説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】液体で濡れた基板表面を乾燥させる際に基板表面に形成されたパターンの倒壊が発生するのを防止しながら、基板表面を良好に乾燥させる。
【解決手段】リンスノズル8からのリンス液の吐出によりリンス処理を受けた基板表面Wf全体にはリンス液が盛られた状態で付着して、いわゆるパドル状のリンス層21が形成される。そして、近接ブロック3の対向面31が基板表面Wfに対して近接配置され、対向面31と基板表面Wfとに挟まれた間隙空間に液密層23が形成された状態で近接ブロック3が移動方向(−X)に移動するとともに、液密層23の上流側端部に向けて、液体に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分を含む溶剤ガスが供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体で濡れた基板表面を乾燥させる基板処理装置および基板処理方法に関するものである。なお、乾燥処理対象となる基板には、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
処理液による洗浄処理および純水などのリンス液によるリンス処理が行われた後、基板上面に液膜状に付着するリンス液を除去すべく、数多くの乾燥方法が従来より提案されている。そのうちのひとつとして、マランゴニ効果を利用した乾燥方法が知られている。この乾燥方法は、表面張力差によって生まれる対流(マランゴニ対流)により基板を乾燥させる方法であり、特に枚葉式の基板処理装置では、マランゴニ効果を利用した乾燥処理とスピン乾燥処理とを組み合わせた、いわゆるロタゴニー乾燥が知られている。
【0003】
このロタゴニー乾燥では、回転している基板の中心の上方からIPA(イソプロピルアルコール)ベーパと純水とをそれぞれノズルから基板に吹き付ける。そして、これらのノズルを徐々に基板の径方向外側に移動させていくことで、IPAベーパが吹き付けられている部分から乾燥がはじまり、基板の中心から周縁に乾燥領域が広がり基板全面を乾燥させている。つまり、基板上の純水を基板の回転に伴う遠心力の作用と、IPAベーパの吹き付けによるマランゴニ効果とにより基板から除去することで乾燥させている。
【0004】
また、マランゴニ効果を利用した他の基板の乾燥方法としては、例えば特許文献1に記載された乾燥方法が知られている。この乾燥方法を実行する基板処理装置は、洗浄処理とすすぎ(リンス処理)が施された基板を複数のローラにより搬送しながら、該基板を乾燥させる装置である。この装置では、基板の搬送経路に沿って支切り板と水切りブロックとが直列配置されている。このため、水滴が付着している基板が支切り板に搬送されてくると、その水滴の大半が支切り板により除去される。それに続いて、基板は水切りブロックに搬送されてくるが、搬送中の基板と水切りブロックとの間には、僅かの隙間が形成されているため、支切り板をすり抜けてきた水滴は毛細管現象によって水切りブロックの幅方向に拡散される。さらに、この水切りブロックの出口側では、IPAガスを混合させた不活性ガスが基板表面に向けて供給されている。このガス供給によってマランゴニ効果が生じて残存水滴が蒸発乾燥される。
【0005】
【特許文献1】特開平10−321587号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板表面に形成されるパターンの微細化が近年急速に進められているが、この微細化に伴って基板処理において新たな問題が生じることとなった。すなわち、乾燥処理を行っている間に、微細パターン同士が引き寄せられて倒壊する問題があった。具体的には、乾燥処理の進展に伴って液体と気体との界面が基板上に現れるが、微細パターン同士がパターンの間隙に発生する負圧によって引き寄せられて倒壊する問題があった。このパターンの間隙に発生する負圧の大きさは液体の表面張力に依存し、液体の表面張力が大きいほど大きくなる。そのため、純水で濡れた基板表面を乾燥させる場合には、純水よりも表面張力の小さな流体、例えばIPAを用いることがパターン倒壊防止に有効となっている。
【0007】
しかしながら、ロタゴニー乾燥では、基板を回転させながら基板の乾燥を行っているので次のような問題があった。すなわち、基板表面にIPAベーパを供給しても、基板の回転に伴う気流の影響により基板からすぐにIPAベーパが排出されてしまい、IPAを基板表面に付着する純水に十分に溶け込ませることができない。その結果、基板表面に付着する液体(純水+IPA)の表面張力を十分に低下させることができず、パターン倒壊防止に十分な効果を発揮することが困難となっていた。
【0008】
また、ロタゴニー乾燥では、基板の回転に伴う遠心力とIPAベーパの吹き付けによるマランゴニ効果とにより基板の中心から周縁にかけて乾燥領域を徐々に広げながら基板を乾燥させている。このため、基板に付着する純水に対して2種類の力、つまり遠心力とマランゴニ対流によって引き起こされる力とが作用する。しかしながら、ロタゴニー乾燥では、これら2種類の力のバランスを制御することが困難であり、気液固界面を制御することが事実上出来なかった。このため、気液固界面を一方向(径方向外向き)に、かつ均等な速度で移動させることができず、乾燥された基板表面領域が再び濡れるなどしてウォーターマーク発生等の乾燥不良を引き起こしてしまう場合があった。
【0009】
その一方で、特許文献1に記載された乾燥方法によれば、上記した基板の回転に伴う不具合を引き起こすことはないものの、次のような問題が発生する場合があった。すなわち、基板表面に付着している水滴の大半を支切り板で掻き落として除去した後、基板表面に残存する水滴を水切りブロックの配設位置に送り込んでいる。そのため、支切り板で水滴の大半が掻き落とされて除去された後の基板表面には、水滴が除去されて乾燥した領域のなかに水滴が斑状に存在することとなる。このような斑状の水滴のうち小さいものはマランゴニ効果によらずに自然乾燥により乾燥してしまう。特に、残存する水滴が少量になった場合には、水切りブロックと基板表面との間で基板表面の全面に水滴が入り込まないような事態が生じ、その結果、基板表面にマランゴニ効果によらずに自然乾燥により乾燥した領域が発生してしまう。このように基板表面が自然乾燥により乾燥すると、残存した水滴に溶出した溶出物が自然乾燥の間に析出するため、その析出した溶出物がウォーターマークとなって乾燥不良を招いてしまうという問題があった。
