回転式レーザー測定装置
【課題】コンクリート壁等測定対象面の状態(凹凸量)を装置により自動的に、かつ精度良く測定できるようにする。
【解決手段】回転式レーザー測定装置は、レーザー光によって距離を測定する距離センサと、該距離センサを軸方向に駆動する第1の駆動手段と、同距離センサを軸周り方向に駆動する第2の駆動手段と、これら第1,第2の駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを備え、上記距離センサを測定対象面の長手方向と直交する面に沿って回転可能に支持するとともに、上記測定対象面の長手方向に沿って所定ピッチ毎に移動可能とし、該所定ピッチ毎に上記距離センサを移動させ、かつ所定の角度回転させながら、測定対象面の状態を自動的に測定して行くようにした。このような構成によると、自動的かつ容易に、しかも正確に凹凸その他の表面状態を測定して行くことができるようになる。
【解決手段】回転式レーザー測定装置は、レーザー光によって距離を測定する距離センサと、該距離センサを軸方向に駆動する第1の駆動手段と、同距離センサを軸周り方向に駆動する第2の駆動手段と、これら第1,第2の駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを備え、上記距離センサを測定対象面の長手方向と直交する面に沿って回転可能に支持するとともに、上記測定対象面の長手方向に沿って所定ピッチ毎に移動可能とし、該所定ピッチ毎に上記距離センサを移動させ、かつ所定の角度回転させながら、測定対象面の状態を自動的に測定して行くようにした。このような構成によると、自動的かつ容易に、しかも正確に凹凸その他の表面状態を測定して行くことができるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンクリート壁面等所定の測定対象面の状態を測定する回転式レーザー測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、潅漑および排水路に代表される図12に示すような水路10は、一般に左右の側壁10A,10Bおよび底板10Cの3面コンクリート壁によって形成されている。
【0003】
ところが、このような水路壁10A,10B,10Cは、必然的に耐用年数があり、一定の期間が経過すると、劣化、損傷し、表面の凹凸量が大きくなってくる。
【0004】
そして、さらに劣化が進むと、水漏れが発生し、また強度的にも擁壁としての土留め機能が失われて、崩落を招く危険性がある。
【0005】
その結果、全面的な改修工事が必要となってしまう。
【0006】
このような場合、従来は比較的早期に全面改修工事を行うのが一般であったが、そのようにすると、工事費用も高額なものとなり、工事期間も長くなってしまう。
【0007】
これは、上記のような水路の場合だけでなく、隧道、トンネル、余水吐、開渠その他のコンクリート構造物全般に共通する問題である。
【0008】
そこで、最近では、上記のようなコンクリート壁の表面の劣化を早目に測定し、全面的な改修を必要としない一定の劣化レベル状態の時に、必要な深さの断面部分を修復し、低コスト、かつ短かい工事期間で耐用年数を延ばす、補修工法(エコ工法)が採用されてきている。
【0009】
ところが、そのような補修工法を採用する前提として、当然ながら上記コンクリート壁表面の状態(表面凹凸量)を正確に測定することが必要となってくる。
【0010】
また、補修が完了した場合には、その表面状態(仕上り状態)に加え、補修後の塗り厚が適正な塗り厚となっているか否か、すなわち出来形が適正な出来形となっているか否かなどの測定(検査)が必要となる。
【0011】
従来、これらの測定は、基本的に作業員の手作業によって行われており、例えば水路壁等コンクリート壁の高さ方向および長さ方向に寸法規定用の治具を当て、長さ方向および幅方向共に5cm毎にノギスやハンディタイプのレーザー方式の距離センサを使用して測定対象面の凹凸部の深さを測定して行く方法が採用されている。
【0012】
また、一般に被測定物表面の表面粗さをレーザー式投光器を用いて測定することは、知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−125632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記のような手作業による測定方法のうち、必要な測定点毎に一々ノギスを当てて凹凸部の深さを測定する方法の場合、ノギスの当て方等による測定誤差が大きいことはもちろん、測定作業そのものが大変で、相当長期に亘る測定作業が避けられない。
【0015】
一方、ノギスに代えてハンディタイプのレーザー方式の距離計を使用するようにすると、ノギスに比べて測定点毎の測定精度は高くなり、ある程度測定効率を向上させることができるが、やはり全体としての測定作業が大変であることに変わりはない。
【0016】
また、特許文献1に示されるレーザー式投光器の場合、一般に金属の表面粗さ等の測定には使用されているが、上述のような土木分野に適したものとはなっていない。
【0017】
本願発明は、このような事情に基いてなされたもので、レーザー光による距離センサを測定対象面の長手方向に沿って軸方向移動および軸周り方向に回転可能に設置し、制御手段を用いて、長手方向および幅方向の所定の測定点毎に自動的、かつ連続的に測定して行くことができるようにした回転式レーザー測定装置を提供すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願各発明は、上記の目的を達成するために、それぞれ次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0019】
(1) 請求項1記載の発明
この発明の回転式レーザー測定装置は、レーザー光によって距離を測定する距離センサと、該距離センサを軸方向に駆動する第1の駆動手段と、同距離センサを軸周り方向に駆動する第2の駆動手段と、これら第1,第2の駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを備え、上記距離センサを測定対象面の長手方向と直交する面に沿って回転可能に支持するとともに、上記測定対象面の長手方向に沿って所定ピッチ毎に移動可能とし、該所定ピッチ毎に上記距離センサを移動させ、かつ所定の角度回転させながら、測定対象面の状態を自動的に測定して行くようにしたことを特徴としている。
【0020】
このような構成によると、レーザー光による距離センサを測定対象面の長手方向に沿った軸方向に移動可能、かつ軸方向周りに回転可能に設置し、軸方向に所定ピッチ毎に移動させ、かつ軸周り方向に回転させながら測定して行くだけで、水路や隧道、トンネル、余水吐、開渠のような距離が長く、幅が広い測定対象面でも、自動的かつ容易に、しかも正確に凹凸量等の表面状態を測定して行くことができるようになる。
