説明

圧電ポンプ、冷却装置及び電子機器

【課題】
吐出量を適切に制御可能な圧電ポンプ、冷却装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】
環境温度が変化するなどして圧電素子37の固有振動数が変化しても、冷却装置16の気体の吐出量に応じた信号をフローセンサ140により検出し、検出した信号に応じた電圧Vに基づき、吐出量が最大となる所定の駆動周波数fを検出し、この駆動周波数fに駆動制御回路35Aの発振周波数を設定することで、圧電素子37の駆動電圧を制御することができるので、吐出孔33からの気体の吐出量を最大に制御することができる。駆動制御回路35Aは、フローセンサ140の信号に基づき吐出量が最大となるように可変コンデンサ79の容量を制御することができるので、圧電素子37の固有振動数に駆動周波数を制御し、吐出量を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯型ビデオカメラなどの携帯型電子機器に搭載されたハードディスクドライブなどを冷却するために用いられる圧電ポンプ、冷却装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型電子機器に搭載された電子部品を冷却するための技術として、例えば気体を噴出するためのノズルを有するチャンバ内で圧電体を用いた振動板を振動させ、ノズルから冷却のための気体を噴出させる「噴流発生装置」が開示されている(特許文献1)。
【0003】
圧電体を用いた冷却装置は、個々に固有振動数が異なり、吐出量、吸引量を最大にするためには、圧電体の駆動電圧を最適な値に制御したり、固有振動数に圧電体の駆動周波数を一致させたりする必要がある。従来では、製造ラインにおいて、冷却装置の固有振動数に駆動周波数を一致するように調整した後、その値を固定値として用いていた。
【特許文献1】特開2006−297295号公報(段落[0029]〜[0031]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷却装置には、圧電体の温度変化により固有振動数が変化する特性がある。そのため、従来のように駆動周波数が一定の場合には、環境温度の変化に伴い、冷却装置の吐出量、吸引量が低下してしまう、という問題がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、吐出量を適切に制御可能な圧電ポンプ、冷却装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本発明に係る圧電ポンプは、外部から流体を内部に導入し、かつ、内部から流体を噴出するための孔と、前記孔に対向するように配置された壁部と、前記壁部を振動させるために前記壁部に設けられた圧電体とを有するポンプ本体と、前記圧電体を駆動する駆動部と、前記孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出する検出手段と、前記信号に基づき前記駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御する制御部とを具備する。
【0007】
本発明では、圧電体の固有振動数が変化しても、孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出手段により検出し、信号に基づき駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御することができるので、孔からの流体の吐出量を適切な量(最大)に制御することができる。
【0008】
前記駆動部は、前記圧電体を挟むように配置された一対の電極と、前記制御部に接続された一次巻き線と前記各電極に両端が接続された二次巻き線とを有するトランスと、前記二次巻き線に対して並列に接続された電子式可変リアクタンス素子とを有し、前記制御部は、前記信号に基づき前記吐出量が最大となるように前記電子式可変リアクタンス素子のリアクタンスを可変し前記駆動周波数を制御する手段とを有する。
【0009】
これにより、吐出量に応じた信号に基づき電子式可変リアクタンス素子のリアクタンスを可変し、吐出量が最大となるようにすることができる。
【0010】
前記制御部は、前記一次巻き線に供給する交流電流を生成する交流発振器と、前記交流発振器の発振周波数を線形に可変しリセットすることを所定の周期で繰り返すように制御する手段とをさらに有し、前記検出手段は、前記周期に同期して基準電圧を可変する手段と、前記基準電圧と、前記信号に基づく電圧とを比較する手段と、前記比較手段の比較結果に基づき、前記吐出量が最大となる前記交流発振器の所定の発振周波数を検出する手段とを有し、前記検出された所定の発振周波数に前記交流発振器の発振周波数を設定することで前記駆動部の駆動電圧を制御する。
