説明

基板の搬送装置及び処理装置

【課題】この発明は傾斜して搬送される基板の傾斜方向下端面を支持するガイドローラによって基板に欠けが生じるのを防止した搬送装置を提供することにある。
【解決手段】第1のアーム37と第2のアーム38が設けられたアーム体35、第1のアームが基板の搬送方向の上流側に位置するようアーム体の基部を揺動可能に支持した支持体32、第1のアームの先端部に設けられた第1のガイドローラ39、第2のアームの先端部に設けられた第2のガイドローラ40を有し、第1、第2のガイドローラによって基板の傾斜方向の下側の端面を支持して基板の搬送ローラによる搬送をガイドするガイド手段31を具備し、第1のガイドローラが搬送される基板の搬送方向先端部の傾斜方向の下側の端面を受けたとき、アーム体は基板の搬送方向上流側に向かって揺動し、その状態で第2のガイドローラが基板の搬送方向先端部の傾斜方向の下側の端面を受けたとき、アーム体は基板の搬送方向下流側に揺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板を搬送方向と交差する方向に傾斜させて搬送する搬送装置及びこの搬送装置によって搬送される基板を処理液によって処理する処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるガラス製の基板には回路パターンが形成される。基板に回路パターンを形成するにはリソグラフィープロセスが採用される。リソグラフィープロセスは周知のように上記基板にレジストを塗布し、このレジストに回路パターンが形成されたマスクを介して光を照射する。
【0003】
つぎに、レジストの光が照射されない部分或いは光が照射された部分を除去してから、基板のレジストが除去された部分をエッチングし、エッチング後にレジストを除去するなどの一連の工程を複数回繰り返すことで、上記基板に回路パターンを形成する。
【0004】
このようなリソグラフィープロセスにおいては、上記基板に現像液、エッチング液或いはエッチング後にレジストを除去する剥離液などによって基板を処理する工程、さらに処理液による処理後に洗浄液としての純水によって洗浄処理する工程があり、洗浄後には基板に付着残留した洗浄液を除去する乾燥工程が必要となる。
【0005】
基板に対して剥離液や純水などの処理液によって上述した一連の処理を行う場合、従来は軸線を水平にして配置された搬送軸に搬送ローラを設け、この搬送ローラによって上記基板を水平な状態で処理チャンバ、洗浄チャンバ及び乾燥チャンバの順に搬送するようにしている。
【0006】
ところで、最近では液晶表示装置などに用いられるガラス製の基板が大型化及び薄型化する傾向にある。そのため、基板を水平搬送すると、搬送ローラ間における基板の撓みが大きくなるため、各チャンバでの処理が基板の板面全体にわたって均一に行えなくなるということが生じる。
【0007】
しかも、基板の上面に多量の処理液が残留した状態で、基板が処理チャンバから搬出されることになるため、処理液を回収して再利用する場合、処理液の消費量が多くなり、ランニングコストの上昇を招く一因になっていた。
【0008】
そこで、最近では基板を所定の角度で傾斜させて搬送し、基板の板面に供給された処理液を基板の上面から円滑に流れ落ちるようにしている。それによって、基板とともに処理チャンバから持ち出される処理液の量を少なくしたり、基板の板面全体を均一に処理できるようにしている。
【0009】
基板を搬送方向と交差する方向に対して所定の角度で傾斜させて搬送する場合、搬送される基板は傾斜方向の下方へずれてしまうことになる。そこで、基板の傾斜方向下方の端面を基板の搬送方向に対して所定間隔で設けられたガイドローラで受け、搬送される基板が傾斜方向下方へずれるのを防止するようにしている。特許文献1には基板を傾斜させて搬送すること、及び基板の傾斜方向下方の端面を受けるガイドローラを設けることが示されている。
【0010】
しかしながら、基板をガイドローラによって傾斜方向の下方へずれないようにガイドしても、基板が搬送ローラによってよって搬送されると、ずれや振動が生じるから、それによって基板の下端面が所定間隔で設けられたガイドローラ間で傾斜方向に対して上下方向に位置ずれすることがある。
