圧電振動デバイスの製造方法
【課題】 圧電体から成る枠体を蓋体およびベースとで接合した後においても特性調整を行うことができる圧電振動デバイスと、その製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 基部31bと、当該基部から延出した複数の腕部31aとを有する音叉型圧電振動片31と、当該基部と接続し、かつ前記圧電振動片31を囲う囲繞体32とで構成される枠体3の両面に蓋体2とベース4とが接合される水晶振動子1において、前記囲繞体32または前記音叉型圧電振動片31の少なくとも一方の側面に、水晶振動子1の特性調整用金属膜6が形成され、前記枠体3と前記蓋体2およびベース4との接合後に、レーザー等で前記金属膜6の質量または面積を減少させることによって特性調整を行うことを特徴とする。
【解決手段】 基部31bと、当該基部から延出した複数の腕部31aとを有する音叉型圧電振動片31と、当該基部と接続し、かつ前記圧電振動片31を囲う囲繞体32とで構成される枠体3の両面に蓋体2とベース4とが接合される水晶振動子1において、前記囲繞体32または前記音叉型圧電振動片31の少なくとも一方の側面に、水晶振動子1の特性調整用金属膜6が形成され、前記枠体3と前記蓋体2およびベース4との接合後に、レーザー等で前記金属膜6の質量または面積を減少させることによって特性調整を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の音叉型水晶振動子の製造方法の一例としては、水晶ウエハをフォトリソグラフィによって複数の腕部を有する音叉形状の水晶振動片を複数個成形し、当該水晶振動片の表裏面および側面には所望の電極パターンが周設される。ウエハ状態にて各々の水晶振動子の発振周波数は、レーザーおよびパーシャル蒸着によって前記腕部の先端部にある周波数調整領域の金属膜を付加除去して調整が行われる(粗調整)。
【0003】
周波数を粗調整した後、ウエハ状態から小片状態に水晶振動片が個割り分割される。個割り分割された水晶振動片は、前記電極パターンと導通して当該水晶振動片の一端部に引き出されたパッド電極と、図12に示すようにセラミック材料から成り上部に開口部を有する断面視凹状のベース4の内底部に形成された導通パッド7とが、導電性接合材8を介して一対一で接合される。そして各々の水晶振動片の発振周波数は、ミーリングやレーザー等の調整手段により、前記周波数調整領域の金属膜を削減して調整が行われる(微調整)。周波数の微調整が終了すると前記開口部を平面視矩形状のセラミック材料から成る蓋体で接合封止する。
【0004】
しかしながら、かかる音叉型水晶振動子の製造方法では、蓋体と開口部との接合後に生じる周波数シフト(周波数変動)を音叉型水晶振動子の外部から調整することはできない。これに対し、蓋体に透光材料を使用することによって、蓋体と開口部の接合後でも圧電振動子デバイスの周波数を調整することを可能にした構成の圧電振動デバイスが例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−359536号
【0006】
また、近年の電子部品の小型化要求から薄型化を図るために、音叉型水晶振動片の基部と接続した囲繞体から成る水晶枠体の両面を2つの蓋体で接合した構成の圧電振動デバイスが例えば特許文献2に開示されている。
【0007】
【特許文献2】特開2004−208237号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1の場合、蓋体の材料はガラス製であるので、従来のセラミック材料の蓋体と比較して耐衝撃性が劣るため、外部衝撃を受けた際に欠損や亀裂の発生が懸念される。さらに透光材料であるため、圧電振動デバイスが晒される外部環境によっては、長期的特性(例えば周波数経年変化など)に悪影響を及ぼすことが考えられる。また、特許文献2の構成は小型化に寄与し、水晶枠体の上面側に接合しているガラス材から成る蓋体を介して、蓋体の上部方向から光ビーム等の周波数調整手段によって封止接合後でも圧電振動子デバイスの周波数の調整を行うことができるという利点を有するが、水晶振動片に対して横方向からの周波数調整には対応していない構造となっている。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、圧電体から成る枠体を蓋体およびベースとで接合した後においても特性調整を行うことができる圧電振動デバイスとその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明によれば、基部と、当該基部から延出した複数の腕部とを有する音叉型圧電振動片と、当該基部と接続し、かつ前記音叉型圧電振動片を囲う囲繞体とで構成される枠体の両面に、平面視矩形状の蓋体とベースとが接合されてなる圧電振動デバイスであって、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面に特性調整を行うための調整金属膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成の場合、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面に特性調整を行うための調整金属膜が形成されているので、前記枠体が蓋体およびベースと接合された後であっても、前記調整金属膜に向けて圧電振動デバイス外部から、当該枠体と平行(水平方向)にレーザー等を照射して当該金属膜の質量または面積を減少させることにより、圧電振動デバイスの特性調整、例えば周波数やその他の電気的特性の調整が可能となる。
【0012】
さらに、上記構成の場合、前記調整金属膜は前記音叉型水晶振動片の腕先寄りの位置に、あるいは、前記音叉型水晶振動片の基部寄りの位置に形成されていてもよい。前記音叉型水晶振動片の基部寄りの位置に形成されている場合、レーザーによって当該金属膜の質量または面積を減少させる際に削り取られた金属が飛散した場合であっても、振動に与える影響が大きい前記腕部から離間しているので飛散金属が再付着し難いので好ましい。
【0013】
また、請求項2によれば、前記囲繞体は透光材料から成るとともに、前記調整金属膜が当該囲繞体の内周側面または前記音叉型圧電振動片の側面の少なくとも一方に形成されているため、圧電振動デバイスの外部から、前記枠体側面に直交する方向で枠体内部に向けて照射されたレーザー光は囲繞体を透過して当該囲繞体の内周面または音叉型圧電振動片の側面に形成された調整金属膜に到達し、当該金属膜の質量または面積を減少させて周波数を調整することができるため、蓋体の上面側あるいはベースの下面側からレーザーを照射する必要がなく、蓋体あるいはべースをセラミック等の絶縁材料で成形することができ、透光材料に限定されることがないので材料選択の自由度が増す。
【0014】
