圧電振動子の製造方法、圧電振動子及び電子部品
【課題】ウエハから水晶振動子などの圧電振動子を製造するにあたり、ウエハの振動子形成領域の破損を抑えること。
【解決手段】圧電基板であるウエハにフォトリソグラフィーを利用して、多数の圧電振動子を形成してこれら圧電振動子を分断する圧電振動子の製造方法において、圧電基板の周縁部に圧電振動子を形成するための振動子形成領域を囲うように、クラック伝播防止用の貫通孔を形成し、前記貫通孔形成後、前記圧電振動子形成用エッチングマスクを形成し、次いで前記振動子形成領域に圧電振動子を形成する。ウエハの周端から中央に向かってクラックが発生しても、クラックの広がりを抑えることができる。
【解決手段】圧電基板であるウエハにフォトリソグラフィーを利用して、多数の圧電振動子を形成してこれら圧電振動子を分断する圧電振動子の製造方法において、圧電基板の周縁部に圧電振動子を形成するための振動子形成領域を囲うように、クラック伝播防止用の貫通孔を形成し、前記貫通孔形成後、前記圧電振動子形成用エッチングマスクを形成し、次いで前記振動子形成領域に圧電振動子を形成する。ウエハの周端から中央に向かってクラックが発生しても、クラックの広がりを抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電振動子の製造方法、その製造方法により製造された圧電振動子、その圧電振動子を含んだ電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は例えば、圧電振動片である水晶片(水晶ブランク)と、その水晶片の表面及び裏面に各々設けられた対となる励振用の電極(励振電極)とを有する素子であり、前記励振電極に電圧を印加すると、水晶の圧電逆効果によって結晶振動が励起される特性を利用し、周波数や時間の基準源として発振器等の電子部品に広く用いられている。
【0003】
従来の水晶振動子の製造工程の一例を説明する。先ず水晶により構成されるウエハWの中央の水晶片形成領域において、例えばその表裏面にマスクを形成する。続いて表裏面のマスクの前記形成領域において水晶片の外形に沿い且つ互いに重なり合う、マスクパターンを多数形成し、これらのマスクパターンにウエハW表面の水晶を露出させる。これらの互いに重なり合うマスクパターンの形成は、後述のアライメントマークMを用いてウエハWの位置を精度高く合わせ込まれることにより行われる。
【0004】
その後、ウエットエッチングを行い、表裏面のマスクパターンに沿って露出した水晶がエッチングされ、多数の水晶片の外形が同時に形成される。前記エッチング後、スパッタなどによりウエハWに付着した各水晶片の表裏面に金属膜を形成し、その表裏面の金属膜をエッチングして、既述の一対の励振電極と、その励振電極に電気的に接続されると共に励振電極から水晶片の外方に引き出された形状を有する引き出し電極とが形成され、これらの電極形成後に前記接続部が切削されて、各水晶片はウエハWから切り離される。
【0005】
このように各電極が形成され、水晶振動子として構成された水晶片は、例えばパッケージによって封止されて、前記引き出し電極が当該パッケージに設けられた電極と電気的に接続され、電子部品の製品として出荷される。
【0006】
ところで近年、水晶振動子の発振する周波数を高めるために水晶片の薄板化が進んでおり、その薄板化によってウエハWの厚さも小さくなり、例えば100μm程度の厚さのものが使用される場合がある。通常ウエハWは、例えば棒状の水晶の結晶体が所定の規格の大きさになるように研磨され、その結晶体から所定の厚さを有するように切り出されることによって製造されているが、その研磨によりウエハWの側周面にはチッピング(欠け)が発生している場合がある。
【0007】
特にウエハWの側周面の一部は、ウエハWに対して既述の各処理を行う際に用いられる各装置が、ウエハWの方向を判別するためオリエンテーションフラット(オリフラ)OFと呼ばれる平面として構成されており、このオリフラOFは、他の箇所よりも大きく削られることによりチッピングが発生しやすい。
【0008】
そしてウエハWは薄くなったことにより耐衝撃性が低下し、例えばウエハWに既述のような各処理が行われる間や各処理を行うための装置間を搬送する際に受ける衝撃により、前記側周面のチッピングから中央部に向かってクラック(ひび割れ)Cが発生するおそれがある。そして図16(a)に示すように、図中鎖線で示す水晶片形成領域11内にクラックCが広がると、その形成領域11内のクラックCの周囲では水晶片を形成することができないか、あるいは形成された水晶片に不良が生じるおそれがある。
【0009】
また、ウエハWの表面の例えば水晶片形成領域11を挟んだ左右2箇所には、その表面が若干削られたり、金属片が埋め込まれたりすることによりウエハWの位置決めの基準となるアライメントマークMが形成されており、既述のように水晶片の外形形成用の表裏面のマスクパターンを形成する際の位置合わせに用いられる他、例えば励振電極を形成するためのエッチングなどの各工程でアライメントマークMを基準にしてウエハWの位置合わせが行われる。
【0010】
従って、図16(b)に示すように、アライメントマークMがクラックCにより損傷を受けると、各処理時にウエハWの位置合わせが適切に行われなくなり、損傷を受けた後の処理工程は、正常に行われなくなり、既述のマスクパターンや電極などが正常な位置に形成できなくなる。その結果として水晶片及び水晶振動子の歩留まりが低下するおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ウエハから水晶振動子などの圧電振動子を製造するにあたり、ウエハの振動子形成領域の破損を抑えることにより、圧電振動子の歩留まりの低下を抑える技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧電振動子の製造方法は、圧電基板であるウエハにフォトリソグラフィーを利用して、多数の圧電振動子を形成してこれら圧電振動子を分断する圧電振動子の製造方法において、
圧電基板の周縁部に圧電振動子を形成するための振動子形成領域を囲うように、クラック伝播防止用の貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔形成後、前記圧電振動子形成用エッチングマスクを形成する工程と、
次いで前記振動子形成領域に圧電振動子を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
