的に運搬する機構がない場合、速度変化より短くなるものと予測される。
【0063】
上記と同様に、相対湿度(RH)は、周辺レベル(図3cにおける35%)から、希釈の程度に依存したレベルまで上昇する。気道の粘膜は通常、効果的な湿度調節装置であるため、純粋な呼気はほぼ100%のRHとなる。温度および湿度の変化のタイミングは、ほぼ同様である。
【0064】
CO曲線は、周辺の換気状態に応じて、ほぼゼロ、あるいは0.04〜0.1%のバックグラウンドレベルからスタートする。衛生上の上限値として受け入れられているのは1000ppm(0.1%)である。肺胞気は、通常の休息中の被験者の場合、5.3%というきわだって一定の値を有し、活動レベル、年齢、性別その他に応じて、穏やかな変化を示す。呼気サンプルの純粋なCO濃度、すなわち図3dに見られるハイレベルの値の測定は、したがって、希釈の程度を判定する好ましい方法である。CO曲線の上昇は、約150mlの体積、あるいは、休息中の成人被験者の通常の呼気体積(単一の力のこもらない呼気の体積)の30%の体積を有する呼吸死腔を代表する上気道の効果により、他の曲線と比較して、幾分、遅延している。
【0065】
物質Xを示す信号は図3e)に示す。物質Xの変化はCOの変化と同じタイミングで生じ、これらの出所は両方とも肺胞である。呼気サンプルが肺胞気を表すものとなるためには、COおよび呼気サンプルの波形が明確な台地状となることが必要である。見せかけの、不完全な呼気は、肺胞や血中濃度の状態を表すものではない。
【0066】
図3に関連した記載から、被験者からの呼気を判定するには、複数の必要条件があるということは明らかである。これらの規準は、判定のための諸条件を確実に適切なものとするために使用してよい。これらは手操作を回避するためのツールとしてもよい。
【0067】
図3に関連した記載から、検出および分析工程の動的な特性が本実施形態にとって重要なものであることも明らかである。工程全体に要求される時間分解能は、主として、既に指摘したように、人間の知覚の速度に応じて決定される。専ら検出に要求されることは、主として、呼吸の運動によって決定される。図3に概略を示したように、1秒より小さい時間分解能が要求される。
【0068】
本実施形態の概要からも、詳細な説明からも、本方法および本システムが、単一の呼気サンプルの分析よりむしろ、リアルタイム監視に有用であることは明らかである。本実施形態によれば、個々の呼吸の監視が可能であり、これによって、多くの生理的なプロセスをより詳しく研究できる可能性がある。例えば、アルコールを含む特定の物質の濃度の経時変化を研究する関心にもつながる。
【0069】
以上に概説したように、本実施形態による方法およびシステムは、以下の方法で用いるとよい。すなわち、処理された出力信号によって、車両その他の機械の始動や運転のロック/アンロック状態を決定する。
【0070】
本発明によるシステムおよび方法は、特許請求の範囲に記載の通りであり、上述の実施形態にいかなる意味でも限定されるものではない。
【0071】
本明細書および特許請求の範囲において「含む」「含んでいる」およびこれらを変形した用語を用いるときは、特定の特徴、工程または数値を包含することを意味する。これらの用語によって、他の特徴、工程または構成部材の存在が除外されると解されるものではない。
【0072】
本明細書、特許請求の範囲または添付図面にて開示した特徴であって、特定の形態によって表現し、あるいは、開示された機能を実行する手段を表す用語または開示された結果を適切に達成する方法もしくは工程を表す用語によって表現した特徴は、個別に用いることにより、あるいはこれら特徴を任意に組み合わせて用いることにより、本発明を、その様々な実施形態で実現してよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】1つの好適な実施形態による本システムの概略ブロック図である。
【図2】本システムの構成材料の一部の、一般的で関連ある赤外スペクトル特性を示す図である。
【図3】呼気採取および分析の手順において生じる一般的な信号を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 収容体
2 赤外線光源
3 凹状反射部
4、5 反射面
6、7 支持構造
8、9 検出器
10、11 蓋
12 電子信号処理装置
13、14 干渉フィルタ
15 表示手段
16 ポンプ
17 測定セル
18 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気サンプルに含まれる少なくとも1つの揮発性物質の検出および分析システムにおいて、
前記揮発性物質の特定の吸光ピークの波長レンジに調整された少なくとも1つの赤外線光源と、
コリメーション用に構成された赤外線の複数の反射面と、
前記吸光ピークに相当する波長間隔における前記赤外線の透過光に対応する複数の電気出力信号を提供する少なくとも1つの検出器と、
前記赤外線光源、反射面および検出器の位置を決定する機械的な支持構造を含み前記呼気サンプルの受取および廃棄を行うよう構成され呼気サンプルを前記赤外線に曝す少なくとも1つの測定セルと、
前記揮発性物質の赤外線吸収スペクトルに関する予めプログラムされた情報に従って前記電機出力信号を分析可能な少なくとも1つの電子信号処理装置とを含み、
該システムの応答は、表示その他の方法で通知され実質的に即座に知覚され、
前記呼気サンプルは、前記被験者の近辺の自由空気中から収集されることを特徴とする検出および分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、複数の揮発性物質の検出および分析を行うことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、該システムの応答および復帰は、主として、前記呼気サンプルが前記測定セルを通過する通過時間によって決定されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、該システムの応答・復帰時間は、10秒より短いことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、少なくとも1つの交換可能なマウスピースを含み、該マウスピースは、前記測定セルと前記被験者の口との間の漏れを防いだ接続部として構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記測定セルは、十分な断面積を有する入口および出口を備え、前記測定セル内で呼気を実質的に層流にし、前記測定セル内の滞流域が占める領域は、前記赤外線の透過光路の10%より小さいことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記測定セルは管構造を有することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、ポンプまたはファンにより前記呼気サンプルを前記測定セルを通して積極的に運搬する手段を含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記赤外線光源は実質的に黒体放射体を構成する高温フィラメントであり、通常の被験者の視覚の反応時間より著しく