説明

型締装置の型締力測定装置

【課題】型締装置の歪を蓄積する部分に直接取り付けるセンサを用いることなく、型締力を測定できる型締力測定装置を提供すること。
【解決手段】型締機構を駆動するモータを備えた型締装置の型締力測定装置であって、該型締機構が型閉じ工程において型盤位置が金型タッチ位置に到達してから型締完了位置に到達するまでに前記モータが発生したエネルギーUMを求める手段(SA6〜SA11)と、該手段により求められたエネルギーUMと該型締機構の弾性定数Kとから算出型締力FCを算出する型締力算出手段(SA13)と、を有することを特徴とする型締装置の型締力測定装置。ここで、エネルギーUMは、モータ駆動電流とモータの回転角度に基づいて算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、プレス機械などの可動盤と固定盤とを有する型締装置における型締力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では成形品にバリができることを防止するために、射出圧力や成形品の大きさに応じて適切な型締力を与える必要がある。このため、成形運転中に所定の型締力が発生しているかを監視したり、型締力をフィードバック制御して常に所定の型締力が発生するように型締機構を制御することが行われている。
【0003】
特許文献1には、型締装置のアーム部の外表面にアームの歪量を検知する歪センサをボルトによって取り付け、歪センサにより検知したアーム部の歪量に基づいて型締力を求め、求めた型締力に応じて型締装置の型締力をフィードバック制御する技術が開示されている。この文献では、射出成形機が備えているタイバーに歪センサを取り付けた場合、歪ゲージの貼り付け状態や、貼り付け後の耐久性が検査精度に大きく影響することから、型締装置の構成部材の外表面に歪センサ部をボルトによって固定する技術が開示されている。
【0004】
一方、特許文献2には、射出成形機などの成形機が備えている可動プラテンの移動を案内するタイバーの歪量を測定し型締力を求める技術が開示されている。この文献では、歪センサをタイバーにバンドを用いて取り付ける技術が開示されており、該バンドに伸びが生じても、その伸びを吸収して、継続的に十分な押し付け力で歪センサをタイバーに押し付けることができるタイバー歪測定装置の固定装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、高圧型締を行う基準となる仕事量を設定し、生産稼動中に、型締工程の高圧型締に伴う仕事量を検出し、これらの差を求め型締力を補正する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−187853号公報
【特許文献2】国際公開第2006/087936号公報
【特許文献3】特開2006−239940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タイバーの伸びを歪センサで直接測定して型締力を測定することは精度が高い。しかし、背景技術で説明したように、型締装置のアーム部やタイバーに歪センサなど型締力測定素子を取り付けることは、型締装置にボルトで固定したり、タイバーにバンドを用いて固定したりと、構造が複雑なこともあり、必ずしも信頼性が高い型締力を測定しているとはいえなかった。
【0008】
そこで本発明の目的は、型締装置の歪を蓄積する部分に直接取り付けるセンサを用いることなく、型締力を測定できる型締力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明は、型締機構を駆動するモータを備えた型締装置の型締力測定装置であって、該型締機構が型閉じ工程において型盤が金型タッチ位置に到達してから型締完了位置に到達するまでに前記モータが発生したエネルギーを求める手段と、該手段により求められたエネルギーと該型締機構の弾性定数とから算出型締力を算出する型締力算出手段と、を有することを特徴とする型締装置の型締力測定装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、型締機構を駆動するモータを備えた型締装置の型締力測定装置であって、該型締機構が型開き工程において型盤が型開きを開始してから金型タッチ位置に到達するまでに前記モータが発電したエネルギーを求める手段と、該エネルギーを求める手段により求められたエネルギーと該型締機構の弾性定数とから算出型締力を算出する型締力算出手段と、を有することを特徴とする型締装置の型締力測定装置である。