前記ウエハは、露光時にウエハの位置合わせを行うためのアライメントマークを備え、例えば前記貫通孔は、当該アライメントマークの外側に形成される。前記貫通孔は、互いに周方向に間隔を置いて複数設けられていてもよく、その場合例えば前記複数の貫通孔は、互いに隣接する貫通孔の一部同士がウエハの直径方向に重なり合っている。また例えばウエハの外形は予め規格値よりも大きく作られており、この規格値外ウエハに対してウエットエッチングまたはレーザー加工を施して前記規格値の大きさに成形するものであり、その場合、例えば前記規格値外ウエハを規格値の大きさに成形する工程と、前記貫通孔を形成する工程とはウエットエッチングまたはレーザー加工により同時に行われる。なおウエハの厚さは、例えば150μm以下である。
【0014】
本発明の圧電振動子は、既述の方法で製造されたことを特徴とし、本発明の電子部品は、前記圧電振動子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧電基板であるウエハに圧電振動子を形成するための振動子形成領域を囲うようにクラック伝播防止用の貫通孔が形成される。従って、その後の圧電振動子の形成工程において、ウエハに衝撃が加わり、ウエハの周端から中央に向かってクラックが発生しても、前記貫通孔を形成することにより、衝撃を伝達するものがなくなり、より内側へのクラックの進行を妨げ、当該クラックの広がりが抑えられる。その結果としてクラックがデバイス形成領域に達し、その領域が破損して圧電振動片の形成が妨げられることはなくなる。従って圧電振動片の歩留まりが低下することを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
続いて本発明の一実施の形態を示す。この実施の形態においては、図1に示すような例えばATカットされた水晶により構成される圧電基板であり、ウエハの規格よりも大きく形成された規格値外ウエハ2から図2に示す例えばその直径が3インチであるウエハWを形成し、そのウエハWから図3に示す圧電振動子である水晶振動子3を製造する手順について説明する。図1は規格値外ウエハ2の表面を示しており、図中鎖線で囲んだ領域21はデバイス形成領域を示している。なお規格値外ウエハ2は、例えば先ず水晶の原石の側壁の一部がオリフラOFとして削られ、その後オリフラOF以外の側壁が削られて、略円柱状に成形された後、その成形された原石が所定の厚さにスライスされることにより形成されたものである。また後述するようにデバイス形成領域21内に多数の圧電振動片である水晶片31が形成される。デバイス形成領域21を挟んだ、表面の左右2箇所は、予め若干切削されることによりアライメントマークMとして構成されている。図中の点線は前記ウエハWの外形を示している。また、規格値外ウエハ2及びウエハWの厚さは例えば150μm以下、例えば20μm〜150μmである。このように厚さが設定されるのは、ウエハの厚さがそのサイズのインチ数に対し50をかけた大きさ(μm)以下であるときにクラックの発生が問題となることが多く、またウエハの厚みが20μmより小さいとウエハの扱いが困難になるからである。従ってウエハWのサイズが2インチである場合にはその厚さは例えば20μm〜100μm,4インチである場合にはその厚さは例えば20μm〜200μmに夫々設定される。
【0017】
図2は、ウエハWの表面を示したものであり、後述するように前記規格値外ウエハ2の周縁全体がエッチングされることによりその外形が形成されると共に背景技術の欄で説明したオリフラOFが形成されたものである。ウエハWにはデバイス形成領域21及びアライメントマークMの外側に、ウエハWを厚さ方向に貫通した溝状の8つの貫通孔22が形成されており、各貫通孔22は、図に示すようにデバイス形成領域21及びアライメントマークMを囲む1つの輪が周方向に8つに分割された形状となっている。
【0018】
デバイス形成領域21内の図中点線で囲まれる領域は水晶振動子2が形成される領域101〜104を示しており、各領域からは夫々1片の水晶片が形成される。また実際は水晶振動子2が形成される領域は101〜104の4つだけではなく、図中鎖線で囲まれるデバイス形成領域21全体に亘り各々間隔をおいて設定されており、後述するウエハWから水晶振動子3を形成する際に行われる各処理はこのデバイス形成領域21全体に対して行われる。
【0019】
図3(a)、(b)は夫々水晶振動子3の表面、裏面を示しており、当該水晶振動子3の表面、裏面は夫々同様のレイアウトとなるように構成されている。図中31は長方形に形成された水晶片であり、図中32,33は水晶振動子3の表面の中央、裏面の中央に夫々設けられた一対の励振電極である。図中34,35は引き出し電極であり、水晶片31の表面及び裏面において励振電極32,33と夫々一体的に形成されている。引き出し電極34(35)は励振電極32(33)から夫々当該水晶片31の外方に展伸され、水晶片31の側面を介して水晶片32の裏面(表面)に跨るように形成されている。
【0020】
続いて図1の規格値外ウエハ2から図2のウエハWが形成される工程について図4を用いて説明する。図4は、前記規格値外ウエハ2に各処理が行われることにより、図1中矢印A−A’で示される縦断面が変化する様子を示している。先ず図4(a)、(b)に示すように規格値外ウエハ2の表面及び裏面にスパッタにより金属膜41,42が夫々成膜され、続いて図4(c)に示すように金属膜41,42上に夫々レジスト膜43,44が成膜される。図中金属膜41,42は夫々1層として示されているが実際にはCr(クロム)からなる下地膜上にAu(金)からなる膜が積層された積層膜として構成されている。後述する金属膜51,52も同様に構成される。
【0021】
続いて、図示は省略しているが、例えばレーザーを照射し、アライメントマークMが覆われた付近のレジスト膜43及び金属膜41を除去してアライメントマークMを露出させた後、そのアライメントマークMに基づき規格値外ウエハ2を位置合わせし、表裏面のレジスト膜43,44に対して、ウエハWの形状に合わせて露光を行う。その後、規格値外ウエハ2を現像処理し、露光した部分に対応するレジスト膜43,44を除去する(図4(d))。除去部分はウエハWの外形領域よりも外報の外側領域45,46及び貫通孔22を形成すべき領域である貫通孔形成領域47,48である。
【0022】
現像処理後、除去されずに残ったレジスト膜43,44をマスクとして金属膜41,42をエッチングし(図4(e))、金属膜41,42にマスクパターンを形成し、段差45,46及びレジストパターン47,48にウエハWの表面(水晶面)を露出させる。図5はこのようにマスクパターンが形成された規格値外ウエハ2の表面を表している。
