説明

圧潰可能な、テーパのある筒状構造体及び製造方法

方法が、円形管材20を準備するステップと、圧縮ボックス35及びくさび割ダイ25を準備するステップと、円形管材20を、一つのテーパ又は二様テーパの矩形筒21に再成形するステップであって、くさび割ダイ25を使用して管材20の材料を圧縮ボックス35の方へ外側へ押し込む一方で、圧縮ボックス35を使用して外側形状を制御することを含む、再成形するステップとを含む。この構成は、材料が薄肉化することを最小限に抑える。長手方向衝撃エネルギーを吸収することができるように設計される圧潰可能な筒状構造体21が製造される。この圧潰可能な構造体21は、引張強度が少なくとも40KSIである材料から作製される、一つのテーパ又は二様テーパの矩形筒21を含む。より限られた形態では、引張強度は少なくとも80KSIであるが、100KSI以上であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両衝突時にエネルギー吸収すると共にエネルギー管理するように構成される圧潰可能な構造体に関する。
【0002】
本願は、米国特許法第1.19条(e)項に基づく、2006年10月30日に出願された「TUBULAR TAPERED CRUSHABLE STRUCTURES AND MANUFACTURING METHODS」と題する米国仮特許出願第60/863,488号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
車両部材は、エネルギー管理によって物的損害を減らし、衝撃を受けた車両の乗員に安全を提供するように設計される。これは通常、予測可能且つ反復可能に変形するように車両部材を設計することによって達成される。低速の衝撃では、バンパ及びバンパブラケット等の部材は、衝撃を受けたときに、これらの部材の変形によってかなりの量のエネルギーを吸収するように設計される。より高速の衝撃の場合、車両シャーシが変形することによってエネルギーを吸収するように設計される。側部衝撃も、シル、ロッカーパネル、ピラー及びドア衝撃ビーム等の変形可能な部材を使用する。側部衝撃部材と車両の前方又は後方に位置するそれらの部材との1つの主な違いは、変形によってエネルギーを吸収するように設計される方法にある。側部衝撃部材は、部材の側部屈曲タイプの形状変化に関連する変形によってエネルギーを吸収する。バンパブラケット及びシャーシ部材等の前方部材及び後方部材は、衝撃力に対して平行な方向に蛇腹状に圧潰するように設計される。前方衝撃及び後方衝撃では、衝突は、移動している車両と固定物体(壁、バリア、ポール、木等)との間、又は2つの動いている車両間のいずれかで起こる。衝撃エネルギーは通常、速度及び衝突ダイナミクスに起因して高い。シャーシ部材は、予測可能且つ反復可能に変形して、乗員に安全を提供すると共に物的損害を減らすことができなければならない。
【0004】
様々なタイプの部材破壊によって、エネルギーの吸収のされ方に関して様々な応答曲線が生じ、効率の程度が変わる。衝撃エネルギー吸収は、衝撃抵抗力に部材の衝撃ストロークを乗算することによって計算される。高効率でエネルギー吸収する部材は一般的に、所望の最大ストローク距離にわたって所望の最大量のエネルギーを連続的に吸収する部材として説明されている。軸方向に近い方向の衝撃を受けると屈曲する筒状構造体は、エネルギーを吸収するが、非常に効率的にエネルギーを吸収しているわけではない。筒が蛇腹状に自身に折り重なる場合、より効率的な応答が得られるであろう。蛇腹式の変形によって、提供されている実装空間内で最大量のエネルギーが吸収される。最終変形部品(piece)は、積み重ねられた材料の最小実装空間を表している。本説明(write-up)において規定される記載の革新は、軸方向に近い方向の衝撃を受けると、自身に折り重なって蛇腹状に圧潰する圧潰可能な筒状構造体である。この革新的な設計は、バンパブラケット等の小さい用途に合わせて縮小することができるし、又はシャーシ部材等のより大きい用途に合わせて拡大することができる。
【0005】
