基板保持装置及び基板保持方法
【課題】基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板の離脱や脱落を確実に防止しつつ基板を保持して処理ができるようにする。
【解決手段】基板の裏面周縁部をシールしながら基板を保持する環状シールを備えた回転自在な保持ヘッド184を有し、保持ヘッド184は、基板を保持した状態での該保持ヘッド184の回転に伴って、環状シールでシールされた基板の裏面側に負圧を発生させる絞り機構260を有する。
【解決手段】基板の裏面周縁部をシールしながら基板を保持する環状シールを備えた回転自在な保持ヘッド184を有し、保持ヘッド184は、基板を保持した状態での該保持ヘッド184の回転に伴って、環状シールでシールされた基板の裏面側に負圧を発生させる絞り機構260を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面(被処理面)をめっき液やその他の処理液によって処理する際に用いて好適な基板保持装置及び基板保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、トレンチ及びコンタクトホールに金属(導電体)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されつつある。これは、層間絶縁膜に予め形成したトレンチやコンタクトホールに、アルミニウム、近年では銅や銀等の金属を埋込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
この種の配線、例えば配線材料として銅を使用した銅配線にあっては、平坦化後、銅からなる配線の表面が外部に露出しており、配線(銅)の熱拡散を防止したり、例えばその後の酸化性雰囲気の絶縁膜(酸化膜)を積層して多層配線構造の半導体装置を作る場合等に、配線(銅)の酸化を防止したりするため、Co合金やNi合金等からなる保護層(蓋材)で露出配線の表面を選択的に覆って、配線の熱拡散及び酸化を防止することが検討されている。このCo合金やNi合金等は、例えば無電解めっきによって得られる。
【0004】
例えば、図1に示すように、半導体ウェハ等の基板Wの表面に堆積したSiO2やlow−k材膜等からなる絶縁膜(層間絶縁膜)2の内部に微細な配線用凹部としてのトレンチ4を形成し、表面にTaN等からなるバリア層6を形成した後、例えば、銅めっきを施して、基板Wの表面に銅膜を成膜してトレンチ4の内部に銅を埋込む。しかる後、基板Wの表面にCMP(化学機械的研磨)を施して平坦化することで、絶縁膜2の内部に銅からなる配線8を形成する。そして、この配線(銅)8の表面に、例えば無電解めっきによって得られる、CoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を選択的に形成して配線8を保護する。
【0005】
一般的な無電解めっきによって、このようなCoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を配線8の表面に選択的に形成する工程を説明する。先ず、CMP処理を施した半導体ウェハ等の基板Wを、例えば液温が25℃で、0.5MのH2SO4等の酸溶液中に、例えば1分程度浸漬させて、絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去する。そして、基板Wの表面を純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば、PdCl2/H2SO4混合溶液中に基板Wを1分程度浸漬させ、これにより、配線8の表面に触媒としてのPdを付着させて配線8の露出表面を活性化させる。
【0006】
次に、基板Wの表面を純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば液温が25℃で、20g/LのNa3C6H5O7・2H2O(クエン酸ナトリウム)等の溶液中に基板Wを浸漬させて配線8の表面に中和処理を施す。そして、基板Wの表面を純水等で洗浄(リンス)した後、例えば液温が80℃のCoWPめっき液中に基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施し、しかる後、基板Wの表面を超純水等の洗浄液で洗浄する。これによって、配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9を選択的に形成して配線8を保護する。
【0007】
無電解めっきによって、CoWP合金からなる保護膜(蓋材)を形成する際には、前述のように、配線の表面に、例えばPd等の触媒を付与する触媒付与処理が施される。また絶縁膜上に保護膜が形成されることを防止するため、絶縁膜上に残った銅等からなるCMP残さを除去する必要があり、これは、一般にH2SO4やHClなどの無機酸を使用して行われる。一方、無電解めっき液は、一般にアルカリ溶液から構成されており、このため、めっき処理の直前に中和工程を入れてめっきプロセスを安定化させることが必要となり、工程が多くなって、各工程における処理槽の数も多くなる。この結果、スループットが低下するばかりでなく、各工程のプロセス管理が煩雑になり、しかも、装置が大きくなって、クリーンルーム内の設置スペースを広く占拠しクリーンルームのコストの増大に繋がってしまう。
【0008】
これは、一つの基板処理ユニットで異なる処理液を使用した処理を行うことで、基板処理のプロセス全体におけるスペースの削減及び基板搬送に必要なエネルギの削減に繋げることができるが、異なる処理液を使用した処理を一つの処理ユニット内で行うと、処理液の混合及び希釈等を回避することが困難となるからである。
【0009】
一方、安定的且つ均一な基板のめっき(例えば無電解めっき)処理、或いは安定的且つ均一な基板のめっき前処理や洗浄処理等を行う方法として、基板を処理液に浸漬させてその表面(被処理面)に処理液を接触させるディップ処理方式が一般に用いられている。このディップ処理方式を採用した基板処理ユニットにあっては、表面の周縁部をシールして基板を保持する基板保持装置が一般に備えられ、これによって、基板を基板保持装置で保持し処理液に浸漬させて処理する際に、処理液が基板表面の周縁部、更には裏面側に回り込むことを防止するようにしている。
【0010】
更に、ゴム等の弾性体から構成され、リング状に連続して延びる吸着シール(環状シール)を備え、この吸着シールを基板に向けて押圧して吸着シールの端面を基板の裏面周縁部に全周に亘って密着させ、更に吸着シールの内部を真空吸引することで、基板の裏面周縁部を吸着シールでリング状にシールしつつ吸着して基板を保持するようにした、いわゆる真空吸着方式を採用した基板保持装置が開発されている。
【0011】
基板保持装置にあっては、処理後に基板をヘッドから負荷なく完全にリリースできるようにすることが重要である。従来、例えば、前述の真空吸着方式を採用した基板保持装置にあっては、吸着シール(環状シール)の内部に、N2ガス等の清浄空気を導入し基板に向けて噴射することで、基板をリリースすることが広く行われていた。しかし、N2ガス等の清浄空気を導入したのみでは、ゴム等からなる吸着シールに強固に貼り付いた基板をリリースできないことがあった。このため、清浄空気と共に純水を吸着シールの内部に導入し基板に向けて同時に噴射することで、例え基板がゴム等からなる吸着シールに強固に貼り付いた場合であっても、基板を確実にリリースすることが行われている。
【0012】
しかしながら、このように、清浄空気と共に純水を噴射するようにすると、例えば、真空吸着方式を採用した基板保持装置にあっては、真空引きを行う回路の他に、清浄空気と純水を導入する2つの回路が別途必要となり、内部の回路構成が複雑となるばかりでなく、装置の大型化に繋がってしまう。
【0013】
また、基板保持装置で基板を保持して無電解めっき等の処理を行う際に、基板が変形しないように、基板をできるだけ弱い力で、かつ全面に亘ってより均等に保持して処理の精度を保つことが望まれる。しかし、基板の離脱や脱落を確実に防止するため、基板は、例えば水切り(スピン乾燥)時等、一般に最大の回転速度で回転させながら処理を行っている時でも、離脱や脱落を起こすことのない一定の保持力で吸着または機械的に基板保持装置に保持されて、一連の処理が行われている。このため、基板に局所的な負荷を与えて基板が変形してしまうばかりでなく、基板が吸着シール等に強固に貼り付いて、基板のリリースが困難となる場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板の離脱や脱落を確実に防止しつつ基板を保持して処理ができるようにした基板保持装置及び基板保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の基板保持装置は、基板の裏面周縁部をシールしながら基板を保持する環状シールを備えた回転自在な保持ヘッドを有し、前記保持ヘッドは、基板を保持した状態での該保持ヘッドの回転に伴って、前記環状シールでシールされた基板の裏面側に負圧を発生させる絞り機構を有する。
【0016】
このように、保持ヘッドの回転に伴って、絞り機構を介して、環状シールでシールされた基板の裏面側に負圧を発生させることで、この基板の裏面側に発生した負圧によって、基板に対する保持力を得ることができる。保持ヘッドに設けられる絞り機構の数は、必要とする保持力に合わせて任意に設定される。
【0017】
前記絞り機構は、例えば、前記保持ヘッドで保持した基板の裏面を一体に被覆する被覆体に設けた空気抜き穴と、この空気抜き穴と連通するスロート部を有し、前記保持ヘッドの回転に伴って該スロート部に発生する空気の流れによるベンチュリ効果を利用して前記空気抜き穴の内部を負圧にする。
【0018】
これにより、保持ヘッドの回転速度に比例させて、絞り機構のスロート部に発生する空気の流れの速度を速め、空気抜き穴の内部の圧力(負圧)をより低くすることで、絞り機構による基板に対する保持力を保持ヘッドの回転速度に比例させて高めることができる。
【0019】
前記保持ヘッドは、前記環状シールの内部を真空引きして基板を吸着保持することが好ましい。
前記保持ヘッドは、前記環状シールで保持した基板を保持ヘッドから離れる方向に押圧するプッシャを更に有することが好ましい。
これにより、例え基板が環状シールに強固に貼り付いていても、プッシャの押圧力を利用して基板を環状シールから確実にリリースすることができる。
【0020】
本発明の基板保持方法は、基板の裏面周縁部をリング状の環状シールでシールしながら基板を保持ヘッドで保持し、基板を保持した状態での前記保持ヘッドの回転に伴って、基板の裏面と前記環状シールで区画された基板の裏面側に負圧を発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、無電解めっきによって保護膜を形成した状態を示す断面図である。
【図2】図2は、基板処理装置(無電解めっき装置)の平面配置図である。
【図3】図3は、基板搬送ロボットの斜視図である。
【図4】図4は、基板搬送ロボットの基板を保持させた状態の正面図である。
【図5】図5(a)は、基板搬送ロボットの胴部を伸ばした状態を示す断面図で、図5(b)は、基板搬送ロボットの胴部を縮めた状態の断面図である。
【図6】図6は、仮置台の平面図である。
【図7】図7は、仮置台の正面図である。
【図8】図8は、スプレー処理用カップで内槽の上端開口部を閉塞しながら基板の処理を行っている状態のめっき前処理ユニット(基板処理ユニット)の概要図である。
【図9】図9は、スプレー処理用カップを待避させ、内槽で基板の処理を行っている状態のめっき前処理ユニット(基板処理ユニット)の概要図である。
【図10】図10は、スプレー処理用カップで内槽の上端開口部を閉塞しながら基板の処理を行っている状態の無電解めっきユニット(基板処理ユニット)の概要図である。
【図11】図11は、スプレー処理用カップを待避させ、内槽で基板の処理を行っている状態の無電解めっきユニット(基板処理ユニット)の概要図である。
【図12】図12は、供給ボックスの正面図である。
【図13】図13は、供給ボックスの側断面図である。
【図14】図14は、供給ボックスと容器を示す斜視図である。
【図15】図15は、供給ボックスの系統図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態に係る基板保持装置を示す縦断正面図である。
【図17】図17は、図16に示す基板保持装置の環状ヘッドを示す要部拡大断面図である。
【図18】図18は、図16に示す基板保持装置のプッシャを示す要部拡大断面図である。
【図19】図19は、保持ヘッドの底面図である。
【図20】図20は、保持ヘッドの斜視図である。
【図21】図21は、保持ヘッドの平面図である。
【図22】図22は、図21のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。この実施の形態は、基板に形成した配線の表面に、例えば無電解めっきによる保護膜9(図1参照)を効率よく形成できるようにした無電解めっき装置に適用した例を示している。電解めっき装置やCVD等、他の基板処理装置にも適用できることは勿論である。
【0023】
図2は、基板処理装置(無電解めっき装置)の平面配置図を示す。図2に示すように、この基板処理装置は、例えばスミフボックス等の内部に多数の半導体ウェハ等の基板を収納した搬送ボックス10を着脱自在な矩形状の装置フレーム12を備えている。この装置フレーム12の内部には、中央部に位置して、第1基板搬送ロボット14、仮置台16及び第2基板搬送ロボット18が直列に配置されている。そして、両側に位置して、各一対の洗浄・乾燥ユニット20、めっき後処理ユニット22、めっき前処理ユニット24及び無電解めっきユニット26が配置されている。更に、搬送ボックス10と反対側に位置して、めっき前処理ユニット24に処理液を供給する第1処理液供給部28と、無電解めっきユニット26に処理液を供給する第2処理液供給部30が備えられている。
