回転伝達装置及びこれを使用した直動テーブル装置
【課題】簡易な構成で、且つ電気的に制御することなく、正逆転回転駆動される第1の被駆動軸の回転力を第2の被駆動軸に一方向回転力として伝達することができる回転伝達装置及びこれを使用した直動テーブル装置を提供する。
【解決手段】正逆転駆動する回転駆動源5によって正逆回転駆動される第1の被駆動軸2と、一方向回転される第2の被駆動軸16と、前記第1の被駆動軸の回転力を同一方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第1の回転伝達機構20と、前記第1の被駆動軸の回転力を逆方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第2の回転伝達機構21と、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構に個別に介挿された前記第2の被駆動軸を一方向に回転駆動するときに締結状態となる1方向クラッチ20d,21cとを備えている。
【解決手段】正逆転駆動する回転駆動源5によって正逆回転駆動される第1の被駆動軸2と、一方向回転される第2の被駆動軸16と、前記第1の被駆動軸の回転力を同一方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第1の回転伝達機構20と、前記第1の被駆動軸の回転力を逆方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第2の回転伝達機構21と、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構に個別に介挿された前記第2の被駆動軸を一方向に回転駆動するときに締結状態となる1方向クラッチ20d,21cとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正逆転駆動される被駆動軸の正逆転回転力を他の被駆動軸に1方向回転力として伝達する回転伝達装置及びこれを使用した直動テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転駆動装置としては、1方向に回転駆動される入力軸にサンギヤを固定子、リングギヤとの間に第1ピニオンと第2ピニオンとを組み込み、回転自在に支持するキャリアを出力軸に一体化し、リングギヤに設けられたクラッチドラムとハウジングとの間に、逆転用クラッチと係合及び解除を制御する第1電磁クラッチとを組み込み、さらにクラッチドラムと出力軸との間に正転用クラッチと係合及び解除を制御する第2電磁クラッチとを組み込み、正転用クラッチの係合によって出力軸を入力軸と同方向に回転させ、逆転用クラッチの係合によって出力軸を入力軸と逆方向に回転させるようにした正逆回転切換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−198495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、一方向に回転駆動される入力軸の回転駆動力を出力軸に正逆転駆動するように伝達することができるものであり、出力軸に電動モータを連結することにより入力軸を正逆転駆動することができるものであるが、何れにしても遊星歯車機構と、正転クラッチ及び逆転クラッチと、これら正転クラッチ及び逆転クラッチを制御する第1及び第2の電磁クラッチとを必要とするので、装置が大型化すると共に、正逆転に応じて第1及び第2の電磁クラッチを作動させる必要があり、その制御系も複雑となるという未解決の課題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、簡易な構成で、且つ電気的に制御することなく、正逆転回転駆動される第1の被駆動軸の回転力を第2の被駆動軸に一方向回転力として伝達することができる回転伝達装置及びこれを使用した直動テーブル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る回転伝達装置は、正逆転駆動する回転駆動源によって正逆回転駆動される第1の被駆動軸と、一方向回転される第2の被駆動軸と、前記第1の被駆動軸の回転力を同一方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第1の回転伝達機構と、前記第1の被駆動軸の回転力を逆方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第2の回転伝達機構と、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構に個別に介挿された前記第2の被駆動軸を一方向に回転駆動するときに締結状態となる1方向クラッチとを備えたことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に係る回転伝達装置は、請求項1に係る発明において、前記第1の被駆動軸はボールねじ軸で構成され、該ボールねじ軸に螺合するナットに移動台が連結されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る回転伝達装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記第2の被駆動軸は排気ファンを駆動するファン駆動軸であることを特徴としている。
【0007】
さらにまた、請求項4に係る回転伝達装置は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構の何れか一方は歯車式動力伝達機構で構成され、他方はベルト式動力伝達機構で構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る発明は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構の何れか一方が前記第1の被駆動軸及び前記第2の被駆動軸に個別に連結された一対のプーリと、該一対のプーリ間にオープン状態で張設された帯状体とで構成され、他方が前記第1の被駆動軸及び前記第2の被駆動軸に個別に連結された一対のプーリと、該一対のプーリ間にクロス状態で張設された帯状体とで構成されていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項6に係る直動テーブル装置は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転伝達装置を使用したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正逆転駆動される第1の被駆動軸の回転力を第2の被駆動軸に、同一方向回転力として伝達する第1の回転伝達機構と、逆方向回転力として伝達する第2の回転伝達機構とを設け、両回転力伝達機構に、前記第2の被駆動軸が一方向に回転する際に締結状態となる一方向クラッチを介挿したので、正逆転駆動される第1の被駆動軸の回転力を一方向回転力として第2の被駆動軸に伝達することができ、このための構成を簡易化することができると共に、電気的制御を行うことなく正逆回転力を一方向回転力に変換することができるという効果が得られる。
