説明

地盤歪検出端

【課題】 地盤に形成した深い穴内に容易に設置することができ、地盤歪を高精度で検出可能な地盤歪検出端を提供する。
【解決手段】 複数の短尺管体15をつなぎ合わせて変位標識管体5を形成し、その変位標識管体5に沿って光ファイバセンサ6を張力を掛けた状態で配置し且つその光ファイバセンサ6の複数個所を固定治具7で変位標識管体5に固定して検出端3を構成する。この検出端3は、短尺管体15をつなぎ合わせながら且つ光ファイバセンサ6を固定しながら縦穴2内に挿入することで深い縦穴2内に容易に設置可能であり、挿入した後は縦穴2内に充填材8を充填して地盤と一体化することで、地盤歪に応じて光ファイバセンサ6に歪を生じ、それを散乱光強度分布の観測で検出することで地盤に発生した歪分布を精度良く測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の歪を検出するための、光ファイバを利用した地盤歪検出端に関する。
【背景技術】
【0002】
山、崖等における地滑り、地盤崩落等の地盤変動の監視並びに予知は災害防止上きわめて重要である。従来、地盤変動を監視するための方法としては、ひずみゲージを利用したセンサを監視すべき適宜個所に取り付けて地盤歪を検出する方法が知られている。しかしながら、この方法では、1個所における地盤歪を検出する場合でも、地盤歪がどの深さに発生するかを測定するためには、複数の深さの位置にそれぞれひずみゲージを利用したセンサを配置して信号線によって監視場所に接続する必要があり、きわめてコスト高となるという問題があった。また、ひずみゲージを利用したセンサは耐久性にも問題があった。
【0003】
そこで、これに代わる方法として最近、光ファイバを利用した地すべりセンサが提案されている(例えば、特開平2−52222号公報参照)。この公報に記載されている地すべりセンサは、地すべりを測定しようとする地盤に形成された深い掘削孔に挿入された可撓性ケーシング管と、深さ方向に配置した複数のスペーサによって所定の位置に配置されて前記ケーシング管内に挿入された光ファイバひずみセンサ(以下光ファイバセンサという)と、前記ケーシング管内に充填された充填材を備えたものであり、地盤に歪が生じた時に、その歪に応じて光ファイバセンサが変形し、それによって光ファイバセンサ内の歪を生じた部分における散乱光の強度が変化するので、その光ファイバセンサの一端から光パルスを入射し、入射側から光ファイバセンサ中における後方散乱光の強度を該センサの長さ方向位置と関係づけて測定することで光ファイバセンサの伸び(縮み)歪の該センサ長さ方向の分布を測定し、これによって地盤に生じた変動の位置及び大きさを検出するものである。
【0004】
そして、この地すべりセンサの設置には、地盤中に予想されるすべり面の深度より深い位置まで掘削孔をあけ、該掘削孔内に沿って可撓性ケーシング管を挿入した後、複数のスペーサにて所定の位置に配置した光ファイバセンサを、前記スペーサを同一方向になるようにガイドしながら前記ケーシング管内に吊り下げて挿入し、その後、前記ケーシング内に充填材を充填するという方法を採っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−52222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光ファイバセンサはたるんだ状態となると測定に支障をきたすので、光ファイバセンサによって地盤歪を精度良く測定するには、光ファイバセンサを設置した際に或る程度の大きさの一定の張力を付与した状態としておき、地盤歪に応じて光ファイバセンサ内に長さ方向の歪を生じさせる必要がある。しかしながら、上記公報に記載した方法のように、光ファイバセンサを、単に吊り下げた状態でケーシング管内に挿入して設置する構成では、光ファイバセンサに所望の且つ一定の張力を付与した状態とすることが困難であるという問題があった。
【0007】