短い調節時間を有することを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記赤外線の経路長は、前記測定セルの物理的な寸法より著しく大きいことを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記反射面は少なくとも部分的に凹状であり、前記赤外線に対する反射係数は0.99を超え、各反射面は、対向する1つの反射面の曲率半径の中心と、1点において一致することを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記赤外線は少なくとも部分的にコリメートされ、複数回反射され、該複数回は5回を超えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムにおいて、不変の、あるいは電子的に制御可能な特性を有する少なくとも1つの干渉フィルタまたは高精度の回折格子を含む、少なくとも1つの光分散素子または吸光素子を備えることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記検出器は熱電対または焦電素子であることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記電子信号処理装置は、揮発性または不揮発性の情報記録用の少なくとも1つのメモリ装置と、予めプログラムされた論理演算および算術計算の順次処理を実行する少なくとも1つの装置とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記物質の1つは二酸化炭素であり、前記被験者の近辺における二酸化炭素濃度の測定は、肺胞の二酸化炭素濃度の予測値と組み合わせて行い、前記呼気サンプルの希釈の程度を判定することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記物質の少なくとも1つはエチルアルコールその他の、前記被験者の挙動に影響を与える薬品であることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムにおいて、力のこもった呼気による前記測定セルへの呼気サンプルを提供するよう指示を与える、前記被験者に向けられた表示手段を含むことを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記支持構造は、前記呼気サンプルを受ける開口および廃棄する開口が設けられている積極的な作動状態と、前記赤外線光源、反射面、光分散素子および検出器が周囲へ露出しないように守られている消極的な作動状態との間を変形可能であることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1または19に記載のシステムにおいて、前記作動状態のいずれかを選択する電機機械的な手段を含むことを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項1または19に記載のシステムにおいて、前記作動状態のいずれかの選択は、部分的に、あるいは全体的に、自動化されていることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項1に記載のシステムにおいて、実質的にすべての要素を収容する1つの収容体を含み、これによって、限定された物理的に一体の装置が形成され、該装置は、例えば手で持てる大きさの装置として、あるいは、例えば車両に固定された装置として構成されることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記物質を判定するにあたって生じるクロス感度は最小であることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記支持構造は少なくとも1つのマウスピースと結合するよう構成され、これによって純粋な呼気サンプルの採取が可能であることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記物質が上気道または下気道のいずれから発せられているかを表示することを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記支持構造は、射出成形によって製造される少数の部品から組み立てられることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記測定セル内の温度または気流速度の測定を行う少なくとも1つのセンサを含むことを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項1に記載のシステムにおいて、負帰還ループによって、あるいは計算アルゴリズム中に補償を設けることによって、不適切な相互依存を補償することを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項1に記載のシステムにおいて、個々の呼吸における物質濃度の分析を含む、前記出力信号のリアルタイム監視を行うことを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項1に記載のシステムにおいて、処理後の前記信号によって、車両その他の機械の始動や運転のロック/アンロック状態を決定することを特徴とするシステム。
【請求項31】
被験者の呼気サンプルに含まれる少なくとも1つの揮発性物質の検出および分析方法において、
被験者の呼気の流れの中に測定セルを位置調節し、前記呼気サンプルの受取および廃棄を可能にする工程と、
前記測定セル内の前記呼気サンプルを、前記物質の特定の吸光ピークの少なくとも1つの波長レンジにある、少なくとも1つの赤外線光源からの赤外線に曝す工程と、
前記呼気サンプルを通過した前記赤外線を検知し、これによって、前記吸光ピークに相当する波長間隔における前記赤外線の透過光に対応する複数の出力信号を提供する工程と、
呼気サンプルを通過する赤外線の経路を、複数の反射面によって延長する工程と、
前記物質の赤外線吸光係数に関する予めプログラムされた情報に従って前記信号を分析する工程と、
検出および分析に対する応答を表示しあるいは通知して実質的に即座に知覚させる工程とを含み、
