説明

固定体積モールド内の製品体積を制御する方法

例えば、モールド内に配置されたタイヤトレッドまたはタイヤなどの製品の体積を正確に制御する方法が提供される。この方法は、一連の層をポータブルモールドコア上に積層させることにより、ポータブルモールドコア上に組み付けられたトレッドまたはタイヤを提供するステップを含む。タイヤトレッドおよびコアがモールド内に配置されてモールドが閉鎖された後のモールドとタイヤトレッドとの間の干渉を回避するために、初期におけるタイヤトレッドまたはタイヤの外径は、モールドの内面よりも意図的に小さくされる。タイヤトレッドまたはタイヤの重量を測定して、タイヤトレッドまたはタイヤの体積がモールド内への適合を示す受容可能なパラメータ内であるかを確認する。タイヤトレッドまたはタイヤの体積がパラメータ内に収まらない場合、タイヤまたはタイヤトレッドにさらなる材料を追加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド内において硬化されるタイヤの製造方法に主に関し、より詳細には、ポータブルモールドコア周囲においてタイヤまたはタイヤトレッドを作製する方法に関し、タイヤまたはタイヤトレッドはどちらとも、タイヤまたはタイヤトレッドならびにコアが、タイヤのゴム材料の硬化が行われるモールド内に配置されるまで、多様なタイヤ組み立て段階を通じて移動される。
【背景技術】
【0002】
複数のタイヤ製品(例えば、カーカスプライ、ベルトおよびトレッドゴム)を組み立てドラムまたは組み立て表面を提供する他の装置の周囲に順次巻いていくことによって行われていくことが一般的に知られている。これらの製品の多くは、ゴムまたは他の何らかの熱硬化性エラストマーを内部に含んでおり、このようなゴムまたは他の何らかの熱硬化性エラストマーは、タイヤ組み立てプロセス時においては「グリーン」または未硬化状態である。タイヤ組み立て後にこれらの材料の硬化を行うことで、材料を架橋させることが望ましく、この架橋により、タイヤ使用時における耐久性および寿命の促進において、特に有利である材料の耐久性が増す。これを達成するために、典型的な手順としては、グリーンタイヤをモールド内に配置した後、十分な熱および圧力をゴムおよびエラストマー材料に付加して硬化または加硫を発生させた後、架橋分子を生成し、その結果、上記した望ましい特性が得られる。
【0003】
空気式タイヤは、ビード部内において終端する側壁も有し、これらの部品は全て組み立てドラム上において組み立てられ、このドラムにより、タイヤを車両リム上に保持する手段が得られる。この種のタイヤはの硬化は、モールド内において行われることが多く、モールドの表面は、タイヤの幅およびその外周を含むタイヤの外側部分を形成する。これらの外側部分は、空間を空けて固定され、タイヤの内面と噛み合うインフレータブルブラダー(膨張性の袋)も有する。想像できるように、このようなモールド内に配置されたタイヤの体積は、タイヤ製品を組み立てドラム上に配置するタイヤ組み立てプロセスに応じて変動する。これは、タイヤを構成する製品の若干の質量変動と、これらの製品を相互に配置する際における不正確さとに起因する。また、タイヤ作製時において、積層時において小さなエアポケットがタイヤ中に閉じ込められることが多い。グリーンタイヤをモールド内に配置した後、インフレータブルブラダーを十分な圧力で膨張させることで、モールドの固定表面と、タイヤ外面およびタイヤ自体の内部の任意のエアポケットとの間の空間を無くすようにし、これにより、ゴム材料を適切に加硫させることができるように熱および圧力を当該材料へとより確実に移動させる。このような業界内における慣行に起因して、未硬化タイヤが閉鎖状態モールドの体積よりも小さくなることが多く、このような設計基準に起因して、慣習的な組み立て製品の体積変動が発生している。未硬化タイヤが閉鎖モールド体積よりも小さい場合、従来のタイヤ硬化プレス技術を通じてモールドを閉鎖させることができる。インフレーションブラダーを拡張させることで、製造時における未硬化タイヤ間の通常の体積変動に対応する。さらに、条件に起因して未硬化タイヤのサイズがモールド体積よりも大きすぎるサイズになった場合、インフレータブルブラダー内の圧力およびその可撓性により、モールド自体または周囲の機構へ損傷を与えること無く、モールドを適切に閉鎖することが可能になる。モールドを完全に閉鎖およびロックした後、インフレータブルブラダーを拡張させて、上述したようにモールドから適切に熱および圧力をタイヤへと伝導できるようにする。
【0004】