また、最近、光ファイバセンサの敷設時やその後の使用中における破損、劣化等を防止し、使用寿命を長くするために、光ファイバ本体を耐食合金鞘体で覆装し、適当な間隔で光ファイバ本体を耐食合金鞘体に固定した構造の光ファイバセンサが提案されているが、この構造の光ファイバセンサを用いた場合、敷設時に光ファイバ本体に所望の張力を掛けておくためには、保護用の剛性の大きい耐食合金鞘体にも伸び歪を与えておくことになり、そのため光ファイバセンサ全体に大きい張力(例えば、300N程度)を掛けた状態で地盤に固定しておく必要がある。しかしながら、上記した公報に記載の方法のように、光ファイバセンサを単に吊り下げてケーシング管内に挿入して設置する構成では、到底所望の張力をかけて敷設するということはできない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、地盤に形成した穴内に、光ファイバセンサを、適当な張力を加えた状態で且つ光ファイバセンサの適当に間隔をあけた位置を地盤に対して固定した状態となるように設置することの可能な地盤歪検出端を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地盤歪検出端は、複数の短尺管体を入れ子式でつなぎ合わせて変位標識管体を形成し、その変位標識管体に沿って光ファイバセンサを、これに張力を掛けた状態で配置し且つその光ファイバセンサの複数個所を変位標識管体に固定することを基本構成とし、更に、前記変位標識管体の下端に配置される短尺管体を先端キャップとし、円筒状の本体とその下端に固定された蓋部材を備え、前記円筒状の本体には前記光ファイバセンサの下端のUターン部を通すためのスリットが前記本体の上端から軸線方向下方に延びるように形成された構成とし、前記変位標識管体の他の短尺管体を、前記先端キャップの円筒状の本体の外径よりも小径の円筒面部を備えた筒状の本体を備えた構成とし、前記光ファイバセンサを、下端のUターン部を前記先端キャップの本体に形成しているスリットに通し、前記Uターン部よりも上方の部分を他の短尺管体の前記円筒面部の外面に沿って配置し複数箇所を前記円筒面部の外面に固定するという構成としたものである。この構成の地盤歪検出端では、これを地盤に形成した穴内に挿入し、適当な充填材を充填して地盤と一体化することにより、変位標識管体が地盤の歪に応じて変形し、一方、光ファイバセンサも変位標識管体の変形に応じて変形し、長さ方向の歪を生じる。その際、光ファイバセンサは張力をかけた状態で複数個所を変位標識管体に固定して設けられているため、光ファイバセンサ内には長さ方向の歪分布が生じ且つその歪分布は地盤歪の分布に精度よく対応したものとなっている。そこで、この光ファイバセンサに生じる長さ方向の歪分布を散乱光強度の観測によって検出することで、地盤に発生した歪の分布を精度良く測定できる。また、この地盤歪検出端を設置するに当たっては、短尺管体をつなぎ合わせながら、且つその短尺管体に沿って光ファイバセンサを、張力を付与した状態で固定しながら、接続した部分を穴内に挿入してゆくことができ、これによって深い穴に対しても地盤歪検出端を容易に且つ大きい作業スペースを要することなく設置することができる。
【発明の効果】
【0010】
前記したように本発明の地盤歪検出端は、複数の短尺管体をつなぎ合わせて変位標識管体を形成し、その変位標識管体に沿って光ファイバセンサを張力を掛けた状態で配置し且つその光ファイバセンサの複数個所を変位標識管体に固定した構成としたものであるので、これを地盤に形成した穴内に挿入し、適当な充填材を充填して地盤と一体化しておけば、地盤に歪が生じた時、光ファイバセンサには、地盤歪の分布に高精度で対応した長さ方向歪分布が生じ、従って、光ファイバセンサ内の散乱光強度分布を観測することによって、その長さ方向歪分布を検出し、地盤に発生した歪分布を精度良く測定できるという効果を有している。また、この地盤歪検出端を設置するに当たっては、短尺管体をつなぎ合わせながら、且つその短尺管体に沿って光ファイバセンサを、張力を付与した状態で固定しながら、接続した部分を穴内に挿入してゆくことができ、これによって深い穴に対しても地盤歪検出端を容易に且つ大きい作業スペースを要することなく設置することができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例による地盤歪検出端を用いた地盤歪検出システムを示す概略断面図
【図2】地盤歪検出端の変位標識管体及びそれに取り付けた光ファイバセンサ等の下端近傍を示す概略斜視図
【図3】図2に示す部分を分解して示す概略斜視図
【図4】(a)は変位標識管体の下端部分を分解して示す概略断面図 (b)は(a)のA−A矢視概略断面図
【図5】(a)はストッパを組立状態で示す概略斜視図 (b)はストッパを分解して示す概略斜視図
【図6】先端キャップに短尺管体を接続した状態を示す概略斜視図
