説明

圧電発振器

【課題】水晶発振器などの圧電発振器において、出荷時あるいは受け入れ時の調整や検査に際して発振器特性の計測に要する時間を短縮でき、かつ、電子機器への搭載後においても一時的な電源断に対応できるようにする。
【解決手段】水晶振動子12などの圧電振動子と発振回路16とを収容した容器10内に、二次電池11と、二次電池11に対する充放電を制御する充放電制御回路14と、電源端子に外部電源電圧Vccが印加されているときには電源端子を選択し、それ以外の場合に充放電制御回路14を選択して電力を発振回路16に供給する切替回路15と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子などの圧電振動子とその圧電振動子を用いる発振回路とが少なくとも容器内に収容された圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電発振器は、水晶振動子などの圧電振動子と、この圧電振動子を用いる発振回路を含む電子回路とを容器内に収容し、外部から電源が供給される一体型の部品として構成したものである。圧電発振器は、回路基板上などに実装し外部から電源電圧を供給するだけで所定の周波数の発振信号を出力することから、各種の電子機器において広く用いられている。圧電振動子として水晶振動子を用いる圧電発振器は、特に水晶発振器と呼ばれるが、水晶発振器は正確な周波数の信号を出力するので、例えば携帯電話に代表されるような携帯型の電子機器において、周波数や時間の基準源として内蔵されている。
【0003】
水晶振動子の振動周波数は高い安定度を有するものの、水晶に固有の温度周波数特性に基づき、温度に応じてわずかに変化する。そこで、特に正確な発振周波数を出力する水晶発振器として、水晶振動子の温度周波数特性を補償する温度補償回路を発振回路に付加した温度補償型水晶発振器(TCXO;Temperature Compensated Crystal Oscillator)や、水晶振動子の温度を一定に保つ恒温槽内に水晶振動子を格納した恒温槽付水晶発振器(OCXO;Oven Controlled Crystal Oscillator)がある。
【0004】
圧電発振器において、発振回路や温度補償回路などの電子回路は、通常は、半導体集積回路すなわちICチップ内に形成される。ただし、回路条件などによっては発振回路を構成するコンデンサなどをICチップ内に設けることができない場合があるので、そのような場合には、コンデンサなどをICチップに対する外付け部品とし、ICチップとそのような外付け部品とを内部回路基板に搭載して内部回路基板を容器内に収容する。
【0005】
ところで、圧電発振器は、電源投入あるいは通電と同時に安定した発振周波数を出力するわけではなく、一定の時間が経過しなければ安定した出力とはならない。TCXOやOCXOでは、発振周波数が安定するまでの時間が長くなる傾向にある。特に、ヒーターによって加熱される恒温槽を用いるOCXOの場合、通電開始前の無通電時間の長さ等にも依存するが、恒温槽内が所定温度に達するまでに数分を要し、発振周波数が安定するまでに数分から数時間を要する。
【0006】
圧電発振器の出荷前の調整・検査や受け入れ時の検査に際してその圧電発振器の特性を測定する場合、まず圧電発振器に通電し、その後、発振周波数が安定するまで待ってから、測定を行うことになる。通電開始から発振周波数が安定するまでの時間が長いと、調整や検査のために必要な時間も実質的に長くなることになり、作業効率等が悪化する。また、圧電発振器を回路基板等に搭載して実際の電子機器に組み込んだ際には、停電などでその電子機器への外部電源からの電力供給が一時的に途絶えた場合に、電力供給が再開してからも暫くの間は発振周波数が安定せず、その電子機器の不安定な動作がもたらされることがある。
【0007】
特許文献1には、OCXOを有する無線機器であって、二次電池を備え、外部からの電力供給が途絶えた場合に二次電池からOCXOに電力を供給するようにした無線機器が示されている。
【0008】
特許文献2には、水晶振動子と発振回路とを有する水晶発振器であって、水晶発振器を搭載した無線機器の検査時間を短縮するために、発振回路に対して電力供給可能な内部バッテリー回路を設け、外部電源からの電力供給が行われていないときには内部バッテリー回路から発振回路に電力を供給するようにした水晶発振器が開示されている。特許文献2では、内部バッテリー回路は、水晶発振器の製造工場からの出荷時から無線装置の製造工場においてその水晶発振器を無線装置に搭載して検査を行うまでの比較的長い期間、発振回路を動作状態とするために用いられており、再充電などを行うことは想定していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−88729号公報
【特許文献2】特開2010−258775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1,2に示すものは、回路基板に搭載される一体型の部品である圧電発振器として、検査時間の短縮を図り、さらに電子機器への搭載後の一時的な電源断等に対応できるものではない。特許文献1に示すものは、二次電池を使用しているものの、きめ細かい充放電制御などを可能にしたものではない。
【0011】