【0010】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液体で濡れた基板表面を乾燥させる際に、基板表面に形成されたパターンの倒壊が発生するのを防止しながら、基板表面を良好に乾燥させることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、液体で濡れた基板表面を乾燥させる基板処理装置であって、上記目的を達成するため、基板表面に対向する対向面を有し、該対向面が基板表面から離間配置されるとともに該対向面と基板表面とに挟まれた間隙空間に液体が満たされて液密層が形成された状態で、基板に対して所定の移動方向に相対移動自在な近接部材と、近接部材を基板に対して移動方向に相対移動させる駆動手段と、液体に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分を必須的に含む溶剤ガスを移動方向における液密層の上流側端部に向けて供給する溶剤ガス供給手段と、移動方向における液密層の上流側端部より下流側の基板表面全体にパドル状の液体層を形成する液体層形成手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
また、この発明は、液体で濡れた基板表面を乾燥させる基板処理方法であって、上記目的を達成するため、基板表面に対向する対向面を有する近接部材を、基板表面から対向面が離間するように配置することによって、対向面と基板表面とに挟まれた間隙空間に液体を満たして液密層を形成する工程と、液密層が形成された状態を維持しつつ近接部材を基板に対して所定の移動方向に相対移動させる工程と、液体に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分を必須的に含む溶剤ガスを移動方向における液密層の上流側端部に向けて供給する工程と、移動方向における液密層の上流側端部より下流側の基板表面全体にパドル状の液体層を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
【0013】
このように構成された発明(基板処理装置および方法)では、基板表面から近接部材の対向面が離間配置されるとともに、該対向面と基板表面とに挟まれた間隙空間に液体が満たされて液密層が形成される。そして、この状態を維持しつつ近接部材が基板に対して所定の移動方向に相対移動する。このため、該移動方向の上流側における液密層の界面(以下「上流側界面」という)、つまり気液固界面の位置が近接部材によってコントロールされ、上流側界面の乱れを防止することができる。また、液体に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分を必須的に含む溶剤ガスが上記移動方向における液密層の上流側端部に向けて供給される。これにより該上流側端部で溶剤成分が液体に溶解して液密層の上流側界面での表面張力が低下してマランゴニ対流が引き起こされる。これによって、液密層を構成する液体が移動方向の下流側に引っ張られて上流側界面も下流側に移動する。その結果、この界面移動に対応する基板表面領域が乾燥する。
【0014】
また、上記したように基板に付着する液体に溶剤ガスを溶解することにより乾燥を行っているので、基板表面に微細パターンが形成されていたとしても、パターンの倒壊を有効に防止しながら基板表面を乾燥させることができる。すなわち、上流側界面(気液固界面)の位置をコントロールしながら、マランゴニ効果により基板を乾燥させているので、上流側界面が移動方向に行きつ戻りつして液密層を構成する液体が微細パターンに負荷を与えることがなく、パターン倒壊を有効に防止しながら基板表面を乾燥させることができる。しかも、基板を回転させることなく乾燥処理を行っているため、基板の回転に伴う遠心力に起因してパターン倒壊を引き起こすことがない。さらに、パターンの隙間に存在する液体に対しても溶剤成分が溶解して該液体の表面張力を低下させる。また、基板の回転に伴う気流の影響により基板から溶剤ガスが拡散してしまうことがないため、溶剤ガスの濃度を高濃度に保つことができ、その結果、液体の表面張力の低下を促進することができる。これにより、パターンの間隙に発生する負圧を低減して、パターンの倒壊を効果的に防止することができる。
【0015】
また、移動方向における液密層の上流側端部より下流側の基板表面全体にパドル状の液体層を形成しているため、上流側界面の移動に伴って乾燥領域がパドル状の液体層形成領域に向かって広がっていくことから、液体で濡れた状態からマランゴニ効果により完全に乾燥した状態に直接移行することとなる。したがって、自然乾燥により乾燥した領域が基板表面に発生することはないため、溶出物の析出によるウォーターマークの発生を未然に防止することができる。
【0016】
ここで、液体層形成手段は、基板表面に対して液体を用いた所定の湿式処理を実行するとともに、該湿式処理の実行後に基板表面の全面にパドル状の液体層を形成する湿式処理手段を有し、基板表面の全面にパドル状の液体層が形成された後に、近接部材の対向面が基板表面から離間配置されて間隙空間に液密層が形成されるとしてもよい。この構成によれば、湿式処理手段を有効活用して、移動方向における液密層の上流側端部より下流側の基板表面全体にパドル状の液体層を形成することができるという利点がある。また、液体がリンス液で湿式処理がリンス処理であるとすると、リンス処理後にリンス液で濡れている基板表面を乾燥させる処理を好適に行うことができる。
【0017】
また、液体層形成手段は、近接部材の対向面が基板表面から離間配置されて間隙空間に液密層が形成される前に、基板表面に向けて液体を供給して基板表面の全面にパドル状の液体層を形成する第1液体供給手段を有するようにしてもよい。この構成でも、移動方向における液密層の上流側端部より下流側の基板表面全体にパドル状の液体層を形成することができる。この第1液体供給手段の具体的な構成としては、例えば基板表面に向けて液体を吐出する第1ノズルを有するようにしてもよい。
【0018】
また、近接部材の相対移動中に移動方向における液密層の上流側端部より下流側の基板表面に向けて液体を供給する第2液体供給手段をさらに備えるようにすると、パドル状の液体層が形成された状態を保持することができ、マランゴニ効果による乾燥の実行中に自然乾燥により乾燥した領域が発生するのをより確実に防止することができる。
【0019】
また、第2液体供給手段として、近接部材の対向面を除く非対向面に向けて液体を吐出する第2ノズルを設けて、該第2ノズルから吐出された液体を非対向面に沿って、対向面を規定する辺部のうち移動方向の上流側に位置する上流辺部に向けて導くようにしてもよい。このように構成しても、乾燥領域を除く基板表面に液体が供給されることにより、パドル状の液体層が形成された状態を保持することができる。また、この構成によれば、第2ノズルから吐出された液体を上流辺部に向けて導いて液密層の上流側界面に液体が供給されることで、上流側界面にて溶剤ガスが液体に溶解した溶液(液体+溶剤成分)中の溶剤成分濃度の変化が抑制される。これにより、基板表面の乾燥速度、つまりマランゴニ対流による液密層の上流側界面(気液固界面)の移動速度を一定にして、基板表面を均一に乾燥させることができる。その結果、乾燥不良を防止して基板表面を良好に乾燥させることができる。
