説明

圧力センサ及びその製造方法

【課題】低域特性及び高域特性の高い圧力センサを提供する。
【解決手段】コンデンサマイクロホン1の感音部は、基板10及び第一膜〜第四膜からなる積層構造を有している。ダイアフラム20及びプレート22を支持している支持体24は、主気室41と、流路43を経由して主気室41に連通する副気室42とからなる背部気室40を形成する。主気室41はダイアフラム20と第二膜の開口14と基板10の穴部11とプリント基板60との内側に形成される。副気室42は基板10の凹部12とプリント基板60との内側に形成される。流路43は基板10の凹部13とプリント基板60との内側に形成される。周波数の高い音波によってダイアフラム20が振動するとき、背部気室40の実質的な容量は主気室41の容量となる。一方、周波数の低い音波によってダイアフラム20が振動するとき、背部気室40の実質的な容量は主気室41及び副気室42の容量の和となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力センサ及びその製造方法に関し、特に半導体デバイスの製造プロセスを応用して製造可能なコンデンサマイクロホン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造プロセスを応用して製造可能なコンデンサ型の圧力センサが知られている。コンデンサ型の圧力センサは、検出対象である圧力変化によって振動するダイアフラムと、空気などの誘電体を間に挟んでダイアフラムに対向するプレートとを備え、ダイアフラムとプレートとの間の静電容量の変化を電気信号に変換する。
特許文献1には、音波による空気圧の変化を検出するコンデンサマイクロホンが開示されている。特許文献1に記載されているコンデンサマイクロホンでは、基板に形成した凹部とそれを覆うダイアフラムとの内側に気室を形成している。しかしながら、特許文献1に記載されている気室の容量は一定である。したがって、低域特性を高めるために気室の容量を大きくすると高域特性が低下し、高域特性を高めるために気室の容量を小さくすると低域特性が低下する。
【0003】
【特許文献1】特表2004−537182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の問題を解決するためになされたものであって、低域特性及び高域特性の高い圧力センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記目的を達成するための圧力センサは、固定電極を有するプレートと、前記固定電極に対向する可動電極を有し、圧力変化によって変位するダイアフラムと、前記プレートの端部が固定されている内壁と前記ダイアフラムとの内側に、主気室を形成する支持体と、前記主気室に開口する流路と前記流路を経由して前記主気室に連通する副気室とを形成する副気室形成部と、を備える。
圧力変化の周波数が高い場合、ダイアフラムが高い周波数で変位することにより、主気室内の圧力は高い周波数で変化する。この結果、流路を流れる空気の流通速度は速くなる。一方、圧力変化の周波数が低い場合、ダイアフラムが低い周波数で変位することにより、主気室内の圧力は低い周波数で変化する。この結果、流路を流れる空気の流通速度は遅くなる。ここで、流路の流路抵抗は流通する空気の流れの速度に応じて大きくなる。したがって、圧力変化の周波数が高くなると、主気室と副気室との間を空気が殆ど流通しなくなることにより、圧力センサの気室の容量は主気室の容量と見なすことができる。一方、圧力変化の周波数が低くなると、主気室と副気室との間を空気が流通することにより、圧力センサの気室の容量は主気室及び副気室の容量の和と見なすことができる。このように気室の実質的な容量を圧力変化の周波数に応じて変化させることができるため、圧力センサの高域特性及び低域特性の両方を高めることができる。
【0006】
(2)前記副気室形成部は前記支持体に設けられ、前記流路及び前記副気室は、前記支持体の取付面に形成された凹部の内側に形成されてもよい。
支持体の取付面に所定形状の凹部を形成することにより、凹部と取付対象との内側に流路及び副気室を形成することができるため、圧力センサの構成を簡素化することができる。
(3)前記副気室形成部は、複数の前記副気室と、各前記副気室と前記主気室とを連通し流路抵抗が互いに異なる複数の前記流路とを形成してもよい。
複数の副気室がそれぞれ異なる流路抵抗の流路を経由して主気室と連通している。したがって、圧力センサに要求する出力特性に応じて複数の流路の流路抵抗を個別に設定することにより、出力特性を微妙に調整することができる。
(4)複数の前記副気室の容量が互いに異なってもよい。
