説明

基板保持装置、表面形状測定装置および応力測定装置

【課題】基板の変形を防止しつつ基板を保持する。
【解決手段】応力測定装置の基板保持機構20は、基板9の下面91側において気体を噴出することにより基板9を下方から非接触にて支持する支持部201、および、支持部201に支持される基板9の側面に当接して基板9の移動を規制する円筒状の移動規制部202を備える。支持部201は、基板9の下面91に対向する円板状の多孔質部材203を備え、基板保持機構20では、多孔質部材203の上面2031全体からおよそ均一に気体を噴出することにより、基板9が支持部201に接触することなく面支持される。。これにより、基板9の変形を防止しつつ基板9を保持することができる。その結果、基板9の表面形状を高精度に求めることができ、基板9上の膜内の応力を高精度に求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持する基板保持装置、並びに、当該基板保持装置を備える表面形状測定装置および応力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子の製造において、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の表面の検査が行われており、このような検査を行う検査装置では、基板を保持する保持部の1つとして基板を吸着して保持する基板保持部が利用されている。例えば、特許文献1の基板保持部では、同心円状の流路が上面に形成された保持部材上に基板が載置され、流路内のエアがコンプレッサにより吸引されることにより基板が保持部材の上面に吸着される。
【0003】
また、特許文献2に示すように、加圧エアを噴出する浮上テーブル上において基板を非接触にて支持する非接触支持装置も知られている。当該非接触支持装置では、浮上テーブルを貫通する複数の通気孔が形成されており、これらの通気孔を介して浮上テーブルの上面から加圧エアが噴出される。また、非接触支持装置では、矩形状の2つの浮上テーブルの間に細長い矩形状の軸受部材が挟まれており、軸受部材は、吸引用の細長い負圧溝と負圧溝の両側に設けられた細長い矩形状の静圧発生用の多孔質体を備える。
【0004】
非接触支持装置により基板が支持される際には、浮上テーブルの複数の通気孔から噴出される加圧エアにより基板が非接触にて支持される。そして、2つの浮上テーブルの間の軸受部材の上方において、負圧溝からのエアの吸引による負圧と多孔質体から噴出される加圧エアによる静圧との調和により、基板に対する静圧軸受剛性が高められる。
【0005】
一方、特許文献3では、基板を吸着して搬送する装置において、吸着プレートの吸着面を超高分子量ポリエチレンの薄い多孔質シートにより形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−103921号公報
【特許文献2】特開2004−152941号公報
【特許文献3】特開2002−173250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、成膜やアニール等の様々な処理が行われた基板は、反りや傾き等を有しており、完全には平坦ではない。このため、特許文献1の基板保持部のように基板を吸着して保持すると基板が僅かに変形する。
【0007】
また、特許文献2の非接触支持装置では、基板が負圧溝の上方において負圧溝側に引き寄せられることにより、基板の中央が撓んだ状態にて支持されるため、当該非接触支持装置を基板の表面形状を測定する装置等の基板保持部として利用した場合、正確な測定結果を得ることができない。また、基板の中央以外の部位も、複数の通気孔から噴出される不均一な加圧エアにより支持されるため、基板に変形が生じる恐れがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の変形を防止しつつ基板を保持することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板を保持する基板保持装置であって、基板の下面に対向する平面を有する多孔質部材から気体を噴出することにより、前記基板の全体または外縁部を除く部位を下方から非接触にて支持する支持部と、前記支持部に支持される前記基板の側面に当接して前記基板の前記下面に平行な方向への移動を規制する移動規制部とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板保持装置であって、前記多孔質部材の前記平面が、前記基板の前記下面全体と対向する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板保持装置であって、前記多孔質部材を介して気体が吸引されることにより基板が前記支持部に吸着される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板保持装置であって、前記基板が、半導体基板である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板保持装置であって、前記基板が、平面表示装置用のガラス基板である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、基板の表面形状を測定する表面形状測定装置であって、基板を保持する請求項1ないし5のいずれかに記載の基板保持装置と、前記基板保持装置により前記基板の前記下面が前記多孔質部材の前記平面に対して非接触とされた状態で前記基板の上面の形状を非接触にて測定する形状測定部とを備える。
【0015】