【0024】
この基板処理装置(無電解めっき装置)は、クリーンルーム内に設置され、装置フレーム12内の圧力は、クリーンルーム内の圧力より高く設定される。これにより、装置フレーム12からクリーンルーム内に空気が流出しないようにしている。また、装置フレーム12の内部には、新鮮な空気の下向きの流れ(ダウンフロー)が形成されている。
【0025】
図3乃至図5は、第1基板搬送ロボット14を示す。なお、第2基板搬送ロボット18も第1基板搬送ロボット14と同様な構成をしている。第1基板搬送ロボット14は、いわゆる固定式ロボットであり、上下方向に伸縮自在な胴部32と、該胴部32の上端に取付けた回転駆動部34と、該回転駆動部34に取付けた水平方向に伸縮自在なロボットアーム36を有している。このロボットアーム36の先端に、水平方向に延びる回転軸38を回転させる反転機構40が取付けられており、この反転機構40の回転軸38に、基板Wの裏面を吸着して基板Wを吸着保持する吸着部42を先端に有するハンド44が連結されている。
【0026】
基板搬送ロボット14,18は、搬送の途中で、例えば、第1基板搬送ロボット14にあっては、基板Wを搬送ボックス10から仮置台16に搬送する間に、反転機構40を介して基板Wをフェースアップからフェースダウンに反転させるようになっており、このため、裏面吸着タイプのハンド44が採用されている。基板搬送ロボット14,18自体に反転機構40を備えることで、反転装置を別途備える必要をなくして、装置としての簡略化を図ることができる。
【0027】
胴部32は、図5に示すように、共に中空の内胴32aと外胴32bを有する、いわゆる入れ子式によって伸縮自在に構成されており、胴部32の底部に、中空の内胴32a及び外胴32bの内部に連通する排気ダクト(排気部)46が接続されて、第1基板搬送ロボット14の内部の空気を、排気ダクト46を通して外部に排気して回収するようになっている。
【0028】
これによって、例えば第1基板搬送ロボット14の胴部32の伸縮による上下動に伴って該基板搬送ロボット14の内部から排気される空気が、特に内胴32aと外胴32bとの間を通過して基板搬送ロボット14の外部に漏れるのを防止し、基板搬送ロボット14の近傍における気流を一定に保って、基板Wがパーティクルによって汚染されるのを防止することができる。
【0029】
図6及び図7は、仮置台16を示す。この仮置台16は、第1基板搬送ロボット14と第2基板搬送ロボット18との間に配置され、第1基板搬送ロボット14及び第2基板搬送ロボット18側の一方向から基板Wの出し入れを行うようになっている。なお、任意の方向から基板を出し入れできるようにしてもよいことは勿論である。このように、基板搬送ロボット14,18の間に、基板を仮置きする仮置台16を配置することで、装置フレーム12内における基板Wの搬送を効率的に行うとともに、基板搬送ロボット14,18として、固定式ロボットを使用できるようにして、装置全体のコスト低減を図ることができる。
【0030】
仮置台16には、上段のドライ用基板仮置部50と、下段のウェット用基板仮置部52が仕切り板54で仕切られて上下に設けられている。ドライ用基板仮置部50は、基板Wの周縁部に沿った位置に仕切り板54に立設した複数の支持ピン56を備え、この支持ピン56の上部に設けたテーパ部を介して基板Wを位置決めしつつ保持する。ウェット用基板仮置部52もほぼ同様に、基板Wの周縁部に沿った位置にベース板58に立設した複数の支持ピン60を備え、この支持ピン60の上部に設けたテーパ部を介して基板Wを位置決めしつつ保持する。
【0031】
仕切り板54の下面には、ウェット用基板仮置部52の支持ピン60で保持した基板Wの表面(上面)に向けて純水を噴霧して該基板Wの乾燥を防止する乾燥防止機構としての純水スプレーノズル62が取付けられている。更に、仕切り板54とベース板58との間には、純水スプレーノズル62から基板Wに向けて噴射された純水が外部に漏れるのを防止するシャッタ63が開閉自在に設けられている。
【0032】
これにより、第1基板搬送ロボット14で保持され搬送された基板Wは、反転された後に、上段のドライ用基板仮置部50の支持ピン56で位置決めされて保持される。一連の処理後に第2基板搬送ロボット18で保持されて搬送された基板Wは、下段のウェット用基板仮置部52の支持ピン60で位置決めされて保持される。そして、基板Wがドライ用基板仮置部50またはウェット用基板仮置部52に保持されたか否かは、図示しないセンサで検知される。なお、ここでは基板Wを第1基板搬送ロボット14が反転させたが、第2基板搬送ロボットが反転させてもよい。
【0033】
図8及び図9は、めっき前処理ユニット24を示す。このめっき前処理ユニット24は、有底円筒状で上下に延びる外槽70と、この外槽70の内部に上下動に配置される基板保持部72と、外槽70の内部に位置して、基板保持部72の下方に配置される内槽74と、外槽70の内部に位置して、内槽74の上端開口部を閉塞自在なスプレー処理用カップ76を有している。
【0034】
基板保持部72は、下記のように、駆動機構を介して上下動し、駆動部の基板回転用モータを介して回転する。更に、基板保持部72は、下面側にリング状の環状シール190(図16参照)を備え、この環状シール190を基板Wの周縁部に圧接させ該周縁部を環状シール190でシールしつつ基板Wを保持するようになっている。これにより、基板保持部72で保持した基板Wの裏面側に処理液が回り込むことが防止される。
【0035】
外槽70の下部には、外槽70の内部に流入した処理液を外部に排出する排液ライン78に繋がるドレインポート80が設けられている。更に、外槽70の下部側面において、内部にダンパを備えた排気ダクト82に接続され、これによって、外槽70の気流を調整する気流調整部が構成されている。つまり、外槽70内へのクリーンエアの送り込み量、及び外槽70内からの排気量を管理(制御)して、外槽70内の気流を管理する。そして、この例では、外槽70内の気流をダウンフローに管理することで、外槽70外への薬液雰囲気の漏れを防止するとともに、外槽70内に乱流により気流の淀み等が局所的に生じて、これが外槽70内での他の処理に影響を与えてしまうことを防止するように構成されている。
【0036】
内槽74の内部には、この例では、スプレー処理によって基板の薬液処理を行う薬液処理部84が備えられている。つまり、この薬液処理部84は、薬液を上向きに噴霧する複数の薬液スプレーノズル86を上面に取付けたノズル盤88と、このノズル盤88に薬液を供給する薬液供給ライン90を有している。これにより、基板保持部72で保持した基板Wの下面(表面)に向けて、薬液スプレーノズル86から薬液を噴霧することで、基板Wの処理を行う。
【0037】
内槽74の底部には、内槽74内に流入した薬液を外部に排出する排液ライン92に繋がるドレインポート94が設けられている。この例では、この排液ライン92は、この内部にフィルタ96及び送液ポンプ98が介装されて薬液タンク100に繋がっている。また薬液供給ライン90は、その内部に送液ポンプ102とフィルタ104が介装されて、薬液タンク100に繋がっている。これにより、薬液を循環させて使用する薬液循環ライン106が構成されている。
【0038】
更に、この例では、薬液タンク100内の薬液の温度を一定に管理する薬液温度管理部108と、薬液タンク100内の薬液をサンプリングして分析し、不足する成分を補給して、薬液タンク100内の薬液の組成を一定にする薬液分析兼補給部109が備えられている。これによって、薬液タンク100内の薬液の温度及び組成を一定にし、薬液供給ライン90から温度及び組成が一定の薬液を供給しつつ、循環使用することができる。薬液スプレーノズル86から噴霧される薬液の流量は、送液ポンプ102を介して制御される。
【0039】
内槽74の上端開口部を閉塞自在に覆うスプレー処理用カップ76の上面には、ノズル盤110が取付けられ、このノズル盤110は、この例では、薬液(第1処理液)を供給する薬液供給ライン112と、純水(第2処理液)を供給する純水供給ライン114が繋がっており、内部に、薬液供給ライン112に連通して薬液を噴霧する薬液スプレーノズル116と、純水供給ライン114に連通して純水を噴霧する純水スプレーノズル118の2種類のスプレーノズルが直線状に交互に配置されている。
【0040】
これにより、薬液供給ライン112から供給され薬液スプレーノズル116から噴霧される薬液等の処理液で処理した基板を、処理直後に、純水供給ライン114から供給され純水スプレーノズル118から噴霧される純水で洗浄(リンス)することができる。しかも、純水は、一般に、他の処理液と混合しても、処理等が一般に問題とならない。なお、この例では、薬液スプレーノズル116から噴霧される薬液を、回収することなく、使い捨てするようにしているが、前述の内槽74内に設けられる薬液処理部84と同様に、薬液を回収し、循環させて再使用するようにしてもよい。
【0041】
次に、めっき前処理ユニット24の使用例を説明する。先ず、図8に示すように、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆った状態で、基板Wを保持した基板保持部72をスプレー処理用カップ76の上方の所定位置(第1処理位置)まで下降させる。そして、この例では、薬液(第1処理液)として、H2SO4等の酸溶液からなる前洗浄液を使用し、スプレー処理用カップ76の薬液スプレーノズル116から薬液(H2SO4等の酸溶液)を基板Wに向けて噴霧し、しかる後、スプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
【0042】
そして、図9に示すように、スプレー処理用カップ76を内槽74の側方の待避位置に待避させて内槽74の上端開口部を開放させ、基板Wを保持した基板保持部72を薬液処理部84の上方の所定位置(第2処理位置)まで下降させる。そして、この例では、薬液として、PdCl2とH2SO4との混合液等の触媒付与液を使用し、薬液処理部84の薬液スプレーノズル86から薬液(PdCl2とH2SO4との混合液等の触媒付与液)を基板Wに向けて噴霧する。
【0043】
次に、基板Wを保持した基板保持部72を所定位置(第1処理位置)まで上昇させた後、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆い、このスプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。以上ようにして、前処理を施した基板を次工程に搬送する。
【0044】
これらの処理時に、外槽70の内部には、図8及び図9に示すように、層流のダウンフローの空気の流れが生じ、この空気の大部分は排気ダクト82を通して外部に排気される。これによって、外槽70外への薬液雰囲気の漏れを防止し、外槽70内に乱流により気流の淀み等が局所的に生じて、これが外槽70内での他の処理に影響を与えてしまうことを防止することができる。
【0045】
しかも、基板保持部72で基板Wを保持したまま、内槽74内での基板Wの薬液処理と、スプレー処理用カップ76のスプレーノズル116,118から噴霧される少なくとも2種類以上の処理液による基板Wの処理を個別に行うことができる。内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で閉塞した状態で該スプレー処理用カップ76のスプレーノズル116,118から処理液を噴霧して該処理液による基板Wの処理を行うことで、スプレーノズル116,118から噴霧された処理液は、内槽74の内部に流れ込むことなく、排液ライン78を通して外槽70から排出される。これによって、スプレー処理用カップ76のスプレーノズル116,118から噴霧された、薬液を含む処理液が、内槽74の薬液処理部84で使用される薬液と混合してしまうことが防止される。
【0046】
図10及び図11は、無電解めっきユニット26を示す。この無電解めっきユニット26の前記めっき前処理ユニット24と異なる点は、以下の通りである。
【0047】
つまり、この無電解めっきユニット26の内槽74の内部には、浸漬処理によって基板の薬液処理を行う薬液処理部120が備えられている。この薬液処理部120は、めっき液等の薬液を溜めて該薬液に基板保持部72で保持した基板Wを浸漬させる浴槽122を有している。そして、めっき液等の薬液を保持する薬液タンク100から延びる薬液供給ライン90は、浴槽122の底部に設けられた薬液供給部124に接続され、排液ライン92は、浴槽122の周囲に設けられて、浴槽122の周壁をオーバーフローした薬液を回収する薬液回収溝126に連通し、これにより、薬液を循環させて使用する薬液循環ライン106が構成されている。
【0048】
更に、この例では、内槽74の浴槽122に溜められる薬液の液面のやや上方に位置して、純水供給ライン127に接続され、この純水供給ライン127を通して供給された純水をやや上方に向けて噴霧する純水スプレーノズル128が設けられている。
【0049】
次に、無電解めっきユニット26の使用例を説明する。先ず、図10に示すように、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆った状態で、基板Wを保持した基板保持部72をスプレー処理用カップ76の上方の所定位置(第1処理位置)まで下降させる。そして、この例では、薬液(第1処理液)として、クエン酸ナトリウム等の溶液からなる触媒付与後処理液を使用し、スプレー処理用カップ76の薬液スプレーノズル116から薬液(クエン酸ナトリウム等の溶液からなる触媒付与後処理液)を基板Wに向けて噴霧し、しかる後、スプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
【0050】