【0010】
また、上記構成を有する回転伝達機構を使用して直動テーブル装置を構成することにより、第1の被駆動軸をねじ軸として、これに螺合するナットでテーブルを支持する移動台を往復動させ、この移動台の往復動に応じて排気ファン等の一方向回転駆動される負荷を回転駆動させることができ、直動テーブルの往復駆動と他の負荷の一方向回転駆動とを1つの回転駆動源で駆動することができ、直動テーブルと負荷とに対して個別の回転駆動源を設ける必要がなく、全体の構成を簡易化することができると共に、直動テーブルが往復動している場合のみ負荷を一方向回転駆動することができ、負荷の回転を個別に制御する必要がないという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を直動テーブル装置に適用した場合の一例を示す平面図、図2は図1のA−A線上の断面図、図3は図1のB−B線上の断面図、図4は図2のB−B線上の断面図、図5は図1のC−C線上の断面図、図6は図1のD−D線上の断面図、図7は図2の側面図である。
【0012】
図1〜図3において、TDは直動テーブル装置であって、この直動テーブル装置TDは例えば上面に開口部1aを有する直方体状のケース体1を有する。このケース体1の中心軸位置に第1の被駆動軸としてのボールねじ軸2が左右両端側に配設した転がり軸受を備えた支持部3a及び3bで回転自在に支持されている。
このボールねじ軸2の左端にはカップリング4を介してケース体1の左端面1bの外側に固定された電動モータ5の正逆転駆動される出力軸5aに連結されている。ここで、電動モータ5は、図2に示すように、ケーシング5bがケース体1の左端面1bに形成された透孔1cの外側に出力軸5aを突出させた状態で固定されている。
【0013】
そして、ボールねじ軸2にはボールナット6が螺合されており、このボールナット6にケース体1の開口部1a内に露出する移動台7が連結されている。この移動台7は、図4に示すように、ケース体1の開口部1aに対向する下部に長手方向に沿って配設された前後一対の案内レール8a及び8bとこれら案内レール8a及び8bに案内されるスライダ9a及び9bとで構成されるリニアガイド10によって直動案内される。
【0014】
ここで、移動台7はケース体1の開口部1aを形成する前後側縁に沿って延長しケース体1の上面より上方に突出する前後一対の支持部7a及7bが形成され、これら支持部7a及び7bに図4で一点鎖線図示の直動テーブル11が載置される。そして、移動台7における支持部7a及び7b間の左端部に、図3でとくに明らかなように、ケース体1の開口部1aを略閉塞するシールベルト12の一端が固定されている。このシールベルト12の他端は、ケース体1の左側板1bの内部に配設された上下一対のガイドローラ13u及び13dと右側板1dの内部に配設された上下一対のガイドローラ14d及び14uとをその順に繞って移動台7の右端に固定されている。
【0015】
一方、ケース体1の右端には、回転伝達機構収容部15が形成され、この回転伝達機構収容部15には、ボールねじ軸2の右端が支持部3bより右方に突出して右側板1dを貫通して延長され、このボールねじ軸2の延長部と対向する下端側に第2の被駆動軸としてのファン駆動軸16がボールねじ軸2と平行にケース体1の右側板1dに配設された転がり軸受17によって回転自在に片持ち支持されている。
【0016】
そして、回転伝達機構収容部15内において、ボールねじ軸2とファン駆動軸16との間に、ボールねじ軸2の回転方向と同一方向の回転力をファン駆動軸16に伝達する第1の回転伝達機構としてのベルト式回転力伝達機構20と、ボールねじ軸2の回転方向と逆方向の回転力をファン駆動軸16に伝達する第2の回転伝達機構としての歯車式回転力伝達機構21とが配設されている。
【0017】
ここで、ベルト式回転力伝達機構20は、図5に示すように、ボールねじ軸2に固定された比較的大径のプーリ20aと、ファン駆動軸16に固定された比較的小径のプーリ20bと、両プーリ20a及び20b間にオープンループに張設された無端ベルト20cと、ボールねじ軸2とプーリ20aとの間、又はファン駆動軸16とプーリ20bとの間、この例ではファン駆動軸16とプーリ20bとの間に介挿された例えばボールねじ軸2の正転方向の回転力をファン駆動軸16に伝達するが、ボールねじ軸2の逆転方向の回転力では滑ってファン駆動軸16に伝達しない一方向クラッチとしてのワンウェイクラッチ20dとで構成されている。このため、ベルト式回転力伝達機構20ではボールねじ軸2の回転方向と同一方向の回転力をファン駆動軸16に伝達可能に構成されており、ワンウェイクラッチ20dによって、ボールねじ軸2を正転させたときに、その正転方向の回転力をファン駆動軸16に加速して伝達するが、ボールねじ軸2を逆転させたときに、その逆転方向の回転力についてはファン駆動軸16に伝達しない構成とされている。
【0018】
また、歯車式回転力伝達機構21は、図6に示すように、ボールねじ軸2にプーリ20aの右端側に取付けられた比較的大径の平歯車21aと、ファン駆動軸16のプーリ20bの外側に取付けられた比較的小径で、平歯車21aと噛合する平歯車21bと、ボールねじ軸2と平歯車21aとの間、又はファン駆動軸16と平歯車20bとの間、この例ではファン駆動軸16と平歯車21baとの間に介挿された例えばボールねじ軸2の逆転方向の回転力をファン駆動軸16に伝達するが、ボールねじ軸2の正転方向の回転力では滑ってファン駆動軸16に伝達しない一方向クラッチとしてのワンウェイクラッチ21cとで構成されている。このため、歯車式回転力伝達機構21ではボールねじ軸2の回転方向と逆方向の回転力をファン駆動軸16に伝達可能に構成されており、ワンウェイクラッチ21dによって、ボールねじ軸2を正転させたときに、その正転方向の回転力をファン駆動軸16に伝達しないが、ボールねじ軸2を逆転させたときに、その逆転方向の回転力をファン駆動軸16に加速して伝達する構成とされている。
【0019】
ここで、ベルト式回転駆動機構20のプーリ20a及び20bの回転数比と歯車式回転駆動機構21の平歯車21a及び21bのギヤ比とが略等しく設定され、ボールねじ軸2の正逆転回転速度が一定である場合に、ファン駆動軸16の一方向回転速度が正逆転切換時を除いて略一定の高速度となるように設定されている。
そして、ファン駆動軸16が、その正転時にケース体1内の空気を外部に排出する排気ファン25に連結されている。この排気ファン25は回転伝達機構収容部15の右端面に形成されたファン収容部26に回転自在に配設されている。また、ケース体1内と回転伝達機構収容部15内とが、右側板1dに形成された透孔27によって連通されている。