さらに、上記構成によれば前記調整金属膜は前記枠体内部に形成されているため、外部環境に晒されることがなく、圧電振動デバイス内部を窒素あるいは真空雰囲気で封止すれば、前記調整金属膜が囲繞体の外周面に形成されている場合と比較して、大気による当該金属膜の酸化の進行を抑制することができるので、圧電振動デバイスの耐環境性能の向上を図ることができる。
【0015】
また、従来のように蓋体あるいはベースに透光材料を使用し、封止後に蓋体あるいはベースに対して鉛直方向からレーザーを照射して周波数の調整を行う場合においても、例えば音叉型水晶振動片の腕部に形成された周波数調整領域に対するレーザーの照射角を法線方向から鋭角範囲内で変化させることによって、音叉型振動片の腕部側面に形成された金属膜の一部も削ることは可能ではあるが、ビーム焦点等の精密な制御は困難である。これに対して、始めからレーザー光を横方向(水平方向)から照射することによって、より正確に音叉型振動片の調整金属膜に照射することができる。
【0016】
さらに、請求項3によれば、基部と、当該基部から延出した複数の腕部とを有する音叉型圧電振動片と、当該基部と接続し、かつ前記音叉型圧電振動片を囲う囲繞体とで構成される枠体の両面に、平面視矩形状の蓋体とベースとが接合されてなる圧電振動デバイスであって、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面には特性調整を行うための調整金属膜が形成されているとともに、前記枠体が前記蓋体と前記ベースと接合された後に、当該枠体を介して当該調整金属膜の質量または面積を減少させることによって当該圧電振動デバイスの特性を調整することを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法により、枠体と蓋体およびベースとの接合後に生じる周波数シフト(変動)を圧電振動デバイス外部から調整することが可能となり、より高精度な圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、圧電体から成る枠体を蓋体およびベースとで接合した後においても特性調整を行うことができるので、より高精度な圧電振動デバイスとその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態を示す水晶振動子の分解斜視図、図2は本発明の実施形態において特性調整を行っている状態を表す枠体の斜視図であり、図3は図2のA−A線に沿った断面図、図4は図2のB−B線に沿った断面図である。図5は本発明の実施形態を示すアセンブリ後の水晶振動子の長辺方向断面図である。なお、図1,図5において音叉型水晶振動片に形成される電極と、ベース底部に形成された外部接続端子と、枠体に形成された引き回し電極の記載は省略している。
【0019】
本実施形態で適用される水晶振動子1は、図1に示すように平面視矩形状のベース4と、枠体3と、平面視矩形状の蓋体2とから構成されている。前記枠体3は枠体内部に音叉型水晶振動片31の基部31cと接続した囲繞体32を有している。
【0020】
図1においてベース4は平面視矩形状の平板構造で、アルミナ等のセラミックを主体とした絶縁材料から成り、ベース4の内部にはベース4の底面に形成された外部接続端子(図示せず)と接続したビアホール(図示せず)が形成されている。前記ベース4の上面側(枠体3との接合面側)には接合材5が周状に形成され、当該接合材5の上面は平坦になるように形成されている。そして、前記ビアホールが接合材5を介して、後述する枠体3に形成される引き回し電極と電気的に繋がっている。なお、本実施形態では枠体3の引き回し電極と外部接続端子との接続手段としてビアホールを用いているが、これに限定されるものではなく、ビアホール以外に、配線導体がベース4の上面側から当該ベース側面上を経由して当該ベース底面の外部接続端子に接続された構造であってもよい。
【0021】
図1において、枠体3は表裏主面と側面を有し、音叉型水晶振動片31と、平面視矩形状で水晶から成る囲繞体32と、接続部33とから構成されている。前記枠体3はフォトリソグラフィによって一括的に成形され、前記ベース4の平面視外形寸法と同一寸法に形成されている。
【0022】
本実施形態では前記囲繞体32が透光材料である水晶で成形されているため、レーザーによる当該金属膜6の質量または面積の削減を、蓋体2を枠体3と接合した後においても実施することができるため、高精度な要求仕様に対応した水晶振動子を作製することが可能となる。
【0023】
前記囲繞体32は、音叉型水晶振動片31の基部31cから延出した接続部33の1箇所を介して、前記基部31cと一体的に繋がっている。より詳しくは、基部31cの一端側の中央と、囲繞体32の一短辺の中央とが接続部33を介して接続されている。従来の音叉型水晶振動子では、水晶振動片の基部の一端部2点で導電性接合材を介してベース内底部の2つのパッド電極と接合されていたため2点から応力の影響を受けていた。しかし本発明では基部から突出した接続部33が、前記囲繞体32と一点だけで接合されているため応力の影響を軽減でき、音叉型水晶振動片の振動漏れを抑制することができる。
【0024】
前記囲繞体32の上下面には前記外部接続端子と導通させるための周状の引き回し電極(図示せず)が配設されている。当該引き回し電極は、後述する前記接続部33へ延出された音叉型水晶振動片31に形成された電極パターン(図示せず)と接続している。
【0025】
図2に示すように、前記音叉型水晶振動片31は基部31cと、2本の腕部(第1の腕部31aと第2の腕部31b)を具備しており、各腕部31a、31bには第1の駆動電極311および第2の駆動電極312が形成されている。そして図3に示すように、第1の駆動電極311は第1の腕部31aの表裏面(主面)311a,311bと、第2の腕部31bの両側面311c,311dに形成され、それぞれが接続されている。同様に、第2の駆動電極312は第2の腕部31bの表裏面(主面)312a,312bと、第1の腕部31aの両側面312c,312dに形成され、それぞれが接続されている。これらの駆動電極311,312はクロム下地層とその上層の金層から成り、フォトリソグラフィによって形成されている。また、前記駆動電極311および駆動電極312からは電極パターンが前記接続部33の表裏面に引き出され、前記囲繞体32の表裏面に形成された周状の引き回し電極とそれぞれ接続している。
【0026】
また、図4に示すように前記2本の腕部31a,31bの先端部分には、前記側面の駆動電極311cと311d、ならびに312cと312dとを相互に共通接続するとともに周波数調整領域にもなる金属膜313,314が周設されている。すなわち、第1の腕部31aには、外側の側面金属膜313a、表面側の主面金属膜313b、裏面側の主面金属膜313c、内側の側面金属膜313dが形成されており、第2の腕部31bには、外側の側面金属膜314a、表面側の主面金属膜314b、裏面側の主面金属膜314c、内側の側面金属膜314dが形成されている。