シャーシ部材及び/又はバンパブラケット両方のために筒状構造体を使用することは真新しいことではない。これらのタイプの筒状構造体は、車両全体の多くの様々な部材に用いられている。このタイプの筒状構造体を用いる多くの用途は、軸方向の衝撃及び軸方向に近い方向の衝撃から保護することと一致する。概略軸方向の衝撃を受けると自身に折り重なって蛇腹状に圧潰する筒状構造体を製造可能な様々な製造プロセスが存在する。この製造プロセスに関連する複雑さ及び特有のコストは、設計のエネルギー管理効率を上昇させるにつれて増加する傾向にある。筒状の構造的部材を製造することができ、高価なものから安価なものまでコストによってランク付けされる製造プロセスは、一緒にスポット溶接される2回のスタンピング、深絞りスタンピング、内部マンドレルを使用する簡単な拡張によって作製されるハイドロフォーミングされたクラムシェル設計、及び圧潰開始部(crush initiator)を有する簡単なロール成形された筒状設計を含む。筒状部材は、ハイドロフォーミングプロセスによって、それらの長さに沿って変化する非均一な断面を有する複雑な形状に成形することができ、この場合、非均一な断面は、エネルギー吸収等の特定のニーズ及び特性に合わせて調整される。例えば、車両フレームが多くの場合、ハイドロフォーミングされた部材を含む。しかし、ハイドロフォーミングプロセスは高価であり、(筒内に流体を入れ、次いでこの流体を加圧することを含むため)手間がかかり、且つ比較的長いサイクル時間を要する傾向にある。さらに、ハイドロフォーミングプロセスは、高強度低合金(HSLA)材料、及び/又は先進超高強度鋼(AUHSS:Advanced-Ultra-High-Strength Steel)材料等の高強度材料が使用される場合には、ほとんどの場合満足のいくものではなくなる。これは、これらの材料が成形しにくく、伸張性が低く、成形性が乏しく、且つ工具を急速に摩耗させる傾向があるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高強度鋼から作製することができるがコストは手頃であり、衝撃時に優れた反復可能で且つ予測可能な結果を伴って圧潰する圧潰可能な構造体を提供することが望ましい。したがって、上述の利点を有すると共に上述の問題を解決する部材、装置、及び部材を製造する方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、軸方向の衝撃を受けたときにエネルギーを吸収するのに適している軸方向に圧潰可能な構造体を成形する方法は、管材の一区画(section of tubing)を準備すること、圧縮ボックス及びくさび割ダイ(wedging die)を準備すること、並びに管材を圧縮ボックス内に位置付けると共に、くさび割ダイを少なくとも部分的に管材内に位置付けることを含む。管材の少なくとも一部が、非円形断面を有するテーパのある多角形筒状形状に再成形される。再成形することには、くさび割ダイを使用して管材の材料を外側に押し込んで圧縮ボックスと係合させる一方で、圧縮ボックスを使用して外側形状を制御することを含む。
【0008】
本発明の別の態様では、圧潰可能な筒状構造体が、長手方向衝撃エネルギーを吸収することができるように設計される。この圧潰可能な構造体は、テーパのある部分と、テーパのある部分と整合される、テーパのない第2の部分とを有する多角形筒を含む。この筒は、引張強度が少なくとも40KSIであり、且つその全体長さに沿って実質的に一定の肉厚を有する材料から作製される。
【0009】
本発明の別の態様では、圧潰可能な筒状構造体が、長手方向衝撃エネルギーを吸収することができるように設計される。この圧潰可能な構造体は、テーパのある多角形部分と、テーパのない多角形部分とを有し、且つその全体長さに沿って実質的に一定の肉厚を有する多角形筒を含む。
【0010】
本発明のこれら及び他の態様、目的及び特徴は、以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付の図面を読めば当業者によって理解及び認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一定の断面を有する未加工の管部材(tubing component)、及びバンパクラッシュタワーとして有用な、完成した筒状の二様テーパの(double-tapered)矩形筒部材の斜視図である。
【図2】未加工の管部材を成形するためのテーパのあるダイの斜視図である。
【図3】テーパのあるダイと共に用いる直線セクションである案内筒の斜視図である。
【図4】円形の管部材をテーパのあるダイに押し込むためのプッシュカラーの斜視図である。
