説明

圧縮成形装置及び圧縮成形方法

【課題】圧縮成形装置の占有面積の増大を最小限にすると共に複雑にすることなく、生産性の向上が可能となる。
【解決手段】相対的に接近・離反可能な第1上型130A、第2上型130Bと第1下型144A、第2下型144Bとを有し、対をなした第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144B、それぞれの間に形成される2つのキャビティに配置される第1被成形品102A、第2被成形品102Bを第1樹脂104A、第2樹脂104B、それぞれにて圧縮封止する圧縮成形装置100において、第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144Bが、接近・離反可能な方向に配置されることで、キャビティが接近・離反可能な方向において直列に2つ設けられ、第1上方130A、第2下型144Bに、サーボモータ112A、112Bがそれぞれ連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形装置及び圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、2つのキャビティを用いて圧縮封止を行う圧縮成形装置が記載されている(特許文献1が図8(A)、(B)、特許文献2が図8(C)にそれぞれ対応)。いずれの圧縮成形装置も2つのキャビティが下型44、94に平面的に並べて設けられている。このため、1つのキャビティで1つの基板を圧縮封止する場合には、複数の基板をほぼ同時に圧縮封止することが可能となる。すなわち、特許文献1、2では、1つのキャビティを備える圧縮成形装置に比べて、高い生産性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−307766号公報
【特許文献2】特開2009−124012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2においては、複数のキャビティが平面的、即ち横並びに配置されている。このため、キャビティを形成している下型44、94を移動させるための可動プラテン寸法も大きくなってしまい、圧縮成形装置の占有面積が大きくなってしまう。
【0005】
また、基板厚み誤差や樹脂量誤差により、(各キャビティ毎に基板が異なる場合では)2基板同時成形すると、各基板で封止圧誤差が生じて、圧縮封止後のパッケージ厚みや品質(ワイヤー変形)などに影響を与え、圧縮封止不良を引き起こす可能性が出てくる。このような現象を解消するために等圧機構が必要となるが、その場合には圧縮成形装置が複雑化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、圧縮成形装置の占有面積の増大を最小限にすると共に複雑にすることなく、生産性の向上可能な圧縮成形装置及び圧縮成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、相対的に接近・離反可能な上型と下型とを有し、対をなした該上型と下型との間に形成されるキャビティに配置される被成形品を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形装置において、前記上型と下型とが前記接近・離反可能な方向に複数対配置されることで、前記キャビティが該接近・離反可能な方向において直列に複数設けられ、多くとも該キャビティ毎の前記上型と下型のうちのいずれか一方のみに、該一方を前記接近・離反可能な方向に移動させる駆動源が連結されていることにより、上記課題を解決したものである。
【0008】
本発明においては、上型と下型とを前記接近・離反可能な方向に複数対配置することで、キャビティを該接近・離反可能な方向において直列に複数設けている。即ち、複数のキャビティが横並び(並列)ではなく、該接近・離反可能な方向に直列に重なる態様となる。このため、上型と下型の大きさを大きくすることなく、各キャビティで圧縮封止をすることができる。同時に、キャビティを並列としないので、等圧機構を不要としながら封止品質を保つことができる。更に、多くとも該キャビティ毎の上型と下型のうちのいずれか一方のみに、駆動源が連結されている。即ち、例え1つのキャビティで上方と下型の両方が接近・離反可能な方向に移動可能とされているような場合でも、1つの駆動源のみが使用されることとなる。このため、2つの駆動源を用いる場合に比べて大型化や特に制御の複雑化を回避して、低コスト化を実現することができる。即ち、占有面積を増大させずに装置を複雑にすることなく、生産性を向上させることができる。
【0009】
また、各キャビティにおける圧縮封止は、接近・離反可能な方向のいわば1軸上で独立に行われる。このため、1つのキャビティにおいて樹脂量変動に伴う圧縮封止不良が生じても、該圧縮封止不良が他のキャビティの圧縮封止に悪影響を及ぼすことを回避することができる。
【0010】
なお、前記キャビティを夫々構成している2以上の前記上型または下型が、1個の前記駆動源によって駆動される場合には、キャビティ毎に駆動源が用いられるよりも、構成部品の点数の低減により、小型化と低コスト化を実現することができる。
【0011】
なお、前記上型として第1上型と第2上型、前記下型として第1下型と第2下型をそれぞれ有すると共に、該第1上型と第1下型との対、及び、該第1下型の下側に隣接して配置された前記第2上型と第2下型との対によって2つの前記キャビティを形成し、該第1上型と第2下型のうちの一方が固定され、且つ、該第1上型と第2下型のうちの他方に前記駆動源が連結され、該他方が前記第1下型または第2上型を直接的に押圧することにより該第1下型と第2上型とが一体で前記接近・離反可能な方向において移動可能とされている場合には、駆動源が1つでありながら圧縮封止のためのプレス力を、1つのキャビティの場合と同一とすることができ、且つ、2つのキャビティに均等にかけることができる。即ち、生産性を向上させながら、プレス力を増大させることがないので、プレス力増大のための圧縮成形装置の大型化を回避することができる。
【0012】
なお、前記上型として第1上型と第2上型、前記下型として第1下型と第2下型をそれぞれ有すると共に、該第1上型と第1下型との対、及び、該第1下型の下側に隣接して配置された前記第2上型と第2下型との対によって2つの前記キャビティを形成し、該第1上型と第2下型とが固定され、且つ、該第1下型と第2上型とが前記接近・離反可能な方向において互いと反対方向に移動可能とされている場合には、キャビティとキャビティとの間に配置される第1下型と第2上型の移動に互いの反力を使うことができる。このため、生産性を向上させながら、プレス力を増大させないようにすることができる。即ち、プレス力を小さくできるので、プレス力増大のための圧縮成形装置の大型化を回避することができる。同時に、2つのキャビティでは可動部に関る誤差を互いに加算しないので、寸法精度の高い圧縮封止をすることもできる。