【0023】
然る後、規格値外ウエハ2をエッチング液であるフッ酸を含む溶液に浸漬し、除去されずに残った金属膜41,42をマスクとして、規格値外ウエハ2の周縁部をエッチングしてウエハWの外形を形成すると同時にパターン47,48に沿ってエッチングして貫通孔22を形成する(図4(f))。その後、表裏面の金属膜41,42及びレジスト膜43,44を除去する(図4(g))。
【0024】
続いて既述のように形成されたウエハWから水晶振動子3を形成する工程について図6〜図7を用いて順次説明する。図6〜図7は、ウエハWに各処理が行われることにより図2中矢印B−B’で示される、水晶振動子2が形成される振動子形成領域101,102の縦断面が変化する様子を示している。先ずウエハWの表面、裏面にスパッタによりCr(クロム)及びAu(金)からなる金属膜51,52が夫々成膜された後、各金属膜51,52上に夫々レジスト膜53,54が成膜される。
【0025】
続いて、例えばレーザーを照射し、アライメントマークMが覆われた付近のレジスト膜53及び金属膜51を除去してアライメントマークMを露出させた後、そのアライメントマークMを基準としてウエハWの位置合わせを行う。然る後、ウエハWは、領域101〜104の形状に応じたパターンマスクを用いて露光された後に現像され、各領域101〜104における表面側のレジスト膜53が除去され、続いて除去されずに残ったレジスト膜53をマスクとして各領域101〜104における金属膜51がエッチングされて除去される(図6(a))。図8はこのときの領域101〜104の表面を示している。
【0026】
然る後、形成される水晶片21が所望の周波数特性を備えるように、金属膜51をマスクとして領域101〜104のウエハWの表面を若干エッチングし、その厚さを調整した後、例えば表面側のレジスト膜53、裏面側の金属膜52及び裏面側のレジスト膜54が剥離される。
【0027】
然る後ウエハWの表面、裏面には例えばスパッタにより、水晶片31の外形を形成するために行うエッチングのマスクとなる、Cr及びAuにより構成される金属膜61、金属膜62が夫々成膜され、続いて金属膜61,62上にレジスト膜63,64が夫々成膜される(図6(b))。
【0028】
各膜の成膜後、既述のようにアライメントマークMを露出させ、アライメントマークMに基づき、ウエハWの位置合わせを行ったうえで、レジスト膜63,64の露光、現像を行い、各レジスト膜63,64にレジストパターン65,66を形成する(図6(c))。図9は、レジストパターン65が形成されたウエハWの表面を示しており、図示されるようにレジストパターン65は、各領域101〜104において、領域の周縁に沿い、且つ形成しようとする水晶片31の外周に沿って四角枠状に形成されている。またウエハWの裏面側のレジストパターン66は、後述のマスクパターンを用いたエッチングにより水晶片31の外形を切り出すために表面側のレジストパターン65と同じ形状に、且つレジストパターン65と重なり合うように形成される。なおエッチング後により水晶片31の外形が形成された後も水晶片がウエハWに支持されるように、領域101〜104の周縁の一部にはレジストパターン65,66が掛けられていない。
【0029】
図6に戻って、レジストパターン65,66の形成後、このレジストパターン65,66に沿って金属膜61,62をエッチングし、金属膜61,62にウエハW表面(水晶面)が露出するようにマスクパターンを形成した後、ウエハWは、エッチング液であるフッ酸を含む溶液に浸漬されて前記マスクパターンに沿って表面及び裏面からエッチングされ、ウエハWの表裏を貫通する溝部67が形成されて、水晶片31の外形が形成される(図7(d))。
【0030】
水晶片31の外形形成後、ウエハWの表面及び裏面からレジスト膜63,64及び金属膜51,61,62が除去され、然る後、各水晶片21に電極を形成するためにウエハWの表面及び裏面は洗浄処理される。続いて例えばスパッタによりウエハWの表面、裏面に、図3で示した励振電極32,33及び引き出し電極34,35を構成する金属膜71,72が、水晶片31の側面にもまたがるように夫々形成され、続いて前記各金属膜71,72上に夫々レジスト膜73,74が形成され(図7(a))、ウエハWがアライメントマークMを基に位置合わせされた上で、レジスト膜73,74が露光、現像されることにより、図10にも示すように水晶片31の励振電極32,33及び引き出し電極34,35の形状に夫々対応するように成形される(図7(b))。そしてこれらの成形されたレジスト膜73,74をマスクとして金属膜71,72をエッチングし、励振電極32,33及び引き出し電極34,35が形成され、これらの各電極形成後にレジスト膜83,84が除去される。その後水晶片31をウエハWから切り離すことにより水晶振動子3が形成される(図7(c))。
【0031】
このようにウエハWが形成されてから水晶振動子3がウエハWから切り離されるまでの各処理中、これらの処理を行う装置にウエハWが搬送される際及び前記装置の所定の部位に載置される際において、ウエハWに衝撃が加わり、その側周端から中央部に向けてクラックCが発生し、図11(a)に示すようにクラックCがウエハWの中央部へ向けて広がっても、図11(b)に示すようにクラックCが貫通孔22に達すると、ウエハWに加わった衝撃が緩和され、クラックCの広がりが抑えられる。
【0032】
水晶振動子3は例えば図12(a)、(b)のようにパッケージ8に封入されて電子部品として製造される。図中81はパッケージ8内に設けられた一対の電極であり(図では1個のみ示している)、導電性接着剤82を介して引き出し電極34,35に電気的に接続される。図中83はパッケージ8の下部に設けられた電極であり、パッケージ8内の配線を介して前記電極81に電気的に接続されている。このパッケージ8は、例えば発振回路の回路部品が搭載されている図示しない配線基板に搭載される。
【0033】
本実施形態においては、ウエハWの周縁部にデバイス形成領域21及びアライメントマークMを囲み、ウエハWを厚さ方向に貫通するように貫通孔22を形成し、そのウエハWから水晶振動子3を形成している。従って貫通孔22の形成後、ウエハWに衝撃が加わり、ウエハWの周端から中央に向かってクラックCが発生しても、当該貫通孔22を形成することにより、衝撃を伝達するものがなくなり、より内側へのクラックCの進行を妨げ、当該クラックCの広がりが抑えられる。その結果としてクラックCがデバイス形成領域21に達し、その形成領域21が破損して水晶振動子3の形成が妨げられる。またクラックCがアライメントマークMに達し、ウエハWの位置合わせ不良により水晶片外形形成用のマスクパターンの形成などの、その後のアライメントマークを用いる各処理が影響を受け、正常な水晶片31の形成が妨げられることを抑えることができる。従って水晶片31及びこの水晶片31を用いて形成される水晶振動子3の歩留まりが低下することを抑えることができる。