請求項7に記載の発明は、基板上の膜内の応力を測定する応力測定装置であって、基板を保持する請求項3ないし5のいずれかに記載の基板保持装置と、前記基板保持装置により前記基板の前記下面が前記多孔質部材の前記平面に対して非接触とされた状態で前記基板の上面の形状を非接触にて測定する形状測定部と、前記形状測定部により求められた前記基板の前記上面の形状に基づいて前記上面における応力測定領域の曲率半径を求める曲率半径算出部と、前記基板保持装置により前記基板の前記下面が前記多孔質部材の前記平面に吸着された状態において前記基板の前記上面上の膜の厚さを光学的に測定する膜厚測定部と、前記曲率半径算出部および前記膜厚測定部により求められた前記応力測定領域における曲率半径および膜厚に基づいて前記応力測定領域における前記膜内の応力を求める応力算出部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、基板の変形を防止しつつ基板を保持することができる。請求項2の発明では、基板の変形を基板全体に亘って防止することができる。請求項3の発明では、基板を平坦な状態で保持することができる。
【0017】
請求項6の発明では、基板の表面形状を高精度に求めることができる。請求項7の発明では、基板上の膜内の応力を高精度に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る応力測定装置1の構成を示す図である。応力測定装置1は、略円板状の半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)の主面上に形成された膜内の応力を測定する装置である。膜は、単層膜であってもよく、多層膜であってもよい。本実施の形態では、基板9上には配線パターン等のパターンは形成されていない。
【0019】
図1に示すように、応力測定装置1は、基板9を保持する基板保持機構20、基板保持機構20を図1中のX方向およびY方向に移動する移動機構21、基板保持機構20を図1中のZ方向に昇降する昇降機構24、基板9上の膜に対する偏光解析に用いられる情報を取得するエリプソメータ3、基板9からの反射光の分光強度を取得する光干渉ユニット4、並びに、これらの構成を制御する制御部5を備える。
【0020】
図2は、制御部5の構成を示す図である。図2に示すように、制御部5は、通常のコンピュータと同様に、各種演算処理を行うCPU51、実行されるプログラムを記憶したり演算処理の作業領域となるRAM52、基本プログラムを記憶するROM53、各種情報を記憶する固定ディスク54、作業者に各種情報を表示するディスプレイ55、および、キーボードやマウス等の入力部56等を接続した構成となっている。
【0021】
図3は、制御部5のCPU51(図2参照)等がプログラムに従って演算処理を行うことにより実現される機能を他の構成と共に示すブロック図であり、図3中の傾斜ベクトル算出部511、表面形状算出部512、曲率半径算出部513、応力算出部514、第1膜厚算出部515および第2膜厚算出部516が、CPU51等により実現される機能に相当する。なお、これらの機能は複数台のコンピュータにより実現されてもよい。
【0022】
図4は、基板保持機構20を示す平面図である。図4に示すように、基板保持機構20は平面視において円形とされる。図5は、基板保持機構20を示す縦断面図である。図5では、基板保持機構20の中心軸を含む面における断面を示す。また、図5では、基板保持機構20に保持される基板9も併せて描いている。
【0023】
図4および図5に示すように、基板保持機構20は、基板9の下面91側において気体(例えば、加圧されたエア)を噴出することにより基板9を下方から非接触にて支持する支持部201、および、支持部201に支持される基板9の側面に当接して基板9の移動を規制する円筒状の移動規制部202を備える。
【0024】
図5に示すように、支持部201は、基板9の下面91に対向する円形の平面2031(以下、「上面2031」という。)を有する円板状の多孔質部材203、上部に多孔質部材203が取り付けられるベース部204を備える。ベース部204の上側には、平面視において円形の凹部が形成されており、当該凹部が多孔質部材203により閉塞されることにより内部空間205が形成される。
【0025】
ベース部204の下側には、内部空間205に連通する真空吸引ポート2041および気体供給ポート2042が形成されており、内部空間205は、真空吸引ポート2041および配管2043を介して、図示省略の排気装置に接続されている。また、内部空間205は、気体供給ポート2042および配管2044を介して、図示省略の気体供給装置に接続されている。
【0026】
多孔質部材203は、多孔質セラミックや多孔質ステンレス等により形成される。また、ステンレス以外の他の金属系多孔質材料やプラスチック系多孔質材料が多孔質部材203として利用されてもよい。多孔質部材203の空孔率は、好ましくは、1%以上10%以下(より好ましくは、3%以上5%以下)とされる。
【0027】
応力測定装置1では、配管2043に設けられたバルブ(図示省略)が閉じられ、配管2044に設けられたバルブ(図示省略)が開放された状態で、気体供給装置から配管2044および気体供給ポート2042を介して内部空間205に気体が供給されることにより、多孔質部材203の上面2031全体からおよそ均一に気体が噴出する。これにより、基板9の下面91と多孔質部材203の上面2031との間に気体の層が形成され、当該気体の層を介して基板9が支持部201の多孔質部材203上に非接触にて面支持される。
【0028】
基板保持機構20では、多孔質部材203の上面2031が基板9の下面91全体と対向しているため、基板9の全体が支持部201により下方から非接触にて支持される。そして、基板9の側面が移動規制部202の内側面に当接することにより、基板9が下面91に平行な方向(すなわち、多孔質部材203の上面2031に平行な方向)に移動することが規制される。なお、移動規制部202は、基板9の側面に単に接触しているのみであり、基板9の重量を側面において実質的に支持しているわけではない。また、移動規制部202は、必ずしも円筒状とされる必要はなく、例えば、基板保持機構20の中心軸を中心とする円周上に等ピッチにて配列された3本以上のピンであってもよい。
【0029】
ところで、応力測定装置1では、基板保持機構20により基板9を吸着して保持することもできる。基板9が吸着される際には、多孔質部材203の上面2031に基板9が載置され、配管2044に設けられたバルブが閉じられ、配管2043に設けられたバルブが開放された状態で排気装置が駆動される。そして、配管2043、真空吸引ポート2041、内部空間205および多孔質部材203を介して気体が吸引されることにより、基板9が支持部201の多孔質部材203の上面2031に吸着される。