【図5a】未加工の管部材から成形された二様テーパの円形筒の斜視図である。
【図5b】5aの筒から作製された二様テーパのある矩形筒部材である。
【図5c】図5aの端面図である。
【図5d】図5bの端面図である。
【図6】マンドレルセットの斜視図である。
【図6a】外側マンドレルの斜視図である。
【図6b】内側マンドレルの斜視図である。
【図7】図5bの二様テーパの矩形筒部材用の、図6a及び図6bのマンドレルと共に使用可能な圧縮ボックスの斜視図である。
【図8】圧潰開始部を有する完成した二様テーパの矩形部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の概念は、高強度材料の筒を製造するために、標準的な低コスト製造プロセスを組み合わせることであり、軸方向に近い方向の衝撃時に、より高価なハイドロフォーミングプロセスによって製造されるものと同様の強制撓み反応を有する軽量の部品を製造するものである。ここで提案している発明の概念は、円形の管材を二様テーパの矩形部材に再成形することができることを拠りどころにしている。圧潰開始部が、製造プロセス中に二様テーパの矩形部材に戦略的に追加される。本明細書に含まれる説明は、二様テーパの矩形設計を中心に説明するが、この概念及び製造プロセスは、任意の面を有する多角形筒状部材に用いることができることを留意されたい。本説明内で規定される製造プロセスは、直線の一定の幾何学的形状を、様々な形状の二様テーパの幾何学的形状に再成形することに関連する一般的な材料による制限を克服することが当業者には自明となるであろう。
【0013】
提案される発明の概念は、構造用鋼、高強度低合金(HSLA)鋼、及び先進超高強度鋼(AUHSS)等の材料の高い物理的特性に関連する成形性の制限の利点を活かし、且つこれを克服するものである。本文において、様々な鋼に言及する場合、構造用鋼を、少なくとも約40KSI以上の引張強度を有する材料として、高強度低合金(HSLA)鋼を、少なくとも約80KSI以上の引張強度を有する材料として、先進超高強度鋼(AUHSS)を、少なくとも約100KSI以上の引張強度を有する材料として定義する。これらの材料に関連する高い物理的特性によって、変形時により多くのエネルギーが吸収され、厚さをダウンゲージング(down-gauging)することによってより厚いゲージのより低いグレードの材料と同様の性能を達成することが可能となる。厚さをダウンゲージすることができ、且つ性能を維持することができることは、部品コストが低減すること、潜在的には部品(piece)価格が低減することを表す。より高い物理的特性を有する材料を使用することの重大な欠点は、より高い物理的特性を有する材料は、物理的特性が高くなるにつれて成形性も低下することである。収率及び引張強度は増加するが、材料の伸張、さらに成形性が低下する。ここに示される発明の概念は、より高い物理的特性の材料を使用することに関連する成形性の制限を克服し、より成形性がある材料と同様の性能を達成するのに材料ゲージ(gauge)を減らす機会を提供する。
【0014】
以下のプロセスは、より高いグレードの材料を使用することに関連する成形性の問題を克服し、且つ再成形される円形筒から二様テーパの矩形筒を製造するのに必要なステップを説明する。用語「二様テーパ(double tapered)」とは、テーパのある第1の部分と、異なる第2の部分(テーパがあってもなくてもよい)とを有する筒を意味する。例示として、市販の、円形のドローンオーバーマンドレル(DOM:Drawn-Over Mandrel)筒を再成形することによって二様テーパの矩形筒を成形する。DOM筒は、DOMプロセスに関連するさらなる加工硬化に起因して、電気抵抗溶接(ERW)筒に関連する物理的特性よりも高い物理的特性を有する。この例で使用されるDOM材料は以下の物理的特性を有している;降伏強度=67021psi、引張強度=83775psi、及び0.2%伸張=12.65%。外径が4.75インチのDOM管材を使用し、この管材の長さはおよそ24インチであった。これらの物理的特性は、構造用鋼及びHSLA鋼と一致している。
【0015】