次に、浴槽122内を薬液(めっき液)で満たしつつ、該薬液を一定の温度及び組成に調製して循環させた状態で、図11に示すように、スプレー処理用カップ76を内槽74の側方の待避位置に待避させて内槽74の上端開口部を開放させ、基板Wを保持した基板保持部72を下降させて、基板Wを浴槽122内の薬液(めっき液)に浸漬させる。これによって、基板Wの表面に無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。この薬液(めっき液)の組成は、例えば以下の通りである。
【0051】
めっき液の組成
・CoSO4・7H2O:23g/L
・Na3C6H5O7・2H2O:145g/L
・(NH4)2SO4:31g/L
・NaH2PO2・H2O:18g/L
・Na2WO4・2H2O:10g/L
・pH:8.8(NaOH水溶液で調整)
【0052】
そして、基板Wを薬液の液面から引き上げた後、純水スプレーノズル128から基板Wに向けて純水を噴霧し、これによって、基板Wの表面に付着した薬液(めっき液)を純水に置換させて無電解めっき反応を停止させる。これにより、基板Wを薬液(めっき液)から引き上げた直後に無電解めっき反応を迅速に停止させて、めっき膜にめっきむらが発生することを防止する。しかも、例えば10〜20ccの純水を使用することで、蒸発した水分をこの純水で補給して、薬液の濃度を一定に保つようにすることができる。
【0053】
次に、基板Wを保持した基板保持部72を所定位置(第1処理位置)まで上昇させた後、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆い、このスプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。以上のようにして、無電解めっきを施した基板を次工程に搬送する。
【0054】
これらの処理時に、外槽70の内部には、図10及び図11に示すように、層流のダウンフローの空気の流れが生じ、この空気は排気ダクト82を通して外部に排気される。また、スプレー処理用カップ76のスプレーノズル116,118から噴霧される少なくとも2種類以上の処理液が、薬液(めっき液)に混入することが防止される。
【0055】
図2に示すように、基板処理装置の第1処理液供給部28及び第2処理液供給部30には、原液または添加剤を貯槽した容器を着脱自在に保持する供給ボックス130,132が備えられている。この第1処理液供給部28の供給ボックス130は、例えば、めっき前処理ユニット24で使用される、H2SO4等の酸溶液からなる薬液(第1処理液)を調製するためのものであり、第2処理液供給部30の供給ボックス132は、無電解めっきユニット26で使用される、クエン酸ナトリウム等の溶液からなる薬液(第2処理液)を調製するためのものである。これらは、同じ構成であるので、ここでは、一方の供給ボックス130を説明する。
【0056】
図12乃至図14は、供給ボックス130を示す。この供給ボックス130は、この例では、把手133を介して開閉自在なカバー134を有しており、内部に原液等を貯蔵し手で持ち運びが可能なボトル等からなる容器136は、カバー134を開いた後、載置台138の上に載置されて、供給ボックス130内に収容される。載置台138には、容器136の有無、及び容器136内の原液等の容積を検知するロードセル等の重量測定器が設置されていて、容器136内の原液等が不足した時に警報が発せられる。
【0057】
供給ボックス130の内部には、ポンプ140、背圧弁142(図15参照)及び流量計144(図15参照)が設置され、このポンプ140の駆動に伴って、容器136の内部から、所定圧の原料等が所定の流量だけ、供給管146を通して供給される。そして、この例では、図15に示すように、供給ボックス130の容器136から供給された原料等は、供給管146を通して薬液タンク148に供給され、この薬液タンク148に、バルブ150及び流量計152を通して供給される純水で薄められて、所定の濃度の薬液(第1処理液)が調製される。
【0058】
このように、めっき前処理ユニット24に供給される薬液(第1処理液)の成分を装置内で管理することで、めっき前処理ユニット24の処理性能を一定に保つことができる。しかも、容器136として、持ち運びが可能なボトルを使用することで、容器(ボトル)の着脱を容易かつ簡易に行うことができる。
なお、このことは、無電解めっきユニット26にあっても同様である。
【0059】
めっき前処理ユニット24及び無電解めっきユニット26に備えられている基板保持部72を有する、発明の実施の形態の基板保持装置180を図16に示す。図16に示すように、基板保持装置180は、基板保持部72と駆動部220を有している。基板保持部72は、下面が開放された略円筒状の基板支持部182と、この基板支持部182の内部に上下動自在に収納した略円形の保持ヘッド184を有している。駆動部220は、保持ヘッド184を回転駆動する基板回転用モータ221と、基板支持部182を上下の所定位置に昇降させる昇降用シリンダ222とを具備している。保持ヘッド184は、基板回転用モータ221によって回転駆動され、基板支持部182は、昇降用シリンダ222によって上下動される。つまり、保持ヘッド184は回転のみで上下動せず、基板支持部182は保持ヘッド184と一体となって回転し、保持ヘッド184と相対的に上下動する。
【0060】
基板支持部182は、その下端部に、内方にリング状に突出して基板Wを仮置きする基板仮置き部185を有しており、基板支持部182の周壁には、基板支持部182の内部に基板Wを挿入する基板挿入口186が設けられている。
【0061】
保持ヘッド184は、内部に半径方向に延びる真空兼純水供給路188aを設けた円板状の被覆体188を有しており、この被覆体188の下面周縁部には、リング状で下面に円周方向に連続して延びる円周溝190a(図17参照)を有する環状シール190が取付けられている。そして、真空兼純水供給路188aは、被覆体188に設けたジョイント192を通して、真空源194から延びる真空ライン196と純水供給源198から延びる純水供給ライン200の一方に選択的に接続され、環状シール190の内部に設けた貫通孔190bを通して円周溝190aに連通している。これによって、基板Wを環状シール190で吸着保持する基板保持機構202と、この環状シール190で吸着保持した基板Wをリリースする基板リリース機構204が構成されている。
【0062】
つまり、環状シール190の下面を基板Wの裏面(上面)外周縁に圧接させ、基板保持機構202を構成する真空ライン200を介して、環状シール190の円周溝190aの内部を真空引きすることで、環状シール190で基板Wを吸着保持し、基板リリース機構204を構成する純水供給ライン200を介して、環状シール190の円周溝190aの内部に純水を導入し基板Wに向けて噴出することで、環状シール190で吸着保持した基板Wをリリースする。
【0063】
このように、水圧を用いて保持ヘッド184の環状シール190で吸着保持した基板Wをリリースすることで、例え基板Wがゴム等からなる環状シール190に強固に貼り付いた場合であっても、基板Wを環状シール190から確実にリリースすることができる。しかも、水圧のみを使用して基板Wをリリースすることで、清浄空気を導入する回路を不要となすことができる。なお、この例では、純水を使用しているが、純水以外の液体を使用してもよいことは勿論である。
【0064】
また、基板リリース機構204を、環状シール190の内部に加圧水を導入して基板Wをリリースするように構成することにより、加圧水を導入する区域を別途設ける必要をなくして、構造の更なる簡素化を図ることができる。
【0065】
環状シール190は、例えばゴム等からなる弾性体で構成され、図17に示すように、その下端部を被覆体188の下面から下方に突出させて該被覆体188の下面に取付けられており、前述のようにして、基板Wを吸着保持した際、基板Wの裏面(環状シール190によってリング状にシールされた内側部分)への処理液(めっき液)の浸入を防止するシールの役目を果たす。なお環状シール190の形状については、図に示す形状に限定されず、所定の円周幅にてリング状に吸着するものであればどのような形状及び構造でも構わないことは勿論である。
【0066】
被覆体188の内部には、半径方向に延びる複数の真空兼気体供給路188bが更に設けられており、この被覆体188の下面の環状シール190で囲まれた領域内には、図19に示すように、円周方向に沿って複数(図示では6個)のプッシャ206が配置されている。そして、各真空兼気体供給部188bは、被覆体188に設けたジョイント208を通して、真空源194から延びる真空ライン210と気体供給源212から延びる気体供給ライン214の一方に選択的に接続され、各プッシャ206の背面に連通している。これによって、環状シール190で吸着保持した基板Wをリリースする補助基板リリース機構216が構成されている。
【0067】
つまり、プッシャ206は、図18に詳細に示すように、例えばフッ素樹脂製の合成ゴム材料等の伸縮可能な弾性材によって形成され、中空で背面側に開口した伸縮自在なベローズ部206aと円柱状の先端(下端)押圧部206bとを有し、フランジ部206cを介して被覆体188の下面に気密的に取付けられている。そして、この押圧部206bの下面は、環状シール190の下面がなす平面よりも若干下方に位置している。これにより、基板Wを環状シール190で保持する際には、真空ライン210を介して真空兼気体供給路188bの内部を真空引きし、ベローズ部206aを収縮させて、押圧部206bを基板Wの保持を阻害することのない上方位置まで持ち上げる。そして、環状シール190で保持した基板Wをリリーする際には、気体供給ライン214を介して真空兼気体供給路188bの内部に気体を導入し、ベローズ部206aを伸展させ押圧部206bを下方に押下げて、基板Wを下方に押圧する。
【0068】
このように、必要に応じて、補助基板リリース機構216を備えることで、例え基板Wが環状シール190の下面に強固に貼り付いていても、プッシャ206の押圧力を利用して基板Wを環状シール190から確実にリリースすることができる。
【0069】
更に、この例では、図20乃至図22に示すように、保持ヘッド184には、複数(図示では3個)の絞り機構260が設けられている。この絞り機構260は、基板Wを保持した保持ヘッド184の回転に伴って、環状シール190でシールされた基板Wの裏面側、つまり基板Wの裏面と被覆体188で挟まれ、環状シール190で囲まれた空間に負圧を発生させるようになっている。
【0070】
この絞り機構260は、被覆体188に設けられ、環状シール190で保持した基板Wの裏面と被覆体188で挟まれ、環状シール190で囲まれた空間内の空気を逃す空気抜き穴188cと、この空気抜き穴188cの上方を覆う蓋体262と、保持ヘッド184に同心状に固定した作動板264とを有している。そして、各蓋体262と作動板264との間に、図21及び図22に示すように、両者が互いに近接して流路断面積が最小となるスロート部266が設けられている。これによって、保持ヘッド184の回転に伴って、図21に矢印で示すように、このスロート部266を通過する空気の流れが発生し、この空気の流れの速度は、保持ヘッド184の回転速度に比例して増大する。
【0071】
一方、空気抜き穴188cの上面を覆う蓋体262には、空気抜き穴188cの内部に連通し、スロート部266に対面する位置に開口する空気流路262aが設けられている。これによって、この絞り機構260は、ベンチュリ効果を利用して、空気抜き穴188cの内部から基板Wの裏面側を負圧にするようになっている。
【0072】
つまり、前述のように、保持ヘッド184の回転に伴ってスロート部266を通過する空気の流れが発生すると、この空気の流れによって、空気抜き穴188cの内部の空気が空気流路262aを通って外部に排出され、これによって、空気抜き穴188cの内部から基板Wの裏面側に負圧が発生し、しかもこの負圧の大きさは、保持ヘッド184の回転速度に比例する。
【0073】
このように、保持ヘッド184の回転に伴って、絞り機構260を介して、環状シール190でシールされた基板の裏面側、つまり基板Wの裏面と被覆体188で挟まれ、環状シール190で囲まれた空間に負圧を発生させることで、この基板Wの裏面側に発生した負圧によって、基板Wに対する保持力を得ることができる。これによって、基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板に対する十分な保持力を確保することができる。なお、保持ヘッド184に設けられる絞り機構260の数は、必要とする保持力に合わせて任意に設定される。
【0074】
しかも、保持ヘッド184の回転速度に比例させて、絞り機構260のスロート部266に発生する空気の流れの速度を速め、この空気の流れによるベンチュリ効果を利用して空気抜き穴188cの内部を負圧にすることで、絞り機構260による基板Wに対する保持力を保持ヘッド184の回転速度に比例させて高めることができる。
【0075】
次に、基板保持装置180の動作を説明する。
先ず、図16に示すように、保持ヘッド184を回転させることなく、基板支持部182を最も下の位置(基板受渡し位置)に移動させ、ロボットハンド(図示せず)で吸着された基板Wを基板保持部72の内部に挿入する。そして、ロボットハンドの吸着を解除することで、基板Wを基板支持部182の基板仮置き部185の上に載置する。このとき、基板Wの表面(被処理面)は、下を向いている。そして、ロボットハンドを基板保持部72から抜き出す。次に、基板支持部182を上昇させ、基板Wの裏面(上面)周面部に環状シール190の下端面を当接させ、更に上昇させて密着させる。
この時、補助基板リリース機構216のプッシャ206を上方に持ち上げて、このプッシャ206によって基板Wの保持が阻害されないようにしておく。
【0076】
この状態で、基板保持機構202を介して、環状シール190の円周溝190a内を真空引きすることで、基板Wの裏面周縁部を環状シール190に吸着して基板Wを保持する。このとき吸引力は、環状シール190の基板Wに接触する部分の内部の円周溝190a内のみに発生する。これによって、基板Wの裏面の環状シール190によって囲まれる部分は、環状シール190によるシールによって基板Wの表面(被処理面)から遮断される。