【0021】
したがって、従来の測定方法に比べて、遥かに高効率で、精度の高い測定が可能となる。
【0022】
(2) 請求項2記載の発明
この発明の回転式レーザー測定装置は、上記請求項1の発明の構成において、距離センサの回転角は、測定対象面の形状および高さに応じて、所望の大きさに調節可能となっていることを特徴としている。
【0023】
水路や隧道、トンネルなどは、一般に左右両側壁面および底板(面)、上板(面)の3面壁よりなるが、その左右両側壁の高さは常に一定ではなく、異なるケースも多い。また、それらの幅と左右の側壁の高さとの関係も区々である。
【0024】
そこで、それらに対応するために、距離センサの回転角を所望の大きさに調節設定できるようにする。
【0025】
(3) 請求項3記載の発明
この発明の回転式レーザー測定装置は、上記請求項1又は2の発明の構成において、測定された測定対象面の状態を示すデータは、駆動制御手段の測定データ記録手段に記録されるようになっていることを特徴としている。
【0026】
このように、測定された測定対象面の状態を示すデータが、駆動制御手段の測定データ記録手段に記録されるようになっていると、測定されたデータをパソコンに取り込んで、画像データとして表示し、またCADデータとして所望の処理を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
以上の結果、本願発明によると、従来の測定方法に比べて、遥かに精度が高く、かつ効率の良い測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の実施の形態に係る回転式レーザー測定装置の構成を示す正面図である。
【図2】同装置の左側面図である。
【図3】同装置の平面図である。
【図4】同装置のガイドレール、スライド部材、減速機構、距離センサ部分の構成を示す拡大正面図である。
【図5】同装置のガイドレール、スライド部材、減速機構、距離センサ部分の構成を示す拡大左側面図である。
【図6】同装置のガイドレール、スライド部材、減速機構、距離センサ部分の構成を示す拡大下面図である。
【図7】同装置の歯付プーリー駆動モータおよび駆動側歯付プーリーと駆動側歯付プーリーに設けられている4枚の回転羽根に対応して駆動側歯付プーリーの所定の回転角毎の回転を検出し、歯付プーリーの回転を止めるリミットスイッチを示すガイドレール部分の一部切欠図である。
【図8】同装置の付属品である基準ガイドの構成と使用方法を示す斜視図である。
【図9】同装置の制御回路部分の構成を示すブロック図である。
【図10】同装置の水路内への設置形態を示す説明図である。
【図11】同装置を図10のように設置して水路壁の劣化度合を測定する時の測定対象面のメッシュ構成(概念)を示す斜視図である。
【図12】本願発明の実施の形態に係る回転式レーザー測定装置による測定対象水路の断面構造の一例を示す説明図である。
【図13】同装置による図12の水路の水路壁面の測定結果を示すデータテーブルである。
【図14】同装置による図12の水路の水路壁面の測定結果を用いてCADデータ化し、パソコンの画面上に表示した表示画像(イメージ)である。
【図15】図12の水路壁の補修完了後の出来形構成を示す説明図である。
【図16】同装置によって図15の水路壁の出来形を測定した測定結果を示すデータテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1〜図16は、一例として、水路壁を測定対象面として選択した場合における本願発明の実施の形態に係る回転式レーザー測定装置の構成および作用を示している。
【0030】
<装置全体の構成>
該回転式レーザー測定装置は、例えば図1および図3に示すように、一定の間隔を保って立設された一対の3脚1A,1Bと、該一対の3脚1A,1Bの軸部上端側の架台11a,11b上に架け渡す形で設けられた断面C字形のガイドレール2と、該ガイドレール2内の両端部間に亘って回転可能に設けられた一対の歯付プーリー3A,3Bと、該歯付プーリー3A,3B間にエンドレスに巻回された歯付ベルト4と、上記一端側歯付プーリー3Aを減速機構Rg1(図5、図7参照)を介して回転駆動する歯付プーリー回転駆動モータM1と、上記ガイドレール2に対して長手方向に沿ってスライド可能な状態で取り付けられたスライド部材5と、該スライド部材5下端のスライド方向の一側にスライド方向と直交する方向の平面に沿って回転可能に取り付けられた距離センサ6と、上記スライド部材5のスライド方向と直交する方向の一側面にスライド方向の平面に沿って回転するように取り付けられ、上記距離センサ6を回転させる距離センサ回転駆動モータM2と、上記一端側歯付プーリー3Aに対応して設けられ、同一端側歯付プーリー3Aが所定の回転角度(90°)回転したことを検出してONになる第1のリミットスイッLS1と、上記ガイドレール2の一端側に設けられ、上記スライド部材5が一端側にある時および他端側から一端側に到達した時にONになる第2のリミットスイッLS2と、上記ガイドレール2の他端側に設けられ、上記スライド部材5が一端側から他端側に到達した時にONになる第3のリミットスイッLS3と、上記スライド部材5の距離センサ6と反対側の同軸位置に設けられ、上記距離センサ6の回転角を検出する第1の回転角検出器8と、上記距離センサ6内に設けられ、上記距離センサ6の実際の回転角θを検出する第2の回転角検出器9と、上記歯付プーリー回転駆動モータM1、距離センサ回転駆動モータM2、第1,第2,第3のリミットスイッチLS1,LS2,LS3、距離センサ6等に電源および必要な制御信号を供給するとともに、第1,第2,第3のリミットスイッチLS1,LS2,LS3、第1,第2の回転角検出器8,9から必要な検出信号を入力して必要な制御を行う制御盤30とから構成されている。
【0031】
上記一端側歯付プーリー3Aのプーリー部前面側には、その外周部の周方向に90°間隔で半径方向外方に向けて延びる4枚の羽根32a,32a・・を設けた回転プレート32が取付部材32b,32bを介して取り付けられており、この回転プレート32の羽根32a,32a・・が上述した第1のリミットスイッLS1の検出部に対応した時に第1のリミットスイッLS1がONになって、上記歯付プーリー回転駆動モータM1を停止させる。
【0032】
このように歯付プーリー3Aが90°回転すると、上記歯付ベルト4および上記歯付ベルト4に固定部材5cを介して固定されている上記スライド部材5が、図1中の矢印に示すように、ガイドレール2の一端側から他端側にかけて1ピッチ=5cm毎に移動する。
【0033】