【0011】
基板の搬送方向の先端部の下端面が下方へずれた状態でその先端部が上記ガイドローラに当たると、上記基板の端面、とくに進行方向の先端部の端面に欠けが生じ易いということがある。そこで、特許文献1ではガイドローラを金属に代わって、たとえば超高分子ポリエチレン、ピーク樹脂或いはフッ素系樹脂などの合成樹脂によって形成し、基板の損傷を防止するようにしている。
【特許文献1】特開2005−286001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ガイドローラを上述した合成樹脂で形成すれば、搬送される基板の縁部がガイドローラに当たったとき、合成樹脂のもつ弾力性によって基板の先端部の下端面に欠けが生じるのを軽減することが可能となる。しかしながら、ガイドローラは搬送される基板の下端面を受ける高さに固定して配置されている。
【0013】
そのため、ガイドローラを合成樹脂製としても、基板の下端面が下方に位置ずれした状態で搬送されてくると、その先端部の端面がガイドローラの外周面に強く当たる、つまり基板の先端部の端面が受ける衝撃が大きくなるから、そのときの衝撃によって基板の端面に欠けが生じ易いということがある。
【0014】
しかも、固定的に配置されたガイドローラの外周面に基板の端面が強く当たると、基板の端面によってガイドローラの外周面が強く擦れられるから、ガイドローラが合成樹脂製の場合には早期に磨耗してしまうということがある。
【0015】
この発明は、基板の下端面が傾斜方向下方に位置ずれしてガイドローラに当たったとき、ガイドローラが基板に与える衝撃を緩和して基板の端面に欠けが生じるのを防止することができるようにした基板の搬送装置及びその搬送装置を用いた処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、基板を搬送方向と交差する方向に傾斜させて搬送する搬送装置であって、
軸線を上記基板の搬送方向と交差する方向に傾斜させこの基板の搬送方向に対して所定間隔で配置された複数の搬送軸と、
各搬送軸の軸方向に所定間隔で設けられ上記基板を搬送方向と交差する方向に傾斜させて支持する複数の搬送ローラと、
上記搬送軸を回転駆動して上記基板を上記搬送ローラによって搬送させる駆動手段と、
第1のアームと第2のアームがV字状に設けられたアーム体、上記第1のアームが上記基板の搬送方向の上流側に位置するよう上記アーム体の基部を揺動可能に支持した支持体、上記第1のアームの先端部に設けられた第1のガイドローラ、上記第2のアームの先端部に設けられた第2のガイドローラを有し、上記第1、第2のガイドローラによって上記基板の傾斜方向の下側の端面を支持してこの基板の上記搬送ローラによる搬送をガイドするガイド手段を具備し、
上記ガイド手段は、上記第1のガイドローラが上記搬送ローラによって搬送される上記基板の搬送方向先端部の傾斜方向の下側の端面を受けたとき、その荷重によって上記アーム体は上記基板の搬送方向上流側に向かって揺動し、その状態で上記第2のガイドローラが上記基板の搬送方向先端部の傾斜方向の下側の端面を受けたとき、上記アーム体は上記第2のガイドローラを介して上記第2のアームに加わる荷重によって上記基板の搬送方向下流側に揺動することを特徴とする基板の搬送装置にある。
【0017】
上記支持体に揺動可能に支持された上記アーム体は、上記第1のガイドローラと第2のガイドローラが基板の荷重を受けたときに、弾性部材を復元力に抗して弾性変形性させながら揺動することが好ましい。
【0018】
上記第2のアームは上記第1のアームに比べて長尺に設定されていることが好ましい。
【0019】
上記第1のガイドローラと第2のガイドローラは樹脂製であることが好ましい。
【0020】
上記第1、第2のガイドローラは、ラジアル軸受及びこのラジアル軸受の外輪に樹脂製の接触輪が緩衝材を介して径方向に弾性的に変位可能に設けられていることが好ましい。
【0021】
この発明は、基板を処理液によって処理する処理装置であって、
チャンバと、