【0077】
この例によれば、基板Wの外周をリング状の小さな幅(径方向)の環状シール190にて吸着することにより、吸着幅を極力小さく抑えて、基板Wへの影響(撓み等)をなくすことができる。具体的には、環状シール190の幅は、非常に狭く、環状シール190が基板Wに接触する部分は、例えば基板Wの外周からその内側5mmまでの間の部分である。基板Wの裏面の外周部のみが環状シール190と接触するので、基板処理時の処理液の温度が不必要に環状シール190との接触面を伝達して逃げる恐れもなくなる。
【0078】
そして、例えば前述の無電解めっきユニット26に備えられている基板保持部72のように、基板保持部72で保持した基板Wを処理液に浸漬させる浸漬処理を行う時には、基板支持部182を少し(例えば数mm)下降させて基板Wを基板仮置き部185から引き離す。この状態で、基板保持装置180全体を下降させ、例えば図示しないめっき液等の処理液中に浸漬させ、必要に応じて、保持ヘッド184を基板Wと共に回転させることで、基板の処理を行う。この時、基板Wは、その裏面で吸着保持されているだけなので、基板Wの表面全域及びエッジ部分についても全て処理液中にディップして、その処理を行うことが可能となる。
【0079】
更に、基板支持部182が下降して基板Wから離れ、基板Wは、その裏面のみが吸着して保持されているだけなので、基板Wを処理液に浸漬しても基板Wに対する処理液の流れが阻害されることがなく、基板の表面全域において均一な処理液の流れが形成される。またこの処理液の流れとともに、基板Wの表面上に巻き込まれた気泡や、処理によって発生した気泡を基板Wの表面上から上方に排出することができる。これによって、めっき等の処理に悪影響を及ぼす不均一な処理液の流れや気泡の影響を解決し、エッジを含んだ基板表面全域に均一なめっき等の処理を行うことが可能となる。また基板Wの裏面のリング状に真空吸着した部分の内側は、環状シール190によるシールによって表面から遮断されるので、処理液が基板Wの裏面の環状シール190の内側へ浸入するのを防ぐことができる。
【0080】
そして、例えば純水によるリンス(洗浄)及びリンス後の液切り(スピン乾燥)を連続して行う時には、基板保持装置180全体を上昇させて基板Wを処理液から引き上げ、保持ヘッド184を基板Wと共に回転させながら、基板Wに向けて純水を噴射し、次に、保持ヘッド184を基板Wと共に高速で回転させて基板に付着した純水の液切り(スピン乾燥)を行う。
【0081】
この時、基板Wは、環状シール190の円周溝190aの内部を吸引することによる吸引力の他に、絞り機構260によって発生する、基板Wの裏面側の負圧を利用した保持力で保持されており、しかもこの絞り機構260により保持力は、保持ヘッド184の回転速度に比例する。このため、環状シール190の円周溝190aの内部を吸引することによる吸引力を弱くしても、基板の十分な保持力を確保して、基板の脱落を防止することができる。
【0082】
つまり、従来、環状シール190の円周溝190aの内部を吸引することによる吸引力は、一般に基板を高速で回転させても基板の脱落を確実に防止できる大きさに設定されていたが、この例によれば、この吸引力を弱くしても、絞り機構260により保持力を利用することで、基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板に対する十分な保持力を得ることができる。
【0083】
基板Wの一連の処理が終了した後、基板支持部182を上昇させて基板Wを基板仮置き部185の上に載置し、基板リリース機構204を介して、環状シール190の円周溝190aの内部に純水を導入し基板Wに向けて噴出するとともに、補助基板リリース機構216を介して、プッシャ206の背面側に気体を導入し該プッシャ206内を加圧し、その押圧部206bを下方に突出させて、基板Wをその裏面から押圧する。同時に、基板支持部182を下降させることで、基板Wを環状シール190から引き離し、さらに基板支持部182を図16に示す位置まで下降させる。そして、基板保持部72の内部にロボットハンドを挿入して基板Wを外部に引き出す。
【0084】
このように環状シール190の円周溝190aから基板Wに向けて液体を噴出し、更に必要に応じて、プッシャ206の押圧部206bによって基板Wの裏面を押圧することで、例えゴム等の弾性体で形成されている環状シール190に基板Wが強固に貼り付いていても、環状シール190の円周溝190a内に導入される純水の加圧力と、必要に応じたプッシャ206の押圧部206bによる基板Wの裏面の押圧によって、基板Wを容易且つ確実に環状シール190からリリースすることができる。
【0085】
この基板保持装置によれば、水圧を用いて保持ヘッドで保持した基板をリリースすることで、例え基板がゴム等からなる環状シールに強固に貼り付いた場合であっても、基板を環状シールから確実にリリースして、基板の脱着をスムーズに行うことができる。しかも、水圧のみを使用して基板をリリースすることで、清浄空気を導入する回路を不要となし、これによって、回路構成を単純化するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0086】
また、基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板を保持する基板保持ヘッドに設けた絞り機構を介して基板に対する保持力を得るようにすることで、基板が局所的に変形したり、基板が吸着シール等に強固に貼り付いて、基板のリリースが困難となったりすることを防止することができる。
【0087】
次に、この無電解めっき装置(基板処理装置)による一連の無電解めっき処理について説明する。なお、この例では、図1に示すように、CoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を選択的に形成して配線8を保護する場合について説明する。
【0088】
先ず、表面に配線8を形成した基板W(図1参照、以下同じ)を該基板Wの表面を上向き(フェースアップ)で収納した搬送ボックス10から、1枚の基板Wを第1搬送ロボット14で取り出して仮置台16のドライ用基板仮置部50に搬送し該ドライ用基板仮置部50で保持する。この仮置台16のドライ用基板仮置部50に保持された基板Wを、第2搬送ロボット18でめっき前処理ユニット24に搬送する。なお、基板を第1搬送ロボット14または第2搬送ロボット18によってフェースアップからフェースダウンに反転させる。
【0089】
めっき前処理ユニット24では、基板保持部72で基板Wをフェースダウンで保持して、基板Wの表面に先ず前洗浄を行う。つまり、図8に示すように、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆った状態で、基板Wを保持した基板保持部72をスプレー処理用カップ76の上方の所定位置(第1処理位置)まで下降させ、H2SO4等の酸溶液からなる前洗浄液をスプレー処理用カップ76の薬液スプレーノズル116から基板Wに向けて噴霧して、絶縁膜2(図1参照)の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去し、しかる後、スプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
【0090】
次に、図9に示すように、スプレー処理用カップ76を内槽74の側方の待避位置に待避させて内槽74の上端開口部を開放させ、基板Wを保持した基板保持部72を薬液処理部84の上方の所定位置(第2処理位置)まで下降させた後、PdCl2とH2SO4との混合液等の触媒付与液を薬液処理部84の薬液スプレーノズル86から基板Wに向けて噴霧する。これにより、配線8の表面に触媒としてのPdを付着させ、つまり配線8の表面に触媒核(シード)としてのPd核を形成して、配線8の表面配線の露出表面を活性化させる。
【0091】
次に、基板Wを保持した基板保持部72を所定位置(第1処理位置)まで上昇させた後、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆い、このスプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
第2基板搬送ロボット18は、めっき前処理後の基板をめっき前処理ユニット24の基板保持部72から受け取り、電解めっきユニット26の基板保持部72に受け渡す。
【0092】
無電解めっきユニット26は、基板Wを基板保持部72でフェースダウンで保持して、基板Wの表面に、先ず、薬液処理を行う。つまり、図10に示すように、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆った状態で、基板Wを保持した基板保持部72をスプレー処理用カップ76の上方の所定位置(第1処理位置)まで下降させ、クエン酸ナトリウム等の溶液からなる触媒付与後処理液をスプレー処理用カップ76の薬液スプレーノズル116から基板Wに向けて噴霧して、配線8の表面に中和処理を施し、しかる後、スプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
【0093】
次に、図11に示すように、スプレー処理用カップ76を内槽74の側方の待避位置に待避させて内槽74の上端開口部を開放させ、基板Wを保持した基板保持部72を下降させて、基板Wを浴槽122内の薬液(めっき液)に浸漬させ、これによって、無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。つまり、例えば、液温が80℃のCoWPめっき液中に、基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。
【0094】
そして、基板Wを薬液の液面から引き上げた後、純水スプレーノズル128から基板Wに向けて純水を噴霧し、これによって、基板Wの表面の薬液を純水に置換させて無電解めっきを停止させる。
【0095】
次に、基板Wを保持した基板保持部72を所定位置(第1処理位置)まで上昇させた後、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆い、このスプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。これによって、配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9(図1参照、以下同じ)を選択的に形成して配線8を保護する。
【0096】
次に、無電解めっき処理後の基板Wを、第2基板搬送ロボット18で、例えばロール洗浄ユニットからなるめっき後処理ユニット22に搬送し、ここで基板Wの表面に付着したパーティクルや不要物をロール状ブラシで擦って取り除くめっき後処理を行う。この搬送の過程で、基板を、フェースダウンからフェースアップに反転させる。しかる後、この基板Wを第2基板搬送ロボット18で仮置台16のウェット用基板仮置部52に搬送し該ウェット用基板仮置部52で保持する。この保持中に、スプレーノズル62から純水を基板Wに向けて噴霧することで、基板Wの乾燥を防止する。
【0097】
第1基板搬送ロボット14は、仮置台16のウェット用基板仮置部52から基板Wを取り出し、例えばスピンドライユニットからなる洗浄・乾燥ユニット20に搬送し、ここで基板Wの表面の化学洗浄及び純水洗浄を行って、スピン乾燥させる。このスピン乾燥後の基板Wを第1搬送ロボット14で搬送ボックス10内に戻す。
【0098】
なお、この例では、保護膜9としてCoWB合金を使用しているが、保護膜9として、CoB、NiBまたはNiWBからなる保護膜を形成するようにしてもよい。また、配線材料として、銅を使用した例を示しているが、銅の他に、銅合金、銀、銀合金、金及び金合金等を使用してもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面(被処理面)をめっき液やその他の処理液によって処理する際に用いて好適な基板保持装置及び基板保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、トレンチ及びコンタクトホールに金属(導電体)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されつつある。これは、層間絶縁膜に予め形成したトレンチやコンタクトホールに、アルミニウム、近年では銅や銀等の金属を埋込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
この種の配線、例えば配線材料として銅を使用した銅配線にあっては、平坦化後、銅からなる配線の表面が外部に露出しており、配線(銅)の熱拡散を防止したり、例えばその後の酸化性雰囲気の絶縁膜(酸化膜)を積層して多層配線構造の半導体装置を作る場合等に、配線(銅)の酸化を防止したりするため、Co合金やNi合金等からなる保護層(蓋材)で露出配線の表面を選択的に覆って、配線の熱拡散及び酸化を防止することが検討されている。このCo合金やNi合金等は、例えば無電解めっきによって得られる。
【0004】
例えば、図1に示すように、半導体ウェハ等の基板Wの表面に堆積したSiO2やlow−k材膜等からなる絶縁膜(層間絶縁膜)2の内部に微細な配線用凹部としてのトレンチ4を形成し、表面にTaN等からなるバリア層6を形成した後、例えば、銅めっきを施して、基板Wの表面に銅膜を成膜してトレンチ4の内部に銅を埋込む。しかる後、基板Wの表面にCMP(化学機械的研磨)を施して平坦化することで、絶縁膜2の内部に銅からなる配線8を形成する。そして、この配線(銅)8の表面に、例えば無電解めっきによって得られる、CoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を選択的に形成して配線8を保護する。