【図7】短尺管体の下端に接続した先端キャップを縦穴内に挿入し、短尺管体の上に次の短尺管体を接続する状態を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の地盤歪検出端は、歪を検出すべき地盤に形成された穴内に挿入された、複数の短尺管体を入れ子式でつなぎ合わせてなる変位標識管体と、その変位標識管体に沿って張力をかけた状態で配置され、複数個所を前記変位標識管体に固定された歪検出用の光ファイバセンサとを備えることを基本構成としており、この構成の地盤歪検出端を地盤に形成した穴内に敷設し、充填材を詰めて地盤と一体化しておくことにより、地盤に歪が生じると、その歪に応じて変位標識管体が変形し、それに沿って配置している光ファイバセンサにも変形が生じ、光ファイバセンサの長さ方向に歪分布が生じる。このため、光ファイバセンサ中の散乱光分布の観測により、光ファイバセンサの長さ方向の歪分布を測定でき、その測定情報から地盤歪の発生位置や方向、大きさ等を検出することができる。
【0013】
ここで、前記変位標識管体の下端に配置される短尺管体は先端キャップを構成するものであるので、これを円筒状の本体とその下端に固定された蓋部材を備え、前記円筒状の本体には前記光ファイバセンサの下端のUターン部を通すためのスリットが前記本体の上端から軸線方向下方に延びるように形成された構成とし、前記変位標識管体の他の短尺管体は、前記先端キャップの円筒状の本体の外径よりも小径の円筒面部を備えた筒状の本体を備えた構成とする。そして、前記光ファイバセンサは下端のUターン部を前記先端キャップの本体に形成しているスリットに通し、前記Uターン部よりも上方の部分を他の短尺管体の前記円筒面部の外面に沿って配置し複数箇所を前記円筒面部の外面に固定する構成とする。この構成により、複数の短尺管体を接続する作業が容易となると共に接続した状態では、先端キャップよりも上の領域では外形を長手方向に一定とすることができ、その外面に光ファイバセンサを沿わせて配置することで、光ファイバセンサを屈曲させることなく取り付けることができ、光ファイバセンサによる歪測定精度を向上させることができる。
【0014】
前記変位標識管体の先端キャップを除いた他の短尺管体の筒状の本体には、前記円筒面部よりも外側に突出し且つ軸線方向に延びるように形成された複数のリブを設けておくことが、強度を高めることができるので好ましい。
【0015】
また、前記光ファイバセンサを変位標識管体に固定する手段を、光ファイバセンサを変位標識管体に押し付けて固定するための押え板と、その押え板を前記変位標識管体に取り付けるねじを備えた構成とし、そのねじを、入れ子式で連結された二つの短尺管体を相互に固定するねじを兼ねさせることが好ましい。この構成とすると、光ファイバセンサの固定と短尺管体のつなぎ合わせた部分の固定とを同時に行うことができ、設置作業を容易とできる。
【実施例】
【0016】
以下、図面に示す本発明の好適な実施例を説明する。図1は本発明の一実施例による地盤歪検出端を用いた地盤歪検出システムを示す概略断面図であり、1は地盤、2はその地盤1に形成された縦穴、3は本発明の実施例に係る地盤歪検出端である。この地盤歪検出端3は、縦穴2内に挿入されたほぼ円筒状の変位標識管体5と、その変位標識管体5の外周面に軸線方向に沿って張力を掛けた状態で配置され、複数個所を変位標識管体5に固定治具7で固定された光ファイバセンサ6等を備えており、縦穴2内に設置した後、グラウト等の充填材8を縦穴2内及び変位標識管体5内に充填することで、地盤と一体化されている。本実施例では、4本の光ファイバセンサ6が、変位標識管体5の円周方向の4個所に取り付けられており、且つ各光ファイバセンサ6は変位標識管体5の下端でUターンしている。また、4本の光ファイバセンサ6の上端は地面上に設けた接続部9の接続具10によって、直列に接続されており、その両端は接続用の光ファイバ11によって測定器(図示せず)に接続されている。測定器としては、光ファイバ内のブリルアン散乱光を利用して光ファイバの長手方向の歪分布を測定するBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Refrectometer)を用いることができ、これによって、4本の光ファイバセンサ6内に生じる長さ方向の歪分布を測定できる。
【0017】