【0011】
これにより、発振周波数を線形に可変しリセットすることを所定の周期で繰り返し、周期に同期して基準電圧を可変し、基準電圧と信号に基づく電圧とを比較し、比較結果に基づき、吐出量が最大となる交流発振器の所定の駆動周波数を検出し、この所定の発振周波数に交流発振器の発振周波数を設定することで駆動部の駆動電圧を制御することができる。
【0012】
前記検出手段は、前記孔からの流体の吐出量を検出する吐出量検出部を有する。これにより、吐出量検出部により吐出量を検出し、検出値に応じた信号に基づき、駆動電圧及び駆動周波数を制御することができる。
【0013】
前記検出手段は、前記吐出量に応じた音を検出する音検出部を有する。これにより、音検出部により音を検出し、検出値に応じた信号に基づき、駆動電圧及び駆動周波数を制御することができる。
【0014】
前記制御部は、前記圧電体の駆動時と駆動停止時に前記検出手段で検出された前記信号に基づき外乱を検出する手段を有する。これにより、外乱があるか否かを判断し、 吐出量を正確に制御することができる。
【0015】
本発明に係る他の圧電ポンプは、外部から流体を内部に導入し、かつ、内部から流体を噴出するための孔と、前記孔に対向するように配置された壁部と、前記壁部を振動させるために前記壁部に設けられた圧電体とを有するポンプ本体と、前記圧電体を駆動する駆動部と、前記孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出する検出手段と、前記信号に基づき前記駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御する制御部とを具備する圧電ポンプが複数並列に接続されている。
【0016】
本発明では、冷却したい対称物がある位置に対応した圧電ポンプの固有振動数に圧電体の駆動周波数を合わせることで、冷却したい対象物を選択的かつ効率的に冷却することができる。
【0017】
本発明に係る冷却装置は、外部から流体を内部に導入し、かつ、内部から流体を噴出するための孔と、前記孔に対向するように配置された壁部と、前記壁部を振動させるために前記壁部に設けられた圧電体とを有するポンプ本体と、前記圧電体を駆動する駆動部と、前記孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出する検出手段と、前記信号に基づき前記駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御する制御部とを具備する。
【0018】
本発明に係る電子機器は、外部から流体を内部に導入し、かつ、内部から流体を噴出するための孔と、前記孔に対向するように配置された壁部と、前記壁部を振動させるために前記壁部に設けられた圧電体とを有するポンプ本体と、前記圧電体を駆動する駆動部と、前記孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出する検出手段と、前記信号に基づき前記駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御する制御部とを具備する圧電ポンプと、前記圧電ポンプから噴出された流体に基づいて冷却される電子部品とを具備する。
【0019】
圧電ポンプは、前記電子機器のスピーカとして兼用される。これにより、電圧印加用配線と電極との接続の信頼性に優れたスピーカを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、吐出量を適切に制御可能な圧電ポンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る携帯型電子機器の構成を示す要部分解斜視図、図2はその携帯型電子機器のマイクロフォン及びレンズを含めた断面図、図3はその電子機器の外観図である。ここでは、携帯型電子機器として、携帯型ビデオカメラを例に取っているが、携帯電話やその他の電子機器であっても勿論構わない。
【0022】
これらの図に示すように、携帯型ビデオカメラ1では、撮像した被写体映像はカメラ本体2の筐体3内に搭載されたHDDユニット5によってビデオ記録・再生などが行われる。
【0023】
携帯型ビデオカメラ1は、図3に示すように、カメラ部のレンズ4、撮像時の集音用のマイクロフォン6、カメラ本体2に回転可能に枢着されたモニタ兼ファインダとなるLCDなどの表示部7、接眼部8、操作釦群9を備え、筐体3の底部10には冷却装置16が配置されている。