【0013】
なお、前記接近・離反可能な方向において前記第1上型と第1下型と第2上型と第2下型のうちの2以上を移動可能に支持するタイバーが全て兼用とされている場合には、別々にタイバーを設けるよりも装置の大型化を回避できる。また、タイバーの大径化を図ることでタイバーの高剛性化がなされ、第1上型と第1下型と第2上型と第2下型を高精度に移動させることが可能となる。
【0014】
なお、前記上型として第1上型と第2上型、前記下型として第1下型と第2下型をそれぞれ有すると共に、該第1上型と第1下型との対、及び、該第1下型の下側に隣接して配置された前記第2上型と第2下型との対によって2つの前記キャビティを形成し、該第1上型と第2下型とが前記接近・離反可能な方向において移動可能とされ、且つ、該第1下型と第2上型とが固定されている場合には、第1下型と第2上型とを、被成形品の圧縮封止のための基準とすることができる。このため、2つのキャビティでは、可動部に関る誤差を互いに加算しないので、寸法精度の高い圧縮封止をすることができる。同時に、第1下型と第2上型とを固定している部分(固定プラテン)では、2つのキャビティで圧縮封止の際にかけられる圧力が互いに反対方向で相殺される関係となる。このため、固定プラテンには、1つのキャビティのみを備える圧縮成形装置の固定プラテンほどの剛性を必要としない。即ち、生産性を向上させながら、圧縮成形装置の軽量化・簡易化若しくは長寿命化させることができる。
【0015】
なお、前記下型が、前記上型に保持される前記被成形品の圧縮封止される領域の外側を該上型と把持すると共に貫通孔を備えた下枠型と、該貫通孔に嵌合して配置される下圧縮型と、を備え、該下枠型が該下圧縮型に対して相対的に変位しても前記上型との密封が保たれる場合には、被成形品が圧縮封止される前に被成形品の位置が把持(クランプ)により固定可能となる。このため、被成形品の圧縮封止される領域の位置ずれに伴う圧縮封止不良を回避できる。そして、圧縮封止する際に下圧縮型の位置が調整可能となることでたとえ特定のキャビティにおいて樹脂量変動が生じていてもそのキャビティでの圧縮封止不良の発生を低減することができる。同時に、密封が保たれることで、樹脂のキャビティからの漏れを防止することができる。
【0016】
なお、前記上型が、貫通孔を備えて前記下枠型に対向する上枠型と、該貫通孔に嵌合して配置され前記被成形品を保持する上圧縮型と、を備え、該上枠型が該上圧縮型に対して相対的に変位しても前記下型との間で減圧可能とされている場合には、下枠型と上枠型とが接触した段階で密封状態を作ることができ、早い段階で上型と下型との間で減圧状態とすることができる。このため、圧縮封止する際に、樹脂の被成形品への充填を速く且つ十分に行うことができる。即ち、圧縮封止工程を短縮して、更に圧縮封止不良を低減することができる。
【0017】
なお、更に、前記下枠型の下圧縮型に対する変位量を制御する下枠駆動機構を備え、該変位量を制御しながら前記複数設けられるキャビティで同時に圧縮封止される場合には、キャビティ毎の圧縮封止品質のばらつきを低減できるので、圧縮封止品質の向上を図ることができる。
【0018】
なお、前記キャビティに配置される樹脂は、所定の形状と重量で予備成形されている場合には、圧縮封止に用いる樹脂量の変動を少なくできる。同時に、樹脂の扱いが容易で、且つその管理も容易となる。
【0019】
なお、前記樹脂は、連続した離型フィルムで前記キャビティに配置される場合には、樹脂をキャビティに搬送するのが容易となり、且つ使用した離型フィルムの回収も容易となる。
【0020】
なお、前記樹脂は、短冊状に分離された離型フィルムで前記キャビティに配置される場合には、樹脂の搬送手段の配置を自在とすることができる。また、離型フィルムの余分な部分を極力低減できるので、離型フィルムを有効活用することができる。
【0021】
なお、本発明は、相対的に接近・離反可能な上型と下型とを有し、対をなした該上型と下型との間に形成されるキャビティに配置される被成形品を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形方法において、前記上型と下型とが前記接近・離反可能な方向に複数対配置されることで、該接近・離反可能な方向において直列に設けられている複数の前記キャビティに対し、多くとも該キャビティ毎の前記上型と下型のうちのいずれか一方のみに駆動源を連結させて1軸方向(接近・離反可能な方向)から圧縮封止する工程を含むことを特徴とする圧縮成形方法とも捉えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、圧縮成形装置の占有面積の増大を最小限にすると共に複雑にすることなく、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の一例が適用された圧縮成形装置の模式図
【図2】図1の圧縮成形装置の一連の動作を示す模式図
【図3】本発明の第2実施形態の一例が適用された圧縮成形装置の模式図
【図4】本発明の第3実施形態の一例が適用された圧縮成形装置の模式図
【図5】図4の上面図を示す模式図
【図6】図4の圧縮成形装置の一連の動作を示す模式図
【図7】本発明の第4実施形態の一例が適用された圧縮成形装置の模式図
【図8】従来の圧縮成形装置の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態の一例が適用された圧縮成形装置の模式図である。概略的な特徴について以下説明する。
【0026】
圧縮成形装置100は、図1に示す如く、相対的に接近・離反可能な上型(第1上型130A、第2上型130B)と下型(第1下型144A、第2下型144B)とを有している。そのため、対をなした第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144B、それぞれの間に形成される2つのキャビティに配置される第1被成形品102A、第2被成形品102Bを、第1樹脂104A、第2樹脂104B、それぞれにて圧縮封止することができる。そして、圧縮成形装置100では、第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144Bが、接近・離反可能な方向に配置されることで、キャビティが接近・離反可能な方向において直列に2つ設けられている。そして、第1上型130Aと第1下型144Aのうちの第1上型130Aのみに第1可動プラテン124Aを介して駆動源であるサーボモータ112Aが連結されている。同様に第2上型130Bと第2下型144Bのうちの第2下型144Bのみに第2可動プラテン124Bを介して駆動源であるサーボモータ112Bが連結されている。ここで、接近・離反可能な方向は、図1では上下方向であり、1軸方向に制限されている。