【0020】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、電動モータ5が停止しており、ボールねじ軸2、ベルト式回転伝達機構20及び歯車式回転伝達機構21、ファン駆動軸16及び排気ファン25が回転停止状態であり、移動台7が、図2に示すように、ケース体1の開口部1aの右端側に停止しているものとする。
【0021】
この停止状態から移動台7を左端側に移動させるには、電動モータ5を、その出力軸5aが左端面側からみて時計方向に回転するように正転駆動する。このように、電動モータ5を正転駆動することにより、その出力軸5aに連結されたボールねじ軸2が左端面からみて反時計方向に回転する正転状態となり、これに応じてボールナット6が左動して移動台7が左動する。
【0022】
このとき、ボールねじ軸2の正転によってベルト式回転伝達機構20のプーリ20aが左端側から見て時計方向に回転し、この時計方向の回転力が無端ベルト20cによってプーリ20bに伝達されて、このプーリ20bが左端側から見て時計方向に回転する。このとき、プーリ20bとファン駆動軸16との間に介挿されたワンウェイクラッチ20dはプーリ20bの時計方向の回転に対しては滑ることなく締結状態となる。このため、プーリ20bの時計方向の回転力がワンウェイクラッチ20dを介してファン駆動軸16に伝達されて、このファン駆動軸16が時計方向に正転駆動され、これに応じて排気ファン25が正転駆動されてケース体1内の空気を塵埃と共に右側板1dに形成された透孔27を通じて吸引してケース体1外に排気する。このため、ケース体1内が負圧となることにより、ケース体1内で発生した微小な粉塵等の塵埃がケース体1の開口部1aとシールベルト12との隙間から上方に漏れ出すことを防止することができる。したがって、排気ファン25から排気される塵埃を含む空気を適宜処理することにより、クリーンルーム等の発塵が問題なとなる環境でも別途内部吸引手段を設けることなく1軸テーブルの使用が可能となる。
【0023】
ところが、歯車式回転伝達機構21では、ボールねじ軸2の正転によって平歯車21aが左端側から見て時計方向に回転し、この平歯車21aに噛合する平歯車21bは左端側から見て反時計方向に回転することになるため、この平歯車21bとファン駆動軸16との間に介挿したワンウェイクラッチ21cが滑って非締結状態となり、平歯車21の反時計方向の回転力はファン駆動軸16に伝達されることはない。
【0024】
その後、移動台7が所望位置に達すると、電動モータ5の回転が停止されることにより、ボールねじ軸2の正転が停止され、これに応じてボールナット6及び移動台7の左動が停止される。これと共に、ベルト式回転伝達機構20によって正転駆動されていたファン駆動軸16も停止して、排気ファン25が停止する。
その後、電動モータ5を、その出力軸5aが左端側から反時計方向に逆転させる逆転駆動状態とすると、これに応じてボールねじ軸2が左端側から見て反時計方向に逆転することにより、ボールナット6及び移動台7が右動を開始する。
【0025】
このように、ボールねじ軸2が逆転駆動されると、ベルト式回転伝達機構20では、プーリ20aが左端側から見て反時計方向に逆転駆動され、この反時計方向回転力が無端ベルト20cを介してプーリ20bに反時計方向の回転力として伝達される。このため、プーリ20bとファン駆動軸16との間に介挿されたワンウェイクラッチ20dが滑って非締結状態となり、プーリ20bの反時計方向の回転力がファン駆動軸16に伝達されることが阻止される。
【0026】
一方、歯車式回転伝達機構21では、ボールねじ軸2に取付けられた平歯車21aが左端側から見て反時計方向に回転するが、この平歯車21aに噛合する平歯車21bは時計方向に回転することになり、この平歯車21bとファン駆動軸16との間に介挿されたワンウェイクラッチ21cは締結状態となって、平歯車21bの左端から見て時計方向の回転力をファン駆動軸16に伝達する。このため、ファン駆動軸16が前述したボールねじ軸2の正転状態と同様に正転駆動されることになり、排気ファン25が正転されてケース体1内の塵埃を含む空気を外部に排気する排気状態となる。
【0027】
このように、上記第1の実施形態によると、移動台7を往復動させるボールねじ軸2を正逆転駆動した場合に、正転時にはベルト式回転伝達機構20によってファン駆動軸16を正転駆動し、逆転時には歯車式回転伝達機構21でファン駆動軸16を正転駆動することができ、移動台7の往復動と排気ファン25の正転駆動とを一つの電動モータ5で駆動することができ、排気ファン25用に独立した電動モータを設ける必要がなく全体の構成を簡易小型化することができる。
【0028】
しかも、ベルト式回転伝達機構20及び歯車式回転伝達機構21の夫々がワンウェイクラッチ20d及び21cによる機械的なクラッチを有するだけでボールねじ軸2の正逆転に応じて適宜選択されるので、電磁クラッチ等の電気的な制御系を設ける必要がなく、廉価に構成することができる。
なお、上記実施形態においては、第1の被駆動軸としてボールねじ軸2を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、単なるねじ軸2を適用し、これにナットを螺合させるようにしてもよい。さらに、回転駆動源としては電動モータ5に限らず、油圧モータ、エンジン等の他の回転駆動源を適用することができる。
【0029】
また、上記実施形態において、ボールねじ軸2とファン駆動軸16との間の回転伝達装置として、ベルト式回転伝達機構20と歯車式回転伝達機構21とを設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図8及び図9に示すように、歯車式回転伝達機構21を省略し、これに代えて襷掛けベルト式回転伝達機構31を適用するようにしてもよい。すなわち、襷掛けベルト式回転伝達機構31は、ボールねじ軸2に連結されたプーリ31aとファン駆動軸16にワンウェイクラッチ31dを介して連結されたプーリ31bとの間に、無端ベルト31cを両者間でクロスさせるクロス状態で張設された構成を有する。この襷掛けベルト式回転伝達機構31では、ボールねじ軸2が逆転駆動されたときに、プーリ31bを正転駆動して、ワンウェイクラッチ31dを締結状態とし、ファン駆動軸16を正転駆動することができる。
【0030】
さらに、ボールねじ軸2の正逆転駆動時におけるファン駆動軸16の回転速度に許容差を見込める場合には、ベルト式回転伝達機構20を省略し、これに代えて、図10に示すように、歯車式回転伝達機構21の平歯車21aの外径を平歯車21bと噛合しない程度に小さくし、平歯車21aと平歯車21bとの間にアイドラ歯車21dを噛合させる歯車式回転伝達機構32を適用することもできる。この場合には、平歯車21aが正転したときに、アイドラ歯車21dが逆転し、平歯車21bが正転することになり、平歯車21bの正転時にワンウェイクラッチ21cを締結状態としてファン駆動軸16を正転駆動するようにしてもよい。さらには、歯車式回転伝達機構32と襷掛けベルト式回転伝達機構31とを対で設けるようにしてもよい。
【0031】