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記型締機構は型締力を測定する型締力センサを有し、該型締力センサによって検出された検出型締力と、前記型締力算出手段により算出された算出型締力と、該検出型締力と該算出型締力との差を算出する偏差型締力算出手段と、該偏差型締力算出手段により算出された型締力の差があらかじめ設定された許容範囲を超えた際に警告を発生する警告発生手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の型締装置の型締力測定装置である。
請求項4に係る発明は、前記エネルギーは、前記モータのトルクと回転角度との積を積分して求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の型締装置の型締力測定装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記型締機構の弾性定数は、前記型締機構が型閉じ工程において型盤が金型タッチ位置に到達してから型締完了位置に到達するまでに前記モータが発生したエネルギーと前記型締機構に取り付けられた型締力センサで測定された型締力とから求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の型締装置の型締力測定装置である。
請求項6に係る発明は、前記型締機構の弾性定数は、前記型締機構が型開き工程において型盤が型開きを開始してから金型がタッチ位置に到達するまでに前記モータが発電したエネルギーと前記型締機構に取り付けられた型締力センサで測定された測定型締力とから求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の型締装置の型締力測定装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、型締装置の歪を蓄積する部分に直接取り付けるセンサを用いることなく、型締力を測定できる型締装置の型締力測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面とともに説明する。なお、下記の説明では射出成形機に用いられる型締装置を例として説明するが、本発明は射出成形機の型締装置の型締力測定装置に限定されるものではない。
【0015】
図1は、型締装置の一つの例である射出成形機に用いられる型締装置100の概要図である。固定プラテン1とリアプラテン2は、型締機構を構成する4本のタイバー4によって連結されている。固定プラテン1とリアプラテン2間には、可動プラテン3がタイバー4に案内されて移動自在に配設されている。また、固定プラテン1には固定側金型5aが取付けられ、可動プラテン3には可動側金型5bが固定側金型5aに対面して取付けられている。
【0016】
リアプラテン2と可動プラテン3間には型締機構を構成するトグル機構6が配設され、トグル機構6のクロスヘッド6aに設けられたナット(図示せず)が、リアプラテン2に回動自在で軸方向移動不能に取付けられたボールネジ7と螺合している。型締用サーボモータ8が伝動機構10を介してボールネジ7を駆動することにより、可動プラテン3を固定プラテン1の方向に前進、後退させて金型5a、5bの開閉、型締を行い、これによってトグル式型締装置を形成している。型閉じ動作は、可動プラテン3を固定プラテン1側に前進させる動作である。また、型開き動作は、可動プラテン3を固定プラテン1側から離す動作、つまり、後退させる動作である。型締用サーボモータ8にはパルスコーダ等の該サーボモータの回転位置(回転角度)、速度を検出する位置・速度検出器11が取付けられている。位置・速度検出器11からの出力信号をもとに、クロスヘッド6aの位置、すなわちトグル機構6の状態、可動プラテン3(可動側金型5b)の位置を検出できる。
【0017】
また、タイバーナット9とギヤから構成される伝動機構(図示せず)と型厚調整用モータ14等によって型締力調整手段を構成している。タイバー4のリアプラテン2側の端部にはネジが切られている。該ネジと螺合するタイバーナット9を、前記伝動機構(図示せず)を介して型厚調整用モータ14によって回転駆動し、リアプラテン2をタイバー4に沿って前後進できる。
