説明

回路接続材料、これを用いたフィルム状回路接続材料、回路部材の接続構造及びその製造方法

本発明は、基板31の面31a上に電極32及び絶縁層33が隣接して形成された回路部材30、並びに基板41の面41a上に電極42及び絶縁層43が隣接して形成された回路部材40で、絶縁層33,43の縁部33a,43aが主面31a,41aを基準として電極32,42より厚く形成された回路部材30、40同士を接続するための回路接続材料であって、接着剤組成物51及び平均粒径が1μm以上10μm未満で且つ硬度が1.961〜6.865GPaである導電粒子12を含み、硬化処理により、40℃での貯蔵弾性率が0.5〜3GPaとなり、25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃となるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続材料、これを用いたフィルム状回路接続材料、回路部材の接続構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶ディスプレイとTCP(Tape Carrier Package)、FPC(Flexible Printed Circuit)とTCP、又はFPCとプリント配線板等の回路部材同士を接続した回路部材の接続構造が知られており、このような回路部材同士の接続には、接着剤中に導電粒子を分散させた回路接続材料(例えば、異方導電性接着剤)が使用されている(例えば特許文献1〜5参照)。
【0003】
一方、近年の電子機器の小型化、薄型化に伴い回路の高密度化が進んでおり、回路部材における回路電極間の間隔や回路電極の幅が非常に狭くなっており、回路電極間で高い絶縁性を確保することが困難となっている。そこで、回路部材においては、回路電極間で高い絶縁性を確保するため、回路電極間に有機絶縁性物質、二酸化珪素、窒化珪素等からなる絶縁層を設けることが必要とされている。
【0004】
図7は、回路部材の接続構造の従来例を示す断面図である。図7に示すように、回路部材の接続構造100は、第一の回路部材131と、第二の回路部材141とを備えており、第一の回路部材131と第二の回路部材141は、回路接続部材150によって接続されている。第一の回路部材131は、回路基板132と、回路基板132の一面132a上に隣接して形成された回路電極133および絶縁層134とから構成され、絶縁層134の一部は、回路電極133の縁に乗り上げた形になっている。即ち絶縁層134の一部は、回路基板132の一面132aを基準として回路電極133より厚く形成されている。また第二の回路部材141は、第一の回路部材131と同様の構成であり、回路基板142と、回路基板142の一面142a上に隣接して形成された回路電極143および絶縁層144とから構成され、絶縁層144の一部は回路電極143の縁に乗り上げた形となっている。一方、回路接続部材150は、例えばベンゾグアナミン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層を形成した導電粒子152が絶縁性物質151中に分散しているものである。ここで、例えば導電粒子の平均粒径は5μmで硬度(K値)は7490N/mmである。
【特許文献1】特開昭59−120436号公報
【特許文献2】特開昭60−191228号公報
【特許文献3】特開平1−251787号公報
【特許文献4】特開平7−90237号公報
【特許文献5】特開2001−189171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の回路部材の接続構造100は、以下に示す課題を有していた。
【0006】
即ち図7に示す回路部材の接続構造100においては、対向する回路電極133,143間の接続抵抗が大きくなると共に、電気特性の長期信頼性が不十分であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、対向する回路電極間の接続抵抗を十分に低減でき、且つ電気特性の長期信頼性に優れる回路接続材料、これを用いたフィルム状回路接続材料、回路部材の接続構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記課題が生じる原因が特に導電粒子の硬度にあることを見出した。即ち本発明者等は、導電粒子の硬度が大きすぎると、導電粒子が、回路電極の縁に乗り上げた絶縁膜同士間に挟まれ、導電粒子が対向する回路電極133,143の双方に十分に接触できず、その結果、対向する回路電極133,143間の接続抵抗が大きくなることを見出した。そして、本発明者等は、回路部材において絶縁膜の一部が回路電極の縁に乗り上げた形になることを前提とした上で、上記課題を解決すべく更に鋭意研究を重ねた結果、硬化処理により40℃での貯蔵弾性率及び25〜100℃における平均熱膨張係数が特定の範囲となり、且つ、導電粒子の平均粒径及び硬度が特定の範囲にある回路接続材料を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極及び第一の絶縁層が隣接して形成された第一の回路部材、並びに第二の回路基板の主面上に第二の回路電極及び第二の絶縁層が隣接して形成された第二の回路部材であって、第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において絶縁層の少なくとも一部が主面を基準として回路電極より厚く形成されている第一の回路部材及び第二の回路部材、を接続するための回路接続材料であって、接着剤組成物及び、平均粒径が1μm以上10μm未満であり且つ硬度が1.961〜6.865GPaである導電粒子を含有し、硬化処理により40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPaとなり、硬化処理により25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃となることを特徴とする。
【0010】
この回路接続材料によれば、第一及び第二の回路部材の間に介在させ、第一及び第二の回路部材を介して加熱及び加圧し、硬化処理すると、対向する回路電極間の接続抵抗を十分に低減することが可能となる。また、電気特性の長期信頼性に優れる構造を提供可能となる。
【0011】
上記のように回路電極間の接続抵抗を十分に低減できるのは、回路部材同士を接続する際に、絶縁層とそれに対向する回路電極との間、又は対向する絶縁層間に導電粒子が挟まれても、導電粒子が適度に扁平化され、対向する回路電極間の距離を十分に小さくすることができるためではないかと考えられる。また、対向する回路電極間の電気特性の長期信頼性が優れるのは、回路接続材料の硬化処理により、第一の回路部材と第二の回路部材とが強固に接続され、第一の回路電極と第二の回路電極との間の距離の経時的変化が十分に低減されるためではないかと考えられる。
【0012】
また本発明は、上記回路接続材料をフィルム状に形成してなることを特徴とするフィルム状回路接続材料である。
【0013】
このフィルム状回路接続材料はフィルム状であり、取扱いが容易である。このため、このフィルム状回路接続材料によれば、第一の回路部材と第二の回路部材とを接続する際に、それらの間に容易に介在させることができ、第一の回路部材と第二の回路部材との接続作業を容易に行うことができる。
【0014】
また本発明は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極及び第一の絶縁層が隣接して形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極及び第二の絶縁層が隣接して形成された第二の回路部材と、第一の回路部材の主面と第二の回路部材の主面との間に設けられ、第一及び第二の回路部材同士を接続する回路接続部材とを備え、第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において、絶縁層の少なくとも一部が回路基板の主面を基準として回路電極より厚く形成されている回路部材の接続構造であって、回路接続部材が、絶縁性物質、及び平均粒径が1μm以上10μm未満であり且つ硬度が1.961〜6.865GPaである導電粒子を含有し、回路接続部材の40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPaであり且つ25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃であり、第一の回路電極と第二の回路電極とが、導電粒子を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0015】
この回路部材の接続構造によれば、第一の回路電極と第二の回路電極とが導電粒子を介して電気的に接続されているため、第一及び第二の回路電極間の接続抵抗が十分に低減される。また、電気特性の長期信頼性に優れるものとなる。
【0016】