圧力センサに要求する出力特性に応じて複数の副気室の容量を個別に設定することにより、出力特性を微妙に調整することができる。
【0007】
(5)上記目的を達成するための圧力センサの製造方法は、固定電極を有するプレートと、前記固定電極に対向する可動電極を有し圧力変化によって変位するダイアフラムと、前記プレートを支持し内側に気室を形成する支持体とを備える圧力センサの製造方法であって、前記支持体を構成する基板の第一面上に、前記プレートを構成する薄膜と前記ダイアフラムを構成する薄膜とを堆積により形成し、前記基板の前記第一面と反対側の第二面上に、前記基板の前記プレートを構成する前記薄膜及び前記ダイアフラムを構成する前記薄膜上の部位を露出させる第一開口部と、スリット状の第二開口部と、前記第一開口部から前記第二開口部まで延びるスリット状の第三開口部とを有するマスクを形成し、前記マスクを用いた前記基板の異方性エッチングにより、前記基板の前記第一開口部に対応する部位に穴部を形成し、前記基板の前記第二開口部に対応する前記第二面に第一凹部を形成し、前記基板の前記第三開口部に対応する前記第二面に前記穴部から前記第一凹部まで延びる第二凹部を形成することにより、前記気室を形成する気室形成部を前記基板に形成する、ことを含む。
マスクの第二開口部及び第三開口部はスリット状である。また、マスクの第三開口部は第一開口部から第二開口部まで延びている。したがって、第一開口部から第三開口部を有するマスクを用いて、基板の第一開口部に対応する部位に穴部が形成されるまで基板を異方性エッチングすると、主気室を形成する穴部を基板に形成し、基板の第二開口部及び第三開口部に対応する第二面に上述した副気室形成部を構成する第一凹部及び第二凹部が形成される。これはアスペクト依存エッチング効果によるものである。このように、半導体製造プロセスを応用した簡素な工程によって、主気室と主気室に流路を経由して連通する副気室とで構成される気室を有する圧力センサを製造することができる。
【0008】
(6)複数の前記第二開口部が短手方向に配列された前記マスクを用いた前記基板の異方性エッチングにより、前記基板に複数の前記第一凹部を形成し、前記基板の隣り合う前記第一凹部の間の壁部を除去する、ことを含んでもよい。
複数の第一凹部を繋げて容量の大きな副気室を形成することができる。
尚、本明細書において、「・・・上に形成する」とは、技術上の阻害要因がない限りにおいて、「・・・上に直に形成する」と、「・・・上に中間物を介して形成する」の両方を含む意味とする。
また、請求項に記載された方法の各動作の順序は、技術上の阻害要因がない限り、記載順に限定されるものではなく、どのような順番で実行されてもよく、また同時に実行されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態において同一の符号が付された構成要素は、その符号が付された他の実施形態の構成要素と対応する。
(第一実施形態)
図2に示す第一実施形態のコンデンサマイクロホン1は、半導体製造プロセスを用いて製造される所謂シリコンマイクロホンである。コンデンサマイクロホン1は、プレート22側から到達する音波を電気信号に変換する。
【0010】
1.感音部の構成
コンデンサマイクロホン1の感音部は、基板10及び第一膜〜第四膜からなる積層構造を有している。
基板10は例えば単結晶シリコン基板である。基板10には、穴部11、凹部12、複数の凹部13が板厚方向に形成されている。凹部12は穴部11を囲む環状である。凹部13は、穴部11から凹部12まで穴部11の径方向に延びる線状である。
【0011】
第一膜は二酸化シリコン等からなる絶縁性の薄膜である。第一膜はダイアフラム20と基板10との間に空隙が形成されるように第二膜を基板10上に支持している。第一膜には円形の開口14が形成されている。
第二膜は例えばP(リン)が不純物として添加されたポリシリコンからなる導電性の薄膜である。第二膜の第三膜に固着していない部分はダイアフラム20を構成している。ダイアフラム20は第一膜とも第三膜とも固着しておらず、音波によって振動する可動電極として機能する。ダイアフラム20は第一膜の開口14を覆う円形である。
【0012】
第三膜は第一膜と同様に例えば二酸化シリコンからなる絶縁性の薄膜である。第三膜は、導電性の第二膜と第四膜とを絶縁し、第四膜を第二膜上に支持している。第三膜には円形の開口15が形成されている。
第四膜は、第二膜と同様に例えばPが不純物として添加されたポリシリコンからなる導電性の薄膜である。第四膜の第三膜に固着していない部分はプレート22を構成している。プレート22には複数の通孔23が形成されている。
【0013】