【0027】
なお、第1被成形品102A、第2被成形品102Bはそれぞれ、例えば、半導体チップが搭載された基板(リードフレームを含む)などである。その圧縮封止される領域には半導体チップが搭載されており、圧縮封止される領域の外側には基板のみが存在する構成とされている。第1樹脂104A、第2樹脂104Bは、当該圧縮封止される領域を圧縮封止で充填するように所定の形状と重量で予備成形されている。第1離型フィルム106A、第2離型フィルム106Bは、短冊状に分離されており、伸縮可能である。第1離型フィルム106A、第2離型フィルム106Bにより、第1樹脂104A、第2樹脂104Bは、キャビティに配置される。そして、第1離型フィルム106A、第2離型フィルム106Bは、圧縮封止した際のキャビティからの剥離性向上とキャビティ汚れの防止とをすることができる。本実施形態では、第1被成形品102Aと第2被成形品102Bが同一とされていることから、第1樹脂104Aと第2樹脂104Bとを同一としている。しかし、これに限られるものはなく、第1被成形品と第2被成形品とが同一でなくてもよい。
【0028】
以下、詳細に構成を説明する。
【0029】
圧縮成形装置100は、図1に示す如く、本体フレーム110に2つの金型を設けている。2つの金型は、第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144B、の対で構成されている。
【0030】
第1上型130Aと第2下型144Bとは、本体フレーム110に設けられたリニアガイド機構122A、122Bに取付られた第1可動プラテン124A、第2可動プラテン124Bにそれぞれ、保持され移動可能とされている。第1可動プラテン124A、第2可動プラテン124Bはそれぞれ、ボールねじ120A、120Bで移動量が制御されている。そのボールねじ120A、120Bはそれぞれ、プーリ118A、118B−タイミングベルト116A、116B−プーリ114A、114Bを介して、本体フレーム110に固定されたサーボモータ112A、112Bで駆動される(上下直動型駆動)。
【0031】
一方、第1下型144Aと、第1下型144Aと隣接する第2上型130Bと、は、本体フレーム110に取付られた固定プラテン126に背合わせに取付られ固定されている。このため、固定プラテン126に取付られた第1下型144Aと第2上型130Bとに対して、第1上型130Aと第2下型144Bとがそれぞれ移動して同時に行われる型締めの際には固定プラテン126にかかる力が相殺されることとなる。
【0032】
次に、第1上型130Aと第1下型144Aの構成を説明する。なお、第2上型130Bと第2下型144Bの構成は、第1上型130Aと第1下型144Aの構成と同じなので、その説明は省略する。
【0033】
第1上型130Aは、図1に示す如く、断熱板132Aとヒータ134Aと第1上枠型136Aと上ばね138Aと第1上圧縮型140Aとを有する。断熱板132Aは、第1可動プラテン124Aに当接して配置され、第1上型130Aの温度が第1可動プラテン124Aに拡散することを防止している。ヒータ134Aは、第1上型130A全体を加熱し、所定の温度とするようにされている。第1上枠型136Aは、貫通孔を備えて第1下型144Aに対向している。第1上圧縮型140Aは、当該貫通孔に嵌合して配置され第1被成形品102Aを保持する。第1上枠型136Aは、上ばね138Aを介して第1上圧縮型140Aに取付られている。第1上枠型136Aは、第1上圧縮型140Aに第1被成形品102Aが保持された状態においても、第1被成形品102Aで制限されることなく、第1上圧縮型140Aに対して移動可能とされている。第1上枠型136Aと第1上圧縮型140Aとの嵌合する部分には図示せぬOリングなどの密閉部材が設けられている。また、第1上圧縮型140Aには図示せぬ、第1被成形品102Aを保持するための吸着機構や、減圧機構が設けられている。このため、第1上枠型136Aが第1下型144Aと第1離型フィルム106Aを介して当接した状態で、第1上枠型136Aが第1上圧縮型140Aに対して相対的に変位したとする。その際であっても、第1上型130Aと第1下型144Aとの間で密閉状態が構成され減圧可能とされている。
【0034】
第1下型144Aは、図1に示す如く、第1下枠型150Aと下ばね152Aと第1下圧縮型154Aと図示せぬヒータと図示せぬ断熱板とを有する。第1下枠型150Aは、第1上型130Aの第1上圧縮型140Aに保持される第1被成形品102Aの圧縮封止される領域の外側を第1上型130Aの第1上圧縮型140Aと把持(クランプ)する。また、第1下枠型150Aは貫通孔を備えている。第1下圧縮型154Aは、当該貫通孔に嵌合して配置されている。第1下枠型150Aは、下ばね152Aを介して第1下圧縮型154Aに取付られている。そのため、第1下枠型150Aは、第1下圧縮型154Aに対して移動可能とされている。第1下枠型150Aと第1下圧縮型154Aとの嵌合する部分には図示せぬOリングなどの密閉部材が設けられている。なお、第1下枠型150Aは、第1上枠型136Aにも対向している。このため、第1下枠型150Aが第1上枠型136Aと当接した状態で、第1下枠型150Aが第1下圧縮型154Aに対して相対的に変位しても第1下型144Aと第1上型130Aとの密閉が保たれている。ヒータは、第1下型144A全体を加熱し、所定の温度とするようにされている。断熱板132Aは、固定プラテン126に当接して配置され、第1下型144Aの温度が固定プラテン126に拡散することを防止している。なお、第1下型144Aには、第1離型フィルム106Aを吸着するための図示せぬ減圧機構が設けられている。
【0035】
固定プラテン126には、第1下枠駆動機構156Aが設けられている。第1下枠駆動機構156Aは、本体フレーム110に取付られたサーボモータ158Aにより駆動される。なお、上ばね138Aよりも下ばね152Aの力が大とされている。このため、第1下枠駆動機構156Aは、第1上枠型136Aと第1下枠型150Aとが当接した状態であっても、第1下枠型150Aの第1下圧縮型154Aに対する変位量を制御することができる。なお、第2下枠駆動機構156Bは、そのサーボモータ158Bと共に、第2可動プラテン124Bに取付られているが、その構成は第1下枠駆動機構156Aと同一であるので、その説明は省略する。
【0036】