【0005】
一般的な無電解めっきによって、このようなCoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を配線8の表面に選択的に形成する工程を説明する。先ず、CMP処理を施した半導体ウェハ等の基板Wを、例えば液温が25℃で、0.5MのH2SO4等の酸溶液中に、例えば1分程度浸漬させて、絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去する。そして、基板Wの表面を純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば、PdCl2/H2SO4混合溶液中に基板Wを1分程度浸漬させ、これにより、配線8の表面に触媒としてのPdを付着させて配線8の露出表面を活性化させる。
【0006】
次に、基板Wの表面を純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば液温が25℃で、20g/LのNa3C6H5O7・2H2O(クエン酸ナトリウム)等の溶液中に基板Wを浸漬させて配線8の表面に中和処理を施す。そして、基板Wの表面を純水等で洗浄(リンス)した後、例えば液温が80℃のCoWPめっき液中に基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施し、しかる後、基板Wの表面を超純水等の洗浄液で洗浄する。これによって、配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9を選択的に形成して配線8を保護する。
【0007】
無電解めっきによって、CoWP合金からなる保護膜(蓋材)を形成する際には、前述のように、配線の表面に、例えばPd等の触媒を付与する触媒付与処理が施される。また絶縁膜上に保護膜が形成されることを防止するため、絶縁膜上に残った銅等からなるCMP残さを除去する必要があり、これは、一般にH2SO4やHClなどの無機酸を使用して行われる。一方、無電解めっき液は、一般にアルカリ溶液から構成されており、このため、めっき処理の直前に中和工程を入れてめっきプロセスを安定化させることが必要となり、工程が多くなって、各工程における処理槽の数も多くなる。この結果、スループットが低下するばかりでなく、各工程のプロセス管理が煩雑になり、しかも、装置が大きくなって、クリーンルーム内の設置スペースを広く占拠しクリーンルームのコストの増大に繋がってしまう。
【0008】
これは、一つの基板処理ユニットで異なる処理液を使用した処理を行うことで、基板処理のプロセス全体におけるスペースの削減及び基板搬送に必要なエネルギの削減に繋げることができるが、異なる処理液を使用した処理を一つの処理ユニット内で行うと、処理液の混合及び希釈等を回避することが困難となるからである。
【0009】
一方、安定的且つ均一な基板のめっき(例えば無電解めっき)処理、或いは安定的且つ均一な基板のめっき前処理や洗浄処理等を行う方法として、基板を処理液に浸漬させてその表面(被処理面)に処理液を接触させるディップ処理方式が一般に用いられている。このディップ処理方式を採用した基板処理ユニットにあっては、表面の周縁部をシールして基板を保持する基板保持装置が一般に備えられ、これによって、基板を基板保持装置で保持し処理液に浸漬させて処理する際に、処理液が基板表面の周縁部、更には裏面側に回り込むことを防止するようにしている。
【0010】
更に、ゴム等の弾性体から構成され、リング状に連続して延びる吸着シール(環状シール)を備え、この吸着シールを基板に向けて押圧して吸着シールの端面を基板の裏面周縁部に全周に亘って密着させ、更に吸着シールの内部を真空吸引することで、基板の裏面周縁部を吸着シールでリング状にシールしつつ吸着して基板を保持するようにした、いわゆる真空吸着方式を採用した基板保持装置が開発されている。
【0011】
基板保持装置にあっては、処理後に基板をヘッドから負荷なく完全にリリースできるようにすることが重要である。従来、例えば、前述の真空吸着方式を採用した基板保持装置にあっては、吸着シール(環状シール)の内部に、N2ガス等の清浄空気を導入し基板に向けて噴射することで、基板をリリースすることが広く行われていた。しかし、N2ガス等の清浄空気を導入したのみでは、ゴム等からなる吸着シールに強固に貼り付いた基板をリリースできないことがあった。このため、清浄空気と共に純水を吸着シールの内部に導入し基板に向けて同時に噴射することで、例え基板がゴム等からなる吸着シールに強固に貼り付いた場合であっても、基板を確実にリリースすることが行われている。
【0012】
しかしながら、このように、清浄空気と共に純水を噴射するようにすると、例えば、真空吸着方式を採用した基板保持装置にあっては、真空引きを行う回路の他に、清浄空気と純水を導入する2つの回路が別途必要となり、内部の回路構成が複雑となるばかりでなく、装置の大型化に繋がってしまう。
【0013】
また、基板保持装置で基板を保持して無電解めっき等の処理を行う際に、基板が変形しないように、基板をできるだけ弱い力で、かつ全面に亘ってより均等に保持して処理の精度を保つことが望まれる。しかし、基板の離脱や脱落を確実に防止するため、基板は、例えば水切り(スピン乾燥)時等、一般に最大の回転速度で回転させながら処理を行っている時でも、離脱や脱落を起こすことのない一定の保持力で吸着または機械的に基板保持装置に保持されて、一連の処理が行われている。このため、基板に局所的な負荷を与えて基板が変形してしまうばかりでなく、基板が吸着シール等に強固に貼り付いて、基板のリリースが困難となる場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板の離脱や脱落を確実に防止しつつ基板を保持して処理ができるようにした基板保持装置及び基板保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の基板保持装置は、基板の裏面周縁部をシールしながら基板を保持する環状シールを備えた回転自在な保持ヘッドを有し、前記保持ヘッドは、基板を保持した状態での該保持ヘッドの回転に伴って、前記環状シールでシールされた基板の裏面側に負圧を発生させる絞り機構を有する。
【0016】
このように、保持ヘッドの回転に伴って、絞り機構を介して、環状シールでシールされた基板の裏面側に負圧を発生させることで、この基板の裏面側に発生した負圧によって、基板に対する保持力を得ることができる。保持ヘッドに設けられる絞り機構の数は、必要とする保持力に合わせて任意に設定される。
【0017】
前記絞り機構は、例えば、前記保持ヘッドで保持した基板の裏面を一体に被覆する被覆体に設けた空気抜き穴と、この空気抜き穴と連通するスロート部を有し、前記保持ヘッドの回転に伴って該スロート部に発生する空気の流れによるベンチュリ効果を利用して前記空気抜き穴の内部を負圧にする。
【0018】
これにより、保持ヘッドの回転速度に比例させて、絞り機構のスロート部に発生する空気の流れの速度を速め、空気抜き穴の内部の圧力(負圧)をより低くすることで、絞り機構による基板に対する保持力を保持ヘッドの回転速度に比例させて高めることができる。
【0019】
前記保持ヘッドは、前記環状シールの内部を真空引きして基板を吸着保持することが好ましい。
前記保持ヘッドは、前記環状シールで保持した基板を保持ヘッドから離れる方向に押圧するプッシャを更に有することが好ましい。
これにより、例え基板が環状シールに強固に貼り付いていても、プッシャの押圧力を利用して基板を環状シールから確実にリリースすることができる。
【0020】
本発明の基板保持方法は、基板の裏面周縁部をリング状の環状シールでシールしながら基板を保持ヘッドで保持し、基板を保持した状態での前記保持ヘッドの回転に伴って、基板の裏面と前記環状シールで区画された基板の裏面側に負圧を発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、無電解めっきによって保護膜を形成した状態を示す断面図である。
【図2】図2は、基板処理装置(無電解めっき装置)の平面配置図である。
【図3】図3は、基板搬送ロボットの斜視図である。
【図4】図4は、基板搬送ロボットの基板を保持させた状態の正面図である。
【図5】図5(a)は、基板搬送ロボットの胴部を伸ばした状態を示す断面図で、図5(b)は、基板搬送ロボットの胴部を縮めた状態の断面図である。
【図6】図6は、仮置台の平面図である。
【図7】図7は、仮置台の正面図である。
【図8】図8は、スプレー処理用カップで内槽の上端開口部を閉塞しながら基板の処理を行っている状態のめっき前処理ユニット(基板処理ユニット)の概要図である。
【図9】図9は、スプレー処理用カップを待避させ、内槽で基板の処理を行っている状態のめっき前処理ユニット(基板処理ユニット)の概要図である。
【図10】図10は、スプレー処理用カップで内槽の上端開口部を閉塞しながら基板の処理を行っている状態の無電解めっきユニット(基板処理ユニット)の概要図である。
【図11】図11は、スプレー処理用カップを待避させ、内槽で基板の処理を行っている状態の無電解めっきユニット(基板処理ユニット)の概要図である。
【図12】図12は、供給ボックスの正面図である。
【図13】図13は、供給ボックスの側断面図である。
【図14】図14は、供給ボックスと容器を示す斜視図である。
【図15】図15は、供給ボックスの系統図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態に係る基板保持装置を示す縦断正面図である。
【図17】図17は、図16に示す基板保持装置の環状ヘッドを示す要部拡大断面図である。
【図18】図18は、図16に示す基板保持装置のプッシャを示す要部拡大断面図である。
【図19】図19は、保持ヘッドの底面図である。
【図20】図20は、保持ヘッドの斜視図である。
【図21】図21は、保持ヘッドの平面図である。
【図22】図22は、図21のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。この実施の形態は、基板に形成した配線の表面に、例えば無電解めっきによる保護膜9(図1参照)を効率よく形成できるようにした無電解めっき装置に適用した例を示している。電解めっき装置やCVD等、他の基板処理装置にも適用できることは勿論である。
【0023】
図2は、基板処理装置(無電解めっき装置)の平面配置図を示す。図2に示すように、この基板処理装置は、例えばスミフボックス等の内部に多数の半導体ウェハ等の基板を収納した搬送ボックス10を着脱自在な矩形状の装置フレーム12を備えている。この装置フレーム12の内部には、中央部に位置して、第1基板搬送ロボット14、仮置台16及び第2基板搬送ロボット18が直列に配置されている。そして、両側に位置して、各一対の洗浄・乾燥ユニット20、めっき後処理ユニット22、めっき前処理ユニット24及び無電解めっきユニット26が配置されている。更に、搬送ボックス10と反対側に位置して、めっき前処理ユニット24に処理液を供給する第1処理液供給部28と、無電解めっきユニット26に処理液を供給する第2処理液供給部30が備えられている。
【0024】
この基板処理装置(無電解めっき装置)は、クリーンルーム内に設置され、装置フレーム12内の圧力は、クリーンルーム内の圧力より高く設定される。これにより、装置フレーム12からクリーンルーム内に空気が流出しないようにしている。また、装置フレーム12の内部には、新鮮な空気の下向きの流れ(ダウンフロー)が形成されている。
【0025】
図3乃至図5は、第1基板搬送ロボット14を示す。なお、第2基板搬送ロボット18も第1基板搬送ロボット14と同様な構成をしている。第1基板搬送ロボット14は、いわゆる固定式ロボットであり、上下方向に伸縮自在な胴部32と、該胴部32の上端に取付けた回転駆動部34と、該回転駆動部34に取付けた水平方向に伸縮自在なロボットアーム36を有している。このロボットアーム36の先端に、水平方向に延びる回転軸38を回転させる反転機構40が取付けられており、この反転機構40の回転軸38に、基板Wの裏面を吸着して基板Wを吸着保持する吸着部42を先端に有するハンド44が連結されている。
【0026】
基板搬送ロボット14,18は、搬送の途中で、例えば、第1基板搬送ロボット14にあっては、基板Wを搬送ボックス10から仮置台16に搬送する間に、反転機構40を介して基板Wをフェースアップからフェースダウンに反転させるようになっており、このため、裏面吸着タイプのハンド44が採用されている。基板搬送ロボット14,18自体に反転機構40を備えることで、反転装置を別途備える必要をなくして、装置としての簡略化を図ることができる。
【0027】
胴部32は、図5に示すように、共に中空の内胴32aと外胴32bを有する、いわゆる入れ子式によって伸縮自在に構成されており、胴部32の底部に、中空の内胴32a及び外胴32bの内部に連通する排気ダクト(排気部)46が接続されて、第1基板搬送ロボット14の内部の空気を、排気ダクト46を通して外部に排気して回収するようになっている。
【0028】
これによって、例えば第1基板搬送ロボット14の胴部32の伸縮による上下動に伴って該基板搬送ロボット14の内部から排気される空気が、特に内胴32aと外胴32bとの間を通過して基板搬送ロボット14の外部に漏れるのを防止し、基板搬送ロボット14の近傍における気流を一定に保って、基板Wがパーティクルによって汚染されるのを防止することができる。
【0029】
図6及び図7は、仮置台16を示す。この仮置台16は、第1基板搬送ロボット14と第2基板搬送ロボット18との間に配置され、第1基板搬送ロボット14及び第2基板搬送ロボット18側の一方向から基板Wの出し入れを行うようになっている。なお、任意の方向から基板を出し入れできるようにしてもよいことは勿論である。このように、基板搬送ロボット14,18の間に、基板を仮置きする仮置台16を配置することで、装置フレーム12内における基板Wの搬送を効率的に行うとともに、基板搬送ロボット14,18として、固定式ロボットを使用できるようにして、装置全体のコスト低減を図ることができる。