【0027】
前記金属膜313,314の膜構成は水晶振動片31aの上にクロム下地層、その上に金層、さらにその上に銀等が蒸着等によって成膜されている。そして前記金属膜313,314上には、特性調整を行うための調整金属膜6が表裏両側面に沿って、周状に蒸着等によって成膜されている。
【0028】
本実施形態では特性調整を行うための調整金属膜6が、前記金属膜313,314上に周状に形成されているが、これに限定されるものではなく、前記主面金属膜313b,313cおよび314b,314c上に、または前記側面金属膜313a,313dおよび314a,314d上のいずれか一方だけに形成されていてもよい。あるいは内側の側面金属膜313d,314d上に、または外側の側面金属膜313a,314a上のいずれか一方だけに形成されていてもよい。また、特性調整用金属膜を付加せずに、側面金属膜にレーザーを照射して、その質量または面積を減少させることによって特性調整を行うことも可能である。
【0029】
本実施形態で使用される蓋体2は平面視矩形状の平板構造で、アルミナ等のセラミックを主体とした絶縁材料から構成されている。当該蓋体2の下面側(枠体との接合面側)には前述の接合材5が周状に形成されている。蓋体2は枠体3の平面視外形寸法と同一寸法に形成される。
【0030】
図5に示すように枠体3は接合材5によって表面に蓋体2が、裏面にベース4が接合され、当該接合材5により、振動領域を確保する内部空間が形成されている。前記接合材としては、例えばロウ材や導電性接合材が使用される。
【0031】
なお、本実施形態では蓋体2およびベース4の材料としてセラミックを主体とした絶縁材料を使用しているが、絶縁材料以外であってもよく、例えばコバール等の金属から形成されていてもよい。また、非透光性材料に限定されず、ガラスなどの透光材料で形成されていてもよい。
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る水晶振動子の製造方法について説明する。本実施形態では囲繞体32は音叉型水晶振動片31と同材料で形成されているため、枠体3は水晶ウエハ状態からエッチングによって一体的に形成されるとともに、金等の金属物質が蒸着または、めっきによって成膜され、フォトリソグラフィによって音叉型水晶振動片31を励振させるための駆動電極(第1の駆動電極311と第2の駆動電極312)が2本の腕部31a、31bに形成される。
【0033】
さらに、前記腕部31a,31bの先端部分には、前記第1と第2の駆動電極の側面金属膜とを相互に共通接続するとともに、周波数調整領域にもなる金属膜313,314が周設されている。そして前記金属膜313,314上には、特性調整を行うための調整金属膜6(特性調整用金属膜6)が表裏両側面に沿って、周状に蒸着等によって成膜されている。
【0034】
前記囲繞体32には、外部接続端子に導通させるための周状の引き回し電極パターンが形成されるとともに、前記囲繞体32と前記音叉型水晶振動片31の厚みは同一に形成される。
【0035】
前記音叉型水晶振動片31と前記囲繞体32とが一体的に形成された枠体3を1単位として、これらが縦横に複数単位連結して形成されている状態(ウエハ状態)で、各々の音叉型水晶振動片31について、レーザーおよびパーシャル蒸着によって周波数調整領域にもなる金属膜313,314を付加除去して調整が行われる(粗調整工程)。粗調整工程の後、ウエハ状態から小片状態に個割り分割し、各々の水晶振動片31とベース4とを接合材5を介して一対一で接合する。その後、前記金属膜313,314をレーザーまたはミーリングによって質量または面積を減少させて、より精密な周波数調整が行われる(微調整工程)。
【0036】
封止接合は、まず囲繞体32の下面側とベース4とが、の上面側に周状に形成された接合材5を介して、所定の温度に加熱された真空雰囲気内で接合される。囲繞体32とベース4との接合後に、前記蓋体2の下面側に形成された接合材5を介して、前記囲繞体32の上面側と蓋体2とが所定の温度に加熱された真空雰囲気内で接合される。なお、上述した蓋体2と囲繞体32とベース4は、平面視で全て同一外形寸法で成形されているとともに平面視で、はみ出すことなく接合される。
【0037】
前記封止接合の実施前後に生じた当該水晶振動子の発振周波数等の特性変化の調整は以下の要領で行われる。
【0038】
図2に示すように水晶振動子1の外部からレーザーを、前記特性調整用金属膜6の側面へ向けて水平方向(囲繞体32の壁面に対して直交方向)で囲繞体32に照射し、当該金属膜の質量または面積を減少させることによって特性調整が行われる(特性調整工程)。このとき水晶振動子1の外部から照射されるレーザー光は、囲繞体32を通過時に生じる屈折の度合に応じて、前記特性調整用金属膜6に正確に照射できるように、レーザー照射機から囲繞体32へのレーザー光入射角度が調整される。
【0039】
前記特性調整工程において、水晶振動子1の外部からのレーザー照射は、図2においては対向する2方向からの照射となっているが、必ずしも2方向から照射する必要はなく、各水晶片31に対する調整量に応じて1方向からだけの照射であってもよい。さらには図2においてレーザーは枠体3の長辺方向から照射されているが、枠体3の短辺方向からの照射であってもよい。
【0040】
また、前記特性調整用金属膜6の配置数は2つ(1つの腕部に対し1箇所)に限定されるものではなく、2つ以上形成されていてもよく、音叉型水晶振動片31あるいは囲繞体に形成されていてもよい。水晶振動片31の腕部に形成される場合、当該金属膜6は2本の腕部31a,31b上に一対で対向する位置に形成されていることが好ましい。
【0041】
さらに図2において、前記金属膜6は各振動腕31a,31bの先端部分に周状に形成されているが、周状にだけ限定されるものではなく、各腕部31a,31bの外側側面あるいは内側側面に形成されていてもよい。また、前記特性調整用金属膜6を形成せず、側面金属膜にレーザーを照射して、その質量または面積を減少させることによって特性調整を行うことも可能である。
【0042】
前記特性調整用金属膜6は、前記第1と第2の駆動電極と導通しているため、当該金属膜の質量または面積を減少させることによって、水晶振動子1の諸特性、例えばC1(等価直列容量)等のパラメータ(水晶振動子の電気的等価回路定数)を調整することによって、水晶振動子1の発振周波数を変化させることが可能である。
【0043】
本実施形態における水晶振動子1の長辺方向の断面図は、図5に示す形態となっているが、これに限定されるものではなく、例えば図6のように枠体3の厚みに対し、音叉型水晶振動片31の厚みを囲繞体32よりも薄くなるように水晶振動片31をエッチング等によって掘り込んだ両凹形状であってもよい。
【0044】