【0030】
図1に示すように、移動機構21は、基板保持機構20を図1中のX方向に移動するX方向移動機構22、および、Y方向に移動するY方向移動機構23を有する。X方向移動機構22はモータ221にボールねじ(図示省略)が接続され、モータ221が回転することにより、Y方向移動機構23がガイドレール222に沿って図1中のX方向に移動する。Y方向移動機構23もX方向移動機構22と同様の構成となっており、モータ231が回転するとボールねじ(図示省略)により基板保持機構20がガイドレール232に沿ってY方向に移動する。応力測定装置1では、移動機構21により、エリプソメータ3および光干渉ユニット4から基板9上に照射される光の照射領域が基板9に対して相対的に移動される。
【0031】
エリプソメータ3は、偏光した光(以下、「偏光光」という。)を基板9に向けて出射する光源ユニット31、および、基板9からの偏光光の反射光を受光して反射光の偏光状態を取得する受光ユニット32を備え、取得された偏光状態を示すデータは制御部5へと出力される。
【0032】
光源ユニット31は、光ビームを出射する光源である半導体レーザ(LD)312、半導体レーザ312の出力を制御するLD駆動制御部311、偏光フィルタ313、および、波長板(以下、「λ/4板」という。)314を備える。エリプソメータ3では、光源ユニット31の半導体レーザ312から出射された光ビームが偏光フィルタ313に入射し、偏光フィルタ313により直線偏光した光が取り出される。偏光フィルタ313からの光はλ/4板314に入射し、λ/4板314により円偏光の光に変換されてレンズ331を介して所定の入射角(例えば、72°〜80°)にて基板保持機構20上の基板9表面へと導かれる。なお、光源ユニット31には(具体的には、半導体レーザ312と偏光フィルタ313との間の光路上には)、光ビームを遮断する電磁シャッタ315が設けられ、電磁シャッタ315により基板9への光の照射がON/OFF制御される。
【0033】
受光ユニット32は、回転検光子321およびフォトダイオード322を備える。エリプソメータ3では、光源ユニット31から基板9に出射された光の反射光が、レンズ332を介して回転検光子321へと導かれ、光軸に平行な軸を中心として回転する回転検光子321を透過してフォトダイオード322により受光される。フォトダイオード322により受光された光の強度を示す信号は、ADコンバータ34を介して制御部5の第1膜厚算出部515(図3参照)へと出力され、フォトダイオード322の出力が回転検光子321の回転角に対応付けられることにより反射光の偏光状態が取得される。
【0034】
応力測定装置1では、エリプソメータ3の光源ユニット31からの光の波長の確認に利用されるミラー25が基板保持機構20の側方に取り付けられており、ミラー25は光源ユニット31から照射される所定の入射角の光を鉛直方向の上方へと反射するように傾斜して設けられている。
【0035】
光干渉ユニット4は、白色光を照明光として出射する光源41、基板9からの反射光を分光する分光器42、後述する遮光パターンの像を取得する遮光パターン撮像部43、基板9上の照明光の照射位置を撮像する基板撮像部44、および、光学系45を有し、光学系45により光源41からの照明光が基板9上の照射領域へと導かれるとともに当該照射領域からの反射光が分光器42、遮光パターン撮像部43および基板撮像部44へと導かれる。
【0036】
具体的には、光ファイバ451の一端に光源41からの照明光が導入され、他端に設けられたレンズ452から照明光が導出される。導出された照明光はレンズ450aを介して開口絞り部453へと導かれる。開口絞り部453には所定の遮光パターン453a(例えば、十字に形成された標線)が設けられており、照明光は遮光パターン453aに対応する部分が遮られつつレンズ450bを介して視野絞り部454へと導かれる。
【0037】
視野絞り部454にて視野が制限された照明光はレンズ450cを介してハーフミラー455へと導かれ、ハーフミラー455を透過してハーフミラー456へと導かれる。ハーフミラー456にて反射された照明光は、対物レンズ457を介して基板9上の照射領域に照射される。このとき、基板9上における照明光の照射領域の広さは、視野絞り部454による視野の制限に対応するが、開口絞り部453の遮光パターン453aの像は基板9上には結像されない。応力測定装置1では、対物レンズ457として低倍率(本実施の形態では、10倍)のものが使用され、当該対物レンズ457の焦点深度が約4μmと比較的大きいため、対物レンズ457から基板9への光は、基板9上においてほぼ平行光となっている。
【0038】
基板9からの反射光は、対物レンズ457を介してハーフミラー456へと導かれ、一部の光がハーフミラー455に向けて反射される。反射された光は、ハーフミラー455にてさらに反射され、レンズ450dを介して遮光パターン撮像部43にて受光される。遮光パターン453aから基板9の表面を経由して遮光パターン撮像部43に至る光学系において、遮光パターン撮像部43の位置は遮光パターン453aと光学的に共役とされ、遮光パターン撮像部43に遮光パターン453aの像が結像され、遮光パターン453aの画像データは制御部5の傾斜ベクトル算出部511(図3参照)へと出力される。
【0039】
ハーフミラー456を透過した反射光はハーフミラー458を透過してハーフミラー459へと導かれ、一部の光が反射される。反射された光はレンズ450eを介して基板撮像部44へと導かれ、受光される。基板撮像部44の位置は視野絞り部454および基板9の表面の位置と光学的に共役とされるため、基板撮像部44により基板9上の照明光の照射位置の像が撮像され、取得された画像データは制御部5へと出力される。
【0040】