前記呼気サンプルは、前記被験者の近辺の自由空気中から収集し該自由空気に廃棄することを特徴とする検出および分析方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、複数の揮発性物質の検出および分析を行うことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法において、応答および復帰は、前記呼気サンプルが前記測定セルを通過する通過時間によって決定することを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法において、前記検出および分析に対する応答・復帰時間は、10秒より短いことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項31に記載の方法において、前記分析は、前記出力信号の経時変化の観察を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項31に記載の方法において、前記被験者に、力のこもった呼気を前記測定セルへ提供するよう指示を与えることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項31に記載の方法において、前記測定セルを通過する前記呼気サンプルの流れは、管構造を有し十分な断面積を有する入口および出口を備えた前記測定セルによって実質的に層流にし、前記測定セル内の滞流域は、前記赤外線の透過光路の10%を超えないことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項31に記載の方法において、前記支持構造は、前記被験者の近辺の呼気の流れの中に位置調節可能となっていることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項31に記載の方法において、ポンプまたはファンにより、前記呼気サンプルの前記測定セルを通した積極的な運搬を補助することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項31に記載の方法において、前記赤外線光源の調節は、一般的な被験者の視覚の反応時間より著しく短い調節時間で行えるようになっていることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項31に記載の方法において、前記赤外線の経路長は、前記支持構造の物理的な寸法より著しく大きいことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項31に記載の方法において、前記赤外線の反射面は少なくとも部分的に凹状であり、前記赤外線に対する反射係数は0.95を超え、各反射面は、対向する1つの反射面の曲率半径の中心と、1点において一致することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項31に記載の方法において、前記赤外線は少なくとも部分的にコリメートし、複数回反射させ、該複数回は5回を超えることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項31に記載の方法において、不変の、あるいは電子的に制御可能な特性を有する少なくとも1つの干渉フィルタまたは高精度の回折格子によって、前記赤外線の分散または吸収を行うことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項31に記載の方法において、前記検出は少なくとも1つの熱電対または焦電素子によって行なうことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項31に記載の方法において、前記測定セルは管構造を有し、前記呼気サンプルの受取および廃棄を行う入口および出口を含み、前記入口および出口は、十分な断面積を有して実質的に層流を維持し、前記測定セル内の滞流域が占める領域は、前記赤外線の透過光路の10%より小さいことを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項31に記載の方法において、前記信号分析は少なくとも1つの電子信号処理装置で行い、該装置は、揮発性または不揮発性の情報記録用の少なくとも1つのメモリ装置と、予めプログラムされた論理演算および算術計算の順次処理を実行する少なくとも1つの装置とを含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項31に記載の方法において、前記物質の1つは二酸化炭素であり、前記被験者の近辺における二酸化炭素濃度の測定は、肺胞の二酸化炭素濃度の予測値と組み合わせて行い、前記呼気サンプルの希釈の程度を判定することを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項31に記載の方法において、前記物質の少なくとも1つはエチルアルコールその他の、前記被験者の健康または挙動に関係する薬品であることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項31に記載の方法において、力のこもった呼気による前記支持構造への呼気サンプルを提供するよう、前記被験者に指示を与えることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項31に記載の方法において、前記支持構造は、前記呼気サンプルを受ける少なくとも1つの開口が設けられている積極的な作動状態と、前記赤外線光源、反射面、光分散素子および検出器が周囲へ露出しないように守られている消極的な作動状態との間を選択可能であることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項31または51に記載の方法において、電機機械的な手段により、少なくとも部分的に自動化した方法で、前記作動状態のいずれかを選択することを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項31に記載の方法において、前記物質を判定するにあたって生じるクロス感度は最小であることを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項31に記載の方法において、前記支持構造は少なくとも1つのマウスピースと結合するよう構成され、これによって純粋な呼気サンプルの採取が可能であることを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項31に記載の方法において、前記物質が上気道または下気道のいずれから発せられているかを表示することを特徴とする方法。
【請求項56】
請求項31に記載の方法において、前記物質の判定は重複した処理を含み、これによって一般的な不慮のエラーまたは意図的なエラーに対する自己検査機能を備えていることを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項31に記載の方法において、負帰還ループによって、あるいは計算アルゴリズム中に補償を設けることによって、不適切な相互依存を補償することを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項31に記載の方法において、個々の呼吸における物質濃度の分析を含む、前記出力信号のリアルタイム監視を行うことを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項31に記載の方法において、処理後の前記信号によって、車両その他の機械の始動や運転のロック/アンロック状態を決定することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−70369(P2008−70369A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237946(P2007−237946)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【Fターム(参考)】