【0024】
HDDユニット5のケーシング5aは、表側(図1では裏側)がアルミダイカスト等で鋳造した金属部であり、裏側(図1では表側)は駆動用プリント基板で構成されているものが多いので表側の金属部分を下側にして熱伝導シート21aを介して、熱伝導率の高い、例えば銅等の金属から成る熱伝達部20に接合される。
【0025】
熱伝達部20は帯状銅板の両端を互に反対方向に折り曲げた形状とし、一方の折曲片20aに熱伝達シート21aを接合し、HDDユニット5に固定する。他方の折曲片20bにも、熱伝達シート21bを接合し、熱伝導シート21bを密閉ケーシング19の上面に接合して、図2に示すようにHDDユニット5を密閉ケーシング19上に固定させる。
【0026】
密閉ケーシング19及び冷却装置16はビス23を介して筐体3の底部10に固定される。従って、HDDユニット5で高温度に温められた熱は熱伝達部20に伝達され、この熱が冷却装置16により冷却される。
【0027】
図4は冷却装置16の斜視図である。
図4に示すように、冷却装置16は、圧電ポンプ本体31と、圧電ポンプ本体31に一体的に接続された駆動回路基板32と、フローセンサ(吐出量センサ、流速センサ)140とを備えている。
【0028】
圧電ポンプ本体31は、ほぼ中央に気体を噴出するための吐出孔33が形成されている。圧電ポンプ本体31の四隅には、気体の通路となる孔34が形成されている。
【0029】
フローセンサ140は、吐出口33から吐出された気体の吐出流量(流速)を検出するために用いられる。フローセンサ140は、圧電ポンプ本体31の上面の吐出口33の近くに突設するように設けられている。フローセンサ140については、後述するように従来のフローセンサと同様の構成のものを用いることができる。
【0030】
駆動回路基板32上には、圧電ポンプ本体31を駆動するための駆動回路の一部を構成するマイクロトランス35などが実装されている。
【0031】
図5は冷却装置16の底面側の斜視図、図6は圧電素子に形成された電極と円環状接続部との接続箇所を示す拡大平面図及び斜視図、図7は図6のA−A断面図である。
図5に示すように、圧電ポンプ本体31の底面には、開口61が形成されており、後述するダイヤフラム36が露出している。ダイヤフラム36には、圧電素子37を介して電極38が設けられている。
【0032】
駆動回路基板32からは、円環状接続部39が導出部39dを介して導出され、円環状接続部39等には、配線41が引き回されている。この円環状接続部39(配線41)は、電極38の表面に例えば半田40等により複数箇所で接続されている。
【0033】
図6に示すように、圧電素子37及び電極38の直径L1に対して、半田40の位置は、直径L2の円周上に設けられている。直径L2の円周上は、例えば後述するように圧電素子37を駆動しているときに、圧電素子37の振動の節に対応する位置である。複数の半田40の接続箇所は、円環状接続部39の円周方向に等間隔に設けられている。
【0034】
図7に示すように、電極38は、例えば圧電素子37と同形状の金属板が用いられている。駆動回路基板32には、スルーホールが形成されており、スルーホール内の半田40により、電極38と配線41とが接続されている。
【0035】
図8は冷却装置16の構成を示す断面図、図9は圧電ポンプ本体31の分解斜視図である。なお、図9では、フローセンサ140は図示を省略した。
図8に示すように、冷却装置16は、圧電ポンプ本体31と、圧電ポンプ本体31に一体的に接続された駆動回路基板32とを備えている。
【0036】
図8に示すように、圧電ポンプ本体31は、上から順番に、天板43、通路42を形成するめの介挿板44、ポンプ室の天板45、ポンプ室内の空間を形成するための介挿板46、ダイヤフラム36、ダイヤフラム36の裏面に取り付けられた圧電素子37、電極38、保護リング47及びリング47Bから構成される。
【0037】
図9に示すように、天板43は、例えば略箱形状であり、この天板43の中央にポンプ室から噴出された気体を折曲片20b側に向けて吐出するための吐出孔33が設けられている。なお、天板43の上面の吐出孔33の近くには、フローセンサ140が突設するように設けられている。
【0038】
介挿板44は、例えば略矩形状であり、通路を形成するために十字状の打ち抜き部48を有する。ベンチュリーノズル部は上記の吐出孔33に対応した位置、つまり介挿板44の中央(十字状の打ち抜き部48の交差部)に設けられている。
【0039】