ハーフミラー459を透過した光はレンズ450fを介して分光器42へと導かれる。光干渉ユニット4では、光源41からの光の基板9上における照射領域からの反射光が、受光部である分光器42により受光されて反射光の分光強度が取得され、当該分光強度のデータは制御部5の第2膜厚算出部516(図3参照)へと出力される。光干渉ユニット4では、レンズ450a〜450f,452、光ファイバ451、開口絞り部453、視野絞り部454、ハーフミラー455,456,458,459および対物レンズ457により光学系45が構成される。
【0041】
次に、応力測定装置1による基板9上の膜内の応力測定の流れについて説明する。応力測定装置1では、光干渉ユニット4により基板9の上面92(図5参照)の形状(以下、「表面形状」という。)、および、基板9上の応力測定領域の曲率半径が求められ、エリプソメータ3または光干渉ユニット4により、当該応力測定領域における膜の厚さ(以下、「膜厚」という。)が求められる。そして、これらの曲率半径および膜厚、並びに、基板9の厚さに基づいて応力測定領域における応力が求められる。
【0042】
応力測定装置1では、光干渉ユニット4、制御部5の傾斜ベクトル算出部511および表面形状算出部512が、基板9の表面形状を非接触にて測定する形状測定部となっている。また、エリプソメータ3および制御部5の第1膜厚算出部515が、基板9上の膜の厚さを光学的に測定する膜厚測定部となっており、光干渉ユニット4および第2膜厚算出部516が、基板9上の膜の厚さを光学的に測定するもう1つの膜厚測定部となっている。基板9上の膜が比較的薄い場合には、エリプソメータ3からの偏光状態を示す出力に基づいて偏光解析方式による膜厚測定が第2膜厚算出部516において行われ、膜が比較的厚い、あるいは、多層膜の場合には、第1膜厚算出部515により、光干渉ユニット4からの分光強度を示す出力に基づいて分光反射率を求めつつ光干渉法により膜厚が算出される。
【0043】
図6は、応力測定装置1による応力測定の流れを示す図である。図1に示す応力測定装置1により基板9上の膜内の応力が測定される際には、まず、基板9が図5に示す基板保持機構20の支持部201上に載置され、気体供給装置から基板保持機構20の内部空間205に気体が供給されて多孔質部材203の上面2031全体から気体が噴出する。これにより、基板9の下面91が多孔質部材203の上面2031に対して非接触とされた状態で、基板9が基板保持機構20により保持される(ステップS11)。
【0044】
続いて、基板9の上面92上に設定された基準領域(すなわち、基板9の表面形状の測定において基準となる領域)が、図1に示す対物レンズ457の焦点深度内に位置するようにフォーカス調整が行われる。本実施の形態では、光学系45を介して目視にて基板9の基準領域の像を確認しつつ、手動により昇降機構24が操作されて基板9のフォーカス調整が行われる。
【0045】
フォーカスの調整が終了すると、移動機構21による基板保持機構20および基板9の移動が開始される。そして、光干渉ユニット4の光源41からの光が、対物レンズ457を有する光学系45を介して基板9上の所定の領域(後述するように、傾斜ベクトルが求められる領域であり、以下、「傾斜ベクトル測定領域」という。)へと照射され、照射領域からの反射光が、対物レンズ457を介して遮光パターン撮像部43へと導かれて遮光パターン453aの像が取得される。遮光パターン撮像部43により取得された遮光パターン453aの画像データは、制御部5の傾斜ベクトル算出部511(図3参照)へと出力される。
【0046】
前述のように、遮光パターン撮像部43の位置は、遮光パターン453aに対して基板9の表面を経由して光学的に共役となる位置(遮光パターン453aがほぼ開口絞り位置に位置することから、遮光パターン撮像部43は、いわゆる、対物瞳位置にほぼ位置する。)であり、遮光パターン撮像部43にて取得される画像中の遮光パターンの位置は、基板9の照明光の照射領域の法線方向(以下、「傾斜ベクトル」と呼ぶ。)に対応した位置となる。
【0047】
傾斜ベクトル算出部511では、傾斜ベクトルが鉛直方向(すなわち、Z方向)を向くときの画像中の遮光パターンの重心位置(以下、「基準位置」という。)が予め記憶されており、基準位置を始点として、取得された画像中の遮光パターンの重心位置に至るベクトルを算出することにより、基板9の照射領域における傾斜ベクトルが求められる。
【0048】
具体的には、対物レンズ457と基板9の表面との間の距離をf、鉛直方向と傾斜ベクトルとのなす角(以下、「傾斜角」という。)をθとし、対物レンズ457の位置にて基板9からの反射光を受光し、遮光パターン453aの像を取得すると仮定すると、取得された画像において、遮光パターンの位置は基板9の傾斜角が0°であるときから傾斜に対応する方向に(f×tan(2θ))だけ移動する。
【0049】
よって、遮光パターン撮像部43により取得される画像においては、(f×tan(2θ))に対物レンズ457の位置に対する倍率を乗じた距離だけ傾斜に対応する方向に移動することとなり、この距離および方向が前述の基準位置と検出される重心位置との間の距離および方向となる。傾斜ベクトル算出部511では、遮光パターン撮像部43からの出力に基づいて求められる基準位置から当該重心位置に至るベクトル、および、対物レンズ457と基板9の表面との間の距離fにより、基板9の傾斜ベクトルが正確に求められる。
【0050】
基板9上には、複数の傾斜ベクトル測定領域が設定されており、光源41からの光の照射領域は、移動機構21により基板9に対して相対的に移動されて次の傾斜ベクトル測定領域へと向かう。応力測定装置1では、光源41からの光の照射領域の基板9に対する相対的な移動が連続的に行われており、基板9上の複数の傾斜ベクトル測定領域に対して、光の照射、遮光パターン453aの画像の取得、および、基板9の傾斜ベクトルの算出が順次繰り返される(ステップS12)。
【0051】
応力測定装置1では、対物レンズ457の焦点深度が比較的大きいため、基板9上の傾斜ベクトル測定領域が、上下方向(すなわち、図1中のZ方向)に関して基準領域(すなわち、フォーカス調整が行われた領域)から多少ずれている場合であっても、対物レンズ457の焦点深度の範囲内に位置していれば、遮光パターン453aと遮光パターン撮像部43との結像関係に影響を生じることなく、遮光パターン453aの像を高精度に取得することができる。