【0018】
型締力センサ13は、4本あるタイバー4のうちの少なくとも一つに配設される。型締力センサ13は、タイバー4の歪み(主に、伸び)を測定するセンサである。センサとしては例えば、歪ゲージ(ストレインゲージ)を用いることができる。タイバー4には型締の際に型締力に対応して引張力が加わり、型締力に比例してわずかではあるがタイバー4は弾性変形して伸びる。したがって、タイバー4の伸び量を型締力センサ13により測定することで、金型5a,5bに実際に印加されている型締力を知ることができる。
【0019】
ここで、型締装置により型締力を発生させた場合に、可動プラテン3、トグル機構6のアーム部6b、アーム支持部6cは、弾性変形して歪を生じる。これらの部分の歪による変形量はタイバー4の歪量に比べると少ない(例えば、特許文献1の段落「0010」欄の記載を参照)。
【0020】
符号20は、射出成形機を制御する制御装置を示しており、図1にはこの制御装置20の要部のみを記載している。全体を制御するプロセッサ(CPU)21にバス30を介してサーボモータの位置、速度、および電流(トルク)を制御する軸制御回路22、入出力回路24、メモリ26、A/D変換器27、表示装置29のインタフェース回路28が接続されている。
【0021】
軸制御回路22はプロセッサやメモリ、インタフェースなどで構成され、型締用サーボモータ8に取付けた位置・速度検出器11からの位置、速度フィードバック信号が帰還され、さらに、型締用サーボモータ8の駆動電流を検出する電流検出器12からの電流フィードバック信号が帰還されている。また、軸制御回路22にはサーボアンプ23を介して型締用サーボモータ8が接続されている。さらに、入出力回路24にはインバータ25を介して型厚調整用モータ14が接続され、インタフェース28には表示装置29が接続されている。
【0022】
メモリ26には、射出成形機を制御するプログラムが格納されている。後述する型締力調整のためのアルゴリズムに示すフローチャートを基に作成したプログラムも、メモリ26に格納されている。プロセッサ21はこれらのプログラムに基づいて射出成形機を制御する。型締動作については、プロセッサ21はプログラムに基づいて、移動指令を軸制御回路22に出力する。軸制御回路22に内蔵されるプロセッサ(図示せず)は、この移動指令と位置・速度検出器11からの位置、速度フィードバック信号および電流検出器12からの電流フィードバック信号に基づいて、位置、速度、および電流のフィードバック制御を行い、サーボアンプ23を介して型締用サーボモータ8を駆動制御する。
【0023】
型締用サーボモータ8の駆動により、ボールネジ7が回転し、該ボールネジ7に螺合するナット(図示せず)を有するトグル機構6のクロスヘッド6aがボールネジ7に沿って移動し、トグル機構6が駆動され、可動プラテン3が前進し固定側金型5aに可動側金型5bが当接し、さらに可動プラテン3を前進させ、トグル機構6のリンクが伸び、可動プラテン3が所定の型締完了位置に達したとき、この位置に型締用サーボモータ8は位置決めされ、型締力が発生する。
【0024】
すなわち、固定プラテン1とリアプラテン2はタイバー4によって連結されているから、固定側金型5aと可動側金型5bが当接し、さらに可動プラテン3および可動側金型5bが前進したとき、該タイバー4が伸び、このタイバー4の伸びの反力によって型締力が得られる。
【0025】
そのような構造であるため、金型5a、5bを金型の厚さが異なるものに交換したときや型締力を変えるときには、型締完了位置まで可動プラテン3が前進した時に目標型締力が得られるようなタイバーの伸びが発生するようリアプラテン2の位置を変化させ、型締力を調整しなければならない。リアプラテン2の位置を変化させる場合、プロセッサ21は入出力回路24を介して型厚調整用モータ14を駆動し、伝動機構(図示せず)を介してタイバーナット9を回転させてリアプラテン2の位置を変化させることができる。
【0026】
リアプラテン2に位置を特定するためのセンサや型厚調整用モータ14に回転位置を特定するためのセンサを設けずに、型厚調整用モータ14の駆動時間(換言すると、リアプラテン2の移動時間)を制御してリアプラテン2の位置を変化させることにより、型締力の調整を行うことができる。
【0027】