【0030】
仮置台16には、上段のドライ用基板仮置部50と、下段のウェット用基板仮置部52が仕切り板54で仕切られて上下に設けられている。ドライ用基板仮置部50は、基板Wの周縁部に沿った位置に仕切り板54に立設した複数の支持ピン56を備え、この支持ピン56の上部に設けたテーパ部を介して基板Wを位置決めしつつ保持する。ウェット用基板仮置部52もほぼ同様に、基板Wの周縁部に沿った位置にベース板58に立設した複数の支持ピン60を備え、この支持ピン60の上部に設けたテーパ部を介して基板Wを位置決めしつつ保持する。
【0031】
仕切り板54の下面には、ウェット用基板仮置部52の支持ピン60で保持した基板Wの表面(上面)に向けて純水を噴霧して該基板Wの乾燥を防止する乾燥防止機構としての純水スプレーノズル62が取付けられている。更に、仕切り板54とベース板58との間には、純水スプレーノズル62から基板Wに向けて噴射された純水が外部に漏れるのを防止するシャッタ63が開閉自在に設けられている。
【0032】
これにより、第1基板搬送ロボット14で保持され搬送された基板Wは、反転された後に、上段のドライ用基板仮置部50の支持ピン56で位置決めされて保持される。一連の処理後に第2基板搬送ロボット18で保持されて搬送された基板Wは、下段のウェット用基板仮置部52の支持ピン60で位置決めされて保持される。そして、基板Wがドライ用基板仮置部50またはウェット用基板仮置部52に保持されたか否かは、図示しないセンサで検知される。なお、ここでは基板Wを第1基板搬送ロボット14が反転させたが、第2基板搬送ロボットが反転させてもよい。
【0033】
図8及び図9は、めっき前処理ユニット24を示す。このめっき前処理ユニット24は、有底円筒状で上下に延びる外槽70と、この外槽70の内部に上下動に配置される基板保持部72と、外槽70の内部に位置して、基板保持部72の下方に配置される内槽74と、外槽70の内部に位置して、内槽74の上端開口部を閉塞自在なスプレー処理用カップ76を有している。
【0034】
基板保持部72は、下記のように、駆動機構を介して上下動し、駆動部の基板回転用モータを介して回転する。更に、基板保持部72は、下面側にリング状の環状シール190(図16参照)を備え、この環状シール190を基板Wの周縁部に圧接させ該周縁部を環状シール190でシールしつつ基板Wを保持するようになっている。これにより、基板保持部72で保持した基板Wの裏面側に処理液が回り込むことが防止される。
【0035】
外槽70の下部には、外槽70の内部に流入した処理液を外部に排出する排液ライン78に繋がるドレインポート80が設けられている。更に、外槽70の下部側面において、内部にダンパを備えた排気ダクト82に接続され、これによって、外槽70の気流を調整する気流調整部が構成されている。つまり、外槽70内へのクリーンエアの送り込み量、及び外槽70内からの排気量を管理(制御)して、外槽70内の気流を管理する。そして、この例では、外槽70内の気流をダウンフローに管理することで、外槽70外への薬液雰囲気の漏れを防止するとともに、外槽70内に乱流により気流の淀み等が局所的に生じて、これが外槽70内での他の処理に影響を与えてしまうことを防止するように構成されている。
【0036】
内槽74の内部には、この例では、スプレー処理によって基板の薬液処理を行う薬液処理部84が備えられている。つまり、この薬液処理部84は、薬液を上向きに噴霧する複数の薬液スプレーノズル86を上面に取付けたノズル盤88と、このノズル盤88に薬液を供給する薬液供給ライン90を有している。これにより、基板保持部72で保持した基板Wの下面(表面)に向けて、薬液スプレーノズル86から薬液を噴霧することで、基板Wの処理を行う。
【0037】
内槽74の底部には、内槽74内に流入した薬液を外部に排出する排液ライン92に繋がるドレインポート94が設けられている。この例では、この排液ライン92は、この内部にフィルタ96及び送液ポンプ98が介装されて薬液タンク100に繋がっている。また薬液供給ライン90は、その内部に送液ポンプ102とフィルタ104が介装されて、薬液タンク100に繋がっている。これにより、薬液を循環させて使用する薬液循環ライン106が構成されている。
【0038】
更に、この例では、薬液タンク100内の薬液の温度を一定に管理する薬液温度管理部108と、薬液タンク100内の薬液をサンプリングして分析し、不足する成分を補給して、薬液タンク100内の薬液の組成を一定にする薬液分析兼補給部109が備えられている。これによって、薬液タンク100内の薬液の温度及び組成を一定にし、薬液供給ライン90から温度及び組成が一定の薬液を供給しつつ、循環使用することができる。薬液スプレーノズル86から噴霧される薬液の流量は、送液ポンプ102を介して制御される。
【0039】
内槽74の上端開口部を閉塞自在に覆うスプレー処理用カップ76の上面には、ノズル盤110が取付けられ、このノズル盤110は、この例では、薬液(第1処理液)を供給する薬液供給ライン112と、純水(第2処理液)を供給する純水供給ライン114が繋がっており、内部に、薬液供給ライン112に連通して薬液を噴霧する薬液スプレーノズル116と、純水供給ライン114に連通して純水を噴霧する純水スプレーノズル118の2種類のスプレーノズルが直線状に交互に配置されている。
【0040】
これにより、薬液供給ライン112から供給され薬液スプレーノズル116から噴霧される薬液等の処理液で処理した基板を、処理直後に、純水供給ライン114から供給され純水スプレーノズル118から噴霧される純水で洗浄(リンス)することができる。しかも、純水は、一般に、他の処理液と混合しても、処理等が一般に問題とならない。なお、この例では、薬液スプレーノズル116から噴霧される薬液を、回収することなく、使い捨てするようにしているが、前述の内槽74内に設けられる薬液処理部84と同様に、薬液を回収し、循環させて再使用するようにしてもよい。
【0041】
次に、めっき前処理ユニット24の使用例を説明する。先ず、図8に示すように、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆った状態で、基板Wを保持した基板保持部72をスプレー処理用カップ76の上方の所定位置(第1処理位置)まで下降させる。そして、この例では、薬液(第1処理液)として、H2SO4等の酸溶液からなる前洗浄液を使用し、スプレー処理用カップ76の薬液スプレーノズル116から薬液(H2SO4等の酸溶液)を基板Wに向けて噴霧し、しかる後、スプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
【0042】
そして、図9に示すように、スプレー処理用カップ76を内槽74の側方の待避位置に待避させて内槽74の上端開口部を開放させ、基板Wを保持した基板保持部72を薬液処理部84の上方の所定位置(第2処理位置)まで下降させる。そして、この例では、薬液として、PdCl2とH2SO4との混合液等の触媒付与液を使用し、薬液処理部84の薬液スプレーノズル86から薬液(PdCl2とH2SO4との混合液等の触媒付与液)を基板Wに向けて噴霧する。
【0043】
次に、基板Wを保持した基板保持部72を所定位置(第1処理位置)まで上昇させた後、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆い、このスプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。以上ようにして、前処理を施した基板を次工程に搬送する。
【0044】
これらの処理時に、外槽70の内部には、図8及び図9に示すように、層流のダウンフローの空気の流れが生じ、この空気の大部分は排気ダクト82を通して外部に排気される。これによって、外槽70外への薬液雰囲気の漏れを防止し、外槽70内に乱流により気流の淀み等が局所的に生じて、これが外槽70内での他の処理に影響を与えてしまうことを防止することができる。
【0045】
しかも、基板保持部72で基板Wを保持したまま、内槽74内での基板Wの薬液処理と、スプレー処理用カップ76のスプレーノズル116,118から噴霧される少なくとも2種類以上の処理液による基板Wの処理を個別に行うことができる。内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で閉塞した状態で該スプレー処理用カップ76のスプレーノズル116,118から処理液を噴霧して該処理液による基板Wの処理を行うことで、スプレーノズル116,118から噴霧された処理液は、内槽74の内部に流れ込むことなく、排液ライン78を通して外槽70から排出される。これによって、スプレー処理用カップ76のスプレーノズル116,118から噴霧された、薬液を含む処理液が、内槽74の薬液処理部84で使用される薬液と混合してしまうことが防止される。
【0046】
図10及び図11は、無電解めっきユニット26を示す。この無電解めっきユニット26の前記めっき前処理ユニット24と異なる点は、以下の通りである。
【0047】
つまり、この無電解めっきユニット26の内槽74の内部には、浸漬処理によって基板の薬液処理を行う薬液処理部120が備えられている。この薬液処理部120は、めっき液等の薬液を溜めて該薬液に基板保持部72で保持した基板Wを浸漬させる浴槽122を有している。そして、めっき液等の薬液を保持する薬液タンク100から延びる薬液供給ライン90は、浴槽122の底部に設けられた薬液供給部124に接続され、排液ライン92は、浴槽122の周囲に設けられて、浴槽122の周壁をオーバーフローした薬液を回収する薬液回収溝126に連通し、これにより、薬液を循環させて使用する薬液循環ライン106が構成されている。
【0048】
更に、この例では、内槽74の浴槽122に溜められる薬液の液面のやや上方に位置して、純水供給ライン127に接続され、この純水供給ライン127を通して供給された純水をやや上方に向けて噴霧する純水スプレーノズル128が設けられている。
【0049】
次に、無電解めっきユニット26の使用例を説明する。先ず、図10に示すように、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆った状態で、基板Wを保持した基板保持部72をスプレー処理用カップ76の上方の所定位置(第1処理位置)まで下降させる。そして、この例では、薬液(第1処理液)として、クエン酸ナトリウム等の溶液からなる触媒付与後処理液を使用し、スプレー処理用カップ76の薬液スプレーノズル116から薬液(クエン酸ナトリウム等の溶液からなる触媒付与後処理液)を基板Wに向けて噴霧し、しかる後、スプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
【0050】
次に、浴槽122内を薬液(めっき液)で満たしつつ、該薬液を一定の温度及び組成に調製して循環させた状態で、図11に示すように、スプレー処理用カップ76を内槽74の側方の待避位置に待避させて内槽74の上端開口部を開放させ、基板Wを保持した基板保持部72を下降させて、基板Wを浴槽122内の薬液(めっき液)に浸漬させる。これによって、基板Wの表面に無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。この薬液(めっき液)の組成は、例えば以下の通りである。
【0051】
めっき液の組成
・CoSO4・7H2O:23g/L
・Na3C6H5O7・2H2O:145g/L
・(NH4)2SO4:31g/L
・NaH2PO2・H2O:18g/L
・Na2WO4・2H2O:10g/L
・pH:8.8(NaOH水溶液で調整)
【0052】
そして、基板Wを薬液の液面から引き上げた後、純水スプレーノズル128から基板Wに向けて純水を噴霧し、これによって、基板Wの表面に付着した薬液(めっき液)を純水に置換させて無電解めっき反応を停止させる。これにより、基板Wを薬液(めっき液)から引き上げた直後に無電解めっき反応を迅速に停止させて、めっき膜にめっきむらが発生することを防止する。しかも、例えば10〜20ccの純水を使用することで、蒸発した水分をこの純水で補給して、薬液の濃度を一定に保つようにすることができる。
【0053】
次に、基板Wを保持した基板保持部72を所定位置(第1処理位置)まで上昇させた後、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆い、このスプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。以上のようにして、無電解めっきを施した基板を次工程に搬送する。
【0054】
これらの処理時に、外槽70の内部には、図10及び図11に示すように、層流のダウンフローの空気の流れが生じ、この空気は排気ダクト82を通して外部に排気される。また、スプレー処理用カップ76のスプレーノズル116,118から噴霧される少なくとも2種類以上の処理液が、薬液(めっき液)に混入することが防止される。
【0055】
図2に示すように、基板処理装置の第1処理液供給部28及び第2処理液供給部30には、原液または添加剤を貯槽した容器を着脱自在に保持する供給ボックス130,132が備えられている。この第1処理液供給部28の供給ボックス130は、例えば、めっき前処理ユニット24で使用される、H2SO4等の酸溶液からなる薬液(第1処理液)を調製するためのものであり、第2処理液供給部30の供給ボックス132は、無電解めっきユニット26で使用される、クエン酸ナトリウム等の溶液からなる薬液(第2処理液)を調製するためのものである。これらは、同じ構成であるので、ここでは、一方の供給ボックス130を説明する。
【0056】