次に、圧縮成形装置100の動作について、図2を用いて説明する。
【0037】
第1上型130A、第2上型130Bと第1下型144A、第2下型144Bとがそれぞれ離反された型開き状態において、第1離型フィルム106A、第2離型フィルム106Bが第1下型144A、第2下型144B上にそれぞれ配置されて吸着される。このとき、第1下枠駆動機構156A、第2下枠駆動機構156Bにより、第1下枠型150A、第2下枠型150Bの上面と第1下圧縮型154A、第2下圧縮型154Bの上面の位置がそれぞれ同一とされている。また、この状態では、第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144Bはそれぞれ圧縮封止する際の一定の温度(例えば175度)とされている(図2(A))。
【0038】
次に、図示せぬ搬送機構により、第1上圧縮型140A、第2上圧縮型140Bにそれぞれ第1被成形品102A、第2被成形品102Bを保持させる(図2(B))。なお、第1被成形品102A、第2被成形品102Bの吸着による保持は同時でなくてもよい。
【0039】
次に、図示せぬ樹脂搬送機構により、第1離型フィルム106A、第2離型フィルム106B上に、第1樹脂104A、第2樹脂104Bをそれぞれ搭載する(図2(C))。この第1樹脂104A、第2樹脂104Bの搭載は、樹脂が硬化するまでの時間を合わせるために、可能な限り同時に行う。
【0040】
次に、第1下枠駆動機構156Aにより、第1下枠型150Aを上昇させる。そして、第1可動プラテン124Aを下方に移動させて、第1上型130Aを第1下型144Aに接近させていく。すると、第1上枠型136Aと第1下枠型150Aとが第1離型フィルム106Aを介して当接して、第1離型フィルム106Aが固定される。同時に、第1上型130Aと第1下型144Aとで密閉状態が構成される。更に、第1上型130Aと第1下型144Aとを接近させ、第1上圧縮型140Aと第1下枠型150Aとで第1被成形品102Aを把持(クランプ)する。このため、第1被成形品102Aがしっかり固定される。なお、第1上型130Aと第1下型144Aとの間において減圧が行われる。
【0041】
同時に、第2下枠駆動機構156Bにより、第2下枠型150Bを上昇させる。そして、第2可動プラテン124Bを第1可動プラテン124Aと同期させて、上方に移動させて第2下型144Bを第2上型130Bに接近させていく。すると、第2上枠型136Bと第2下枠型150Bとが第2離型フィルム106Bを介して当接して、第2離型フィルム106Bが固定される。同時に、第2上型130Bと第2下型144Bとで密閉状態が構成される。更に、第2上型130Bと第2下型144Bとを接近させ、第2上圧縮型140Bと第2下枠型150Bとで第2被成形品102Bを把持(クランプ)する。このため、第2被成形品102Bがしっかり固定される。なお、第2上型130Bと第2下型144Bとの間において減圧が行われる(図2(D))。
【0042】
次に、第1可動プラテン124Aを更に下方に移動させて第1上型130Aを第1下型144Aに接近させていく。又、第2可動プラテン124Bを第1可動プラテン124Aと同期させ、更に上方に移動させて第2下型144Bを第2下型130Bに接近させていく。このとき、第1下枠駆動機構156A、第2下枠駆動機構156Bそれぞれで第1下枠型150A、第2下枠型150Bの変位量を制御する。そして、第1上型130Aと第1下型144Aとの間にかかる圧力と、第2上型130Bと第2下型144Bとの間にかかる圧力とを、同一に保ちながら上下方向(1軸方向)から圧縮封止し、型締めを完了させる(図2(E))。即ち、当該変位量を制御しながら、第1上型130Aと第1下型144Aとの間に形成されたキャビティと第2上型130Bと第2下型144Bとの間に形成されたキャビティとで、同時に圧縮封止がなされる。ここで、第1可動プラテン124Aの移動方向と第2可動プラテン124Bの移動方向は互いに逆であり、圧力が等しい。このため、圧縮封止工程において、固定プラテン126にかかる力が相殺される。
【0043】
次に、第1可動プラテン124A、第2可動プラテン124Bを固定プラテン126から離反させる(図2(F))。そして、第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144B、それぞれの型開きをし、圧縮封止された第1被成形品102A、第2被成形品102B(単に成形品と称する)が、図示せぬ搬送装置にて取り出される。このとき、第1下枠駆動機構156Aにより、第1下枠型150Aの表面を第1下圧縮型154Aの表面と同じ高さにする。このため、成形品が取り出しやすくなり、かつ次の圧縮封止が容易となる。第2下枠駆動機構156Bも同じ動作を行う。
【0044】
このように、本実施形態においては、第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144Bを、接近・離反可能な方向(上下方向)に配置することで、キャビティを接近・離反可能な方向(上下方向)において直列に複数設けている。即ち、複数のキャビティが横並び(並列)ではなく、接近・離反可能な方向(上下方向)に直列に重なる態様となる。このため、第1上型130Aと第1下型144A、第2上型130Bと第2下型144B、それぞれの大きさを大きくすることなく、各キャビティで圧縮封止をすることができる。同時に、キャビティを並列としないので、等圧機構を不要としながら封止品質を保つことができる。即ち、占有面積を増大させずに装置を複雑にすることなく、生産性を向上させることができる。
【0045】
また、2つのキャビティにおける圧縮封止は、接近・離反可能な方向(上下方向)のいわば1軸上で独立に行われる。このため、1つのキャビティにおいて樹脂量変動に伴う圧縮封止不良が生じても、該圧縮封止不良が他のキャビティの圧縮封止に悪影響を及ぼすことを回避することができる。
【0046】
また、上型として第1上型130Aと第2上型130B、下型として第1下型144Aと第2下型144Bをそれぞれ有すると共に、第1上型130Aと第1下型144Aとの対、及び、第1下型144Aの下側に隣接して配置された前記第2上型130Bと第2下型144Bとの対によって2つのキャビティを形成し、第1上型130Aと第2下型144Bとが接近・離反可能な方向(上下方向)において移動可能とされ、且つ、第1下型144Aと第2上型130Bとが固定されている。このため、第1下型144Aと第2上型130Bとを、第1被成形品102A、第2被成形品102Bの圧縮封止のための基準とすることができる。即ち、2つのキャビティでは、可動部に関る誤差を互いに加算しないので、寸法精度の高い圧縮封止をすることができる。同時に、第1下型144Aと第2上型130Bとを固定している固定プラテン126では、2つのキャビティで圧縮封止の際にかけられる圧力が互いに反対方向で相殺される関係となる。このため、固定プラテン126には、1つのキャビティのみを備える圧縮成形装置の固定プラテンほどの剛性を必要としない。更には、キャビティを構成する第1上型130A(第2下型144B)のみが制御対象である。即ち、その制御は固定された第1下型(第2上型)を同時に動かす場合に比べて、容易に行うことができる。即ち、生産性を向上させながら、圧縮成形装置100の軽量化・簡易化若しくは長寿命化させることができる。