ポンプ室の天板45は、例えば正方形状をなしており、各角部には孔50が形成され、通路42を形成する。天板45は、通路42からポンプ室内に気体を導入すると共に、ポンプ室内から吐出孔33を介して折曲片20b側に気体を噴出するための孔53が設けられている。
【0040】
ポンプ室内の空間を形成するための介挿板46は、ポンプ室内の空間を形成するための孔55が中央に形成され、4つの角部に孔56が形成され通路42を形成する。介挿板46は、ポンプ室としてある程度空間を形成するための厚さを有する。
【0041】
ダイヤフラム36も、上記の天板45と同様の形状をなし、各角部に孔57が形成され通路42を形成する。
【0042】
圧電素子37は、例えば円形をなし、印加された電圧(交番電圧)に応じて振動する。圧電素子37は、例えばチタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)のような圧電材料が用いられている。
【0043】
保護リング47は、上記の介挿板46などと同様の形状をなし、各角部に孔58が形成され通路42を形成する。
【0044】
電極38は、例えば圧電素子と同形状の金属板が用いられている。なお、電極38の代わりに、圧電素子37の表面に銀ペーストを塗布して電極を形成してもよい。
【0045】
リング47Bは、保護リング47と同様の形状を有し、各角部の孔59の内側にそれぞれ切り欠き部60が形成されている。保護リング47及びリング47Bの高さは、圧電素子37の振動によってダイヤフラム36、圧電素子37及び円環状接続部39が振動の際に筐体3の底部10にぶつかることを防止する程度の厚さを有する。
【0046】
図10は圧電素子37の制御系の概略構成を示すブロック図、図11は圧電素子37側の回路を示す図である。
圧電素子37の制御系100は、駆動制御回路35Aと、駆動部35Bとを備えている。
図11に示すように、駆動部35Bは、マイクロトランス35、可変コンデンサ79、ダイヤフラム36及び電極38を備えている。駆動部35Bは、二次コイル35bと、ダイヤフラム36と、電極38とが直列に接続され、可変コンデンサ79が並列に接続された構成を有している。なお、これら以外の部分については、図11では図示を省略した。可変コンデンサ79は、入出力電極79a、79b、可変コンデンサ79の誘電率を変化させ容量を制御するための制御電極79c、79dを備えている。例えば制御電極79dが駆動回路35Aの出力端子に接続されている。ダイヤフラム36と電極38との間には圧電素子37が配置されている。
【0047】
駆動制御回路35Aは、発振器(OSC)70、AND回路71、DIV回路72、カウンタ回路73、DAC(デジタル/アナログ変換器)74、VCO(電圧制御発振器)75、FET76、77、最適駆動周波数サーチ回路80、電力制御回路81、電圧制御回路82、AND回路83、DIV84、カウンタ回路85、DAC86及びBUF(増幅器)87を備えている。
【0048】
発振器70より発振された所定周波数のクロックパルス信号は、AND回路71の一方の入力端に入力される。AND回路71の他方の入力端は、後述する最適駆動周波数サーチ回路80の出力端に接続されている。最適駆動周波数サーチ回路80の制御出力に対応するクロックパルス信号がDIV回路(分周回路)72に入力され、ここで所定の分周率で分周され、カウンタ回路73に入力される。カウンタ回路73は、DIV回路(分周回路)72の出力パルスをカウントし、カウント結果をDAC(デジタル/アナログ変換器)74に入力すると共に最適駆動周波数サーチ回路80に入力する。DAC74は、カウント値をアナログ信号に変換し、VCO75に出力する。
【0049】
VCO75の二つの出力端子は、それぞれFET76、77のゲートに接続され、FET76、77のドレインはマイクロトランスの一次コイル35aの両端に接続されている。VCO75は、DAC74からの制御電圧に応じた周波数で各FET76、77のON/OFFを切り替える。これにより、マイクロトランスの一次コイル35aに流れる交流電流の周波数が制御される。
【0050】
図12は図10の最適駆動周波数サーチ回路80の詳細を示す回路図、図13は圧電素子37の駆動周波数と、フローセンサ140で検出された電圧(風速、吐出量)との関係を示す図である。
【0051】
圧電素子37の駆動周波数fを変化させると、冷却装置16で検出される風速(吐出量)に対応する電圧Vは図13に示すような特性を示す。つまり、所定の駆動周波数fで駆動しているときに、フローセンサ140の吐出量が最大となる。最適駆動周波数サーチ回路80は、フローセンサ140の電圧V(風速、吐出量)が最大となるときの圧電素子37の駆動周波数fを検出するための回路である。最適駆動周波数サーチ回路80は、この吐出量(風速)が最大となる駆動周波数fを検出し、この駆動周波数fに駆動周波数fを固定するために用いられる。