また、本発明は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極及び第一の絶縁層が隣接して形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極及び第二の絶縁層が隣接して形成された第二の回路部材と、第一の回路部材の主面と第二の回路部材の主面との間に設けられ、第一及び第二の回路部材同士を接続する回路接続部材とを備え、第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において、絶縁層の少なくとも一部が回路基板の主面を基準として回路電極より厚く形成されている回路部材の接続構造の製造方法であって、第一の回路基板の主面と第二の回路基板の主面との間に上記フィルム状回路接続材料を介在させ、第一及び第二の回路部材を介して回路接続材料を加熱及び加圧して硬化処理することにより第一の回路部材と第二の回路部材とを接続し、第一の回路電極と第二の回路電極とを導電粒子を介して電気的に接続することを特徴とする。
【0017】
この回路部材の接続構造の製造方法によれば、上記回路接続材料を、第一の回路部材と第二の回路接続部材との間に介在させ、第一及び第二の回路部材を介して加熱加圧して硬化処理すると、対向する回路電極間で接続抵抗が十分に低減され、且つ電気特性の長期信頼性に優れる回路部材の接続構造を得ることができる。
【0018】
対向する回路電極間の接続抵抗を十分に低減できる回路部材の接続構造が得られるのは、回路部材同士を接続する際に、絶縁層とそれに対向する回路電極との間、又は対向する絶縁層間に導電粒子が挟まれても、導電粒子が適度に扁平化され、対向する回路電極間の距離を十分に小さくすることができるためではないかと考えられる。また、対向する回路電極間の電気特性の長期信頼性に優れる回路部材の接続構造が得られるのは、回路接続材料の硬化処理により、第一の回路部材と第二の回路部材とが強固に接続され、第一の回路電極と第二の回路電極との間の距離の経時的変化が十分に低減されるためではないかと考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回路接続材料、回路部材の接続構造及びその製造方法によれば、対向する回路部材同士を接続する場合に、対向する回路電極間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0020】
また本発明のフィルム状回路接続材料によれば、上記効果に加えて第一の回路部材と第二の回路部材とを接続する際に、それらの間に容易に介在させることができ、第一の回路部材と第二の回路部材との接続作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
[図1]本発明に係る回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。
[図2]図1の部分拡大断面図である。
[図3]図1の導電粒子の種々の形態を示す断面図である。
[図4]本発明に係るフィルム状回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
[図5]本発明に係る回路部材の接続構造の製造方法の一工程を示す図である。
[図6]本発明に係る回路部材の接続構造の他の実施形態を示す断面図である。
[図7]従来の回路部材の接続構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10…回路接続部材、11…絶縁性物質、12…導電粒子、12a…核体、12b…金属層、12c…最外層、30…第一の回路部材、31…回路基板(第一の回路基板)、31a…主面、32…回路電極(第一の回路電極)、33…絶縁層(第一の絶縁層)、40…第二の回路部材、41…回路基板(第二の回路基板)、41a…主面、42…回路電極(第二の回路電極)、43…絶縁層(第二の絶縁層)、50…フィルム状回路接続材料、51…接着剤組成物、200…回路部材の接続構造。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。
[回路部材の接続構造の実施形態]
【0024】
先ず、本発明に係る回路部材の接続構造について説明する。
【0025】
図1は本発明に係る回路部材の接続構造の第1実施形態を示す概略断面図であり、図2は図1の部分拡大断面図である。図1及び2に示すように、本実施形態の回路部材の接続構造200は、相互に対向する第一の回路部材30及び第二の回路部材40を備えており、第一の回路部材30と第二の回路部材40との間には、これらを接続する回路接続部材10が設けられている。
【0026】
第一の回路部材30は、回路基板(第一の回路基板)31と、回路基板31の主面31a上に形成される回路電極(第一の回路電極)32と、回路基板31の主面31a上に形成される絶縁層(第一の絶縁層)33とを備えている。回路電極32と絶縁層33は、回路基板31上において相互に隣接して形成されている。ここで、絶縁層33の両縁部33aは、回路電極32の縁に乗り上がった状態となっている。即ち、絶縁層33の両縁部33aは、回路基板31の主面31aを基準として回路電極32の中央部よりも厚く形成されている。なお、このとき絶縁層33の縁部33aの厚さは、回路基板31の主面31aから絶縁層33の縁部33aの表面までの距離をいう。
【0027】
一方、第二の回路部材40は、回路基板41と、回路基板41の主面41a上に形成される回路電極(第二の回路電極)42と、回路基板41の主面41a上に形成される絶縁層(第二の絶縁層)43とを備えている。なお、絶縁層43の両縁部43aが、回路電極42の縁に乗り上がっており、回路基板41の主面41aを基準として回路電極42よりも厚く形成されている点については第一の回路部材30の場合と同様である。
【0028】
そして、第一の回路部材30と第二の回路部材40とが対向した状態では、絶縁層33の縁部33aと絶縁層43の縁部43aとの間の間隔は、回路電極32と回路電極42との間の間隔よりも狭くなっている。
【0029】
また回路接続部材10においては、それを構成する材料の40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPaであり、25℃から100℃までの平均熱膨張係数は30〜200ppm/℃である。回路接続部材10は絶縁性物質11と導電粒子12とを含有しており、導電粒子12は、平均粒径が1μm以上10μm未満で、且つ硬度が1.961〜6.865GPaとなっている。
【0030】
この回路部材の接続構造200においては、回路電極32,42が、導電粒子12を介して電気的に接続されている。即ち、導電粒子12が回路電極32,42の双方に直接接触している。また、絶縁層33の縁部33aと絶縁層43の縁部43aとの間に導電粒子12が挟まれている場合は、導電粒子12は、回路電極32,42間の電気的接続を妨げないよう扁平した状態となっている。
【0031】
この回路部材の接続構造200においては、上述したように、対向する回路電極32と回路電極42とが導電粒子12を介して電気的に接続されている。このため、回路電極32,42間の接続抵抗が十分に低減される。従って、回路電極32,42間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。また回路接続部材10が上記のように構成されていることで、回路部材30又は40と回路接続部材10との界面の応力緩和により、高い接着強度が実現され、且つその状態を長期間にわたって持続させることが可能となる。即ち、回路電極32,42間の距離の経時的変化が十分に防止され、回路電極32,42間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0032】
ここで、上記範囲内の硬度を有する導電粒子12が回路接続部材10中に含まれることで、回路電極32,42間の接続抵抗を十分に低減できる理由について詳細に説明する。
【0033】
先ず、回路接続部材10には絶縁性物質11が含まれているため、回路電極32,42間の接続抵抗を十分に低減するためには、導電粒子12が回路電極32,42の双方に接触していることが必要であり、導電粒子12が双方の回路電極32,42に接触するためには、扁平化されていない導電粒子12の粒径A、絶縁層43の縁部43aと対向する絶縁層33の縁部33aとの間の距離D1、及び回路電極32の厚さと絶縁層33の縁部33aとの厚さの差D3、回路電極42の厚さと絶縁層43の縁部43aの厚さとの差D2が下記式(1)の条件を満たすことが必要である。
D1+D2+D3≦A (1)
【0034】
すなわち、絶縁層33の縁部33aと対向する絶縁層43の縁部43aとの間の距離D1は、下記式(2)の条件を満たすことが必要である。
D1≦A−D2−D3 (2)
【0035】
ここで、導電粒子が6.865GPaを超える程度の極めて高い硬度を有していると仮定すると、例えば回路部材30の絶縁層33の縁部33aと、回路部材40の絶縁層43の縁部43aとの間に導電粒子が挟まれた場合、導電粒子は扁平化されず、絶縁層33の縁部33aと回路部材40の絶縁層43の縁部43aとの間の距離D1は十分に小さくならない。その結果、D1が上記(2)式を満たさなくなる。即ち回路電極32,42間の距離(D1+D2+D3)が導電粒子12の粒径Aよりも大きくなる。このため、回路電極32,42間の導電粒子は回路電極32,42の双方に接触できなくなり、回路電極32,42間の接続抵抗が大きくなる。
