説明

回転式基板処理装置

【課題】 回転式基板処理装置において、使用した薬液の回収率を高める。装置価格を引き下げる。振動を抑える。薬液と廃液の雰囲気分離を行う。
【解決手段】 基板1を水平に支持して回転させる回転機構10の周囲に、筒状で昇降式の上段液体ガイド30及び下段液体ガイド40を設ける。上段液体ガイド30は、下方の待機位置で下段液体ガイド40に重なって、両ガイド間に形成される液体導入口を閉じ、待機位置から上方の回収位置へ移動して、基板1から飛散する第1の液体を下方に導いて回収する。下段液体ガイド40は、待機位置から上方の回収位置へ移動して、基板1から飛散する第2の液体を下方に導いて回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウエハ、液晶用ガラス基板等の基板類を湿式処理する際に使用される回転式基板処理装置に関し、特にその基板を1枚ずつ処理する枚葉タイプの回転式基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶パネルの製造に使用される枚葉タイプの回転式基板処理装置は、処理槽内で基板をロータ上に水平に載せ、このロータを所定速度で回転させながら、基板の上面に液体を散布することにより、その上面を湿式処理する。基板の上面に散布された液体は遠心力により周囲に飛散する。また、液体の散布後に基板上に溜まる液体を除去するためにロータを高速で回転させるが、このときも基板から周囲に液体が飛散する。これらの飛散液体を回収するために、回転機構の周囲にはカップが設けられている。
【0003】
ところで、この種の回転式基板処理装置では、同一槽内でエッチング等の薬液処理と純水による洗浄処理を連続して行う場合がある。この場合、使用後の薬液と洗浄処理で生じる廃液(純水と薬液が混じった液体)を分離回収する必要があり、その分離回収機構としては次の3つが知られている。
【0004】
第1は図5に示す三方弁方式である。これは、基板1を回転させる回転機構2の周囲に設けられたカップ3の底部にドレン配管4を設け、この配管途中に三方弁4aを設けたものである。そして、三方弁4aを操作することにより、薬液と廃液が分離回収される。
【0005】
第2の方式は、図6及び図7に示すカップ昇降式である。これは、蛇腹やテレスコ等の伸縮部材5を用いてカップ3を昇降可能にすると共に、カップ3の内側空間を上下に仕切る仕切り部3aをカップ3の内面に設けたものである。薬液を回収するときは、図6に示されるように、仕切り部3aが基板1の下方となる高さにカップ3を固定する。これにより、カップ3内の仕切り部3aより上方の空間に薬液が回収され、フレキシブル管6aを介してカップ3の外に取り出される。廃液を回収するときは、図7に示されるように、仕切り部3aが基板1の上方となる高さにカップ3を固定する。これにより、カップ3内の仕切り部3aより下方の空間に廃液が回収され、フレキシブル管6bを介してカップ3の外に導出される。
【0006】
第3の方式は、図8及び図9に示すロータ昇降式である。これは、仕切り部3aを備えたカップ3を固定し、代わりに回転機構2をシリンダー7により昇降させるようにしたものである。回転機構2を昇降させることにより、カップ昇降式の場合と同様に薬液と廃液が分離回収される。ただし、カップ昇降式の場合と異なり、カップ3が固定されているので、フレキシブル管6a,6bは不要となり、カップ3内に回収された薬液及び廃液は、カップ3の外面に取り付けられたポケット8a,8bを介してカップ3の外に導出される。
【0007】
しかしながら、これらの分離回収機構には次のような問題がある。
【0008】
図5に示す三方弁方式の場合は、薬液と廃液の間でカップ2及びドレン配管4の一部が共用されるため、薬液処理に切り替わった最初の数秒間は、先の洗浄処理で残った純水が薬液に混入する。このため、この間に回収される薬液は廃液としなければならず、薬液回収率の低下を招く。
【0009】
図6及び図7に示すカップ昇降式の場合は、回転機構2の周囲に設けられるカップ3を回転機構2に対して昇降させなければならないため、両者の間を蛇腹やテレスコ等の伸縮部材5によってシールする必要がある。また、カップ3内に回収された液体をカップ3の外に導出するために、その導出管にフレキシブル管6a,6bを使うことが必要になる。ここにおける薬液としては、例えばエッチング処理の場合は腐食性が非常に強いフッ化水素等も使用されるので、薬液の種類によっては伸縮部材5及びフレキシブル管6a,6bの材質が限定され、非常に高価なものとなる。
【0010】