この場合、音叉型水晶振動片31と、蓋体2およびベース4との間に内部空間を確保できるため、接合材5の厚みを薄くすることができ、水晶振動子1の薄型化を図ることができる。あるいは他の接合手段を用いることによっても水晶振動子1の薄型化を図ることができる。さらには音叉型水晶振動片31の厚みが囲繞体32の厚みよりも薄いために、各腕部31aの側面部分に成膜する金属膜の形成領域が狭小化するため、成膜に使用する金属量を削減でき生産性向上に寄与する。
【0045】
また、図7のように蓋体2およびベース4に凹部を形成することによっても、音叉型水晶振動片31と、蓋体2およびベース4との間の内部空間を確保することができる。この場合、図5の場合と同様に水晶振動片と囲繞体は同一厚みで形成されているので、特性調整用金属膜6を図6の場合に比して大きく形成することができるので、レーザー照射による当該金属膜の質量または面積を減少させ易いとともに、予め蓋体2およびベース4に凹部が形成されているため、接合材5の厚みを薄くすることができるので水晶振動子1の薄型化を図ることが可能となる。
【0046】
−その他の実施形態−
本発明のその他の実施の形態について、特に前記特性調整工程に関して図8乃至図11を基に説明していく。なお、前記実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前記実施形態と同様の効果を有する。
【0047】
図8は水晶振動片31に特性調整用金属膜6が形成された平面図を、図9,図10は囲繞体32の内周面上に特性調整用金属膜6が形成された平面図を、図11は囲繞体32の外周面上に特性調整用金属膜6が形成された平面図を表している。なお、図8乃至図11において前記第1および第2の駆動電極および引き回し電極の記載は省略している。
【0048】
図8は、特性調整用金属膜6が水晶振動片31の基部31cに形成されている状態を表している。この場合、レーザー光で当該金属膜の質量または面積を減少させる際に金属物質が飛散した場合、水晶振動子の振動特性に与える影響が大きい腕部31a,31bの先端部は基部31cから離間しているため飛散金属が再付着しにくく、安定した特性調整を行うことができる。
【0049】
図9は特性調整用金属膜6が囲繞体32の内周面に形成されている状態であり、当該金属膜6は接続部33から囲繞体32の内周面を経て、水晶振動片31の腕部の先端近傍に対向する位置まで延出されている。この場合、当該金属膜6へレーザー光をスポット的に照射して特性調整を行う方法の他に、当該金属膜6の任意の位置へレーザー光を連続照射して当該金属膜6を切断して非導通状態とすることによって、より効率的な調整を行うことも可能である。
【0050】
例えば、図9に示すC,D,Eのラインのいずれかの位置で金属膜を切断して非導通状態とすることで、レーザー照射回数に対してより大きな特性調整効果を得ることができる。具体的には調整量が少さいときはラインCの位置で切断し、調整量が大きいときはラインEの位置で切断を行えばよい。
【0051】
図9の構成によれば、封止接合後に水晶振動子の外部からのレーザー照射によって水晶振動子1の特性調整を行えるだけでなく、レーザー出力を制御して、前記金属膜6のラインC近傍の位置へレーザー照射を行い、削り取られた金属物質を腕部の先端近傍の側面部分、すなわち側面金属膜313a,314a上に意図的に付着させることも可能であり、水晶振動子のパラメータをより細かく調整することができる。
【0052】
図10は特性調整用金属膜6が、囲繞体32の内周面の、基部31cに対向する位置に形成されている状態を表している。この場合、封止接合後に水晶振動子の外部からのレーザー照射によって水晶振動子1の特性調整を行えることに加え、囲繞体32内周面に前記金属膜6が形成されているので、レーザー照射による飛散金属は、基部31cの側面に前記金属膜が形成されている場合と比べて、腕部の先端近傍までの距離を長く取ることができるので再付着し難くなり、より安定した特性調整を行うことができる。
【0053】
図11は特性調整用金属膜6が、囲繞体32の外周面上に形成されている状態を表している。この場合、囲繞体32は透光材料で形成されている必要はなく、非透光材料が好ましい。また、前記金属膜6は水晶振動子1の外部に形成されているので、酸化防止のために当該金属膜の表面はクロム等から成る薄膜9で被覆されていることが好ましい。
【0054】
本発明の実施形態では圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子を挙げているが、その他の例としてATカット水晶振動子や、その他のカットの水晶振動子の製造においても本発明は適用可能である。
【0055】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る水晶振動子の分解斜視図である。
【図2】本発明の特性調整の状態を示す枠体の斜視図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る水晶振動子の長辺方向の断面図である。
【図6】本発明の形態に係る変形例を示す水晶振動子の長辺方向断面図である。
【図7】本発明の形態に係る変形例を示す水晶振動子の長辺方向断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る枠体の平面図である
【図9】本発明の他の実施形態に係る枠体の平面図である
【図10】本発明の他の実施形態に係る枠体の平面図である
【図11】本発明の他の実施形態に係る枠体の平面図である。
【図12】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 水晶振動子
2 蓋体
3 枠体
31 音叉型水晶振動片
31a 第1の腕部
31b 第2の腕部
31c 基部
311 第1の駆動電極
312 第2の駆動電極
4 ベース
5 接合材
6 特性調整用金属膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の音叉型水晶振動子の製造方法の一例としては、水晶ウエハをフォトリソグラフィによって複数の腕部を有する音叉形状の水晶振動片を複数個成形し、当該水晶振動片の表裏面および側面には所望の電極パターンが周設される。ウエハ状態にて各々の水晶振動子の発振周波数は、レーザーおよびパーシャル蒸着によって前記腕部の先端部にある周波数調整領域の金属膜を付加除去して調整が行われる(粗調整)。
【0003】
周波数を粗調整した後、ウエハ状態から小片状態に水晶振動片が個割り分割される。個割り分割された水晶振動片は、前記電極パターンと導通して当該水晶振動片の一端部に引き出されたパッド電極と、図12に示すようにセラミック材料から成り上部に開口部を有する断面視凹状のベース4の内底部に形成された導通パッド7とが、導電性接合材8を介して一対一で接合される。そして各々の水晶振動片の発振周波数は、ミーリングやレーザー等の調整手段により、前記周波数調整領域の金属膜を削減して調整が行われる(微調整)。周波数の微調整が終了すると前記開口部を平面視矩形状のセラミック材料から成る蓋体で接合封止する。