【0036】
これに対し、導電粒子12が1.961〜6.865GPaの硬度を有していると、導電粒子12が例えば絶縁層33の縁部33aと絶縁層43の縁部43aとの間に挟まれた場合に扁平化される。このため、上記D1が上記式(2)の条件を満たすようになり、導電粒子12が回路電極32,42の双方に接触し、回路電極32,42間の接続抵抗が十分に低減される。
【0037】
なお、上記回路接続部材10を構成する材料の硬化後の40℃における貯蔵弾性率が0.5GPa未満の場合は、接着強度が不十分となり、3GPaを超えると、内部応力によって接続部での接続抵抗が増大したり、接着剤が剥離したりする。また、上記平均熱膨張係数が30ppm/℃未満の場合は、接着強度が不十分となり、200ppm/℃を超えると、内部応力によって接続部での接続抵抗が増大したり、接着剤が剥離したりする。
【0038】
また導電粒子12の硬度が6.865GPaを超える場合、導電粒子12が十分に扁平化されないため、導電粒子12と回路電極32,42との接触面積が減少して接続抵抗が上昇し、対向する回路電極32,42間の電気的接続が十分に確保できなくなる。他方、導電粒子12の硬度が1.961GPa未満の場合は、高温高湿時における回路電極32,42間の間隔の変動に導電粒子12が追随できないため、回路電極32,42間の接続抵抗が十分に低減されなくなる。
【0039】
なお、導電粒子12の硬度は、導電粒子12がメッキされている場合には、メッキ後の導電粒子を微少圧縮試験器(株式会社島津製作所製)を用いて、導電粒子の直径から導電粒子を10%変形させたときの加重P(MPa,Kgf)、導電粒子の半径r(mm)及び圧縮の際の変位Δ(mm)から下記式(3)により求めることができる。
導電粒子硬度=(3/√2)×P×Δ(−3/2)×r(−1/2) (3)
【0040】
また導電粒子12の平均粒径が1μm未満の場合は、導電粒子が小さすぎて回路電極の双方に接触できなくなり、電気的接続が十分に確保できなくなり、10μm以上の場合は、高密度な回路を有する回路部材への適用が困難となる。
【0041】
次に、導電粒子12の構成について詳細に説明する。図3において、(a)及び(b)は、導電粒子12の種々の形態を示す断面図である。図3の(a)に示すように、導電粒子12は、有機高分子からなる核体12aと、この核体12a上に形成された金属層12bとから構成されている。かかる形態の導電粒子12においては、導電粒子12の硬度は核体12aの硬度にほぼ支配される。そして、核体12aの硬度は、材料である有機高分子の構造、架橋点間距離、架橋度等に依存する。従って、導電粒子12の硬度を上記範囲とするためには、後述する有機高分子の材料、構造等の要素を適宜選択すればよい。
【0042】
核体12aを構成する有機高分子としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。また上記有機高分子は、上記の樹脂を構成するモノマーに基づく繰り返し単位のうちの少なくとも2種以上を任意に組合せた構造を有する共重合体でもよいが、ベンゾグアナミン、アクリル酸エステル、ジアリルフタレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジビニルベンゼン及びスチレンからなる群より選ばれる少なくとも2種以上を共重合させて得られるものが好ましく、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジビニルベンゼン及びスチレンを組合せて得られる共重合体がより好ましい。
【0043】
この中で、ベンゾグアナミン等は、分子中に剛直な構造を有しその架橋点間距離も短いため、共重合体中においてこのような分子の含有率を高くするほど、硬い導電粒子12が得られる。また有機高分子の架橋度を高くすることによっても、硬い導電粒子12が得られる。
【0044】
一方、アクリル酸エステル、ジアリルフタレート等においては、架橋点間距離が長くなるため、共重合体中のこのような分子に基づく繰り返し単位の含有率を高くするほど柔らかい導電粒子12が得られる。また、有機高分子の架橋度を低くすることによっても、柔らかい導電粒子12が得られる。
【0045】
従って、核体12aを構成する有機高分子、その架橋点間距離、架橋度を適宜選択することにより、上記範囲の硬度を有する導電粒子12を得ることができる。
【0046】
核体12a上に形成される金属層12bは、例えば銅、ニッケル、ニッケル合金、銀又は銀合金で構成され、金属層12bは、これら金属を核体12aに対し無電解メッキ法を用いてメッキすることにより形成することができる。ここで、ニッケル合金は、メッキ浴中に配合される添加剤により種々のものがあり、よく知られているのはニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等の合金である。なお、その他の合金についても同様のものがある。金属層12bの厚さ(メッキ厚み)は、好ましくは50nm〜170nmであり、より好ましくは50nm〜150nmである。厚さが50nm未満では、メッキの欠損(剥がれ)等が発生して接続抵抗が大きくなる傾向があり、170nmを超えると、導電粒子12間で凝結が発生し、隣接する回路電極間で短絡が生じる傾向がある。
【0047】
また導電粒子12は、図3の(b)に示すように金属層12bの上に最外層12cを更に備えてもよい。最外層12cは、金又はパラジウムで構成され、これらは金属層12b上に置換メッキにより形成することができる。この最外層12cを設けることにより、回路電極32,42間において、さらに良好な接続抵抗が達成できる。即ち接続抵抗を十分に低減することができる。最外層12cの厚さは15〜70nmであることが好ましい。厚さが15nm未満の場合にはメッキの欠損により十分な効果を得ることが困難となる傾向がある。他方、厚さが70nmを超える場合には、良好な接続抵抗は達成できるが、用いるメッキ液量が相乗的に増加するため非常に製造コストが高くなる傾向がある。また、最外層12cを設けた場合、金属層12bの膜厚は70〜170nmが好ましい。膜厚が70nm未満では、メッキの欠損(剥がれ)等が発生して接続抵抗が大きくなる傾向があり、170nmを超えると、隣接する回路電極間で短絡が生じる傾向がある。
【0048】
また、上記回路部材の接続構造200においては、上記第一の回路部材30において絶縁層33の縁部33aの厚さと回路電極32の中央部の厚さとの差D3が50〜600nmであり、第二の回路部材40において絶縁層43の縁部43aの厚さと回路電極42の厚さとの差D2が50〜600nmである場合に、対向する回路電極32,42間の接続抵抗の低減効果が特に顕著になる。
【0049】
絶縁層33,43は、絶縁材料で構成されていれば特に制限されないが、通常は有機絶縁性物質、二酸化珪素又は窒化珪素から構成される。また、回路電極32,42は通常、その全体が金、銀、錫、白金族の金属又はITO(インジウム−錫酸化物)で構成されているが、回路電極32,42は、表面のみを上記物質で構成してもよい。更に回路基板31,41の材質は特に制限されないが、通常は有機絶縁性物質、ガラス又はシリコンである。
【0050】
上記回路部材の接続構造200は、第一及び第二の回路部材30,40のそれぞれにおける回路電極32,42の面積が15000μm以下である場合でも良好な接続抵抗を達成できる。また、対向する回路電極32,42間における平均導電粒子数が3個以上である場合には、より良好な接続抵抗を達成できる。ここで、平均導電粒子数とは、回路電極1つあたりの導電粒子数の平均値を言う。この場合、対向する回路電極32,42間の接続抵抗をより十分に低減することができる。また、平均導電粒子数が6個以上である場合には、さらに良好な接続抵抗を達成できる。これは、対向する回路電極32,42間の接続抵抗が十分に低くなるからである。また回路電極32,42間における平均導電粒子数が2個以下の場合には、接続抵抗が高くなりすぎ、電子回路が正常に動作しなくなる虞がある。
【0051】
また上記回路部材の接続構造200においては、回路接続部材10のガラス転移温度が60〜200℃であることが好ましい。ガラス転移温度が60℃未満の場合には、高温下で、接着強度が低下し、接続抵抗が上昇する傾向があり、200℃を超える場合には、回路接続部材10にクラックが発生して、第一又は第二の回路部材30,40との界面応力が大きくなり、接着強度が低下する傾向がある。
【0052】
第一の回路部材30及び第二の回路部材40の具体例としては、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板が挙げられる。これらの回路部材には、回路電極(回路端子)が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられている。また、接続構造の形態としては、ICチップとチップ搭載基板の接続構造、電気回路相互の接続構造の形態もある。特に、回路部材がICチップである場合には、接続構造の製造工程においてバンプを形成しなくても、回路電極間に十分な電気的接続を確保することができるため、接続構造の製造工程においてバンプ形成工程を省略でき、製造コスト及び製造時間を大きく低減することができる。
[回路部材の接続構造の製造方法]