さらにまた、上記実施形態においては、ベルト式回転伝達機構20を適用した場合について説明したが、これに代えてボールねじ軸2及びファン駆動軸16に夫々スプロケットを配設し、これらスプロケット間に無端チェーンを巻回するようにしてもよい。
なおさらに、上記実施形態においては、ボールねじ軸2が正逆転駆動されるときに、ファン駆動軸16を正転駆動する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ワンウェイクラッチ20d及び21cを逆転駆動時に締結状態となるように組み込むことにより、ファン駆動軸16を逆転駆動することができる。
【0032】
また、上記実施形態においては、歯車式回転伝達機構21を平歯車で構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、はすば歯車、やまば歯車、内歯車対等を適用することができる。
さらに、上記実施形態においては、ボールねじ軸2とファン駆動軸16とが平行である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、両者が直交する場合にはベルト式回転伝達機構20については無端ベルト20cを捩じらすだけでよく、歯車式回転伝達機構21についてはすぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車、交差軸フェースギヤ、ねじ歯車等を適用することができる。
【0033】
さらにまた、上記実施形態においては、回転伝達機構20及び21で増速する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ボールねじ軸2とファン駆動軸16とを等速駆動したり、ファン駆動軸16を減速駆動したりすることもできる。
なおさらに、上記実施形態においては、第2の被駆動軸としてファン駆動軸16を適用し、このファン駆動軸16にファン25を連結した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図11(a)及び(b)に示すように、第2の被駆動軸16に減速機構40を介してボールねじ軸2と直交する方向に配設された搬送コンベヤ41の駆動軸42を連結して、搬送コンベヤ41を一方向に回転駆動するようにしてもよい。ここで、減速機構40は例えば被駆動軸16に装着された小径のプーリ40aと駆動軸42に装着された大径のプーリ40bとこれらプーリ40a及び40b間に巻装されたベルト40cとで構成されているが、これに限定されるものではなく、歯車式減速機構やベルト式無段変速機構等を適用することができる。また、搬送コンベヤ41は、駆動軸42が一対の支柱41a及び41bに支持されている他、従動軸43及び44が同様に支柱42a及び42bに支持され、駆動軸42及び従動軸43,44に夫々大径のローラ45が装着され、これらローラ45を巡って搬送無端ベルト46が装着された構成を有する。
【0034】
この搬送コンベヤ41としては、上記ベルトコンベヤ形式に限定されるものではなく、フレームに所定間隔でローラを回転自在に配設し、各ローラをチェーンで連結すると共に、一つのローラを駆動軸42に連結するようにしてローラコンベヤ形式とすることもできる。
また、搬送コンベヤ41の搬送方向は、ボールねじ軸2と直交する方向に限定されるものではなく、傘歯車、ウォーム歯車等を使用して、ボールねじ軸2と沿う方向としたり、ボールねじ軸2に対して任意の角度の搬送方向とすることができる。
【0035】
さらに、上記実施形態においては、本発明を1軸テーブル装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回転駆動源によって、正逆転駆動される第1の被駆動軸と、この第1の被駆動軸に連結されて正転又は逆転駆動される第2の被駆動軸とを有する構成であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を1軸テーブル装置に適用した場合の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線上の断面図である。
【図3】図1のB−B線上の断面図である。
【図4】図2のC−C線上の断面図である。
【図5】図2のD−D線上の断面図である。
【図6】図2のE−E線上の断面図である。
【図7】図2の側面図である。
【図8】本発明の変形例を示す要部の断面図である。
【図9】図8のF−F線上の断面図である。
【図10】歯車式回転伝達機構の他の例を示す図である。
【図11】本発明を搬送コンベヤに適用した場合の実施形態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のG−G線上の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
TD…直動テーブル装置、1…ケース体、2…ボールねじ軸、3a,3b…支持部、4…カップリング、5…電動モータ、6…ボールナット、7…移動台、10…リニアガイド、12…シールベルト、15…回転伝達機構収容部、16…ファン駆動軸、20…ベルト式回転伝達機構、20a、20b…プーリ、20c…無端ベルト、20d…ワンウェイクラッチ、21…歯車式回転伝達機構、21a,21b…平歯車、21c…ワンウェイクラッチ、25…排気ファン、30…襷掛けベルト式回転伝達機構、31…歯車式回転伝達機構、40…減速機構、41…搬送コンベヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、正逆転駆動される被駆動軸の正逆転回転力を他の被駆動軸に1方向回転力として伝達する回転伝達装置及びこれを使用した直動テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転駆動装置としては、1方向に回転駆動される入力軸にサンギヤを固定子、リングギヤとの間に第1ピニオンと第2ピニオンとを組み込み、回転自在に支持するキャリアを出力軸に一体化し、リングギヤに設けられたクラッチドラムとハウジングとの間に、逆転用クラッチと係合及び解除を制御する第1電磁クラッチとを組み込み、さらにクラッチドラムと出力軸との間に正転用クラッチと係合及び解除を制御する第2電磁クラッチとを組み込み、正転用クラッチの係合によって出力軸を入力軸と同方向に回転させ、逆転用クラッチの係合によって出力軸を入力軸と逆方向に回転させるようにした正逆回転切換装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−198495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、一方向に回転駆動される入力軸の回転駆動力を出力軸に正逆転駆動するように伝達することができるものであり、出力軸に電動モータを連結することにより入力軸を正逆転駆動することができるものであるが、何れにしても遊星歯車機構と、正転クラッチ及び逆転クラッチと、これら正転クラッチ及び逆転クラッチを制御する第1及び第2の電磁クラッチとを必要とするので、装置が大型化すると共に、正逆転に