説明

地物情報提供装置及び方法等

【課題】比較的簡易な構成で地物案内の精度を高めること。
【解決手段】本発明による地物情報提供装置は、自車位置を取得する自車位置取得手段と、自車前方の地物に関する情報を取得する地物情報取得手段と、前記自車位置取得手段により取得された自車位置と、前記地物情報取得手段により取得された地物情報とに基づいて、自車が接近している地物に関して地物案内を実施する地物案内手段とを備え、前記地物案内手段は、前記地物情報取得手段により地物情報が取得された地点又は時点から所定走行距離以上自車が走行し又は所定走行時間以上自車が走行し、且つ、自車が地物に対して所定距離内又は所定到達時間内に位置する場合に、前記地物案内を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車が接近している地物に関する地物案内を実施する地物情報提供装置及び方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、少なくとも交差点の位置データを含む所与の地図データと、自車両の位置及び方位の演算結果とに基づいて、車両の交差点への接近を検出する交差点接近検出手段と、
自車両が通過する道路上の一時停止線を撮像により検出する一時停止線検出手段とを備え、
前記交差点接近検出手段及び前記一時停止線検出手段の双方の検出結果に基づいて、前記交差点での運転補助を実行することを特徴とする、車両用運転補助装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−86363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、交差点、交差点手前の一時停止線、踏み切り、急カーブなどのような運転者が注意を払うべき地物に関して、地物案内(例えば、地物の存在を通知する報知や、減速を促す警報等)を行うことは、運転者による運転の安全性を高める観点から非常に有用である。しかしながら、その反面、無用な地物案内(例えば、通過道路に一時停止線が無いにも拘らず出力される誤警報)は逆に運転者に煩わしさを感じさせることになるので、かかる地物案内は高い精度で実現されることが望ましい。
【0004】
この点、上述の特許文献1に記載の発明では、一時停止線を撮像により検出する一時停止線検出手段(車載カメラ)の検出結果を用いているので、地物案内の精度は高いが、車載カメラを用いることからコスト面では不利である。
【0005】
そこで、本発明は、比較的簡易な構成で地物案内の精度を高めることができる地物情報提供装置及び方法等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る地物情報提供装置は、自車位置を取得する自車位置取得手段と、
自車前方の地物に関する情報を取得する地物情報取得手段と、
前記自車位置取得手段により取得された自車位置と、前記地物情報取得手段により取得された地物情報とに基づいて、自車が接近している地物に関して地物案内を実施する地物案内手段とを備え、
前記地物案内手段は、前記地物情報取得手段により地物情報が取得された地点又は時点から所定走行距離以上自車が走行し又は所定走行時間以上自車が走行し、且つ、自車が地物に対して所定距離内又は所定到達時間内に位置する場合に、前記地物案内を実施することを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に係る地物情報提供装置において、
前記地物案内手段は、前記地物情報取得手段により同一の地物情報が連続して取得された場合であって、前記地物情報取得手段により地物情報が最初に取得された地点又は時点から所定走行距離以上自車が走行し又は所定走行時間以上自車が走行し、且つ、自車が地物に対して所定距離内又は所定到達時間内に位置する場合に、前記地物案内を実施することを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1又は2の発明に係る地物情報提供装置において、
前記所定走行距離は、前記地物情報取得手段により地物情報が取得された地点の近傍に位置する交差点の大きさに応じて変化されることを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、地物情報提供方法に関し、
自車位置を定期的に取得する自車位置取得ステップと、
前記自車位置取得ステップにより取得された自車位置に基づいて、所与の地図データ内から自車前方の地物に関する情報を取得する地物情報取得ステップと、
前記地物情報取得ステップにより新たな地物情報が取得された場合に、その地点又は時点から所定走行距離自車が走行し又は所定走行時間自車が走行するまでの間に、前記地物情報取得ステップにより同地物情報が継続して取得されたか否かを判定する第1判定ステップと、
前記地物情報取得ステップにより取得された地物情報と、前記自車位置取得ステップにより取得された自車位置とに基づいて、自車が地物に対して所定距離内又は所定到達時間内に位置するか否かを判定する第2判定ステップと、