【0047】
また、第1下型144Aが、第1上型130Aに保持される第1被成形品102Aの圧縮封止される領域の外側を第1上型130Aと把持(クランプ)すると共に貫通孔を備えた第1下枠型150Aと、該貫通孔に嵌合して配置される第1下圧縮型154Aと、を備えている。そして、第1下枠型150Aが第1下圧縮型154Aに対して相対的に変位しても第1上型130Aとの密封が保たれている。このため、第1被成形品102Aが圧縮封止される前に第1被成形品102Aの位置が把持(クランプ)により固定可能となる。即ち、第1被成形品102Aの圧縮封止される領域の位置ずれに伴う圧縮封止不良を回避できる。そして、圧縮封止する際に第1下圧縮型154Aの位置が調整可能となることで、たとえ特定のキャビティにおいて樹脂量変動が生じていてもそのキャビティでの圧縮封止不良の発生を低減することができる。同時に、密封が保たれることで、第1樹脂104Aのキャビティからの漏れを防止することができる。なお、これらの効果は本実施形態の第2下型144Bについても同様である。
【0048】
また、第1上型130Aが、貫通孔を備えて第1下枠型150Aに対向する第1上枠型136Aと、該貫通孔に嵌合して配置され第1被成形品102Aを保持する第1上圧縮型140Aと、を備えている。そして、第1上枠型136Aが、第1上圧縮型140Aに対して相対的に変位しても、第1下型144Aとの間で減圧可能とされている。このため、第1下枠型150Aと第1上枠型136Aとが接触した段階で密封状態を作ることができ、早い段階で第1上型130Aと第1下型144Aとの間で減圧状態とすることができる。つまり、圧縮封止する際に、第1樹脂104Aの第1被成形品102Aへの充填を速く且つ十分に行うことができる。即ち、圧縮封止工程を短縮して、更に圧縮封止不良を低減することができる。なお、これらの効果は本実施形態の第2上型130Bについても同様である。
【0049】
また、更に、第1下枠型150Aの第1下圧縮型154Aに対する変位量を制御する第1下枠駆動機構156Aと、第2下枠型150Bの第2下圧縮型154Bに対する変位量を制御する第2下枠駆動機構156Bと、を備え、2つの変位量を制御しながら2つのキャビティで同時に圧縮封止される。このため、キャビティ毎の圧縮封止品質のばらつきを低減できるので、圧縮封止品質の向上を図ることができる。
【0050】
また、キャビティに配置される第1樹脂104A、第2樹脂104Bはそれぞれ、所定の形状と重量で予備成形されているので、圧縮封止に用いる樹脂量の変動を少なくできる。同時に、樹脂の扱いが容易で、且つその管理も容易となる。
【0051】
また、第1樹脂104A、第2樹脂104Bは、短冊状に分離された第1離型フィルム106A、第2離型フィルム106Bでキャビティにそれぞれ配置される。このため、第1樹脂104A、第2樹脂104Bの搬送手段の配置を自在とすることができる。また、第1離型フィルム106A、第2離型フィルム106Bそれぞれの余分な部分を極力低減できるので、第1離型フィルム106A、第2離型フィルム106Bを有効活用することができる。
【0052】
即ち、圧縮成形装置100の占有面積の増大を最小限にすると共に複雑にすることなく、生産性を向上させることができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、必ずしも2つのキャビティを使用する必要はなく、適宜いずれかのキャビティのみを使用することもできる。
【0054】
本実施形態においては、第1可動プラテン124A、第2可動プラテン124Bそれぞれをリニアガイド機構122Aで支持し、ボールねじ120A、120Bとサーボモータ112A、112Bとの組み合わせで移動させていた(上下直動型駆動)。このため、本実施形態では、第1可動プラテン124A、第2可動プラテン124Bの高精度な移動が実現でき、高い成形品の形状再現性を実現している。しかし、本発明はこれに限定されない。そして、本実施形態においては、第1下枠駆動機構156A、第2下枠駆動機構156Bがそれぞれ設けられていたが、本発明はこれに限定されない。ボールねじとリニアガイド機構とを用いずに、例えば図3に示す第2実施形態の如く、トグルリンク機構222A、222Bを用いてもよい(上下トグルリンク型駆動)。その際、第1可動プラテン224A、第2可動プラテン224Bは、そのガイド部225A、225Bでタイバー210にそれぞれ移動可能に支持されている。この場合には、第1可動プラテン224A、第2可動プラテン224Bの移動を速くでき、且つその距離も大きく取れるので、圧縮封止工程にかかる時間を短縮することができる。また、下枠駆動機構を用いていないので、第1実施形態に比べて、構成を簡略化でき、低コスト化することができる。なお、図3において、その他の構成は第1実施形態と同じなので、符号の下3桁を同一にして、説明を省略する。
【0055】
また、第1実施形態においては、上型として第1上型130Aと第2上型130B、下型として第1下型144Aと第2下型144Bをそれぞれ有すると共に、第1上型130Aと第1下型144Aとの対、及び、第1下型144Aの下側に隣接して配置された第2上型130Bと第2下型144Bとの対によって2つのキャビティを形成し、第1上型130Aと第2下型144Bとが接近・離反可能な方向(上下方向)において移動可能とされ、且つ、第1下型144Aと第2上型130Bとが固定されていた。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、第1上型が固定され、且つ、第2下型に可動プラテンを介して駆動源が連結され、第2下型が第2上型を直接的に押圧することにより第2上型と第1下型とが一体で第1下型と第2上型と第2下型が接近・離反可能な方向において移動可能とされていてもよい。図4に示す第3実施形態により、具体的に説明する。
【0056】