【0020】
さらに、第2ノズルから吐出された液体を非対向面に沿って、対向面を規定する辺部のうち上流辺部とともに移動方向の下流側に位置する下流辺部に向けて導くようにしてもよい。この構成によれば、上記した液密層の上流側界面に液体を供給することによる効果に加えて、パドル状の液体層を保持する効果が得られる。しかも、上流側界面への液体の供給は乾燥領域に隣接する領域に液体を供給することとなるため、上流側界面への液体の供給量は微量であることが要求される。そこで、第2ノズルから吐出された液体の一部を上流辺部に向けて、残余を下流辺部に向けて導くようにすることで第2ノズルから吐出される液体の流量制御性を向上させることができる。
【0021】
また、近接部材は、非対向面として上流辺部と接続されるとともに該接続位置から移動方向の上流側を臨みながら基板表面から離れる方向に延設された延設面をさらに備えるようにし、第2ノズルから吐出された液体を延設面を介して上流辺部に向けて導くのが好ましい。この構成によれば、第2ノズルから吐出された液体が延設面に沿って上流辺部に向けて流下する間に該液体に溶剤ガスを溶け込ませることができる。したがって、液密層の上流側界面での表面張力を効果的に低下させることができ、マランゴニ対流を効率良く引き起こして基板表面に対する乾燥効率を高めることができる。
【0022】
また、近接部材の上流側端部の形状については、対向面と延設面とが鋭角をなすように構成するのが好ましい。この構成によれば、延設面を介して液体を液密層の上流側界面に徐々に流下させることが可能となり、液体が延設面を流下する間に確実に溶剤ガスを該液体に溶け込ませることができ、基板表面に対する乾燥効率をさらに高めることができる。
【0023】
また、近接部材は、延設面と対向して液体を上流辺部に向けて導く案内面をさらに備えるようにし、第2ノズルから吐出された液体で延設面と案内面との間を液密状態に満たしながら上流辺部に向けて液体を導くようにしてもよい。この構成によれば、上流側界面に液体を延設面と案内面との間でトラップしながら流下させることができるので、液体の供給量が微量であっても液体の流れを均一にすることができる。このため、上流側界面に供給される液体量を一定にして、基板表面を均一に乾燥させる上で非常に有効となっている。
【0024】
また、上記移動方向において液密層の上流側に位置する上流側雰囲気を取り囲むカバー部材を設けて、上流側雰囲気に溶剤ガスを供給するようにしてもよい。これにより、溶剤ガスがカバー部材によって閉じ込められ、上流側雰囲気における溶剤ガスの濃度を高濃度に保つことができる。その結果、液密層の上流側端部での表面張力の低下を促進させ、パターン倒壊防止効果を高めることができる。
【0025】
また、近接部材に、対向面の移動方向の上流側に基板表面に対向しながら離間配置されるとともに、ガス吐出口が開口された上流側対向部位をさらに設けて、ガス吐出口から溶剤ガスを液密層の移動方向の上流側に向けて吐出させるようにしてもよい。この構成によれば、ガス吐出口から吐出された溶剤ガスは液密層の上流側端部に接触した後、上流側対向部位と基板表面とに挟まれた空間を介して移動方向上流側あるいは移動方向に対して側方に排出されていく。そのため、溶剤ガスの流れを均等にして溶剤ガスの滞留を防止することができる。したがって、パーティクルの発生を抑制するとともに、基板表面を均一に乾燥させることができる。
【0026】
なお、近接部材は、(1)親水性材料であること、(2)清浄度が要求されること、(3)加工容易性等の観点から石英で形成するのが好ましい。
【0027】
また、本発明に用いられる溶剤ガスとしては、安全性、価格等の観点から溶剤成分としてIPA(イソプロピルアルコール)ベーパを含むガスを用いることが好ましい。なお、溶剤成分としてエチルアルコール、メチルアルコールの各種溶剤のベーパを用いるようにしてもよい。また、溶剤ガスは、このような溶剤のベーパそのものであってもよいが、基板表面に溶剤成分を送り込むために、窒素ガス等の不活性ガスをキャリアとして用いて、不活性ガスに溶剤成分を混合させたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、基板表面から離間配置された対向面と基板表面とに挟まれた間隙空間に液体を満たして液密層を形成した状態で基板に対して近接部材を所定の移動方向に相対移動させるとともに、移動方向における液密層の上流側端部に向けて液体に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分を必須的に含む溶剤ガスを供給している。これにより、上流側界面の位置を近接部材によってコントロールしつつ、上流側界面でマランゴニ対流が引き起こされ、上流側界面が下流側に移動して、該界面移動に対応する基板表面領域が乾燥する。また、移動方向における液密層の上流側端部より下流側の基板表面全体にパドル状の液体層を形成しているため、上流側界面の移動に伴って乾燥領域がパドル状の液体層形成領域に向かって広がっていくことから、液体で濡れた状態からマランゴニ効果により完全に乾燥した状態に直接移行し、自然乾燥により乾燥した領域が基板表面に発生することはなく、溶出物の析出によるウォーターマークの発生を未然に防止することができる。また、基板表面領域に微細パターンが含まれる場合であったとしても、上流側界面での表面張力を効果的に低下させているため、パターン倒壊を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<第1実施形態>
図1は、この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の部分拡大図である。詳しくは、図2(a)は基板処理装置の部分側面図であり、同図(b)はその平面図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着した汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、パターンが形成された基板表面Wfに対して薬液による薬液処理および純水やDIW(=deionized water)などのリンス液によるリンス処理を施した後、リンス処理を受けた基板Wに対して乾燥処理を行う装置である。この基板処理装置では、最終的にリンス処理を受けた基板Wには、リンス液が基板表面Wfの全体に付着した、いわゆるパドル状のリンス層21が形成されており、この状態で乾燥処理を実行する。