しかし、このような成形技術は、全種類のタイヤに対して有効に機能するわけではない。例えば、いくつかの非空気式タイヤの場合、トレッド内に設けられたせん断帯内に拡張不可能な膜が設けられており、これらの拡張不可能な膜は、エラストマー材料製のせん断層を包囲する。この構造の一例については、本出願の譲受人によって共同所有される米国特許第6,769,465号、米国第7,013,939号および米国第7,201,194号を参照されたい。これらの膜内において、連続的スチールコードによって構成された補強材が用いられている場合が多いため、これらの膜は極めて硬質である、すなわち、ゴムよりも100〜1000倍硬質である。さらに、膜内の補強材は、円周方向に設けられていることが多い。このような補強材および円周方向配置双方に起因して、これらの膜は拡張不可能となっている。これは、空気式タイヤについてのスチールコードは、タイヤベルトの円周に対して角度付けされている典型的な業界慣習と異なる。このコードおよび角度の存在に起因して、ベルトの円周方向に沿ってコードが干渉する。これらのスチールコードによる干渉と、タイヤ業界において同様に多く用いられている低硬質の円周補強材とに起因して、未硬化の空気式タイヤが円周方向において拡張可能となり、よってインフレータブルブラダー成形技術に適合可能となる。
【0005】
インフレータブルブラダーが拡張不可能な膜を含むタイヤ構造と共に用いられる場合、2つの有害反応のうち1つが発生することが多い。すなわち、未硬化タイヤ体積が不十分である場合、インフレータブルブラダーによって望ましくないゴム流がスチールコード間に強制的に流動され、その結果、硬化タイヤの機械的性能が低下する。これとは逆に未硬化タイヤ体積が過剰である場合、モールド閉鎖に起因してタイヤの円周が強制的に縮小されるため、ベルトが変形する。その場合、拡張不可能なベルトは円周を変更できないため、座屈する。インフレータブルブラダーは、変形を抑制する機構を全く含んでいないため、単に座屈を受け入れるだけであり、そのため、変形は、硬化タイヤの永久的特徴となってしまう。
【0006】
よって、タイヤトレッドまたはタイヤの体積を正確に制御する方法が望まれている。この方法によれば、モールド閉鎖時において、タイヤトレッドまたはタイヤあるいはその他の構成要素に損傷を与えることなく、タイヤトレッドまたはタイヤがモールド内にぴったりと収まることができ、また、モールド加熱時において、拡張不可能な膜のスチールコード間のゴム流れを引き起こすこと無くトレッドまたはタイヤが十分に拡張してモールドと接触することができ、これにより、適切な加硫と、内部のエアポケットの完全除去とのための十分な圧力および熱をトレッドまたはタイヤ内のエラストマー材料へと確実に移動させることが可能になる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の特定の実施形態は、モールド内に配置された製品の体積を制御する方法を含む。この方法は、以下のステップを含む。モールドおよびポータブルモールドコアを配置する。1つ以上の層の製品をポータブルモールドコア上に積層して、タイヤまたはタイヤトレッドを形成する。タイヤまたはタイヤトレッドを秤量する。タイヤまたはタイヤトレッドの重量が受容可能なパラメータ内である場合、タイヤまたはタイヤトレッドおよびポータブルモールドコアをモールド内に配置する。
【0008】
特定の場合において、この方法は、タイヤまたはタイヤトレッドの秤量後にタイヤまたはタイヤトレッドの重量が受容可能なパラメータ内ではない場合、タイヤまたはタイヤトレッドに材料を付加するステップをさらに含む。このタイヤまたはタイヤトレッドに材料を付加するステップは、タイヤまたはタイヤトレッドの側面からおよそ75ミリメートルだけ空間を空けて配置されたタイヤまたはタイヤトレッドの外周へと細長片材料を付加するステップを含み得る。さらに他の場合において、材料を追加するステップは、トレッドまたはタイヤの他方の側面から75ミリメートルだけ空間を空けて配置されたタイヤまたはタイヤトレッドの外周に第2の細長片材料を付加するステップも含む。第1の細長片材料および第2の細長片材料は、タイヤトレッドの最上層と適合する材料から構成され得、相互に同じ寸法を持ち得る。このような状況において、細長片材料の厚さおよび幅は、それぞれ2ミリメートルおよび30〜40ミリメートルである。また、細長片材料は、タイヤトトレッドの円周方向において巻かれ得る。いくつかの場合において、1つ以上のゴム細長片をトレッドまたはタイヤに取り付ける際に伸長させることで、タイヤまたはトレッドへ付加される重量を調節する。
【0009】
他の実施形態において、この方法は、タイヤまたはタイヤトレッドを再秤量し、タイヤまたはタイヤトレッドの重量または体積が受容可能なパラメータ内であるかを決定するステップをさらに含み得る。いくつかの場合において、タイヤトレッドまたはタイヤの受容可能な体積に相当する目標質量は、およそ58.3〜59.4Kgである。初期のタイヤトレッドまたはタイヤは、目標質量および体積未満で組み立てられ得、タイヤトレッドまたはタイヤの目標質量および体積の99.1〜100%内であり得る。
【0010】
場合によっては、材料を追加するステップにより、モールドとタイヤまたはタイヤトレッドの円周との間の少なくとも一箇所において空洞が発生し、その結果、追加された材料が成形プロセス時においてこの空洞に流入する。