本実施形態に係る圧縮成形装置300では、図4に示す如く、第1上型330Aが固定プラテン326に取付られ固定されている。そして、第1下型344Aと第2上型330Bとが第1可動プラテン324Aに一体で取付られ、第2下型344Bが第2可動プラテン324Bに取付られている。ここで、第1可動プラテン324A周辺の構成は上記実施形態と異なるので以下に説明し、それ以外の構成については、符号の下3桁を同一にして説明を省略する。なお、図5に、第2下型344B部分の上面図を示す。
【0057】
第1可動プラテン324Aは、そのガイド部325Aを介して、タイバー320によって移動可能に支持されている。第1可動プラテン324Aには駆動源が連結されていないものの、所定の位置より第1可動プラテン324Aが下方へ移動しないようにするためのストッパ328が設けられている。ストッパ328により、第2上型330Aと第2下型344Bとにおける型開きが可能とされている。
【0058】
第1可動プラテン324Aの第1上型側には、第1下型344Aが設けられている。第1下型344Aは、上圧縮型340Aに保持される第1被成形品302Aの圧縮封止される領域の外側を第1上型330Aと把持(クランプ)すると共に貫通孔を備えた第1下枠型350Aと、該貫通孔に嵌合して配置される第1下圧縮型354Aと、を備えている。そのうちの第1下圧縮型352Aが第1可動プラテン324Aに取付られている。
【0059】
一方、第1可動プラテン324Aの第2下型側には、第2上型330Bが設けられている。第2上型330Bは、貫通孔を備えて第2下枠型350Bに対向する第2上枠型336Bと、該貫通孔に嵌合して配置され第2被成形品302Bを保持する第2上圧縮型340Bと、を備えている。そのうちの第2上圧縮型340Bが第1可動プラテン324Aに取付られている。第2上型330Bの中には中ヒータ348Aが設けられ、第1下型344Aと第2上型330Bとが同時に同じ温度(例えば175度)に保たれている。第1下枠型350Aと第2上枠型336Bとは直接的に中ばね352Aで連結されている。そして、第1下枠型350Aは、所定の範囲で第1下圧縮型354Aに対して移動可能とされている(第2上枠型336Bも第2上圧縮型340Bに対して同様)。なお、第1可動プラテン324Aには、下枠駆動機構は設けられていない。また、上ばね338Aの力<中ばね352Aの力≦下ばね352Bの力の関係である。このため、上ばね338A、中ばね352A、下ばね352Bがいずれも縮んだ状態となっても、第2下枠駆動機構356Bで第2下枠型350Bの第2下圧縮型354Bに対する変位量は制御されることとなる。
【0060】
次に、圧縮成形装置300の動作について、図6を用いて説明する。
【0061】
第1上型330A、第2上型330Bと第1下型344A、第2下型344Bとがそれぞれ離反された型開き状態において、第1離型フィルム306A、第2離型フィルム306Bが第1下型344A、第2下型344B上にそれぞれ配置・吸着されている。なお、このとき、第2下枠型350Bの上面は第2下圧縮型354Bの上面の上方に位置されている。また、この状態では、第1上型330A、第1下型344Aと第2上型330B、第2下型344Bはそれぞれ圧縮封止する際の一定の温度(例えば175度)とされている。
【0062】
次に、図示せぬ搬送機構により、第1上圧縮型340A、第2上圧縮型340Bに第1被成形品302A、第2被成形品302Bをそれぞれ保持させる。なお、第1被成形品302A、第2被成形品302Bの吸着による保持は同時でなくてもよい。
【0063】
次に、図示せぬ樹脂搬送機構により、第1離型フィルム306A、第2離型フィルム306B上に、第1樹脂304A、第2樹脂304Bを搭載する(図6(A))。この第1樹脂304A、第2樹脂304Bの搭載は、樹脂が硬化するまでの時間を合わせるために、可能な限り同時に行う。
【0064】
次に、図示せぬ駆動源に連結された第2可動プラテン324Bを該駆動源により上方に移動させて、第2下型344Bを第2上型330Bに接近させていく。すると、第2上枠型336Bと第2下枠型350Bとが第2離型フィルム306Bを介して当接して、第2離型フィルム306Bが固定される。そして、第2上型330Bと第2下型344Bとで密閉状態が構成される。同時に、中ばね352Aを介して、第2下枠型350Bが第1下枠型350Aを押し上げる。その後、第2下枠型350Bが、第2被成形品302Bと当接して、第2上圧縮型340Bと第2被成形品302Bを把持(クランプ)する。このため、第2被成形品302Bがしっかり固定される。同時に、第1可動プラテン324Aを上方に移動開始させる(図6(B);直接的な押圧)。
【0065】
次に、第2可動プラテン324B、第1可動プラテン324Aの移動に伴い、第1下枠型350Aが第1離型フィルム306Aを介して、第1上枠型336Aと当接する(図6(C))。すると、第1離型フィルム306Aが固定されて、第1上型330Aと第1下型344Aとで密閉状態が構成される。
【0066】
次に、第1下枠型350Aが、第1被成形品302Aと当接して、第1上圧縮型340Aと第1被成形品302Aを把持(クランプ)する(図6(D))。そのため、第1被成形品302Aがしっかり固定される。なお、第1上型330Aと第1下型344A、第2上型330Bと第2下型344Bの間において減圧が行われる。
【0067】
次に、第2下枠駆動機構356Bにより、第1下枠型350Aと第2下枠型350Bの変位量を制御する。即ち、第1被成形品302Aと第1樹脂304Aとの距離と第2被成形品302Bと第2樹脂304Bとの距離が同じになるようにする。そして、第2可動プラテン324Bの移動を続けて、2つのキャビティの型締めを同時に完了させる(図6(E))。即ち、当該変位量を制御しながら第1上型330Aと第1下型344Aとの間に形成されたキャビティと第2上型330Bと第2下型344Bとの間に形成されたキャビティとで、同時に上下方向(1軸方向)から圧縮封止がなされる。
【0068】
次に、第2可動プラテン324Bを固定プラテン326から離反させる。すると、第1可動プラテン324Aも固定プラテン326から離反するが、ストッパ328で、その移動が停止される。そして、第2上型330Bと第2下型344Bとが離反する(図6(F))。そして、圧縮封止された第1被成形品302A、第2被成形品302B(単に成形品と称する)は、図示せぬ搬送装置にて取り出される。
【0069】
このように、本実施形態では、第1可動プラテン324Aは、駆動源を持たず、ヒータ、ばね、下枠駆動機構はそれぞれ、中ヒータ348A、中ばね352B、第2下枠駆動機構356B、のみを有する。即ち、上記実施形態よりも部品点数が少なく、低コスト化が可能である。加えて、駆動源が1つでありながら圧縮封止のためのプレス力を、1つのキャビティの場合と同一とすることができ、且つ、2つのキャビティに均等にかけることができる。そして、仮に第1可動プラテンに駆動源を連結した場合と比べれば、駆動源が少ない分、構成部品の点数を低減できるので小型とすることができる。同時に、特にその制御の複雑化を回避できるので、低コスト化を実現することができる。即ち、生産性を向上させながら、プレス力を増大させることがない(上記実施形態よりもプレス力が小さい)ので、プレス力増大のための圧縮成形装置300の大型化を回避することができる。