本発明の目的は、出荷時あるいは受け入れ時の調整や検査に際して発振器特性の計測に要する時間を短縮でき、かつ、電子機器への搭載後においても一時的な電源断等に対応できる圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧電発振器は、圧電振動子と、圧電振動子を用いる発振回路を少なくとも含む電子回路と、圧電振動子と電子回路とを収容する容器と、を備える圧電発振器において、容器内に収容された二次電池と、容器に設けられた電源端子と、容器内に収容され、二次電池に対する充放電を制御する制御手段と、容器内に収容され、電源端子に外部電源電圧が印加されているときには電源端子を選択し、それ以外の場合に制御手段を選択して電力を電子回路に供給する切替回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
水晶振動子などの圧電振動子とその圧電振動子を用いる発振回路を少なくとも含む電子回路とを容器に収容した圧電発振器において、その容器内にさらに二次電池と切替回路と制御手段とを収容することにより、外部からの電源供給が途絶えたときには二次電池によって発振回路の動作を継続させ、かつ、二次電池の充放電の制御を行えるようになる。これにより、外部からの電源供給の有無や通電開始からの経過時間に関わらず安定した発振周波数が得られるので、例えば、発振器特性の計測に要する時間を実質的に短縮でき、さらに一時的な電源断があっても電子機器を安定して動作させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の一形態の水晶発振器の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す水晶発振器の構造の一例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の別の実施形態の水晶発振器の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す水晶発振器の構造の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の形態の圧電発振器について、圧電振動子として水晶振動子を用いる水晶発振器として構成した例を説明する。もちろん、本発明の圧電発振器には、圧電振動子として水晶振動子以外のものを用いるものも含まれる。
【0016】
図1に示す水晶発振器は、表面実装型の温度補償水晶発振器(TCXO)として構成されたものであり、図2は、恒温槽付水晶発振器(OCXO)の構造の一例を示す分解斜視図である。
【0017】
図1に示すように、容器10内に、二次電池11と水晶振動子12と回路部13とが格納されている。二次電池11としては、例えばリチウムイオン電池などが用いられる。容器10の外表面には、外部回路との接続のために、少なくとも、電源電圧Vccの端子と接地端子GNDと、発振出力の端子と、二次電池11の制御のための制御信号が入力する制御入力の端子とが設けられている。
【0018】
回路部13には、外部からの電源電圧Vccと制御信号とが供給されて二次電池11に対して充放電の制御を行う充放電制御回路14と、切替回路15と、水晶振動子12が接続する発振回路16と、発振回路16に対して温度補償信号を出力する温度補償回路17とが設けられている。ここで充放電制御回路14は、外部から供給される制御信号に応じ、二次電池11と回路部13とを電気的に接続または分離する。また充放電制御回路14は、制御信号に応じて、外部からの電源電圧Vccにより二次電池11の充電を行う。二次電池11が回路部13に電気的に接続している場合、二次電池11に充電されている電力が切替回路15に供給される。切替回路15は、外部から電源電圧Vccが供給されているときにはその電源電圧Vccを発振回路16と温度補償回路17に供給し、電源電圧Vccが供給されていないときには、充放電制御回路14からの電力、すなわち二次電池11に充電されている電力を発振回路16及び温度補償回路17に供給する。発振回路16は、水晶振動子12を共振素子として用いるものであって、水晶振動子12の振動周波数に基づいて発振し、その出力を発振出力の端子に供給する。
【0019】
このような水晶発振器では、図2に示すように、カバー31とベース32とによって容器10が構成されている。ベース32上に二次電池11を配置し、さらにその上に水晶振動子12と放熱シート33と回路部13とをこの順で積層し、これらの全体をカバー31で覆うことにより、容器10内に二次電池11と水晶振動子12と回路部13とが収容されることになる。回路部13は、充放電回路14、切替回路15、発振回路16及び温度補償回路17を少なくとも含むICチップと、若干の外付け部品とを搭載した小型の内部回路基板として構成されている。ベース32の下面には、この水晶発振器を外部の回路基板に対して表面実装する際に用いられる複数の実装電極35が設けられている。実装電極35は、容器10の外表面に設けられていることになる。これらの実装電極35には、上述した電源電圧Vccの端子、接地端子、制御入力の端子、発振出力の端子などが含まれる。そして、二次電池11や実装電極35を回路部13に電気的に接続するために、ベース32の上面には複数の金属製のピン34が設けられており、これらのピン35は回路部13の基板とも接合している。
【0020】