元の円形筒状部材20(本明細書中では「円形管材」とも呼ばれる)(図1)において、DOM管材の外径は、筒の周囲が、部分的に完成した二様テーパの矩形筒20Bの拡大端の外周と比べた場合にわずかに小さくなるような寸法になっている。部分的に完成した二様テーパの矩形筒20Bは、第1のテーパを有する(又はテーパがない)第1の矩形部分と、異なる第2のテーパを有する第2の矩形部分とを含む二様テーパの矩形形状を有する(図1を参照のこと)。円形筒の外径をこのようにサイズ決定することは、二様テーパの矩形の拡大端の必要な外周を達成するためにわずかに拡張することを可能にする。再成形プロセス及び拡張プロセスは、以下のパラグラフで詳細に規定される。円形から矩形になるために拡張する量は、材料にかかる応力を低減するために最小限に抑えたままにする必要がある。拡張を最小限に抑えたままにすることは、これらのタイプの変形可能なエネルギー管理部材に望ましいより高いグレードの材料の成形性が低いことを考慮すると、重要である。
【0016】
円形のDOM管材20は、テーパのあるダイ25(図2)に押し込まれる。このダイは硬化鋼から作製されており、旋盤で製造することができる。ダイ25は、取扱い易くし、また変化するテーパ角及びテーパ深さに柔軟に対応できるように、セクション26及び27から作製される。テーパのある主ダイ25内へ押し込まれるときに円形の管材20のコラムバッキング(column bucking)に関連する問題がある場合には、ダイ25の直線セクション(straight section)28を用いて、円形の管材20を主ダイ25のテーパのある端の中に案内及びサポートすることができる(図3)。この特定の例では、円形の管材20を案内及び支持するための直線セクション28は必ずしも必要ではなく、したがってDOM管材には使用されていない。
【0017】
円形の管材20の内部に嵌まり、管材20がテーパのあるダイ25内に押し込まれるにつれて押し荷重を管材20の外側縁へ伝える特別なプッシュカラー29(図4)が開発された。円形筒20は、その所望の長さと一致する距離をテーパのあるダイ25(図2)内へ押し込まれる。ダイ25内への挿入の終点において、部分的に完成した円形筒20Aのより小さいテーパのある端の周囲は、完成部品21のテーパのある矩形形状の小さい端の最終外周と比べた場合にわずかに小さい寸法になった(図5)。ここで、テーパのある端に、上方への力を加えて、筒20Aをダイ25の上部を通って反対方向に押し戻すことによって、テーパのある円形筒20Aがダイ25から取り出される。なお、円形筒20Aにテーパをつけるために使用される記載のダイ25は、プロトタイプの工具の1つであり、大量生産には異なるダイ構成がより適している場合がある。
【0018】
テーパをつけるプロセスは、テーパの量に応じて、元の筒20の長さを少しの量長くし得る。特に、成形するのが困難なこれらの材料では、外周の変化によって材料が主に筒20の長さ方向に移動する。この例の場合では、筒20Aはおよそ0.25インチ長くなった。筒20Aの長さが長くなる量は、材料のタイプ、材料の厚さ、及び未加工の筒20に加わるテーパの量によって変わる。円形筒20Aの厚さはわずかに増加し得るが、この厚さの変化は大きな影響を与えるとは考えられない。厚さがいくらか増加する場合、この厚さの増加は、最大のテーパ量となる、円形筒の端において最も顕著である(図5、直径「a」を参照のこと)。実際のところ、テーパをつける間に円形筒20Aが伸張することは、筒のテーパが最大になる点における厚さの変化量を最小限に抑える。ここで示される例の場合、テーパのある端における材料厚さはおよそ0.009インチだけ増加した。これを、本例における約0.132インチの平均材料厚さと比較すると、厚さの変化は7%未満である。また、本発明の概念のために提案される材料の場合、本例において、材料として納入された状態のコイル仕入品(stock)における材料厚さの変化は通常、±0.005インチ、すなわち約4%であることに留意されたい。したがって、たった7%である材料厚さの変化は、本例においては大きな影響を与えるとは考えられなかった。本説明の場合、筒の長さに沿う約7%以下の材料厚さの変化は、テーパのある筒の全体長さに沿う実質的に一定の肉厚であると考えられる。
【0019】