【0053】
次に、上述した回路部材の接続構造200の製造方法について説明する。
【0054】
先ず、上述した第一の回路部材30と第二の回路部材40を用意する。
【0055】
一方、フィルム状に成形してなる回路接続材料(以下、フィルム状回路接続材料と言う)50を用意する(図4参照)。フィルム状回路接続材料50としては、第一の回路部材30及び第二の回路部材40に対して硬化処理により硬化する接着剤組成物51と、上述した導電粒子12とを含有し、且つ硬化処理により40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPaとなり、25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃となるものを用いる。フィルム状回路接続材料50の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。なお、フィルム状回路接続材料50の詳細については後述する。
【0056】
次に、第一の回路部材30の上に、フィルム状回路接続材料50を載せる。続いて、第二の回路部材40を、フィルム状回路接続材料50の上に載せる。これにより、第一の回路部材30と第二の回路部材40との間にフィルム状回路接続材料50を介在させることが可能となる。このとき、フィルム状回路接続材料50はフィルム状であり、取扱いが容易である。このため、このフィルム状回路接続材料50によれば、第一の回路部材30と第二の回路部材40とを接続する際に、それらの間に容易に介在させることができ、第一の回路部材30と第二の回路部材40との接続作業を容易に行うことができる。
【0057】
次に、第一の回路部材30及び第二の回路部材40を介してフィルム状回路接続材料50を加熱しながら図5の矢印A及びB方向に加熱加圧して硬化処理を施し(図5参照)、第一及び第二の回路部材30,40の間に回路接続部材10を形成する(図1参照)。このとき、硬化処理により、回路接続部材10の40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPaとなり且つ25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃となる。なお、硬化処理は、一般的な方法により行うことが可能であり、その方法は接着剤組成物により適宜選択される。
【0058】
このように第一の回路部材30と第二の回路部材40との間にフィルム状回路接続材料50を介在させ、第一又は第二の回路部材30,40を介してフィルム状回路接続材料50を加熱しながら加圧して硬化処理すると、フィルム状回路接続材料50中の導電粒子12が、対向する絶縁層43の縁部43aと絶縁層33の縁部33aとの間に挟まれても扁平化されるため、回路電極32と回路電極42との間の距離を十分に小さくすることが可能となる。
【0059】
一方、フィルム状回路接続材料50に対しては加熱が行われるため、回路電極32と回路電極42との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤組成物51が硬化し、第一の回路部材30又は第二の回路部材40に対する接着強度が増大する。こうして、第一の回路部材30と第二の回路部材40とが回路接続部材10を介して接続される。従って、導電粒子12を、対向する回路電極32,42の双方に接触させることが可能となる。即ち回路電極32と回路電極42とが電気的に接続される。よって、得られる回路部材の接続構造200において、対向する回路電極32,42間の接続抵抗を十分に小さくすることができる。
【0060】
また、回路接続部材10の40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPaで且つ25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃であることにより、高温高湿の環境下においても、回路接続部材10の膨張による回路電極32と回路電極42との間の距離の経時的変化を十分に小さくすることができる。即ち、高温高湿の環境下においても、対向する回路電極32,42間の接続抵抗を十分低減でき、電気特性の長期信頼性に優れる。
【0061】
なお、上記実施形態では、フィルム状回路接続材料50を用いて回路部材の接続構造を製造しているが、フィルム状回路接続材料50に代えて、後述する回路接続材料を用いてもよい。この場合でも、回路接続材料を溶媒に溶解させ、その溶液を、第一の回路部材30又は第二の回路部材40のいずれかに塗布し乾燥させれば、第一及び第二の回路部材30,40間に介在させることができる。
[回路接続材料]
【0062】
次に、上述したフィルム状回路接続材料50の構成について詳細に説明する。
【0063】
フィルム状回路接続材料50は、回路接続材料をフィルム状に成形してなるものであり、回路接続材料は、上述した導電粒子12と、接着剤組成物51とを含有し、硬化処理により40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPa(より好ましく0.7〜2GPa)となり且つ25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃となる材料で構成されている。
【0064】
硬化処理により40℃における貯蔵弾性率が0.5GPa未満となる回路接続材料では、接着強度が不十分となり、他方、硬化処理により40℃における貯蔵弾性率が3GPaを超える回路接続材料では、内部応力によって接続部での接続抵抗が増大したり、接着剤が剥離したりする。また、硬化処理により上記平均熱膨張係数が30ppm/℃未満となる回路接続材料では、接着強度が不十分となり、他方、硬化処理により上記平均熱膨張係数が200ppm/℃を超える回路接続材料では、内部応力によって接続部での接続抵抗が増大したり、接着剤が剥離したりする。
【0065】
また回路接続材料は、硬化処理によりガラス転移温度が60〜200℃となるものが好ましく、60〜180℃となるものがより好ましい。硬化処理によってガラス転移温度が60℃未満となる回路接続材料では、回路部材の接続構造200において、高温における接着強度の低下、接続抵抗の上昇が起こる傾向があり、硬化処理によりガラス転移温度が200℃を超える回路接続材料では、高温且つ長時間で硬化させることとなるため、回路接続部材10における内部応力が増大し、クラックが発生することがある。また回路部材30又は40との界面応力が大きくなるため回路接続部材10による接着強度が低下する傾向がある。
【0066】
回路接続材料中に含まれる接着剤組成物は接着性を有し、第一及び第二の回路部材30,40に対する硬化処理により硬化する。また、接着剤組成物は、硬化処理により40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPa(より好ましく0.7〜2GPa)となり且つ25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃となるものであれば如何なるものでもよいが、このような接着剤組成物としては、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の潜在性硬化剤とを含有する組成物が好ましい。
【0067】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。また、これらのエポキシ樹脂は、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記エポキシ樹脂の潜在性硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよく、このような潜在性硬化剤としては、アニオン重合性の触媒型硬化剤、カチオン重合性の触媒型硬化剤、重付加型の硬化剤等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上の混合物として使用できる。これらのうち、速硬化性において優れ、化学当量的な考慮が不要である点からは、アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤が好ましい。
【0069】
アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤としては、例えば、第3級アミン類、イミダゾール類、ヒドラジド系化合物、三フッ化ホウ素−アミン錯体、オニウム塩(スルホニウム塩、アンモニウム塩等)、アミンイミド、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらの変成物も用いることが可能である。重付加型の硬化剤としては、ポリアミン類、ポリメルカプタン、ポリフェノール、酸無水物等が挙げられる。
【0070】
アニオン重合性の触媒型硬化剤として第3級アミン類やイミダゾール類を配合した場合、エポキシ樹脂は160℃〜200℃程度の中温で数10秒〜数時間程度の加熱により硬化する。このために可使時間(ポットライフ)が比較的長いので好ましい。
【0071】
