説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】ナノバブルを含む液体中のナノバブルを生成して基板に供給する際に、ナノバブルの個数を把握して基板の処理ができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】予め粒径の確定している標準粒子を混合用の液体81で混合し、標準粒子を混合した混合用の液体中の単位体積当たりの標準粒子の個数をカウンタ86で計測し、この混合用の液体81を基準液として、投入したい標準粒子の個数を含む量の基準液をナノバブルNBを含む液体Lに入れ、粒度分布測定器100によりナノバブルを含む液体中の標準粒子の粒度分布F1とナノバブルの粒度分布F2とを求め、ナノバブルを含む液体L中の標準粒子の粒度分布F1のピーク値P1に対応する標準粒子の個数を基準として、ナノバブルの粒度分布F2のピーク値P2、P3、P4に対応するナノバブルの個数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関し、特に例えば液晶パネル基板や半導体基板の洗浄や表面改質等の処理に用いる基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、液晶パネル基板や半導体基板等の基板の製造工程では、基板に対して純水や薬液等の液体を供給して、例えば基板の洗浄や表面改質等の処理を行い、基板の表面に付着したパーティクル等を除去する。
【0003】
基板を洗浄するために、特許文献1では、基板処理装置に対してマイクロバブル発生部を接続して、マイクロバブル発生部からマイクロバブルを含む純水を処理槽内の基板に供給することが提案されている。
【0004】
このマイクロバブル発生部の構造は、特許文献1の図9に記載されており、マイクロバブル発生部は、ケーシングの中に送水管と、この送水管を取り囲む送気路とを形成した構造になっている。送気路は窒素ガス供給部と真空ポンプに接続されており、送気路を流れる窒素ガスの圧力は、真空ポンプの作動により調整してケーシング内を加減圧できる。これにより、ケーシング内を減圧した場合には、送水管を流れる純水から余分な気体が過飽和となって析出し、その気体は中空子分離膜を通って送気路へ流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006―179765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている技術では、マイクロバブルを用いている。ナノバブルの粒径に比べて大きな粒径のマイクロバブルは、基板に付着して基板の処理に必要な反応を抑制してしまうために、基板の処理には不要である。微小気泡を液体に含ませる工程では、ナノバブルを生成するとマイクロバブルも同時に液体中に存在してしまうため、ナノバブルとマイクロバブル(マイクロナノバブルも含む)とは可能な限り分離する必要がある。
【0007】
このため、微小気泡の内のナノバブルと、マイクロバブルとマイクロナノバブルと、を短時間で分離して、ナノバブルを含む液体を、基板に対して効率よく供給して基板を処理する際に、使用するナノバブルを含む液体中のナノバブルの個数を把握できるようにすることが望まれている。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、微小気泡であるナノバブルを含む液体中のナノバブルを生成して基板に供給する際に、ナノバブルの個数を把握して基板の処理ができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板処理方法は、基板の処理をする基板処理方法であって、液体と気体を微小気泡生成装置により混合させてナノバブルを含む液体を生成して、前記ナノバブルを含む前記液体を前記基板に供給する際に、
予め粒径の確定している標準粒子を混合用の液体で混合し、前記標準粒子を混合した前記混合用の液体中の単位体積当たりの前記標準粒子の個数をカウンタで計測し、前記標準粒子の個数を計測した前記混合用の液体を基準液として、
投入したい個数の前記標準粒子を含む量の前記基準液を、前記ナノバブルを含む前記液体に入れて、粒度分布測定器により前記ナノバブルを含む前記液体中の前記標準粒子の粒度分布と、前記ナノバブルの粒度分布と、を求めて、
前記ナノバブルを含む前記液体中の前記標準粒子の前記粒度分布のピーク値に対応する前記投入した前記標準粒子の個数を基準として、前記ナノバブルの前記粒度分布のピーク値に対応する前記ナノバブルの個数を求めることを特徴とする。上記構成によれば、微小気泡であるナノバブルを含む液体中のナノバブルを生成して基板に供給する際に、ナノバブルの個数を把握して基板の処理ができる。