ここまでで、テーパのある円形筒20Aは再成形するための準備が整う。ここまでで、テーパのある円形筒20Aは、二様テーパの矩形20Bに再成形される準備が整う。再成形プロセスは、単純な再成形とわずかな拡張とを組み合わせて、達成される。拡張は、筒の肉厚の完全性を維持するために最小限に抑えたままにされる。3ピースマンドレル30(図6)を用いて円形筒20Aを再成形した。マンドレル30の外側の2つのピース31及び32は矩形の小さい方の側面を表すような形状になっている(図6a)。これらのマンドレル31及び32は、完成した矩形形状のコーナーアール(R)(corner radii)を含む。マンドレル30の第3の部分33は中心形材である(図6b)。2つのマンドレル31及び32はキー溝が付けられ、共にマンドレル30の中心形材33に嵌まる。マンドレル30の中心形材33は、テーパ状すなわち次第に細くなっている。それにより、2つのマンドレル31及び32間で下方へ移動し、マンドレル31及び32が離間するように広がり、テーパのある矩形マンドレル30を形成する。図6は、中心形材33に対する一定角度のテーパを示すが、実際には、中心形材33及び/又は、マンドレル31,32は、テーパのあるセクション及び/又はテーパのないセクションから成っていてもよい。
【0020】
3ピースマンドレル30は多くの場合、所望の材料の成形の制限によって、それ自身のみを使用してテーパのある円形筒20Aを二様テーパの矩形に再成形することはできない。円形から矩形へ形状を変化させるために必要なマンドレルの働きの結果として、矩形の最終部品のコーナーアールからわずかに離れたところの材料が大幅に薄肉化する可能性がある。再成形方法によって材料を1つの形状から別の形状に流動させることができない場合にこのように薄肉化する可能性がある。内部マンドレルを使用して再成形すると同時に材料が薄肉化することを最小限に抑えるために、さらなる固定具が望ましい。内部の3ピースマンドレル31〜33を使用する再成形作業中に材料の流動を助けるために圧縮ボックス35(図7)が開発された。圧縮ボックス35はテーパのあるボックスであり、ボックスの3つの側面は二様テーパの矩形の最終形状を表す。3つの完成した側面は、矩形の2つの小さい方の側面と、大きい方の側面のうちの一方である。圧縮ボックス35は、完成形状のコーナーアールを模倣するのではなく、テーパのある矩形の壁の全体的な位置のみを模倣する。圧縮ボックス35の固定されていない面36も、矩形の大きい方の側面のうちの一方である。圧縮ボックス35のこの固定されていない面36は、内側に調節され、テーパのある円形筒20Aに当接して調節される。一方、マンドレル31〜33はテーパのある円形筒20Aの長さ、下方に押し込まれる。圧縮ボックス35の固定されていない面36を調節することができることによって、材料の移動が助けられ、筒20Aの円形形状を、薄肉化して不要に弱化することなく完成部品21の矩形形状に再成形するのが容易になる。
【0021】
圧縮ボックス35は、部品を再成形するのに必要とされる拡張量を低減し、さらに、材料が薄肉化する量を低減する。拡張する量を低減することが望まれることは、テーパのある矩形の端を大きさに合わせて作ることを助けると同時に、端の幾何学的形状の再現性を可能にすることを助けるのに、必要である。図示の圧縮ボックス35の詳細な設計は、1つのみの調節可能な可動表面を示していることが留意される。しかし、圧縮ボックス35の複数の側面を移動又は調節させるように作製してもよいことが意図及び想定される。当業者は、本発明の概念を理解すれば、そのように作製する方法を理解するであろうと考えられる。圧縮ボックス35の複数の移動する表面を使用することは、材料が移動することを助ける。これは、より複雑な多角形形状の再成形に必要であり得る。移動可能な表面を追加することは、最終形状の表面及び端の幾何学的形状の寸法をだしやすくするのに必要であり得る。
【0022】
製造モードでは、圧縮ボックス35を、油圧、空気圧及び/又はサーボによって調節することができることが想定される。圧縮ボックス35の固定されていない面36の調節は、マンドレル31及び32が円形筒の長さを下方へ移動する際にこれらの位置と同期して調節することができることが想定される。このタイプの制御は、閉ループ制御システムに基づき、この場合、プロセスの一態様の位置は、プロセスの別の態様を制御するのに使用される。
【0023】
完成された部品21の矩形のテーパを有する形状は、筒が概略軸方向に衝撃を受けたときに蛇腹状に圧壊するのを促すのに役立つ。このタイプの圧潰の再現性は、荷重方向と筒の長さに沿う変形の位置とにわずかにばらつきがあるため疑わしい。圧潰動作の再現性を高めるために、通常、圧潰開始部40(図8)を圧潰可能な部品に追加する。必要とされる圧潰開始部40のタイプ、配置及び数を求めることはたいてい、最も適した設計を特定する開発努力を必要とする。圧潰開始部40は、好ましくは最終形状を成形した後で部品に追加されることができる。この例の場合、圧潰開始部40は、二様テーパの矩形形状に追加される。