そして、それにより上記ガイドレール一端側第2のリミットスイッLS2部分(スタート位置)からガイドレール他端側第3のリミットスイッLS3部分(終端位置)までの間の距離1mを1ピッチ5cm毎に20等分して間欠的に移動し、最終的に第3のリミットスイッLS3部分に達した時点で停止する。そして、その1ピッチ5cm毎の移動区間内停止位置において、上記距離センサ6を所定の角度(最大270°の範囲内において所望に設定)回転させて水路10の左右側壁面10A,10Bおよび底板10c面の凹凸量を測定する。
【0034】
一対の3脚1A,1Bは、例えば回転操作用のハンドル(図示省略)を備え、上記ガイドレール2を支持している架台11a,11b部分を、例えば図10に示すように測定する水路10の深さ(側壁10A,10Bの高さ)に応じて、適切な測定を行える任意の高さに調節することができるようになっている。
【0035】
ガイドレール2は、例えば断面C字形の高剛性形状をなし、その非開口面側の側面壁2a両端部分に上記歯付プーリー3A,3Bの回転支軸31a,31bをそれぞれ設け、該回転支軸31a,31bを介して歯付プーリー3A,3Bを回転可能に支持している。
【0036】
この実施の形態の場合、一端側(図示左端側)歯付プーリー3Aが駆動側歯付プーリー、他端側(図示右端側)歯付プーリー3Bが従動側歯付プーリーとなっており、一端側歯付プーリー3Aには、側面壁2aの外側に位置して減速機構Rg1を備えた歯付プーリー回転駆動モータM1が設けられている。そして、同歯付プーリー回転駆動モータM1が時計周りに回転駆動されることにより、歯付プーリー3Aが所望の回転速度で同方向に回転し、歯付ベルト4が時計周りに駆動される。
【0037】
スライド部材5は、例えば図5に示すように、前後2枚の平行板51a,51bの間に上記断面C字形のガイドレール2の上下両面側を挟む上下一対のローラー5a,5bをガイドレール長手方向に所定の間隔を置いて2組設け、同2組の上下ローラー5a,5b、5a,5bを介して上記ガイドレール2部分をモノレールとして自由かつ正確に安定してスライド移動できるように構成されており、その平行板51a,51b下端側後面壁の水平方向に張り出したモータ取付板51cの下面側には、上述した距離センサ6を回転駆動する距離センサ回転駆動モータM2が取り付けられ、また前後平行板51a,51b間には、例えば図6に示すような、ウォーム12aとウォームギヤ12bとの組み合せからなる回転方向変更用の減速機構12が設けられており、距離センサ6は上記距離センサ回転駆動モータM2により、当該回転方向変更用の減速機構12を介して所望の回転速度で上記ガイドレール2と直交する水平断面方向に最大270°回転角範囲で回転駆動されるようになっている。
【0038】
そして、上記ウォームギヤ12bのギヤ軸手前側(図示右端側)には、第1の回転角検出器8の回転軸が同軸に直結されており、ウォームギヤ12bの回転、すなわち距離センサ6の実際の回転角θを検出して、上記制御盤30の後述する制御部30aに入力する。
【0039】
距離センサ6は、例えば図6に示すように、ボックス構造の本体6cの先端面にレーザー光を投光する投光部(小口径)6aおよび水路壁等測定対象面から反射したレーザー光を受光する受光部(大口径)6bを備えた反射型レーザー距離測定器を採用して構成されており、コネクタ6cおよびコネクタケーブル6dを介して制御盤30の制御部30aに接続されている。なお、6eは、ウォームギヤ12bの回転軸12cに取り付けられた距離センサ取付プレートである。
【0040】
この距離センサ6の回転角θは、理論的には、上記減速機構12の出力側ウォームギヤ12bの回転軸12cを中心として同回転軸12c周りに最大359度回転させることが可能であるが、現実的には、例えば図10に示すような開放型3面コンクリート型水路10の水路壁面10A,10B,10Cの測定に際しては、そのような大きな測定角は必要としないので、例えば図2,図5に示すような最大270度までの回転角に設定している。
【0041】
なお、この実施の形態では、実際の測定に際し、当該測定対象水路10の水平および縦断勾配を設定する、例えば図9に示すような基準ガイド20がオプションとして付設されている。
【0042】
すなわち、この基準ガイド20は、当該測定対象水路10の例えば左右何れか一方の水路壁10A,10Bの天面(工事規格上、水路底板10Cの勾配と同じ勾配に設計されている)に載置されるフラットな底板20A,20Bの中心部上に棒状の支柱21,21を立設し、その上部所定位置に大径部21a,21aを形成し、さらに同大径部21a,21aの中心部から上方に延びる棒状部の上端部分にナット螺合部21b,21bを形成している。
【0043】
そして、これら一対の棒状の支柱21,21の上記ナット螺合部21b,21bを有する上端部分に、両端側に上下方向に穴22a,22bが穿いたパイプ22を図示のように嵌挿し、その前後両端が同じ高さになるようにナット23a,23bで固定する。
【0044】
この状態で、当該パイプ22の上面に水準器24を置いて、当該測定対象水路10の水平および縦断方向の勾配を計測する。
【0045】
そして、この計測された勾配に基いて、同一の勾配となるように、同じく水準器24を用いて勾配を計測しながら3脚1A,1Bの架台11a,11bの高さを可変することによって、上記測定装置のガイドレール2の水平および縦断方向の勾配を水路勾配と同一にセットする。その上で、後述するように水路壁10A,10B,10Cの凹凸量の測定を行う。
【0046】
<制御回路部分の構成>
次に、図9のブロック図は、以上に述べた測定装置の制御回路部分の構成を示している。
【0047】
先ず符号30は上述した制御盤であり、所定の能力のマイクロプロセッサを備えた制御部(制御ユニット)30aと、該制御部30aへの入力手段および表示手段であるタッチパネル30bと、制御部30aを介して上述の測定データを入力し、メモリする外部から着脱可能なUSBその他の測定データ記録手段30cと、発電機(オルタネータ)その他のAC電源をソースとして上述の各部にAC電源を供給する電源供給部(図示省略)とを有して構成されている。
【0048】
そして、同制御盤30の上記電源供給部から、上記第1〜第3のリミットスイッチLS1〜LS3、歯付プーリー回転駆動モータM1、距離センサ回転駆動モータM2、第1の回転角検出器8、第2の回転角検出器9、距離センサ6等に必要な動作電源を供給すると同時に、それらの動作信号(例えばON,OFF信号、回転角検出信号など)が制御盤30に入力される。
【0049】
また、上記制御部30aには、図示のように、必要に応じてパーソナルコンピュータPCが接続されるようになっており、現地で、例えば図12に示すように、実際に測定したデータ(測定データ記録手段30c中に記録されている)を断面形状図として確認することができるようになっている。