【0010】
本発明の基板処理装置は、基板の処理をする基板処理装置であって、
液体と気体を混合させてナノバブルを含む液体を生成して、前記ナノバブルを含む前記液体を前記基板に供給する微小気泡生成装置と、
予め粒径の確定している標準粒子を混合用の液体で混合し、前記標準粒子を混合した前記混合用の液体中の単位体積当たりの前記標準粒子の個数を計測するカウンタと、
前記標準粒子の個数を計測した前記混合用の液体を基準液として、投入したい個数の前記標準粒子を含む量の前記基準液を、前記ナノバブルを含む前記液体に入れた状態で、前記ナノバブルを含む前記液体中の前記標準粒子の粒度分布と、前記ナノバブルの粒度分布と、を求めて、前記ナノバブルを含む前記液体中の前記標準粒子の前記粒度分布のピーク値に対応する前記投入した前記標準粒子の個数を基準として、前記ナノバブルの前記粒度分布のピーク値に対応する前記ナノバブルの個数を求める粒度分布測定器と、を備えることを特徴とする。上記構成によれば、微小気泡であるナノバブルを含む液体中のナノバブルを生成して基板に供給する際に、ナノバブルの個数を把握して基板の処理ができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、微小気泡であるナノバブルを含む液体中のナノバブルを生成して基板に供給する際に、ナノバブルの個数を把握して基板の処理ができる基板処理方法および基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の基板処理装置の好ましい実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の処理ユニットの構成例を示す図である。
【0013】
本発明の図である。
【図3】微小気泡生成ユニットの構造例を示す図である。
【図4】粒径の明確なPSL粒子と、容器内に収容された超純水を示す図である。
【図5】容器内のPSL混合液中のPSL標準粒子の個数を、液中パーティクルカウンタ86により計測する様子を示す図である。
【図6】容器内のPSL混合液から、投入したい個数のPSL標準粒子を含む液量のPSL混合液を採取して別の容器内に収容し、ナノバブル(NB)を多く含む液体Lの粒度分布を例えば光学的に計測する様子を示す図である。
【図7】PSL標準粒子の粒度分布と、ナノバブルの粒度分布例を示す粒度分布図である。
【図8】微小気泡Hの粒度分布測定する方法を示すフロー図である。
【図9】アスピレータの構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示す基板処理装置1は、カセットステーション2と、ロボット3と、複数の処理ユニット4,4を備えている。
【0016】
基板処理装置1は、枚葉式の基板処理を行う装置であり、カセットステーション2は、複数のカセット5,5を有しており、各カセット5は複数枚の基板Wを収容している。基板としては、例えば半導体ウェーハ基板である。
【0017】
ロボット3は、カセットステーション2と複数の処理ユニット4,4の間に配置されている。ロボット3は、各カセット5に収容されている基板Wを処理ユニット4側に搬送する。また、ロボット3は、処理ユニット4側の処理後の基板Wを、別のカセット5に搬送して戻す。各処理ユニット4は、基板Wを保持して回転させて、微小気泡を含む液体を供給することにより、例えば基板Wの表面を洗浄処理するのに用いられる。
【0018】
図2は、図1に示す基板処理装置1の処理ユニット4の構成例を示している。
【0019】
図2に示す枚葉式の処理ユニット4は、微小気泡生成装置10と、基板保持部11と、ノズル操作部12と、ダウンフロー用のフィルタ付きファン13と、カップ14と、ノズル15と、処理室16と、制御部20を有する。
【0020】
図2に示す基板保持部11は、円板のベース部材17と、回転軸18と、モータ19を有しており、ベース部材17の上には基板Wが着脱可能に固定される。処理室16内には、カップ14とノズル15とベース部材17とモータ19の回転軸18が収容されている。回転軸18の先端部にはベース部材17が固定されている。モータ19が制御部20の指令により動作することで、ベース部材17はR方向に連続回転することができる。
【0021】
図2に示すノズル15は基板Wの上部に配置されており、制御部20の指令により操作部12が動作すると、ノズル15はZ方向(上下方向)とX方向(基板Wの半径方向)に移動して、微小気泡の内のナノバブル(NB)を含む液体Lを、基板Wの面に供給もしくは噴射可能である。
【0022】
図2に示す微小気泡生成装置10は、容器30と、ガス供給部(気体供給部ともいう)31と、超純水タンク32と、脱気モジュール33と、微小気泡生成ユニット(微小気泡生成器ともいう)40と、バルブ34、36と、加圧圧送用ポンプ35と、配管47を有する。