【0011】
この方法は、コア回転スピンドルアセンブリを提供するステップをさらに含むことができ、秤量ステップ時において、コア回転スピンドルアセンブリにポータブルモールドコアが取り付けられる。いくつかの場合において、コア回転スピンドルアセンブリは、マルチセンサー圧電負荷プレートサブアセンブリを含み、マルチセンサー圧電負荷プレートサブアセンブリは、秤量ステップ時においてタイヤトレッドまたはタイヤを秤量するために用いられる。いくつかの場合において、この方法は、ポータブルモールドコア上に製品を積層する際に製品の各層を秤量するステップをさらに含み得る。
【0012】
さらに他の実施形態において、この方法は、ポータブルモールドコアをコア回転スピンドルに取り付けた後、製品の層を積層してタイヤトレッドまたはタイヤを形成するステップと、コアおよびスピンドルを多様なタイヤ組み立てステーションへと移動させて、ポータブルモールドコアならびにポータブルモールドコア上に組み立てられたタイヤトレッドまたはタイヤをスピンドルから取り外し、ポータブルモールドコアおよびタイヤトレッドまたはタイヤをモールド内に配置するステップとをさらに含み得る。
【0013】
場合によっては、この方法は、モールドコアを予熱するステップと、スピンドルアセンブリを風袋秤量した後、モールドコアをスピンドルアセンブリに取り付けてタイヤまたはトレッドを組み立て、モールドコアそのものを秤量するステップとをさらに含む。この方法はまた、タイヤまたはトレッドをモールドコア上に組み付けた後にモールドコアを取り外すステップと、スピンドルアセンブリの温度ドリフトを補償するステップとを含む。スピンドルアセンブリの温度ドリフトを補償するステップは、タイヤまたはトレッドをスピンドルアセンブリから取り外した前または後に行われ得る。この後、この方法は、モールドコアおよびタイヤトレッドをアセンブリとして共に秤量するステップと、モールドコアそのものの重量を減算することにより、各目標重量に到達するためにタイヤトレッドに付加することが必要な材料量を計算するステップとをさらに含み得る。
【0014】
タイヤまたはトレッドの目標重量に到達していないいくつかの場合において、この方法は、トレッドまたはタイヤに材料を追加するステップと、スピンドルアセンブリの温度ドリフトを補償するステップと、モールドコアおよびタイヤまたはトレッドをスピンドルアセンブリから取り外すステップと、モールドコアおよびタイヤまたはトレッドの負の重量を記録するステップと、測定されたモールドコアおよびタイヤまたはトレッドの重量の負の値を取得し、モールドコアそのものの重量を減算することにより、トレッドまたはタイヤの重量を計算するステップとをさらに含み得る。
【0015】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、添付図面に示すような以下の本発明の特定の実施形態より詳細な説明から明らかとなる。図面中、類似の参照符号は、本発明の類似の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のポータブルモールドコア、タイヤ組み立てステーションおよびコア回転スピンドルアセンブリを示す周辺図であり、ポータブルモールドコアおよびトレッドが第1の位置にあり、この第1の位置において、ポータブルモールドコアおよびトレッドは、トレッドへゴムを追加するようにスピンドルアセンブリへと取り付けられる。第2の位置において、ポータブルモールドコアおよびトレッドはモールドに挿入される。
【図2】コア回転スピンドルアセンブリを風袋秤量するステップと、スピンドルアセンブリの温度ドリフトを補償するステップと、ポータブルモールドコアおよびタイヤトレッドを秤量するステップとを含む本発明による方法のステップを示すフローチャートである。
【図3】明確さのため、ポータブルモールドコアと共に図示されている4つのセンサー圧電負荷プレートサブアセンブリを省略した、本発明のコア回転スピンドルアセンブリの正面図である。
【図4】明確さのため、スピンドルアセンブリおよびインデクサーを省略した、ポータブルモールドコア上に組み立てられたタイヤトレッドの斜視図である。
【図5】ポータブルモールドコアおよびタイヤトレッドの正面図であり、2つのゴム細長片の形態のさらなるゴムがタイヤトレッドへ付加されており、ゴムは、タイヤトレッドの円周周囲に巻かれている。
【図5A】図5の拡大図であり、ゴム細長片をトレッドへ付加する様子をより明確に示す。
【図6】ポータブルモールドコアおよびタイヤトレッドを付加されたゴムと共に示す部分断面図であり、ゴムは、小間隙と共にモールド内に配置され、小間隙は、モールドが閉鎖し、モールドセクタがトレッドの円周方向表面に向かって内側方向に移動する際、トレッド部分とモールド内面との間に設けられる。