同一の地物情報に関する前記第1及び第2判定ステップの判定結果が共に肯定判定の場合に、該地物情報に基づいて地物案内を実施する地物案内ステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、上記の発明を実現するためのコンピューター読み取り可能なプログラムに関し、第6の発明は、かかるコンピューター読み取り可能なプログラムが記憶された記憶媒体に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的簡易な構成で地物案内の精度を高めることができる地物情報提供装置及び方法等が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0013】
図1は、本発明による地物情報提供装置1の一実施例を示すシステム構成図である。
【0014】
本実施例の地物情報提供装置1は、ナビゲーションシステム10を中心として具現化されている。ナビゲーションシステム10は、図1に示すように、地図データベース(DB)12、IMU14、自車位置推定部16、及び、情報提供演算部20を含む。ナビゲーションシステム10には、車速を検出する車輪速センサ30が接続される。尚、車輪速センサ30は、ABS等の車両制御で用いられるものと共用であってよい。
【0015】
尚、以下で説明する自車位置推定部16及び情報提供演算部20の各種機能は、マイクロコンピューターにより実現されてよい。この場合、マイクロコンピューターは、CPU,後述の図2に示すような制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有する。制御プログラムは、ナビゲーションシステム10に脱着可能な記憶媒体に記憶されもよく、外部から通信等によりダウンロードされてもよい。
【0016】
情報提供演算部20は、地物情報取得部22、走行距離演算部24、マスク判定部26、及び、情報提供実施判定部28を含む。地物情報取得部22は、情報提供実施判定部28で用いる地物情報を地図データベース12から取得する。地物情報取得部22により取得された地物情報は、情報提供実施判定部28に供給され、情報提供実施判定部28での判定や地物案内処理に利用される。尚、その他、情報提供演算部20の各部22,24,26,28の機能の詳細については、図2を参照して後述する。
【0017】
地図データベース12は、例えばハードディスクドライブのような補助記憶装置から構成され、地図データが格納されている。地図データには、通常的なものと同様、道路分岐点(交差点)に対応するノードの座標情報、高速道路の合流点/分岐点に各々対応する各ノードの座標情報や、隣接するノードを接続するリンク情報等の各種道路情報が含まれている。また、道路情報としては、交差点の大きさを表す情報や、各リンクに対応する道路の幅員情報、各リンクに対応する国道・県道・高速道路等の道路種別、各リンクの通行規制情報、各リンクの制限速度、一時停止線、駐車禁止区域、信号機の有無、追い越し禁止区間、一方通行、スクールゾーン、Uターン禁止等を含んでよい。
【0018】
また、地図データには、交差点、交差点手前の一時停止線、踏み切り、急カーブなどのような、運転者にその存在を予め知らせておくことが有用な地物に関する情報(以下、「地物情報」という)が含まれている。地物情報は、地物の種類及び地物の位置(座標)を表す情報を含む。また、地物情報は、地物の種類に応じて追加の情報を含んでよい。例えば、交差点手前の一時停止線に関する地物情報は、当該一時停止線が自車の通過道路上に存在するのか或いは交差道路上に存在するのかを識別できる情報を含んでよい。尚、地物情報は、上述の道路情報の一部として構成されてもよいし、上述の道路情報と関連付けて構成されてもよい。
【0019】
IMU14は、車両の3軸方向の加速度及び3軸まわりのヨーをそれぞれ検出する加速度センサ及びジャイロセンサからなる慣性計測装置であってよい。IMU14の出力値は自車位置推定部16に入力される。
【0020】
自車位置推定部16は、GPS受信機を含み、IMU14からの出力値やGPS信号の受信結果等に基づいて、慣性航法及び/又は衛星航法により自車位置や自車速度を推定する。例えば、自車位置推定部16は、測位に必要な数のGPS衛星が観測可能な場合には、慣性航法及び衛星航法により自車位置等を推定し、測位に必要な数のGPS衛星が観測できない場合には、それまでの推定結果を用いて慣性航法のみにより自車位置等を推定する。衛星航法による測位方法は、単独測位や干渉測位(D−GPSを含む。)等の如何なる方法であってもよい。慣性航法及び衛星航法の双方を用いる方法は、いわゆるタイトカップリング型であってもよいし、ルーズカップリング型であってもよい。また、自車位置推定部16は、ビーコン受信機及びFM多重受信機を介して受信される各種情報に基づいて、推定した自車位置を補正してもよい。また、自車位置推定部16は、公知のマップマッチング技術により、不定期的に、地図データベース12内の地図データを用いて適宜補正してもよい。自車位置推定部16は、このようにして導出した自車位置や自車速度に関する情報(以下、「自車位置情報」という)を、演算周期毎に、情報提供演算部20の地物情報取得部22、走行距離演算部24及び情報提供実施判定部28に供給する。
