説明

基板および基板の製造方法

【課題】 DC−DCコンバータのような大電流にも使用可能な基板であって、小型電子部品を1枚の基板上に配置可能な基板および基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板1は、トランス3、チョークコイル5を有する例えば自動車用のDC−DCコンバータとして用いられる基板である。基板1は、電子部品搭載部7、プリント基板搭載部11、導体部10aにおいて内部の回路導体が外部に露出し、その他の部位が樹脂9によって被覆された射出成型基板2に、電子部品等が搭載されたものである。プリント基板搭載部11は、プリント基板15を搭載する部位である。プリント基板15の導体部10bとプリント基板搭載部11の導体部10aとの接合は、電子部品17を介して半田等によって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等に用いられるDC−DCコンバータ等の基板および基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられるDC−DCコンバータは、電圧変換用のトランスや平滑化用のチョークコイル等の複数の部品から構成されるが、高電圧・大電流が負荷されるため、それぞれのパーツを別々に製造後、それらが接続されて用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−143215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構成は、装置の大型化を招くため、よりコンパクトなDC−DCコンバータが要求されている。一方、前述の各部品を同一の基板上に配置する方法がある。通常、このような電気回路を有する基板は、複数の回路および絶縁体が層構造で構成される。
【0005】
しかし、通常の基板は、回路をメッキやエッチング等により形成するため、大電流が流れるDC−DCコンバータに対しては、回路が大電流に耐えることができない。すなわち、このような大電流に耐えるためには導体層厚さを例えば0.4mm以上とすることが望ましいが、従来の方法では、導体層厚さが厚くなりすぎるため、導体層の形成に時間を要するという問題があった。
【0006】
一方、このような大電流用の基板としては、プレス加工により導体部を形成し、射出成型によって絶縁部を形成する射出成型基板がある。導体部がプレス加工によって構成されるため、例えば、DC−DCコンバータのような大電流にも耐えることができる。
【0007】
しかしながら、射出成型基板は、絶縁部が射出成型の金型によって形成される。したがって、微細な基板表面の導体露出部を形成することが困難である。たとえば、セラミックコンデンサ等の小型の電子部品を搭載するためには、コンデンサの電極と接続される微細な導体露出部を形成する必要があるが、射出成型では、樹脂の漏れ等の問題があり、このような微細な形状を形成することが困難である。また、プレス加工では細かな導体の加工が困難であるため、細かなパターンを有する回路を構成することが困難であるという問題がある。したがって、装置の小型の障害となっていた。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、DC−DCコンバータのような大電流にも使用可能な基板であって、小型電子部品を1枚の基板上に配置可能な基板および基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために第1の発明は、回路導体の表面に対して樹脂が射出成型された射出成型基板と、プリント基板と、第1の電子部品と、を具備し、前記射出成型基板には、第2の電子部品が搭載されるプリント基板搭載部が形成され、前記プリント基板が、前記プリント基板搭載部に搭載された状態で、前記プリント基板の上面に露出するプリント基板側導体部と、前記射出成型基板の上面に露出する射出成型基板側導体部とが、前記第1の電子部品を介して電気的に接合されることを特徴とする基板である。
【0010】
前記射出成型基板側導体部には、半田を載せるための凹部が形成されてもよい。この場合、前記凹部の大きさは、接続対象となる前記プリント基板側導体部の大きさ以上の大きさにすることが望ましい。
【0011】
前記プリント基板は、周囲に隙間を空けた状態で前記プリント基板搭載部に搭載され、前記プリント基板搭載部には、前記プリント基板の位置決め用の位置決め部材が設けられてもよい。
【0012】