【0070】
また、本実施形態では、第1可動プラテン324Aが固定プラテン326を支える4つのタイバー320で、ガイド部325Aを介して支持されている。即ち、第1上型330Aと第1下型344Aとの平行度、及び第2上型330Bと第2下型344Bとの平行度が機械的に維持されている。このため、前記2つの平行度を計測・調整するための位置センサなどが不要である。そして、タイバー320が、第1下型344Aと第2上型330Bと第2下型344Bとに(接近・離反可能な方向において移動可能とされている全ての金型部に)兼用されているので、別々にタイバーを設けるよりも装置の大型化を回避することができる。また、タイバー320の大径化を図ることでタイバー320の高剛性化がなされ、第1下型344Aと第2上型330Bと第2下型344Bを更に高精度に移動させることが可能となる。
【0071】
本実施形態においては、第1上型330Aが固定プラテン326に取付られ固定されていたが、本発明はこれに限定されず、第2下型が固定プラテンに取付られ固定されて、第1上型が接近・離反可能な方向において移動可能とされていてもよい。
【0072】
本発明について上記実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0073】
例えば、上記実施形態においては、第1下型と第2上型とが一体とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7に示す第4実施形態の如くであってもよい。それは、第1上型430Aと第2下型444Bとがそれぞれ別の固定プラテン426A、426Bに取付られ固定されている。同時に、第1下型444Aと第2上型430Bとがそれぞれ第1可動プラテン424A、第2可動プラテン424Bに取付られ接近・離反可能な方向において互いと反対方向に移動可能とされている。その際に、例えばトグルリンク機構422を使うことで、キャビティとキャビティとの間に配置される第1下型444Aと第2上型430Bの移動に互いの反力を使うことができる。このため、第3実施形態で示したように、生産性を向上させながら、プレス力を増大させないようにすることができる。即ち、第1実施形態、第2実施形態とプレス力は同じであるが、駆動源を1つにできるので、プレス力増大のための圧縮成形装置400の大型化を回避することができる。同時に、第1実施形態で示したように、2つのキャビティでは可動部に関る誤差を互いに加算しないので、寸法精度の高い圧縮封止をすることもできる。
【0074】
また、上記実施形態では、2つの金型による2つのキャビティで、圧縮封止が行われていたが、本発明はこれに限定されずに、3つ以上の金型を用いてもよい。その際には、固定プラテンを複数設けてもよく、その組み合わせに特に制限はない。
【0075】
また、上記実施形態においては、第1下型、第2下型がそれぞれ、第1上型、第2上型に保持される第1被成形品、第2被成形品の圧縮封止される領域の外側を第1上型、第2上型と把持すると共に貫通孔を備えた第1下枠型、第2下枠型と、該貫通孔に嵌合して配置される第1下圧縮型、第2下圧縮型と、を備えていた。そして、第1下枠型、第2下枠型が第1下圧縮型、第2下圧縮型に対して相対的に変位しても第1上型、第2上型との密封がそれぞれ保たれていたが、本発明はこの構成に限定されない。
【0076】
また、上記実施形態においては、第1上型、第2上型がそれぞれ、貫通孔を備えて第1下枠型、第2下枠型に対向する第1上枠型、第2上枠型と、該貫通孔に嵌合して配置され第1被成形品、第2被成形品を保持する第1上圧縮型、第2上圧縮型と、を備えていた。そして、第1上枠型、第2上枠型がそれぞれ第1上圧縮型、第2上圧縮型に対して相対的に変位しても第1下型、第2下型との間で減圧可能とされていたが、本発明はこの構成に限定されない。
【0077】
また、上記実施形態においては、キャビティに配置される第1樹脂、第2樹脂はそれぞれ、所定の形状と重量で予備成形されていたが、本発明はこれに限定されずに、粉状、粒状の樹脂でもよいし、液状の樹脂であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、第1樹脂、第2樹脂はそれぞれ、短冊状に分離された第1離型フィルム、第2離型フィルムでキャビティに配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1樹脂、第2樹脂はそれぞれ、連続した第1離型フィルム、第2離型フィルムでキャビティに配置されてもよい。その場合には、第1樹脂、第2樹脂をキャビティに搬送するのが容易となり、且つ使用した第1離型フィルム、第2離型フィルムの回収も容易となる。或いは、一方が短冊状に分離された状態、もう一方が連続した状態でもよいし、第1樹脂、第2樹脂の予備成形の際に用いた第1離型フィルム、第2離型フィルムを、短冊状若しくは連続した状態で、そのまま用いてもよい(即ち、第1樹脂、第2樹脂が第1離型フィルム、第2離型フィルムに貼り付いた状態で用いることとなる)。或いは、第1下型、第2下型が吸着機構を持たず、第1離型フィルム、第2離型フィルムそれぞれを用いなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の圧縮成形装置は、例えば半導体チップが搭載された基板(リードフレームを含む)等の被成形品を樹脂にて圧縮封止する用途などに用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
100、200、300、400…圧縮成形装置
102A、202A、302A…第1被成形品
102B、202B、302B…第2被成形品
104A、204A、304A…第1樹脂
104B、204B、304B…第2樹脂
106A、206A、306A…第1離型フィルム
106B、206B、306B…第2離型フィルム
110…本体フレーム
112A、112B、158A、158B、212A、212B…サーボモータ
114A、114B、118A、118B、214A、214B、218A、218B…プーリ
116A、116B、216A、216B…タイミングベルト
120A、120B…ボールねじ
122A、122B…リニアガイド機構
124A、224A、324A、424A…第1可動プラテン
124B、224B、324B、424B…第2可動プラテン