上記基板を搬送方向と交差する方向に傾斜させて上記チャンバ内を搬送する搬送装置と、
この搬送装置によって上記チャンバ内を搬送される上記基板に向けて処理液を供給する処理液供給手段を具備し、
上記搬送装置は請求項1に記載された構成であることを特徴とする基板の処理装置にある。
【発明の効果】
【0022】
この発明よれば、搬送される基板の先端部の端面が搬送方向上流側に位置する第1のガイドローラに当たると、アーム体が基板の搬送方向上流側に揺動して第1のガイドローラが下方へ変位することで、衝突時の衝撃を吸収し、ついで第2のガイドローラに当たると、アーム体は第2のガイドローラに加わる荷重によって基板の搬送方向下流側に向かって揺動して第2のガイドローラが下方へ変位することで、基板との衝突による衝撃を吸収する。
【0023】
したがって、基板が位置ずれした状態で搬送されても、第1、第2のガイドローラによって基板の搬送方向先端部の傾斜方向下方の端面に欠けが生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1乃至図7はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1は基板Wの処理装置の概略的構成を示す縦断面図であって、この処理装置は箱型状の本体1を備えている。この本体1内は仕切板2によって処理チャンバ3、洗浄チャンバ4及び乾燥チャンバ5に区画されている。
【0026】
各チャンバ3〜5内には、基板Wを搬送方向と交差する方向に対し、水平状態よりも所定の角度で傾斜させて搬送する搬送装置6が設けられている。上記本体1の一端面と他端面及び仕切り板2には同じ高さ位置に上記搬送装置6によって搬送される基板Wが通過する通口7が形成されている。なお、各チャンバ3〜5に設けられる搬送装置6は同じ構成であるので、以下、洗浄チャンバ4の搬送装置6についてだけ説明する。
【0027】
すなわち、図2は洗浄チャンバ4の縦断面図であって、この洗浄チャンバ4の幅方向両端部には受け部材8が設けられている。これらの受け部材8には上記搬送装置6を構成するフレーム11が支持されている。
【0028】
上記フレーム11の幅方向一端部は上記受け部材8に直接支持され、幅方向他端部は角度調整部材10を介して支持されている。それによって、上記フレーム11は上記幅方向に対して所定の角度、たとえば5〜15度の範囲内の角度で傾斜している。なお、フレーム11の傾斜角度は5〜15度の範囲内に限定されず、それ以下であっても、それ以上であっても差し支えない。
【0029】
上記フレーム11には、フレーム11の幅方向に軸線を沿わせた複数の搬送軸12が幅方向と交差する基板Wの搬送方向に沿って所定間隔で配設されている。搬送軸12には基板Wの下面を支持する複数の搬送ローラ13が所定間隔で設けられている。各搬送軸12の両端部は支持板121に設けられた軸受122(一端部だけを図3に示す)によって回転可能に支持されている。したがって、搬送ローラ13に下面が支持される基板Wはフレーム11と同じ角度で傾斜して搬送される。
【0030】
図2に示すように、上記フレーム11の傾斜方向の上端側に位置する幅方向一側の外面には、伝達軸14が軸線を基板Wの搬送方向に沿わせて回転可能に架設されている。この伝達軸14の中途部には従動歯車15が設けられている。この従動歯車15には駆動歯車16が噛合している。この駆動歯車16は洗浄チャンバ4の外部に設けられた駆動源17の出力軸18に嵌着されている。
【0031】
詳細は図示しないが、上記搬送軸12の上記伝達軸14側に位置する一端部には第1のかさ歯車が設けられている。第1のかさ歯車には上記搬送軸12に設けられた第2のかさ歯車が噛合している。したがって、上記駆動源17が作動して上記駆動歯車16及び従動歯車15を介して上記伝達軸14が回転されれば、上記第1、第2のかさ歯車を介して上記搬送軸12が回転駆動される。それによって、搬送ローラ13に支持された基板Wが搬送されるようになっている。
【0032】