【0052】
図12に示すように、最適駆動周波数サーチ回路80は、フローセンサ140、増幅器(AMP)152、ローパスフィルタ(LPF)153、エンベロープディテクタ(DET)154、コンパレータ(CMP)155、ラッチ回路156、カウンタ回路157及びDAC(デジタル/アナログ変換器)158を備えている。
【0053】
図14はフローセンサ140の部分平面図であり、図15は図14のフローセンサ140のB−B断面図である。
図14、図15に示すようにフローセンサ140は、いわゆる気体の粒子速度、例えば気体の流速(吐出量)、熱伝導量等の粒子レベルの変化を検出することができるセンサである。例えば空気の移動が生じると、フローセンサ140の抵抗体S1、S2の抵抗値が変化する構造を有する。フローセンサ140は、半導体ウェハ90にダイヤフラム62、抵抗体S1、S2、白金抵抗体であるコモンC1が形成されている。
【0054】
図16は圧電素子37の駆動周波数fと時間(周期)との関係を示す図であり、図17は基準となる電圧Vrefと、時間(周期)との関係を示す図であり、図18はフローセンサ140の電圧Vと圧電素子37の駆動周波数fとの関係を示す図である。
フローセンサ140で検出された検出信号は、増幅器152で増幅され、ローパスフィルタ153に入力される。ローパスフィルタ153では、増幅器152の出力から低周波成分が抽出されて、エンベロープディテクタ(DET)154に入力される。エンベロープディテクタ(DET)154は、ローパスフィルタ153の出力の振幅値を検出し、この検出された振幅値に対応する電圧Vをコンパレータ155に出力する。
【0055】
カウンタ回路73からの出力は、カウンタ回路157に入力される。カウンタ回路157は、カウンタ回路73の出力パルスをカウントし、カウント結果をDAC158に入力する。DAC158は、カウント値をアナログ信号に変換し、この変換されたアナログ信号に対応する電圧Vrefをコンパレータ155に出力する。
【0056】
このとき、圧電素子37の駆動周波数fは、図16に示すように線形に増加しリセットすることを所定の周期T0で繰り返し、のこぎり状にスイープしており、カウンタ回路157のカウント値に基づき、図17及び図18に示すように電圧Vrefがこの周期T0に同期して所定値ずつ減少する。
【0057】
コンパレータ155は、図18に示すように、入力された電圧Vと、電圧Vrefとを比較し、比較結果をラッチ回路156に出力する。
【0058】
図19はコンパレータ155の出力電圧と駆動周波数fとの関係を示す図、図20は電圧と時間との関係を示す図である。
電圧Vrefがαのときには、図19に示すように駆動周波数fを変化させても電圧Vrefが一定である。このとき、図12に示すラッチ回路156は、AND回路71にONを出力し、AND回路83にOFFを出力する。
【0059】
電圧Vrefがβのときには、図19に示すように駆動周波数fを変化させると駆動周波数fがfのときに電圧Vrefが変化する。このとき、ラッチ回路156は、AND回路71にOFFを出力し、AND回路83にONを出力する。
【0060】
このとき、図10に示すAND回路71の出力がOFFとなり、カウンタ回路73のカウント値の増加がストップする。この結果、所定のカウント値がDAC74でアナログ信号に変換され、DAC74からの制御電圧に応じた所定の駆動周波数fで各FET76、77のON/OFFが切り替えられる。つまり、駆動周波数fがスイープすることを停止させ、最適駆動周波数fに駆動周波数fを固定する(圧電素子37を駆動する最適な駆動電圧を固定する)。
【0061】
電圧制御回路82は、二次側回路のA点及びB点の電圧を検出し、検出した電圧を基に、可変コンデンサ79の容量を可変制御するものである。より具体的には、電圧制御回路82は、AND回路83に入力される論理値を切り替える。
【0062】
AND回路83の入力端は、電圧制御回路82の制御出力、発振器70の出力及び最適駆動周波数サーチ回路80の制御出力に接続されている。電圧制御回路82の制御出力は、目標制御量に応じてH(論理値)の時間と、L(論理値)の時間の比を可変した出力である。これにより、電圧制御回路82の制御出力及び最適駆動周波数サーチ回路80の制御出力に対応するクロックパルス信号がDIV84に入力される。DIV84に入力されたクロックパルス信号は、DIV84で所定の分周率で分周され、カウンタ回路85に入力される。カウンタ回路85は、DIV84の出力パルスをカウントし、カウント結果をDAC86及び電圧制御回路82に入力する。DAC86は、カウント値をアナログ信号に変換し、BUF(増幅器)87に出力する。BUF(増幅器)87は、DAC86からの信号を増幅し可変コンデンサ79に出力する。これにより、可変コンデンサ79の容量を制御することができる。