前記プリント基板は、略矩形であり、前記プリント基板と前記射出成型基板とを接続する前記第1の電子部品が、前記プリント基板の対向する辺にそれぞれ設けられる場合において、対向する辺のそれぞれの前記第1の電子部品が、互いにずれた位置に配置されてもよい。
【0013】
前記射出成型基板の内部には、前記プリント基板搭載部をまたがるように、補強板が設けられてもよい。
【0014】
第1の発明によれば、例えばプレス加工された回路導体と、射出成型により形成された樹脂とからなる射出成型基板であるため、回路導体の厚さを厚くすることができ、このため大電流での使用に耐える基板を得ることができる。また、射出成型基板上には、プリント基板が搭載されるプリント基板搭載部が形成されるため、小型電子部品を搭載するプリント基板をも同一基板上に搭載することができる。このため、小型電子部品はプリント基板上に従来の方法で搭載し、大型の電子部品およびプリント基板自体は射出成型基板に搭載することで、微細な導体露出部等の射出成型が不要となる。
【0015】
また、プリント基板と射出成型基板とが、基板の上面側において電子部品によって接合されるため、射出成型基板側に別途電子部品を設置して、電子部品とプリント基板を配線やコネクタ等によって接続する必要がなく、より小型化が可能となる。また、プリント基板と射出成型基板との接続部が、基板上面側であるため、接続部を容易に視認することができる。
【0016】
また、射出成型基板側の接続部である導体部に半田を載せることが可能な凹部が形成されるため、リフロー炉等によって半田付けを行う際に、比較的大きな面積を有する射出成型基板側の導体露出部に半田が流れてしまうことを防止することができる。この際、凹部の大きさを、接続対象となるプリント基板側の導体部以上の大きさにすることで、プリント基板と射出成型基板との位置ずれによる半田不良を防止することができる。
【0017】
また、プリント基板搭載部に、プリント基板の位置決めを行うためのガイドやピン等の位置決め部材を設けておくことで、プリント基板を射出成型基板の正確な位置に配置することができる。
【0018】
また、プリント基板と射出成型基板との接続の際に、プリント基板の対向する辺において互いにずれた位置で接続することで、射出成型基板とプリント基板との熱膨張の大きさの違いに伴う応力を分散させることができる。このため、温度変化に伴う、プリント基板と射出成型基板との接続部への応力を小さくすることができ、半田の破損等を防止することができる。
【0019】
また、プリント基板搭載部の下部には、当該プリント基板搭載部の長手方向に対してまたがるように、射出成型基板に埋設される補強板が設けられることで、プリント基板搭載部に生じる反りなどの変形を防止することができる。
【0020】
第2の発明は、導体である回路素材を接合して、回路導体を形成し、前記回路導体の表面に対して樹脂を射出成型して、表面にプリント基板搭載部を有する射出成型基板を成型し、前記プリント基板搭載部にプリント基板を設置し、前記プリント基板の上面に露出するプリント基板側導体部と、前記射出成型基板の上面に露出する射出成型基板側導体部とに、それぞれ半田と、第1の電子部品を設置し、リフロー炉において、前記第1の電子部品を、前記プリント基板側導体部と前記射出成型基板側導体部とに同時にはんだ付けして、前記第1の電子部品によって前記プリント基板を前記射出成型基板に接合することを特徴とする基板の製造方法である。
【0021】
前記プリント基板の上に、複数の第2の電子部品と半田を配置し、前記第2の電子部品のはんだ付けと同時に、前記第2の電子部品を前記プリント基板上に接合してもよい。
【0022】
第2の発明によれば、製造が容易であり、大電流にも耐えることができ、また、小型電子部品であっても同一基板上に確実に配置可能な基板の製造方法を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、DC−DCコンバータのような大電流にも使用可能な基板であって、小型電子部品を1枚の基板上に配置可能な基板および基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】基板1を示す斜視図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組立斜視図。
【図2】基板1を示す平面図。
【図3】プリント基板搭載部11の断面図であり、図2のB部におけるA−A線断面図。
【図4】導体部10a、10bを示す拡大図であり、(a)は図3のC部拡大図、(b)は電子部品17等を透視した状態の平面図。
【図5】プリント基板の位置決め構造を示す図であり、(a)はプリント基板15の平面図、(b)は(a)のD−D線断面における位置決めピン31の拡大図、(c)は、位置決めガイド33を示す図。