このような型締用サーボモータ8でトグル式型締機構を駆動する射出成形機では、射出成形機の自動運転中、金型5a、5bの熱膨張等によって型締力が変動する。そのため、トグル式型締装置を有する射出成形機ではこの型締力の変動を抑制し安定した型締力を得る必要がある。安定した型締力を得る制御を行うために、正確な型締力を求めなければならない。
【0028】
次に、型締装置の歪を蓄積する部分に直接取り付けるセンサを用いることなく型締力を測定する本発明における方法について説明する。
【0029】
タイバー4には型締の際に型締力に対応して引張力が加わり、型締力に比例してわずかではあるがタイバー4は伸びる。タイバー4の伸び量を型締力センサ13により測定することで、金型5a,5bに実際に印加されている型締力を知ることができる。ここで、タイバー4は弾性変形して伸びることによって弾性エネルギーを蓄積した状態にあるとみることができる。図1で説明した型締装置100の4本のタイバー4全体の合成した合成弾性定数をk、型締力をF、タイバーの伸び量をxとする。そして、型締力Fの時にタイバーの伸び量がxであるとすると、数1式の関係がなりたつ。
【0030】
【数1】

【0031】
また、この時の4本のタイバー4に蓄積された弾性エネルギーをuEとすると、数2式の関係がなりたつ。
【0032】
【数2】

【0033】
ところで、型締力Fを生みだす際の型締用サーボモータ8が発生するエネルギーUMは、理想的にはその全てのエネルギーが4本のタイバー4に蓄積されることが望ましい。しかし、先に述べたように、型締装置100のトグル機構6などにも歪による弾性エネルギーとして蓄積される。そのため、上記の合成弾性定数kは、トグル機構6を含めた全体の弾性定数に置き換える必要がある。型締装置100の4本のタイバー4とトグル機構6など歪によるエネルギーを蓄積する型締機構部分全体の弾性定数をK(以下、型締機構の弾性定数Kという)とみなす。型締装置100の型締機構全体に蓄積される弾性エネルギーをUEとし、数2式のkをKで置き換えると、数3式が得られる。
【0034】
【数3】

【0035】
ところで、型締装置100に蓄積される弾性エネルギーUEは、型締用サーボモータ8が型締力Fを生みだすために発生したエネルギーUMに等しいとみなすことができる。そうすると、数4式の関係がなりたつ。なお、ここでは、摩擦によるエネルギー損失、熱エネルギー損失の部分は少ないとして無視する。
【0036】
【数4】

【0037】
型締用サーボモータ8が発生したエネルギーUMは、数5式で表すことができる。符号Tは型締用サーボモータ8のトルクを表し、符号θは回転角度を表す。符号Δは差分を意味し回転角度θの前回の演算時と今回の演算時と差の角度を表す。ここで、前回と今回は、前回の時間と今回の時間、あるいは、前回の位置と今回の位置である。符号Σは積算を表わす。つまり、数5式は、エネルギーUMは、型締用サーボモータ8の回転角度とトルクの積を位置により積分して求めることを意味している。図1で説明したように、型締用サーボモータ8の回転角度θは、位置・速度検出器11によって検出することができる。また、型締用サーボモータ8のトルクTは、トルク定数と駆動電流の積で求めることができる。駆動電流は電流検出器12からの電流フィードバック信号から求めることができる。
【0038】
【数5】

【0039】
そして、数3式から数5式により数6式が得られる。数6式から解るように、型締力Fを型締用サーボモータ8のトルクTと回転角度θを測定することにより求めることができる。この式を用いることによって、歪センサなどのセンサをタイバー4に取り付けることなく、型締力を測定可能であることが解る。
【0040】
【数6】

【0041】
ここで、型締機構の弾性定数の求め方について説明する。数6式を変形することにより数7式が得られる。ここで型締力Fは、型締力センサ13を用いて実際にタイバー4の歪量を測定することにより求める。エネルギーUMは、型締機構が型閉じ工程において可動プラテン3が金型タッチ位置から型締完了位置に到達するまでに型締用サーボモータ8が発生したエネルギー、または、型締機構が型開き工程において可動プラテン3が型締完了位置から金型タッチ位置に到達するまでに型締用サーボモータ8が発電したエネルギーである。このように、エネルギーUMも型締力Fも測定可能な物理量であるのでKを求めることができる。
【0042】