カチオン重合性の触媒型硬化剤としては、エネルギー線照射によりエポキシ樹脂を硬化させる感光性オニウム塩(芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が主として用いられる)が好ましい。また、エネルギー線照射以外に加熱によって活性化しエポキシ樹脂を硬化させるものとして、脂肪族スルホニウム塩等がある。この種の硬化剤は、速硬化性という特徴を有することから好ましい。
【0072】
これらの硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜及びケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長できるため好ましい。
【0073】
また上記接着剤組成物としては、ラジカル重合性物質と、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤とを含有する組成物も好ましく用いられる。
【0074】
上記ラジカル重合性物質は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、このようなラジカル重合性物質としては、アクリレート(対応するメタクリレートも含む。以下同じ)化合物、マレイミド化合物、シトラコンイミド樹脂、ナジイミド樹脂等が挙げられる。ラジカル重合性物質はモノマー又はオリゴマーの状態で用いてもよく、また、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。
【0075】
アクリレート化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要によりハドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を用いてもよい。また、耐熱性を向上させる点からは、アクリレート化合物がジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基及びトリアジン環からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基を有することが好ましい。
【0076】
マレイミド化合物は、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するものであり、このようなマレイミド化合物としては、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0077】
上記シトラコンイミド樹脂は、分子中にシトラコンイミド基を少なくとも1個有するシトラコンイミド化合物を重合させてなるものである。シトラコンイミド化合物としては、例えば、フェニルシトラコンイミド、1−メチル−2,4−ビスシトラコンイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−p−フェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスシトラコンイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0078】
上記ナジイミド樹脂は、分子中にナジイミド基を少なくとも1個有するナジイミド化合物を重合してなるものである。ナジイミド化合物としては、例えば、フェニルナジイミド、1−メチル−2,4−ビスナジイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスナジイミド、N,N’−p−フェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスナジイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスナジイミド、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−ナジイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−ナジイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0079】
上記のラジカル重合性物質に下記化学式(I)で示されるリン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を併用すると、回路電極(構成材料は、金属等の無機物等)表面に対する接着強度が向上するので好ましい。

[上記式中、nは1〜3の整数を示す。]
【0080】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質として、具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等がある。これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0081】
上記化学式(I)で示されるリン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質の配合量は、ラジカル重合性物質と必要により配合するフィルム形成材の和100重量部に対し、0.01〜50重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。
【0082】
上記ラジカル重合性物質は、アリルアクリレートと併用させることもできる。その場合、アリルアクリレートの配合量は、ラジカル重合性物質と必要により配合されるフィルム形成材との和100重量部に対し0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
【0083】
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤は、加熱により分解して遊離ラジカルを発生する硬化剤であり、このような硬化剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物等が挙げられる。このような硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定される。これらの中でも、反応性を高め、ポットライフを向上させることが可能となることから、半減期10時間の温度が40℃以上で、かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上で、かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。
【0084】
上記硬化剤の配合量は、接続時間を25秒以下とする場合、十分な反応率を得るために、ラジカル重合性物質と必要により配合されるフィルム形成材との和100重量部に対して、2〜10重量部であることが好ましく、4〜8重量部であることがより好ましい。なお、接続時間が限定されない場合の硬化剤の配合量は、ラジカル重合性物質と必要により配合されるフィルム形成材との和100重量部に対し0.05〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。
【0085】
より具体的には、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤として、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられる。また、回路電極32,42の腐食を抑えるという観点からは、硬化剤は、硬化剤中に含有される塩素イオンや有機酸の濃度が5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。このような硬化剤は、具体的には、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドから選定され、高反応性が得られるパーオキシエステルから選定されることがより好ましい。上記硬化剤は、適宜混合して用いることができる。
【0086】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0087】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0088】
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0089】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0090】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0091】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0092】
シリルパーオキサイドとしては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0093】
これらの硬化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0094】