126、226、326、426A、426B…固定プラテン
130A、230A、330A、430A…第1上型
130B、230B、330B、430B…第2上型
132A、132B、332A、346B…断熱板
134A、134B、334A、348A、348B…ヒータ
136A、336A、444A…第1上枠型
136B、336B、444B…第2上枠型
138A、138B、338A、338B…上ばね
140A、340A…第1上圧縮型
140B、340B…第2上圧縮型
144A、244A、344A、444A…第1下型
144B、244B、344B、444B…第2下型
150A、350A…第1下枠型
150B、350B…第2下枠型
152A、152B、352B…下ばね
154A、354A…第1下圧縮型
154B、354B…第2下圧縮型
156A…第1下枠駆動機構
156B、356B…第2下枠駆動機構
210、320、410…タイバー
222A、222B、422…トグルリンク機構
225A、325A…ガイド部
352A…中間ばね
328…ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に接近・離反可能な上型と下型とを有し、対をなした該上型と下型との間に形成されるキャビティに配置される被成形品を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形装置において、
前記上型と下型とが前記接近・離反可能な方向に複数対配置されることで、前記キャビティが該接近・離反可能な方向において直列に複数設けられ、
多くとも該キャビティ毎の前記上型と下型のうちのいずれか一方のみに、該一方を前記接近・離反可能な方向に移動させる駆動源が連結されている
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記キャビティを夫々構成している2以上の前記上型または下型が、1個の前記駆動源によって駆動される
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記上型として第1上型と第2上型、前記下型として第1下型と第2下型をそれぞれ有すると共に、該第1上型と第1下型との対、及び、該第1下型の下側に隣接して配置された前記第2上型と第2下型との対によって2つの前記キャビティを形成し、
該第1上型と第2下型のうちの一方が固定され、且つ、該第1上型と第2下型のうちの他方に前記駆動源が連結され、該他方が前記第1下型または前記第2上型を直接的に押圧することにより該第1下型と第2上型とが一体で前記接近・離反可能な方向において移動可能とされている
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記上型として第1上型と第2上型、前記下型として第1下型と第2下型をそれぞれ有すると共に、該第1上型と第1下型との対、及び、該第1下型の下側に隣接して配置された前記第2上型と第2下型との対によって2つの前記キャビティを形成し、
該第1上型と第2下型とが固定され、且つ、該第1下型と第2上型とが前記接近・離反可能な方向において互いと反対方向に移動可能とされている
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記接近・離反可能な方向において前記第1上型と第1下型と第2上型と第2下型のうちの2以上を移動可能に支持するタイバーは全て兼用とされている
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記上型として第1上型と第2上型、前記下型として第1下型と第2下型をそれぞれ有すると共に、該第1上型と第1下型との対、及び、該第1下型の下側に隣接して配置された前記第2上型と第2下型との対によって2つの前記キャビティを形成し、
該第1上型と第2下型とが前記接近・離反可能な方向において移動可能とされ、且つ、該第1下型と第2上型とが固定されている
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記下型が、前記上型に保持される前記被成形品の圧縮封止される領域の外側を該上型と把持すると共に貫通孔を備えた下枠型と、該貫通孔に嵌合して配置される下圧縮型と、を備え、
該下枠型が該下圧縮型に対して相対的に変位しても前記上型との密封が保たれる
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記上型が、貫通孔を備えて前記下枠型に対向する上枠型と、該貫通孔に嵌合して配置され前記被成形品を保持する上圧縮型と、を備え、
該上枠型が該上圧縮型に対して相対的に変位しても前記下型との間で減圧可能とされている
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、更に、
前記下枠型の下圧縮型に対する変位量を制御する下枠駆動機構を備え、
該変位量を制御しながら前記複数設けられるキャビティで同時に圧縮封止される
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記キャビティに配置される樹脂は、所定の形状と重量で予備成形されている
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記樹脂は、連続した離型フィルムで前記キャビティに配置される
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記樹脂は、短冊状に分離された離型フィルムで前記キャビティに配置される
ことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項13】
相対的に接近・離反可能な上型と下型とを有し、対をなした該上型と下型との間に形成されるキャビティに配置される被成形品を樹脂にて圧縮封止する圧縮成形方法において、
前記上型と下型とが前記接近・離反可能な方向に複数対配置されることで、該接近・離反可能な方向において直列に設けられている複数の前記キャビティに対し、多くとも該キャビティ毎の前記上型と下型のうちのいずれか一方のみに駆動源を連結させて1軸方向から圧縮封止する工程を含む
ことを特徴とする圧縮成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−224911(P2011−224911A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98315(P2010−98315)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】