【図7】図6のポータブルモールドコア、タイヤトレッドおよびモールドの部分断面図であり、モールドの完全閉鎖後の成形プロセス時において付加されたゴムの流動に起因してモールドキャビティが完全に充填されている様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、組み立て2つの拡張不可能な膜によって挟まれたせん断層を含むせん断帯を有するタイヤトレッドを組み立てるための装置が図示されていおり、このような装置は、米国特許第6,769,465号、7,013,939号および7,201,194号などに例示されている。詳細には、この装置は、例えば、成形プレス103内に見受けられるモールド102などの他のタイヤ組み立て装置に対して容易に取り付けおよび取り外し可能であるポータブル成形コア100と、インデクサー108の一部であるコア回転スピンドルアセンブリ104と、冷却ステーション(図示せず)と、を含む。ポータブル成形コア100は、円周方向表面106を含む円柱を含み、この円周方向表面106上に、タイヤまたはトレッド116の構成要素がタイヤ組み立てステーション114または材料補償ステーション118によって配置され、この配置は、スピンドルアセンブリ104によってモールドコア100を水平軸H−Hの周囲において回転させることにより、行われる。モールドコア100およびトレッド116は、インデクサー108によって垂直軸V−Vを中心として適切なタイミングで回転され、これにより、所望の組み立てステーション114および118の前方に配置される。成形コア100はまた、例えば、加熱用媒体および冷却用媒体を送ってモールドコア100への熱移動またはモールドコア100からの熱移動を行うための、カートリッジヒーターならびに/または加熱回路および冷却回路などの、円柱を加熱および冷却する手段も含む。
【0018】
図2に示すステップによって示されるタイヤトレッド組み立てプロセスの開始時において、このモールドコア100を予熱することができ、このステップは、フローチャートのステップ200に相当する。このステップは、モールド内において行われた成形サイクル後においてモールドコア内に残っている余熱を用いて行ってもよいし、あるいは、モールドコア100のカートリッジヒーターへ電力を供給するステーションまたはマガジン(図示せず)を予熱することによってモールドコア100を加熱することによって行ってもよい。このステップにより、モールドコア上に配置された多様なタイヤ構成要素とモールドコア自体との間のタックが増加することで、タイヤ組み立てプロセス時においてこれらの構成要素が所定位置に保持されることにより、トレッド組み立てプロセスが支援される。さらに、コアを加熱するステップにより、組み立てプロセス時においてトレッドに熱が付加されるため、後で必要となるモールド硬化時間が低減し、その結果、タイヤ組み立てプロセスの生産性が全体的に向上する。
【0019】
しかし、モールドコア100を予熱した場合、モールドコア100からスピンドルアセンブリ104への熱移動に起因して、秤量の際にスピンドルアセンブリ104内において用いられるセンサー上に一定のストレスが発生するため、タイヤトレッド自体の重量の測定の際に問題が発生し、これにより、スピンドルアセンブリ104、モールドコア100およびタイヤトレッドの風袋秤量および秤量の際に、測定誤差を回避するための以下に説明する(これらのステップを示すフローチャートについては、図2を参照)特定のステップを取る必要がある。想像できるように、この問題は、タイヤまたはトレッドがモールドキャビティ内にぴったりと嵌まるようにするためにタイヤまたはトレッドの重量を測定する際に用いられる、例えば、±1%などの精度に起因して悪化する。すなわち、予熱後のモールドコアをスピンドルアセンブリ104に取り付ける直前の状態において、このアセンブリは、4つのセンサー圧電負荷プレートサブアセンブリ110(図3を参照)を介してインデクサー108へと取り付けられた状態であり、先ずセンサー112の電荷増幅器をゼロ出力に調節することにより、モールドコア100を受容することが可能な状態となる。この実施形態において、用いられるセンサーは、KISTLERからモデル番号9146Bとして販売されている市販の圧力トランスデューサーであり、スピンドルアセンブリ104の後方に取り付けられたフロントプレート109およびリアプレート111の間のせん断負荷される。これらのセンサー内には結晶が設けられており、この結晶は、センサーに負荷された負荷を感知し、センサーに負荷された力に起因して電荷を生成する。そのため、フロントプレート109およびリアプレート111の寸法変化が重量または温度ドリフトに起因して発生した場合、これらのセンサーの出力に影響が発生し、その結果、スピンドルアセンブリおよび負荷プレートサブアセンブリの温度ドリフトに起因して、センサーによって行われる秤量測定全ての精度に妥協が生じ得る。
【0020】