図12乃至図14は、供給ボックス130を示す。この供給ボックス130は、この例では、把手133を介して開閉自在なカバー134を有しており、内部に原液等を貯蔵し手で持ち運びが可能なボトル等からなる容器136は、カバー134を開いた後、載置台138の上に載置されて、供給ボックス130内に収容される。載置台138には、容器136の有無、及び容器136内の原液等の容積を検知するロードセル等の重量測定器が設置されていて、容器136内の原液等が不足した時に警報が発せられる。
【0057】
供給ボックス130の内部には、ポンプ140、背圧弁142(図15参照)及び流量計144(図15参照)が設置され、このポンプ140の駆動に伴って、容器136の内部から、所定圧の原料等が所定の流量だけ、供給管146を通して供給される。そして、この例では、図15に示すように、供給ボックス130の容器136から供給された原料等は、供給管146を通して薬液タンク148に供給され、この薬液タンク148に、バルブ150及び流量計152を通して供給される純水で薄められて、所定の濃度の薬液(第1処理液)が調製される。
【0058】
このように、めっき前処理ユニット24に供給される薬液(第1処理液)の成分を装置内で管理することで、めっき前処理ユニット24の処理性能を一定に保つことができる。しかも、容器136として、持ち運びが可能なボトルを使用することで、容器(ボトル)の着脱を容易かつ簡易に行うことができる。
なお、このことは、無電解めっきユニット26にあっても同様である。
【0059】
めっき前処理ユニット24及び無電解めっきユニット26に備えられている基板保持部72を有する、発明の実施の形態の基板保持装置180を図16に示す。図16に示すように、基板保持装置180は、基板保持部72と駆動部220を有している。基板保持部72は、下面が開放された略円筒状の基板支持部182と、この基板支持部182の内部に上下動自在に収納した略円形の保持ヘッド184を有している。駆動部220は、保持ヘッド184を回転駆動する基板回転用モータ221と、基板支持部182を上下の所定位置に昇降させる昇降用シリンダ222とを具備している。保持ヘッド184は、基板回転用モータ221によって回転駆動され、基板支持部182は、昇降用シリンダ222によって上下動される。つまり、保持ヘッド184は回転のみで上下動せず、基板支持部182は保持ヘッド184と一体となって回転し、保持ヘッド184と相対的に上下動する。
【0060】
基板支持部182は、その下端部に、内方にリング状に突出して基板Wを仮置きする基板仮置き部185を有しており、基板支持部182の周壁には、基板支持部182の内部に基板Wを挿入する基板挿入口186が設けられている。
【0061】
保持ヘッド184は、内部に半径方向に延びる真空兼純水供給路188aを設けた円板状の被覆体188を有しており、この被覆体188の下面周縁部には、リング状で下面に円周方向に連続して延びる円周溝190a(図17参照)を有する環状シール190が取付けられている。そして、真空兼純水供給路188aは、被覆体188に設けたジョイント192を通して、真空源194から延びる真空ライン196と純水供給源198から延びる純水供給ライン200の一方に選択的に接続され、環状シール190の内部に設けた貫通孔190bを通して円周溝190aに連通している。これによって、基板Wを環状シール190で吸着保持する基板保持機構202と、この環状シール190で吸着保持した基板Wをリリースする基板リリース機構204が構成されている。
【0062】
つまり、環状シール190の下面を基板Wの裏面(上面)外周縁に圧接させ、基板保持機構202を構成する真空ライン200を介して、環状シール190の円周溝190aの内部を真空引きすることで、環状シール190で基板Wを吸着保持し、基板リリース機構204を構成する純水供給ライン200を介して、環状シール190の円周溝190aの内部に純水を導入し基板Wに向けて噴出することで、環状シール190で吸着保持した基板Wをリリースする。
【0063】
このように、水圧を用いて保持ヘッド184の環状シール190で吸着保持した基板Wをリリースすることで、例え基板Wがゴム等からなる環状シール190に強固に貼り付いた場合であっても、基板Wを環状シール190から確実にリリースすることができる。しかも、水圧のみを使用して基板Wをリリースすることで、清浄空気を導入する回路を不要となすことができる。なお、この例では、純水を使用しているが、純水以外の液体を使用してもよいことは勿論である。
【0064】
また、基板リリース機構204を、環状シール190の内部に加圧水を導入して基板Wをリリースするように構成することにより、加圧水を導入する区域を別途設ける必要をなくして、構造の更なる簡素化を図ることができる。
【0065】
環状シール190は、例えばゴム等からなる弾性体で構成され、図17に示すように、その下端部を被覆体188の下面から下方に突出させて該被覆体188の下面に取付けられており、前述のようにして、基板Wを吸着保持した際、基板Wの裏面(環状シール190によってリング状にシールされた内側部分)への処理液(めっき液)の浸入を防止するシールの役目を果たす。なお環状シール190の形状については、図に示す形状に限定されず、所定の円周幅にてリング状に吸着するものであればどのような形状及び構造でも構わないことは勿論である。
【0066】
被覆体188の内部には、半径方向に延びる複数の真空兼気体供給路188bが更に設けられており、この被覆体188の下面の環状シール190で囲まれた領域内には、図19に示すように、円周方向に沿って複数(図示では6個)のプッシャ206が配置されている。そして、各真空兼気体供給部188bは、被覆体188に設けたジョイント208を通して、真空源194から延びる真空ライン210と気体供給源212から延びる気体供給ライン214の一方に選択的に接続され、各プッシャ206の背面に連通している。これによって、環状シール190で吸着保持した基板Wをリリースする補助基板リリース機構216が構成されている。
【0067】
つまり、プッシャ206は、図18に詳細に示すように、例えばフッ素樹脂製の合成ゴム材料等の伸縮可能な弾性材によって形成され、中空で背面側に開口した伸縮自在なベローズ部206aと円柱状の先端(下端)押圧部206bとを有し、フランジ部206cを介して被覆体188の下面に気密的に取付けられている。そして、この押圧部206bの下面は、環状シール190の下面がなす平面よりも若干下方に位置している。これにより、基板Wを環状シール190で保持する際には、真空ライン210を介して真空兼気体供給路188bの内部を真空引きし、ベローズ部206aを収縮させて、押圧部206bを基板Wの保持を阻害することのない上方位置まで持ち上げる。そして、環状シール190で保持した基板Wをリリーする際には、気体供給ライン214を介して真空兼気体供給路188bの内部に気体を導入し、ベローズ部206aを伸展させ押圧部206bを下方に押下げて、基板Wを下方に押圧する。
【0068】
このように、必要に応じて、補助基板リリース機構216を備えることで、例え基板Wが環状シール190の下面に強固に貼り付いていても、プッシャ206の押圧力を利用して基板Wを環状シール190から確実にリリースすることができる。
【0069】
更に、この例では、図20乃至図22に示すように、保持ヘッド184には、複数(図示では3個)の絞り機構260が設けられている。この絞り機構260は、基板Wを保持した保持ヘッド184の回転に伴って、環状シール190でシールされた基板Wの裏面側、つまり基板Wの裏面と被覆体188で挟まれ、環状シール190で囲まれた空間に負圧を発生させるようになっている。
【0070】
この絞り機構260は、被覆体188に設けられ、環状シール190で保持した基板Wの裏面と被覆体188で挟まれ、環状シール190で囲まれた空間内の空気を逃す空気抜き穴188cと、この空気抜き穴188cの上方を覆う蓋体262と、保持ヘッド184に同心状に固定した作動板264とを有している。そして、各蓋体262と作動板264との間に、図21及び図22に示すように、両者が互いに近接して流路断面積が最小となるスロート部266が設けられている。これによって、保持ヘッド184の回転に伴って、図21に矢印で示すように、このスロート部266を通過する空気の流れが発生し、この空気の流れの速度は、保持ヘッド184の回転速度に比例して増大する。
【0071】
一方、空気抜き穴188cの上面を覆う蓋体262には、空気抜き穴188cの内部に連通し、スロート部266に対面する位置に開口する空気流路262aが設けられている。これによって、この絞り機構260は、ベンチュリ効果を利用して、空気抜き穴188cの内部から基板Wの裏面側を負圧にするようになっている。
【0072】
つまり、前述のように、保持ヘッド184の回転に伴ってスロート部266を通過する空気の流れが発生すると、この空気の流れによって、空気抜き穴188cの内部の空気が空気流路262aを通って外部に排出され、これによって、空気抜き穴188cの内部から基板Wの裏面側に負圧が発生し、しかもこの負圧の大きさは、保持ヘッド184の回転速度に比例する。
【0073】
このように、保持ヘッド184の回転に伴って、絞り機構260を介して、環状シール190でシールされた基板の裏面側、つまり基板Wの裏面と被覆体188で挟まれ、環状シール190で囲まれた空間に負圧を発生させることで、この基板Wの裏面側に発生した負圧によって、基板Wに対する保持力を得ることができる。これによって、基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板に対する十分な保持力を確保することができる。なお、保持ヘッド184に設けられる絞り機構260の数は、必要とする保持力に合わせて任意に設定される。
【0074】
しかも、保持ヘッド184の回転速度に比例させて、絞り機構260のスロート部266に発生する空気の流れの速度を速め、この空気の流れによるベンチュリ効果を利用して空気抜き穴188cの内部を負圧にすることで、絞り機構260による基板Wに対する保持力を保持ヘッド184の回転速度に比例させて高めることができる。
【0075】
次に、基板保持装置180の動作を説明する。
先ず、図16に示すように、保持ヘッド184を回転させることなく、基板支持部182を最も下の位置(基板受渡し位置)に移動させ、ロボットハンド(図示せず)で吸着された基板Wを基板保持部72の内部に挿入する。そして、ロボットハンドの吸着を解除することで、基板Wを基板支持部182の基板仮置き部185の上に載置する。このとき、基板Wの表面(被処理面)は、下を向いている。そして、ロボットハンドを基板保持部72から抜き出す。次に、基板支持部182を上昇させ、基板Wの裏面(上面)周面部に環状シール190の下端面を当接させ、更に上昇させて密着させる。
この時、補助基板リリース機構216のプッシャ206を上方に持ち上げて、このプッシャ206によって基板Wの保持が阻害されないようにしておく。
【0076】
この状態で、基板保持機構202を介して、環状シール190の円周溝190a内を真空引きすることで、基板Wの裏面周縁部を環状シール190に吸着して基板Wを保持する。このとき吸引力は、環状シール190の基板Wに接触する部分の内部の円周溝190a内のみに発生する。これによって、基板Wの裏面の環状シール190によって囲まれる部分は、環状シール190によるシールによって基板Wの表面(被処理面)から遮断される。
【0077】
この例によれば、基板Wの外周をリング状の小さな幅(径方向)の環状シール190にて吸着することにより、吸着幅を極力小さく抑えて、基板Wへの影響(撓み等)をなくすことができる。具体的には、環状シール190の幅は、非常に狭く、環状シール190が基板Wに接触する部分は、例えば基板Wの外周からその内側5mmまでの間の部分である。基板Wの裏面の外周部のみが環状シール190と接触するので、基板処理時の処理液の温度が不必要に環状シール190との接触面を伝達して逃げる恐れもなくなる。
【0078】
そして、例えば前述の無電解めっきユニット26に備えられている基板保持部72のように、基板保持部72で保持した基板Wを処理液に浸漬させる浸漬処理を行う時には、基板支持部182を少し(例えば数mm)下降させて基板Wを基板仮置き部185から引き離す。この状態で、基板保持装置180全体を下降させ、例えば図示しないめっき液等の処理液中に浸漬させ、必要に応じて、保持ヘッド184を基板Wと共に回転させることで、基板の処理を行う。この時、基板Wは、その裏面で吸着保持されているだけなので、基板Wの表面全域及びエッジ部分についても全て処理液中にディップして、その処理を行うことが可能となる。
【0079】
更に、基板支持部182が下降して基板Wから離れ、基板Wは、その裏面のみが吸着して保持されているだけなので、基板Wを処理液に浸漬しても基板Wに対する処理液の流れが阻害されることがなく、基板の表面全域において均一な処理液の流れが形成される。またこの処理液の流れとともに、基板Wの表面上に巻き込まれた気泡や、処理によって発生した気泡を基板Wの表面上から上方に排出することができる。これによって、めっき等の処理に悪影響を及ぼす不均一な処理液の流れや気泡の影響を解決し、エッジを含んだ基板表面全域に均一なめっき等の処理を行うことが可能となる。また基板Wの裏面のリング状に真空吸着した部分の内側は、環状シール190によるシールによって表面から遮断されるので、処理液が基板Wの裏面の環状シール190の内側へ浸入するのを防ぐことができる。
【0080】
そして、例えば純水によるリンス(洗浄)及びリンス後の液切り(スピン乾燥)を連続して行う時には、基板保持装置180全体を上昇させて基板Wを処理液から引き上げ、保持ヘッド184を基板Wと共に回転させながら、基板Wに向けて純水を噴射し、次に、保持ヘッド184を基板Wと共に高速で回転させて基板に付着した純水の液切り(スピン乾燥)を行う。
【0081】
この時、基板Wは、環状シール190の円周溝190aの内部を吸引することによる吸引力の他に、絞り機構260によって発生する、基板Wの裏面側の負圧を利用した保持力で保持されており、しかもこの絞り機構260により保持力は、保持ヘッド184の回転速度に比例する。このため、環状シール190の円周溝190aの内部を吸引することによる吸引力を弱くしても、基板の十分な保持力を確保して、基板の脱落を防止することができる。