図1に示すように、処理チャンバ3内を搬送される基板Wの上方には、その基板Wの上面に現像液、エッチング液或いは剥離液などの処理液を噴射する複数の処理用ノズル20が処理チャンバ3の幅方向及び幅方向と交差する方向に沿って規則的に配置されている。
【0033】
処理チャンバ3で処理液によって所定の処理が行なわれた基板Wは搬送装置6によって洗浄チャンバ4に搬入される。洗浄チャンバ4内には、図2に示すように処理チャンバ4内を搬送される基板Wの上方に、基板Wの幅方向に沿う複数のノズルパイプ21が基板Wの搬送方向に対して所定間隔で、しかも軸線を搬送装置6によって搬送される基板Wの上面と平行にして配置されている。この実施の形態では、図1に示すように4本のノズルパイプ21が基板Wの搬送方向に対して所定間隔で配置されている。
【0034】
各ノズルパイプ21には複数の洗浄ノズル22が所定間隔で設けられている。図1に示すように、洗浄チャンバ4内には洗浄ノズル22が4列で設けられている。
【0035】
上記ノズルパイプ21はヘッダパイプ23に連通管24を介して接続されている。このヘッダパイプ23は純水などの洗浄液の供給源(図示しない)に連通している。それによって、洗浄チャンバ4内を搬送される基板Wの上面には上記各列の複数の洗浄ノズル22から洗浄液が噴射されるようになっている。
【0036】
上記乾燥チャンバ5内には基板Wの上面と下面とに向かって加圧気体を噴射する一対のエアーナイフ26が先端の噴射口を基板Wの搬送方向上流側に向けて配置されている。それによって、基板Wは乾燥チャンバ5内を搬送されることで、その上下面に付着した洗浄液が除去される、乾燥処理が行なわれる。
【0037】
上記搬送装置6のフレーム11内には、図3に示すように搬送軸12の傾斜方向下端部に対応する位置に基板Wの傾斜方向下端面、つまり搬送方向と交差する幅方向の一端を支持して基板Wが搬送方向と交差する方向に対して位置ずれするのを防止する複数のガイド手段31が基板Wの搬送方向に沿って所定間隔で設けられている。
【0038】
上記ガイド手段31は、図4に示すように支持体32を有する。この支持体32は帯板状のばね材によって中間辺部33及びこの中間辺部33の両端をほぼ直角に折曲して形成された弾性部材としての一対のトーションばね部34を有する。そして、支持体32は、その中間辺部33の長手方向を上記基板Wの搬送方向に沿わせて上記フレーム11に一体的に取付けられている。
【0039】
なお、中間辺部33とトーションばね部34を一枚のばね材によって一体に形成したが、中間辺部33とトーションばね部34を別体にし、その中間辺部33の両端にトーションばね部34の下端を固着するようにしてもよい。
【0040】
上記トーションばね部34の上端はL字状に折曲されていて、一対のトーションばね部34の上端にはアーム体35の基部35aが取付け固定されている。この基部35aは、上記中間辺部33の中途部から立設された支軸36に支持され、この支軸36を支点として上記トーションばね部34を復元力に抗して弾性変形させながら左右方向に揺動可能となっている。
【0041】
上記アーム体35の基部35aからは、基部35aと一体に形成された第1のアーム37と第2のアーム38がV字状に延出されている。
【0042】
第1のアーム37は基板Wの搬送方向(図3に矢印Xで示す)の上流側に位置し、第2のアーム38は下流側に位置している。上記第1のアーム37の先端には第1のガイドローラ39が設けられ、第2のアーム38の先端には第2のガイドローラ40が設けられている。
【0043】
第1、第2のガイドローラ39,40は図4と図5に示すように内輪41に外輪42が球体43によって回転可能に保持されていて、上記内輪41が各アーム37、38の先端に立設された支軸44に嵌合固定されている。
【0044】
そして、上記搬送軸12に設けられた搬送ローラ13によって搬送される基板Wの傾斜方向下方の端面が上記各ガイドローラ39,40の外輪42にガイドされるようになっている。
【0045】
図5に示すように、上記第1のアーム37の揺動の支点となる位置から第1のガイドローラ39の中心までの長さ(距離)はaであって、第2のアーム38の揺動の支点となる位置から第2のガイドローラ40の中心までの長さ(距離)は第1のアーム37の長さaに比べて長いbに設定されている。