応じて第1及び第2の電磁クラッチを作動させる必要があり、その制御系も複雑となるという未解決の課題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、簡易な構成で、且つ電気的に制御することなく、正逆転回転駆動される第1の被駆動軸の回転力を第2の被駆動軸に一方向回転力として伝達することができる回転伝達装置及びこれを使用した直動テーブル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る回転伝達装置は、正逆転駆動する回転駆動源によって正逆回転駆動される第1の被駆動軸と、一方向回転される第2の被駆動軸と、前記第1の被駆動軸の回転力を同一方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第1の回転伝達機構と、前記第1の被駆動軸の回転力を逆方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第2の回転伝達機構と、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構に個別に介挿された前記第2の被駆動軸を一方向に回転駆動するときに締結状態となる1方向クラッチとを備えたことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に係る回転伝達装置は、請求項1に係る発明において、前記第1の被駆動軸はボールねじ軸で構成され、該ボールねじ軸に螺合するナットに移動台が連結されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る回転伝達装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記第2の被駆動軸は排気ファンを駆動するファン駆動軸であることを特徴としている。
【0007】
さらにまた、請求項4に係る回転伝達装置は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構の何れか一方は歯車式動力伝達機構で構成され、他方はベルト式動力伝達機構で構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る発明は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構の何れか一方が前記第1の被駆動軸及び前記第2の被駆動軸に個別に連結された一対のプーリと、該一対のプーリ間にオープン状態で張設された帯状体とで構成され、他方が前記第1の被駆動軸及び前記第2の被駆動軸に個別に連結された一対のプーリと、該一対のプーリ間にクロス状態で張設された帯状体とで構成されていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項6に係る直動テーブル装置は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転伝達装置を使用したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正逆転駆動される第1の被駆動軸の回転力を第2の被駆動軸に、同一方向回転力として伝達する第1の回転伝達機構と、逆方向回転力として伝達する第2の回転伝達機構とを設け、両回転力伝達機構に、前記第2の被駆動軸が一方向に回転する際に締結状態となる一方向クラッチを介挿したので、正逆転駆動される第1の被駆動軸の回転力を一方向回転力として第2の被駆動軸に伝達することができ、このための構成を簡易化することができると共に、電気的制御を行うことなく正逆回転力を一方向回転力に変換することができるという効果が得られる。
【0010】
また、上記構成を有する回転伝達機構を使用して直動テーブル装置を構成することにより、第1の被駆動軸をねじ軸として、これに螺合するナットでテーブルを支持する移動台を往復動させ、この移動台の往復動に応じて排気ファン等の一方向回転駆動される負荷を回転駆動させることができ、直動テーブルの往復駆動と他の負荷の一方向回転駆動とを1つの回転駆動源で駆動することができ、直動テーブルと負荷とに対して個別の回転駆動源を設ける必要がなく、全体の構成を簡易化することができると共に、直動テーブルが往復動している場合のみ負荷を一方向回転駆動することができ、負荷の回転を個別に制御する必要がないという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を直動テーブル装置に適用した場合の一例を示す平面図、図2は図1のA−A線上の断面図、図3は図1のB−B線上の断面図、図4は図2のB−B線上の断面図、図5は図1のC−C線上の断面図、図6は図1のD−D線上の断面図、図7は図2の側面図である。
【0012】
図1〜図3において、TDは直動テーブル装置であって、この直動テーブル装置TDは例えば上面に開口部1aを有する直方体状のケース体1を有する。このケース体1の中心軸位置に第1の被駆動軸としてのボールねじ軸2が左右両端側に配設した転がり軸受を備えた支持部3a及び3bで回転自在に支持されている。
このボールねじ軸2の左端にはカップリング4を介してケース体1の左端面1bの外側に固定された電動モータ5の正逆転駆動される出力軸5aに連結されている。ここで、電動モータ5は、図2に示すように、ケーシング5bがケース体1の左端面1bに形成された透孔1cの外側に出力軸5aを突出させた状態で固定されている。
【0013】
そして、ボールねじ軸2にはボールナット6が螺合されており、このボールナット6にケース体1の開口部1a内に露出する移動台7が連結されている。この移動台7は、図4に示すように、ケース体1の開口部1aに対向する下部に長手方向に沿って配設された前後一対の案内レール8a及び8bとこれら案内レール8a及び8bに案内されるスライダ9a及び9bとで構成されるリニアガイド10によって直動案内される。
【0014】
ここで、移動台7はケース体1の開口部1aを形成する前後側縁に沿って延長しケース体1の上面より上方に突出する前後一対の支持部7a及7bが形成され、これら支持部7a及び7bに図4で一点鎖線図示の直動テーブル11が載置される。そして、移動台7における支持部7a及び7b間の左端部に、図3でとくに明らかなように、ケース体1の開口部1aを略閉塞するシールベルト12の一端が固定されている。このシールベルト12の他端は、ケース体1の左側板1bの内部に配設された上下一対のガイドローラ13u及び13dと右側板1dの内部に配設された上下一対のガイドローラ14d及び14uとをその順に繞って移動台7の右端に固定されている。
【0015】
一方、ケース体1の右端には、回転伝達機構収容部15が形成され、この回転伝達機構収容部15には、ボールねじ軸2の右端が支持部3bより右方に突出して右側板1dを貫通して延長され、このボールねじ軸2の延長部と対向する下端側に第2の被駆動軸としてのファン駆動軸16がボールねじ軸2と平行にケース体1の右側板1dに配設された転がり軸受17によって回転自在に片持ち支持されている。