【数7】

【0043】
以上の説明では型閉じ工程、すなわち型締力を発生する工程での型締力を求める方法であったが、型開き工程、すなわち型締力を解放する工程でも同様の手法で型締力を求めることができる。この場合には、型締機構に蓄えられる弾性エネルギーが型開きする際にモータに伝達され、型締用サーボモータ8が回転することを利用する。この際、型締用サーボモータ8は外力によって回転させられるので発電機として働く。そこで、型開き工程では型閉じ工程とは反対に、型開きを開始してから金型タッチ位置に到達するまでにモータが発電したエネルギーを数5式によって求める。さらに求めたエネルギーUMを数6式によって型締力Fを算出できる。
【0044】
次に、型閉じ工程において型締完了位置における型締力を求めるアルゴリズムを図2に示されるフローチャートを用いて説明する。ここでは、固定プラテン1の固定側金型5aの取付面の位置を基準としリアプラテン2の方向を可動プラテン3の位置が増加する方向とする。可動プラテン3の前進とは固定プラテン1に近づく移動を意味する。可動プラテン3の後退とは固定プラテン1から離れる方向の移動を意味する。また、金型タッチ位置、可動プラテンの型締完了位置、型開き完了位置の位置情報は、あらかじめ設定されているものとする。以下、各ステップに従って説明する。
【0045】
●[ステップSA1]型締用サーボモータ8が発生するエネルギーUMの値を0(ゼロ)に初期化する。
●[ステップSA2]型締用サーボモータ8を駆動し、可動プラテン3を固定プラテン1側へ前進開始する。
●[ステップSA3]型締用サーボモータ8に取り付けられている位置・速度検出器11からの位置検出信号を取得する。より具体的には、位置・速度検出器11からの制御周期毎に得られるパルス数を取得する。
●[ステップSA4]ステップSA3で得られた位置検出信号を元に、可動プラテン3の位置を算出する。なお、位置検出信号から可動プラテン3の位置を求めることは周知の技術である。
●[ステップSA5]可動プラテン3の位置は金型タッチ位置以下であるか否かを判断し、可動プラテン3の位置が金型タッチ位置以下の場合にはステップSA6に移行し、以下でなければステップSA3に戻る。
●[ステップSA6]ステップSA3と同様に位置検出信号を取得する。さらに、型締用サーボモータ8の駆動電流を検出する電流検出器12からの電流検出信号を取得する。
●[ステップSA7]ステップSA4と同様に可動プラテン3の位置を算出する。
【0046】
●[ステップSA8]型締用サーボモータ8のトルク値を算出する。トルク値は、型締用サーボモータ8のトルク定数とステップSA6で取得した電流検出信号とを用いて算出する。なお、トルク定数はモータ固有の値である。
●[ステップSA9]ステップSA6で取得する位置検出信号から前回の制御周期で取得した位置検出信号の差を元に型締用サーボモータ8の回転角度の差を求める。より具体的には、位置・速度検出器11からの制御周期毎に得られるパルス数の差である。
●[ステップSA10]型締用サーボモータ8が発生するエネルギー量を、UM=UM+T・Δθにより算出する。T・Δθは1つの制御周期で型締用サーボモータ8が発生するエネルギーである。
●[ステップSA11]可動プラテン3の位置は型締完了位置に達したか否か判断し、達していない場合にはステップSA6に戻り、達している場合にはステップSA12へ移行する。
●[ステップSA12]型締用サーボモータ8の駆動を停止し可動プラテン3の前進を停止する。
●[ステップSA13]型締機構の弾性定数KとステップSA10で積算して求められた型締用サーボモータ8が発生したエネルギーとから算出型締力FCを求める。
●[ステップSA14]ステップSA13で求められた算出型締力FCを表示装置29に表示し、終了する。
【0047】
次に、型開き工程において型締完了位置における型締力を求めるアルゴリズムを図3に示されるフローチャートを用いて説明する。型開き工程において、型締用サーボモータ8は発電することになり、図3のフローチャートではこの発電したエネルギーを求める。ここでは、固定プラテン1の固定側金型5aの取付面の位置を基準とし、リアプラテン2の方向を位置が増加する方向とする。可動プラテン3の前進とは固定プラテン1に近づく移動を意味する。可動プラテン3の後退とは固定プラテン1から離れる方向の移動を意味する。また、金型タッチ位置、可動プラテンの型締完了位置の位置情報は、あらかじめ設定されているものとする。以下、各ステップに従って説明する。