【0082】
つまり、従来、環状シール190の円周溝190aの内部を吸引することによる吸引力は、一般に基板を高速で回転させても基板の脱落を確実に防止できる大きさに設定されていたが、この例によれば、この吸引力を弱くしても、絞り機構260により保持力を利用することで、基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板に対する十分な保持力を得ることができる。
【0083】
基板Wの一連の処理が終了した後、基板支持部182を上昇させて基板Wを基板仮置き部185の上に載置し、基板リリース機構204を介して、環状シール190の円周溝190aの内部に純水を導入し基板Wに向けて噴出するとともに、補助基板リリース機構216を介して、プッシャ206の背面側に気体を導入し該プッシャ206内を加圧し、その押圧部206bを下方に突出させて、基板Wをその裏面から押圧する。同時に、基板支持部182を下降させることで、基板Wを環状シール190から引き離し、さらに基板支持部182を図16に示す位置まで下降させる。そして、基板保持部72の内部にロボットハンドを挿入して基板Wを外部に引き出す。
【0084】
このように環状シール190の円周溝190aから基板Wに向けて液体を噴出し、更に必要に応じて、プッシャ206の押圧部206bによって基板Wの裏面を押圧することで、例えゴム等の弾性体で形成されている環状シール190に基板Wが強固に貼り付いていても、環状シール190の円周溝190a内に導入される純水の加圧力と、必要に応じたプッシャ206の押圧部206bによる基板Wの裏面の押圧によって、基板Wを容易且つ確実に環状シール190からリリースすることができる。
【0085】
この基板保持装置によれば、水圧を用いて保持ヘッドで保持した基板をリリースすることで、例え基板がゴム等からなる環状シールに強固に貼り付いた場合であっても、基板を環状シールから確実にリリースして、基板の脱着をスムーズに行うことができる。しかも、水圧のみを使用して基板をリリースすることで、清浄空気を導入する回路を不要となし、これによって、回路構成を単純化するとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0086】
また、基板に対する吸着または機械的な保持力を強めることなく、基板を保持する基板保持ヘッドに設けた絞り機構を介して基板に対する保持力を得るようにすることで、基板が局所的に変形したり、基板が吸着シール等に強固に貼り付いて、基板のリリースが困難となったりすることを防止することができる。
【0087】
次に、この無電解めっき装置(基板処理装置)による一連の無電解めっき処理について説明する。なお、この例では、図1に示すように、CoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を選択的に形成して配線8を保護する場合について説明する。
【0088】
先ず、表面に配線8を形成した基板W(図1参照、以下同じ)を該基板Wの表面を上向き(フェースアップ)で収納した搬送ボックス10から、1枚の基板Wを第1搬送ロボット14で取り出して仮置台16のドライ用基板仮置部50に搬送し該ドライ用基板仮置部50で保持する。この仮置台16のドライ用基板仮置部50に保持された基板Wを、第2搬送ロボット18でめっき前処理ユニット24に搬送する。なお、基板を第1搬送ロボット14または第2搬送ロボット18によってフェースアップからフェースダウンに反転させる。
【0089】
めっき前処理ユニット24では、基板保持部72で基板Wをフェースダウンで保持して、基板Wの表面に先ず前洗浄を行う。つまり、図8に示すように、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆った状態で、基板Wを保持した基板保持部72をスプレー処理用カップ76の上方の所定位置(第1処理位置)まで下降させ、H2SO4等の酸溶液からなる前洗浄液をスプレー処理用カップ76の薬液スプレーノズル116から基板Wに向けて噴霧して、絶縁膜2(図1参照)の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去し、しかる後、スプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
【0090】
次に、図9に示すように、スプレー処理用カップ76を内槽74の側方の待避位置に待避させて内槽74の上端開口部を開放させ、基板Wを保持した基板保持部72を薬液処理部84の上方の所定位置(第2処理位置)まで下降させた後、PdCl2とH2SO4との混合液等の触媒付与液を薬液処理部84の薬液スプレーノズル86から基板Wに向けて噴霧する。これにより、配線8の表面に触媒としてのPdを付着させ、つまり配線8の表面に触媒核(シード)としてのPd核を形成して、配線8の表面配線の露出表面を活性化させる。
【0091】
次に、基板Wを保持した基板保持部72を所定位置(第1処理位置)まで上昇させた後、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆い、このスプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
第2基板搬送ロボット18は、めっき前処理後の基板をめっき前処理ユニット24の基板保持部72から受け取り、電解めっきユニット26の基板保持部72に受け渡す。
【0092】
無電解めっきユニット26は、基板Wを基板保持部72でフェースダウンで保持して、基板Wの表面に、先ず、薬液処理を行う。つまり、図10に示すように、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆った状態で、基板Wを保持した基板保持部72をスプレー処理用カップ76の上方の所定位置(第1処理位置)まで下降させ、クエン酸ナトリウム等の溶液からなる触媒付与後処理液をスプレー処理用カップ76の薬液スプレーノズル116から基板Wに向けて噴霧して、配線8の表面に中和処理を施し、しかる後、スプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。
【0093】
次に、図11に示すように、スプレー処理用カップ76を内槽74の側方の待避位置に待避させて内槽74の上端開口部を開放させ、基板Wを保持した基板保持部72を下降させて、基板Wを浴槽122内の薬液(めっき液)に浸漬させ、これによって、無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。つまり、例えば、液温が80℃のCoWPめっき液中に、基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。
【0094】
そして、基板Wを薬液の液面から引き上げた後、純水スプレーノズル128から基板Wに向けて純水を噴霧し、これによって、基板Wの表面の薬液を純水に置換させて無電解めっきを停止させる。
【0095】
次に、基板Wを保持した基板保持部72を所定位置(第1処理位置)まで上昇させた後、内槽74の上端開口部をスプレー処理用カップ76で覆い、このスプレー処理用カップ76の純水スプレーノズル118から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。これによって、配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9(図1参照、以下同じ)を選択的に形成して配線8を保護する。
【0096】
次に、無電解めっき処理後の基板Wを、第2基板搬送ロボット18で、例えばロール洗浄ユニットからなるめっき後処理ユニット22に搬送し、ここで基板Wの表面に付着したパーティクルや不要物をロール状ブラシで擦って取り除くめっき後処理を行う。この搬送の過程で、基板を、フェースダウンからフェースアップに反転させる。しかる後、この基板Wを第2基板搬送ロボット18で仮置台16のウェット用基板仮置部52に搬送し該ウェット用基板仮置部52で保持する。この保持中に、スプレーノズル62から純水を基板Wに向けて噴霧することで、基板Wの乾燥を防止する。
【0097】
第1基板搬送ロボット14は、仮置台16のウェット用基板仮置部52から基板Wを取り出し、例えばスピンドライユニットからなる洗浄・乾燥ユニット20に搬送し、ここで基板Wの表面の化学洗浄及び純水洗浄を行って、スピン乾燥させる。このスピン乾燥後の基板Wを第1搬送ロボット14で搬送ボックス10内に戻す。
【0098】
なお、この例では、保護膜9としてCoWB合金を使用しているが、保護膜9として、CoB、NiBまたはNiWBからなる保護膜を形成するようにしてもよい。また、配線材料として、銅を使用した例を示しているが、銅の他に、銅合金、銀、銀合金、金及び金合金等を使用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の裏面周縁部をシールしながら基板を保持する環状シールを備えた回転自在な保持ヘッドを有し、
前記保持ヘッドは、基板を保持した状態での該保持ヘッドの回転に伴って、前記環状シールでシールされた基板の裏面側に負圧を発生させる絞り機構を有することを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記絞り機構は、前記保持ヘッドで保持した基板の裏面を被覆する被覆体に設けた空気抜き穴と、この空気抜き穴と連通するスロート部を有し、前記保持ヘッドの回転に伴って該スロート部に発生する空気の流れによるベンチュリ効果を利用して前記空気抜き穴の内部を負圧にすることを特徴とする請求項1記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記保持ヘッドは、前記環状シールの内部を真空引きして基板を吸着保持することを特徴とする請求項1または2記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記保持ヘッドは、前記環状シールで保持した基板を保持ヘッドから離れる方向に押圧するプッシャを更に有することを特徴とする請求項1または2記載の基板保持装置。
【請求項5】
表面を下向きにして基板を支持することを特徴とする請求項1または2記載の基板保持装置。
【請求項6】
基板の裏面周縁部を環状シールでシールしながら基板を保持ヘッドで保持し、
基板を保持した状態での前記保持ヘッドの回転に伴って、基板の裏面と前記環状シールで区画された基板の裏面側に負圧を発生させることを特徴とする基板保持方法。
【請求項7】
前記保持ヘッドで保持した基板の裏面を被覆する被覆体に設けた空気抜き穴と、この空気抜き穴と連通するスロート部を有し、前記保持ヘッドの回転に伴って該スロート部に発生する空気の流れによるベンチュリ効果を利用して前記空気抜き穴の内部を負圧にすることを特徴とする請求項6記載の基板保持方法。
【請求項1】
基板の裏面周縁部をシールしながら基板を保持する環状シールを備えた回転自在な保持ヘッドを有し、
前記保持ヘッドは、基板を保持した状態での該保持ヘッドの回転に伴って、前記環状シールでシールされた基板の裏面側に負圧を発生させる絞り機構を有することを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記絞り機構は、前記保持ヘッドで保持した基板の裏面を被覆する被覆体に設けた空気抜き穴と、この空気抜き穴と連通するスロート部を有し、前記保持ヘッドの回転に伴って該スロート部に発生する空気の流れによるベンチュリ効果を利用して前記空気抜き穴の内部を負圧にすることを特徴とする請求項1記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記保持ヘッドは、前記環状シールの内部を真空引きして基板を吸着保持することを特徴とする請求項1または2記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記保持ヘッドは、前記環状シールで保持した基板を保持ヘッドから離れる方向に押圧するプッシャを更に有することを特徴とする請求項1または2記載の基板保持装置。
【請求項5】
表面を下向きにして基板を支持することを特徴とする請求項1または2記載の基板保持装置。
【請求項6】
基板の裏面周縁部を環状シールでシールしながら基板を保持ヘッドで保持し、
基板を保持した状態での前記保持ヘッドの回転に伴って、基板の裏面と前記環状シールで区画された基板の裏面側に負圧を発生させることを特徴とする基板保持方法。
【請求項7】
前記保持ヘッドで保持した基板の裏面を被覆する被覆体に設けた空気抜き穴と、この空気抜き穴と連通するスロート部を有し、前記保持ヘッドの回転に伴って該スロート部に発生する空気の流れによるベンチュリ効果を利用して前記空気抜き穴の内部を負圧にすることを特徴とする請求項6記載の基板保持方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−118685(P2010−118685A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22270(P2010−22270)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【分割の表示】特願2006−512870(P2006−512870)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【分割の表示】特願2006−512870(P2006−512870)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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