図8及び図9に示すロータ昇降式の場合は、カップ3が固定式となるため、カップ内からカップ外へ液体を導出するための導出管にフレキシブル管を使う必要はなくなる。しかし、ローラ2とカップ3の間をシールするためのシール部材としての伸縮部材5は依然として必要である。このため、伸縮部材5に要するコストが大きな問題として残る。また、回転機構2を昇降可能な可動構造とする必要があるため、振動が大きくなりやすいという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高い薬液回収率を確保し得るのは勿論のこと、フレキシブル材を必要とする可動部を可及的に排除することにより装置価格の低減を図り、しかも振動が少ない回転式基板処理装置を提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本出願人は2段カップ方式の回転式基板処理装置を特願平9−288016号により先に特許出願した。
【0013】
この先願装置は、図10〜図12に示すように、処理すべき基板1を水平に支持して回転させる回転機構2と、基板1の回転によって基板1から飛散する液体を回収するべく回転機構2の周囲に設けられたカップ3とを備えている。カップ3は、円筒形状をした可動式の上カップ3Aと、上カップ3Aを収容する固定式の下カップ3Bとに分割されている。可動式の上カップ3Aは、シリンダー7,7の同期動作により昇降動作を行う。上カップ3Aの上端部は、内側に傾斜した環状の上段液体ガイド部3′である。上段液体ガイド部3′の下方には、内側空間を上下に仕切る仕切り部として、内側に傾斜した環状の下段液体ガイド部3″が設けられている。
【0014】
基板1の搬入・搬出を行う待機時は、図10に示すように、上段液体ガイド部3′が基板1より下方となる位置に、上カップ3Aが保持される。薬液処理時は、図11に示すように、上段液体ガイド部3′が基板1より上方に位置し、下段液体ガイド部3″が基板1より下方となる薬液回収位置に、上カップ3Aが上昇する。この状態で基板1を回転させると、基板1上の薬液は下カップ3Bの外(上カップ3A内)に回収され、第1ポケット8a,8aより薬液用の気液分離ボックス等に導かれる。純水による洗浄処理時は、図12に示すように、下段液体ガイド部3″が基板1より上方となる廃液回収位置まで、上カップ20Aが更に上昇する。この状態で基板1を回転させると、基板1上の廃液は固定式の下カップ3B内に回収され、第2ポケット8b,8bを経由して廃液用の気液分離ボックス等に導かれる。
【0015】
かくして、先願装置では、フレキシブル材を必要とする可動部が可及的に排除され、装置価格が低減される。また、回転機構が固定されることにより、振動が抑えられる。
【0016】
しかし、その一方では、上カップ3Aの薬液導入口である上段液体ガイド部3′と下段液体ガイド部3″の間が常時開放している。このため、待機時にも上段液体ガイド部3′と下段液体ガイド部3″の間から薬液蒸気が上方へ逸散し、薬液濃度の濃い雰囲気と廃液から生じる薬液の濃度の薄い雰囲気が混じり合うという問題がある。この問題を解決するために、ダウンフローが与えられているが、そのファンを駆動するためのモータの設備コストや運転コストが増大する問題がある。また、ダウンフローよっても、薬液と廃液の雰囲気分離を完全に行うことは困難である。
【0017】
即ち、先願装置では、薬液と廃液の分離回収は行えても、それぞれの雰囲気分離までは困難である。
【0018】
また、上カップ3Aは、上段液体ガイド部3′が基板1より下方となる待機位置まで下降する必要がある。このとき、下段液体ガイド部3″は基板1の遙か下方へ必要以上に下降する。一方、下段液体ガイド部3″が廃液回収位置へ上昇したときは、上端液体ガイド部3′は薬液回収位置の遙か上方へ必要以上に上昇する。このため、上段カップ3Aの昇降ストロークが非常に大きい。このストロークの大きさ、特に下方への必要以上の下降は下カップ3Bの深さを大きくする原因になり、装置高の増大につながる。
【0019】
本発明の回転式基板処理装置は、先願装置の利点を残しつつ、これらの欠点を解消するものであり、処理すべき基板を回転機構により水平に支持して回転させ、その回転によって基板から飛散する2種類の液体を分離回収する回転式基板処理装置において、2種類の液体のうちの一方を回収するべく回転機構の外側に設けられ、基板位置より下方の待機位置と上方の回収位置の間を昇降すると共に、上方の回収位置で基板から飛散する一方の液体を受けて下方へ導く筒状で可動式の下段液体ガイドと、下段液体ガイドより外側に設けられ、基板位置より下方の待機位置と上方の回収位置の間を下段液体ガイドから独立して昇降すると共に、昇降方向で下段液体ガイドに重なり合うことが可能であり、且つ上方の回収位置で基板から飛散する他方の液体を受けて下方へ導く筒状で可動式の上段液体ガイドとを具備している。