【0048】
●[ステップSB1]型締用サーボモータ8が発電するエネルギーUMの値を0(ゼロ)に初期化する。
●[ステップSB2]型締用サーボモータ8を駆動し、可動プラテン3をリアプラテン2側へ後退開始する。
●[ステップSB3]型締用サーボモータ8に取り付けられている位置・速度検出器11からの位置検出信号を取得する。より具体的には、位置・速度検出器11からの制御周期毎に得られるパルス数を取得する。さらに、発電機として働く型締用サーボモータ8からの発電電流を検出する電流検出器12からの電流検出信号を取得する。
●[ステップSB4]型締用サーボモータ8のトルク値を算出する。トルク値は、型締用サーボモータ8のトルク定数とステップSB3で取得した電流検出信号とを用いて算出する。
●[ステップSB5]ステップSB3で取得した位置検出信号から前回の制御周期で取得した位置検出信号の差を元に型締用サーボモータ8の回転角度の差を求める。より具体的には、位置・速度検出器11からの制御周期毎に得られるパルス数の差である。
【0049】
●[ステップSB6]型締用サーボモータ8が発生するエネルギー量を、UM=UM+T・Δθにより算出する。T・Δθは1つの制御周期で型締用サーボモータ8が発電するエネルギーである。
●[ステップSB7]ステップSB3で得られた位置検出信号を元に、可動プラテン3の位置を算出する。なお、位置検出信号から可動プラテン3の位置を求めることは周知の技術である。
●[ステップSB8]可動プラテン3の位置は金型タッチ位置以下であるか否かを判断し、可動プラテン3の位置が金型タッチ位置以下の場合にはステップB3に戻り、以下でなければステップSB9へ移行する。
●[ステップSB9]型締用サーボモータ8に取り付けられている位置・速度検出器11からの位置検出信号を取得する。より具体的には、位置・速度検出器11からの制御周期毎に得られるパルス数を取得する。
●[ステップSB10]ステップSB9で得られた位置検出信号を元に、可動プラテン3の位置を算出する。
【0050】
●[ステップSB11]可動プラテン3の位置は型開き完了位置に達したか否か判断し、達していない場合にはステップSB9に戻り、達している場合にはステップSB12へ移行する。
●[ステップSB12]型締用サーボモータ8の駆動を停止し可動プラテン3の後退を停止する。
●[ステップSB13]型締機構の弾性定数KとステップSB6で積算して求められた型締用サーボモータ8が発生したエネルギーとから算出型締力FCを求める。
●[ステップSB14]ステップSB13で求められた算出型締力FCを表示装置29に表示し、終了する。
【0051】
上述した図2、図3に示されるアルゴリズムにより、算出型締力FCは型締装置100に型締力センサ13からの信号を用いることなく求められる。したがって、歪ゲージのような型締力センサ13を型締装置100に取り付ける必要がなくなり、特許文献1や特許文献2が課題としていた歪ゲージの位置ずれやセンサとタイバーのすべりによって生じる型締力測定の不正確さを回避することができる。
【0052】
さらに、型締力測定の測定精度を重視し歪ゲージなどの型締力センサ13を用いる場合にも、本発明の型締力測定装置を併用することにより歪ゲージなどの型締力センサ13が正常に動作しているかを監視することが可能である。そこで、型締力センサが正常に動作しているかを監視するアルゴリズムのフローチャートを図4と図5に示す。
【0053】
図4のフローチャートは図2に示される型閉じ工程に対応するものである。図4のフローチャートについて説明すると、図4のフローチャートのステップSC1からステップSC13の各ステップは、図2のフローチャートのステップSA1からステップSA13にそれぞれ対応する。
【0054】
●[ステップSC14]型締装置100のタイバー4に固定されている型締力センサ13からの出力信号をもとに検出型締力FSを取得する。
●[ステップSC15]算出型締力FCと検出型締力FSの差の絶対値が型締力監視幅FBより小さいか否かを判断し、小さい場合にはステップSC17へ移行し、小さくない場合にはステップSC16へ移行する。なお、型締力監視幅FBはあらかじめ設定した値である。
●[ステップSC16]型締力センサ13からの出力によって求めた検出型締力FSに異常があると判断し警告信号を出力する。