【0021】
図2は、本実施例の地物情報提供装置1により実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。図2に示す処理ルーチンは、例えば車両のイグニッションスイッチがオンとなった後、オフとなるまで、所定周期毎に繰り返し実行されてよい。所定周期は、自車位置推定部16での推定周期(演算周期)と対応していてよい。
【0022】
ステップ100では、自車位置推定部16において、自車位置推定処理が実行される。
【0023】
ステップ102では、地物情報取得部22において、自車進行方向前方の地物情報が取得されたか否かが判定される。例えば、地物情報取得部22は、上記のステップ100で得られる自車位置情報(自車位置推定部16からの自車位置情報)に基づいて、自車位置及び自車進行方向を基準とした所定領域内(例えば自車前方300m内)の地図データを、地図データベース12内から取得し、例えばRAMに一時記憶する。尚、地物情報取得部22は、RAM内の地図データは、自車位置及び自車進行方向の変化に伴い随時更新する。そして、地物情報取得部22は、RAM内の地図データ内に、自車進行方向前方の地物情報が存在するか否かを判定する。自車進行方向前方の地物情報が取得された場合、即ちRAM内の地図データ内に、自車進行方向前方の地物情報が存在する場合には、ステップ106に進み、それ以外の場合には、今回周期の処理はそのまま終了する。尚、地物情報取得部22により取得される自車進行方向前方の地物情報は、後述の情報提供実施判定部28で利用される。
【0024】
ステップ106では、地物情報取得部22において、上記のステップ102で取得した地物情報が新たな地物情報か否かが判定される。即ち、上記のステップ102で取得した地物情報が、今回周期で初めてRAM内の地図データ内に存在する地物情報か否かが判定される。肯定判定の場合には、ステップ108に進む。一方、否定判定の場合、即ち前回周期から連続して同一の地物情報が取得されている場合には、ステップ112に進む。
【0025】
ステップ108では、マスク判定部26において、地物案内マスクフラグがオンにセットされる。地物案内マスクフラグの役割は後述より明らかになる。
【0026】
ステップ110では、走行距離演算部24において、地物情報取得開始地点からの走行距離Lが0[m]にリセットされる。尚、地物情報取得開始地点は、本ステップ110に進む周期で得られた上記ステップ100の自車位置に対応する。ステップ110の処理が終了するとステップ118に進む。
【0027】
ステップ112では、走行距離演算部24において、地物情報取得開始地点からの走行距離Lが算出・更新される。地物情報取得開始地点からの走行距離Lは、上記ステップ100で得られる自車位置の履歴に基づいて算出されてもよいし、それに代えて若しくは加えて、車輪速センサ30からの出力値(車速パルス)の積分値(地物情報取得開始地点からの出力値の積分値)に基づいて算出されてもよい。
【0028】
ステップ114では、マスク判定部26において、上記ステップ112で算出された地物情報取得開始地点からの走行距離Lが、所定距離Th(本例では、Th=10[m])より大きいか否かが判定される。地物情報取得開始地点からの走行距離Lが、所定距離Thより大きい場合には、ステップ116に進む。一方、地物情報取得開始地点からの走行距離Lが、所定距離Th以下の場合には、今回周期の処理はそのまま終了する。従って、この場合、仮に今回周期で後述のステップ118の条件が成立するような状況であったとしても、後述のステップ122の地物案内が実施されることは無い。
【0029】
ステップ116では、マスク判定部26において、地物案内マスクフラグがオフにセットされる。ステップ116の処理が終了するとステップ118に進む。
【0030】
ステップ118では、情報提供実施判定部28において、地物までの残距離が、所定の案内実施距離より小さいか否かが判定される。地物までの残距離は、今回周期の上記のステップ104で取得された地物情報(地物の座標)に基づく地物の位置と、今回周期の上記ステップ100で推定された自車位置との間の距離として算出される。地物までの残距離は、直線的な距離であってもよいし、道路リンクに沿った距離であってもよい。所定の案内実施距離は、運転者に地物の存在を予め知らせるタイミングを決めるものであり、この観点から適切に決定される。所定の案内実施距離は、地物の種類に応じた可変値とされてもよいし、また、自車の速度に応じた可変値とされてもよい。地物までの残距離が、所定の案内実施距離より小さい場合には、ステップ120に進む。一方、地物までの残距離が所定の案内実施距離以上の場合には、今回周期は地物案内タイミングとしては時期尚早と判断して、今回周期の処理はそのまま終了する。尚、本ステップ118において、地物までの残距離が所定の案内実施距離より小さいか否かを判定することに代えて、地物までの到達時間が所定時間内にあるか否かを判定することとしてもよい。