【0020】
本発明の回転式基板処理装置では、回転機構の外側で独立に昇降する2段の環状液体ガイドのダブルアクション及び昇降方向での重なり合い構造により、先願装置の利点を残しつつ、薬液蒸気の逸散が抑制され、且つ昇降部の動作ストロークが抑制されて、装置高が抑制される。特に、2段の環状液体ガイドの昇降方向での重なり合いについて、基板位置より上方又は下方において行うようにした場合、薬液蒸気の逸散及び装置高を更に効果的に抑制できる。
【0021】
即ち、基板位置より下方の待機位置では、上段液体ガイドと下段液体ガイドを重ね合わせる。これにより、上段液体ガイドと下段液体ガイドの間に形成される液体導入口が閉止される。また、下段液体ガイドの必要以上の降下が回避される。
【0022】
2種類の液体のうちの他方を回収するときは、上段液体ガイドのみを、基板位置より上方の回収位置へ上昇させる。これにより、上段液体ガイドと下段液体ガイドの間に形成される液体導入口が開放し、基板から飛散する他方の液体は、この液体導入口から上段液体ガイド内に回収される。
【0023】
一方の液体を回収するときは、下段液体ガイドを、基板位置より上方の回収位置へ上昇させる。これにより、基板から飛散する一方の液体は下段液体ガイド内に回収される。一方の液体を回収するとき、上段液体ガイドを上昇させず、下段液体ガイドのみを上昇させて上段液体ガイドに重ねれば、上段液体ガイドと下段液体ガイドの間の液体導入口が閉止される。また、上段液体ガイドの必要以上の上昇が回避される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る回転式基板処理装置は、回転機構の外側に、独立に昇降可能とされた上下2段の液体ガイドを設け、且つ2段の液体ガイドを重ね合わせ可能とすることにより、液体の混合を回避し、高い薬液回収率を確保できる。また、フレキシブル材を必要とする可動部を可及的に排除し、装置価格を低減できる。更に、回転機構を固定できるので、振動を抑制できる。これらに加え、薬液蒸気の逸散防止を図り、薬液と廃液の雰囲気分離を可能にすると共に、薬液蒸気の逸散防止に要する経費を抑制できる。更に又、液体ガイドの昇降ストロークの抑制により装置高も抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係る回転式基板処理装置の概略縦断面図で、待機時を示す。図2は同回転式基板処理装置の概略縦断面図で、薬液処理時を示す。図3は同回転式基板処理装置の概略縦断面図で、洗浄処理時を示す。図4は同回転式基板処理装置の概略縦断面図で、乾燥処理時を示す。
【0026】
本発明の実施形態に係る回転式基板処理装置は、図1〜図4に示すように、処理すべき基板1を水平に支持して回転させる回転機構10と、基板1の回転によって基板1から飛散する液体を回収するべく回転機構10の周囲に設けられたカップ20と、カップ20に組み合わされた筒状の上段液体ガイド30及び下段液体ガイド40と、回転機構10の上方に設けられた環状の飛散防止カバー50とを備えている。これらは、処理槽を兼ねるケーシング60内に設けられている。ケーシング60の天井面にはダウンフローを形成するためにクリーンファン70が設けられている。
【0027】
回転機構10は、基板1を水平に支持するロータ11と、その駆動部12とからなる。カップ20は廃液を回収する。このカップ20は円筒形状で固定式であり、2重の周壁21を有している。周壁21の外側には、薬液を回収するために、環状の回収部20′が一体的に設けられている。
【0028】
カップ20内に回収された廃液は、図3及び図4に示すように、カップ20の底面に接続された排気ダクト兼用の導管22,22を介してカップ20の下方へ取り出され、廃液用の気液分離ボックス23に送られる。カップ20の外側に設けられた回収部20′に回収された薬液は、図1及び図2に示すように、回収部20′の底面に接続された導管24,24を介して回収部20′の下方へ取り出され、薬液用の気液分離ボックス25に送られる。両方の液体回収系は、干渉を回避するために、水平面内で周方向に90°変位して配置されている。
【0029】