【0030】
この基板処理装置は、基板Wをその表面Wfを上方に向けた状態で水平に保持して回転させるスピンチャック1と、スピンチャック1に保持された基板Wと対向しながら離間配置される近接ブロック3と、基板Wの上方から溶剤ガスを吐出する溶剤ガスノズル5と、基板表面Wfに向けてリンス液を吐出するリンスノズル8とを備えている。
【0031】
スピンチャック1は、回転支柱11がモータを含むチャック回転駆動機構13の回転軸に連結されており、チャック回転駆動機構13の駆動により鉛直軸回りに回転可能となっている。この回転支柱11の上端部には、円盤状のスピンベース15が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4からの動作指令に応じてチャック回転駆動機構13を駆動させることによりスピンベース15が鉛直軸回りに回転する。
【0032】
スピンベース15の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン17が立設されている。チャックピン17は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース15の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン17のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部17aと、基板支持部17aに支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部17bとを備えている。各チャックピン17は、基板保持部17bが基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部17bが基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0033】
スピンベース15に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン17を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン17を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン17は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース15から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。基板Wは、その表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0034】
さらに、基板Wに対して薬液処理およびリンス処理を実行する際に、薬液およびリンス液が基板Wの周辺に飛散するのを防止するために、スピンベース15の周囲に飛散防止カップ19が配備されている。この飛散防止カップ19は、基板搬送手段(図示せず)がスピンベース15に対して基板Wが受渡しされる際、および後述するようにして近接ブロック3により基板表面Wfに対して乾燥処理を実行する際には、基板搬送手段および近接ブロック3との干渉を避けるため制御ユニット4からの制御信号に応じて、薬液およびリンス液を捕集可能な上方位置(図1の実線位置)から下方に退避した下方位置(図1の破線位置)に駆動される。
【0035】
図3は、近接ブロックの斜視図である。近接ブロック3は、本発明の「近接部材」として、垂直断面形状が略台形となっている直角柱体であり、その一側面がリンス液で濡れた基板表面Wfと対向する対向面31となっている。近接ブロック3は水平方向に移動自在に設けられ、ブロック駆動機構41が近接ブロック3の図3中、上下の両側部に連結されている。そのため、制御ユニット4からの動作指令に応じてブロック駆動機構41を作動させることで近接ブロック3を所定の速度で水平方向Xに往復移動可能となっている。つまり、ブロック駆動機構41の作動により近接ブロック3を基板Wの側方に退避した退避位置(図1の破線位置)から水平方向Xに移動させることで、近接ブロック3を基板表面Wfに近接して対向させながら基板全面にわたって後述する乾燥処理を実行可能となっている。
【0036】
この実施形態では、水平方向Xのうち同図の左手方向(−X)に近接ブロック3を移動させることで乾燥処理を実行しており、この水平方向(−X)が本発明の「所定の移動方向」に相当しているため、以下の説明においては、水平方向(−X)を単に「移動方向」と称する。なお、ブロック駆動機構41としては、水平方向Xに延設されたガイドおよびボールネジに沿ってモータ駆動により近接ブロック3を移動させる送りネジ機構などの公知の機構を採用することができる。このように、この実施形態ではブロック駆動機構41が本発明の「駆動手段」として機能している。
【0037】
近接ブロック3の他の側面32は移動方向の上流側(+X)で、かつ上方を向いた面となっている。詳しくは、側面32が対向面31を規定する辺部のうち移動方向の上流側(+X)に位置する上流辺部33と接続されるとともに該上流辺部33から移動方向の上流側(+X)を臨みながら基板表面Wfから離れる方向に傾斜して延設されており、本発明の「延設面」に相当している。上流辺部33は、移動方向に対して直交する方向(図2(b)の上下方向、以下「幅方向」という)に延びるとともに、幅方向の長さ、即ち対向面31の幅方向の長さが基板径とほぼ同等あるいはそれ以上の長さで形成されており、近接ブロック3が移動方向に移動されることで、基板表面全体を処理可能となっている。また、近接ブロック3の上流側端部では、対向面31と側面(延設面)32とが鋭角θをなしている。
【0038】
そして、対向面31が基板表面Wfから僅かに離間するように、しかもチャックピン17の基板保持部17bと干渉しないように近接ブロック3を配置することで基板表面Wfにパドル状態で付着しているリンス層21を構成するリンス液の一部が毛細管現象により対向面31と基板表面Wfとに挟まれた間隙空間SP全体に入り込んで液密層23が形成される。なお、このような近接ブロック3は、(1)親水性材料であること、(2)清浄度が要求されること、(3)加工容易性等の観点から石英で形成することが好ましい。
【0039】