【0023】
図2に示す容器30は、微小気泡を含む液体(例えばバブルを含む純水)を保存するタンクであり、例えば直方体形状を有する。容器30の内部には、仕切り部材46がZ方向に沿って設けられている。容器30の内部は、この仕切り部材46により、第1容器部分41と、第2容器部分42に仕切られている。
【0024】
この仕切り部材46が、容器30の内部を2つに区分けすることで、大きい容積の第1容器部分41と、第1容器部分41に比較して小さい容積の第2容器部分42が、容器30内に形成されている。しかし、この仕切り板46の下端部46Aと容器30の底部48との間には、隙間部分49が形成されている。第1容器部分41と、第2容器部分42は、この隙間部分49により通じている。
【0025】
容器30が第1容器部分41と第2容器部分42の2分割に仕切る効果としては、隙間49から液体Lを採取することで、ナノバブルを多く含む液体Lを採ることができることである。マイクロバブルのようなナノバブルよりも大きいバブルは浮力があるため浮上するが、タンクである容器30の高い位置から液体Lを採取すると、マイクロバブルも一緒に取ってしまうことから、容器30の底部にある隙間49から液体Lを採取することで、浮力の少ないナノバブルを採取することができる。
【0026】
図2に示すように、容器30は、容器30内の第1容器部分41と第2容器部分42がともに外気と同圧力になるように大気に開放されるために、上部開口37を有しており、この上部開口37は網部材38により覆われており、網部材38が設けられていることで、外部のほこりなどの異物が極力容器30内に入らないようになっている。
【0027】
図2に示すように、超純水タンク32は、配管44を用いて脱気モジュール33に接続されており、超純水タンク32内の純水は、脱気モジュール33を通過して脱気された後に、配管45とバルブ36を介して、第1容器部分41内に液体Lとして供給できる。バルブ36の開閉は、制御部20により制御できる。
【0028】
図2に示すように、ガス供給部31は、配管43を用いて微小気泡生成ユニット40に対して、ガス(気体)を供給する。配管43の途中にはバルブ34が設けられており、制御部20の指令によりバルブ34の開閉ができる。
【0029】
図2に示す微小気泡生成ユニット40は、第1容器部分41内の液体L中に浸漬した状態で配置されている。この微小気泡生成ユニット40は、図3に示すような構造を有している。
【0030】
図3は、微小気泡生成ユニット40の構造例を示している。
【0031】
図3に示す微小気泡生成ユニット40は、図2に示す第1容器部分41の液体L内に浸漬されているが、好ましくは微小気泡生成ユニット40の位置は、液体Lの水面に近い上方位置に位置されている。微小気泡生成ユニット40は、第1多孔質フィルタ81と第2多孔質フィルタ82を有している。
【0032】
図3に示す第1多孔質フィルタ81と第2多孔質フィルタ82とは、微小気泡発生機構部を構成しており、第1多孔質フィルタ81は、高分子フィルム等の多孔質体フィルムであり、例えばクレーズ(英語表記:Craze、日本語表記:細かいひび)131と、フィルム部132から構成されている。クレーズ131は、フィルム部132のクレーズには、複数のフィブリル(英語表記:fibril、日本語表記:微小繊維)133を有しており、各フィブリル133同士の隙間にあるボイド(英語表記:void、日本語表記:気孔)134が形成されている。
【0033】
ガス供給部31は、バルブ34と配管43を介して第1多孔質フィルタ81に対して加圧して、圧縮気体、例えばオゾンガスあるいは窒素ガスを供給できるようになっている。図3の矢印S方向に沿って、例えば0.3〜3.0kg/cmの加圧力で圧縮気体が与えられると、圧縮された気体が各フィブリル133同士の間のボイド134をぬって通過することで、多数の微小気泡Hが発生する。
【0034】
図3に示す第2多孔質フィルタ82は、第1多孔質フィルタ81のフィルム部132に対して密接して配置されている例えば不織布である。第2多孔質フィルタ82は、各フィブリル(微小繊維)133同士の間のボイド(気孔)134から発生した多数の微小気泡Hを第1多孔質フィルタ81から切り離すことによって、微小気泡同士の合体を起こさずに微小気泡Hのまま、第1容器部分41内の液体L中に出されることで、微小気泡Hを含んだ液体Lを生成する役目を果たす。このように第1容器部分41内の液体L中に出された微小気泡Hは、マイクロバブル(MB)、マイクロナノバブル(MNB)、ナノバブル(NB)を含んでいる。
【0035】