【0052】
また、対物レンズ457から基板9に導かれる光は、基板9上においてほぼ平行光となっているため、傾斜ベクトル測定領域が焦点深度の範囲から多少ずれている場合であっても、遮光パターン453aの像を精度良く取得することができる。これにより、基板9上の複数の傾斜ベクトル測定領域のそれぞれにおいて傾斜ベクトルを測定する際に、各傾斜ベクトル測定領域においてフォーカス調整を行うことなく、迅速かつ高精度に測定を行うことができる。
【0053】
光干渉ユニット4では、遮光パターン453aと遮光パターン撮像部43とは光学的に共役とされているが、遮光パターン453aと基板9とは共役にはされておらず、遮光パターン453aの像は基板9上には結像されない。このため、基板9上に配線パターン等が形成されている場合であっても、遮光パターン撮像部43により取得される遮光パターン453aの像は、基板9上の配線パターン等の影響を受けない。その結果、基板9上の配線パターン等の有無にかかわらず、様々な種類の基板の傾斜ベクトルを容易かつ高精度に求めることができる。
【0054】
全ての傾斜ベクトル測定領域における傾斜ベクトルの算出が終了すると、移動機構21による基板9の移動が停止される。そして、制御部5の表面形状算出部512(図3参照)により、傾斜ベクトル算出部511により求められた基板9上の複数の傾斜ベクトル測定領域における基板9の傾斜ベクトルに基づいて、基板9の表面形状が求められる(ステップS13)。
【0055】
具体的には、複数の傾斜ベクトル測定領域のうちの1つである基準領域の高さ(すなわち、図1中のZ方向の座標値)をZaとし、基準領域と基準領域にX方向において隣接する1つの傾斜ベクトル測定領域(以下、「隣接領域」という。)との間の水平方向の距離(すなわち、X方向の距離)をLとし、基準領域および隣接領域のそれぞれにおける基板9の傾斜ベクトルをZX面に投影したものとZ方向とのなす角それぞれθおよびθとすると、隣接領域の高さZbは数1により求められる。
【0056】
(数1)
Zb=Za+(sinθ+sinθ)L/2
【0057】
表面形状算出部512では、各傾斜ベクトル測定領域の高さが、当該傾斜ベクトル測定領域における基板9の傾斜ベクトル、および、当該傾斜ベクトル測定領域に隣接する傾斜ベクトル測定領域の高さおよび傾斜ベクトルに基づいて基準領域から近い順に順次算出される。
【0058】
なお、一の傾斜ベクトル測定領域の高さは、複数通りの経路にて求められた高さの平均値とされてもよい。例えば、高さが算出されるべき傾斜ベクトル測定領域(以下、「算出対象領域」という。)を通ってX方向に伸びる直線上に位置する複数の傾斜ベクトル測定領域の高さを基準領域(または、高さが既に求められている傾斜ベクトル測定領域)から近い順に順次算出して算出対象領域の高さを求め、算出対象領域を通ってY方向に伸びる直線上に位置する複数の傾斜ベクトル測定領域の高さを基準領域(または、高さが既に求められている傾斜ベクトル測定領域)から近い順に順次算出して算出対象領域の高さを求め、求められた2つの高さの平均値が算出対象領域の高さとされてもよい。
【0059】
応力測定装置1では、表面形状が平坦な基準基板(本実施の形態では、表面に膜が形成されていない基板が利用される。)に対して、基板保持機構20により基準基板が非接触にて保持された状態で、上記と同様の表面形状測定工程(ステップS11〜S13)が予め行われており、基板9の各傾斜ベクトル測定領域に対応する基準基板上の領域の高さが求められて表面形状算出部512に記憶されている。
【0060】
表面形状算出部512では、基板9の複数の傾斜ベクトル測定領域の高さから、予め記憶されている基準基板の複数の傾斜ベクトル測定領域の高さが減算された後、基板9の複数の傾斜ベクトル測定領域の間の領域の高さがスプライン補間やベジェ補間等により補間されて基板9の表面形状が求められる。このように、基板9の傾斜ベクトル測定領域の高さを基準基板の測定結果を用いて補正することにより、応力測定装置1の系統誤差を補正して基板9の表面形状を高精度に求めることができる。
【0061】
図7は、基板9の表面形状を示す図である。図7では、円板状の基板9の直径上に設定された複数の傾斜ベクトル測定領域の高さから求められた表面形状を実線901にて示している。図7に示すように、基板9は、測定対象とされた直径方向の両側(すなわち、図7中の左右両側)の部位において上向きに反っている。
【0062】
図7中では、比較例の他の測定装置による基板9の表面形状の測定結果を破線902にて示す。比較例の測定装置では、吸着ステージにより基板9が吸着された状態で表面形状の測定が行われる。比較例の測定装置では、基板9の中心から半径60mmの範囲内の部位(すなわち、図7中において、基板上の位置が−60mm〜+60mmの範囲内の部位)が、吸着ステージにより吸着されている。比較例の測定装置における各傾斜ベクトル測定領域の傾斜ベクトルの求め方は、本実施の形態に係る応力測定装置1における求め方と同様である。
【0063】
図7に示すように、比較例の測定装置による測定結果では、基板9の吸着ステージに吸着されている部位が、実際の形状と異なりおよそ平坦とされているが、応力測定装置1では、基板9の実際の形状に対応する表面形状が高精度に測定されている。なお、図7には描いていないが、このような形状の基板9が吸着されることなく、単にステージ上に載置された場合、基板9の中央近傍の部位のみがステージにより支持されるため、基板9の直径方向の両側の部位が下方に垂れるように変形する(すなわち、基板9の反りが減少する)。したがって、基板9をステージ上に吸着することなく載置した場合も、基板9の表面形状を高精度に測定することは難しい。
【0064】
基板9の表面形状が測定されると、制御部5の曲率半径算出部513(図3参照)により、基板9上に設定された応力測定領域近傍の表面形状に基づいて(例えば、表面形状算出部512により求められた応力測定領域の高さ、および、応力測定領域の周囲の4点の高さに基づいて)、当該応力測定領域の曲率半径が求められる(ステップS14)。
【0065】