次に、地盤歪検出端3を詳細に説明する。図2は地盤歪検出端3の変位標識管体5及びそれに取り付けた光ファイバセンサ6等の下端近傍を示す概略斜視図、図3は図2に示す部分を分解して示す概略斜視図、図4(a)は変位標識管体5の下端部分を分解して示す概略断面図、図4(b)は図4(a)のA−A矢視概略断面図である。変位標識管体5は複数の同一形状の短尺管体15と下端に配置されて先端キャップを構成する短尺管体(以下、先端キャップという)15Aをつなぎ合わせて形成したものである。先端キャップ15Aはアルミ製のもので、円筒状の本体16と、その上端に一部を突出させた状態で嵌合され、溶接固定された円筒状のソケット17と、下端に溶接固定された蓋部材18を備えている。このソケット17は隣接した短尺管体15に入れ子式で連結するためのものであり、固定用のねじ穴19を備えている。また、本体16には、円周方向に等間隔な位置に、光ファイバセンサ6の下端のUターン部を通すための4個のスリット20が本体16の上端から軸線方向下方に延びるように形成されている。
【0018】
短尺管体15もアルミ製のものであり、筒状の本体21と、上端に一部を突出させた状態で嵌合され、ねじ23によって固定された円筒状のソケット22を備えている。本体21は、円筒面部21aと、円周方向に等間隔な4個所に円筒面部21aよりも外側に突出し且つ軸線方向に延びるように形成された4個のリブ21bを備えた構造をしており、且つ先端キャップ15Aに設けているソケット17を嵌合可能な内径を有している。かくして、短尺管体15は先端キャップ15Aに対して入れ子式に連結可能である。また、短尺管体15に取り付けているソケット22は、他の短尺管体15の本体21に対しても嵌合可能であり、従って、短尺管体15は他の短尺管体15に対してソケット21を用いて入れ子式に連結可能である。短尺管体15の本体21の円筒面部21aは、先端キャップ15Aの円筒状の本体16の外径よりも小径に作られており、本体16のスリット20に下端のUターン部を通して配置した光ファイバセンサ6を屈曲させることなく円筒面部21aの外面に沿わせて配置することができる。このソケット22には、他の短尺管体15に嵌合させる部分に固定用のねじ穴24を備えている。また、本体21には、それに嵌合させたソケット17又は他の短尺管体15のソケット22に設けているねじ穴19又は24に対応する位置にねじ止め用のばか穴25を形成している。
【0019】
前記したねじ穴19、24及びそれに重なる位置のばか穴25は、短尺管体15A、15に沿わせて取り付ける光ファイバセンサ6をはさむ位置に形成されており、光ファイバセンサ6を固定する固定治具7の取り付けにも利用されるものである。すなわち、固定治具7は押え板30とねじ31を有しており、短尺管体15A、15に光ファイバセンサ6を沿わせて配置し、その上に押え板30を押し当て、ねじ31をばか穴25を通してねじ穴19、24にねじ込むことで、押え板30で光ファイバセンサ6を短尺管体15に固定することができると共に、ねじ31で短尺管体15Aと15を、或いは短尺管体15、15同志を相互に固定することができる。
【0020】
短尺管体15の長さは、あまり短いと使用個数が多くなってコストがかかると共に連結作業量が多くなり、あまり長いと、取り扱いが困難となり、また縦穴2の上方に施工用の空間を十分確保できない場合には連結作業ができなくなる。これらを考慮して、短尺管体15の長さを選定すればよいが、多くの場合、1m程度が好ましく、本実施例でも短尺管体15の本体21の長さを1mに設定している。また、図2から良く分かるように、この実施例では光ファイバセンサ6を各短尺管体15について1個所で固定しており、光ファイバセンサ6の固定個所と固定個所の間隔は短尺管体15の本体21の長さに等しく(すなわち、1mに)している。この間隔は、地盤歪を検出する際の歪位置検出の単位となるものであるので、要求される地盤歪発生位置検出の精度に応じて定めればよく、この実施例では、検出単位が1m程度で良いため、図示の構造としている。もし、検出単位を異なる長さとしたい場合には、押え板30の取り付け位置を適当に変更すればよい。
【0021】
光ファイバセンサ6は図3から良く分かるように、下端をループ状にし、他の部分は揃えてテープ等(図示せず)で束ねている。この光ファイバセンサ6としては、単に光ファイバのみで構成されたものでもよいが、本実施例では、施工時、使用中等における破損、劣化等を防止する上から、光ファイバを耐食合金鞘体で覆装したものを用いている。
【0022】