【0034】
また上記実施形態では規格値外ウエハ2の周縁をウエットエッチングすることにより、ウエハWの外形を形成しており、研磨によりウエハWの外形を形成する場合に比べてウエハWの周端においてチッピングの発生を抑えることができる。従ってクラックCの発生が抑えられ、デバイス形成領域21及びアライメントマークMの破損をより確実に抑えることができる。またウエハWの外形を形成すると同時に貫通孔22を形成しているため、これらを別々に形成する場合に比べてスループットの低下を抑えることができる。
【0035】
貫通孔22を形成するにあたってはウエットエッチングを行う代わりに、ウエハWにレーザーを照射して形成を行うか、砂などの研磨剤を吹き付けるいわゆるサンドブラストにより形成を行ってもよい。
【0036】
クラックCの広がりを防ぐために貫通孔は、図13のように形成されてもよい。図に示すようにこのウエハWにはアライメントマークM及びデバイス形成領域21を囲むようにウエハWの表裏を貫通する溝状の貫通孔91が形成されており、貫通孔91は、既述の実施形態の貫通孔22と同様に輪が周方向に複数に分割された形状を有している。この貫通孔91の外側にはウエハWの表裏を貫通する貫通孔92が形成されている。貫通孔92も輪が周方向に分割された形状を有しており、貫通孔91の切れ目をカバーするように形成され、貫通孔91及び貫通孔92によりアライメントマークM及びデバイス形成領域21の全周が囲まれている。これによってクラックCがアライメントマークM及びデバイス形成領域21に達し、これを損傷することをより確実に防ぐことができる。
【0037】
なおクラック伝播防止用の貫通孔としては、図14(a)に示すように多数の円孔93がウエハWの周方向に配列されたものであってもよい。また図14(b)に示すように表裏が貫通した円弧状のスリット94をウエハWの周方向に沿って多数形成してもよい。隣接するスリット94の一部同士はウエハWの直径方向に重なり合っており、このように形成されることでウエハWの全周からのクラックCの伝播をより確実に抑えられるようにしている。また図15に示すように貫通孔は複数形成されることに限られず、ウエハWの周方向に沿ってスリット状に1つの貫通孔95が形成されていてもよい
【0038】
また上記の実施形態ではウエハWの外形を形成すると同時に貫通孔22を同時に形成しているが、ウエハWの外形を形成する前に例えば貫通孔22に対応するマスクパターンを形成してそのマスクパターンに沿って貫通孔22の形成を行った後、ウエハWの外形に対応する外形形成用マスクパターンを持ったマスクを形成し、エッチングを行ってウエハWの外形形成を行ってもよい。またウエハWの外形形成を行った後で貫通孔22を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に用いられる基板を示した図である。
【図2】本発明の実施形態の製造工程により前記基板から形成されるウエハを示した図である。
【図3】本発明の実施形態の製造工程により前記ウエハから形成される水晶振動子を示した図である。
【図4】前記ウエハの製造工程を示した工程図である。
【図5】前記製造工程における基板を示した図である。
【図6】前記水晶振動子の製造工程を示した工程図である。
【図7】前記水晶振動子の製造工程を示した工程図である。
【図8】前記製造工程においてウエハに形成されるパターンを示した説明図である。
【図9】前記製造工程においてウエハに形成されるパターンを示した説明図である。
【図10】前記製造工程においてウエハに形成される水晶片を示した説明図である。
【図11】前記製造工程においてクラックの広がりが抑えられる様子を示した説明図である。
【図12】パッケージに封入された状態の前記水晶振動子を示した説明図である。
【図13】他のウエハの構成を示した図である。
【図14】他のウエハの構成を示した図である。
【図15】他のウエハの構成を示した図である。
【図16】従来の水晶振動子の製造工程において、ウエハに発生したクラックを示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
C クラック
M アライメントマーク
W ウエハ
101,102,103,104 水晶振動子形成領域
2 規格値外ウエハ
21 デバイス形成領域
3 水晶振動子
31 水晶片
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電振動子の製造方法、その製造方法により製造された圧電振動子、その圧電振動子を含んだ電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は例えば、圧電振動片である水晶片(水晶ブランク)と、その水晶片の表面及び裏面に各々設けられた対となる励振用の電極(励振電極)とを有する素子であり、前記励振電極に電圧を印加すると、水晶の圧電逆効果によって結晶振動が励起される特性を利用し、周波数や時間の基準源として発振器等の電子部品に広く用いられている。
【0003】
従来の水晶振動子の製造工程の一例を説明する。先ず水晶により構成されるウエハWの中央の水晶片形成領域において、例えばその表裏面にマスクを形成する。続いて表裏面のマスクの前記形成領域において水晶片の外形に沿い且つ互いに重なり合う、マスクパターンを多数形成し、これらのマスクパターンにウエハW表面の水晶を露出させる。これらの互いに重なり合うマスクパターンの形成は、後述のアライメントマークMを用いてウエハWの位置を精度高く合わせ込まれることにより行われる。
【0004】
その後、ウエットエッチングを行い、表裏面のマスクパターンに沿って露出した水晶がエッチングされ、多数の水晶片の外形が同時に形成される。前記エッチング後、スパッタなどによりウエハWに付着した各水晶片の表裏面に金属膜を形成し、その表裏面の金属膜をエッチングして、既述の一対の励振電極と、その励振電極に電気的に接続されると共に励振電極から水晶片の外方に引き出された形状を有する引き出し電極とが形成され、これらの電極形成後に前記接続部が切削されて、各水晶片はウエハWから切り離される。
【0005】
このように各電極が形成され、水晶振動子として構成された水晶片は、例えばパッケージによって封止されて、前記引き出し電極が当該パッケージに設けられた電極と電気的に接続され、電子部品の製品として出荷される。