カップ20に組み合わされる上段液体ガイド30は、カップ20に外嵌する円筒部31と、円筒部31の上端から内側へ傾斜して上方に延出した傾斜部32とを有しており、傾斜部32はカップ20の上方に突出している。この上段液体ガイド30は、薬液の回収に使用されるもので、薬液の回収部20′の周壁内面をガイド面として昇降自在に支持され、図示されない駆動機構により、待機位置を起点として上方へ2段階に駆動される。
【0030】
待機位置では、傾斜部32の上端(内縁)がロータ11より下方に位置する。1段目の上昇位置は薬液回収位置であり、この位置では傾斜部32の上端(内縁)はロータ11上の基板1より上方に位置する。2段目の上昇位置は、下段液体ガイド40を廃液回収位置へ引き上げる引き上げ位置である。
【0031】
下段液体ガイド40は、上段液体ガイド30の内側に配置され、廃液の回収に使用される。この下段液体ガイド40は、上段液体ガイド30と同様、円筒部41と、円筒部41の上端から内側へ傾斜して上方に延出した傾斜部42とを有している。円筒部41は、カップ20の2重の周壁21内に挿入されている。カップ20の上方に突出する傾斜部42は、上段液体ガイド30の傾斜部32の下側に位置し、その傾斜部32と同じかこれより若干小さい角度で内側に傾斜している。
【0032】
下段液体ガイド40は、カップ20の周壁21をガイドとして昇降自在に支持され、最も下の待機位置では、上段液体ガイド30と同様に、傾斜部42の上端(内縁)がロータ11より下方に位置する。上段液体ガイド30と下段液体ガイド40は、周方向に間隔をあけて配置された複数本のロッド33,33・・により連結されている。各ロッド33は、上段液体ガイド30の傾斜部32に結合固定され、その傾斜部32から下方に延出している。そして各ロッド33は、円筒部41の上端部外面に取り付けられたガイド43に昇降自在に通され、下端のストッパにより抜け止めされている。
【0033】
これにより、上段液体ガイド30が待機位置にあるときは、各ロッド33が各ガイド43に深く挿入されることにより、下段液体ガイド40が待機位置に保持され、上段液体ガイド30の傾斜部32が下段液体ガイド40の傾斜部42に重なり合う(図1)。上段液体ガイド30が1段目の上昇位置(薬液回収位置)へ上昇する間は、各ロッド33が各ガイド43から引き抜かれ、下段液体ガイド40は待機位置に保持される(図2)。上段液体ガイド30が2段目の上昇位置(引き上げ位置)へ上昇すると、下段液体ガイド40が上段液体ガイド30により引き上げられ、廃液回収位置へ移動する。
【0034】
上段液体ガイド30及び下段液体ガイド40の上昇時にロータ11と干渉するのを回避するために、傾斜部32,42の上端開口径は、ロータ11の外径より大きく設定されている。
【0035】
回転機構10の上方に設けられた環状の飛散防止カバー50は、ロータ11の上方に同心円状に配置された円筒部51と、円筒部51の上端部から内側に張り出したフランジ部52とを有している。円筒部51は、ロータ11上に基板1をセット・リセットするための隙間をロータ11との間に確保する。また、上段液体ガイド30及び下段液体ガイド40の昇降を阻害しないように、傾斜部32,42の上端開口径より小さい外径とされている。円筒部51の高さは、上段液体ガイド30が2段目の上昇位置(引き上げ位置)へ上昇し、下段液体ガイド40が廃液回収位置へ引き上げられた状態で、両ガイドの傾斜部32,42が円筒部51に外嵌するように設定されている。
【0036】
次に、本発明の実施形態に係る回転式基板処理装置の機能について説明する。
【0037】
ロータ11上への基板1のセットは、図1に示す待機状態、即ち、上段液体ガイド30が待機位置へ下降した状態で行われる。この状態では、上段液体ガイド30と下段液体ガイド40は、ロータ11より下方の実質同じ高さに位置し、上段液体ガイド30の傾斜部32は傾斜部42の上に重なり合う。このため、傾斜部32,42間の薬液導入口は全周にわたって閉止され、薬液蒸気のケーシング60内への逸散が防止される。
【0038】
ケーシング60内では、常時クリーンファン70によりダウンフローが形成されている。待機時、このダウンフローは、飛散防止カバー50の内側を通り、ロータ11と液体ガイド30,40の間に形成された環状の微小な隙間を通ってカップ20内に入り、廃液回収用の導管22,22及び気液分離ボックス23などを経てケーシング60外へ導出される。このため、廃液蒸気のケーシング60内への逸散が防止される。従って、比較的弱いダウンフローでも、薬液と廃液の雰囲気分離が可能になる。
【0039】
また、下段液体ガイド40が上段液体ガイド30と実質同じ高さにあることにより、下段液体ガイド40の必要以上の降下が回避され、カップ20の深さが抑制される。
【0040】