ここで、微小気泡は、マイクロバブル(MB)やマイクロナノバブル(MNB)、ナノバブル(NB)などの概念を含む微細気泡である。例えば、マイクロバブルは10μm〜数十μmの直径を有する気泡であり、マイクロナノバブルは数百nm〜10μmの直径を有する気泡であり、ナノバブルは数百nm以下の直径を有する気泡である。従って、ナノバブル(NB)の粒径は、マイクロバブル(MB)やマイクロナノバブル(MNB)の各粒径に比べてかなり小さい。
【0036】
図2に示す第1容器部分41の液体L内では、図3に示すように微小気泡生成ユニット40が微小気泡Hを生成すると、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)を浮上させながら、矢印Gで示すように、液体Lの対流を起こすことができる。第1容器部分41内の液体L中では、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)の粒径は、ナノバブル(NB)の粒径に比べて大きいので、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)の浮力が、ナノバブル(NB)の浮力に比べて大きい。このため、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)は、液体Lの液面から浮上して、上部開口37から矢印Z1方向に浮上して外部に離脱する。しかし、ナノバブル(NB)は、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)に比べて粒径が小さいので、液体Lの液面には浮上せずに液体L中に存在する。
【0037】
これにより、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)は、選択的に液体L中から離脱させ、ナノバブル(NB)は液体L中に残存させるようになっている。
【0038】
図2に示すように、容器30の側壁51には、配管47の一端部47Aと加圧圧送用ポンプ35が接続されている。この加圧圧送用ポンプ35の動作は、制御部20により制御できる。
【0039】
容器30が第1容器部分41と第2容器部分42の2分割に仕切る効果としては、隙間49から液体Lを採取することで、ナノバブルを多く含む液体Lを採ることができることである。マイクロバブルのようなナノバブルよりも大きいバブルは浮力があるため浮上するが、タンクである容器30の高い位置から液体Lを採取すると、マイクロバブルも一緒に取ってしまうことから、容器30の底部にある隙間49から液体Lを採取することで、浮力の少ないナノバブルを採取することができる。
【0040】
配管47の他端部47Cは、好ましくはアスピレータ60の上流側の一端部60Bに接続されている。このアスピレータ60の下流側の他端部60Cはノズル15に接続されている。このアスピレータ60は、ベンチュリー効果を応用したものである。アスピレータ60は、第2容器部分42内から配管47を経て送られてくる微小気泡を含む液体L中に、マイクロバブル(MB)やマイクロナノバブル(MNB)がまだ存在している場合に、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)をさらに細分化してナノバブル(NB)にするための微小気泡生成器である。
【0041】
従って、図2に示す微小気泡生成ユニット40が、第1段目の微小気泡生成器であるとすれば、このアスピレータ60は第2段目の微小気泡生成器である。しかし、このアスピレータ60は、必要に応じてノズル15の直前に設けても良いし、あるいは設けなくても良い。
【0042】
図2に示す加圧圧送用ポンプ35が動作すると、第2容器部分42内の液体Lが配管47側に圧送されるので、容器30の第1容器部分41内のナノバブル(NB)を多く含む液体Lが、隙間部分49を通り第2容器部分42内に誘導される。
【0043】
これにより、第2容器部分42内には、ナノバブル(NB)を多く含む液体Lが、基板Wの洗浄液として満たされて、ナノバブル(NB)を多く含む液体Lが加圧圧送用ポンプ35の圧送力により、配管47を介してアスピレータ60の一端部60B側に供給されるように構成されている。
【0044】
このアスピレータ60の内部には、ナノバブル(NB)を多く含む液体Lと気体を旋回させる機構が必要であるが、例えば図9に示す構造を採用できる。
【0045】
図9に示すように、微小気泡生成器としてのアスピレータ60は、液体Lと気体61を通すことで、第2段目の微小気泡発生器として使用することができる。アスピレータ60は、第1筒状部分321と第2筒状部分322を有しており、第1筒状部分321と第2筒状部分322は、軸方向に沿って直列に形成されている。