【0006】
ところで近年、水晶振動子の発振する周波数を高めるために水晶片の薄板化が進んでおり、その薄板化によってウエハWの厚さも小さくなり、例えば100μm程度の厚さのものが使用される場合がある。通常ウエハWは、例えば棒状の水晶の結晶体が所定の規格の大きさになるように研磨され、その結晶体から所定の厚さを有するように切り出されることによって製造されているが、その研磨によりウエハWの側周面にはチッピング(欠け)が発生している場合がある。
【0007】
特にウエハWの側周面の一部は、ウエハWに対して既述の各処理を行う際に用いられる各装置が、ウエハWの方向を判別するためオリエンテーションフラット(オリフラ)OFと呼ばれる平面として構成されており、このオリフラOFは、他の箇所よりも大きく削られることによりチッピングが発生しやすい。
【0008】
そしてウエハWは薄くなったことにより耐衝撃性が低下し、例えばウエハWに既述のような各処理が行われる間や各処理を行うための装置間を搬送する際に受ける衝撃により、前記側周面のチッピングから中央部に向かってクラック(ひび割れ)Cが発生するおそれがある。そして図16(a)に示すように、図中鎖線で示す水晶片形成領域11内にクラックCが広がると、その形成領域11内のクラックCの周囲では水晶片を形成することができないか、あるいは形成された水晶片に不良が生じるおそれがある。
【0009】
また、ウエハWの表面の例えば水晶片形成領域11を挟んだ左右2箇所には、その表面が若干削られたり、金属片が埋め込まれたりすることによりウエハWの位置決めの基準となるアライメントマークMが形成されており、既述のように水晶片の外形形成用の表裏面のマスクパターンを形成する際の位置合わせに用いられる他、例えば励振電極を形成するためのエッチングなどの各工程でアライメントマークMを基準にしてウエハWの位置合わせが行われる。
【0010】
従って、図16(b)に示すように、アライメントマークMがクラックCにより損傷を受けると、各処理時にウエハWの位置合わせが適切に行われなくなり、損傷を受けた後の処理工程は、正常に行われなくなり、既述のマスクパターンや電極などが正常な位置に形成できなくなる。その結果として水晶片及び水晶振動子の歩留まりが低下するおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ウエハから水晶振動子などの圧電振動子を製造するにあたり、ウエハの振動子形成領域の破損を抑えることにより、圧電振動子の歩留まりの低下を抑える技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧電振動子の製造方法は、圧電基板であるウエハにフォトリソグラフィーを利用して、多数の圧電振動子を形成してこれら圧電振動子を分断する圧電振動子の製造方法において、
圧電基板の周縁部に圧電振動子を形成するための振動子形成領域を囲うように、クラック伝播防止用の貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔形成後、前記圧電振動子形成用エッチングマスクを形成する工程と、
次いで前記振動子形成領域に圧電振動子を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
前記ウエハは、露光時にウエハの位置合わせを行うためのアライメントマークを備え、例えば前記貫通孔は、当該アライメントマークの外側に形成される。前記貫通孔は、互いに周方向に間隔を置いて複数設けられていてもよく、その場合例えば前記複数の貫通孔は、互いに隣接する貫通孔の一部同士がウエハの直径方向に重なり合っている。また例えばウエハの外形は予め規格値よりも大きく作られており、この規格値外ウエハに対してウエットエッチングまたはレーザー加工を施して前記規格値の大きさに成形するものであり、その場合、例えば前記規格値外ウエハを規格値の大きさに成形する工程と、前記貫通孔を形成する工程とはウエットエッチングまたはレーザー加工により同時に行われる。なおウエハの厚さは、例えば150μm以下である。
【0014】
本発明の圧電振動子は、既述の方法で製造されたことを特徴とし、本発明の電子部品は、前記圧電振動子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧電基板であるウエハに圧電振動子を形成するための振動子形成領域を囲うようにクラック伝播防止用の貫通孔が形成される。従って、その後の圧電振動子の形成工程において、ウエハに衝撃が加わり、ウエハの周端から中央に向かってクラックが発生しても、前記貫通孔を形成することにより、衝撃を伝達するものがなくなり、より内側へのクラックの進行を妨げ、当該クラックの広がりが抑えられる。その結果としてクラックがデバイス形成領域に達し、その領域が破損して圧電振動片の形成が妨げられることはなくなる。従って圧電振動片の歩留まりが低下することを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
続いて本発明の一実施の形態を示す。この実施の形態においては、図1に示すような例えばATカットされた水晶により構成される圧電基板であり、ウエハの規格よりも大きく形成された規格値外ウエハ2から図2に示す例えばその直径が3インチであるウエハWを形成し、そのウエハWから図3に示す圧電振動子である水晶振動子3を製造する手順について説明する。図1は規格値外ウエハ2の表面を示しており、図中鎖線で囲んだ領域21はデバイス形成領域を示している。なお規格値外ウエハ2は、例えば先ず水晶の原石の側壁の一部がオリフラOFとして削られ、その後オリフラOF以外の側壁が削られて、略円柱状に成形された後、その成形された原石が所定の厚さにスライスされることにより形成されたものである。また後述するようにデバイス形成領域21内に多数の圧電振動片である水晶片31が形成される。デバイス形成領域21を挟んだ、表面の左右2箇所は、予め若干切削されることによりアライメントマークMとして構成されている。図中の点線は前記ウエハWの外形を示している。また、規格値外ウエハ2及びウエハWの厚さは例えば150μm以下、例えば20μm〜150μmである。このように厚さが設定されるのは、ウエハの厚さがそのサイズのインチ数に対し50をかけた大きさ(μm)以下であるときにクラックの発生が問題となることが多く、またウエハの厚みが20μmより小さいとウエハの扱いが困難になるからである。従ってウエハWのサイズが2インチである場合にはその厚さは例えば20μm〜100μm,4インチである場合にはその厚さは例えば20μm〜200μmに夫々設定される。