風袋秤量するステップは、フローチャートのステップ210に対応する。このステップは、スピンドルアセンブリ104自体の重量を補償することで、後のタイヤトレッド秤量時における誤差発生を回避するためのものである。その後、当該分野において公知の手段によりモールドコア100をコア回転スピンドルアセンブリ104へと取り付け、その後、インデクサー108を垂直軸V−Vを中心として回転させることによってモールドコア100を配置して、モールドコア100がタイヤ組み立てステーション114の真正面に来るようにする。タイヤ組み立てステーション114は、自身が回転しながらタイヤ構成要素をモールドコア100の円周106上に配置する装置である。このステップを、フローチャート中のステップ220によって示す。次に、ステップ230によって示すように、モールドコア100自体の重量を測定および記録する。
【0021】
この実施形態において、この装置114は、図4に示すように、トレッドのせん断帯の一部である拡張不可能な膜115を形成するゴムおよびスチールコードを配置する。せん断帯をモールドコア100上に組み立てた後(ステップ240)、インデクサー108は、コアおよびトレッドが材料補償ステーション118の前方に来るように、コアおよびトレッドを回転させる。材料補償ステーション118の前方において、トレッドゴムが配置される。その後、モールドコア100およびトレッド116をスピンドルアセンブリ104から取り外す(ステップ250)。ここでも、センサー112のための電荷増幅器をゼロに調節する(ステップ260)。これは、トレッド116をモールドコア100上に組み立てる際にモールドコア100からスピンドルアセンブリ104へと発生した熱移動を補償するために行われる。なぜならば、このような熱移動があると、モールドコア100およびトレッド116の重量に加えてセンサー112上に配置されるプレート109および111の寸法変化に起因してさらなるストレスが発生し、その結果、これらの構成要素の秤量試行時においてオフセットドリフトが発生するからである。再度電荷増幅器をゼロにした後、材料補償ステーション118において、モールドコア100およびトレッド116をスピンドルアセンブリ104上に戻し(ステップ270)、その後、モールドコア100およびトレッド116の重量を秤量および記録する(ステップ280)。
【0022】
その後、トレッドに付加するべき重量であるWadditionalを計算して、Wadditionalが目標重量範囲であるWtarget内に収まるようにする。Wtargetは、モールド100内にぴったりと嵌まる受容可能な製品体積に対応する。これは、共に秤量されたトレッド116および固体コア100の重量であるWtread+coreを目標重量Wtargetから減算し、初期にステップ230において測定されたモールドコア100の重量であるWcoreをさらに加算することにより、行われる。この計算は、フローチャートのステップ290に対応し、以下の方程式によって表される:Wadditional=Wtarget−Wtread+core+Wcore。この実施形態において、目標質量は58.3〜59.4Kgであり、これは、重量範囲571〜582.12Nおよびモールドキャビティ体積の100〜100.3%に相当する。タイヤトレッド重量がこの範囲内である場合、当該タイヤトレッドは、モールド内に挿入可能な状態である。しかし、このようなことは稀である。なぜならば、初期組み立て状態のトレッドは意図的に目標質量の99.1〜100%内に収まるようになっており、モールドが収容可能な体積をトレッド体積が越えないようになっているからである。
【0023】
あるいは、スピンドルアセンブリ104に対するモールドコア100およびトレッド116の取り外しおよび取り付けを行うステップ250およびステップ270を遅らせることで、センサー112用の電荷増幅器をゼロにすることによりスピンドルアセンブリ104内の温度ドリフトを補償するステップであるステップ260後にステップ250および270双方を行ってもよい。この場合、ステップ260を先ず行った後、モールドコア100およびトレッド116を取り外し、トレッドおよびコアの負の重量値である−Wtread+coreを測定および記録する。その後、トレッドおよびコアの負の重量を目標重量Wtargetに加算し、コア重量Wcoreを加算することにより、トレッドに付加すべき重量Wadditionalを計算する。この計算を、以下の方程式によって示す:Wadditional=Wtarget+(−Wtread+core)+Wcore。トレッド116の重量が目標範囲内ではないと仮定した場合、モールドコア100およびトレッド116を再度スピンドルアセンブリ104に取り付ける。
【0024】
このような場合、より多量のトレッドゴムをタイヤトレッド116に付加する必要が出てくる(ステップ300)。必要なゴム追加量は、直前に計算された重量Wadditionalである。インデクサー108は、モールドコア100およびトレッド116を回転および移動させて、モールドコア100およびトレッド116が材料補償ステーション118の前方に来るようにする。材料補償ステーション118は、トレッドゴムに適合するトレッド116の表面上へさらなるゴムを付加する装置である。このステーション118は、これらの目標から大きく逸脱することなく所望の体積および質量のトレッド116をゆっくりと組み立てることができるような増分でゴムを付加する。必要なゴム追加量は、Wadditionalおよびトレッドゴム密度に基づいて、計算される。