本実施形態の回路接続材料には、必要に応じて、フィルム形成材を添加して用いてもよい。フィルム形成材とは、液状物を固形化し構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取扱いを容易とし、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械的特性等を付与するものであり、通常の状態(常温常圧)でフィルムとしての取扱いができるものである。フィルム形成材としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、接着性、相溶性、耐熱性、機械的強度に優れることからフェノキシ樹脂が好ましい。
【0095】
フェノキシ樹脂は、2官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させるか、又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類を重付加させることにより得られる樹脂である。フェノキシ樹脂は、例えば2官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015モルとをアルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下、非反応性溶媒中40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。また、フェノキシ樹脂としては、樹脂の機械的特性や熱的特性の点からは、特に2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類の配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒存在下、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分が50重量部以下の条件で50〜200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。
【0096】
上記2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。上記2官能フェノール類は、2個のフェノール性水酸基を持つものであり、このような2官能フェノール類としては、例えばハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類等が挙げられる。フェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基や、エポキシ基、その他の反応性化合物により変性されていてもよい。フェノキシ樹脂は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0097】
本実施形態の回路接続材料は、更に、アクリル酸、アクリル酸エステル及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種をモノマー成分とした重合体又は共重合体を含んでもよい。ここで、応力緩和に優れることから、グリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムを併用することが好ましい。これらアクリルゴムの分子量(重量平均分子量)は、接着剤の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。
【0098】
本実施形態の回路接続材料には、更に、ゴム微粒子、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0099】
ゴム微粒子は、粒子の平均粒径が、配合する導電粒子12の平均粒径の2倍以下であり、且つ室温(25℃)での弾性率が導電粒子12及び接着剤組成物の室温での弾性率の1/2以下であるものであればよい。特に、ゴム微粒子の材質が、シリコーン、アクリルエマルジョン、SBR、NBR、ポリブタジエンゴムである微粒子は、単独で又は2種以上を混合して用いることが好適である。3次元架橋したこれらゴム微粒子は、耐溶剤性が優れており、接着剤組成物中に容易に分散される。
【0100】
回路接続材料に充填剤を含有させる場合、接続信頼性等が向上するので好ましい。充填剤は、その最大径が導電粒子12の粒径未満であれば使用できる。充填剤の配合量は、接着剤組成物100体積部に対して5〜60体積部であることが好ましい。配合量が60体積部を超えると、接続信頼性向上効果が飽和する傾向があり、他方、5体積部未満では充填剤添加の効果が不充分となる傾向がある。
【0101】
上記カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基、エポキシ基又はイソシアネート基を含有する化合物が、接着性が向上するので好ましい。
【0102】
上記回路接続材料においては、導電粒子12は、上記接着剤組成物100体積部に対して0.1〜30体積部添加することが好ましく、その添加量は用途により使い分ける。なお、過剰な導電粒子12による隣接回路電極の短絡等を防止するためには、0.1〜10体積部添加することがより好ましい。
【0103】
なお、フィルム状回路接続材料50は、支持体(PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等)上に塗工装置(図示せず)を用いて上記回路接続材料を塗布し、所定時間熱風乾燥することにより作製することができる。
【0104】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、第一の回路部材及び第二の回路部材のいずれにおいても、回路基板の主面を基準として絶縁層の縁部が回路電極よりも厚く形成されているが、図6に示すように、例えば第二の回路部材40のみにおいて、絶縁層43の縁部43aが回路電極42よりも厚く形成されていればよく、第一の回路部材30においては、絶縁層は形成されていなくても構わない。
【実施例】
【0105】
以下、本発明の内容を、実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(導電粒子の作製)
【0106】
テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジビニルベンゼン及びスチレンモノマーの混合比を変えて、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを用いて懸濁重合し、得られた重合体を分級することで、表1及び表2に示す平均粒径及び硬度を持つ導電粒子の核体を得た。
【0107】
得られた各核体を無電解Niメッキ又は無電解Agメッキした。メッキ処理の際のメッキ液の仕込量、処理温度及び時間によりメッキ厚を変更し、目的の導電粒子No.1,3,5〜7,10〜12を得た。また、Niメッキを行った導電粒子にさらにAuを置換メッキすることで目的の導電粒子No.2,4,8,9,13,14を得た。また、Niメッキを行った導電粒子にさらにPdを置換メッキすることで目的の導電粒子No.15〜17を得た。得られた導電粒子におけるメッキ厚も併せて表1及び表2に示す。なお、表1及び表2において、導電粒子の硬度は、SI単位であるGPaで表示してあるが、参考のために、単位がkgf/mmであるデータを括弧内に併記した。


【実施例1】
【0108】
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHC、平均分子量45,000)50gを、重量比でトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40重量%の溶液とした。
【0109】
そして、この溶液に、固形分重量比でフェノキシ樹脂30g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を30g、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤としてノバキュア(旭チバ株式会社製、商品名3941HPS)を40g配合した。更に、この溶液に接着剤組成物100体積部に対して導電粒子No.1を5体積部配合分散させて、回路接続材料含有液を調製した。なお、上記潜在性硬化剤のノバキュア3941HPSは、イミダゾール変性体を核とし、その表面をポリウレタンで被覆してなる平均粒径5μmのマイクロカプセル型硬化剤を、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂中に分散したマスターバッチ型硬化剤である。
【0110】
次に、この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み80μmのPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分の熱風乾燥により、厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。
【実施例2】
【0111】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子2を用いた他は、実施例1と同様にして実施例2のフィルム状回路接続材料を得た。
【実施例3】