基板10と第一膜と第三膜と第二膜及び第四膜の第三膜に固着していない部分とは支持体24を構成している。図1に示すように、支持体24は、主気室41と、流路43を経由して主気室41に連通する副気室42とからなる背部気室40を形成する。背部気室40は音波の進行方向の反対側からダイアフラム20が受ける圧力を緩和する。主気室41は、ダイアフラム20と第二膜の開口14と基板10の穴部11とコンデンサマイクロホン1が実装されているプリント基板60との内側に形成される。副気室42は、基板10の凹部12とプリント基板60との内側に形成される。流路43は、基板10の凹部13とプリント基板60との内側に形成される。基板10の凹部12及び凹部13が請求項に記載の「副気室形成部」に相当し、基板10の穴部11、凹部12及び凹部13が請求項に記載の「気室形成部」に相当する。
【0014】
2.検出部の構成
次に、図2(A)に示す回路図に基づいて、コンデンサマイクロホン1の検出部の一例を説明する。ダイアフラム20はバイアス電源に接続されている。具体的には、バイアス電源の端子102に接続されているリード104及びリード106がそれぞれ第二薄膜及び基板10に接続されている。この結果、ダイアフラム20と基板10とは実質的に同じ電位となる。また、プレート22はオペアンプ100の入力端子に接続されている。具体的には、オペアンプ100の入力端子に接続されているリード108が第四膜に接続されている。オペアンプ100の入力インピーダンスは高い。
【0015】
3.コンデンサマイクロホンの作動
音波がプレート22の通孔23を通過してダイアフラム20に伝搬すると、ダイアフラム20は音波により振動する。ダイアフラム20が振動すると、その振動によりダイアフラム20とプレート22との間の距離が変化し、ダイアフラム20とプレート22とにより形成される静電容量が変化する。
【0016】
プレート22は、上述したように入力インピーダンスの高いオペアンプ100に接続されている。そのため、ダイアフラム20とプレート22とにより形成される静電容量が変化したとしても、プレート22に存在する電荷のオペアンプ100への移動量は極わずかである。したがって、プレート22及びダイアフラム20に存在する電荷は変化しないものとみなすことができる。これにより、ダイアフラム20とプレート22とにより形成される静電容量の変化をプレート22の電位変化として取り出すことができる。このようにしてコンデンサマイクロホン1は、ダイアフラム20とプレート22とにより形成される静電容量の極めてわずかな変化を電気信号として出力する。すなわち、コンデンサマイクロホン1は、ダイアフラム20に加わる音圧の変化を静電容量の変化に変換し、静電容量の変化を電圧の変化に変換することにより、音圧の変化に相関する電気信号を出力する。
【0017】
一方、背部気室40内の圧力(以下、背圧という。)は、ダイアフラム20の振動により変化する。したがって、背部気室40の容量はダイアフラム20の振動に影響し、コンデンサマイクロホン1の出力特性に影響する。具体的には、背部気室40の容量を大きくするとコンデンサマイクロホン1の低域特性を改善することができ、背部気室40の容量を小さくするとコンデンサマイクロホン1の高域特性を改善することができる。
【0018】
ここで、背部気室40の主気室41及び副気室42を連通させる流路43の流路抵抗は、流路43を流れる空気の流通速度に応じて増大する。したがって、背圧変化の周波数が高くなると、すなわち周波数の高い音波によってダイアフラム20の変位の周波数が高くなると、主気室41と副気室42との間の空気の流通が殆どなくなる。この結果、背部気室40の実質的な容量は、主気室41の容量と見なすことができる。一方、背圧変化の周波数が低くなると、すなわち周波数の低い音波によってダイアフラム20の変位の周波数が低くなると、主気室41と副気室42との間を空気が十分に流通する。この結果、背部気室40の実質的な容量は、主気室41及び副気室42の容量の和と見なすことができる。
【0019】
このように背部気室40の実質的な容量が音波の周波数に応じて変化するため、低域特性及び高域特性の両方を高めることができる。コンデンサマイクロホン1では、主気室41の容量、副気室42の容量、流路43の流路抵抗を設定することにより、出力特性の調整が可能である。流路43の流路抵抗は、基板10に形成する凹部13の長さ、幅、深さ等で設定可能である。凹部13の基板10の板厚方向の大きさは凹部12よりも小さくなくてもよい。尚、図2に示すコンデンサマイクロホン1において、凹部13の長さとは凹部13の穴部11の径方向の大きさを意味し、凹部13の幅とは凹部13の穴部11の周方向の大きさを意味し、凹部13の深さとは凹部13の基板10の板厚方向の大きさを意味する。
【0020】
4.コンデンサマイクロホンの製造方法