【0004】
しかしながら、かかる音叉型水晶振動子の製造方法では、蓋体と開口部との接合後に生じる周波数シフト(周波数変動)を音叉型水晶振動子の外部から調整することはできない。これに対し、蓋体に透光材料を使用することによって、蓋体と開口部の接合後でも圧電振動子デバイスの周波数を調整することを可能にした構成の圧電振動デバイスが例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−359536号
【0006】
また、近年の電子部品の小型化要求から薄型化を図るために、音叉型水晶振動片の基部と接続した囲繞体から成る水晶枠体の両面を2つの蓋体で接合した構成の圧電振動デバイスが例えば特許文献2に開示されている。
【0007】
【特許文献2】特開2004−208237号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1の場合、蓋体の材料はガラス製であるので、従来のセラミック材料の蓋体と比較して耐衝撃性が劣るため、外部衝撃を受けた際に欠損や亀裂の発生が懸念される。さらに透光材料であるため、圧電振動デバイスが晒される外部環境によっては、長期的特性(例えば周波数経年変化など)に悪影響を及ぼすことが考えられる。また、特許文献2の構成は小型化に寄与し、水晶枠体の上面側に接合しているガラス材から成る蓋体を介して、蓋体の上部方向から光ビーム等の周波数調整手段によって封止接合後でも圧電振動子デバイスの周波数の調整を行うことができるという利点を有するが、水晶振動片に対して横方向からの周波数調整には対応していない構造となっている。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、圧電体から成る枠体を蓋体およびベースとで接合した後においても特性調整を行うことができる圧電振動デバイスとその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明によれば、基部と、当該基部から延出した複数の腕部とを有する音叉型圧電振動片と、当該基部と接続し、かつ前記音叉型圧電振動片を囲う囲繞体とで構成される枠体の両面に、平面視矩形状の蓋体とベースとが接合されてなる圧電振動デバイスであって、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面に特性調整を行うための調整金属膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成の場合、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面に特性調整を行うための調整金属膜が形成されているので、前記枠体が蓋体およびベースと接合された後であっても、前記調整金属膜に向けて圧電振動デバイス外部から、当該枠体と平行(水平方向)にレーザー等を照射して当該金属膜の質量または面積を減少させることにより、圧電振動デバイスの特性調整、例えば周波数やその他の電気的特性の調整が可能となる。
【0012】
さらに、上記構成の場合、前記調整金属膜は前記音叉型水晶振動片の腕先寄りの位置に、あるいは、前記音叉型水晶振動片の基部寄りの位置に形成されていてもよい。前記音叉型水晶振動片の基部寄りの位置に形成されている場合、レーザーによって当該金属膜の質量または面積を減少させる際に削り取られた金属が飛散した場合であっても、振動に与える影響が大きい前記腕部から離間しているので飛散金属が再付着し難いので好ましい。
【0013】
また、請求項2によれば、前記囲繞体は透光材料から成るとともに、前記調整金属膜が当該囲繞体の内周側面または前記音叉型圧電振動片の側面の少なくとも一方に形成されているため、圧電振動デバイスの外部から、前記枠体側面に直交する方向で枠体内部に向けて照射されたレーザー光は囲繞体を透過して当該囲繞体の内周面または音叉型圧電振動片の側面に形成された調整金属膜に到達し、当該金属膜の質量または面積を減少させて周波数を調整することができるため、蓋体の上面側あるいはベースの下面側からレーザーを照射する必要がなく、蓋体あるいはべースをセラミック等の絶縁材料で成形することができ、透光材料に限定されることがないので材料選択の自由度が増す。
【0014】
さらに、上記構成によれば前記調整金属膜は前記枠体内部に形成されているため、外部環境に晒されることがなく、圧電振動デバイス内部を窒素あるいは真空雰囲気で封止すれば、前記調整金属膜が囲繞体の外周面に形成されている場合と比較して、大気による当該金属膜の酸化の進行を抑制することができるので、圧電振動デバイスの耐環境性能の向上を図ることができる。
【0015】
また、従来のように蓋体あるいはベースに透光材料を使用し、封止後に蓋体あるいはベースに対して鉛直方向からレーザーを照射して周波数の調整を行う場合においても、例えば音叉型水晶振動片の腕部に形成された周波数調整領域に対するレーザーの照射角を法線方向から鋭角範囲内で変化させることによって、音叉型振動片の腕部側面に形成された金属膜の一部も削ることは可能ではあるが、ビーム焦点等の精密な制御は困難である。これに対して、始めからレーザー光を横方向(水平方向)から照射することによって、より正確に音叉型振動片の調整金属膜に照射することができる。
【0016】
さらに、請求項3によれば、基部と、当該基部から延出した複数の腕部とを有する音叉型圧電振動片と、当該基部と接続し、かつ前記音叉型圧電振動片を囲う囲繞体とで構成される枠体の両面に、平面視矩形状の蓋体とベースとが接合されてなる圧電振動デバイスであって、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面には特性調整を行うための調整金属膜が形成されているとともに、前記枠体が前記蓋体と前記ベースと接合された後に、当該枠体を介して当該調整金属膜の質量または面積を減少させることによって当該圧電振動デバイスの特性を調整することを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法により、枠体と蓋体およびベースとの接合後に生じる周波数シフト(変動)を圧電振動デバイス外部から調整することが可能となり、より高精度な圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、圧電体から成る枠体を蓋体およびベースとで接合した後においても特性調整を行うことができるので、より高精度な圧電振動デバイスとその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明による実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態を示す水晶振動子の分解斜視図、図2は本発明の実施形態において特性調整を行っている状態を表す枠体の斜視図であり、図3は図2のA−A線に沿った断面図、図4は図2のB−B線に沿った断面図である。図5は本発明の実施形態を示すアセンブリ後の水晶振動子の長辺方向断面図である。なお、図1,図5において音叉型水晶振動片に形成される電極と、ベース底部に形成された外部接続端子と、枠体に形成された引き回し電極の記載は省略している。