【0050】
<測定方法>
測定に際しては、例えば図10のように測定装置を設置する前に当該水路10の水路壁面10A〜10Cの清掃および高圧洗浄が行われ、水路壁面10A〜10Cの凹凸量を測定しやすい状態に維持される。
【0051】
その上で、例えば図10のように、当該所定の水路幅、所定の水路壁高の水路10内の底板10Cの中央部位置に、上述のように基準ガイド20を用い、水路勾配に沿って測定装置が設置されると、上述した制御盤30の電源供給部から、上記第1〜第3のリミットスイッチLS1〜LS3、歯付プーリー回転駆動モータM1、距離センサ回転駆動モータM2、第1の回転角検出器8、第2の回転角検出器9、距離センサ6等に必要な動作電源が供給される。
【0052】
この状態で、上記制御盤30のタッチパネル30bを使い、当該水路幅、側壁高に応じて必要な距離センサ6の回転角その他を先ず設定する。
【0053】
そして、その後、先ず上記歯付プーリー3Aが駆動され、その回転角が90°回転すると、同90°回転したことが上記第1のリミットスイッLS1により検出されて、上記歯付プーリー回転駆動モータM1がOFFにされて停止する。
【0054】
この結果、上記スライド部材5も当該1ピッチ(5cm)移動した位置で停止し、該停止位置で距離センサ回転駆動モータM2が270°回転駆動されて、図10、図11の左側壁10Aの上端側から下端側、底板10Cの左端側から右端側、左端壁10Bの下端側から上端側へと壁面の凹凸量を線の変化として連続的に測定して行く。
【0055】
そして、上記予じめ設定された回転角だけ回転すると、上記距離センサ回転駆動モータM2が停止し、今度は歯付プーリー回転駆動モータM1が90°回転して上記スライド部材5を再び1ピッチ5cm移動させた後に停止する。そして、さらに上記距離センサ回転駆動モータM2が、以上とは逆方向に設定角回転駆動されて、今度は図10、図11の右側壁10Bの上端側から下端側、底板10Cの右端側から左端側、左端壁10Bの下端側から上端側へと逆方向に各水路壁面の凹凸量を連続的に測定して行く。
【0056】
これらの測定動作は、図11の水路10の一端A側から始まって他端B側に達するまで繰り返し継続される。
【0057】
この結果、例えば図11に示すように、5cm四方のメッシュ部が水路10の測定方向に1m分連続する単位測定領域の凹凸量(表面状態)の測定が終了する。
【0058】
このようにして、1つの単位領域1m分の測定が終了すると、水路測定方向の次の単位測定領域に上記測定装置を移動させて、上述の場合と同様にセットし、同様の測定を行う。これを必要な測定水路長部分継続し、測定を完了する。
【0059】
この結果、例えば図12の断面形状図と図13の測定データ表に示すように、上記図11の水路測定方向および幅方向のメッシュ部交点を結んで水路壁10A,10B,10Cの横断面形状とその不陸厚さが測定データとして示され、上記制御盤30の測定データ記録手段30cに記録される。
【0060】
この測定データ記録手段30cに記録された測定データは、上述のようにパーソナルコンピュータPCを用いて見ることもでき、またCADデータとして所定の処理(後述する出来形チェック時の重ね合わせなど)を行うこともできる。
【0061】
このような構成の場合、上記図11に示す水路長1m/5cm毎:20横断面の内の1つの横断面の測定データの入手が1分程度であるから、20断面全ての測定データを得るのに、20〜30分もあれば十分である。
【0062】
もちろん、測定精度を下げれば、さらに測定時間を短縮することができる。
【0063】
<補修工事>
以上のようにして、凹凸量の測定が終了すると、次に同測定データに基いて、必要な補修工事として、例えば断面修復と表面被覆が行われ、元の水路壁状態に復元される。
【0064】
<出来形測定>
以上のようにして補修工事が完了すると、最後に上記復元された水路壁の表面状態および出来形の測定が必要になる。この表面状態および出来形の測定も、上述の凹凸量測定の場合と同様に上述の測定装置を用いて行われる。そして、その測定データが、上述の測定データ記録手段30cに記録される。また、図15および図16に示すように、その塗厚と共に断面形状が上記パーソナルコンピュータPCによって観測され、必要に応じ、CADデータとして処理される。
【0065】
この結果、例えば同図15の形状図に示すように、同表面状態および出来形測定データの断面形状図(完成調査図)を上述した図12の凹凸量測定データの断面形状図(不陸調査図/現況図)に重ねて容易に良否チェックを行うことも可能となる。
【0066】
また、それに関連して、さらに修復に用いた使用材料の数量表なども簡単に作成することができる。
【0067】
<凹凸量測定の際の仕様について>
上述の測定における必要な測定水路長は、例えば管轄農政局その他の補修工事仕様により定められており、例えば「水路20m毎に3箇所(両側壁10A,10Bおよび底板10C)1箇所当たり1m2とし、縦横5cmメッシュの交点を計測するものとする。」とされている。
【0068】
つまり、同仕様では水路幅方向の測定についても、本来図11の5cmピッチの交点での測定データで良いことになっている。
【0069】
しかし、本願発明の場合には、これを上述のように連続した線の形状変化として、より高精度に測定することができるようになる。
【符号の説明】
【0070】
1A,1Bは3脚、2はガイドレール、3A,3Bは歯付プーリー、5はスライド部材、6は距離センサ、8は第1の回転角検出器、9は第2の回転角検出器、10は水路、10A,10Bは水路左右壁、10Cは水路底板、12は減速機構、12aはウォーム、12bはウォームギヤ、12cは距離センサ回転軸、30は制御盤、30aは制御部、30bはタッチパネル、30cは測定データ記録手段、M1は歯付プーリー回転駆動モータ、M2は距離センサ回転駆動モータ、LS1は第1のリミットスイッチ、LS2は第2のリミットスイッチ、LS3は第3のリミットスイッチである。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンクリート壁面等所定の測定対象面の状態を測定する回転式レーザー測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、潅漑および排水路に代表される図12に示すような水路10は、一般に左右の側壁10A,10Bおよび底板10Cの3面コンクリート壁によって形成されている。
【0003】
ところが、このような水路壁10A,10B,10Cは、必然的に耐用年数があり、一定の期間が経過すると、劣化、損傷し、表面の凹凸量が大きくなってくる。
【0004】