●[ステップSC17]算出型締力FCおよび検出型締力FSを表示装置29に表示し、終了する。算出型締力FCは、ステップSC13で算出されたものである。検出型締力FSはステップSC14で取得されたものである。ステップSC16で出力された警告信号に基づいて警告表示を表示するようにしてもよい。
【0055】
次に、図5のフローチャートを説明する。図5のフローチャートの途中からは図3に示される型開き工程に対応するものである。
●[ステップSD1]型締用サーボモータ8を駆動し、可動プラテン3を固定プラテン1側へ前進開始する。
●[ステップSD2]可動プラテン3の位置は型締完了位置に達したか否か判断し、達していない場合には可動プラテン3の位置が型締完了位置に達するまで可動プラテン3の前進移動を継続する。
●[ステップSD3]型締用サーボモータ8の駆動を停止し可動プラテン3の前進を停止する。
●[ステップSD4]型締装置100のタイバー4に固定されている型締力センサ13からの出力信号をもとに検出型締力FSを取得する。
●[ステップSD5]射出成形の射出工程・保圧工程・冷却工程を開始する。
●[ステップSD6]射出成形の射出工程・保圧工程・冷却工程が終了か否か判断し、前記工程が終了するまで待つ。
【0056】
●[ステップSD7]型締用サーボモータ8が発電するエネルギーUMの値を0(ゼロ)に初期化する。
●[ステップSD8]型締用サーボモータ8を駆動し、可動プラテン3をリアプラテン2側へ後退開始する。
●[ステップSD9]型締用サーボモータ8に取り付けられている位置・速度検出器11からの位置検出信号を取得する。より具体的には、位置・速度検出器11からの制御周期毎に得られるパルス数を取得する。さらに、発電機として働く型締用サーボモータ8からの発電電流を検出する電流検出器12からの電流検出信号を取得する。
●[ステップSD10]型締用サーボモータ8のトルク値を算出する。トルク値は、型締用サーボモータ8のトルク定数とステップSD9で取得した電流検出信号とを用いて算出する。
●[ステップSD11]ステップSD9で取得した位置検出信号から前回の制御周期で取得した位置検出信号の差を元に型締用サーボモータ8の回転角度の差を求める。より具体的には、位置・速度検出器11からの制御周期毎に得られるパルス数の差である。
【0057】
●[ステップSD12]型締用サーボモータ8が発生するエネルギー量を、UM=UM+T・Δθにより算出する。T・Δθは1つの制御周期で型締用サーボモータ8が発電するエネルギーである。
●[ステップSD13]ステップSD9で得られた位置検出信号を元に、可動プラテン3の位置を算出する。なお、位置検出信号から可動プラテン3の位置を求めることは周知の技術である。
●[ステップSD14]可動プラテン3の位置は金型タッチ位置以下であるか否かを判断し、可動プラテン3の位置が金型タッチ位置以下の場合にはステップSD9に戻り、以下でなければステップSD15へ移行する。
【0058】
●[ステップSD15]型締用サーボモータ8に取り付けられている位置・速度検出器11からの位置検出信号を取得する。より具体的には、位置・速度検出器11からの制御周期毎に得られるパルス数を取得する。
●[ステップSD16]ステップSD15で得られた位置検出信号を元に、可動プラテン3の位置を算出する。
【0059】
●[ステップSD17]可動プラテン3の位置は型開完了位置に達したか否か判断し、達していない場合にはステップSD15に戻り、達している場合にはステップSD18へ移行する。
●[ステップSD18]型締用サーボモータ8の駆動を停止し可動プラテン3の後退を停止する。
●[ステップSD19]型締機構の弾性定数KとステップSD12で積算して求められた型締用サーボモータ8が発電したエネルギーとから算出型締力FCを求める。
【0060】
●[ステップSD20]算出型締力FCと検出型締力FSの差の絶対値が型締力監視幅FBより小さいか否かを判断し、小さい場合にはステップSD22へ移行し、小さくない場合にはステップSD21へ移行する。なお、型締力監視幅FBはあらかじめ設定した値である。
●[ステップSD21]型締力センサ13からの出力によって求めた検出型締力FSに異常があると判断し警告信号を出力し、ステップSD22へ移行する。