【0019】
本実施形態で適用される水晶振動子1は、図1に示すように平面視矩形状のベース4と、枠体3と、平面視矩形状の蓋体2とから構成されている。前記枠体3は枠体内部に音叉型水晶振動片31の基部31cと接続した囲繞体32を有している。
【0020】
図1においてベース4は平面視矩形状の平板構造で、アルミナ等のセラミックを主体とした絶縁材料から成り、ベース4の内部にはベース4の底面に形成された外部接続端子(図示せず)と接続したビアホール(図示せず)が形成されている。前記ベース4の上面側(枠体3との接合面側)には接合材5が周状に形成され、当該接合材5の上面は平坦になるように形成されている。そして、前記ビアホールが接合材5を介して、後述する枠体3に形成される引き回し電極と電気的に繋がっている。なお、本実施形態では枠体3の引き回し電極と外部接続端子との接続手段としてビアホールを用いているが、これに限定されるものではなく、ビアホール以外に、配線導体がベース4の上面側から当該ベース側面上を経由して当該ベース底面の外部接続端子に接続された構造であってもよい。
【0021】
図1において、枠体3は表裏主面と側面を有し、音叉型水晶振動片31と、平面視矩形状で水晶から成る囲繞体32と、接続部33とから構成されている。前記枠体3はフォトリソグラフィによって一括的に成形され、前記ベース4の平面視外形寸法と同一寸法に形成されている。
【0022】
本実施形態では前記囲繞体32が透光材料である水晶で成形されているため、レーザーによる当該金属膜6の質量または面積の削減を、蓋体2を枠体3と接合した後においても実施することができるため、高精度な要求仕様に対応した水晶振動子を作製することが可能となる。
【0023】
前記囲繞体32は、音叉型水晶振動片31の基部31cから延出した接続部33の1箇所を介して、前記基部31cと一体的に繋がっている。より詳しくは、基部31cの一端側の中央と、囲繞体32の一短辺の中央とが接続部33を介して接続されている。従来の音叉型水晶振動子では、水晶振動片の基部の一端部2点で導電性接合材を介してベース内底部の2つのパッド電極と接合されていたため2点から応力の影響を受けていた。しかし本発明では基部から突出した接続部33が、前記囲繞体32と一点だけで接合されているため応力の影響を軽減でき、音叉型水晶振動片の振動漏れを抑制することができる。
【0024】
前記囲繞体32の上下面には前記外部接続端子と導通させるための周状の引き回し電極(図示せず)が配設されている。当該引き回し電極は、後述する前記接続部33へ延出された音叉型水晶振動片31に形成された電極パターン(図示せず)と接続している。
【0025】
図2に示すように、前記音叉型水晶振動片31は基部31cと、2本の腕部(第1の腕部31aと第2の腕部31b)を具備しており、各腕部31a、31bには第1の駆動電極311および第2の駆動電極312が形成されている。そして図3に示すように、第1の駆動電極311は第1の腕部31aの表裏面(主面)311a,311bと、第2の腕部31bの両側面311c,311dに形成され、それぞれが接続されている。同様に、第2の駆動電極312は第2の腕部31bの表裏面(主面)312a,312bと、第1の腕部31aの両側面312c,312dに形成され、それぞれが接続されている。これらの駆動電極311,312はクロム下地層とその上層の金層から成り、フォトリソグラフィによって形成されている。また、前記駆動電極311および駆動電極312からは電極パターンが前記接続部33の表裏面に引き出され、前記囲繞体32の表裏面に形成された周状の引き回し電極とそれぞれ接続している。
【0026】
また、図4に示すように前記2本の腕部31a,31bの先端部分には、前記側面の駆動電極311cと311d、ならびに312cと312dとを相互に共通接続するとともに周波数調整領域にもなる金属膜313,314が周設されている。すなわち、第1の腕部31aには、外側の側面金属膜313a、表面側の主面金属膜313b、裏面側の主面金属膜313c、内側の側面金属膜313dが形成されており、第2の腕部31bには、外側の側面金属膜314a、表面側の主面金属膜314b、裏面側の主面金属膜314c、内側の側面金属膜314dが形成されている。
【0027】
前記金属膜313,314の膜構成は水晶振動片31aの上にクロム下地層、その上に金層、さらにその上に銀等が蒸着等によって成膜されている。そして前記金属膜313,314上には、特性調整を行うための調整金属膜6が表裏両側面に沿って、周状に蒸着等によって成膜されている。
【0028】
本実施形態では特性調整を行うための調整金属膜6が、前記金属膜313,314上に周状に形成されているが、これに限定されるものではなく、前記主面金属膜313b,313cおよび314b,314c上に、または前記側面金属膜313a,313dおよび314a,314d上のいずれか一方だけに形成されていてもよい。あるいは内側の側面金属膜313d,314d上に、または外側の側面金属膜313a,314a上のいずれか一方だけに形成されていてもよい。また、特性調整用金属膜を付加せずに、側面金属膜にレーザーを照射して、その質量または面積を減少させることによって特性調整を行うことも可能である。
【0029】
本実施形態で使用される蓋体2は平面視矩形状の平板構造で、アルミナ等のセラミックを主体とした絶縁材料から構成されている。当該蓋体2の下面側(枠体との接合面側)には前述の接合材5が周状に形成されている。蓋体2は枠体3の平面視外形寸法と同一寸法に形成される。
【0030】
図5に示すように枠体3は接合材5によって表面に蓋体2が、裏面にベース4が接合され、当該接合材5により、振動領域を確保する内部空間が形成されている。前記接合材としては、例えばロウ材や導電性接合材が使用される。
【0031】
なお、本実施形態では蓋体2およびベース4の材料としてセラミックを主体とした絶縁材料を使用しているが、絶縁材料以外であってもよく、例えばコバール等の金属から形成されていてもよい。また、非透光性材料に限定されず、ガラスなどの透光材料で形成されていてもよい。
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る水晶振動子の製造方法について説明する。本実施形態では囲繞体32は音叉型水晶振動片31と同材料で形成されているため、枠体3は水晶ウエハ状態からエッチングによって一体的に形成されるとともに、金等の金属物質が蒸着または、めっきによって成膜され、フォトリソグラフィによって音叉型水晶振動片31を励振させるための駆動電極(第1の駆動電極311と第2の駆動電極312)が2本の腕部31a、31bに形成される。