【0046】
図9に示すように、第1筒状部分321は、内部に流体通過部323を有しており、流体通過部323には先細り部材324が固定されている。先細り部材324は、流体の流れ方向MVに沿って少しずつ細くなっていくように先細りに形成されている。先細り部材324は流体の流出口326を有しており、先細り部材324の中には、中心軸に沿って流体の旋回流を形成する部材325が固定されている。
【0047】
また、第2筒状部材322は、流体の開放部327と出口部328を有しており、第2筒状部材322の内径は、流体の開放部327と出口部328に向けて流れ方向MVに沿って少しずつ大きくなっている。
【0048】
第1筒状部材321には、気体(ガス)61を導入するための管路61Rが接続されている。これにより、液体Lが第1筒状部分321の入口部319に流れ方向MVに沿って流入して、液体Lは旋回流を形成する部材325を通ることで旋回流となる。微小気泡を多く含む液体Lは、先細り部材324から流出口326で絞られて開放部327で圧力開放することで、この液体L中に溶存している気体を微小気泡に生成する。また、液体Lが流出口326で絞られて開放部327で圧力開放されることで、管路61Rからの気体61の流速は早くなるので、管路61Rから気体61を引き込む力を増大できることから、液体L中に微小気泡を生成することができる。
【0049】
アスピレータ60では、ナノバブルを多く含む液体をアスピレータ60中に投入することで、液体中に存在する大きいバブルであるマイクロバブルやマイクロナノバブルを微細化して、つまりナノバブルを生成させることができる。従って、ナノバブル量を増加させることができる。ナノバブル(NB)を多く含む液体L中にはさらにナノバブルを混合して、液体L中のナノバブル数を増加させた状態で、ノズル15から、回転している基板Wに対して供給もしくは噴射させることができるようになっている。なお、アスピレータ60に供給される気体(ガス)61は、微小気泡生成ユニット40に供給される気体(ガス)と同じものを採用できる。
【0050】
ナノバブル(NB)を含む液体Lを、基板Wに対して効率よく供給して基板Wを処理する際に、使用するナノバブル(NB)を含む液体L中のナノバブル(NB)の個数を把握できることが望まれる。
【0051】
そこで、図2に示すように、配管47には、別の配管71が接続されており、配管71にはバルブ99が設けられている。この配管71は、第2容器部分42内の微小気泡Hを多く含む液体Lの一部を、ナノバブル(NB)の個数を測定するためのサンプルとして収容するサンプル収容容器70に接続されている。
【0052】
これにより、サンプル収容容器70は、容器30の第2容器部分42内の微小気泡Hを多く含む液体Lのサンプルを収容して、粒度分布測定装置100が、サンプル収容容器70内の微小気泡Hを含む液体L中のナノバブル(NB)の粒度分布を測定して、ナノバブル(NB)の個数を測定できるようになっている。
【0053】
次に、図4〜図8を参照して、上述した容器30の第2容器部分42内の微小気泡Hを多く含む液体L中のナノバブル(NB)サイズの微小気泡Hの粒度分布測定をしてナノバブル(NB)の個数を測定する方法を説明する。
【0054】
図4は、予め粒径の明確なPSL標準粒子80と、混合用の容器182内に収容された純水、好ましくは超純水181を示している。
【0055】
予め粒径の明確な単一径のPSL標準粒子80とは、例えば乳化重合反応等により合成される高分子ラテックス粒子であり、使用されるPSL標準粒子80は例えば1μmの直径を有するPolyetyrene Latex(PSL)である。PSL標準粒子80は、真球度が高く粒径の揃ったものが比較的容易に作成できるので、粒径の正確な値づけを行った上で様々な粒子測定をする際の粒径の校正に用いられる。
【0056】
図5は、混合用の容器182内のPSL混合液85中のPSL標準粒子80の個数を、液中パーティクルカウンタ86により計測する様子を示す図である。図6は、混合用の容器182内のPSL混合液85から、投入したい個数のPSL標準粒子80を含む液量のPSL混合液85を採取して、別の測定用のサンプル収容容器70内に収容して、ナノバブル(NB)を多く含む液体L中のPSL標準粒子80の粒度分布と、各粒径のナノバブル(NB)の粒度分布を、例えば光学的に計測する様子を示す図である。
【0057】
図7は、PSL標準粒子80の粒度分布と、ナノバブル(NB)の粒度分布の例を示す粒度分布図である。図8は、微小気泡Hの粒度分布測定する方法を示すフロー図であり、図8ではステップS1〜ステップS6を有している。
【0058】