はじめに、図3(A1)に示すように、基板10(図2参照)となるウェハ50上に第一膜51を堆積により形成する。例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)で単結晶シリコンウェハ50上に二酸化シリコンを堆積させることにより第一膜51を形成する。
【0021】
次に、第一膜51上に第二膜52を堆積により形成する。具体的には、例えば次のとおりである。減圧CVD法を用いてPが添加されたポリシリコンを第一膜51上に堆積させることにより、第二膜52を形成する。次に、第二膜52の表面全体にフォトレジスト膜を塗布した後、所定のレジストマスクを用いた露光及び現像を行うフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成する。そして、RIE(Reactive Ion Etching)等の異方性エッチングによって第二膜52を選択的に除去することにより、円形の第二膜52を形成する。
次に、図3(A2)に示すように、第二膜52上に第三膜53を堆積により形成する。例えばプラズマCVDを用いて第二膜52上に二酸化シリコンを堆積させることにより第三膜53を形成する。
【0022】
次に、図3(A3)に示すように、第三膜53上に第四膜54を堆積により形成する。具体的には、例えば次のとおりである。減圧CVD法を用いてPが添加されたポリシリコンを第三膜53上に堆積させることにより第四膜54を形成する。次に、第四膜54の表面全体にフォトレジスト膜を塗布した後、所定のレジストマスクを用いた露光及び現像を行うフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成する。そして、RIE等の異方性エッチングによって第四膜54を選択的に除去することにより、多数の通孔23を有する円形の第四膜54を形成する。
【0023】
次に、図4(A4)に示すように、ウェハ50の第一膜51〜第四膜54を積層した第一面50aと反対側の第二面50b上に、第一開口部55a〜第三開口部55cを有するマスク55を形成する。例えばウェハ50の第二面50b全体にフォトレジスト膜を塗布した後、所定のレジストマスクを用いた露光及び現像を行うフォトリソグラフィによりマスク55を形成する。第一開口部55aはウェハ50の第二膜52及び第四膜54の一部上の部位を露出させる円状である。第二開口部55bは第一開口部55aの外側を囲む環状のスリットである。複数の第三開口部55cは、第二開口部55bよりもスリット幅の狭いスリットであり、第一開口部55aから第二開口部55bまで放射状に延びている。例えば、第二開口部55bのスリット幅は1μm〜100μm(好ましくは1μm〜70μm)であり、第三開口部55cのスリット幅は1μm〜50μmμm(好ましくは1μm〜40μm)である。尚、図2に示すコンデンサマイクロホン1において、第二開口部55bのスリット幅とは第二開口部55bの第一開口部55aの径方向の大きさを意味し、
第三開口部55cのスリット幅とは第三開口部55cの第一開口部55aの周方向の大きさを意味する。
【0024】
次に、図4(A5)に示すように、マスク55を用いてウェハ50を異方性エッチングすることにより、ウェハ50に穴部11、凹部12及び凹部13を形成する。具体的には、例えばDeep−RIEによってマスク55から露出するウェハ50を選択的に除去する。この異方性エッチングは、ウェハ50の第一開口部55aに対応する部位に穴部11が形成されるまで行う。ここで第二開口部55b及び第三開口部55cのスリット幅は第一開口部55aの直径より狭い。そして、第三開口部55cのスリット幅は第二開口部55bよりも狭い。したがって、アスペクト依存エッチング効果によって、ウェハ50の第二開口部55b及び第三開口部55cに対応する部位のエッチング速度は、第一開口部55aに対応する部位よりも遅くなる。そして、ウェハ50の第三開口部55cに対応する部位のエッチング速度は第二開口部55bに対応する部位よりも遅くなる。この結果、ウェハ50の第二開口部55bに対応する部位には凹部12が形成される。そして、ウェハ50の第三開口部55cに対応する部位には、凹部12より深さが小さい凹部13が形成される。
【0025】
次に、マスク55を除去する。例えばマスク55の除去にはNMP(N−メチル−2−ピロリドン)等のレジスト剥離液を用いる。
次に、例えばバッファードフッ酸(Buffered HF)等のエッチング液を使用した等方的なウェットエッチング、若しくは等方的なエッチングと異方的なエッチングの組み合わせにより、シリコン酸化膜である第一膜51及び第三膜53を選択的に除去する。このときエッチング液は、第四膜54の通孔23及びウェハ50の穴部11から浸入し、第一膜51及び第三膜53を溶解させる。通孔23及び穴部11の形状及び配置を適切に設計することにより、第一膜51及び第三膜53にはそれぞれ開口14及び開口15が形成され、感音部のダイアフラム20、プレート22、支持体24が形成される(図1参照)。