【0033】
さらに、前記腕部31a,31bの先端部分には、前記第1と第2の駆動電極の側面金属膜とを相互に共通接続するとともに、周波数調整領域にもなる金属膜313,314が周設されている。そして前記金属膜313,314上には、特性調整を行うための調整金属膜6(特性調整用金属膜6)が表裏両側面に沿って、周状に蒸着等によって成膜されている。
【0034】
前記囲繞体32には、外部接続端子に導通させるための周状の引き回し電極パターンが形成されるとともに、前記囲繞体32と前記音叉型水晶振動片31の厚みは同一に形成される。
【0035】
前記音叉型水晶振動片31と前記囲繞体32とが一体的に形成された枠体3を1単位として、これらが縦横に複数単位連結して形成されている状態(ウエハ状態)で、各々の音叉型水晶振動片31について、レーザーおよびパーシャル蒸着によって周波数調整領域にもなる金属膜313,314を付加除去して調整が行われる(粗調整工程)。粗調整工程の後、ウエハ状態から小片状態に個割り分割し、各々の水晶振動片31とベース4とを接合材5を介して一対一で接合する。その後、前記金属膜313,314をレーザーまたはミーリングによって質量または面積を減少させて、より精密な周波数調整が行われる(微調整工程)。
【0036】
封止接合は、まず囲繞体32の下面側とベース4とが、の上面側に周状に形成された接合材5を介して、所定の温度に加熱された真空雰囲気内で接合される。囲繞体32とベース4との接合後に、前記蓋体2の下面側に形成された接合材5を介して、前記囲繞体32の上面側と蓋体2とが所定の温度に加熱された真空雰囲気内で接合される。なお、上述した蓋体2と囲繞体32とベース4は、平面視で全て同一外形寸法で成形されているとともに平面視で、はみ出すことなく接合される。
【0037】
前記封止接合の実施前後に生じた当該水晶振動子の発振周波数等の特性変化の調整は以下の要領で行われる。
【0038】
図2に示すように水晶振動子1の外部からレーザーを、前記特性調整用金属膜6の側面へ向けて水平方向(囲繞体32の壁面に対して直交方向)で囲繞体32に照射し、当該金属膜の質量または面積を減少させることによって特性調整が行われる(特性調整工程)。このとき水晶振動子1の外部から照射されるレーザー光は、囲繞体32を通過時に生じる屈折の度合に応じて、前記特性調整用金属膜6に正確に照射できるように、レーザー照射機から囲繞体32へのレーザー光入射角度が調整される。
【0039】
前記特性調整工程において、水晶振動子1の外部からのレーザー照射は、図2においては対向する2方向からの照射となっているが、必ずしも2方向から照射する必要はなく、各水晶片31に対する調整量に応じて1方向からだけの照射であってもよい。さらには図2においてレーザーは枠体3の長辺方向から照射されているが、枠体3の短辺方向からの照射であってもよい。
【0040】
また、前記特性調整用金属膜6の配置数は2つ(1つの腕部に対し1箇所)に限定されるものではなく、2つ以上形成されていてもよく、音叉型水晶振動片31あるいは囲繞体に形成されていてもよい。水晶振動片31の腕部に形成される場合、当該金属膜6は2本の腕部31a,31b上に一対で対向する位置に形成されていることが好ましい。
【0041】
さらに図2において、前記金属膜6は各振動腕31a,31bの先端部分に周状に形成されているが、周状にだけ限定されるものではなく、各腕部31a,31bの外側側面あるいは内側側面に形成されていてもよい。また、前記特性調整用金属膜6を形成せず、側面金属膜にレーザーを照射して、その質量または面積を減少させることによって特性調整を行うことも可能である。
【0042】
前記特性調整用金属膜6は、前記第1と第2の駆動電極と導通しているため、当該金属膜の質量または面積を減少させることによって、水晶振動子1の諸特性、例えばC1(等価直列容量)等のパラメータ(水晶振動子の電気的等価回路定数)を調整することによって、水晶振動子1の発振周波数を変化させることが可能である。
【0043】
本実施形態における水晶振動子1の長辺方向の断面図は、図5に示す形態となっているが、これに限定されるものではなく、例えば図6のように枠体3の厚みに対し、音叉型水晶振動片31の厚みを囲繞体32よりも薄くなるように水晶振動片31をエッチング等によって掘り込んだ両凹形状であってもよい。
【0044】
この場合、音叉型水晶振動片31と、蓋体2およびベース4との間に内部空間を確保できるため、接合材5の厚みを薄くすることができ、水晶振動子1の薄型化を図ることができる。あるいは他の接合手段を用いることによっても水晶振動子1の薄型化を図ることができる。さらには音叉型水晶振動片31の厚みが囲繞体32の厚みよりも薄いために、各腕部31aの側面部分に成膜する金属膜の形成領域が狭小化するため、成膜に使用する金属量を削減でき生産性向上に寄与する。
【0045】
また、図7のように蓋体2およびベース4に凹部を形成することによっても、音叉型水晶振動片31と、蓋体2およびベース4との間の内部空間を確保することができる。この場合、図5の場合と同様に水晶振動片と囲繞体は同一厚みで形成されているので、特性調整用金属膜6を図6の場合に比して大きく形成することができるので、レーザー照射による当該金属膜の質量または面積を減少させ易いとともに、予め蓋体2およびベース4に凹部が形成されているため、接合材5の厚みを薄くすることができるので水晶振動子1の薄型化を図ることが可能となる。
【0046】
−その他の実施形態−
本発明のその他の実施の形態について、特に前記特性調整工程に関して図8乃至図11を基に説明していく。なお、前記実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前記実施形態と同様の効果を有する。
【0047】
図8は水晶振動片31に特性調整用金属膜6が形成された平面図を、図9,図10は囲繞体32の内周面上に特性調整用金属膜6が形成された平面図を、図11は囲繞体32の外周面上に特性調整用金属膜6が形成された平面図を表している。なお、図8乃至図11において前記第1および第2の駆動電極および引き回し電極の記載は省略している。
【0048】
図8は、特性調整用金属膜6が水晶振動片31の基部31cに形成されている状態を表している。この場合、レーザー光で当該金属膜の質量または面積を減少させる際に金属物質が飛散した場合、水晶振動子の振動特性に与える影響が大きい腕部31a,31bの先端部は基部31cから離間しているため飛散金属が再付着しにくく、安定した特性調整を行うことができる。
【0049】
図9は特性調整用金属膜6が囲繞体32の内周面に形成されている状態であり、当該金属膜6は接続部33から囲繞体32の内周面を経て、水晶振動片31の腕部の先端近傍に対向する位置まで延出されている。この場合、当該金属膜6へレーザー光をスポット的に照射して特性調整を行う方法の他に、当該金属膜6の任意の位置へレーザー光を連続照射して当該金属膜6を切断して非導通状態とすることによって、より効率的な調整を行うことも可能である。