まず、図8のステップS1では、図4に示すようにマイクロサイズの単一径のPSL標準粒子、例えば1μmの粒径のPSL標準粒子80を含むPSL混合液85を作成して、図5に示すように液中パーティクルカウンタ86を用いて、PSL標準粒子数を計測する。ステップS1では、図4に示す超純水181は、混合用の容器182内に例えば1リットル収容される。図4に示すように、複数個のPSL標準粒子80を混合用の容器182内の超純水181に投入して混合することで、図5に示すように例えば1リットルのPSL混合液85が作られる。
【0059】
次に、図8のステップS1では、図5に示す混合用の容器182内のPSL混合液85中のPSL標準粒子80の個数を、液中パーティクルカウンタ86により計測する。この1リットルのPSL混合液85中のPSL標準粒子80の個数は、計測の結果例えば10万個であるとする。このように、予め粒径の明確なPSL標準粒子80を超純水に入れて混合して、液中パーティクルカウンタ等を用いて単位体積当たりのPSL標準粒子80の個数を計測した液体を基準液200とする。この基準液200におけるPSL標準粒子80の個数計測は、マイクロサイズの単一径のPSL標準粒子80を使用しているので、容易にできる。
【0060】
次に、図8のステップS2では、図6に示す混合用の容器182内のPSL混合液85から、投入したい個数のPSL標準粒子80を含む液量のPSL混合液85Rを採取して、サンプル収容容器70内に収容する。このPSL混合液85Rの採取量が例えば0.1リットルである場合には、採取したPSL混合液85R中の投入したいPSL標準粒子80の個数は、10万個/10=1万個である。
【0061】
一方、図8のステップS3では、ポンプ35を作動してバルブ99を開けることで、サンプル収容容器70内には、配管71を通じて第2容器部分42内のナノバブル(NB)を多く含む液体(ナノバブル液ともいう)Lを例えば10L入れる。これにより、サンプル収容容器70内では、ナノバブル(NB)を多く含む液体L中には、投入したい個数のPSL標準粒子80が含まれることになる。
【0062】
図8のステップS4では、粒度分布測定装置100に、必要量のナノバブル(NB)を多く含む液体Lを収容したサンプル収容容器70を設置して、ナノバブル(NB)を多く含む液体L中のPSL標準粒子80の粒度分布と、各粒径のナノバブル(NB)の粒度分布を、例えば光学的に計測する。
【0063】
図8のステップS5では、図7に示すように、図6の粒度分布測定装置100により得られた粒度分布例が得られる。この粒度分布例では、縦軸が粒度分布(%)を示し、横軸が粒径を示している。図7に示す粒度分布例には、PSL標準粒子80の粒度(1μm)分布F1と、ナノバブル(NB)を多く含む液体L中のナノバブル(NB)の粒度分布F2が、図6に示す粒度分布測定装置100の例えば液晶表示パネルのような表示部101において同時に表示される。
【0064】
図7に示すPSL標準粒子80の粒度(1μm)分布F1では、PSL標準粒子80の粒径(1μm)の位置にPSL標準粒子80のピーク値P1が表示されるので、このピーク値P1に対応する粒度分布(%)を読み取ることができ、この例の粒度分布は例えば50%である。
【0065】
これに対して、図7に示すナノバブル(NB)を多く含む液体L中のナノバブル(NB)の粒度分布F2では、例えば粒径が10nm〜300nmのナノバブル(NB)の粒度分布を示している。この粒度分布F2では、例えば粒径が100nmのナノバブル(NB)のピーク値P2が表示されるので、このピーク値P2に対応する粒度分布(%)を読み取ることができ、この粒度分布は例えば25%である。同様にして、粒径が10nmのナノバブル(NB)のピーク値P3が表示されるので、このピーク値P3に対応する粒度分布(%)を読み取ることができ、粒度分布は例えば20%である。さらに、粒径が300nmのナノバブル(NB)のピーク値P4が表示されるので、このピーク値P4に対応する粒度分布(%)を読み取ることができ、粒度分布は例えば25%である。
【0066】
図8のステップS6では、図6の粒度分布測定装置100の演算部102は、まず例えば粒径が100nmのナノバブル(NB)のピーク値P2に対応する粒度分布25%と、既知のPSL標準粒子80の粒度分布(%)50%と、の粒度分布比率(25%/50%)=0.5を求める。
【0067】
そして、この粒度比率0.5を、ナノバブル(NB)のPSL混合液85Rの採取量が例えば0.1リットルである場合における投入したPSL標準粒子80の既知の個数である10万個/10=1万個と、を乗ずることで、100μmのナノバブル(NB)の個数が1万個×0.5=5000個であるという結果が得られる。
【0068】
同様にして、粒径が10μmのナノバブル(NB)の個数が1万個×20%/50%=4000個であるという結果が得られ、粒径が300μmのナノバブル(NB)の個数が1万個×25%/50%=5000個であるという結果が得られることになる。