薬液処理を行うときは、図2に示すように、上段液体ガイド30が薬液処理位置へ駆動される。これにより、傾斜部32,42間の薬液導入口が開放する。また、上段液体ガイド30の傾斜部32は飛散防止カバー50の円筒部51に僅かの隙間をあけて外嵌する。下段液体ガイド40は待機位置に残っている。この状態で、基板1が回転し、その基板1上に、飛散防止カバー50内の薬液噴出ノズル80から薬液が散布される。散布が終わると、基板1を高速で回転させて、基板1上の薬液を除去する。基板1上の薬液は、基板1の回転に伴う遠心力により外側へ移動し、傾斜部32,42間の薬液導入口からカップ20外側の回収部20′に流入し回収される。
【0041】
このとき、ロータ11の上方には飛散防止カバー50があり、且つ、その外側に上段液体ガイド30の傾斜部32が嵌合している。このため、基板1上からの薬液飛散が防止され、且つ、薬液蒸気の逸散も最小限に抑制される。更に、下段液体ガイド40が待機位置に残り、ロータ11との間の隙間が微小なことから、ダウンフローは主に傾斜部32,42間の薬液導入口からカップ20外側の回収部20′に流入する。このため、カップ20内への薬液蒸気の侵入も最小限に抑制される。従って、ここでも薬液と廃液の雰囲気分離が図られる。
【0042】
薬液処理が終わると洗浄処理を行う。このときは、図3に示すように、上段液体ガイド30が薬液処理位置からその上の引き上げ位置へ駆動される。これにより、下段液体ガイド40は廃液回収位置へ上昇し、ロータ11との間の隙間を増大させると共に、その傾斜部32は飛散防止カバー50の円筒部51に僅かの隙間をあけて外嵌する。また、上段液体ガイド30の傾斜部32は、引き続き飛散防止カバー50の円筒部51に僅かの隙間をあけて外嵌する。
【0043】
この状態で、基板1が回転し、その基板1上に、飛散防止カバー50内の純水噴出ノズル90から純水が散布される。散布が終わると、基板1を高速で回転させて、基板1上の廃液を除去する。基板1上の廃液は、基板1の回転に伴う遠心力により外側へ移動し、下段液体ガイド40の傾斜部42に案内されてカップ20内に流入し回収される。
【0044】
このとき、ロータ11の上方には飛散防止カバー50があり、且つ、その外側に液体ガイド30,40の傾斜部32,40が2重に嵌合している。このため、基板1上からの廃液飛散が防止される。また、傾斜部32,42間の薬液導入口は飛散防止カバー50の円筒部51により実質的に閉止されており、ダウンフローは主に下段液体ガイド40とロータ11の間の増大した隙間からカップ20内に流入する。従って、ここでも薬液蒸気の逸散が最小限に抑制され、薬液と廃液の雰囲気分離が図られる。
【0045】
洗浄処理が終わると、乾燥処理を行う。このときは、図4に示すように、上段液体ガイド30及び下段液体ガイド40が回収位置に保持されたまま、回転する基板1の上面中心部に、飛散防止カバー50内のガス噴出ノズル100から窒素ガスがパージされると共に、回転機構10を通して基板1の下面中心部に窒素ガスがパージされる。これらのパージガスはダウンフローと共に、カップ20内から廃液回収用の導管22,22及び気液分離ボックス23などを経てケーシング60外へ導出される。
【0046】
このような分離回収によると、薬液と廃液が混じり合うことがない。従って、廃液の混入による薬液回収効率の低下は生じない。
【0047】
回転機構10が固定されているため、振動が少ない。
【0048】
回転機構10が固定されている上に、廃液を回収するカップ20も固定式であるため、両者の間をシールするのに伸縮部材を必要とせず、フレキシブル管も必要としない。従って、薬液として腐食性の強いものを使用する場合にあっても装置コストが上昇しない。
【0049】
上段液体ガイド30と下段液体ガイド40のダブルアクション及び重ね合わせ構造により、薬液導入口である傾斜部32,42間が待機時に閉止されるので、薬液蒸気の逸散が防止され、薬液と廃液の雰囲気分離が可能になる。また、薬液蒸気の逸散を防止するためのクリーンファン70の設備費及び運転費が節減される。また、下段液体ガイド40の必要以上の降下が回避されるので、カップ20が浅くなり、装置高が低減される。
【0050】
可動式の液体ガイド30,40と飛散防止カバー50の組合せにより、薬液及び廃液の飛散が防止されると共に、薬液蒸気の逸散防止、薬液と廃液の雰囲気分離が更に完全になる。
【0051】
上段液体ガイド30のみが強制的に駆動されるので、ガイド駆動機構が簡単である。
【0052】