その後のダイシング、パッケージング等の工程を経て、コンデンサマイクロホン1が完成する。
【0026】
5.コンデンサマイクロホンの製造方法の変形例
はじめに、上述した製造方法と同様にしてウェハ50の第一面50a上に第一膜51〜第四膜54を堆積により形成する。
次に、図5(A1)に示すように、ウェハ50の第二面50b上にマスク255を形成する。マスク255には、第二開口部55bが第一開口部55aの外側に多重に形成されている。隣り合う第二開口部55bの間隔は、第一開口部55aと第二開口部55bとの間隔より狭い。具体的には例えば、第一開口部55aと第二開口部55bとの間隔は20μmより大きく、隣り合う第二開口部55bの間隔は20μm以下である。
【0027】
次に、上述した製造方法と同様にして、マスク255を用いてウェハ50を異方性エッチングする。この結果、ウェハ50には穴部11と、穴部11を多重に囲む複数の凹部212と、凹部13とが形成される。隣り合う凹部212の間の壁部272は、穴部11と凹部212との間の壁部271よりも薄い。
次に、図5(A2)に示すように、隣り合う凹部212の間の壁部272を除去することにより、副気室42(図2参照)を形成する凹部12をウェハ50に形成する。具体的には、例えば次のとおりである。単結晶シリコンのウェハ50の第二面50bを熱酸化させることにより、壁部272全体を酸化シリコンに変質させる。次に、バッファードフッ酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングにより、壁部272を選択的に除去する。
その後の工程は、上述した製造方法と実質的に同一である。尚、上記製造方法の変形例では、壁部272が壁部271よりも薄くなるように複数の凹部212をウェハ50に形成した。しかし、隣り合う凹部212の間の壁部272を壁部271に対して選択的に除去可能な限り、複数の凹部212はどのような配置で形成してもよい。
【0028】
(第二実施形態)
第二実施形態のコンデンサマイクロホンの構成要素は、支持体24の形状が異なることを除き、第一実施形態のコンデンサマイクロホン1の対応する構成要素と実質的に同一である。第二実施形態に係る支持体24は、主気室41と主気室41に連通する複数の副気室42とから構成される背部気室を形成する。各副気室42は流路抵抗の異なる流路43を経由して主気室41に連通している。このようなコンデンサマイクロホンは、例えば穴部11と、複数の円弧状の凹部12と、穴部11から各凹部12に延びる凹部13とをウェハ50の第二面50bに形成することにより製造することができる。
コンデンサマイクロホンに要求する出力特性に応じて複数の流路43の流路抵抗を個別に設定することにより、出力特性を微妙に調整することができる。複数の副気室42は同一容量でもよいし、互いに異なる容量でもよい。複数の副気室42の容量を個別に設定することにより、出力特性をさらに微妙に調整することができる。
【0029】
(他の実施形態)
上記複数の実施形態では、圧力センサとしてのコンデンサマイクロホンを説明した。しかし、本発明は音圧以外の圧力変化を検出する圧力センサにも適用可能である。
また、上記複数の実施形態では、支持部に全周で固定された円形のダイアフラム20及びプレート22を備えるコンデンサマイクロホンを例示したが、ダイアフラム及びプレートにより構成されるセンサ部の構成はこれに限定されない。例えばダイアフラム及びプレートの板厚方向の端の一部を支持部に固定してもよい。具体的には両持ち梁状にダイアフラムを支持部に固定してもよいし、片持ち梁状にダイアフラムを支持部に固定してもよい。また、ダイアフラム及びプレートの形状は円形に限定されない。具体的にはダイアフラム及びプレートは多角形でもよい。また、プレートをダイアフラムより背部気室側に設けてもよい。また、ダイアフラムを支持部に直に固定しなくてもよい。具体的にはダイアフラムをプレートに吊り下げてもよいし、ダイアフラムをプレートに担持させてもよい。
【0030】
また、上記複数の実施形態では、副気室形成部を基板10の第二面に形成した凹部12及び凹部13で構成した。しかし、副気室形成部は支持体24以外の物で構成してもよい。例えば、コンデンサマイクロホンのパッケージの一部に副気室を設け、その副気室と主気室とを基板10に設けた流路で連通させてもよい。
【0031】