●[ステップSD22]算出型締力FCおよび検出型締力FSを表示装置29に表示し、終了する。算出型締力FCはステップSD19で算出されたものである。検出型締力FSはステップSD4で取得されたものである。ステップSD21で出力された警告信号に基づいて警告表示を表示するようにしてもよい。
なお、本実施例ではトグル式の型締装置における型締力測定装置について記載したが、同様の手法を直圧式型締装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】型締装置の一つの例である射出成形機に用いられる型締装置の概要図である。
【図2】型閉じ工程において型締力を求めるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】型開き工程において型締力を求めるアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図4】型閉じ工程において型締力の警告を発するステップを含むフローチャートである。
【図5】型開き工程において型締力の警告を発するステップを含むフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
k 4本のタイバーの合成弾性定数
K 型締機構の弾性定数
M 型締用サーボモータ8が発生するエネルギー
C 算出型締力
S 検出型締力
B 型締力監視幅
100 型締装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締機構を駆動するモータを備えた型締装置の型締力測定装置であって、
該型締機構が型閉じ工程において型盤が金型タッチ位置に到達してから型締完了位置に到達するまでに前記モータが発生したエネルギーを求める手段と、
該手段により求められたエネルギーと該型締機構の弾性定数とから算出型締力を算出する型締力算出手段と、
を有することを特徴とする型締装置の型締力測定装置。
【請求項2】
型締機構を駆動するモータを備えた型締装置の型締力測定装置であって、
該型締機構が型開き工程において型盤が型開きを開始してから金型タッチ位置に到達するまでに前記モータが発電したエネルギーを求める手段と、
該エネルギーを求める手段により求められたエネルギーと該型締機構の弾性定数とから算出型締力を算出する型締力算出手段と、
を有することを特徴とする型締装置の型締力測定装置。
【請求項3】
前記型締機構は型締力を測定する型締力センサを有し、
該型締力センサによって検出された検出型締力と、
前記型締力算出手段により算出された算出型締力と、
該検出型締力と該算出型締力との差を算出する偏差型締力算出手段と、
該偏差型締力算出手段により算出された型締力の差があらかじめ設定された許容範囲を超えた際に警告を発生する警告発生手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の型締装置の型締力測定装置。
【請求項4】
前記エネルギーは、前記モータのトルクと回転角度との積を積分して求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の型締装置の型締力測定装置。
【請求項5】
前記型締機構の弾性定数は、前記型締機構が型閉じ工程において型盤が金型タッチ位置に到達してから型締完了位置に到達するまでに前記モータが発生したエネルギーと前記型締機構に取り付けられた型締力センサで測定された型締力とから求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の型締装置の型締力測定装置。
【請求項6】
前記型締機構の弾性定数は、前記型締機構が型開き工程において型盤が型開きを開始してから金型がタッチ位置に到達するまでに前記モータが発電したエネルギーと前記型締機構に取り付けられた型締力センサで測定された測定型締力とから求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の型締装置の型締力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−99847(P2010−99847A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270717(P2008−270717)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】