そして、さらに劣化が進むと、水漏れが発生し、また強度的にも擁壁としての土留め機能が失われて、崩落を招く危険性がある。
【0005】
その結果、全面的な改修工事が必要となってしまう。
【0006】
このような場合、従来は比較的早期に全面改修工事を行うのが一般であったが、そのようにすると、工事費用も高額なものとなり、工事期間も長くなってしまう。
【0007】
これは、上記のような水路の場合だけでなく、隧道、トンネル、余水吐、開渠その他のコンクリート構造物全般に共通する問題である。
【0008】
そこで、最近では、上記のようなコンクリート壁の表面の劣化を早目に測定し、全面的な改修を必要としない一定の劣化レベル状態の時に、必要な深さの断面部分を修復し、低コスト、かつ短かい工事期間で耐用年数を延ばす、補修工法(エコ工法)が採用されてきている。
【0009】
ところが、そのような補修工法を採用する前提として、当然ながら上記コンクリート壁表面の状態(表面凹凸量)を正確に測定することが必要となってくる。
【0010】
また、補修が完了した場合には、その表面状態(仕上り状態)に加え、補修後の塗り厚が適正な塗り厚となっているか否か、すなわち出来形が適正な出来形となっているか否かなどの測定(検査)が必要となる。
【0011】
従来、これらの測定は、基本的に作業員の手作業によって行われており、例えば水路壁等コンクリート壁の高さ方向および長さ方向に寸法規定用の治具を当て、長さ方向および幅方向共に5cm毎にノギスやハンディタイプのレーザー方式の距離センサを使用して測定対象面の凹凸部の深さを測定して行く方法が採用されている。
【0012】
また、一般に被測定物表面の表面粗さをレーザー式投光器を用いて測定することは、知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−125632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記のような手作業による測定方法のうち、必要な測定点毎に一々ノギスを当てて凹凸部の深さを測定する方法の場合、ノギスの当て方等による測定誤差が大きいことはもちろん、測定作業そのものが大変で、相当長期に亘る測定作業が避けられない。
【0015】
一方、ノギスに代えてハンディタイプのレーザー方式の距離計を使用するようにすると、ノギスに比べて測定点毎の測定精度は高くなり、ある程度測定効率を向上させることができるが、やはり全体としての測定作業が大変であることに変わりはない。
【0016】
また、特許文献1に示されるレーザー式投光器の場合、一般に金属の表面粗さ等の測定には使用されているが、上述のような土木分野に適したものとはなっていない。
【0017】
本願発明は、このような事情に基いてなされたもので、レーザー光による距離センサを測定対象面の長手方向に沿って軸方向移動および軸周り方向に回転可能に設置し、制御手段を用いて、長手方向および幅方向の所定の測定点毎に自動的、かつ連続的に測定して行くことができるようにした回転式レーザー測定装置を提供すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願各発明は、上記の目的を達成するために、それぞれ次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0019】
(1) 請求項1記載の発明
この発明の回転式レーザー測定装置は、レーザー光によって距離を測定する距離センサと、該距離センサを軸方向に駆動する第1の駆動手段と、同距離センサを軸周り方向に駆動する第2の駆動手段と、これら第1,第2の駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを備え、上記距離センサを測定対象面の長手方向と直交する面に沿って回転可能に支持するとともに、上記測定対象面の長手方向に沿って所定ピッチ毎に移動可能とし、該所定ピッチ毎に上記距離センサを移動させ、かつ所定の角度回転させながら、測定対象面の状態を自動的に測定して行くようにしたことを特徴としている。
【0020】
このような構成によると、レーザー光による距離センサを測定対象面の長手方向に沿った軸方向に移動可能、かつ軸方向周りに回転可能に設置し、軸方向に所定ピッチ毎に移動させ、かつ軸周り方向に回転させながら測定して行くだけで、水路や隧道、トンネル、余水吐、開渠のような距離が長く、幅が広い測定対象面でも、自動的かつ容易に、しかも正確に凹凸量等の表面状態を測定して行くことができるようになる。
【0021】
したがって、従来の測定方法に比べて、遥かに高効率で、精度の高い測定が可能となる。
【0022】
(2) 請求項2記載の発明
この発明の回転式レーザー測定装置は、上記請求項1の発明の構成において、距離センサの回転角は、測定対象面の形状および高さに応じて、所望の大きさに調節可能となっていることを特徴としている。
【0023】
水路や隧道、トンネルなどは、一般に左右両側壁面および底板(面)、上板(面)の3面壁よりなるが、その左右両側壁の高さは常に一定ではなく、異なるケースも多い。また、それらの幅と左右の側壁の高さとの関係も区々である。
【0024】
そこで、それらに対応するために、距離センサの回転角を所望の大きさに調節設定できるようにする。
【0025】
(3) 請求項3記載の発明
この発明の回転式レーザー測定装置は、上記請求項1又は2の発明の構成において、測定された測定対象面の状態を示すデータは、駆動制御手段の測定データ記録手段に記録されるようになっていることを特徴としている。
【0026】
このように、測定された測定対象面の状態を示すデータが、駆動制御手段の測定データ記録手段に記録されるようになっていると、測定されたデータをパソコンに取り込んで、画像データとして表示し、またCADデータとして所望の処理を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0027】
以上の結果、本願発明によると、従来の測定方法に比べて、遥かに精度が高く、かつ効率の良い測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の実施の形態に係る回転式レーザー測定装置の構成を示す正面図である。
【図2】同装置の左側面図である。
【図3】同装置の平面図である。
【図4】同装置のガイドレール、スライド部材、減速機構、距離センサ部分の構成を示す拡大正面図である。
【図5】同装置のガイドレール、スライド部材、減速機構、距離センサ部分の構成を示す拡大左側面図である。
【図6】同装置のガイドレール、スライド部材、減速機構、距離センサ部分の構成を示す拡大下面図である。