【図6】プリント基板15における、電子部品の位置関係を示す図。
【図7】基板40を示す斜視図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組立斜視図。
【図8】基板40の平面。
【図9】プリント基板41を示す平面図。
【図10】プリント基板41aを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1、図2は、基板1を示す図であり、図1(a)は分解斜視図、図1(b)は組立斜視図、図2は平面図である。なお、図1、図2においては、半田等の図示を省略する。基板1は、トランス3、チョークコイル5等を有する例えば自動車用のDC−DCコンバータとして用いられる基板である。基板1には、電子部品搭載部7、プリント基板搭載部11が形成され、導体部10aにおいて内部の回路導体が外部に露出し、その他の部位が樹脂9によって被覆された射出成型基板2に、電子部品等が搭載されたものである。
【0026】
基板1(射出成型基板2)に設けられるトランス3は、電圧変換用のコイルであり、外部より入力された電流をトランス3で降圧し、降圧された交流電流を電子部品13a(ダイオード)によって整流し、整流された電流をチョークコイル5および図示しないコンデンサで構成された平滑回路によって平滑化して外部に出力する。電子部品搭載部7は、電子部品等を搭載する部位であり、電子部品13aは、例えば導体部10a等によって基板1と電気的に接続される。プリント基板搭載部11は、プリント基板を搭載する部位であり、プリント基板15は、導体部10bによって射出成型基板2の導体部10aと電気的に接続される。
【0027】
なお、本発明の基板としては、図示したような、トランス3、チョークコイル5を有するDC−DCコンバータに限られず、その他大電流が流れる基板に対しては、当然に適用可能である。すなわち、図に示すような配置および形状に限られることはなく、その他の部品等を適宜搭載することや、配置および形状を適宜変更することが可能なことは言うまでもない。
【0028】
プリント基板15には、第2の電子部品である複数の電子部品13bが搭載される。プリント基板15の表面には、導体部10bが露出する。導体部10bは、後述する第1の電子部品である電子部品17との接続部である。ここで、出力電流が大きい電源回路において出力を平滑にする必要がある場合に、電源とグラウンド(GND)間に複数の小型コンデンサを搭載する場合がある。このような回路を構成する小型コンデンサの電極は小さく、前述した射出成型によっては、微細な接続部(回路導体露出部)を形成することが困難である。
【0029】
したがって、このような回路は、従来のガラスエポキシ基板を用いて構成する。すなわち、ガラスエポキシ基板は、電解銅箔を層状に形成し、層間接続のためのスルーホールにメッキを施して形成する。なお、このようなガラスエポキシ製のプリント基板の導体部には、105μm以下の電解銅箔が一般に用いられる。また、20μmのスルーホールメッキを施すとすると、回路導体としては125μm以下となる。
【0030】
すなわち、プリント基板15は、たとえば、ガラスエポキシ基板上に、複数の電子部品13bとして小型のセラッミクコンデンサが搭載される。セラミックコンデンサは、プリント基板15と電気的に接続される。
【0031】
また、プリント基板15とプリント基板搭載部11の導体部10aとの接合は、電子部品17を介して半田等によって行われる。したがって、基板1における回路として機能する。このようにしてなる基板1では、信号系の小電流はプリント基板15上の回路(小型コンデンサ等)を利用するとともに、パワー系の大電流は射出成型基板の回路導体を利用することができる。したがって、1枚の基板上にこれら回路を全て搭載できるため、基板同士のケーブル等による接続が不要となり、低コストおよび小型化が達成できる。
【0032】
なお、プリント基板15上への電子部品13bの搭載は、所定位置にクリーム状の半田を印刷し、小型コンデンサ等の部品を所定位置に設置した後、リフロー炉を通して半田を溶融して接合をすればよい。
【0033】
プリント基板搭載部15の下方には、補強板19が射出成型基板2に埋設される。補強板19は、プリント基板15(プリント基板搭載部11)の長手方向に対して、プリント基板搭載部11全体をまたがるように形成される。プリント基板搭載部11は、プリント基板15を搭載可能なように凹部となり、周囲と比較して強度的に弱くなる。このため、温度変化や機械的な応力によって反りなどの変形を生じる恐れがある。補強板9は、この変形を防止するためのものである。なお、補強板9としては、樹脂9よりも硬質な樹脂や金属等を用いることができる。また、補強板9は、プリント基板搭載部15全体を覆うように設けてもよい。