【0112】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子3を用いた他は、実施例1と同様にして実施例3のフィルム状回路接続材料を得た。
【実施例4】
【0113】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子4を用いた他は、実施例1と同様にして実施例4のフィルム状回路接続材料を得た。
【実施例5】
【0114】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子1を2.5体積部、導電粒子2を2.5体積部配合分散させた他は、実施例1と同様にして実施例5のフィルム状回路接続材料を得た。
【実施例6】
【0115】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子15を用いた他は、実施例1と同様にして実施例6のフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例1)
【0116】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子6を用いた他は、実施例1と同様にして比較例1のフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例2)
【0117】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子7を用いた他は、実施例1と同様にして比較例2のフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例3)
【0118】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子8を用いた他は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例4)
【0119】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子9を用いた他は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例5)
【0120】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子10を用いた他は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例6)
【0121】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子11を用いた他は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例7)
【0122】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子13を用いた他は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例8)
【0123】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子14を用いた他は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例9)
【0124】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子16を用いた他は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。
(比較例10)
【0125】
実施例1における導電粒子1の代わりに導電粒子17を用いた他は、実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。
(接続抵抗評価試験1)
(回路部材の作製)
【0126】
ポリイミドフィルム(厚み40μm)上に、ライン幅9μm、ピッチ30μmの銅回路(厚み8μm)500本を形成し、第一の回路部材としてのフレキシブル回路板(2層FPC)を作製した。また、第一の回路部材として、ポリイミド、銅箔(厚み18μm)、ポリイミドと銅箔を接着する接着剤からなる3層構成で、ライン幅7μm、ピッチ30μmのフレキシブル回路板(3層FPC)を作製した。
【0127】
一方、ガラス基板(厚み1.1mm)上に、ライン幅15μm、ピッチ30μmのインジュウム−錫酸化物(ITO)回路(厚み200nm)500本を形成し、このガラス基板上のITO回路間に窒化珪素を蒸着し、ITO回路の中心から600nm厚い絶縁層を形成して、第二の回路部材を作製した。
(回路部材の接続)
【0128】
まず第二の回路部材上に、実施例1〜6及び比較例1〜10のフィルム状回路接続材料(幅1mm)の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱しながら加圧して、フィルム状回路接続材料を第二の回路部材に仮接続してPETフィルムを剥離した。その後、第一の回路部材である2層FPCと、第二の回路部材との間に、フィルム状回路接続材料を介在させるように2層FPCを配置した。そして、第一の回路部材及び第二の回路部材を介してフィルム状回路接続材料を180℃、3MPaで10秒間加熱加圧した。こうして回路部材の接続構造を得た。また、第一の回路部材である3層FPCと第二の回路部材との接続も上記と同様にして行い、こうして回路部材の接続構造を得た。
(接続抵抗の測定)
【0129】
上記回路部材の接続構造について、初期(接続直後)と、80℃、95%RHの高温高湿槽中に1000時間保持(高温高湿処理)した後のそれぞれにおいて、マルチメータにより、回路の抵抗値を測定した。結果を表3に示す。なお、表3において、抵抗値は、隣接回路間の抵抗150点の平均値と標準偏差を3倍した値との和(x+3σ)で示した。
(回路電極上に存在する導電粒子の計数)
【0130】
回路部材の接続後、上記接続構造における各回路電極に存在する導電粒子数を顕微鏡による目視にて計数した。回路電極上の導電粒子数は、151個の電極上に存在する導電粒子の平均で示した。結果を表3に示す。
(回路接続部材の貯蔵弾性率及び平均熱膨張係数)
【0131】
実施例1〜6及び比較例1〜10のフィルム状回路接続材料の硬化処理後の、40℃における貯蔵弾性率は0.5〜3GPaの範囲にあり、平均熱膨張係数は30〜200ppm/℃の範囲にあることが確認された。

【0132】
表3に示す結果より、実施例1〜6のフィルム状回路接続材料を用いた回路部材の接続構造は、第一の回路部材が2層FPC、3層FPCのいずれの場合でも、初期において全て良好な接続抵抗を示し、高温高湿処理後の接続抵抗の上昇もほとんどないことが確認された。
【0133】
これに対し、比較例1〜10のフィルム状回路接続材料を用いた回路部材の接続構造は、初期において接続抵抗が高く、特に高温高湿処理後の接続抵抗の上昇が顕著であった。これは、比較例1,3,5,7,9のフィルム状回路接続材料を用いた回路部材の接続構造では、用いた導電粒子の硬度が柔らかすぎて高温高湿処理による対向する回路電極間の距離の変動に追随できなかったため高温高湿処理後の接続抵抗の上昇が起きたと考えられる。
【0134】
また比較例2,4,6,8,10のフィルム状回路接続材料を用いた回路部材の接続構造では、用いた導電粒子が硬すぎて十分な導電粒子の扁平が得られないため、初期の接続抵抗が高くなり、また、高温高湿処理による対向する回路電極間の距離の変動に追随できかったため高温高湿処理後の接続抵抗の上昇が起きたと考えられる。
(接続抵抗評価試験2)
(回路部材の作製)
【0135】
バンプ面積100μm×100μm、ピッチ200μm、高さ20μmの金バンプを40個配置したICチップにおいて、バンプ間に窒化珪素を蒸着し、バンプの中心から600nm厚い絶縁層を形成して第一の回路部材を作製した。
【0136】
また、ガラス基板(厚み1.1mm)上に、インジュウム−錫酸化物(ITO)で厚み200nmの回路を形成した。そして、このガラス基板上のITO回路間に窒化珪素を蒸着し、ITO回路の中心から600nm厚い絶縁層を形成して第二の回路部材を作製した。
(回路部材の接続)
【0137】
第一の回路部材として、2層FPC又は3層FPCに代えて、上記ICチップを用いた以外は、評価試験1の場合と同様にして第一の回路部材と第二の回路部材を接続し、回路部材の接続構造を得た。
(接続抵抗の測定)
【0138】
上記のようにして得た接続構造について、回路部材の接続後の初期と、高温高湿処理した後のそれぞれについて、評価試験1と同様の方法で接続抵抗を測定した。結果を表4に示す。なお、表4において、抵抗値は、隣接回路間の抵抗150点の平均値と標準偏差を3倍した値との和(x+3σ)で示した。
(回路電極上に存在する導電粒子の計数)
【0139】
回路部材の接続後、上記接続構造における各回路電極に存在する導電粒子数を評価試験1と同様の方法で計数した。回路電極上の導電粒子数は、40個の電極上に存在する導電粒子の平均で示した。結果を表4に示す。

【0140】