【0063】
電力制御回路81は、デューティーを制御する信号をVCO75に出力する。
【0064】
このように本実施形態によれば、環境温度が変化するなどして圧電素子37の固有振動数が変化しても、冷却装置16の気体の吐出量に応じた信号をフローセンサ140により検出し、検出した信号に応じた電圧Vに基づき、吐出量が最大となる所定の駆動周波数fを検出し、この駆動周波数fに駆動制御回路35Aの発振周波数を設定することで、圧電素子37の駆動電圧を制御することができるので、吐出孔33からの気体の吐出量を適切な量(最大)に制御することができる。
【0065】
このとき、図16に示すように、発振周波数を線形に増加しリセットすることを所定の周期T0で繰り返し、図17に示すように周期T0に同期して基準電圧Vrefを減少させ、基準電圧基準電圧Vrefとフローセンサ140からの信号に基づく電圧Vとをコンパレータ155で比較し、比較結果に基づき、吐出量が最大となる所定の駆動周波数fを検出し、駆動制御回路35Aの発振周波数を駆動周波数fに設定することで圧電素子37の駆動電圧を制御する。
【0066】
また、駆動制御回路35Aにより、駆動周波数を動かし、フローセンサ140からの信号に基づき吐出量が最大となるように可変コンデンサ79の容量を制御することができるので、圧電素子37の固有振動数に駆動周波数を制御し、吐出量を増加(最大にする)させることができる。例えば、駆動周波数変更後、風量(吐出量)が増加しないときに、駆動周波数を変更前の値に固定すればよい。
【0067】
次に、冷却装置16の一実施例について説明する。
(1)ポンプ室の容積(面積、高さ)
直径 φ16mm
高さ 0.15mm
(2)外部からの空気導入孔の面積
直径 φ1.2mm×4箇所
(3)空気の導出口の面積(吐出孔33、孔53)
ポンプ室の孔53 直径 φ0.6mm
吐出孔33 直径 φ0.8mm
(4)冷却装置16全体の容積(面積、高さ)
面積 20mm×20mm
高さ 1.6mm
(ノズルを除いた高さ。ノズルを設ける場合のノズル高さは0.8mmであり、全高は2.4mm)
(5)圧電素子37の振幅
±6μm程度
(6)圧電素子37の振動周波数
24kHz程度
(7)圧電素子37の直径L1
6mm
(8)円環状接続部39の直径L2(半田40間距離)
4mm
(10)流量
1.0L/minである。
【0068】
本発明の他の実施形態に係る冷却装置について説明する。本実施形態以降においては、上記実施形態と同一の構成等には同一の符号を付しその説明を省略し、異なる箇所を中心に説明する。
【0069】
図21は第2の実施の形態の冷却装置の斜視図である。
本実施形態の電子機器200は、発熱量が異なる図示しない電子部品がそれぞれ実装された領域a、領域b、領域c、領域d及び領域eを有する基板160、各領域a〜領域eに対応して配列され並列に接続された複数台の冷却装置170A、170B、170C、170D及び170Eを備えている点が異なる。
【0070】
基板160の各領域a〜領域eには、この順に発熱量の多い電子部品が実装されている。つまり、基板160の領域aには、最も発熱量の多い電子部品が実装され、領域eには最も発熱量の少ない電子部品が実装されている。
【0071】
冷却装置170Aは固有振動数がf1、冷却装置170Bは固有振動数がf2、冷却装置170Cは固有振動数がf3、冷却装置170Dは固有振動数がf4及び冷却装置170Eは固有振動数がf5に設定されている。固有振動数f1〜f5は、例えばf1>f2>f3>f4>f5と設定されている。
【0072】
このような構成によれば、冷却装置170Aの駆動周波数を、冷却装置170Aの圧電素子の固有振動数f1と同じにすることで、発熱量の最も多い電子部品が実装された領域aに冷却装置170Aから最も多い気体を吐出し効率的に冷却することができると共に、他の冷却装置170Bにより領域bの電子部品を冷却する等することができる。
【0073】
また、駆動制御回路35Aにより駆動周波数を制御することができるので、例えば順次駆動周波数を変更して別の領域の電子部品に対応する冷却装置の固有振動数に合わせ、特定の領域のみ効率的に冷却することができる。
【0074】
図22は、別の冷却装置の斜視図である。