【図7】同装置の歯付プーリー駆動モータおよび駆動側歯付プーリーと駆動側歯付プーリーに設けられている4枚の回転羽根に対応して駆動側歯付プーリーの所定の回転角毎の回転を検出し、歯付プーリーの回転を止めるリミットスイッチを示すガイドレール部分の一部切欠図である。
【図8】同装置の付属品である基準ガイドの構成と使用方法を示す斜視図である。
【図9】同装置の制御回路部分の構成を示すブロック図である。
【図10】同装置の水路内への設置形態を示す説明図である。
【図11】同装置を図10のように設置して水路壁の劣化度合を測定する時の測定対象面のメッシュ構成(概念)を示す斜視図である。
【図12】本願発明の実施の形態に係る回転式レーザー測定装置による測定対象水路の断面構造の一例を示す説明図である。
【図13】同装置による図12の水路の水路壁面の測定結果を示すデータテーブルである。
【図14】同装置による図12の水路の水路壁面の測定結果を用いてCADデータ化し、パソコンの画面上に表示した表示画像(イメージ)である。
【図15】図12の水路壁の補修完了後の出来形構成を示す説明図である。
【図16】同装置によって図15の水路壁の出来形を測定した測定結果を示すデータテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1〜図16は、一例として、水路壁を測定対象面として選択した場合における本願発明の実施の形態に係る回転式レーザー測定装置の構成および作用を示している。
【0030】
<装置全体の構成>
該回転式レーザー測定装置は、例えば図1および図3に示すように、一定の間隔を保って立設された一対の3脚1A,1Bと、該一対の3脚1A,1Bの軸部上端側の架台11a,11b上に架け渡す形で設けられた断面C字形のガイドレール2と、該ガイドレール2内の両端部間に亘って回転可能に設けられた一対の歯付プーリー3A,3Bと、該歯付プーリー3A,3B間にエンドレスに巻回された歯付ベルト4と、上記一端側歯付プーリー3Aを減速機構Rg1(図5、図7参照)を介して回転駆動する歯付プーリー回転駆動モータM1と、上記ガイドレール2に対して長手方向に沿ってスライド可能な状態で取り付けられたスライド部材5と、該スライド部材5下端のスライド方向の一側にスライド方向と直交する方向の平面に沿って回転可能に取り付けられた距離センサ6と、上記スライド部材5のスライド方向と直交する方向の一側面にスライド方向の平面に沿って回転するように取り付けられ、上記距離センサ6を回転させる距離センサ回転駆動モータM2と、上記一端側歯付プーリー3Aに対応して設けられ、同一端側歯付プーリー3Aが所定の回転角度(90°)回転したことを検出してONになる第1のリミットスイッLS1と、上記ガイドレール2の一端側に設けられ、上記スライド部材5が一端側にある時および他端側から一端側に到達した時にONになる第2のリミットスイッLS2と、上記ガイドレール2の他端側に設けられ、上記スライド部材5が一端側から他端側に到達した時にONになる第3のリミットスイッLS3と、上記スライド部材5の距離センサ6と反対側の同軸位置に設けられ、上記距離センサ6の回転角を検出する第1の回転角検出器8と、上記距離センサ6内に設けられ、上記距離センサ6の実際の回転角θを検出する第2の回転角検出器9と、上記歯付プーリー回転駆動モータM1、距離センサ回転駆動モータM2、第1,第2,第3のリミットスイッチLS1,LS2,LS3、距離センサ6等に電源および必要な制御信号を供給するとともに、第1,第2,第3のリミットスイッチLS1,LS2,LS3、第1,第2の回転角検出器8,9から必要な検出信号を入力して必要な制御を行う制御盤30とから構成されている。
【0031】
上記一端側歯付プーリー3Aのプーリー部前面側には、その外周部の周方向に90°間隔で半径方向外方に向けて延びる4枚の羽根32a,32a・・を設けた回転プレート32が取付部材32b,32bを介して取り付けられており、この回転プレート32の羽根32a,32a・・が上述した第1のリミットスイッLS1の検出部に対応した時に第1のリミットスイッLS1がONになって、上記歯付プーリー回転駆動モータM1を停止させる。
【0032】
このように歯付プーリー3Aが90°回転すると、上記歯付ベルト4および上記歯付ベルト4に固定部材5cを介して固定されている上記スライド部材5が、図1中の矢印に示すように、ガイドレール2の一端側から他端側にかけて1ピッチ=5cm毎に移動する。
【0033】
そして、それにより上記ガイドレール一端側第2のリミットスイッLS2部分(スタート位置)からガイドレール他端側第3のリミットスイッLS3部分(終端位置)までの間の距離1mを1ピッチ5cm毎に20等分して間欠的に移動し、最終的に第3のリミットスイッLS3部分に達した時点で停止する。そして、その1ピッチ5cm毎の移動区間内停止位置において、上記距離センサ6を所定の角度(最大270°の範囲内において所望に設定)回転させて水路10の左右側壁面10A,10Bおよび底板10c面の凹凸量を測定する。
【0034】
一対の3脚1A,1Bは、例えば回転操作用のハンドル(図示省略)を備え、上記ガイドレール2を支持している架台11a,11b部分を、例えば図10に示すように測定する水路10の深さ(側壁10A,10Bの高さ)に応じて、適切な測定を行える任意の高さに調節することができるようになっている。
【0035】
ガイドレール2は、例えば断面C字形の高剛性形状をなし、その非開口面側の側面壁2a両端部分に上記歯付プーリー3A,3Bの回転支軸31a,31bをそれぞれ設け、該回転支軸31a,31bを介して歯付プーリー3A,3Bを回転可能に支持している。
【0036】
この実施の形態の場合、一端側(図示左端側)歯付プーリー3Aが駆動側歯付プーリー、他端側(図示右端側)歯付プーリー3Bが従動側歯付プーリーとなっており、一端側歯付プーリー3Aには、側面壁2aの外側に位置して減速機構Rg1を備えた歯付プーリー回転駆動モータM1が設けられている。そして、同歯付プーリー回転駆動モータM1が時計周りに回転駆動されることにより、歯付プーリー3Aが所望の回転速度で同方向に回転し、歯付ベルト4が時計周りに駆動される。
【0037】
スライド部材5は、例えば図5に示すように、前後2枚の平行板51a,51bの間に上記断面C字形のガイドレール2の上下両面側を挟む上下一対のローラー5a,5bをガイドレール長手方向に所定の間隔を置いて2組設け、同2組の上下ローラー5a,5b、5a,5bを介して上記ガイドレール2部分をモノレールとして自由かつ正確に安定してスライド移動できるように構成されており、その平行板51a,51b下端側後面壁の水平方向に張り出したモータ取付板51cの下面側には、上述した距離センサ6を回転駆動する距離センサ回転駆動モータM2が取り付けられ、また前後平行板51a,51b間には、例えば図6に示すような、ウォーム12aとウォームギヤ12bとの組み合せからなる回転方向変更用の減速機構12が設けられており、距離センサ6は上記距離センサ回転駆動モータM2により、当該回転方向変更用の減速機構12を介して所望の回転速度で上記ガイドレール2と直交する水平断面方向に最大270°回転角範囲で回転駆動されるようになっている。