【0046】
上記第1、第2のガイドローラ39,40の内輪41と外輪42は、金属製或いは樹脂製のいずれであってもよく、耐蝕性が要求される条件下で使用される場合などには、超高分子量ポリエチレン、ピーク樹脂或いはフッ素樹脂などの合成樹脂で形成されものを用いる方がよい。
【0047】
このような構成において、基板Wが搬送装置6の搬送ローラ13によって搬送方向と交差する方向に傾斜した状態で、それぞれのチャンバ3〜5内を搬送されるとき、基板Wの傾斜方向下方の端面は上記ガイド手段31の第1、第2のガイドローラ39,40の外輪42に当たってガイドされる。それによって、基板Wは傾斜方向下方にずれることなく位置決めされて搬送される。
【0048】
搬送ローラ13によって搬送される基板Wは、搬送方向と交差する上下方向に対して位置がずれることがある。たとえば、図6に鎖線で示すように下端面が正規の搬送高さH1に対してH2で示すように下方へ位置がずれることがある。図6では、高さH1の基板をW1で示し、高さH2の基板をW2で示す。
【0049】
基板W2が傾斜方向下方に位置ずれが生じた状態で搬送されると、基板W2の搬送方向先端部の下方の端面が上記ガイド手段31の第1のガイドローラ39や第2のガイドローラ40に当たる。それによって、基板W2の先端部の端面が衝撃を受けてその端面に欠けが生じる虞がある。
【0050】
しかしながら、搬送ローラ13によって搬送される基板W2の先端部の端面が上記ガイド手段31の搬送方向上流側に位置する第1のアーム37に設けられた第1のガイドローラ39の外周面に当たって、この第1のガイドローラ39に基板W2の重量が加わると、図6に矢印Rで示すように、アーム体35は支軸36を支点としてその基部35aに連結された一対のトーションばね部34を捩じりながら基板W2の搬送方向上流側に向かって揺動する。つまり、基板W2の搬送方向先端部の下端面が第1のガイドローラ39に当たると同時に、アーム体35が揺動して第1のガイドローラ39が下方へ変位する。
【0051】
それによって、基板W2の下端面の先端部が第1のガイドローラ39と衝突したときに受ける衝撃が緩和されると同時に、基板W2の下端面が第1のガイドローラ39の外周面に乗り上げるから、基板W2の下端面の搬送方向の先端部が第1のガイドローラ39との衝突によって欠けるのを防止することができる。
【0052】
基板W2の下端縁の先端が第1のガイドローラ39に当たってアーム体35が図6に矢印Rで示す基板Wの搬送方向上流側に向かって揺動した後、基板W2がさらにH2の高さで搬送されると、その先端側の下端面は第2のアーム38に設けられた第2のガイドローラ40の外周面に当たる。このときの基板を図6にW3で示す。
【0053】
基板W3の端面の先端部が第2のガイドローラ40の外周面に当たると、基板Wの重量が第2のガイドローラ40に加わる。それによって、アーム体35は支軸36を支点として図7に矢印Lで示す、先程とは逆方向である、基板W3の搬送方向下流側に向かって揺動して第2のガイドローラ40を下方へ変位させる。
【0054】
それによって、基板W3の下端面の先端部が第2のガイドローラ40と衝突したときに受ける衝撃が緩和されると同時に、基板W3の下端面が第2のガイドローラ40の外周面に乗り上げるから、基板W3の下端面の搬送方向の先端部が第2のガイドローラ40との衝突によって欠けるのを防止することができる。このとき、基板W3の下端面は正規の高さH1となる。
【0055】
上記第2のガイドローラ40が設けられた第2のアーム38の長さbは、第1のガイドローラ39が設けられた第1のアーム37の長さaよりも長く設定されている。そのため、第1のガイドローラ39と第2のガイドローラ40に基板W3の荷重が同じ重量で加わるとすると、これらアーム37、38の長さの差によって第2のアーム38に第1のアーム37よりも大きな回転モーメントが発生することになる。
【0056】
しかも、基板W2がアーム体35を矢印R方向に揺動させたとき、アーム体35が取付けられた一対のトーションばね部34は復元力に抗して捩じられているから、アーム体35が矢印L方向に揺動するとき、その揺動方向に一対のトーションばね部34の復元力が作用する。