図22に示す冷却装置300は、冷却装置300の吐出量に応じた信号を検出するためにフローセンサ140´が、圧電ポンプ本体31の吐出孔33が配置されている側と反対側の面(圧電素子及びダイヤフラムが露出する側の面)に所定間隔で対向するように配置されている点が異なる。
【0075】
この場合には、フローセンサ140´が大きくなっても、フローセンサ140´と圧電ポンプ本体31とを所定間隔で重ねるように配設することができるので、冷却装置の厚さを容易に薄くすることができる。
【0076】
なお、本発明は以上説明した実施の形態には限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0077】
例えば、フローセンサ140を用いる代わりに、吐出量に応じた音を検出するマイクを用い、マイクからの信号に基づき吐出量を制御するようにしてもよい。
【0078】
駆動制御回路35Aは、圧電素子37の駆動時と駆動停止時にフローセンサ140で検出された信号に基づき外乱を検出するようにしてもよい。これにより、外乱の影響を排除して、より正確に吐出量を制御することができる。
【0079】
例えば、ダイヤフラム36は、携帯型ビデオカメラ1のスピーカとして兼用されるようにしてもよい。これにより、低コスト化及び小型薄型化を図ることができる。
【0080】
上記実施形態では、気体を噴出して例えばHDDユニット5等の電子部品を冷却したり、気体の吐出量に基づく信号を検出して冷却装置16の駆動周波数等を制御したりする例を示した。しかし、これに限定されず、例えば水等を冷却装置16から噴出して電子部品を冷却したり、同じフローセンサ140等を用いて水等の吐出量に基づく信号を検出して冷却装置16の駆動周波数等を制御したりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯型電子機器の構成を示す要部分解斜視図である。
【図2】携帯型電子機器のマイクロフォン及びレンズを含めた断面図である。
【図3】携帯型電子機器の外観図である。
【図4】冷却装置の斜視図である。
【図5】冷却装置の底面側の斜視図である。
【図6】圧電素子に形成された電極と円環状接続部との接続箇所を示す拡大平面図及び斜視図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】冷却装置の構成を示す断面図である。
【図9】圧電ポンプ本体の分解斜視図である。
【図10】圧電素子の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図11】圧電素子側の回路を示す図である。
【図12】図10の最適駆動周波数サーチ回路の詳細を示す回路図である。
【図13】圧電素子の駆動周波数と、フローセンサで検出された電圧(風速、吐出量)との関係を示す図である。
【図14】フローセンサの部分平面図である。
【図15】図14のフローセンサのB−B断面図である。
【図16】圧電素子の駆動周波数と時間(周期)との関係を示す図である。
【図17】基準となる電圧Vrefと、時間(周期)との関係を示す図である。
【図18】フローセンサの電圧と圧電素子の駆動周波数との関係を示す図である。
【図19】コンパレータの出力電圧と駆動周波数との関係を示す図である。
【図20】電圧と時間との関係を示す図である。
【図21】第2の実施の形態の冷却装置の斜視図である。
【図22】別の冷却装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
1 携帯型ビデオカメラ
5 HDDユニット
16,110,170A,170B,170C,170D,170E,300 冷却装置
25 導入孔
31 圧電ポンプ本体
32 駆動回路基板
33 吐出孔
34,50 孔
35A 駆動制御回路
35B 駆動部
35 マイクロトランス
35a 一次コイル
35b 二次コイル
36 ダイヤフラム
37 圧電素子
38 電極
79 可変コンデンサ
80 最適駆動周波数サーチ回路
140、140´ フローセンサ
157 カウンタ回路
200 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から流体を内部に導入し、かつ、内部から流体を噴出するための孔と、前記孔に対向するように配置された壁部と、前記壁部を振動させるために前記壁部に設けられた圧電体とを有するポンプ本体と、
前記圧電体を駆動する駆動部と、
前記孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出する検出手段と、