【0031】
ステップ122では、情報提供実施判定部28において、地物案内を実施すべき旨の判定結果が出力され、地物案内が実施される。地物案内は、音声及び/又は映像により実行されてよい。例えば、地物が一時停止線の場合には「この先、一時停止があります」といった音声メッセージが、出力されてよいし、及び/又は、同様の内容の文字メッセージが、メータやナビゲーションシステム10のディスプレイ(図示せず)に表示されてもよい。
【0032】
尚、図2に示す処理ルーチンは、複数の地物に係る地物情報が取得された場合には、地物情報毎に別々に並列して実行される。従って、ある周期で、2つの地物情報が取得された場合には、その周期では、それぞれの地物情報に関して図2に示す処理ルーチンが実行され、次の周期で、一方の地物情報が取得されなくなった場合には、当該取得されなくなった地物情報に関する処理に関して、当該次の周期で、ステップ104が否定判定され、その次の周期からは、再び同一の地物情報が取得されない限り、当該取得されなくなった地物情報に関する処理は実行されない。
【0033】
ここで、図3及び図4を参照して、上述の図2による処理に関連した本実施例の効果について説明する。
【0034】
図3は、自車前方に存在する幹線道路74の手前の一時停止線X2に自車が接近しつつある状況を模式的に示す図である。図3の状況では、自車の走行道路70は、幹線道路74よりも十分手前で(一時停止線X2から案内実施距離よりも十分離れた位置で)、分岐道路72に交差している。分岐道路72には、走行道路70との交差点から直ぐに(案内実施距離内に)一時停止線X1が存在する。自車の運転者は、走行道路70を直進し、幹線道路74に合流することを意図しているとする。
【0035】
図3に示す状況では、自車が走行道路70と分岐道路72との交差点付近を走行する際(図3のA0付近に位置する際)、一時的に、分岐道路72上の一時停止線X1に係る地物情報が地物情報取得部22にて取得されうる。これは、交差点付近では、自車位置推定部16の推定精度が一時的に落ちることに起因する。即ち、2つ以上の進行方向が考えられうる交差点では、自車位置推定部16の推定精度(安定性)に依存して、自車の進行方向の推定精度が悪化することに起因する。従って、単に地物までの残距離が所定の案内実施距離内である場合に当該地物の関する地物案内を行う比較構成では、図3に示す状況において、自車が走行道路70と分岐道路72との交差点付近に位置する際に、一時停止線X1に関する地物案内(図中の囲みX参照)が実行される虞がある。即ち、かかる比較構成では、仮に、自車が走行道路70と分岐道路72との交差点付近を走行する際に、一時停止線X1に係る地物情報が地物情報取得部22にて取得され、且つ、その際に、たまたま一時停止線X1までの残距離が所定の案内実施距離内である場合に、一時停止線X1に関する地物案内が実施されることになる。このような地物案内は、運転者に不要な混乱を招きうる。
【0036】
これに対して、本実施例では、仮に、自車が走行道路70と分岐道路72との交差点付近を走行する際に、一時停止線X1に係る地物情報が地物情報取得部22にて取得され、且つ、その際に、たまたま一時停止線X1までの残距離が所定の案内実施距離内である場合であっても、上述の図2のステップ114の条件が満たされない限り(即ち地物案内マスクフラグがオフで無い限り)、地物案内が行われることが無い。上述の図2のステップ114の条件は、上述の如く、地物情報取得開始地点からの走行距離Lが、所定距離Thより大きいことである。かかる条件は、交差点付近で一時的に出現する一時停止線X1のような地物に対しては実質的に成立しない。これは、交差点付近での自車位置推定部16の推定精度の悪化は、生じたとしても一時的であり、地物情報取得開始地点(精度悪化が最初に生じた地点に相当)からの走行距離Lが所定距離Thを超えるまで、当該推定精度の悪化状態が継続することは実質的に無いからである。従って、仮に、図3のA0の車両位置で一時停止線X1に係る地物情報が地物情報取得部22にて取得された場合でも、車両位置A0(地物情報取得開始地点に相当)に対して所定距離Th以下の距離に位置する車両位置A1では、自車位置推定部16の推定精度が回復し(自車の進行方向が直進であると推定され)、その結果、一時停止線X1に係る地物情報が地物情報取得部22にて取得されなくなる。一時停止線X1に係る地物情報が地物情報取得部22にて取得されなくなると、当該一時停止線X1に係る地物情報に関する処理は終了するので、上述の図2のステップ122の処理が実行されることは無い。このように、本実施例によれば、図3に示す状況において、自車が走行道路70と分岐道路72との交差点付近を走行する際に、一時停止線X1に関する地物案内(図3中の囲みX参照)が行われることを適切に防止することができる。尚、上述からも理解できるように、所定距離Thは、交差点付近での自車位置推定部16の精度が不安定となる区間の距離の試験値等に基づいて適合された固定値(例えば上述の例のような10[m])であってもよいし、交差点の大きさ(交差点の通過に要する走行距離に相当)に応じた可変値とされてもよい。