【0057】
それによって、アーム体35は上記回転モーメントと、トーションばね部34の復元力との作用によって矢印L方向へ確実に揺動して、第2のガイドローラ40を下方へ変位させ、第1のガイドローラ39を上方へ変位させるから、基板W3は下端面がH2の高さからH1の高さ、つまり正規の搬送高さに補正されて搬送されることになる。
【0058】
すなわち、基板Wを搬送方向と交差する方向に傾斜させて搬送するとき、基板Wの傾斜方向下側の端面を第1、第2のガイドローラ39,40によってガイドするようにしても、第1、第2のガイドローラ39,40を揺動可能なアーム体35の第1のアーム37と第2のアーム38に設けるようにした。
【0059】
そのため、基板Wの傾斜方向下方の端面の先端部が第1、第2のガイドローラ39,40に順次当たったとき、上記アーム体35が揺動して衝突時の衝撃を吸収するから、基板Wの搬送方向先端部の端面に欠けが生じるようなことなく、基板Wを第1、第2のガイドローラ39,40によって位置ずれが生じないようガイドして搬送することができる。
【0060】
しかも、基板Wの下端面の先端部が第1のガイドローラ39及び第2のガイドローラ40に当たったとき、これらガイドローラ39,40がアーム体35とともに揺動するため、ガイドローラ39,40の外周面に基板Wの下端面が強く接触するのが防止される。そのため、ガイドローラ39,40を合成樹脂によって形成した場合、基板Wとの接触抵抗によって早期に磨耗するのを防止することができる。
【0061】
図8と図9はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態は第1、第2のガイドローラ39、40の外輪42に、樹脂製或いは金属製の接触輪46を弾性的に変形する緩衝材47を介して上記外輪42と一体的に設けるようにした。
【0062】
上記緩衝材47としては比較的軟質のゴムや樹脂、あるいは貼り合わされた樹脂製シート間に気体を介在させた、いわゆるエアクッション材などが用いられる。上記接触輪46は図8に示すように断面形状がL字状となっていて、その内径寸法が外輪42の外形寸法よりも大きくなっている。それによって、緩衝材47が弾性変形したときに、径方向に確実に変位できるようになっている。
【0063】
このような構成によれば、接触輪46が緩衝材47を介して上記外輪42に一体的に設けられていることによって、第1のガイドローラ39及び第2のガイドローラ40に設けられた上記接触輪46に基板Wの下端縁の先端が当たったとき、上記緩衝材47が弾性変形して接触輪46を径方向に変位させるため、この接触輪46が緩衝作用を呈する。
【0064】
それによって、基板Wの下端縁の先端が接触輪46に当たったとき、その先端が接触輪46から受ける衝撃が大幅に緩和されるから、基板Wの下端縁の先端に欠けが発生するのをさらに確実に防止することができる。
【0065】
接触輪46が設けられた第1、第2のガイドローラ39,40は第1の実施の形態に示されたアーム体35の第1、第2のアーム37、38の先端部に取付けて基板Wの傾斜方向の下端面を受けるように設けてもよいが、アーム体35に取付けずに基板Wの傾斜方向の下端面を受けるように設けてもよい。
【0066】
上記第1の実施の形態において、支持体を帯板状のばね材で形成して弾性部材としての一対のトーションばね部を設け、このトーションばね部にアーム体を取付けることで、最初に揺動するとき、復元力に抗して揺動させるようにしたが、上記ばね体を支持する支軸に捩じりコイルばねを設け、この捩じりコイルばねの復元力に抗して上記アーム体を揺動させるようにしてもよく、弾性部材はアーム体が揺動するときに復元力に抗して変形させられるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す処理装置の縦断面図。
【図2】洗浄チャンバの縦断面図。
【図3】ガイド手段が配置された搬送軸の軸方向一端部を示す平面図。
【図4】ガイド手段の斜視図。