【0024】
製造モードでは、圧潰開始部40は、任意のタイプのスタンピング方法、油圧、空気圧等を使用して追加され得る。圧潰開始部40が部品にスタンピングされる場合、おそらくは内部支持体が必要とされる。圧潰開始部40は、内部再成形マンドレルが部品内に位置付けられているときに部品に追加され得ることが想定される。内部にある外側マンドレル31、32は、開始部40が配置される各位置では逃げ(relief)が必要である。中心マンドレル33は部品から後退する。このことが、2つの外側マンドレル31、32がちょうどスタンピングされた(just-stamped-in)圧潰開始部40から外れることを可能にし得る。ウォーキングビームタイプの製造プロセスでは、圧潰開始部40は、独立型ステーションで部品に追加され得る。また、一般的に、孔、スロット等が圧潰開始部として過去に用いられていることを留意されたい。孔又はスロットを追加することに関連する製造プロセスは、ダーツタイプの圧潰開始部と同様である。両タイプの圧潰開始部は筒内に或るタイプの支持体、すなわちマンドレル、型鋼等を必要とする。
【0025】
本発明の概念の利点は少なくとも以下を含む。部品を二様テーパにすることができ、それは、概略軸方向に荷重を受けると、蛇腹状に圧壊するのには、それ自身、非常に頑強であることが分かっているタイプの設計である。この作り方の「構成」概念は、材料が高度の成形性を有することを必要とせず、これによってより高いグレードの鋼を使用することが可能となる。本発明の概念は、構造用鋼(少なくとも40KSIの引張強度)、高強度低合金(HSLA)鋼(少なくとも80KSIの引張強度)、及び先進超高強度鋼(AUHSS)(少なくとも100KSI以上の引張強度)を含む、この用途に有用である許容可能な未加工鋼に拡張される。これらの許容可能な材料グレードは、ハイドロフォーミング及び拡張のような他の製造プロセスの場合に許容可能であるグレードよりも相当に高い。必要とされる製造ステップは独自のものではなく、この概念の独自性は、これらの製造プロセスをどのように組み合わせて最終製品を製造するかにある。適切に材料を選択することによって材料厚さのダウンゲージングによるより軽量な部品がもたらされ、より高いグレードの材料を活かすことができる。これはまた、部品価格の低減につながり得る。
【0026】
本発明の概念から逸脱することなく前述の構造に変形及び変更をなすことができることが理解されるべきであり、さらに、そのような概念は、以下の特許請求の範囲において別途明記されない限り、特許請求の範囲によってカバーされることが意図されることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の衝撃を受けたときにエネルギーを吸収するのに適している軸方向に圧潰可能な構造体を成形する方法であって、
管材の一区画を準備するステップと、
圧縮ボックス及びくさび割ダイを準備するステップと、
前記管材を前記圧縮ボックス内に、且つ前記くさび割ダイを少なくとも部分的に前記管材内に位置付けるステップと、
前記管材の少なくとも一部を、非円形断面を有するテーパのある多角形筒状形状に再成形するステップであって、前記くさび割ダイを使用して前記管材の材料を外側へ押し込んで前記圧縮ボックスと係合させる一方で、該圧縮ボックスを使用して外側形状を制御することを含む、再成形するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記くさび割ダイは、協働する複数のマンドレルと、軸方向に移動すると、該協働する複数のマンドレルを前記圧縮ボックスの内面へ向かって離間するように移動させる中心形材とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧縮ボックスの前記内面及び前記協働する複数のマンドレルは、前記管材の壁に圧潰開始部を形成する構造を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記管材は、引張強度が少なくとも約40KSIである材料から作製される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