【0034】
基板1は以下のように製造される。まず、銅板等の導体である回路素材をプレスにより打ち抜き、必要な曲げ加工を施して所望の形状に形成する。銅板等には、必要に応じてSnメッキ等を施してもよい。次いで、複数の回路素材同士を溶接、または絶縁部材等を介して接合して回路導体を形成する。回路導体は、平面のみではなく、複数層に層状に形成されてもよい。
【0035】
得られた回路導体を所定位置にピン等で射出成型金型に固定し、樹脂を射出して射出成型を行う。この際、必要な導体露出部以外の部位が樹脂9により被覆され、また、回路素材同士の層間等にも樹脂が射出される。このようにして射出成型基板2が形成される。
【0036】
樹脂9としては、絶縁性があり、射出成型が可能であればよく、例えば、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフタルアミド等が使用できる。
【0037】
なお、導体回路素材としては、例えば400μm以上の厚さの銅板等が用いられる。400μm未満では、大電流に耐えることが難しく、また、射出成型時の樹脂圧によって変形等の恐れがあるためである。なお、導体回路素材の厚さとしてさらに望ましくは、400μm〜1000μmである。厚すぎると、コスト及び重量等が増加し、コンパクトな基板を形成することができなくなるためである。
【0038】
次に、電子搭載部7に電子部品13aを搭載する。また、同時に、プリント基板搭載部11に、プリント基板15を搭載する。電子部品13aと電子搭載部7の導体部10aとの接合と、電子部品17とプリント基板搭載部の導体部10aおよび導体部10bとの接続は、例えば半田等を用いることができる。すなわち、それぞれの電子部品の接続部に、あらかじめペースト状等の半田クリーム等を配置し、全体をリフロー炉等によって加熱して、一括して電子部品を接続することができる。
【0039】
なお、プリント基板15上の電子部品13bも、電子部品13a、17等と同時に半田接合することもできる。この場合には、プリント基板15上の電子部品13bの接続部に、あらかじめ半田クリームおよび電子部品13bを配置し、全体をリフロー炉で加熱することで、電子部品13a、13b、17が一括してそれぞれの接続部に接合される。
【0040】
次に、プリント基板搭載部11における、プリント基板15と射出成型基板2との接続構造について詳細に説明する。図3は、図2のB部におけるA−A線断面図である。プリント基板搭載部11は、プリント基板15が搭載可能に、表面側に形成された凹部であり、プリント基板15の大きさよりもわずかに大きく形成される。プリント基板11の少なくとも1辺側には、帯状または部分的に、射出成型基板2の内部の回路導体21が露出する導体部10aが形成される。すなわち、導体部10aは、基板1の上面側に露出する。
【0041】
一方、プリント基板15の上面側にも、内部の回路と導通する導体部10bが適宜配置される。ここで、プリント基板15をプリント基板搭載部11に搭載すると、プリント基板15(導体部10b)の上面と、プリント基板搭載部11における導体部10aの上面とが略同一平面上に位置する。
【0042】
プリント基板15と射出成形基板2との接続は、電子部品17を介して行われる。すなわち、電子部品17の一方の導体部が、プリント基板15上の導体部10bの上に配置され、他方の導体部が、プリント基板搭載部11(射出成型基板2)の導体部10aの上に配置される。この状態で、それぞれが半田23によって電気的に接続される。したがって、プリント基板15の回路は、電子部品17を介して射出成型基板2側の回路と接続されるとともに、プリント基板15が射出成型基板2に固定される。
【0043】
なお、プリント基板搭載部11の導体部10aは、射出成型基板2の上面から段状に下がった位置に設けられ、電子部品17が射出成型基板2の上面に大きく突出しない例を示したが、本発明はこれに限られず、導体部10aを射出成型基板2の上面と一致させるようにしてもよい。
【0044】
図4(a)は、図3のC部拡大図であり、電子部品17と導体部10a、10bと接合される半田23近傍を示す図である。また、図4(b)は、導体部10a、10bの平面図であり、電子部品17および半田23を透視した状態を示す図である。
【0045】