【0017】
図2は、ウエハWの表面を示したものであり、後述するように前記規格値外ウエハ2の周縁全体がエッチングされることによりその外形が形成されると共に背景技術の欄で説明したオリフラOFが形成されたものである。ウエハWにはデバイス形成領域21及びアライメントマークMの外側に、ウエハWを厚さ方向に貫通した溝状の8つの貫通孔22が形成されており、各貫通孔22は、図に示すようにデバイス形成領域21及びアライメントマークMを囲む1つの輪が周方向に8つに分割された形状となっている。
【0018】
デバイス形成領域21内の図中点線で囲まれる領域は水晶振動子2が形成される領域101〜104を示しており、各領域からは夫々1片の水晶片が形成される。また実際は水晶振動子2が形成される領域は101〜104の4つだけではなく、図中鎖線で囲まれるデバイス形成領域21全体に亘り各々間隔をおいて設定されており、後述するウエハWから水晶振動子3を形成する際に行われる各処理はこのデバイス形成領域21全体に対して行われる。
【0019】
図3(a)、(b)は夫々水晶振動子3の表面、裏面を示しており、当該水晶振動子3の表面、裏面は夫々同様のレイアウトとなるように構成されている。図中31は長方形に形成された水晶片であり、図中32,33は水晶振動子3の表面の中央、裏面の中央に夫々設けられた一対の励振電極である。図中34,35は引き出し電極であり、水晶片31の表面及び裏面において励振電極32,33と夫々一体的に形成されている。引き出し電極34(35)は励振電極32(33)から夫々当該水晶片31の外方に展伸され、水晶片31の側面を介して水晶片32の裏面(表面)に跨るように形成されている。
【0020】
続いて図1の規格値外ウエハ2から図2のウエハWが形成される工程について図4を用いて説明する。図4は、前記規格値外ウエハ2に各処理が行われることにより、図1中矢印A−A’で示される縦断面が変化する様子を示している。先ず図4(a)、(b)に示すように規格値外ウエハ2の表面及び裏面にスパッタにより金属膜41,42が夫々成膜され、続いて図4(c)に示すように金属膜41,42上に夫々レジスト膜43,44が成膜される。図中金属膜41,42は夫々1層として示されているが実際にはCr(クロム)からなる下地膜上にAu(金)からなる膜が積層された積層膜として構成されている。後述する金属膜51,52も同様に構成される。
【0021】
続いて、図示は省略しているが、例えばレーザーを照射し、アライメントマークMが覆われた付近のレジスト膜43及び金属膜41を除去してアライメントマークMを露出させた後、そのアライメントマークMに基づき規格値外ウエハ2を位置合わせし、表裏面のレジスト膜43,44に対して、ウエハWの形状に合わせて露光を行う。その後、規格値外ウエハ2を現像処理し、露光した部分に対応するレジスト膜43,44を除去する(図4(d))。除去部分はウエハWの外形領域よりも外報の外側領域45,46及び貫通孔22を形成すべき領域である貫通孔形成領域47,48である。
【0022】
現像処理後、除去されずに残ったレジスト膜43,44をマスクとして金属膜41,42をエッチングし(図4(e))、金属膜41,42にマスクパターンを形成し、段差45,46及びレジストパターン47,48にウエハWの表面(水晶面)を露出させる。図5はこのようにマスクパターンが形成された規格値外ウエハ2の表面を表している。
【0023】
然る後、規格値外ウエハ2をエッチング液であるフッ酸を含む溶液に浸漬し、除去されずに残った金属膜41,42をマスクとして、規格値外ウエハ2の周縁部をエッチングしてウエハWの外形を形成すると同時にパターン47,48に沿ってエッチングして貫通孔22を形成する(図4(f))。その後、表裏面の金属膜41,42及びレジスト膜43,44を除去する(図4(g))。
【0024】
続いて既述のように形成されたウエハWから水晶振動子3を形成する工程について図6〜図7を用いて順次説明する。図6〜図7は、ウエハWに各処理が行われることにより図2中矢印B−B’で示される、水晶振動子2が形成される振動子形成領域101,102の縦断面が変化する様子を示している。先ずウエハWの表面、裏面にスパッタによりCr(クロム)及びAu(金)からなる金属膜51,52が夫々成膜された後、各金属膜51,52上に夫々レジスト膜53,54が成膜される。
【0025】
続いて、例えばレーザーを照射し、アライメントマークMが覆われた付近のレジスト膜53及び金属膜51を除去してアライメントマークMを露出させた後、そのアライメントマークMを基準としてウエハWの位置合わせを行う。然る後、ウエハWは、領域101〜104の形状に応じたパターンマスクを用いて露光された後に現像され、各領域101〜104における表面側のレジスト膜53が除去され、続いて除去されずに残ったレジスト膜53をマスクとして各領域101〜104における金属膜51がエッチングされて除去される(図6(a))。図8はこのときの領域101〜104の表面を示している。
【0026】
然る後、形成される水晶片21が所望の周波数特性を備えるように、金属膜51をマスクとして領域101〜104のウエハWの表面を若干エッチングし、その厚さを調整した後、例えば表面側のレジスト膜53、裏面側の金属膜52及び裏面側のレジスト膜54が剥離される。
【0027】
然る後ウエハWの表面、裏面には例えばスパッタにより、水晶片31の外形を形成するために行うエッチングのマスクとなる、Cr及びAuにより構成される金属膜61、金属膜62が夫々成膜され、続いて金属膜61,62上にレジスト膜63,64が夫々成膜される(図6(b))。
【0028】
各膜の成膜後、既述のようにアライメントマークMを露出させ、アライメントマークMに基づき、ウエハWの位置合わせを行ったうえで、レジスト膜63,64の露光、現像を行い、各レジスト膜63,64にレジストパターン65,66を形成する(図6(c))。図9は、レジストパターン65が形成されたウエハWの表面を示しており、図示されるようにレジストパターン65は、各領域101〜104において、領域の周縁に沿い、且つ形成しようとする水晶片31の外周に沿って四角枠状に形成されている。またウエハWの裏面側のレジストパターン66は、後述のマスクパターンを用いたエッチングにより水晶片31の外形を切り出すために表面側のレジストパターン65と同じ形状に、且つレジストパターン65と重なり合うように形成される。なおエッチング後により水晶片31の外形が形成された後も水晶片がウエハWに支持されるように、領域101〜104の周縁の一部にはレジストパターン65,66が掛けられていない。