なお、応力測定領域近傍の部位をZX面にて切断した断面における当該部位の曲率が、ZY面にて切断した断面における当該部位の曲率とほぼ等しいことが予め分かっている場合には、応力測定領域の曲率半径は、例えば、応力測定領域の高さ、および、当該応力測定領域のX方向の両側に位置する2点の高さに基づいて求められてもよい。応力測定領域は、基板9上の複数の傾斜ベクトル測定領域と一致していてもよく、複数の傾斜ベクトル測定領域の間に設定されてもよい。また、基板9上に複数の応力測定領域が設定されてよい。
【0066】
応力測定領域の曲率半径が求められると(あるいは、曲率半径の算出と並行して)、気体供給装置が停止され、図5に示す基板保持機構20において、多孔質部材203の上面2031からの気体の噴出が停止される。続いて、排気装置が駆動されて多孔質部材203を介して気体が吸引されることにより、基板9の下面91全体が多孔質部材203の上面2031に吸着され、基板9が平坦な状態で基板保持機構20により保持される(ステップS15)。
【0067】
図1に示す応力測定装置1では、基板保持機構20により基板9が吸着された状態において、エリプソメータ3および第1膜厚算出部515、または、光干渉ユニット4および第2膜厚算出部516により(すなわち、応力測定装置1の膜厚測定部により)、応力測定領域における基板9上の膜厚が光学的に測定される(ステップS16)。以下、エリプソメータ3による膜厚測定について説明し、その後、光干渉ユニット4による膜厚測定について説明する。
【0068】
エリプソメータ3により膜厚が測定される際には、まず、移動機構21により、ミラー25が基板保持機構20と共に光源ユニット31からのレーザ光の照射位置へと移動し、光源ユニット31からのレーザ光がミラー25にて反射され、光干渉ユニット4の分光器42へと導かれる。分光器42では、受光した光の分光強度が取得され、その結果、実質的に、半導体レーザ312が出射するレーザ光の波長の確認(以下、「レーザ波長キャリブレーション」という。)が行われる。取得されたレーザ光の波長は、制御部5の第1膜厚算出部515(図3参照)へと出力され、エリプソメータ3による膜厚測定の際に利用される。
【0069】
続いて、光干渉ユニット4の光源41から照明光が出射されるとともに基板撮像部44にて基板9の画像が取得され、当該画像に基づいて移動機構21が基板9を基板保持機構20と共に移動することにより、エリプソメータ3の光源ユニット31からの偏光光の照射位置が基板9上の応力測定領域に合わせられる。位置調整が終了すると、光源ユニット31から偏光光が基板9へと出射され、受光ユニット32にて反射光の偏光状態が取得される。
【0070】
制御部5の第1膜厚算出部515では、偏光光の応力測定領域に対する入射角、および、レーザ波長キャリブレーションにより取得された光源ユニット31からの偏光光の波長を用いつつ、受光ユニット32により取得された偏光状態に基づいて(正確には、光源ユニット31からの光の偏光状態も利用される。)、基板9上の応力測定領域における膜の厚さが求められる。なお、応力測定領域が複数の傾斜ベクトル測定領域のいずれかと一致している場合には、傾斜ベクトルの測定中に基板9からの反射光の偏光状態が取得されてもよい。
【0071】
応力測定装置1では、エリプソメータ3のレーザ波長キャリブレーションが膜厚測定前に行われることにより、周囲の温度変化や光源ユニット31の各構成の特性変化等により光源ユニット31からの光の波長が変化した場合であっても、膜厚を精度良く求めることができる。
【0072】
次に、光干渉ユニット4による膜厚測定について説明する。光干渉ユニット4により膜厚が測定される際には、まず、光干渉ユニット4において、光源41からの照明光が光学系45を介して基板9の応力測定領域へと導かれ、基板9からの反射光が分光器42へと導かれる。そして、分光器42にて反射光の分光強度が取得され、基板9の分光強度データが制御部5の第2膜厚算出部516(図3参照)へと出力される。
【0073】
応力測定装置1では、光干渉ユニット4により、参照される基板(本実施の形態では、シリコン基板であり、以下、「参照基板」という。)の分光強度が予め取得されて第2膜厚算出部516に記憶されている。また、参照基板上に生じている二酸化ケイ素(SiO)の自然酸化膜の膜厚が、エリプソメータ3および第1膜厚算出部515により予め測定されて第2膜厚算出部516に記憶されている。第2膜厚算出部516では、エリプソメータ3により測定された自然酸化膜の膜厚から、参照基板の(垂直)分光反射率が理論的演算により算出され、「理論分光反射率」として予め記憶されている。
【0074】
第2膜厚算出部516では、参照基板の理論分光反射率に基づいて参照基板および基板9の分光強度から基板9の分光反射率が求められる。ここで、参照基板の理論分光反射率をRc(λ)、参照基板の分光強度をIc(λ)、基板9の分光強度をIm(λ)とし、基板9の分光反射率をRm(λ)とすると、基板9の分光反射率Rm(λ)は数2により求められる。
【0075】
(数2)
Rm(λ)=(Im(λ)/Ic(λ))×Rc(λ)
【0076】
すなわち、基板9の分光反射率は光干渉ユニット4により求められた基板9の分光強度に対して参照基板の理論分光反射率と参照基板の分光強度との比を乗じることにより求められる。第2膜厚算出部516では、さらに、基板9の分光反射率から基板9上の応力測定領域における膜厚が精度良く求められる。なお、応力測定領域が複数の傾斜ベクトル測定領域のいずれかと一致している場合には、傾斜ベクトルの測定中に基板9からの反射光の分光強度が取得されてもよい。
【0077】
上述のように、膜厚測定が終了すると、ステップS14,S16において曲率半径算出部513および膜厚測定部(すなわち、エリプソメータ3および第1膜厚算出部515、または、光干渉ユニット4および第2膜厚算出部516)により求められた応力測定領域の曲率半径および膜厚、並びに、制御部5の入力部56(図2参照)を介して予め入力されている基板9の厚さに基づいて、制御部5の応力算出部514(図3参照)により、応力測定領域における膜内の応力が求められる(ステップS17)。ここで、応力測定領域における曲率半径および膜厚をそれぞれRおよびhとし、基板9の厚さをhとし、基板9のヤング率およびポアソン比をそれぞれEおよびνとすれば、応力測定領域における膜内の応力σは数3により求められる。