次に、上記構成の地盤歪検出端3の設置方法を説明する。図5は地盤歪検出端3の設置の際に用いるストッパ35を示すものである。このストッパ35は、短尺管体15の外面に取り付け可能な一対のクランプ部材36を備えており、そのクランプ部材36は短尺管体15の外周をクランプするための円弧部36aと、その両端に形成されているフランジ部36bと、背面の取っ手36c等を備えている。そして、図5(a)に示すように、一対のクランプ部材36で短尺管体15又は15Aをはさみ、フランジ部36bをボルト37で連結することで、短尺管体15に強固に取り付けることができる。ここで、ストッパ35のフランジ部36b及び取っ手36cは、図7に示すように、地盤に形成した縦穴2の直径よりも大きい寸法に作られており、このため、縦穴2に挿入している短尺管体15又は15Aにストッパ35を取り付けると、そのストッパ35が縦穴2の周囲の地面若しくはその上に置いた支持板38で支えられ、短尺管体15が縦穴2内に落下することを防止できる。このストッパ35は少なくとも2組用意しておく。
【0023】
まず、地盤歪検出端3を設置するため縦穴2(図1参照)を掘削し、必要に応じ、その縦穴2の内面に保護用のケーシングを挿入する。次に、図6に示すように、先端キャップ15Aのソケット17に短尺管体15の下端を差し込んでつなぎ合わせ、光ファイバセンサ6の下端のループ部をスリット20内に通し、その他の部分は短尺管体15に沿って上方に引き出しておく。そして、押え板30を光ファイバセンサ6の上から短尺管体15に押し当て、ねじ31で固定する。これにより、光ファイバセンサ6が押え板30で強固に固定されると共に先端キャップ15Aのソケット17と短尺管体15とがねじ31で固定される。
【0024】
次に、図7に示すように、先端キャップ15Aの上端部分に第一のストッパ35を取り付け、その先端キャップ15Aを縦穴2内に挿入し、ストッパ35を地面上の支持板38上に置いて支持させる。次に、短尺管体15の上に次の短尺管体15をつなぎ合わせ、光ファイバセンサ6をその短尺管体15に沿って配置すると共に、その光ファイバセンサ6に張力付与手段(図示せず)によって上向きの所定の張力Tを付与し、その状態で、押え板30を光ファイバセンサ6の上から短尺管体15に押し当て、ねじ31(図3参照)で固定する。これにより、光ファイバセンサ6が押え板30で強固に固定されると共に短尺管体15、15同志がねじ31で固定される。また、上下に配置されている押え板30、30ではさまれた領域の光ファイバセンサ6には所定の張力Tが加わった状態となっている。このような光ファイバセンサ6の固定作業を短尺管体15の周囲に配置された4本の光ファイバセンサ6について順次実施し、それが終了すると、下側の短尺管体15の上端部分に第二のストッパ35を取り付ける。
【0025】
その後、つなぎ合わせた短尺管体15を手で支えた状態で、下側のストッパ35を取り外し、上側のストッパ35が地面上の支持板38に着くまで接続済の短尺管体15を縦穴2の中に降ろしてゆく。そして、接続済の短尺管体15をストッパ35で支持させた後、前回と同様にして、その短尺管体15の上に次の短尺管体15をつなぎ合わせ、光ファイバセンサ6に張力Tを付与した状態で押え板30を取り付けて光ファイバセンサ6を固定するという動作を行う。以下、同様の動作を繰り返すことで、短尺管体15を次々とつなぎ合わせ、光ファイバセンサ6に一定の張力Tを加えた状態で固定し、その接続済の短尺管体15を縦穴2内に降ろしてゆくことができる。この作業中、接続済の短尺管体15は常にストッパ35で支えられるので、縦穴2内に不用意に落下するということがなく、安全に作業を行うことができる。また、短尺管体15をつなぎ合わせる作業、光ファイバセンサ6を、張力を掛けた状態で押え板30で固定する作業等は、接続済の短尺管体15をストッパ35で支持した状態で行うので、容易に実施できる。更に、短尺管体15をつなぎ合わせながら、縦穴2内に降ろしてゆくので、縦穴2の上方には大きい作業スペースは必要ない。すなわち、縦穴2の上方には、2本の短尺管体15、15を接続し且つその上方に光ファイバセンサ6に張力を付与する手段を配置する作業スペースがあれば、作業は可能であり、トンネル内等の狭い空間でも作業を行うことができる。
【0026】
縦穴2内の所望深さまで、先端キャップ15A及びそれに接続した短尺管体15を降ろした後は、図1に示すように、4本の光ファイバセンサ6を引き出した状態で、縦穴2内及び短尺管体15内にグラウト等の充填材8を充填し、短尺管体15や光ファイバセンサ6を地盤1と一体化する。その後、上方に引き出している4本の光ファイバセンサ6を互いに直列に接続し、且つ測定器(図示せず)に接続する。以上により、地盤歪検出端3の敷設作業が終了する。
【0027】
