説明

圧電振動子とそれを用いた圧電発振器

【課題】 小型化を図るため、配線されているプリント基板上に圧電振動子を搭載して構成した圧電発振器であっても周波数のジャンプ現象を生じないようにする。
【解決手段】 多層セラミック板と該セラミック板の外周縁に形成したセラミック側壁部とからなるセラミックパッケージに圧電振動素子を収容して構成する圧電振動子であって、前記セラミック板を前記側壁部底部より底上げし、パッケージの外側底部に凹陥部を形成した圧電振動子とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は圧電振動子に関し、特にセラミックパッケージの外側底面に凹陥部を形成した圧電振動子とそれを用いた圧電発振器に関する。
【0002】
【従来の技術】圧電振動子、例えばATカット水晶振動子は小型であること、高精度、高安定な周波数が容易に得られるため、通信機器から電子機器まで広く用いられている。図5(a)は従来の表面実装形(SMD)水晶振動子の構成を示す斜視図、同図(b)はQ−Qにおける断面図である。ATカット水晶基板21の両主面に対向電極22a、22bを配置すると共に、該電極22a、22bから水晶基板21の端部に向けてリード電極23a、23bを延在して、水晶振動素子Yを形成する。そして、この水晶振動素子Yをセラミックパッケージ24の内底部に設けた台座25の上に載置し、リード電極23a、23bの端部を導電性接着剤26、26を用いて導通固定する。さらに、パッケージ24内の空気を乾燥窒素等で置換すると共に、パッケージ24の上部周縁に形成したメタライズ27と金属蓋28とを抵抗溶接等の手段を用いて気密封止し、水晶振動子Y’を構成する。
【0003】図6(a)は上記水晶振動子とトランジスタ等の電子部品を用いて構成した小型水晶発振器の平面図、同図(b)はQ−Qにおける断面図である。銅配線30を施したプリント基板31上に、水晶振動子Y’、トランジスタ(あるいはIC部品)32、抵抗32、コンデンサ32を搭載すると共に、リフロー槽を通してそれぞれの電子部品をはんだ付けし、発振周波数を所定の周波数に調整して水晶発振器を構成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のSMD形水晶振動子を用いて小型水晶発振器を構成すると、しばしば発振周波数のジャンプ現象が生ずるという問題があった。これは図6(a)に示すように、プリント基板の配線30上に水晶振動子Y’が搭載されていると、温度変動等の外的要因によりプリント基板31に歪みが生じ、水晶振動子の電極とプリント基板上の配線30との間の浮遊容量が変化して、周波数が僅かに変動するものと考えられる。なお、プリント基板上にはんだ付けされた水晶振動子のパッケージの底面とプリント基板面との間隙は、はんだによる浮きで0.04mm程度の間隙が生じている。しかしながら、水晶振動子Y’を搭載するスペースを避けてプリント配線を行うと、水晶発振器が大きくなるという問題と、引き回したことによる配線とアースとの浮遊容量により、水晶発振器の周波数温度特性がなめらかの3次曲線からずれると云う問題があった。本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、プリント基板の配線上に水晶振動子を配置しても周波数ジャンプ現象の生じない圧電振動子とそれを用いた圧電発振器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明に係る圧電振動子とそれを用いた圧電発振器の請求項1記載の発明は、セラミック板と該セラミック板の外周縁に設けたセラミック側壁部とからなるセラミックパッケージの内底部に圧電振動素子を収容して構成する圧電振動子において、前記セラミック板を前記側壁部底部より高い位置に設定して、パッケージの外側底部に凹陥部を形成したことを特徴とする圧電振動子である。請求項2記載の発明は、パッケージ外底部の隅に設けた端子電極部を除いてほぼ十字状に凹陥部を設けたことを特徴とする請求項1記載の圧電振動子である。請求項3記載の発明は、前記凹陥部の深さを0.1mm以上としたことを特徴とする請求項1あるいは2記載の圧電振動子である。請求項4記載の発明は、請求項1乃至3記載の圧電振動子を用いて構成したことを特徴とする圧電発振器である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1(a)は本発明に係るSMD形水晶振動子の構成を示す斜視図、同図(b)はQ−Qにおける断面図である。ATカット水晶基板1の主面に対向電極2a、2bを配置すると共に、該電極2a、2bから水晶基板1の端部に向けてリード電極3a、3bを延在して、水晶振動素子Yを形成する。この水晶振動素子Yをセラミックパッケージ4の内底部に設けた台座5の上に載置し、リード電極3a、3bの端部を導電性接着剤6、6を用いて導通固定する。さらに、パッケージ4の上部外周縁に形成したメタライズ7と金属蓋8とを抵抗溶接等の手段を用いて気密封止し、水晶振動子Y’を構成する。
【0007】本発明の特徴は、パッケージ4を構成する多層基板部4aをセラミック側壁部4bの底部に対して厚さtだけ底上げし、パッケージ底部に凹陥部9を形成したものを用いて水晶振動子Y’を構成したことである。