【0069】
以上説明したように、図4に示す予め粒径の明確なPSL標準粒子80を超純水181に入れて混合して、図5に示す液中パーティクルカウンタ86等を用いて単位体積当たりのPSL標準粒子80の個数を計測した液体を基準液200とする。
【0070】
そして、図6に示すように、この基準液200から必要とする個数分のPSL標準粒子80を含む液体を、ナノバブル(NB)を多く含む液体L中に投入する。図6に示す粒度分布測定装置100を用いて、この液体L中のPSL標準粒子80の粒度分布F1とナノバブル(NB)の粒度分布F2を求めて、PSL標準粒子80の粒度分布F1のピーク値(%)P1に対応するPSL標準粒子80の個数を基準として、各粒径のナノバブル(NB)の粒度分布のピーク値(%)P2(P3,P4)を乗じることで、各粒径のナノバブルの個数を高い信頼性で得ることができる。
【0071】
次に、図2と図3を参照して、上述した基板処理装置1の処理ユニット4による基板処理方法を説明する。
【0072】
本発明の実施形態では、図2に示す第1容器部分41内ではマイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)とナノバブル(NB)を含む液体Lから、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)を液体Lの液面からZ1方向に浮上させて放出して、ナノバブル(NB)を多く含む液体Lにする。そして、加圧圧送用ポンプ35の動作によりこのナノバブル(NB)を多く含む液体Lは、第1容器部分41から隙間部分49を通じて第2容器部分42に移す。
【0073】
第2容器部分42内にはナノバブル(NB)を多く含む液体Lが収容されており、第2容器部分42内から配管71を通じて、このナノバブル(NB)を多く含む液体L中のナノバブル(NB)を図6に示す測定用のサンプル収容容器70内にサンプルとして移すことで、粒度分布測定装置100はナノバブル(NB)の各粒径についての粒度分布を得て、各粒度の個数を測定できる。
【0074】
これにより、図2に示す第2容器部分42中のナノバブル(NB)を多く含む液体L中のナノバブル(NB)の各粒径の個数を、任意のタイミングで確認しながら、第2容器部分42のナノバブル(NB)を多く含む液体Lを、好ましくはアスピレータ60とノズル15側に圧送することができる。粒径を計測後のサンプル収容容器70内のナノバブル(NB)を多く含む液体Lは、捨てる。
【0075】
しかも、好ましくはこの圧送されたナノバブル(NB)を多く含む液体Lはさらにアスピレータ60を通過させることで、ナノバブルを多く含む液体中に存在するマイクロバブルやマイクロナノバブル等を微細化して、ナノバブルを生成させて、ナノバブルの数を増加させて、ノズル15から基板Wに対して供給もしくは噴射することができる。
【0076】
マイクロバブルやマイクロナノバブルを旋回させることで、剪断力で細分化させることでマイクロバブルやマイクロナノバブルをナノバブル化することと、液体Lをアスピレータに通すことで液体Lの溶存ガスが圧力開放によりバブルを生成することと、アスピレータにマイクロバブルやマイクロナノバブルを通すことで、マイクロバブルやマイクロナノバブル自体を圧縮させて、ナノバブル化することの3つの作用がある。
【0077】
マイクロバブル(MB)による基板に必要な反応抑制を極力防止することができるとともに、ナノバブル(NB)による基板Wの洗浄効果を上げることができる。ナノバブル(NB)は、マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)に比べて基板Wの表面において基板Wの表面の汚れと結びやすいので、洗浄効果が上がる。このため、基板の例えば洗浄作業が効率よく行え、基板の製造時の生産性を向上できる。
【0078】
本発明の実施形態では、微小気泡であるナノバブルを含む液体中のナノバブルを生成して基板に供給する際に、ナノバブルの個数を把握して基板の処理ができる。これまで十分には研究がなされていなかった各ナノサイズのバブルの個数分布は、粒径の明確なPSL標準粒子を用いて比較することで、高い信頼性で把握できる。通常、マイクロバブルとマイクロナノバブルサイズ以上の粒径の個数計測器は存在するものの、ナノサイズのバブルの個数を計測する装置はなく、総数を100%とした場合の粒度分布を把握する動的散乱またはレーザ回折式の計測器があるのみである。マイクロバブル(MB)とマイクロナノバブル(MNB)は信頼性の高い実個数がカウントでき、ナノサイズのバブルの粒度分布(粒径度数分布)%も信頼性の高い計測ができる。