【0029】
図6に戻って、レジストパターン65,66の形成後、このレジストパターン65,66に沿って金属膜61,62をエッチングし、金属膜61,62にウエハW表面(水晶面)が露出するようにマスクパターンを形成した後、ウエハWは、エッチング液であるフッ酸を含む溶液に浸漬されて前記マスクパターンに沿って表面及び裏面からエッチングされ、ウエハWの表裏を貫通する溝部67が形成されて、水晶片31の外形が形成される(図7(d))。
【0030】
水晶片31の外形形成後、ウエハWの表面及び裏面からレジスト膜63,64及び金属膜51,61,62が除去され、然る後、各水晶片21に電極を形成するためにウエハWの表面及び裏面は洗浄処理される。続いて例えばスパッタによりウエハWの表面、裏面に、図3で示した励振電極32,33及び引き出し電極34,35を構成する金属膜71,72が、水晶片31の側面にもまたがるように夫々形成され、続いて前記各金属膜71,72上に夫々レジスト膜73,74が形成され(図7(a))、ウエハWがアライメントマークMを基に位置合わせされた上で、レジスト膜73,74が露光、現像されることにより、図10にも示すように水晶片31の励振電極32,33及び引き出し電極34,35の形状に夫々対応するように成形される(図7(b))。そしてこれらの成形されたレジスト膜73,74をマスクとして金属膜71,72をエッチングし、励振電極32,33及び引き出し電極34,35が形成され、これらの各電極形成後にレジスト膜83,84が除去される。その後水晶片31をウエハWから切り離すことにより水晶振動子3が形成される(図7(c))。
【0031】
このようにウエハWが形成されてから水晶振動子3がウエハWから切り離されるまでの各処理中、これらの処理を行う装置にウエハWが搬送される際及び前記装置の所定の部位に載置される際において、ウエハWに衝撃が加わり、その側周端から中央部に向けてクラックCが発生し、図11(a)に示すようにクラックCがウエハWの中央部へ向けて広がっても、図11(b)に示すようにクラックCが貫通孔22に達すると、ウエハWに加わった衝撃が緩和され、クラックCの広がりが抑えられる。
【0032】
水晶振動子3は例えば図12(a)、(b)のようにパッケージ8に封入されて電子部品として製造される。図中81はパッケージ8内に設けられた一対の電極であり(図では1個のみ示している)、導電性接着剤82を介して引き出し電極34,35に電気的に接続される。図中83はパッケージ8の下部に設けられた電極であり、パッケージ8内の配線を介して前記電極81に電気的に接続されている。このパッケージ8は、例えば発振回路の回路部品が搭載されている図示しない配線基板に搭載される。
【0033】
本実施形態においては、ウエハWの周縁部にデバイス形成領域21及びアライメントマークMを囲み、ウエハWを厚さ方向に貫通するように貫通孔22を形成し、そのウエハWから水晶振動子3を形成している。従って貫通孔22の形成後、ウエハWに衝撃が加わり、ウエハWの周端から中央に向かってクラックCが発生しても、当該貫通孔22を形成することにより、衝撃を伝達するものがなくなり、より内側へのクラックCの進行を妨げ、当該クラックCの広がりが抑えられる。その結果としてクラックCがデバイス形成領域21に達し、その形成領域21が破損して水晶振動子3の形成が妨げられる。またクラックCがアライメントマークMに達し、ウエハWの位置合わせ不良により水晶片外形形成用のマスクパターンの形成などの、その後のアライメントマークを用いる各処理が影響を受け、正常な水晶片31の形成が妨げられることを抑えることができる。従って水晶片31及びこの水晶片31を用いて形成される水晶振動子3の歩留まりが低下することを抑えることができる。
【0034】
また上記実施形態では規格値外ウエハ2の周縁をウエットエッチングすることにより、ウエハWの外形を形成しており、研磨によりウエハWの外形を形成する場合に比べてウエハWの周端においてチッピングの発生を抑えることができる。従ってクラックCの発生が抑えられ、デバイス形成領域21及びアライメントマークMの破損をより確実に抑えることができる。またウエハWの外形を形成すると同時に貫通孔22を形成しているため、これらを別々に形成する場合に比べてスループットの低下を抑えることができる。
【0035】
貫通孔22を形成するにあたってはウエットエッチングを行う代わりに、ウエハWにレーザーを照射して形成を行うか、砂などの研磨剤を吹き付けるいわゆるサンドブラストにより形成を行ってもよい。
【0036】
クラックCの広がりを防ぐために貫通孔は、図13のように形成されてもよい。図に示すようにこのウエハWにはアライメントマークM及びデバイス形成領域21を囲むようにウエハWの表裏を貫通する溝状の貫通孔91が形成されており、貫通孔91は、既述の実施形態の貫通孔22と同様に輪が周方向に複数に分割された形状を有している。この貫通孔91の外側にはウエハWの表裏を貫通する貫通孔92が形成されている。貫通孔92も輪が周方向に分割された形状を有しており、貫通孔91の切れ目をカバーするように形成され、貫通孔91及び貫通孔92によりアライメントマークM及びデバイス形成領域21の全周が囲まれている。これによってクラックCがアライメントマークM及びデバイス形成領域21に達し、これを損傷することをより確実に防ぐことができる。
【0037】
なおクラック伝播防止用の貫通孔としては、図14(a)に示すように多数の円孔93がウエハWの周方向に配列されたものであってもよい。また図14(b)に示すように表裏が貫通した円弧状のスリット94をウエハWの周方向に沿って多数形成してもよい。隣接するスリット94の一部同士はウエハWの直径方向に重なり合っており、このように形成されることでウエハWの全周からのクラックCの伝播をより確実に抑えられるようにしている。また図15に示すように貫通孔は複数形成されることに限られず、ウエハWの周方向に沿ってスリット状に1つの貫通孔95が形成されていてもよい
【0038】
また上記の実施形態ではウエハWの外形を形成すると同時に貫通孔22を同時に形成しているが、ウエハWの外形を形成する前に例えば貫通孔22に対応するマスクパターンを形成してそのマスクパターンに沿って貫通孔22の形成を行った後、ウエハWの外形に対応する外形形成用マスクパターンを持ったマスクを形成し、エッチングを行ってウエハWの外形形成を行ってもよい。またウエハWの外形形成を行った後で貫通孔22を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に用いられる基板を示した図である。