プリント基板15に形成される導体部10bは、通常のガラスエポキシ基板のように印刷(エッチング)等によって形成することができるため、精度も高く細かな形状に形成することができる。一方、導体部10aは、射出成型により形成されるため、微細な形状を形成することが困難であり、導体部10bと比較して大きな面積を有する。したがって、電子部品17との接続に用いられる半田23が、接続部以外の範囲に流れてしまう恐れがある。
【0046】
そこで、本発明では、導体部10aに凹部25を設けることで、半田23が周囲に流れることを防止する。すなわち、導体部10aの電子部品17との接続部には、あらかじめ凹部25が形成される。凹部25の範囲(大きさ)は、接続対象となる導体部10bの範囲(大きさ)以上に広く(大きく)設定される。したがって、プリント基板15がプリント基板搭載部11に対して多少ずれて搭載されても、この位置ずれを吸収することができる。
【0047】
なお、図4(b)に示すように、プリント基板15をプリント基板搭載部11に搭載した状態において、プリント基板15の周囲には、わずかに隙間27が形成される。プリント基板15と射出成型基板2(樹脂9)との熱膨張差等による変形等により、プリント基板等に過剰な力が付与されないようにするためである。
【0048】
また、プリント基板搭載部11に位置決め部材を設けてもよい。図5(a)は平面図、図5(b)は位置決めピン31近傍における図5(a)のD−D線断面図である。位置決め部材としては、例えば、図5(a)に示すように、プリント基板15の一部(例えば対角線上に一対)孔29を設け、プリント基板搭載部11に、これと対応する位置決めピン31を設けてもよい。
【0049】
すなわち、プリント基板搭載部11の所定の位置に位置決めピン31を樹脂9によって一体で形成し、位置決めピン31に対応し、位置決めピン31の外径よりもやや内径の大きな孔29を有するプリント基板15をプリント基板搭載部11に設置することで、プリント基板15がプリン基板搭載部11に対して正確な位置で搭載される。
【0050】
なお、位置決め部材としては、位置決めピン31に限られず、図5(c)に示すように、位置決めガイド33を形成してもよい。位置決めガイド33は、プリント基板15の角部の外形に対応し、プリント基板15の対角線上に少なくとも一対形成される。位置決めガイド33によってプリント基板15の外周の位置を規制することで、プリント基板15をプリン基板搭載部11に対して正確な位置で搭載することができる。
【0051】
次に、プリント基板15と射出成型基板2とを接続する電子部品17の配置について説明する。図6は、プリント基板15における、電子部品の位置関係を示す図である。前述の通り、電子部品17は、プリント基板15(導電部10b)と射出成型基板2(導電部10a)にまたがるように設置されてそれぞれ接合される。
【0052】
図6の例では、略矩形のプリント基板15の各辺に対して、電子部品17a〜17gまでが配置される。ここで、ある一辺(例えば図における上側の辺)に電子部品17aが配置され、これと対向する辺(図における下側の辺)に電子部品17b、17cが形成されるとする。この場合、プリント基板15の当該辺に対する電子部品17a、17b、17cそれぞれの位置(それぞれの電子部品の当該辺に垂直な中心線)は、それぞれ図中L、M、Nであらわされる。この場合、それぞれの電子部品17a、17b、17cの位置L、M、Nは、互いにずれた位置となり、重なりあうことはない。
【0053】
同様に、ある一辺(例えば図における右側の辺)に電子部品17d、17eが配置され、これと対向する辺(図における左側の辺)に電子部品17f、17gが形成されるとする。この場合、プリント基板15の当該辺に対する電子部品17d、17e、17f、17gそれぞれの位置(それぞれの電子部品の当該辺に垂直な中心線)は、それぞれ図中O、P、Q、Rであらわされる。この場合、それぞれの電子部品17d、17e、17f、17gの位置O、P、Q、Rは、互いにずれた位置となり、重なりあうことはない。
【0054】
このように、プリント基板15と射出成型基板2とを接続する電部品17が、それぞれ対向する辺に対して互いにずれた位置に配置される。このため、プリント基板15と射出成型基板2との間の熱膨張係数の違いに伴う変形等に対して、プリント基板15が、それぞれの辺に平行な任意の直線上の両端で拘束されることがない。したがって、それぞれの電子部品17の接続部(半田部)に過剰な応力が付与されることを防止することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の基板1によれば、回路素材をプレスで形成するため、厚銅基板を形成することができ、さらに樹脂9を射出成型により形成するため、製造性に優れ、大電流にも耐えうる基板1を得ることができる。