前記信号に基づき前記駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御する制御部と
を具備する圧電ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電ポンプであって、
前記駆動部は、
前記圧電体を挟むように配置された一対の電極と、
前記制御部に接続された一次巻き線と前記各電極に両端が接続された二次巻き線とを有するトランスと、
前記二次巻き線に対して並列に接続された電子式可変リアクタンス素子とを有し、
前記制御部は、前記信号に基づき前記吐出量が最大となるように前記電子式可変リアクタンス素子のリアクタンスを可変し前記駆動周波数を制御する手段とを有する圧電ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電ポンプであって、
前記制御部は、
前記一次巻き線に供給する交流電流を生成する交流発振器と、
前記交流発振器の発振周波数を線形に可変しリセットすることを所定の周期で繰り返すように制御する手段とをさらに有し、
前記検出手段は、
前記周期に同期して基準電圧を可変する手段と、
前記基準電圧と、前記信号に基づく電圧とを比較する手段と、
前記比較手段の比較結果に基づき、前記吐出量が最大となる前記交流発振器の所定の発振周波数を検出する手段とを有し、
前記検出された所定の発振周波数に前記交流発振器の発振周波数を設定することで前記駆動部の駆動電圧を制御する圧電ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の圧電ポンプであって、
前記検出手段は、前記孔からの流体の吐出量を検出する吐出量検出部を有する圧電ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の圧電ポンプであって、
前記検出手段は、前記吐出量に応じた音を検出する音検出部を有する圧電ポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載の圧電ポンプであって、
前記制御部は、前記圧電体の駆動時と駆動停止時に前記検出手段で検出された前記信号に基づき外乱を検出する手段を有する圧電ポンプ。
【請求項7】
外部から流体を内部に導入し、かつ、内部から流体を噴出するための孔と、前記孔に対向するように配置された壁部と、前記壁部を振動させるために前記壁部に設けられた圧電体とを有するポンプ本体と、前記圧電体を駆動する駆動部と、前記孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出する検出手段と、前記信号に基づき前記駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御する制御部とを具備する圧電ポンプが複数並列に接続された圧電ポンプ。
【請求項8】
外部から流体を内部に導入し、かつ、内部から流体を噴出するための孔と、前記孔に対向するように配置された壁部と、前記壁部を振動させるために前記壁部に設けられた圧電体とを有するポンプ本体と、
前記圧電体を駆動する駆動部と、
前記孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出する検出手段と、
前記信号に基づき前記駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御する制御部と
を具備する冷却装置。
【請求項9】
外部から流体を内部に導入し、かつ、内部から流体を噴出するための孔と、前記孔に対向するように配置された壁部と、前記壁部を振動させるために前記壁部に設けられた圧電体とを有するポンプ本体と、前記圧電体を駆動する駆動部と、前記孔からの流体の吐出量に応じた信号を検出する検出手段と、前記信号に基づき前記駆動部の駆動電圧及び駆動周波数を制御する制御部とを具備する圧電ポンプと、
前記圧電ポンプから噴出された流体に基づいて冷却される電子部品と
を具備する電子機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電子機器であって、
前記圧電ポンプは、前記電子機器のスピーカとして兼用される電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−156182(P2009−156182A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336076(P2007−336076)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】