近接ブロック3の上流側端部の上方には、移動方向の上流側(+X)における液密層23の端部、つまり上流側端部231に向けて溶剤ガスを供給するための溶剤ガスノズル5が配設されている。溶剤ガスノズル5は溶剤ガス供給ユニット43と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて溶剤ガス供給ユニット43を作動させることで溶剤ガスを溶剤ガスノズル5に圧送する。溶剤ガスとしては、リンス液(純水の場合、表面張力:72dyn/cm)に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分、例えばIPA(イソプロピルアルコール)ベーパ(表面張力:21〜23dyn/cm)を窒素ガス等の不活性ガスに混合させたものが用いられる。なお、溶剤成分はIPAベーパに限定されず、エチルアルコール、メチルアルコールの各種溶剤のベーパを用いるようにしてもよい。要はリンス液に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分であればよい。このように、この実施形態によれば、溶剤ガスノズル5および溶剤ガス供給ユニット43が本発明の「溶剤ガス供給手段」として機能している。
【0040】
このような溶剤ガスノズル5は1本でも幅方向にわたって溶剤ガスを拡散させて液密層23の上流側端部231全体に供給することが可能であるが、幅方向に複数本のノズルあるいは幅方向に複数の吐出孔を開口させたノズルを配設することにより、液密層23の上流側端部231全体にわたって均等に溶剤ガスを供給することができる。
【0041】
図4は、溶剤ガス供給ユニットの構成の一例を示す図である。この溶剤ガス供給ユニット43は、溶剤成分としてIPA液体を貯留する溶剤タンク51を備え、溶剤タンク51内の貯留空間のうちIPA液体が貯留されている貯留領域SRが配管52を介して窒素ガス供給部53に連通されている。また、溶剤タンク51内の貯留空間のうちIPA液体が貯留されていない未貯留領域USが配管54を介して溶剤ガスノズル5に連通されている。したがって、窒素ガス供給部53から窒素ガスを溶剤タンク51に圧送することでIPA液体がバブリングされ、窒素ガスにIPAが溶解して溶剤ガス(窒素ガス+IPAベーパ)が生成され、未貯留領域USに出現する。配管54には、開閉弁55および溶剤ガス用の流量制御部56が介挿されており、窒素ガス供給部53、開閉弁55、流量制御部56を制御ユニットにより動作制御することで溶剤ガスノズル5への溶剤ガスの供給・供給停止を制御することができる。また、IPAベーパの溶剤ガス中の濃度を高めるために、配管52に温調部57を介装して、窒素ガスを高温側に温調するようにしてもよい。これにより、液密層23の上流側端部231での表面張力を効率良く低下させ、乾燥を促進させることができる。なお、窒素ガスを温調することに替えて、溶剤タンク51に貯留されるIPA液体を温調してもよい。これに対して、未貯留領域USに出現した溶剤ガス自体を高温側に温調することは、基板表面Wfからリンス液への溶出物の溶出を促進させる結果となることから好ましくない。
【0042】
溶剤ガスノズル5は近接ブロック3と同期して移動方向に移動されるように構成されている。すなわち、溶剤ガスノズル5と近接ブロック3とはリンク機構(図示せず)によって連結されており、ブロック駆動機構41の作動により近接ブロック3と溶剤ガスノズル5とが一体的に移動方向に移動する。これにより、近接ブロック3の移動中に、近接ブロック3と溶剤ガスの吐出位置との間隔が予め定められた離間距離に保たれる。その結果、液密層23の上流側端部231に吹き付けられる溶剤ガスの物理特性(流速や流量など)が安定し、乾燥処理を安定して良好に行うことができる。なお、溶剤ガスノズル5に独立した駆動手段を設けて溶剤ガスノズル5を近接ブロック3と連動して移動させるように構成してもよいが、溶剤ガスノズル5と近接ブロック3とを単一の駆動手段により一体的に移動させることにより、駆動構成を簡素化できる。
【0043】
基板Wの上方には、基板Wのほぼ中心に対応する処理位置(図1の破線位置)と基板Wから外れた退避位置(図1の実線位置)との間で移動可能にリンス液供給用のリンスノズル8が設けられている。このリンスノズル8にはリンス液供給ユニット48が接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じてリンス液供給ユニット48を作動させることでリンス液をリンスノズル8に圧送する。これによりリンスノズル8から基板表面Wfにリンス液が供給されてリンス処理が実行される。そして、リンス処理の実行後に、リンス液が基板表面Wfの全体に付着した、いわゆるパドル状のリンス層21が形成される。このように、この実施形態によれば、リンス処理が本発明の「湿式処理」に相当し、リンスノズル8およびリンス液供給ユニット48が本発明の「液体層形成手段」および「湿式処理手段」として機能している。
【0044】
次に、上記のように構成された基板処理装置における乾燥動作について図5および図6を参照しつつ説明する。図5は、図1の基板処理装置の動作を示す模式図である。また、図6は、近接ブロックの移動による乾燥動作を示す図である。基板搬送手段(図示せず)によって未処理の基板Wが装置内に搬入されると、制御ユニット4は飛散防止カップ19をスピンベース15を包囲する上方位置(図1の実線位置)に配置して、基板Wに対して洗浄処理(薬液処理+リンス処理+乾燥処理)を実行する。先ず、基板Wに対して薬液が供給され、所定の薬液処理が実行された後、基板Wに対してリンス処理が実行される。すなわち、図5(a)に示すように、基板Wのほぼ中心に対応する処理位置(図1の破線位置)に配置されたリンスノズル8から基板表面Wfにリンス液を供給するとともに、チャック回転駆動機構13の駆動により基板Wを回転させることでリンス液が遠心力により広げられ基板表面Wf全体がリンス処理される。
【0045】
所定時間のリンス処理が終了すると、基板Wの回転が停止され、リンスノズル8が退避位置(図1の実線位置)に移動する。リンス処理を受けた基板表面Wf全体にはリンス液が盛られた状態で付着して、いわゆるパドル状のリンス層21が形成される(図5(b))。なお、リンス処理終了後に改めてリンスノズル8からリンス液を吐出させて基板表面Wfの全体にパドル状のリンス層21を形成するようにしてもよい。
【0046】
そして、制御ユニット4は飛散防止カップ19を下方位置(図1の破線位置)に下降させて、スピンベース15を飛散防止カップ19の上方から突出させた後、基板表面Wfに対する乾燥処理を実行する。すなわち、図5(c)に示すように、ブロック駆動機構41を作動させることで近接ブロック3を一定速度で移動方向(−X)に移動させるとともに、溶剤ガス供給ユニット43を作動させて溶剤ガスノズル5から溶剤ガスを吐出させる。
【0047】