【0056】
プリント基板15の導電部10bと、射出成型基板2の導電部10aとがそれぞれ上面側に形成され、電子部品17によって接続される。したがって、それぞれの基板が直接接続され、基板の小型化が可能となる。
【0057】
また、電子部品17の接合が射出成型基板およびプリント基板の上面側となるため、接続部を確認することができる。また、電子部品13a、13b、17を一括して半田付けすることもできる。したがって、半田付作業が容易である。
【0058】
また、射出成型基板2側の導電部10aには、凹部25が形成されるため、半田23が周囲に流れることがなく、確実に電子部品等との接続部に半田23を載せることができる。この際、凹部25の大きさを、接続対象となるプリント基板15上の導電部10bの大きさ以上に大きくすることで、プリント基板15や電子部品17の多少の位置ずれによる、接続位置のずれを許容することができる。
【0059】
また、プリント基板搭載部11にプリント基板15の位置決め部材が設けられる事で、プリント基板15をプリント基板搭載部11の正確な位置に搭載することができる。
【0060】
また、プリント基板15の対向する辺における電子部品17が、それぞれ互いにずれた位置に配置されることで、プリント基板15の各辺に平行な任意の線上におけるプリント基板の外周部との交点が、両方とも電子部品17によって拘束されることがない。このため、温度変化等によって生じる熱膨張(熱収縮)等に伴う、電子部品17を接続する半田23へかかる応力を緩和することができる。
【0061】
次に、第2の実施の形態について説明する。図7は、第2の実施の形態にかかる基板40を示す図で、図7(a)は分解斜視図、図7(b)は組立斜視図である。なお、以下の説明において、基板1と同様の機能を奏する構成については、図1等と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
基板40は、基板1と略同様の構成であるが、プリント基板41および射出成型基板2の態様が異なる。基板40には、ダイオードや電解コンデンサなどの大型の電子部品13a、13cが電子部品搭載部7に設置され、電気的に接続される。また、プリント基板搭載部11には、プリント基板41が搭載される。
【0063】
プリント基板搭載部11には、導体露出部として、導体部10aが形成される。導体部10aは、基板40の回路に電気的に接続される部位であり、プリント基板41の上面に設けられる導電部10bと半田等により電子部品17を介して電気的に接続される部位である。
【0064】
基板40は、コネクタ43によって外部の部品・電源・その他の部材と電気的に接続される。図8は、基板40の内部に、回路導体によって形成されたパターンを示す概念図である。図8に示すように、基板40内部においては、パターン47によって、電子部品13a、13c、プリント基板41およびコネクタ43等が電気的に接続されている。
【0065】
図9は、プリント基板41を示す平面図である。プリント基板41の略中央には、電子部品であるCPU45(Central Processing Unit)が設けられる。プリント基板41にはCPU45と接続される回路であるパターン48が形成される。CPU45は、パターン48によって、各導体部10bや、その他の電子部品13d等と接続される。なお、プリント基板41の背面側にも電子部品をあらかじめ搭載してもよく、また、GND端子等を設けてもよい。
【0066】
プリント基板41は、射出成型基板2のプリント基板搭載部11に搭載されて、各導体部10bが対応する導体部10aと電子部品17を介して電気的に接続される。
【0067】
なお、プリント基板41に応力緩和部を形成してもよい。図10は、応力緩和部49を形成したプリント基板41aを示す図で、図10(a)は平面図、図10(b)は背面図である。
【0068】
プリント基板41aを前述の通りプリント基板搭載部11に搭載して接合すると、図10(b)に示すように、各固定部間の方向に変形が生じる恐れがある(図中矢印S、T方向)。プリント基板41aでは、パターン47およびCPU45、電子部品13d等以外の部位に、ガラスエポキシ基板を貫通する応力緩和部49が形成される。
【0069】
応力緩和部49は、例えば、図に示したように、CPU33の四隅から基板の四隅方向(中心から放射状に)に形成された長孔である。なお、応力緩和部21aは、円、正方形などであってもよい。プリント基板41aが射出成型基板2に接合されると、プリント基板41aの導電部10bが射出成型基板2に対して固定される。一方、プリント基板41a(ガラスエポキシ基板)と射出成型基板2を構成する材料が異なるため、互いの線膨張係数が異なる。したがって、温度変化に伴い、プリント基板41aに応力が付与される。