【0078】
(数3)
σ=(E/1−ν)×(h/(6Rh))
【0079】
以上に説明したように、応力測定装置1では、基板保持機構20により基板9の下面91が多孔質部材203の上面2031に対して非接触とされた状態で基板9の表面形状が測定される。このとき、基板保持機構20では、基板9の下面91に対向する多孔質部材203の上面2031全体からおよそ均一に気体を噴出することにより、基板9が支持部201に接触することなく面支持される。これにより、基板9の変形を防止しつつ基板9を保持することができ、その結果、基板9の表面形状を高精度に求めることができる。
【0080】
また、基板保持機構20では、多孔質部材203の上面2031が基板9の下面91全体と対向しているため、基板9の変形を基板9全体に亘って防止することができ、基板9の表面形状をより高精度に求めることができる。さらには、応力測定装置1では、基板9の表面形状が光干渉ユニット4により非接触にて測定されるため、接触式の測定端子により測定を行う他の装置と異なり、測定端子からの荷重による基板の変形を防止することができ、基板9の表面形状をさらに高精度に求めることができる。
【0081】
一方、基板9上の膜厚は、基板保持機構20により基板9の下面91が多孔質部材203の上面2031に吸着された状態において光学的に測定される。応力測定装置1では、基板保持機構20により基板9を吸着することにより、基板9を平坦な状態で保持することができる。その結果、基板9の上面92の傾きによる影響を抑制して、基板9上の膜厚を高精度に求めることができる。さらには、このように高精度に求められた基板9の表面形状、および、基板9上の膜厚に基づいて、基板9上の膜内の応力を高精度に求めることができる。
【0082】
基板保持機構20では、基板9の吸着が解除される際に、配管2043内のパーティクル等が気体とともに逆流して内部空間205内に流入するが、基板9の下面91に当接する部位が多孔質部材203とされているため、多孔質部材203がフィルターの役割を果たし、パーティクル等が基板9の下面91に吹き付けられて付着してしまうことを防止することができる。
【0083】
光干渉ユニット4では、視野絞り部454に、中央部以外において特定の波長の光(例えば、波長800nm以上の赤外光)を遮る遮光フィルタが配置され、遮光パターン撮像部43に、当該特定の波長の光のみを透過する透過フィルタが取り付けられてもよい。これにより、基板9上の照明光の照射位置において、特定の波長の光が遮光フィルタの中央部に対応する微小領域のみに照射される。
【0084】
照明光の反射光は遮光パターン撮像部43へと導かれ、微小領域に対応する反射光のみが遮光パターン撮像部43にて受光され、かつ、微小領域からの光により遮光パターン453aが結像される。これにより、傾斜ベクトル測定領域の中心部における傾斜ベクトルを高精度に求めることができる。
【0085】
応力測定装置1は、基板9を保持する基板保持機構20、移動機構21、光干渉ユニット4の光源41、光学系45、遮光パターン453aおよび遮光パターン撮像部43、並びに、制御部5の傾斜ベクトル算出部511および表面形状算出部512のみを用い、応力測定を行うことなく、基板9の表面形状を高精度に測定する表面形状測定装置として利用することもできる。
【0086】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る応力測定装置について説明する。図8は、第2の実施の形態に係る応力測定装置の基板保持機構20aを示す縦断面図である。図8に示すように、基板保持機構20aでは、円板状の多孔質部材203の上面2031が、基板9の下面91の外縁部(本実施の形態では、下面91の外周縁から数mm程度内側までの領域)を除く円形の領域と対向している。基板9では、下面91の当該円形領域上の円板状の部位93が、最終的に半導体素子として利用される有効部位となっている。図8では、部位93を二点鎖線にて囲んで示し、以下の説明では、部位93を「有効部位93」という。その他の構成は、図5に示す基板保持機構20と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0087】
図8に示す基板保持機構20aでは、多孔質部材203の上面2031から気体を噴出することにより、基板9の外縁部を除く有効部位93が下方から支持部201により非接触にて面支持される。これにより、基板9の変形を有効部位93において防止しつつ基板9を保持することができ、その結果、第2の実施の形態に係る応力測定装置において、基板9の表面形状を高精度に求めることができる。
【0088】
基板保持機構20aでは、また、基板保持機構20aにより基板9の有効部位93を吸着することにより、基板9を平坦な状態で保持することができ、基板9上の膜厚を高精度に求めることもできる。その結果、第1の実施の形態と同様に、基板9上の膜内の応力を高精度に求めることができる。なお、基板保持機構20aに保持された基板9では、有効部位93よりも外側の円環状の部位が僅かに変形する可能性はあるが、当該部位は最終的に半導体素子として利用されることはないため、膜内の応力の測定も行われない。
【0089】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る基板保持機構について説明する。図9は、第3の実施の形態に係る基板保持機構20bを示す平面図である。第3の実施の形態に係る応力測定装置では、液晶表示装置やプラズマ表示装置、有機EL表示装置等の平面表示装置用の矩形板状のガラス基板(以下、単に「基板」という。)が、基板保持機構20bにより保持される。図9に示すように、基板保持機構20bは平面視において矩形とされ、矩形板状の多孔質部材203aを有する支持部201a、および、支持部201aにより非接触にて支持される基板の側面に当接する矩形枠状の移動規制部202aを備える。
【0090】