このように対向面31と基板表面Wfとに挟まれた間隙空間SPにはリンス液(液体)が満たされて液密層23が形成されており、例えば図6(a)に示す状態から同図(b)に示す状態に近接ブロック3が移動方向(−X)に移動すると、移動方向における液密層23の上流側端部231が近接ブロック3から外れて露出する。このとき液密層の上流側端部231に向けて供給された溶剤ガスが液密層23を構成する液体に溶解して液密層23の上流側界面231a(気液固界面)での表面張力が低下してマランゴニ対流が引き起こされる。これによって、液密層23を構成する液体が移動方向の下流側(−X)に引っ張られて上流側界面231aも下流側に移動し、この界面移動に対応する基板表面領域が乾燥する。
【0048】
また、上記のように上流側界面231aの移動に伴って乾燥領域が移動方向の下流側(−X)に広がっていくが、基板表面Wf全体が乾燥されるまでの間、上流側界面231aに対して移動方向の下流側では、リンス液(液体)が基板表面Wfと接液してパドル状のリンス層21が形成された状態となっている。このため、基板表面Wfからリンス液(液体)が自然乾燥によって乾燥するような事態が発生しない。
【0049】
このように近接ブロック3および溶剤ガスノズル5を移動方向(―X)に移動させていくことで、乾燥される基板表面領域、つまり乾燥領域が広がっていく。したがって、近接ブロック3および溶剤ガスノズル5を基板全面に対してスキャンさせることで基板表面Wf全体を乾燥させることができる。
【0050】
こうして基板表面Wfに対する乾燥処理が終了すると、裏面Wbに付着した液体成分を基板Wから除去するために、裏面Wbに対する乾燥処理を実行する。すなわち、図5(d)に示すように、制御ユニット4は飛散防止カップ19を上方位置に配置するとともに、チャック回転駆動機構13の駆動により基板Wを回転させることで裏面Wbに付着する液体成分の振り切り処理(スピンドライ)を実行する。その後、制御ユニット4は、飛散防止カップ19を下方位置に配置させて、スピンベース15を飛散防止カップ19の上方から突出させる。この状態で基板搬送手段が処理済の基板Wを装置から搬出して、1枚の基板Wに対する一連の洗浄処理が終了する。
【0051】
以上のように、この実施形態によれば、近接ブロック3を基板表面Wfに対して近接させて液密層23を形成した状態で近接ブロック3を移動方向に移動させるとともに、液密層23の上流側端部231に向けて、液密層23を構成する液体に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分を含む溶剤ガスを供給している。これにより、上流側界面231a(気液固界面)の位置をコントロールしつつ、上流側端部231でマランゴニ対流を引き起こして上流側界面231aを下流側に移動させることで基板表面領域を乾燥させている。このように、近接ブロック3により上流側界面231aの乱れを防止しながらマランゴニ効果によって基板表面領域を乾燥させることができ、該基板表面領域でのウォーターマーク等の乾燥不良の発生を防止することができる。
【0052】
また、リンス処理終了時に基板表面Wfの全体にパドル状のリンス層21を形成しているため、基板表面Wfに斑状に残存したリンス液の液滴が自然乾燥により乾燥するような事態の発生を避けることができ、これによってウォーターマーク等の乾燥不良の発生を未然に防止することができる。
【0053】
また、図6に示すように基板表面領域に微細パターンFPが形成されていたとしても、上流側界面231a(気液固界面)の位置をコントロールしながら、マランゴニ効果により基板表面Wfを乾燥させているので、上流側界面231aが移動方向に行きつ戻りつして液密層23を構成する液体が微細パターンFPに負荷を与えることがなく、パターン倒壊を有効に防止しながら基板表面Wfを乾燥させることができる。また、基板Wを回転させることなく基板表面Wfに対して乾燥処理を行っているため、基板Wの回転に伴う遠心力に起因してパターン倒壊を引き起こすことがない。さらに、微細パターンFPの隙間に存在する液体に対しても溶剤成分が溶解して該液体の表面張力を低下させることにより、パターンの間隙に発生する負圧を低減して、パターンの倒壊を効果的に防止することができる。
【0054】
<第2実施形態>
図7は、この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。具体的には、同図(a)は基板処理装置の部分側面図であり、同図(b)はその平面図である。この第2実施形態にかかる基板処理装置が第1実施形態と大きく相違する点は、近接ブロック3にカバー部材58が装着されている点である。なお、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同様であるため、ここでは同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
この実施形態では、移動方向において近接ブロック3の上流側(+X)には、液密層23の上流側端部231の全体を覆うようにカバー部材58が近接ブロック3に取り付けられている。これにより、液密層23の上流側(+X)に位置する上流側雰囲気UAがカバー部材58によって取り囲まれる。カバー部材58の上面には、1個または幅方向に複数個のガス供給孔581が形成されており、ガス供給孔581を介して溶剤ガス供給ユニット43とカバー部材58で取り囲まれた上流側雰囲気UAとが連通されている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて溶剤ガス供給ユニット43が作動することで溶剤ガス供給ユニット43から上流側雰囲気UAに溶剤ガスが供給される。したがって、溶剤ガスがカバー部材58によって閉じ込められ、上流側雰囲気UAにおける溶剤ガスの濃度を高濃度に保つことができる。その結果、液密層23の上流側端部231での表面張力の低下を促進させ、パターン倒壊防止効果を高めることができる。しかも、このカバー部材58は、移動方向の長さが幅方向に亘って同一寸法になっている。これにより、カバー部材58の内部に、移動方向の長さが幅方向(長手方向)に均一な空間を含んで、幅方向に溶剤ガスの濃度を均一に保つことができる。その結果、幅方向に均一に基板表面Wfを乾燥させることができる。
【0056】
<第3実施形態>