【図2】本発明の実施形態の製造工程により前記基板から形成されるウエハを示した図である。
【図3】本発明の実施形態の製造工程により前記ウエハから形成される水晶振動子を示した図である。
【図4】前記ウエハの製造工程を示した工程図である。
【図5】前記製造工程における基板を示した図である。
【図6】前記水晶振動子の製造工程を示した工程図である。
【図7】前記水晶振動子の製造工程を示した工程図である。
【図8】前記製造工程においてウエハに形成されるパターンを示した説明図である。
【図9】前記製造工程においてウエハに形成されるパターンを示した説明図である。
【図10】前記製造工程においてウエハに形成される水晶片を示した説明図である。
【図11】前記製造工程においてクラックの広がりが抑えられる様子を示した説明図である。
【図12】パッケージに封入された状態の前記水晶振動子を示した説明図である。
【図13】他のウエハの構成を示した図である。
【図14】他のウエハの構成を示した図である。
【図15】他のウエハの構成を示した図である。
【図16】従来の水晶振動子の製造工程において、ウエハに発生したクラックを示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
C クラック
M アライメントマーク
W ウエハ
101,102,103,104 水晶振動子形成領域
2 規格値外ウエハ
21 デバイス形成領域
3 水晶振動子
31 水晶片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板であるウエハにフォトリソグラフィーを利用して、多数の圧電振動子を形成してこれら圧電振動子を分断する圧電振動子の製造方法において、
圧電基板の周縁部に圧電振動子を形成するための振動子形成領域を囲うように、クラック伝播防止用の貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔形成後、前記圧電振動子形成用エッチングマスクを形成する工程と、
次いで前記振動子形成領域に圧電振動子を形成する工程と、
を含むことを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
前記ウエハは、露光時にウエハの位置合わせを行うためのアライメントマークを備え、
前記貫通孔は、当該アライメントマークの外側に形成されることを特徴とする請求項1記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔は、互いに周方向に間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項4】
前記複数の貫通孔は、互いに隣接する貫通孔の一部同士がウエハの直径方向に重なり合っていることを特徴とする請求項3記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項5】
ウエハの外形は予め規格値よりも大きく作られており、この規格値外ウエハに対してウエットエッチングまたはレーザー加工を施して前記規格値の大きさに成形する工程を含む請求項1ないし4のいずれか一に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
前記規格値外ウエハを規格値の大きさに成形する工程と、前記貫通孔を形成する工程とは、ウエットエッチングまたはレーザー加工により同時に行われることを特徴とする請求項5記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
ウエハの厚さは150μm以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電振動子を含むことを特徴とする電子部品。
【請求項1】
圧電基板であるウエハにフォトリソグラフィーを利用して、多数の圧電振動子を形成してこれら圧電振動子を分断する圧電振動子の製造方法において、
圧電基板の周縁部に圧電振動子を形成するための振動子形成領域を囲うように、クラック伝播防止用の貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔形成後、前記圧電振動子形成用エッチングマスクを形成する工程と、
次いで前記振動子形成領域に圧電振動子を形成する工程と、
を含むことを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項2】
前記ウエハは、露光時にウエハの位置合わせを行うためのアライメントマークを備え、
前記貫通孔は、当該アライメントマークの外側に形成されることを特徴とする請求項1記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔は、互いに周方向に間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項4】
前記複数の貫通孔は、互いに隣接する貫通孔の一部同士がウエハの直径方向に重なり合っていることを特徴とする請求項3記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項5】
ウエハの外形は予め規格値よりも大きく作られており、この規格値外ウエハに対してウエットエッチングまたはレーザー加工を施して前記規格値の大きさに成形する工程を含む請求項1ないし4のいずれか一に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
前記規格値外ウエハを規格値の大きさに成形する工程と、前記貫通孔を形成する工程とは、ウエットエッチングまたはレーザー加工により同時に行われることを特徴とする請求項5記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
ウエハの厚さは150μm以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電振動子を含むことを特徴とする電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−113382(P2008−113382A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296618(P2006−296618)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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