【0025】
図5および図5Aに示すような本発明のこの実施形態において、このステーション118は、肉薄ゴムの細長片120を2つ付加し、これらの細長片120は、トレッド116の側面122から距離D1を空けて配置され、トレッド116の赤道面E−Eから間隔を空けて均等に配置される。赤道面E−Eは、トレッド116を半分に分割する面であり、スピンドルアセンブリ104の回転軸H−Hに対して垂直である。この距離D1は75mmであるが、後述するような成形プロセスにおいて生成される完全なトレッドプロファイルが得られれば、他の値であってもよい。また、トレッド116は、全体幅OWを有する。全体幅OWは、トレッド116のこの実施形態において315mmであるが、用途に応じて変更することも可能である。ゴム細長片120は、厚さTおよび幅Wを有する。厚さTおよび幅Wは、本実施形態においておよそ2mmおよび30〜40mmであるが、成形プロセスにおいて生成される完全なトレッドプロファイルが得られれば、他の値であってもよい。これらの細長片120は、タイヤトレッド116の円周126周囲に巻かれる。円周126の直径Diaは、本実施形態において825mmであるが、用途に応じて変更することも可能である。状況によっては、細長片120をタイヤまたはトレッドへ付加する速度と、スピンドルアセンブリ104を回転させる速度とを異ならせることで細長片120を伸長させ、これにより、タイヤまたはトレッドへ付加される重量を調節する。
【0026】
さらなるゴム細長片を付加した後、センサー112用の電荷増幅器を再度ゼロにして(ステップ310)、スピンドルアセンブリ104のさらなる温度ドリフトを補償する。その後、モールドコア100およびタイヤトレッド116をスピンドルアセンブリ104から取り外し、補償後のモールドコアおよびタイヤトレッドの負の重量測定値である−Wadj(tread+core)を記録する(ステップ320)。ステップ330におけるトレッドの最終重量Wfinalの計算は、この負の測定の負の値をとり、(ステップ230において計算されたような)モールドコア自体の重量Wcoreを減算することにより、行われる。この計算は、以下の方程式によって表される:Wfinal=−(−Wadj(tread+core))Wcore。トレッドの重量を再度確認する(ステップ340)。タイヤトレッドがそれでまだ小さすぎる場合、目標重量に到達するまで、材料補償ステーション118においてゴムを追加するステップと、最終トレッド重量を計算するステップとを繰り返す。
【0027】
タイヤトレッドが秤量され、その重量が目標範囲内に収まった場合、ロボット手段またはコンベヤ手段により、タイヤトレッド116およびモールドコア100をモールド102内に配置する(ステップ350)。モールド102は、トレッドの彫刻のレリーフを生成する可動セクタまたはサイドアクション部124を有する。可動セクタまたはサイドアクション部124は、モールド102が垂直方向に閉鎖された際に移動する。どちらの動きも、当該分野において公知の手段によって行われ、これにより、セクター124がトレッドの円周方向表面126上に衝突して、彫刻レリーフが形成される。上述したように、付加されたゴム細長片120により、タイヤは特定領域においてモールドキャビティよりも若干大きくなる。すなわち、図6に示すように、モールド102のセクター124がモールドの閉鎖と共に移動するにつれて、これらのゴム細長片120は圧縮される。その結果、タイヤトレッド116と、モールド102の内面130との間における他の領域内において、空洞128が生成される。付加されたゴム細長片120に対してモールドセクタ124が圧縮されることで、ゴム細長片120の側部121が膨張および拡張する。その結果、これらの細長片120の拡張と共に、個々のモールドセクタ124間のシーム内において一定のフラッシングが発生する。その後、モールド102およびポータブルモールドコア100によって熱および圧力がタイヤトレッド116へと移動されると、付加されたゴム細長片120は、タイヤトレッド116とモールド102の内面130との間の空洞128に流入し、その結果、タイヤトレッド116のモールド102のキャビティが図7に示すように完全に充填され、その結果、成形プロセスの完了と共に、タイヤトレッド116の完全な彫刻が得られる。
【0028】