【0016】
そして、回転伝達機構収容部15内において、ボールねじ軸2とファン駆動軸16との間に、ボールねじ軸2の回転方向と同一方向の回転力をファン駆動軸16に伝達する第1の回転伝達機構としてのベルト式回転力伝達機構20と、ボールねじ軸2の回転方向と逆方向の回転力をファン駆動軸16に伝達する第2の回転伝達機構としての歯車式回転力伝達機構21とが配設されている。
【0017】
ここで、ベルト式回転力伝達機構20は、図5に示すように、ボールねじ軸2に固定された比較的大径のプーリ20aと、ファン駆動軸16に固定された比較的小径のプーリ20bと、両プーリ20a及び20b間にオープンループに張設された無端ベルト20cと、ボールねじ軸2とプーリ20aとの間、又はファン駆動軸16とプーリ20bとの間、この例ではファン駆動軸16とプーリ20bとの間に介挿された例えばボールねじ軸2の正転方向の回転力をファン駆動軸16に伝達するが、ボールねじ軸2の逆転方向の回転力では滑ってファン駆動軸16に伝達しない一方向クラッチとしてのワンウェイクラッチ20dとで構成されている。このため、ベルト式回転力伝達機構20ではボールねじ軸2の回転方向と同一方向の回転力をファン駆動軸16に伝達可能に構成されており、ワンウェイクラッチ20dによって、ボールねじ軸2を正転させたときに、その正転方向の回転力をファン駆動軸16に加速して伝達するが、ボールねじ軸2を逆転させたときに、その逆転方向の回転力についてはファン駆動軸16に伝達しない構成とされている。
【0018】
また、歯車式回転力伝達機構21は、図6に示すように、ボールねじ軸2にプーリ20aの右端側に取付けられた比較的大径の平歯車21aと、ファン駆動軸16のプーリ20bの外側に取付けられた比較的小径で、平歯車21aと噛合する平歯車21bと、ボールねじ軸2と平歯車21aとの間、又はファン駆動軸16と平歯車20bとの間、この例ではファン駆動軸16と平歯車21baとの間に介挿された例えばボールねじ軸2の逆転方向の回転力をファン駆動軸16に伝達するが、ボールねじ軸2の正転方向の回転力では滑ってファン駆動軸16に伝達しない一方向クラッチとしてのワンウェイクラッチ21cとで構成されている。このため、歯車式回転力伝達機構21ではボールねじ軸2の回転方向と逆方向の回転力をファン駆動軸16に伝達可能に構成されており、ワンウェイクラッチ21dによって、ボールねじ軸2を正転させたときに、その正転方向の回転力をファン駆動軸16に伝達しないが、ボールねじ軸2を逆転させたときに、その逆転方向の回転力をファン駆動軸16に加速して伝達する構成とされている。
【0019】
ここで、ベルト式回転駆動機構20のプーリ20a及び20bの回転数比と歯車式回転駆動機構21の平歯車21a及び21bのギヤ比とが略等しく設定され、ボールねじ軸2の正逆転回転速度が一定である場合に、ファン駆動軸16の一方向回転速度が正逆転切換時を除いて略一定の高速度となるように設定されている。
そして、ファン駆動軸16が、その正転時にケース体1内の空気を外部に排出する排気ファン25に連結されている。この排気ファン25は回転伝達機構収容部15の右端面に形成されたファン収容部26に回転自在に配設されている。また、ケース体1内と回転伝達機構収容部15内とが、右側板1dに形成された透孔27によって連通されている。
【0020】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、電動モータ5が停止しており、ボールねじ軸2、ベルト式回転伝達機構20及び歯車式回転伝達機構21、ファン駆動軸16及び排気ファン25が回転停止状態であり、移動台7が、図2に示すように、ケース体1の開口部1aの右端側に停止しているものとする。
【0021】
この停止状態から移動台7を左端側に移動させるには、電動モータ5を、その出力軸5aが左端面側からみて時計方向に回転するように正転駆動する。このように、電動モータ5を正転駆動することにより、その出力軸5aに連結されたボールねじ軸2が左端面からみて反時計方向に回転する正転状態となり、これに応じてボールナット6が左動して移動台7が左動する。
【0022】
このとき、ボールねじ軸2の正転によってベルト式回転伝達機構20のプーリ20aが左端側から見て時計方向に回転し、この時計方向の回転力が無端ベルト20cによってプーリ20bに伝達されて、このプーリ20bが左端側から見て時計方向に回転する。このとき、プーリ20bとファン駆動軸16との間に介挿されたワンウェイクラッチ20dはプーリ20bの時計方向の回転に対しては滑ることなく締結状態となる。このため、プーリ20bの時計方向の回転力がワンウェイクラッチ20dを介してファン駆動軸16に伝達されて、このファン駆動軸16が時計方向に正転駆動され、これに応じて排気ファン25が正転駆動されてケース体1内の空気を塵埃と共に右側板1dに形成された透孔27を通じて吸引してケース体1外に排気する。このため、ケース体1内が負圧となることにより、ケース体1内で発生した微小な粉塵等の塵埃がケース体1の開口部1aとシールベルト12との隙間から上方に漏れ出すことを防止することができる。したがって、排気ファン25から排気される塵埃を含む空気を適宜処理することにより、クリーンルーム等の発塵が問題なとなる環境でも別途内部吸引手段を設けることなく1軸テーブルの使用が可能となる。
【0023】
ところが、歯車式回転伝達機構21では、ボールねじ軸2の正転によって平歯車21aが左端側から見て時計方向に回転し、この平歯車21aに噛合する平歯車21bは左端側から見て反時計方向に回転することになるため、この平歯車21bとファン駆動軸16との間に介挿したワンウェイクラッチ21cが滑って非締結状態となり、平歯車21の反時計方向の回転力はファン駆動軸16に伝達されることはない。
【0024】
その後、移動台7が所望位置に達すると、電動モータ5の回転が停止されることにより、ボールねじ軸2の正転が停止され、これに応じてボールナット6及び移動台7の左動が停止される。これと共に、ベルト式回転伝達機構20によって正転駆動されていたファン駆動軸16も停止して、排気ファン25が停止する。
その後、電動モータ5を、その出力軸5aが左端側から反時計方向に逆転させる逆転駆動状態とすると、これに応じてボールねじ軸2が左端側から見て反時計方向に逆転することにより、ボールナット6及び移動台7が右動を開始する。
【0025】
このように、ボールねじ軸2が逆転駆動されると、ベルト式回転伝達機構20では、プーリ20aが左端側から見て反時計方向に逆転駆動され、この反時計方向回転力が無端ベルト20cを介してプーリ20bに反時計方向の回転力として伝達される。このため、プーリ20bとファン駆動軸16との間に介挿されたワンウェイクラッチ20dが滑って非締結状態となり、プーリ20bの反時計方向の回転力がファン駆動軸16に伝達されることが阻止される。
【0026】