基板保持機構20bでは、多孔質部材203aの上面2031から気体を噴出することにより、基板の全体が下方から支持部201aにより非接触にて面支持される。これにより、第1の実施の形態と同様に、基板の変形を防止しつつ基板を保持することができる。基板保持機構20bでは、第1および第2の実施の形態と同様に、多孔質部材203aを介して気体が吸引されることにより、基板が支持部201aに吸着されて平坦な状態で保持されてもよい。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0092】
第1の実施の形態に係る応力測定装置1では、必ずしも、光干渉ユニット4からの出力に基づいて基板9の表面形状が求められる必要はない。例えば、基板9に対するフォーカス調整を自動的に行うオートフォーカス機構が設けられ、支持部201により基板9が非接触にて支持された状態で基板保持機構20を昇降することにより、基板9上の複数の位置においてフォーカス調整が行われた後、当該複数の位置におけるフォーカス調整後の基板保持機構20の高さに基づいて基板9の表面形状が求められてもよい。
【0093】
上記実施の形態に係る基板保持機構は、必ずしも応力測定装置(または、表面形状測定装置)において利用される必要はなく、基板に対して種々の測定や処理等を行う様々な装置において、基板を保持する基板保持装置として利用されてよい。また、基板保持装置単体として利用されてもよい。
【0094】
基板保持装置は、半導体基板や平面表示装置用のガラス基板以外の他の基板(例えば、有機半導体の薄膜が形成された(あるいは、形成される予定の)プラスチック基板や太陽電池に利用されるプラスチックフィルム基板)の保持に利用されてもよい。ただし、基板保持装置は、上述のように、基板の変形を防止しつつ基板を保持することができるため、高精度な測定や処理が求められる半導体基板や平面表示装置用のガラス基板の保持に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施の形態に係る応力測定装置の構成を示す図である。
【図2】制御部の構成を示す図である。
【図3】制御部の機能を示すブロック図である。
【図4】基板保持機構を示す平面図である。
【図5】基板保持機構を示す縦断面図である。
【図6】応力測定の流れを示す図である。
【図7】基板の表面形状を示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係る基板保持機構を示す縦断面図である。
【図9】第3の実施の形態に係る基板保持機構を示す平面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 応力測定装置
3 エリプソメータ
4 光干渉ユニット
9 基板
20 基板保持機構
91 下面
92 上面
201,201a 支持部
202,202a 移動規制部
203,203a 多孔質部材
511 傾斜ベクトル算出部
512 表面形状算出部
513 曲率半径算出部
514 応力算出部
515 第1膜厚算出部
516 第2膜厚算出部
2031 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持装置であって、
基板の下面に対向する平面を有する多孔質部材から気体を噴出することにより、前記基板の全体または外縁部を除く部位を下方から非接触にて支持する支持部と、
前記支持部に支持される前記基板の側面に当接して前記基板の前記下面に平行な方向への移動を規制する移動規制部と、
を備えることを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板保持装置であって、
前記多孔質部材の前記平面が、前記基板の前記下面全体と対向することを特徴とする基板保持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板保持装置であって、
前記多孔質部材を介して気体が吸引されることにより基板が前記支持部に吸着されることを特徴とする基板保持装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板保持装置であって、
前記基板が、半導体基板であることを特徴とする基板保持装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板保持装置であって、
前記基板が、平面表示装置用のガラス基板であることを特徴とする基板保持装置。
【請求項6】
基板の表面形状を測定する表面形状測定装置であって、
基板を保持する請求項1ないし5のいずれかに記載の基板保持装置と、
前記基板保持装置により前記基板の前記下面が前記多孔質部材の前記平面に対して非接触とされた状態で前記基板の上面の形状を非接触にて測定する形状測定部と、
を備えることを特徴とする表面形状測定装置。
【請求項7】
基板上の膜内の応力を測定する応力測定装置であって、
基板を保持する請求項3ないし5のいずれかに記載の基板保持装置と、
前記基板保持装置により前記基板の前記下面が前記多孔質部材の前記平面に対して非接触とされた状態で前記基板の上面の形状を非接触にて測定する形状測定部と、
前記形状測定部により求められた前記基板の前記上面の形状に基づいて前記上面における応力測定領域の曲率半径を求める曲率半径算出部と、
前記基板保持装置により前記基板の前記下面が前記多孔質部材の前記平面に吸着された状態において前記基板の前記上面上の膜の厚さを光学的に測定する膜厚測定部と、
前記曲率半径算出部および前記膜厚測定部により求められた前記応力測定領域における曲率半径および膜厚に基づいて前記応力測定領域における前記膜内の応力を求める応力算出部と、
を備えることを特徴とする応力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−177206(P2008−177206A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6738(P2007−6738)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】