モールド102は、タイヤ成形において一般的に用いられるインフレータブルブラダーを有していない点に留意されたい。その代わりに、ポータブルモールドコア100は、モールド102の露出表面上に配置され、モールド102と共にセンタリングされる。ポータブルモールドコア100は、外側リング125を有する。外側リング125は、ピン129により、内側リング127へと接続される。ピン129により、外側リングが温度変化と共に膨張および収縮することが可能になる。加えて、モールドコア100は、モールド102へと接続され、モールド102からの出力を受容して、モールドコア100を加熱させる加熱カートリッジを有する。その結果、モールドコア100の外側リング125が量Δ(図7を参照)だけ拡張し、タイヤトレッド116がモールド102の内面130とモールドコア100の円周方向表面106との間において圧縮される際、必要な圧力および熱がタイヤトレッド116へと供給される。この特定の実施形態において、トレッド116を適切に加硫できかつトレッド116内に閉じ込められた空気またはガス泡を逃がすことができるような適切な圧縮を可能にできるよう、Δは8〜2.5mmの範囲であり得る。
【0029】
モールド内におけるトレッドの滞留時間が加硫を発生させるのに十分に長くなった場合、モールドを開き、ポータブルモールドコアおよびタイヤトレッドを、冷却ステーションまたは取り出しステーションへと移動させる。ここで、モールドコアを冷却ステーションの露出表面上に配置する(図示せず)。このとき、モールドコアが縮み始めるまで、トレッドバンド直径が実質的に同じ状態(これは、せん断帯内のスチールが寸法変化に耐えるためである)において、モールドコアを迅速に冷却する。その結果、トレッドバンドとポータブルモールドコアとの間に間隙が発生する。その後、冷却ステーション上のストリッパーリングにより、トレッドをモールドコアから取り外す。ストリッパーリングは、トレッドがモールドコアよりも上方に来るまで、トレッドを持ち上げる。
【0030】
この実施形態において、タイヤ全体を車両リムに接続するためにトレッドへ付加されたスポークをトレッドに設ける準備が完了している。これは、トレッドを別のモールド(図示せず)内に配置し、モールド内にポリウレタンを注入することによってスポークを形成することにより、行われる。タイヤのスポークを硬化させ、トレッドへと取り付けた後、タイヤ全体が利用可能な状態となる。これとほぼ同時に、別のトレッドをスピンドルアセンブリに組み立てるためにモールドコアをスピンドルアセンブリに再度取り付けるか、または、モールドコアを上述したような予熱ステーションまたはマガジンへと接続する。これにより、タイヤ組み立てプロセスが再度開始する。
【0031】
非空気式タイヤの一部である、スポークと共に形成されたトレッドのみを本明細書中において具体的に説明してきたが、このプロセスは、トレッドを車両リムに接続するための他の手段(例えば、より従来的な側壁および/またはビード部を有するもの)を有するタイヤにも利用することが可能であることが企図される。よって、これらの他の種類のタイヤも、本発明の範囲内である。
【0032】
本発明について特定の実施形態を参照して説明してきたが、このような記載は例示目的のためであり、制限的なものではないことが理解されるべきである。例えば、装置のうち一部を本明細書中に記載の様態と異なって構築および機能させることが可能であり、この方法の特定のステップを省略しかつ/または具体的に記載した順序と異なる順序で実行することが可能である。よって、本発明の範囲および内容は、添付の特許請求の範囲のみによって規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド内に配置されるべき製品の体積を制御する方法であって、
モールドおよびポータブルモールドコアを提供するステップと、
製品の1つ以上の層を前記ポータブルモールドコア上に積層して、タイヤトレッドまたはタイヤを形成するステップと、
前記タイヤトレッドまたはタイヤを秤量するステップと、
前記タイヤトレッドまたはタイヤの重量が受容可能なパラメータ内である場合、前記タイヤトレッドまたはタイヤおよびポータブルモールドコアを前記モールド内に配置するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記タイヤトレッドまたはタイヤを秤量するステップ後において、前記タイヤトレッドまたはタイヤの重量が受容可能なパラメータ内に収まらない場合、前記タイヤトレッドまたはタイヤに材料を追加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料を前記タイヤトレッドまたはタイヤに追加するステップは、前記タイヤトレッドまたはタイヤの外周に細長片材料を付加するステップであって、前記外周は、前記トレッドまたはタイヤの側面からおよそ75ミリメートルだけ間隔を空けて配置される、ステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タイヤまたはタイヤトレッドに追加される前記細長片材料の厚さおよび幅は、それぞれおよそ2ミリメートルおよび30〜40ミリメートルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細長片材料は、前記タイヤトレッドまたはタイヤの円周周囲に完全に巻かれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記材料を追加するステップに起因して、前記モールドと前記タイヤトレッドまたはタイヤの円周との間の少なくとも1箇所に空洞が形成され、これにより、前記追加された材料は前記成形プロセス時において空洞内に流入する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記初期のタイヤトレッドまたはタイヤは、前記タイヤトレッドまたはタイヤの目標質量および体積未満となるように意図的に組み立てられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コア回転スピンドルアセンブリを提供するステップをさらに含み、前記秤量ステップ時において前記ポータブルモールドコアが前記コア回転スピンドルアセンブリへと取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コア回転スピンドルアセンブリは、マルチセンサー圧電負荷プレートサブアセンブリを含み、前記マルチセンサー圧電負荷プレートサブアセンブリは、前記秤量ステップ時において前記タイヤトレッドまたはタイヤを秤量するために用いられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポータブルモールドコアを前記コア回転スピンドルに取り付けた後、製品の層を積層して前記タイヤトレッドまたはタイヤを形成するステップと、前記コアおよびスピンドルを多様なタイヤ組み立てステーションへと移動させて、前記ポータブルモールドコアと、前記ポータブルモールドコア上に組み付けられた前記タイヤトレッドまたはタイヤとを取り外すステップと、前記ポータブルモールドコアおよび前記タイヤトレッドまたはタイヤをモールド内に配置するステップと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記モールドコアを予熱し、前記スピンドルアセンブリを風袋秤量した後、前記モールドコアを前記スピンドルアセンブリに取り付けるステップと、前記モールドコアの前記スピンドルアセンブリへの取り付け後に前記モールドコアを秤量するステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記タイヤまたはトレッドを前記モールドコア上に組み付けた後に前記モールドコアを取り外すステップと、前記スピンドルアセンブリの温度ドリフトを補償するステップとをさらに含み、前記スピンドルアセンブリの温度ドリフトを補償するステップは、前記モールドコアおよびタイヤまたはトレッドを前記スピンドルアセンブリから取り外す前または後に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モールドコアおよびタイヤトレッドを共にアセンブリとして秤量するステップと、前記モールドコアおよびタイヤトレッドアセンブリの重量を前記目標重量から減算し、前記モールドコア自体の重量を加算することにより、各前記目標重量に到達するために前記タイヤトレッドに付加することが必要な材料量を計算するステップとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記トレッドまたはタイヤに材料を追加するステップと、前記スピンドルアセンブリの温度ドリフトを補償するステップと、前記モールドコアおよびタイヤまたはトレッドを前記スピンドルアセンブリから取り外すステップと、前記モールドコアおよびタイヤまたはトレッドの負の重量を記録するステップと、前記直前に測定されたモールドコアおよびタイヤまたはトレッドの重量の負の値を取得し、前記モールドコアそのものの重量を減算することにより、前記トレッドまたはタイヤの重量を計算するステップとをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記材料を追加するステップは、前記タイヤまたはトレッドに付加された肉薄の細長片材料を伸長させて、前記タイヤまたはトレッドに付加された重量を調節するステップを含む、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−512133(P2013−512133A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541980(P2012−541980)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/066039
【国際公開番号】WO2011/065951
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】