【0070】
この際、応力緩和部49が形成されるため、プリント基板41aの変形を応力緩和部49が吸収することができる。このため、プリント基板41aの破損や、電極部の接合破断等を防止することができる。
【0071】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、プリント基板として、CPUその他の各種プリント基板を適用することができる。
【0072】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0073】
1、40………基板
2………射出成型基板
3………トランス
5………チョークコイル
7………電子部品搭載部
9………樹脂
10a、10b………導体部
11………プリント基板搭載部
13a、13b、13c………電子部品
15………プリント基板
17………電子部品
19………補強板
21………回路導体
23………半田
25………凹部
27………隙間
29………孔
31………位置決めピン
33………位置決めガイド
41………プリント基板
43………コネクタ
45………CPU
47、48………パターン
49………応力緩和部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路導体の表面に対して樹脂が射出成型された射出成型基板と、
プリント基板と、
第1の電子部品と、
を具備し、
前記射出成型基板には、第2の電子部品が搭載されるプリント基板搭載部が形成され、
前記プリント基板が、前記プリント基板搭載部に搭載された状態で、前記プリント基板の上面に露出するプリント基板側導体部と、前記射出成型基板の上面に露出する射出成型基板側導体部とが、前記第1の電子部品を介して電気的に接合されることを特徴とする基板。
【請求項2】
前記射出成型基板側導体部には、半田を載せるための凹部が形成されることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項3】
前記凹部の大きさは、接続対象となる前記プリント基板側導体部の大きさ以上であることを特徴とする請求項2記載の基板。
【請求項4】
前記プリント基板は、周囲に隙間を空けた状態で前記プリント基板搭載部に搭載され、
前記プリント基板搭載部には、前記プリント基板の位置決め用の位置決め部材が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板。
【請求項5】
前記プリント基板は、略矩形であり、前記プリント基板と前記射出成型基板とを接続する前記第1の電子部品が、前記プリント基板の対向する辺にそれぞれ設けられる場合において、対向する辺のそれぞれの前記第1の電子部品が、互いにずれた位置に配置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の基板。
【請求項6】
前記射出成型基板の内部には、前記プリント基板搭載部をまたがるように、補強板が設けられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板。
【請求項7】
導体である回路素材を接合して、回路導体を形成し、
前記回路導体の表面に対して樹脂を射出成型して、表面にプリント基板搭載部を有する射出成型基板を成型し、
前記プリント基板搭載部にプリント基板を設置し、
前記プリント基板の上面に露出するプリント基板側導体部と、前記射出成型基板の上面に露出する射出成型基板側導体部とに、それぞれ半田と、第1の電子部品を設置し、
リフロー炉において、前記第1の電子部品を、前記プリント基板側導体部と前記射出成型基板側導体部とに同時にはんだ付けして、前記第1の電子部品によって前記プリント基板を前記射出成型基板に接合することを特徴とする基板の製造方法。
【請求項8】
前記プリント基板の上に、複数の第2の電子部品と半田を配置し、前記第1の電子部品のはんだ付けと同時に、前記第2の電子部品を前記プリント基板上に接合することを特徴とする請求項7記載の基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−114164(P2012−114164A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260494(P2010−260494)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】