このような水晶発振器では、外部からの電源電圧Vccによりあらかじめ二次電池11を充電しておけば、電源電圧Vccが遮断しても二次電池11からの電力によって発振回路16及び温度補償回路17が動作し、発振回路16は安定して発振を続ける。したがって、例えば充電用の治具を使用し実装電極35を介して二次電池11を充電しておけば、その後、治具から外した状態でも発振回路16は発振を続けるので、発振周波数が安定するまで治具から外した状態でこの水晶発振器を放置し、その後、測定用の治具を用いて水晶発振器の特性を測定することが可能となり、測定のための治具の使用時間を短縮でき、水晶発振器の調整や検査の効率を向上させることができる。水晶発振器の製造工場から、動作させたまま水晶発振器を出荷できるので、受け入れ側では即座に測定を行えるようになる。また、二次電池11を用いているので、電子機器にこの水晶発振器を搭載した場合には、一時的に外部電源からの電力供給が途絶えた場合に、復電後に速やかにその電子機器を安定させて動作させることができるようになる。さらに、外部電源に重畳する交流雑音成分を無視できないような測定項目について測定を行う場合には、二次電池11の電力によって動作させることにより、そのような雑音成分の影響を受けないで特性の測定を行うことが可能になる。
【0021】
図3に示す水晶発振器は、恒温槽付き水晶発振器(OCXO)として構成されたものであり、図4は、図3に示す水晶発振器の構造の一例を示す分解斜視図である。
【0022】
図3に示した水晶発振器の回路構成は、図1に示したものと同様のものであるが、水晶振動子として恒温槽型の水晶振動子18を使用し、さらに、回路部13において温度補償回路の代わりに温度制御回路19が設けられている点で、図1に示したものと異なっている。水晶振動子18は、気密容器内に水晶片XとヒータHと測温素子Thとを封入したものであり、水晶片Xが発振回路16に接続し、ヒータHと測温素子Thとが温度制御回路19に接続する。温度制御回路19は、測温素子Thでの測定値に応じてヒータHを駆動することにより、水晶片Xの温度を一定に維持する制御を行う。
【0023】
このOCXOでは、図4に示すように、カバー31とベース32とによって容器10が構成されている。ベース32上に二次電池11を配置し、さらにその上に水晶振動子18とアルミニウム製の金具37と放熱シート33と回路部13とをこの順で積層してネジ36によりベース32に取り付け、これらの全体をカバー31で覆うことにより、容器10内に二次電池11と水晶振動子18と回路部13とが収容されることになる。回路部13は、充放電回路14、切替回路15、発振回路16及び温度制御回路19を少なくとも含むICチップと、若干の外付け部品とを搭載した小型の内部回路基板として構成されている。この水晶発振器を外部の回路基板に対して実装する際に用いられる複数の接続ピン38が、ベース32を貫通するように設けられている。これらの接続ピン38は、上述した電源電圧Vccの端子、接地端子、制御入力の端子、発振出力の端子などを含んでおり、回路部13にも接続している。また接続ピン38は、二次電池11と回路部13との電気的接続にも用いられている。
【0024】
このOCXOは、二次電池11として例えばリチウムイオン電池などのエネルギー密度の高いものを用いることにより、外部電源からの電力が途絶えているときであっても、ヒータHを駆動するために十分な電力を二次電池11から温度制御回路19に供給することが可能となり、上述した図1及び図2に示したTCXOの場合と同様の効果を奏するようになる。
【符号の説明】
【0025】
10:容器、11:二次電池、12,18:水晶振動子、13:回路部、14:充放電制御回路、15:切替回路、16:発振回路、17:温度補償回路、19:温度制御回路、31:カバー、32:ベース、33:放熱シート、34:ピン、35:実装電極、36:ネジ、37:金具、38:接続ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、前記圧電振動子を用いる発振回路を少なくとも含む電子回路と、前記圧電振動子と前記電子回路とを収容する容器と、を備える圧電発振器において、
前記容器内に収容された二次電池と、
前記容器に設けられた電源端子と、
前記容器内に収容され、前記二次電池に対する充放電を制御する制御手段と、
前記容器内に収容され、前記電源端子に外部電源電圧が印加されているときには前記電源端子を選択し、それ以外の場合に前記制御手段を選択して電力を前記電子回路に供給する切替回路と、
を有することを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記制御手段は、制御信号に応じ、前記外部電源電圧によって前記二次電池を充電し、かつ、前記二次電池に充電された電力を前記切替回路に供給する、請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記圧電振動子は水晶振動子であって、水晶発振器として構成された請求項1または2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
前記電子回路は前記水晶振動子の温度周波数特性を補償する温度補償回路を含み、温度補償型水晶発振器として構成された請求項3に記載の圧電発振器。
【請求項5】
前記水晶振動子の温度を一定に制御する恒温手段を有し、恒温槽付水晶発振器として構成された請求項3に記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−205219(P2012−205219A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70069(P2011−70069)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】