なお、ガイド駆動については、上段液体ガイド30と下段液体ガイド40を独立に駆動することも可能である。独立駆動によれば、下段液体ガイド40が廃液回収位置にあるとき、これに上段液体ガイド30を重ね合わせることができるので、上段液体ガイド30を薬液回収位置より上方に移動させる操作は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る回転式基板処理装置の概略縦断面図で、待機時を示す。
【図2】同回転式基板処理装置の概略縦断面図で、薬液処理時を示す。
【図3】同回転式基板処理装置の概略縦断面図で、洗浄処理時を示す。
【図4】同回転式基板処理装置の概略縦断面図で、乾燥処理時を示す。
【図5】従来の回転式基板処理装置(三方弁式)の構造を示す概略縦断面図である。
【図6】従来の回転式基板処理装置(カップ昇降式)の構造を薬液回収動作の場合について示し、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図7】従来の回転式基板処理装置(カップ昇降式)の構造を廃液回収動作の場合について示し、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図8】従来の回転式基板処理装置(ロータ昇降式)の構造を薬液回収動作の場合について示し、(a)概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図9】従来の回転式基板処理装置(ロータ昇降式)の構造を廃液回収動作の場合について示し、(a)概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図10】先願の回転式基板処理装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図11】同回転式基板処理装置の薬液処理時を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図12】同回転式基板処理装置の洗浄処理時を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 基板
10 回転機構
11 ロータ
12 駆動部
20 廃液回収用のカップ
20′ 薬液回収部
30 上段液体ガイド
31 円筒部
32 傾斜部
33 ロッド
40 下段液体ガイド
41 円筒部
42 傾斜部
43 ガイド
50 飛散防止カバー
60 ケーシング
70 クリーンファン
80 薬液噴射ノズル
90 純水噴射ノズル
100 ガス噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき基板を回転機構により水平に支持して回転させ、その回転によって基板から飛散する2種類の液体を分離回収する回転式基板処理装置において、2種類の液体のうちの一方を回収するべく回転機構の外側に設けられ、基板位置より下方の待機位置と上方の回収位置の間を昇降すると共に、上方の回収位置で基板から飛散する一方の液体を受けて下方へ導く筒状で可動式の下段液体ガイドと、下段液体ガイドより外側に設けられ、基板位置より下方の待機位置と上方の回収位置の間を下段液体ガイドから独立して昇降すると共に、昇降方向で下段液体ガイドに重なり合うことが可能であり、且つ上方の回収位置で基板から飛散する他方の液体を受けて下方へ導く筒状で可動式の上段液体ガイドとを具備することを特徴とする回転式基板処理装置。
【請求項2】
上段液体ガイドと下段液体ガイドは、基板位置より上方の回収位置で重ね合わせが可能である請求項1に記載の回転式基板処理装置。
【請求項3】
上段液体ガイドと下段液体ガイドは、両者同時に基板位置より下方に保持可能である請求項1又は2に記載の回転式基板処理装置。
【請求項4】
上段液体ガイドと下段液体ガイドは、基板位置より下方の待機位置で重ね合わせが可能である請求項3に記載の回転式基板処理装置。
【請求項5】
回転機構は昇降しない固定型である請求項1〜4のいずれかに記載の回転式基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−194662(P2007−194662A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96509(P2007−96509)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【分割の表示】特願平11−57411の分割
【原出願日】平成11年3月4日(1999.3.4)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】