また、上記第一実施形態では、円柱形の主気室41を例示したが、主気室の形状はこれに限定されない。また、環状の副気室42を例示したが、副気室はC字状でもよいし柱状でもよい。また、線状の流路43を例示したが、流路は屈曲してもよい。
また、上記第一実施形態では、主気室41と副気室42とを複数の流路43で連通させたが、主気室と副気室とを1つの流路で連通させてもよい。
また、上記第二実施形態では、主気室41と複数の副気室42とをそれぞれ流路抵抗の異なる流路43で連通させたが、これらを同一流路抵抗の流路で連通させてもよい。主気室と1つの副気室とで背部気室を形成する場合よりも、副気室の配置の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態のコンデンサマイクロホンを説明するための断面図。
【図2】(A)は(B)のA2−A2線による断面図。(B)は第一実施形態のコンデンサマイクロホンの底面図。
【図3】第一実施形態のコンデンサマイクロホンの製造方法を示す模式図。
【図4】第一実施形態のコンデンサマイクロホンの製造方法を示す模式図。
【図5】第一実施形態のコンデンサマイクロホンの製造方法の変形例を示す模式図。
【符号の説明】
【0033】
1:コンデンサマイクロホン、10:基板、11:穴部(気室形成部)、12、212:凹部(副気室形成部、気室形成部)、13:凹部(副気室形成部、気室形成部)、20:ダイアフラム、22:プレート、24:支持体、40:背部気室(気室)、41:主気室、42:副気室、43:流路、50:ウェハ(基板)、50a:第一面、50b:第二面、51:第一膜、52:第二膜(ダイアフラムを構成する薄膜)、53:第三膜、54:第四膜(プレートを構成する薄膜)、55、255:マスク、55a:第一開口部、55b:第二開口部、55c:第三開口部、272:壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極を有するプレートと、
前記固定電極に対向する可動電極を有し、圧力変化によって変位するダイアフラムと、
前記プレートの端部が固定されている内壁と前記ダイアフラムとの内側に、主気室を形成する支持体と、
前記主気室に開口する流路と前記流路を経由して前記主気室に連通する副気室とを形成する副気室形成部と、
を備える圧力センサ。
【請求項2】
前記副気室形成部は前記支持体に設けられ、
前記流路及び前記副気室は、前記支持体の取付面に形成された凹部の内側に形成される、請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記副気室形成部は、複数の前記副気室と、各前記副気室と前記主気室とを連通し流路抵抗が互いに異なる複数の前記流路とを形成する、請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
複数の前記副気室の容量が互いに異なる、請求項3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
固定電極を有するプレートと、前記固定電極に対向する可動電極を有し圧力変化によって変位するダイアフラムと、前記プレートを支持し内側に気室を形成する支持体とを備える圧力センサの製造方法であって、
前記支持体を構成する基板の第一面上に、前記プレートを構成する薄膜と前記ダイアフラムを構成する薄膜とを堆積により形成し、
前記基板の前記第一面と反対側の第二面上に、前記基板の前記プレートを構成する前記薄膜及び前記ダイアフラムを構成する前記薄膜上の部位を露出させる第一開口部と、スリット状の第二開口部と、前記第一開口部から前記第二開口部まで延びるスリット状の第三開口部とを有するマスクを形成し、
前記マスクを用いた前記基板の異方性エッチングにより、前記基板の前記第一開口部に対応する部位に穴部を形成し、前記基板の前記第二開口部に対応する前記第二面に第一凹部を形成し、前記基板の前記第三開口部に対応する前記第二面に前記穴部から前記第一凹部まで延びる第二凹部を形成することにより、前記気室を形成する気室形成部を前記基板に形成する、
ことを含む圧力センサの製造方法。
【請求項6】
複数の前記第二開口部が短手方向に配列された前記マスクを用いた前記基板の異方性エッチングにより、前記基板に複数の前記第一凹部を形成し、
前記基板の隣り合う前記第一凹部の間の壁部を除去する、ことを含む請求項5に記載の圧力センサの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−28512(P2008−28512A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196578(P2006−196578)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】