【0037】
尚、本実施例では、図3に示す状況では、一時停止線X2に係る地物情報は、自車が走行道路70と分岐道路72との交差点付近を走行する際(図3のA0付近に位置する際)、一時的に、地物情報取得部22にて取得されなくなりうるが、その後、自車がA1付近に至るまでには地物情報取得部22にて取得されることになる。そして、その後、一時停止線X2に係る地物情報が地物情報取得部22にて継続的に取得される状況下で、走行距離Lが所定距離Thを超え、上述の図2のステップ118の条件が成立する。そして、更にその後、一時停止線X2に係る地物情報が地物情報取得部22にて継続的に取得される状況下で、自車がA2付近に至り、上述の図2のステップ118の条件が成立し、一時停止線X2に係る地物案内が実施されることになる。
【0038】
図4は、2本の道路70及び76が併走している(若しくは上下に通る)状況を模式的に示す図である。道路70、72及び74については上述の図3と同様である。図4の状況では、自車の走行道路76は、幹線道路74に立体交差して直線的に延在する幹線道路である。自車の運転者は、幹線道路74に合流する意図はなく、幹線道路76を直進していくことを意図しているとする。
【0039】
図4に示す状況では、自車が幹線道路76を走行中であるにも拘らず、道路70と分岐道路72との交差点付近を走行する際(図4のA3付近に位置する際)、一時的に、分岐道路72上の一時停止線X1に係る地物情報が地物情報取得部22にて取得されうる。これは、自車位置推定部16のマップマッチングの精度の悪化と、上述の交差点付近での精度悪化が重なった場合に生じうる。即ち、自車位置推定部16が、自車位置を図4の位置A4と誤って推定し、且つ、自車の進行方向を直進方向でなく右折方向と誤った場合には、一時的に、分岐道路72上の一時停止線X1に係る地物情報が地物情報取得部22にて取得されうる。従って、同様に、単に地物までの残距離が所定の案内実施距離内である場合に当該地物の関する地物案内を行う比較構成では、図4に示す状況において、自車が、幹線道路76と併走する道路70と分岐道路72との交差点付近に位置する際、一時停止線X1に関する地物案内が実行される虞がある。また、同様に、かかる比較構成では、自車位置推定部16のマップマッチングの一時的な誤りに起因して、一時停止線X2に関する地物案内が実行される虞もある。
【0040】
これに対して、本実施例では、上述の図2のステップ114の条件が満たされない限り(即ち地物案内マスクフラグがオフで無い限り)、地物案内が行われることが無いので、上述の図3に関連して説明したのと同様の理由により、上述の比較構成で生ずるような各種の問題を防止することができる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0042】
例えば、上述の図3及び図4に示した状況は、上述の実施例による効果が奏される典型的な状況の一例に過ぎず、上述の実施例による効果は、その他の状況でも奏されることは理解されるべきである。
【0043】
また、上述した実施例では、好ましい実施例として、上述の図2のステップ114の条件は、上述の如く、地物情報取得開始地点からの走行距離Lが、所定距離Thより大きいことであったが、時間により規定されてもよい。例えば、上述の図2のステップ114の条件は、地物情報取得開始時点からの走行時間が所定時間よりも長いという条件に置換されてもよい。この場合、所定時間は、所定距離Thと同様の観点から規定されてよく、また、その際に車速が考慮されてもよい。
【0044】
また、上述した実施例では、好ましい実施例として、情報提供実施判定部28は、カメラなどの他の情報を用いずに地物案内実施の要否を判定しているが、地物案内実施の要否は、例えば特開2004−86363号公報に記載するようなカメラによる地物の検出結果や、交差点付近での舵角センサの出力値(操舵態様)やウインカー操作態様等を追加的に考慮して判定されてもよい。
【0045】
また、上述した実施例では、地物情報は、地図データ内から直接的に取得されていたが、地物情報は、地図データから推定により取得されてもよい。例えば、急カーブのような地物情報は、道路リンクの曲率半径に関する情報に基づいて推定されてもよい。また、一時停止線に係る地物情報は、例えば特開2004−86363号公報に記載するような方法で推定されてもよい。
【0046】