記管材は、引張強度が少なくとも約80KSIである材料から作製される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記管材は、引張強度が少なくとも約100KSIである材料から作製される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮ボックスの前記内面のうちの少なくとも1つは、異なる形状を画定するように調節可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記管材は円形の断面を有し、
前記方法は、前記再成形するステップの前に前記円形の管材を第1の多角形形状に成形するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
圧潰開始部をテーパのある多角形筒状形状に成形して、完成した圧潰可能な筒状多角形構造体を成形することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記再成形するステップは、
前記管材の長さのうち、第1の部分をテーパのある多角形形状に成形すること、及び
前記管材の前記長さのうち、第2の部分をテーパのない多角形形状に成形することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記再成形するステップは、前記管材に矩形断面を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記管材を準備するステップは、引張強度が少なくとも約40KSIである材料の円形管材を作製することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記再成形するステップは、前記管材に沿う材料の厚さを、材料厚さの変化が10%未満であるように維持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記再成形するステップは、前記管材に沿う材料の厚さを、材料厚さの変化が約7%未満であるように維持することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記再成形するステップは、材料を、前記円形筒の周囲方向ではなく、主に該管材の長さ方向に移動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
長手方向衝撃エネルギーを吸収することができるように設計される圧潰可能な筒状構造体であって、
テーパのある部分と、該テーパのある部分と整合されるテーパのない第2の部分とを有する多角形筒であって、
引張強度が少なくとも40KSIであり、且つ
その全体長さに沿って実質的に一定の肉厚を有する一枚の材料シートから作製される、
多角形筒
を備える、圧潰可能な筒状構造体。
【請求項17】
前記肉厚は、その長さに沿う厚さの変化が10%未満である、請求項16に記載の構造体。
【請求項18】
前記材料は、引張強度が少なくとも40KSIである、請求項16に記載の構造体。
【請求項19】
前記材料は、引張強度が少なくとも80KSIである、請求項18に記載の構造体。
【請求項20】
前記第2の部分は、少なくとも前記テーパのある部分ほどの大きさの周囲を有する、請求項16に記載の構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図5d】
image rotate

【図6】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−508154(P2010−508154A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535391(P2009−535391)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/082101
【国際公開番号】WO2008/055027
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591187162)シエイプ コーポレイション (25)
【氏名又は名称原語表記】SHAPE CORPORATION
【Fターム(参考)】