一方、歯車式回転伝達機構21では、ボールねじ軸2に取付けられた平歯車21aが左端側から見て反時計方向に回転するが、この平歯車21aに噛合する平歯車21bは時計方向に回転することになり、この平歯車21bとファン駆動軸16との間に介挿されたワンウェイクラッチ21cは締結状態となって、平歯車21bの左端から見て時計方向の回転力をファン駆動軸16に伝達する。このため、ファン駆動軸16が前述したボールねじ軸2の正転状態と同様に正転駆動されることになり、排気ファン25が正転されてケース体1内の塵埃を含む空気を外部に排気する排気状態となる。
【0027】
このように、上記第1の実施形態によると、移動台7を往復動させるボールねじ軸2を正逆転駆動した場合に、正転時にはベルト式回転伝達機構20によってファン駆動軸16を正転駆動し、逆転時には歯車式回転伝達機構21でファン駆動軸16を正転駆動することができ、移動台7の往復動と排気ファン25の正転駆動とを一つの電動モータ5で駆動することができ、排気ファン25用に独立した電動モータを設ける必要がなく全体の構成を簡易小型化することができる。
【0028】
しかも、ベルト式回転伝達機構20及び歯車式回転伝達機構21の夫々がワンウェイクラッチ20d及び21cによる機械的なクラッチを有するだけでボールねじ軸2の正逆転に応じて適宜選択されるので、電磁クラッチ等の電気的な制御系を設ける必要がなく、廉価に構成することができる。
なお、上記実施形態においては、第1の被駆動軸としてボールねじ軸2を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、単なるねじ軸2を適用し、これにナットを螺合させるようにしてもよい。さらに、回転駆動源としては電動モータ5に限らず、油圧モータ、エンジン等の他の回転駆動源を適用することができる。
【0029】
また、上記実施形態において、ボールねじ軸2とファン駆動軸16との間の回転伝達装置として、ベルト式回転伝達機構20と歯車式回転伝達機構21とを設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図8及び図9に示すように、歯車式回転伝達機構21を省略し、これに代えて襷掛けベルト式回転伝達機構31を適用するようにしてもよい。すなわち、襷掛けベルト式回転伝達機構31は、ボールねじ軸2に連結されたプーリ31aとファン駆動軸16にワンウェイクラッチ31dを介して連結されたプーリ31bとの間に、無端ベルト31cを両者間でクロスさせるクロス状態で張設された構成を有する。この襷掛けベルト式回転伝達機構31では、ボールねじ軸2が逆転駆動されたときに、プーリ31bを正転駆動して、ワンウェイクラッチ31dを締結状態とし、ファン駆動軸16を正転駆動することができる。
【0030】
さらに、ボールねじ軸2の正逆転駆動時におけるファン駆動軸16の回転速度に許容差を見込める場合には、ベルト式回転伝達機構20を省略し、これに代えて、図10に示すように、歯車式回転伝達機構21の平歯車21aの外径を平歯車21bと噛合しない程度に小さくし、平歯車21aと平歯車21bとの間にアイドラ歯車21dを噛合させる歯車式回転伝達機構32を適用することもできる。この場合には、平歯車21aが正転したときに、アイドラ歯車21dが逆転し、平歯車21bが正転することになり、平歯車21bの正転時にワンウェイクラッチ21cを締結状態としてファン駆動軸16を正転駆動するようにしてもよい。さらには、歯車式回転伝達機構32と襷掛けベルト式回転伝達機構31とを対で設けるようにしてもよい。
【0031】
さらにまた、上記実施形態においては、ベルト式回転伝達機構20を適用した場合について説明したが、これに代えてボールねじ軸2及びファン駆動軸16に夫々スプロケットを配設し、これらスプロケット間に無端チェーンを巻回するようにしてもよい。
なおさらに、上記実施形態においては、ボールねじ軸2が正逆転駆動されるときに、ファン駆動軸16を正転駆動する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ワンウェイクラッチ20d及び21cを逆転駆動時に締結状態となるように組み込むことにより、ファン駆動軸16を逆転駆動することができる。
【0032】
また、上記実施形態においては、歯車式回転伝達機構21を平歯車で構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、はすば歯車、やまば歯車、内歯車対等を適用することができる。
さらに、上記実施形態においては、ボールねじ軸2とファン駆動軸16とが平行である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、両者が直交する場合にはベルト式回転伝達機構20については無端ベルト20cを捩じらすだけでよく、歯車式回転伝達機構21についてはすぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車、交差軸フェースギヤ、ねじ歯車等を適用することができる。
【0033】
さらにまた、上記実施形態においては、回転伝達機構20及び21で増速する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ボールねじ軸2とファン駆動軸16とを等速駆動したり、ファン駆動軸16を減速駆動したりすることもできる。
なおさらに、上記実施形態においては、第2の被駆動軸としてファン駆動軸16を適用し、このファン駆動軸16にファン25を連結した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図11(a)及び(b)に示すように、第2の被駆動軸16に減速機構40を介してボールねじ軸2と直交する方向に配設された搬送コンベヤ41の駆動軸42を連結して、搬送コンベヤ41を一方向に回転駆動するようにしてもよい。ここで、減速機構40は例えば被駆動軸16に装着された小径のプーリ40aと駆動軸42に装着された大径のプーリ40bとこれらプーリ40a及び40b間に巻装されたベルト40cとで構成されているが、これに限定されるものではなく、歯車式減速機構やベルト式無段変速機構等を適用することができる。また、搬送コンベヤ41は、駆動軸42が一対の支柱41a及び41bに支持されている他、従動軸43及び44が同様に支柱42a及び42bに支持され、駆動軸42及び従動軸43,44に夫々大径のローラ45が装着され、これらローラ45を巡って搬送無端ベルト46が装着された構成を有する。
【0034】
この搬送コンベヤ41としては、上記ベルトコンベヤ形式に限定されるものではなく、フレームに所定間隔でローラを回転自在に配設し、各ローラをチェーンで連結すると共に、一つのローラを駆動軸42に連結するようにしてローラコンベヤ形式とすることもできる。
また、搬送コンベヤ41の搬送方向は、ボールねじ軸2と直交する方向に限定されるものではなく、傘歯車、ウォーム歯車等を使用して、ボールねじ軸2と沿う方向としたり、ボールねじ軸2に対して任意の角度の搬送方向とすることができる。
【0035】