以上のようにして設置された地盤歪検出端3は地盤1と一体化されている。光ファイバセンサ6に接続された光ファイバ11に接続されている測定器(図示せず)は、適当なタイミングで光ファイバセンサ6内の散乱光分布を測定し、光ファイバセンサ6内の長さ方向の歪分布を監視している。今、縦穴2を形成している地盤1に歪が生じると、その縦穴2内に設置している変位標識管体5は地盤1の歪に応じて歪を生じる。例えば、縦穴2のほぼ中間位置に地すべりのような歪が生じると、変位標識管体5はその部分で地盤に応じて屈曲する。この変位標識管体5の屈曲によって、光ファイバセンサ6も屈曲し、長さ方向の歪を生じる。この際、変位標識管体5に沿わせている4本の光ファイバセンサ6では、取り付け位置によって(変位標識管体5の屈曲の方向によって)歪の大きさが異なり、また、長さ方向の位置によっても歪の大きさが異なっている。従って、光ファイバ11に接続されている測定器(図示せず)で光ファイバセンサ6内の歪分布を測定することにより、変位標識管体5の歪(屈曲)の大きさ、方向等を検出することができ、地盤歪の大きさ、方向等を検出できる。以上のようにして、縦穴2を形成した地盤1の歪を監視でき、地盤崩落の予知等を行うことができる。
【0028】
なお、以上の説明では、短尺管体5をつなぎ合わせて行く際、1個の短尺管体5をつなぎ合わせる度に接続済の部分を縦穴2内に降ろしているが、縦穴2の上方に大きい作業スペースを確保できる場合には、複数個の短尺管体5をつなぎ合わせた後、接続済の部分を縦穴2内に降ろすようにしてもよい。また、上記実施例では、地盤歪検出端3を縦穴2内に設置する場合を説明したが、この地盤歪検出端3の設置場所は縦穴2に限らず、横穴、斜め穴等でも差し支えない。なお、水平に延びる横穴に地盤歪検出端3を取り付ける場合には、ストッパ35を使用しなくてよい。
【符号の説明】
【0029】
1 地盤
2 縦穴
3 地盤歪検出端
5 変位標識管体
6 光ファイバセンサ
7 固定治具
8 充填材
15 短尺管体
15A 短尺管体(先端キャップ)
16、21 本体
17、22 ソケット
19、24 ねじ穴
25 ばか穴
30 押え板
31 ねじ
35 ストッパ
36 クランプ部材
37 ボルト
38 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪を検出すべき地盤に形成された穴内に挿入された、複数の短尺管体を入れ子式でつなぎ合わせてなる変位標識管体と、その変位標識管体に沿って張力をかけた状態で配置され、複数個所を前記変位標識管体に固定された歪検出用の光ファイバセンサとを備え、前記変位標識管体の下端に配置される短尺管体は先端キャップを構成するもので円筒状の本体とその下端に固定された蓋部材を備え、前記円筒状の本体には前記光ファイバセンサの下端のUターン部を通すためのスリットが前記本体の上端から軸線方向下方に延びるように形成されており、前記変位標識管体の他の短尺管体は、前記先端キャップの円筒状の本体の外径よりも小径の円筒面部を備えた筒状の本体を備えており、前記光ファイバセンサは下端のUターン部を前記先端キャップの本体に形成しているスリットに通し、前記Uターン部よりも上方の部分を他の短尺管体の前記円筒面部の外面に沿って配置し複数箇所を前記円筒面部の外面に固定して設けられていることを特徴とする地盤歪検出端。
【請求項2】
前記変位標識管体の先端キャップを除いた他の短尺管体の筒状の本体は、前記円筒面部よりも外側に突出し且つ軸線方向に延びるように形成された複数のリブを備えていることを特徴とする請求項1記載の地盤歪検出端。
【請求項3】
前記光ファイバセンサを変位標識管体に固定する手段が、光ファイバセンサを変位標識管体に押し付けて固定するための押え板と、その押え板を前記変位標識管体に取り付けるねじを備えており、そのねじが、入れ子式で連結された二つの短尺管体を相互に固定するねじを兼ねていることを特徴とする請求項1又は2記載の地盤歪検出端。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−271329(P2010−271329A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176799(P2010−176799)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【分割の表示】特願2000−245444(P2000−245444)の分割
【原出願日】平成12年8月14日(2000.8.14)
【出願人】(000208695)第一高周波工業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】