【0050】
例えば、図9に示すC,D,Eのラインのいずれかの位置で金属膜を切断して非導通状態とすることで、レーザー照射回数に対してより大きな特性調整効果を得ることができる。具体的には調整量が少さいときはラインCの位置で切断し、調整量が大きいときはラインEの位置で切断を行えばよい。
【0051】
図9の構成によれば、封止接合後に水晶振動子の外部からのレーザー照射によって水晶振動子1の特性調整を行えるだけでなく、レーザー出力を制御して、前記金属膜6のラインC近傍の位置へレーザー照射を行い、削り取られた金属物質を腕部の先端近傍の側面部分、すなわち側面金属膜313a,314a上に意図的に付着させることも可能であり、水晶振動子のパラメータをより細かく調整することができる。
【0052】
図10は特性調整用金属膜6が、囲繞体32の内周面の、基部31cに対向する位置に形成されている状態を表している。この場合、封止接合後に水晶振動子の外部からのレーザー照射によって水晶振動子1の特性調整を行えることに加え、囲繞体32内周面に前記金属膜6が形成されているので、レーザー照射による飛散金属は、基部31cの側面に前記金属膜が形成されている場合と比べて、腕部の先端近傍までの距離を長く取ることができるので再付着し難くなり、より安定した特性調整を行うことができる。
【0053】
図11は特性調整用金属膜6が、囲繞体32の外周面上に形成されている状態を表している。この場合、囲繞体32は透光材料で形成されている必要はなく、非透光材料が好ましい。また、前記金属膜6は水晶振動子1の外部に形成されているので、酸化防止のために当該金属膜の表面はクロム等から成る薄膜9で被覆されていることが好ましい。
【0054】
本発明の実施形態では圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子を挙げているが、その他の例としてATカット水晶振動子や、その他のカットの水晶振動子の製造においても本発明は適用可能である。
【0055】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る水晶振動子の分解斜視図である。
【図2】本発明の特性調整の状態を示す枠体の斜視図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る水晶振動子の長辺方向の断面図である。
【図6】本発明の形態に係る変形例を示す水晶振動子の長辺方向断面図である。
【図7】本発明の形態に係る変形例を示す水晶振動子の長辺方向断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る枠体の平面図である
【図9】本発明の他の実施形態に係る枠体の平面図である
【図10】本発明の他の実施形態に係る枠体の平面図である
【図11】本発明の他の実施形態に係る枠体の平面図である。
【図12】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 水晶振動子
2 蓋体
3 枠体
31 音叉型水晶振動片
31a 第1の腕部
31b 第2の腕部
31c 基部
311 第1の駆動電極
312 第2の駆動電極
4 ベース
5 接合材
6 特性調整用金属膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、当該基部から延出した複数の腕部とを有する音叉型圧電振動片と、当該基部と接続し、かつ前記音叉型圧電振動片を囲う囲繞体とで構成される枠体の両面に、平面視矩形状の蓋体とベースとが接合されてなる圧電振動デバイスであって、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面に特性調整を行うための調整金属膜が形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記囲繞体は透光材料から成るとともに、前記調整金属膜が当該囲繞体の内周面または前記音叉型圧電振動片の側面の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
基部と、当該基部から延出した複数の腕部とを有する音叉型圧電振動片と、当該基部と接続し、かつ前記音叉型圧電振動片を囲う囲繞体とで構成される枠体の両面に、平面視矩形状の蓋体とベースとが接合されてなる圧電振動デバイスであって、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面には特性調整を行うための調整金属膜が形成されているとともに、前記枠体が前記蓋体と前記ベースと接合された後に、当該枠体を介して当該調整金属膜の質量または面積を減少させることによって当該圧電振動デバイスの特性を調整することを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項1】
基部と、当該基部から延出した複数の腕部とを有する音叉型圧電振動片と、当該基部と接続し、かつ前記音叉型圧電振動片を囲う囲繞体とで構成される枠体の両面に、平面視矩形状の蓋体とベースとが接合されてなる圧電振動デバイスであって、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面に特性調整を行うための調整金属膜が形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記囲繞体は透光材料から成るとともに、前記調整金属膜が当該囲繞体の内周面または前記音叉型圧電振動片の側面の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
基部と、当該基部から延出した複数の腕部とを有する音叉型圧電振動片と、当該基部と接続し、かつ前記音叉型圧電振動片を囲う囲繞体とで構成される枠体の両面に、平面視矩形状の蓋体とベースとが接合されてなる圧電振動デバイスであって、前記囲繞体または前記音叉型圧電振動片の少なくとも一方の側面には特性調整を行うための調整金属膜が形成されているとともに、前記枠体が前記蓋体と前記ベースと接合された後に、当該枠体を介して当該調整金属膜の質量または面積を減少させることによって当該圧電振動デバイスの特性を調整することを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−219396(P2008−219396A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53076(P2007−53076)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
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