【0008】図2は本発明に係る水晶振動子Y’を用いた小型水晶発振器の構成を示す平面図であって、配線10を形成したプリント基板11上に水晶振動子Y’、トランジスタ(あるいはIC部品)12、抵抗12、コンデンサ12等を搭載して構成した小型水晶発振器である。この水晶発振器は配線10の上に水晶振動子Y’を搭載しているが、該水晶振動子Y’は図1(b)に示すように、パッケージの外底面に深さtの凹陥部を形成しているため、水晶振動子Y’の電極2bと配線10との間に誘電率の小さな空気層が入るため、その間の浮遊容量は極めて小さくなる。そこで、凹陥部の深さtを0.1mm、0.2mm、0.3mmの3種類のパッケージを用いて水晶振動子を製作すると共に、これを水晶発振器に組立てた。温度等の外的要因を変化させて、周波数ジャンプ現象を測定したところ、凹陥部の深さtを0.1mm以上とすれば周波数ジャンプ現象の影響がほぼ問題とならないことが判明した。なお、セラミックパッケージの分野では、セラミックシートを積層する技術が確立していることから、図1(c)のように側壁部を積層構造としてもよいことは言うまでもない。
【0009】図3は本発明に係る水晶振動子を他の小型水晶発振器に用いた例であって、プリント基板13上に導電性有する台座14を固定すると共に、該台座14に本発明になる水晶振動子Y’を重ねるように載置し、プリント基板の配線と水晶振動子Y’の端子部とを導通固定する。このような構造とすることにより、水晶振動子Y’の凹陥部の下にトランジスタ(あるいはIC部品)、抵抗、コンデンサ等の電子素子15を収容することが可能となり、小型水晶発振器を構成することが可能となる。ただ、このような用い方の場合には、パッケージの凹陥部の深さtは使用電子部品の高さにより、深くした方が好ましい。
【0010】図4は本発明に係る水晶振動子の他の実施例の構成を示す底面図である。セラミックパッケージ16の四隅に設けた端子電極17を避けるように、十字状の凹陥部18を設けた水晶振動子である。このような構造とすることにより、多層基板の層間に設けた配線と、あるいは水晶振動子素子の電極と、搭載するプリント基板の配線との間の浮遊容量を極めて小さくすることが可能となる。図4に示す水晶振動子を用いて水晶発振器を構成すると、ジャンプ現象がほぼ問題とならない水晶発振器を実現することが可能となる。
【0011】以上では水晶基板を用いた例を説明したが、本発明はこれのみに限定するものではなく、ランガサイト、四硼酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電基板を用いた圧電振動子にも適用できることは説明するまでもない。
【0012】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成したので、本発明になる水晶振動子を用いて小型水晶発振器を構成すると周波数ジャンプ現象の生じない水晶発振器を製作できるという優れた効果を表す。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る圧電振動子の構成を示す斜視図、(b)は断面図である。
【図2】本発明に係る圧電振動子を用いて構成した水晶発振器の構成を示す平面図である。
【図3】本発明に係る圧電振動子を用いて構成した他の水晶発振器の構成を示す平面図である。
【図4】本発明に係る他の圧電振動子の構成を示す底面図である。
【図5】(a)は従来の圧電振動子の構成を示す斜視図、(b)は断面図である。
【図6】(a)は従来の圧電振動子を用いた小型水晶発振器の構成を示す平面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
1・・圧電基板
2a、2b・・電極
3a、3b・・リード電極
4、16・・セラミックパッケージ
4a・・セラミックパッケージの多層基板
4b・・セラミック側壁部
5・・台座
6・・導電性接着剤
7・・メタリック
8・・金属蓋
9、18・・セラミックパッケージ外底部の凹陥部
10・・配線
11、13・・プリント基板
12、15・・電子部品
14・・導電性の台座
17・・端子電極
Y’・・圧電振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミック板と該セラミック板の外周縁に設けたセラミック側壁部とからなるセラミックパッケージの内底部に圧電振動素子を収容して構成する圧電振動子において、前記セラミック板を前記側壁部底部より高い位置に設定し、パッケージの外側底部に凹陥部を形成したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】 パッケージ外底部の隅に設けた端子電極部を除いてほぼ十字状に凹陥部を設けたことを特徴とする請求項1記載の圧電振動子。
【請求項3】 前記凹陥部の深さを0.1mm以上としたことを特徴とする請求項1あるいは2記載の圧電振動子。
【請求項4】 請求項1乃至3記載の圧電振動子を用いて構成したことを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−320258(P2001−320258A)
【公開日】平成13年11月16日(2001.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−139032(P2000−139032)
【出願日】平成12年5月11日(2000.5.11)
【出願人】(000003104)東洋通信機株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】