図8は、この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。また、図9は図8の基板処理装置の部分拡大図である。詳しくは、図9(a)は基板処理装置の部分側面図であり、同図(b)はその平面図である。この第3実施形態にかかる基板処理装置が第1実施形態と大きく相違する点は、近接ブロック3の相対移動中に、移動方向において近接ブロック3の下流側の基板表面Wfのリンス層21に向けて液体を追加供給している点である。なお、その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、ここでは同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
この第3実施形態では、移動方向において近接ブロック3の下流側であって、基板Wの上方位置に液体供給用の液体ノズル7が1本または複数本設けられている。この液体ノズル7には液体供給ユニット45が接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて液体供給ユニット45を作動させることで基板Wに付着するリンス液と同一成分の液体を液体ノズル7に圧送する。これにより液体ノズル7から基板表面Wfに接液するリンス層21に液体が供給される。これにより、液密層23の上流側端部231よりも移動方向の下流側において、基板表面Wfにパドル状のリンス層21が形成された状態が確実に保持される。このように、この実施形態では、液体ノズル7および液体供給ユニット45が本発明の「第2液体供給手段」として機能している。
【0058】
このように、この実施形態によれば、基板表面Wf全体が乾燥されるまでの間、液体ノズル7からリンス層21に液体を供給することで、液密層23の上流側端部231よりも移動方向の下流側(−X)において基板表面Wfにパドル状のリンス層21が形成された状態を保持している。したがって、基板表面Wfから液体が自然乾燥により乾燥する領域が発生するのを確実に避けることができ、基板表面Wfの全体をマランゴニ効果のみによって乾燥させることができる。その結果、ウォータマークの発生を確実に防止して基板表面Wfを良好に乾燥させることができる。
【0059】
<第4実施形態>
図10は、この発明にかかる基板処理装置の第4実施形態を示す図である。この第4実施形態にかかる基板処理装置が第2実施形態と大きく相違する点は、近接ブロック3の相対移動中に近接ブロック3の上面34に液体を追加供給している点である。すなわち、この第4実施形態は、第3実施形態に対して、近接ブロック3にカバー部材58を装着するとともに、基板表面Wfに接液するリンス層21に直接に液体を追加供給するのに替えて、近接ブロック3の上面34に液体を追加供給する点で相違している。なお、その他の構成および動作は第2、第3実施形態と同様であるため、ここでは同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
この実施形態では、近接ブロック3の上方位置に液体供給用の液体ノズル71が1本または幅方向に沿って複数本設けられている。この液体ノズル71には液体供給ユニット45が接続されており、近接ブロック3の移動とともに、液体供給ユニット45から基板Wに付着するリンス液と同一成分の液体が液体ノズル71に圧送され、該液体ノズル71から近接ブロック3の上面34に向けて吐出される。これにより、液密層23の上流側界面231aの移動とともに近接ブロック3の上面34に液体が供給される。このように、この実施形態では、液体ノズル71が本発明の「第2ノズル」として機能し、液体ノズル71および液体供給ユニット45が本発明の「第2液体供給手段」として機能している。
【0061】
近接ブロック3の上面34に供給された液体は、上面34から側面32(延設面)に沿って上流辺部33に向けて流下する一方、上面34から近接ブロック3の下流側を臨む側面35に沿って、対向面31を規定する辺部のうち移動方向の下流側(−X)に位置する下流辺部36に向けて流下する。これにより、上流辺部33に向けて流下した液体は液密層23の上流側界面231aに供給される一方、下流辺部36に向けて流下した液体はリンス層21と液密層23との境界部分に供給される。その結果、上流側界面231aまたは該上流側界面231aよりも移動方向の下流側(−X)において基板表面Wfと接液するリンス層21に液体が追加供給される。したがって、第3実施形態と同様に、基板表面Wfが自然乾燥により乾燥する領域が発生するのをより確実に防止して基板表面Wfを良好に乾燥させることができる。このように、この実施形態によれば、側面32、34、35が本発明の「非対向面」として機能している。
【0062】
また、この実施形態によれば、液体ノズル71から吐出された液体が側面32に沿って上流辺部33に向けて流下する間に該液体に溶剤ガスを溶け込ませることができる。これにより、基板表面Wfに接液するリンス液(液体)に対して表面張力が低下された液体が液密層23の上流側界面231aに効率良く送り込まれる。したがって、上流側界面231aでの表面張力を効果的に低下させることができ、マランゴニ対流を効率良く引き起こして基板表面Wfに対する乾燥効率を高めることができる。しかも、この実施形態によれば、対向面31と側面(延設面)32とが鋭角をなすように構成しているので、側面(延設面)32を介して液体を液密層23の上流側界面231aに徐々に流下させることが可能となり、液体が側面32を流下する間に確実に溶剤ガスを該液体に溶け込ませることができる。その結果、基板表面Wfに対する乾燥効率をさらに高めることができる。
【0063】
さらに、この実施形態によれば、次のような優れた作用効果を発揮することができる。すなわち、基板表面Wfに向けて近接ブロック3を介して液体を供給、より具体的には近接ブロックの側面32、34、35に沿って液体を基板表面Wfに供給しているので液体ノズル71から吐出された液体は近接ブロック3により整流されて基板表面Wfに導かれる。このため、基板表面Wfに直接に液体を供給する場合と比較して、液体の流れを均一にして液体を基板表面Wfに供給することができ、液体が飛散するなどして基板表面Wfに液滴残りが発生するのを抑制することができる。
【0064】
また、基板表面Wfの乾燥不良を防止する上では、乾燥速度、つまり液密層23の上流側界面231aの移動速度を一定とすることが望ましい。この実施形態は、このような乾燥速度を一定とする上でも、非常に有効となっている。すなわち、この実施形態によれば、液密層23の上流側界面231aに液体が供給されることで、上流側界面231aにて、溶剤成分が液体に溶解した溶液(液体+溶剤成分)中の溶剤成分濃度の変化を抑制することができる。これにより、上流側界面231aでの表面張力の低下度合いをほぼ一定として、マランゴニ対流による上流側界面231a(気液固界面)の移動速度を一定にすることができる。このように、上流側界面231aの移動速度を一定にすることで、基板表面Wfへの液滴残りを防止しながら基板表面Wfを均一に乾燥させることができる。