実施例1〜6のフィルム状回路接続材料を用いた回路部材の接続構造は、評価試験1の2層FPC又は3層FPCに代えて、上記ICチップを第一の回路部材として用いた場合においても、初期において全て良好な接続抵抗を示し、高温高湿処理後の接続抵抗の上昇もほとんどないことが確認された。
【0141】
これに対し、比較例1〜10のフィルム状回路接続材料を用いた回路部材の接続構造は、評価試験1の場合と同様に、初期において接続抵抗が高く、特に高温高湿処理後の接続抵抗の上昇が顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上説明したように本発明の回路接続材料、回路部材の接続構造及びその製造方法によれば、対向する回路部材同士を接続する場合に、対向する回路電極間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0143】
また本発明のフィルム状回路接続材料によれば、上記効果に加えて第一の回路部材と第二の回路部材とを接続する際に、それらの間に容易に介在させることができ、第一の回路部材と第二の回路部材との接続作業を容易に行うことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極及び第一の絶縁層が隣接して形成された第一の回路部材、並びに第二の回路基板の主面上に第二の回路電極及び第二の絶縁層が隣接して形成された第二の回路部材であって、前記第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において前記絶縁層の少なくとも一部が前記主面を基準として前記回路電極より厚く形成されている前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材、を接続するための回路接続材料であって、
接着剤組成物及び、平均粒径が1μm以上10μm未満であり且つ硬度が1.961〜6.865GPaである導電粒子を含有し、
硬化処理により40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPaとなり、硬化処理後の25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃となる、回路接続材料。
【請求項2】
前記導電粒子が、有機高分子からなる核体と、該核体上に形成された銅、ニッケル、ニッケル合金、銀又は銀合金からなる金属層とを備えており、前記金属層の厚さが50〜170nmである、請求項1記載の回路接続材料。
【請求項3】
前記導電粒子が、金又はパラジウムからなる最外層を備えており、前記最外層の厚さが15〜70nmである、請求項1又は2に記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記接着剤組成物が、エポキシ樹脂と、前記エポキシ樹脂の潜在性硬化剤とを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項5】
前記接着剤組成物が、ラジカル重合性物質と、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤とを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項6】
硬化処理によりガラス転移温度が60〜200℃となる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項7】
フィルム形成材を更に含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項8】
前記フィルム形成材がフェノキシ樹脂である、請求項7記載の回路接続材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の回路接続材料をフィルム状に形成してなる、フィルム状回路接続材料。
【請求項10】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極及び前記第一の絶縁層が隣接して形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板の主面上に第二の回路電極及び第二の絶縁層が隣接して形成された第二の回路部材と、
前記第一の回路部材の主面と前記第二の回路部材の主面との間に設けられ、前記第一及び第二の回路部材同士を接続する回路接続部材と、
を備え、前記第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において、前記絶縁層の少なくとも一部が前記回路基板の主面を基準として前記回路電極より厚く形成されている回路部材の接続構造であって、
前記回路接続部材が、絶縁性物質及び、平均粒径が1μm以上10μm未満であり且つ硬度が1.961〜6.865GPaである導電粒子を含有し、
前記回路接続部材の40℃における貯蔵弾性率が0.5〜3GPaであり且つ25℃から100℃までの平均熱膨張係数が30〜200ppm/℃であり、
前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが、前記導電粒子を介して電気的に接続されている、回路部材の接続構造。
【請求項11】
前記導電粒子が、有機高分子からなる核体と、該核体上に形成された銅、ニッケル、ニッケル合金、銀又は銀合金からなる金属層とを備えており、前記金属層の厚さが50〜170nmである、請求項10に記載の回路部材の接続構造。
【請求項12】
前記導電粒子が、金又はパラジウムからなる最外層を備えており、前記最外層の厚さが15〜70nmである、請求項10又は11に記載の回路部材の接続構造。
【請求項13】
前記絶縁層の少なくとも一部が前記回路基板の主面を基準として前記回路電極より厚く形成されている回路部材において、前記絶縁層の少なくとも一部の厚さと前記回路電極の厚さとの差が50〜600nmである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の回路部材の接続構造。
【請求項14】
前記回路接続部材のガラス転移温度が60〜200℃である、請求項10〜13のいずれか一項に記載の回路部材の接続構造。
【請求項15】
前記絶縁層が、有機絶縁性物質、二酸化珪素及び窒化珪素のいずれかから構成されている、請求項10〜14のいずれか一項に記載の回路部材の接続構造。
【請求項16】
前記第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において、前記回路電極の表面積が15000μm以下であり、且つ、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極との間における平均導電粒子数が3個以上である、請求項10〜15のいずれか一項に記載の回路部材の接続構造。
【請求項17】
前記第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において、前記回路電極が、金、銀、錫、白金族の金属又はインジウム錫酸化物で構成される表面層を有する、請求項10〜16のいずれか一項に記載の回路部材の接続構造。
【請求項18】
前記第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において、前記回路基板が、有機絶縁性物質、ガラス又はシリコンで構成されている、請求項10〜17のいずれか一項に記載の回路部材の接続構造。
【請求項19】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極及び前記第一の絶縁層が隣接して形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板の主面上に第二の回路電極及び第二の絶縁層が隣接して形成された第二の回路部材と、
前記第一の回路部材の主面と前記第二の回路部材の主面との間に設けられ、前記第一及び第二の回路部材同士を接続する回路接続部材と、
を備え、前記第一及び第二の回路部材の少なくとも一方において、前記絶縁層の少なくとも一部が前記回路基板の主面を基準として前記回路電極より厚く形成されている回路部材の接続構造の製造方法であって、
前記第一の回路基板の主面と前記第二の回路基板の主面との間に請求項9に記載のフィルム状回路接続材料を介在させ、
前記第一及び第二の回路部材を介して前記回路接続材料を加熱及び加圧して硬化処理することにより前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接続し、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを前記導電粒子を介して電気的に接続させる、回路部材の接続構造の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/002002
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511036(P2005−511036)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008896
【国際出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】