【0038】
そして、上記ウォームギヤ12bのギヤ軸手前側(図示右端側)には、第1の回転角検出器8の回転軸が同軸に直結されており、ウォームギヤ12bの回転、すなわち距離センサ6の実際の回転角θを検出して、上記制御盤30の後述する制御部30aに入力する。
【0039】
距離センサ6は、例えば図6に示すように、ボックス構造の本体6cの先端面にレーザー光を投光する投光部(小口径)6aおよび水路壁等測定対象面から反射したレーザー光を受光する受光部(大口径)6bを備えた反射型レーザー距離測定器を採用して構成されており、コネクタ6cおよびコネクタケーブル6dを介して制御盤30の制御部30aに接続されている。なお、6eは、ウォームギヤ12bの回転軸12cに取り付けられた距離センサ取付プレートである。
【0040】
この距離センサ6の回転角θは、理論的には、上記減速機構12の出力側ウォームギヤ12bの回転軸12cを中心として同回転軸12c周りに最大359度回転させることが可能であるが、現実的には、例えば図10に示すような開放型3面コンクリート型水路10の水路壁面10A,10B,10Cの測定に際しては、そのような大きな測定角は必要としないので、例えば図2,図5に示すような最大270度までの回転角に設定している。
【0041】
なお、この実施の形態では、実際の測定に際し、当該測定対象水路10の水平および縦断勾配を設定する、例えば図9に示すような基準ガイド20がオプションとして付設されている。
【0042】
すなわち、この基準ガイド20は、当該測定対象水路10の例えば左右何れか一方の水路壁10A,10Bの天面(工事規格上、水路底板10Cの勾配と同じ勾配に設計されている)に載置されるフラットな底板20A,20Bの中心部上に棒状の支柱21,21を立設し、その上部所定位置に大径部21a,21aを形成し、さらに同大径部21a,21aの中心部から上方に延びる棒状部の上端部分にナット螺合部21b,21bを形成している。
【0043】
そして、これら一対の棒状の支柱21,21の上記ナット螺合部21b,21bを有する上端部分に、両端側に上下方向に穴22a,22bが穿いたパイプ22を図示のように嵌挿し、その前後両端が同じ高さになるようにナット23a,23bで固定する。
【0044】
この状態で、当該パイプ22の上面に水準器24を置いて、当該測定対象水路10の水平および縦断方向の勾配を計測する。
【0045】
そして、この計測された勾配に基いて、同一の勾配となるように、同じく水準器24を用いて勾配を計測しながら3脚1A,1Bの架台11a,11bの高さを可変することによって、上記測定装置のガイドレール2の水平および縦断方向の勾配を水路勾配と同一にセットする。その上で、後述するように水路壁10A,10B,10Cの凹凸量の測定を行う。
【0046】
<制御回路部分の構成>
次に、図9のブロック図は、以上に述べた測定装置の制御回路部分の構成を示している。
【0047】
先ず符号30は上述した制御盤であり、所定の能力のマイクロプロセッサを備えた制御部(制御ユニット)30aと、該制御部30aへの入力手段および表示手段であるタッチパネル30bと、制御部30aを介して上述の測定データを入力し、メモリする外部から着脱可能なUSBその他の測定データ記録手段30cと、発電機(オルタネータ)その他のAC電源をソースとして上述の各部にAC電源を供給する電源供給部(図示省略)とを有して構成されている。
【0048】
そして、同制御盤30の上記電源供給部から、上記第1〜第3のリミットスイッチLS1〜LS3、歯付プーリー回転駆動モータM1、距離センサ回転駆動モータM2、第1の回転角検出器8、第2の回転角検出器9、距離センサ6等に必要な動作電源を供給すると同時に、それらの動作信号(例えばON,OFF信号、回転角検出信号など)が制御盤30に入力される。
【0049】
また、上記制御部30aには、図示のように、必要に応じてパーソナルコンピュータPCが接続されるようになっており、現地で、例えば図12に示すように、実際に測定したデータ(測定データ記録手段30c中に記録されている)を断面形状図として確認することができるようになっている。
【0050】
<測定方法>
測定に際しては、例えば図10のように測定装置を設置する前に当該水路10の水路壁面10A〜10Cの清掃および高圧洗浄が行われ、水路壁面10A〜10Cの凹凸量を測定しやすい状態に維持される。
【0051】
その上で、例えば図10のように、当該所定の水路幅、所定の水路壁高の水路10内の底板10Cの中央部位置に、上述のように基準ガイド20を用い、水路勾配に沿って測定装置が設置されると、上述した制御盤30の電源供給部から、上記第1〜第3のリミットスイッチLS1〜LS3、歯付プーリー回転駆動モータM1、距離センサ回転駆動モータM2、第1の回転角検出器8、第2の回転角検出器9、距離センサ6等に必要な動作電源が供給される。
【0052】
この状態で、上記制御盤30のタッチパネル30bを使い、当該水路幅、側壁高に応じて必要な距離センサ6の回転角その他を先ず設定する。
【0053】
そして、その後、先ず上記歯付プーリー3Aが駆動され、その回転角が90°回転すると、同90°回転したことが上記第1のリミットスイッLS1により検出されて、上記歯付プーリー回転駆動モータM1がOFFにされて停止する。
【0054】
この結果、上記スライド部材5も当該1ピッチ(5cm)移動した位置で停止し、該停止位置で距離センサ回転駆動モータM2が270°回転駆動されて、図10、図11の左側壁10Aの上端側から下端側、底板10Cの左端側から右端側、左端壁10Bの下端側から上端側へと壁面の凹凸量を線の変化として連続的に測定して行く。
【0055】
そして、上記予じめ設定された回転角だけ回転すると、上記距離センサ回転駆動モータM2が停止し、今度は歯付プーリー回転駆動モータM1が90°回転して上記スライド部材5を再び1ピッチ5cm移動させた後に停止する。そして、さらに上記距離センサ回転駆動モータM2が、以上とは逆方向に設定角回転駆動されて、今度は図10、図11の右側壁10Bの上端側から下端側、底板10Cの右端側から左端側、左端壁10Bの下端側から上端側へと逆方向に各水路壁面の凹凸量を連続的に測定して行く。
【0056】
これらの測定動作は、図11の水路10の一端A側から始まって他端B側に達するまで繰り返し継続される。
【0057】
この結果、例えば図11に示すように、5cm四方のメッシュ部が水路10の測定方向に1m分連続する単位測定領域の凹凸量(表面状態)の測定が終了する。