さらに、上記実施形態においては、本発明を1軸テーブル装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回転駆動源によって、正逆転駆動される第1の被駆動軸と、この第1の被駆動軸に連結されて正転又は逆転駆動される第2の被駆動軸とを有する構成であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を1軸テーブル装置に適用した場合の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線上の断面図である。
【図3】図1のB−B線上の断面図である。
【図4】図2のC−C線上の断面図である。
【図5】図2のD−D線上の断面図である。
【図6】図2のE−E線上の断面図である。
【図7】図2の側面図である。
【図8】本発明の変形例を示す要部の断面図である。
【図9】図8のF−F線上の断面図である。
【図10】歯車式回転伝達機構の他の例を示す図である。
【図11】本発明を搬送コンベヤに適用した場合の実施形態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のG−G線上の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
TD…直動テーブル装置、1…ケース体、2…ボールねじ軸、3a,3b…支持部、4…カップリング、5…電動モータ、6…ボールナット、7…移動台、10…リニアガイド、12…シールベルト、15…回転伝達機構収容部、16…ファン駆動軸、20…ベルト式回転伝達機構、20a、20b…プーリ、20c…無端ベルト、20d…ワンウェイクラッチ、21…歯車式回転伝達機構、21a,21b…平歯車、21c…ワンウェイクラッチ、25…排気ファン、30…襷掛けベルト式回転伝達機構、31…歯車式回転伝達機構、40…減速機構、41…搬送コンベヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆転駆動する回転駆動源によって正逆回転駆動される第1の被駆動軸と、1方向回転される第2の被駆動軸と、前記第1の被駆動軸の回転力を同一方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第1の回転伝達機構と、前記第1の被駆動軸の回転力を逆方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第2の回転伝達機構と、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構に個別に介挿された前記第2の被駆動軸を一方向に回転駆動するときに締結状態となる1方向クラッチとを備えたことを特徴とする回転伝達装置。
【請求項2】
前記第1の被駆動軸はボールねじ軸で構成され、該ボールねじ軸に螺合するナットに移動テーブルが連結されていることを特徴とする請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項3】
前記第2の被駆動軸は排気ファンを駆動するファン駆動軸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転伝達装置。
【請求項4】
前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構の何れか一方は歯車式動力伝達機構で構成され、他方はベルト式動力伝達機構で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転伝達装置。
【請求項5】
前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構の何れか一方が前記第1の被駆動軸及び前記第2の被駆動軸に個別に連結された一対のプーリと、該一対のプーリ間にオープン状態で張設された帯状体とで構成され、他方が前記第1の被駆動軸及び前記第2の被駆動軸に個別に連結された一対のプーリと、該一対のプーリ間にクロス状態で張設された帯状体とで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転伝達装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転伝達装置を使用した直動テーブル装置。
【請求項1】
正逆転駆動する回転駆動源によって正逆回転駆動される第1の被駆動軸と、1方向回転される第2の被駆動軸と、前記第1の被駆動軸の回転力を同一方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第1の回転伝達機構と、前記第1の被駆動軸の回転力を逆方向の回転力として前記第2の被駆動軸に伝達する第2の回転伝達機構と、前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構に個別に介挿された前記第2の被駆動軸を一方向に回転駆動するときに締結状態となる1方向クラッチとを備えたことを特徴とする回転伝達装置。
【請求項2】
前記第1の被駆動軸はボールねじ軸で構成され、該ボールねじ軸に螺合するナットに移動テーブルが連結されていることを特徴とする請求項1に記載の回転伝達装置。
【請求項3】
前記第2の被駆動軸は排気ファンを駆動するファン駆動軸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転伝達装置。
【請求項4】
前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構の何れか一方は歯車式動力伝達機構で構成され、他方はベルト式動力伝達機構で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転伝達装置。
【請求項5】
前記第1の回転伝達機構及び前記第2の回転伝達機構の何れか一方が前記第1の被駆動軸及び前記第2の被駆動軸に個別に連結された一対のプーリと、該一対のプーリ間にオープン状態で張設された帯状体とで構成され、他方が前記第1の被駆動軸及び前記第2の被駆動軸に個別に連結された一対のプーリと、該一対のプーリ間にクロス状態で張設された帯状体とで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転伝達装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転伝達装置を使用した直動テーブル装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−133360(P2009−133360A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308415(P2007−308415)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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