【0079】
本発明の実施形態では、洗浄対象物である基板によって、必要な微小気泡の粒径を制御することで、例えば基板上の配線幅によって最適な微小気泡のバブル径を制御でき、これにより、基板上の微細配線パターンの倒れのダメージを回避できる。上述した微小気泡の粒径を制御は、微小気泡生成ユニット40にフィルタを配置して、このフィルタの孔径を変更することで行うのが望ましい。異なる孔径を有する複数のフィルタを用意しておいて、必要となる微小気泡の粒径に対応した孔径を有するフィルタを選択して交換する。
【0080】
本発明は、図示した実施形態に限定されない。粒径を計測後のサンプル収容容器70内のナノバブル(NB)を多く含む液体Lは、捨てるのであるが、このサンプル収容容器70内のナノバブル(NB)を多く含む液体Lを基板の処理に利用する場合には、液体L中からPSL標準粒子80をフィルタ等により除去する必要がある。
【0081】
本発明の実施形態では、ナノバブルを多く含む液体として純水を用いているが、この純水に代えて薬液を用いることで基板のエッチング処理を行うこともできる。処理の対象となる基板は、半導体基板や液晶表示基板等である。
【0082】
さらに、本発明の実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、本発明の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 基板処理装置
4 処理ユニット
10 微小気泡生成装置
15 ノズル
20 制御部
30 容器
35 加圧圧送用のポンプ
40 微小気泡生成ユニット
70 サンプル収容容器
82 混合用の容器
100 粒度分布測定装置
F1 標準粒子の粒度分布
F2 ナノバブルの粒度分布
P1 標準粒子の粒度分布F1のピーク値
P2 ナノバブルの粒度分布F2のピーク値
L 液体
W 被処理物である基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理をする基板処理方法であって、液体と気体を微小気泡生成装置により混合させてナノバブルを含む液体を生成して、前記ナノバブルを含む前記液体を前記基板に供給する際に、
予め粒径の確定している標準粒子を混合用の液体で混合し、前記標準粒子を混合した前記混合用の液体中の単位体積当たりの前記標準粒子の個数をカウンタで計測し、前記標準粒子の個数を計測した前記混合用の液体を基準液として、
投入したい個数の前記標準粒子を含む量の前記基準液を、前記ナノバブルを含む前記液体に入れて、粒度分布測定器により前記ナノバブルを含む前記液体中の前記標準粒子の粒度分布と、前記ナノバブルの粒度分布と、を求めて、
前記ナノバブルを含む前記液体中の前記標準粒子の前記粒度分布のピーク値に対応する前記投入した前記標準粒子の個数を基準として、前記ナノバブルの前記粒度分布のピーク値に対応する前記ナノバブルの個数を求めることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記標準粒子は、高分子ラテックス粒子であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記ナノバブルを含む前記液体と記混合用の液体は、純水であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
基板の処理をする基板処理装置であって、
液体と気体を混合させてナノバブルを含む液体を生成して、前記ナノバブルを含む前記液体を前記基板に供給する微小気泡生成装置と、
予め粒径の確定している標準粒子を混合用の液体で混合し、前記標準粒子を混合した前記混合用の液体中の単位体積当たりの前記標準粒子の個数を計測するカウンタと、
前記標準粒子の個数を計測した前記混合用の液体を基準液として、投入したい個数の前記標準粒子を含む量の前記基準液を、前記ナノバブルを含む前記液体に入れた状態で、前記ナノバブルを含む前記液体中の前記標準粒子の粒度分布と、前記ナノバブルの粒度分布と、を求めて、前記ナノバブルを含む前記液体中の前記標準粒子の前記粒度分布のピーク値に対応する前記投入した前記標準粒子の個数を基準として、前記ナノバブルの前記粒度分布のピーク値に対応する前記ナノバブルの個数を求める粒度分布測定器と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−129743(P2011−129743A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287374(P2009−287374)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】