また、上述した実施例では、地物情報取得部22は、自車位置及び自車進行方向を基準とした所定領域内の地図データ(即ち地図データベース12内の全地図データの一部)を、地図データベース12内から取得し、当該取得した地図データに基づいて自車前方の地物情報を取得しているが、自車前方の地物情報の取得方法は、これに限られず、自車位置及び自車進行方向を直接的若しくは間接的に考慮して地物情報を取得している限り、任意である。例えば、地物情報取得部22は、自車位置を基準とした所定領域内の地図データを、地図データベース12内から取得し、次いで、当該取得した地図データから、自車進行方向を基準として、自車前方の地物情報を取得(抽出)してもよい。また、地物情報取得部22は、ナビゲーションシステム10による経路案内中の場合には、案内経路を考慮して自車前方の地物情報を取得してもよい。
【0047】
また、上述した実施例では、地物情報提供装置1は、ナビゲーションシステム10を中心として具現化されているが、地物情報提供装置1の機能の一部が他のシステムにより実現されてもよい。例えば、情報提供実施判定部28がナビゲーションシステム10とは別体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による地物情報提供装置1の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】本実施例の地物情報提供装置1により実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図2による処理に関連した本実施例の効果の説明図(その1)である。
【図4】図2による処理に関連した本実施例の効果の説明図(その2)である。
【符号の説明】
【0049】
1 地物情報提供装置
10 ナビゲーションシステム
12 地図データベース
14 IMU
16 自車位置推定部
20 情報提供演算部
22 地物情報取得部
24 走行距離演算部
26 マスク判定部
28 情報提供実施判定部
30 車輪速センサ
70,72,74,76 道路
X1,X2 一時停止線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置を取得する自車位置取得手段と、
自車前方の地物に関する情報を取得する地物情報取得手段と、
前記自車位置取得手段により取得された自車位置と、前記地物情報取得手段により取得された地物情報とに基づいて、自車が接近している地物に関して地物案内を実施する地物案内手段とを備え、
前記地物案内手段は、前記地物情報取得手段により地物情報が取得された地点又は時点から所定走行距離以上自車が走行し又は所定走行時間以上自車が走行し、且つ、自車が地物に対して所定距離内又は所定到達時間内に位置する場合に、前記地物案内を実施することを特徴とする、地物情報提供装置。
【請求項2】
前記地物案内手段は、前記地物情報取得手段により同一の地物情報が連続して取得された場合であって、前記地物情報取得手段により地物情報が最初に取得された地点又は時点から所定走行距離以上自車が走行し又は所定走行時間以上自車が走行し、且つ、自車が地物に対して所定距離内又は所定到達時間内に位置する場合に、前記地物案内を実施する、請求項1に記載の地物情報提供装置。
【請求項3】
前記所定走行距離は、前記地物情報取得手段により地物情報が取得された地点の近傍に位置する交差点の大きさに応じて変化される、請求項1又は2に記載の地物情報提供装置。
【請求項4】
自車位置を定期的に取得する自車位置取得ステップと、
前記自車位置取得ステップにより取得された自車位置に基づいて、所与の地図データ内から自車前方の地物に関する情報を取得する地物情報取得ステップと、
前記地物情報取得ステップにより新たな地物情報が取得された場合に、その地点又は時点から所定走行距離自車が走行し又は所定走行時間自車が走行するまでの間に、前記地物情報取得ステップにより同地物情報が継続して取得されたか否かを判定する第1判定ステップと、
前記地物情報取得ステップにより取得された地物情報と、前記自車位置取得ステップにより取得された自車位置とに基づいて、自車が地物に対して所定距離内又は所定到達時間内に位置するか否かを判定する第2判定ステップと、
同一の地物情報に関する前記第1及び第2判定ステップの判定結果が共に肯定判定の場合に、該地物情報に基づいて地物案内を実施する地物案内ステップとを備えることを特徴とする、地物情報提供方法。
【請求項5】
コンピューターをして請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の地物情報提供装置を実現させる指令、又は、コンピューターをして請求項4に記載の地物情報提供方法の各ステップを実行させる指令を含む、コンピューター読み取り可能なプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピューター読み取り可能なプログラムが記憶された記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−53155(P2009−53155A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222487(P2007−222487)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】