【図5】ガイド手段を構成するアーム体の平面図。
【図6】基板がガイド手段の第1のガイドローラに当たってから、第2のガイドローラに当たるときの説明図。
【図7】基板がガイド手段の第1のガイドローラと第2のガイドローラに乗り上げたときの説明図。
【図8】この発明の第2の実施の形態のガイドローラを示す平面図。
【図9】図8に示すガイドローラの縦段面図。
【符号の説明】
【0068】
6…搬送装置、12…搬送軸、13…搬送ローラ、17…駆動源(駆動手段)、31…ガイド手段、32…支持体、34…トーションばね部、35…アーム体、36…支軸、37…第1のアーム、38…第2のアーム、39…第1のガイドローラ、40…第2のガイドローラ、41…内輪、42…外輪、43…球体、46…接触輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送方向と交差する方向に傾斜させて搬送する搬送装置であって、
軸線を上記基板の搬送方向と交差する方向に傾斜させこの基板の搬送方向に対して所定間隔で配置された複数の搬送軸と、
各搬送軸の軸方向に所定間隔で設けられ上記基板を搬送方向と交差する方向に傾斜させて支持する複数の搬送ローラと、
上記搬送軸を回転駆動して上記基板を上記搬送ローラによって搬送させる駆動手段と、
第1のアームと第2のアームがV字状に設けられたアーム体、上記第1のアームが上記基板の搬送方向の上流側に位置するよう上記アーム体の基部を揺動可能に支持した支持体、上記第1のアームの先端部に設けられた第1のガイドローラ、上記第2のアームの先端部に設けられた第2のガイドローラを有し、上記第1、第2のガイドローラによって上記基板の傾斜方向の下側の端面を支持してこの基板の上記搬送ローラによる搬送をガイドするガイド手段を具備し、
上記ガイド手段は、上記第1のガイドローラが上記搬送ローラによって搬送される上記基板の搬送方向先端部の傾斜方向の下側の端面を受けたとき、その荷重によって上記アーム体は上記基板の搬送方向上流側に向かって揺動し、その状態で上記第2のガイドローラが上記基板の搬送方向先端部の傾斜方向の下側の端面を受けたとき、上記アーム体は上記第2のガイドローラを介して上記第2のアームに加わる荷重によって上記基板の搬送方向下流側に揺動することを特徴とする基板の搬送装置。
【請求項2】
上記支持体に揺動可能に支持された上記アーム体は、上記第1のガイドローラと第2のガイドローラが基板の荷重を受けたときに、弾性部材を復元力に抗して弾性変形性させながら揺動することを特徴とする請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項3】
上記第2のアームは上記第1のアームに比べて長尺に設定されていることを特徴とする請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項4】
上記第1のガイドローラと第2のガイドローラは樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項5】
上記第1、第2のガイドローラは、ラジアル軸受及びこのラジアル軸受の外輪に樹脂製の接触輪が緩衝材を介して径方向に弾性的に変位可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項6】
基板を処理液によって処理する処理装置であって、
チャンバと、
上記基板を搬送方向と交差する方向に傾斜させて上記チャンバ内を搬送する搬送装置と、
この搬送装置によって上記チャンバ内を搬送される上記基板に向けて処理液を供給する処理液供給手段を具備し、
上記搬送装置は請求項1に記載された構成であることを特徴とする基板の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−24042(P2010−24042A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191134(P2008−191134)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】