【0058】
このようにして、1つの単位領域1m分の測定が終了すると、水路測定方向の次の単位測定領域に上記測定装置を移動させて、上述の場合と同様にセットし、同様の測定を行う。これを必要な測定水路長部分継続し、測定を完了する。
【0059】
この結果、例えば図12の断面形状図と図13の測定データ表に示すように、上記図11の水路測定方向および幅方向のメッシュ部交点を結んで水路壁10A,10B,10Cの横断面形状とその不陸厚さが測定データとして示され、上記制御盤30の測定データ記録手段30cに記録される。
【0060】
この測定データ記録手段30cに記録された測定データは、上述のようにパーソナルコンピュータPCを用いて見ることもでき、またCADデータとして所定の処理(後述する出来形チェック時の重ね合わせなど)を行うこともできる。
【0061】
このような構成の場合、上記図11に示す水路長1m/5cm毎:20横断面の内の1つの横断面の測定データの入手が1分程度であるから、20断面全ての測定データを得るのに、20〜30分もあれば十分である。
【0062】
もちろん、測定精度を下げれば、さらに測定時間を短縮することができる。
【0063】
<補修工事>
以上のようにして、凹凸量の測定が終了すると、次に同測定データに基いて、必要な補修工事として、例えば断面修復と表面被覆が行われ、元の水路壁状態に復元される。
【0064】
<出来形測定>
以上のようにして補修工事が完了すると、最後に上記復元された水路壁の表面状態および出来形の測定が必要になる。この表面状態および出来形の測定も、上述の凹凸量測定の場合と同様に上述の測定装置を用いて行われる。そして、その測定データが、上述の測定データ記録手段30cに記録される。また、図15および図16に示すように、その塗厚と共に断面形状が上記パーソナルコンピュータPCによって観測され、必要に応じ、CADデータとして処理される。
【0065】
この結果、例えば同図15の形状図に示すように、同表面状態および出来形測定データの断面形状図(完成調査図)を上述した図12の凹凸量測定データの断面形状図(不陸調査図/現況図)に重ねて容易に良否チェックを行うことも可能となる。
【0066】
また、それに関連して、さらに修復に用いた使用材料の数量表なども簡単に作成することができる。
【0067】
<凹凸量測定の際の仕様について>
上述の測定における必要な測定水路長は、例えば管轄農政局その他の補修工事仕様により定められており、例えば「水路20m毎に3箇所(両側壁10A,10Bおよび底板10C)1箇所当たり1m2とし、縦横5cmメッシュの交点を計測するものとする。」とされている。
【0068】
つまり、同仕様では水路幅方向の測定についても、本来図11の5cmピッチの交点での測定データで良いことになっている。
【0069】
しかし、本願発明の場合には、これを上述のように連続した線の形状変化として、より高精度に測定することができるようになる。
【符号の説明】
【0070】
1A,1Bは3脚、2はガイドレール、3A,3Bは歯付プーリー、5はスライド部材、6は距離センサ、8は第1の回転角検出器、9は第2の回転角検出器、10は水路、10A,10Bは水路左右壁、10Cは水路底板、12は減速機構、12aはウォーム、12bはウォームギヤ、12cは距離センサ回転軸、30は制御盤、30aは制御部、30bはタッチパネル、30cは測定データ記録手段、M1は歯付プーリー回転駆動モータ、M2は距離センサ回転駆動モータ、LS1は第1のリミットスイッチ、LS2は第2のリミットスイッチ、LS3は第3のリミットスイッチである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光によって距離を測定する距離センサと、該距離センサを軸方向に駆動する第1の駆動手段と、同距離センサを軸周り方向に駆動する第2の駆動手段と、これら第1,第2の駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを備え、上記距離センサを測定対象面の長手方向と直交する面に沿って回転可能に支持するとともに、上記測定対象面の長手方向に沿って所定ピッチ毎に移動可能とし、該所定ピッチ毎に上記距離センサを移動させ、かつ所定の角度回転させながら、測定対象面の状態を自動的に測定して行くようにしたことを特徴とする回転式レーザー測定装置。
【請求項2】
距離センサの回転角は、測定対象面の形状および高さに応じて、所望の大きさに調節可能となっていることを特徴とする請求項1記載の回転式レーザー測定装置。
【請求項3】
測定された測定対象面の状態を示すデータは、駆動制御手段の測定データ記録手段に記録されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2記載の回転式レーザー測定装置。
【請求項1】
レーザー光によって距離を測定する距離センサと、該距離センサを軸方向に駆動する第1の駆動手段と、同距離センサを軸周り方向に駆動する第2の駆動手段と、これら第1,第2の駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを備え、上記距離センサを測定対象面の長手方向と直交する面に沿って回転可能に支持するとともに、上記測定対象面の長手方向に沿って所定ピッチ毎に移動可能とし、該所定ピッチ毎に上記距離センサを移動させ、かつ所定の角度回転させながら、測定対象面の状態を自動的に測定して行くようにしたことを特徴とする回転式レーザー測定装置。
【請求項2】
距離センサの回転角は、測定対象面の形状および高さに応じて、所望の大きさに調節可能となっていることを特徴とする請求項1記載の回転式レーザー測定装置。
【請求項3】
測定された測定対象面の状態を示すデータは、駆動制御手段の測定データ記録手段に記録されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2記載の回転式レーザー測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−76660(P2013−76660A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217357(P2011−217357)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(503096971)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(503096971)
【Fターム(参考)】
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