【0065】
また、液密層23の上流側界面231aへの液体の供給は乾燥領域に隣接する領域に液体を供給することとなるため、上流側界面231aへの液体の供給量は微量であることが要求される。これに対して、この実施形態によれば、液体ノズル71から吐出された液体の一部を上流辺部33に向けて、残余を下流辺部36に向けて導くように構成しているので、液体ノズル71から吐出される液体の流量制御性を向上させることができる。
【0066】
<第5実施形態>
図11は、この発明にかかる基板処理装置の第5実施形態を示す図である。この第5実施形態にかかる基板処理装置が第4実施形態と大きく相違する点は、液体ノズル71から吐出された液体を側面32との間で液密状態に満たしながら上流辺部33に向けて導くための構成を追加している点と、溶剤ガスの滞留を防止するための構成を追加している点である。なお、その他の構成および動作は基本的に第4実施形態と同様であるため、ここでは同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
この実施形態では、近接ブロック3は、上記実施形態で用いられ、対向面31と基板表面Wfとに挟まれた間隙空間SPに液密層23を形成する本体部3aと、移動方向において本体部3aの上流側(+X)に該本体部3aと対向して配設された対向部3bとを備えている。対向部3bは本体部3aと同様に、垂直断面形状が略台形となっている直角柱体であり、その一側面が本体部3aの側面(延設面)32と対向して、液体ノズル71から吐出された液体を上流辺部33に向けて導く案内面37となっている。そして、液体ノズル71から吐出された液体は、上面34から側面(延設面)32と案内面37との間を液密状態に満たしながら上流辺部33に向けて流下していく。したがって、液密層23の上流側界面231aに液体を側面32と案内面37との間でトラップしながら流下させることができるので、上流辺部33に向けて導かれる液体の供給量が微量であっても液体の流れを均一にすることができる。このため、上流側界面231aに供給される液体量を一定にして、マランゴニ対流による上流側界面231a(気液固界面)の移動速度を一定速度にコントロールすることができる。したがって、基板表面Wfを均一に乾燥する上で非常に有効となっている。また、上記実施形態と同様に、液体の追加供給によりパドル状のリンス層21が形成された状態を保持することができ、基板表面Wfにおいて自然乾燥により乾燥する領域が発生するのをより確実に防止して、基板表面Wfを良好に乾燥させることができる。
【0068】
また、対向部3bの下面38(本発明の「上流側対向部位」に相当)は、基板表面Wfと対向する対向面となっており、該下面38にはガス吐出口39が開口されている。対向部3bの内部には、溶剤ガス供給ユニット43と連通されたマニホールド40が設けられており、制御ユニット4からの動作指令に応じて溶剤ガス供給ユニット43が作動することで溶剤ガス供給ユニット43から溶剤ガスがマニホールド40に供給される。さらに、マニホールド40からガス吐出口39を介して溶剤ガスが液密層23の上流側端部231に向けて吐出される。このため、ガス吐出口39から吐出された溶剤ガスは液密層23の上流側端部231に接触した後、対向部3bの下面38と基板表面Wfとに挟まれた空間を介して移動方向上流側(−X)あるいは移動方向に対して側方、つまり幅方向に排出されていく。そのため、溶剤ガスの流れを均等にして溶剤ガスの滞留を防止することができる。したがって、パーティクル発生を抑制するとともに、上流側界面231aに溶剤ガスを均一に供給して基板表面Wfを均一に乾燥させることができる。
【0069】
<第6実施形態>
図12は、この発明にかかる基板処理装置の第6実施形態を示す図である。この第6実施形態にかかる基板処理装置が第5実施形態と大きく相違する点は、近接ブロック3を移動させながら液体ノズル71から近接ブロック3に液体を供給するのに替えて、近接ブロック3への液体の供給を近接ブロック3による基板表面Wfに対するスキャン実行前に行っている点である。なお、その他の構成および動作は第5実施形態と同様である。
【0070】
この実施形態では、移動方向において近接ブロック3の初期位置、つまり近接ブロック3が基板表面Wfに対向配置され、基板表面Wfに対するスキャンを実行する直前に液体を側面(延設面)32と案内面37との間に供給しておく。そして、近接ブロック3が基板表面Wfに対してスキャンされると、つまり上記した初期位置から移動方向に移動されると、側面(延設面)32と案内面37との間から徐々に液体が上流辺部33に向けて流下して、上流側界面231aに供給される。乾燥領域に隣接する上流側界面231aに供給する液体の供給量は微量であることから、このように側面32と案内面37との間に溜めた液体によって、基板表面Wf全体を十分に乾燥させることができる。また、1枚の基板Wの全面を乾燥処理する間、上流側界面231aに継続して適量の液体を供給するように、対向面31と側面32との間の角度を最適化して近接ブロック3を形成しておくことが好ましい。
【0071】
この実施形態によれば、第5実施形態と同様にして、液密層23の上流側界面231aに液体を側面32と案内面37との間でトラップしながら流下させることができるので、上流辺部33に向けて導かれる液体の供給量が微量であっても液体の流れを均一にすることができる。このため、上流側界面231aに供給される液体量を一定にして、基板表面Wfを均一に乾燥させることができる。さらに、液体ノズル71を近接ブロック3と同期して移動させる必要がないため、装置構成を簡素化することができる。また、上記実施形態と同様に、液体の追加供給によりパドル状のリンス層21が形成された状態を保持することができ、基板表面Wfにおいて自然乾燥により乾燥する領域が発生するのをより一層確実に防止して、基板表面Wfを良好に乾燥させることができる。
【0072】
<第7実施形態>
図13は、この発明にかかる基板処理装置の第7実施形態である乾燥処理装置を備えた基板処理システムを示す図である。また、図14は、図13の乾燥処理装置を示す図である。これまでの実施形態では、スピンチャック1に保持された基板Wに対して薬液処理およびリンス処理などの湿式処理を施した後に、そのまま同一装置内でリンス処理済の基板に対して近接ブロック3を移動方向にスキャンさせて乾燥処理を実行するように構成していたのに対して、この実施形態では、湿式処理と乾燥処理とを分離して行うようにしている。すなわち、図13に示す基板処理システムでは、基板Wに対して薬液処理およびリンス処理を施す湿式処理装置100と、近接ブロック3が組み込まれ、基板Wを乾燥する乾燥処理装置200とを一定距離だけ離間して配置するとともに、湿式処理装置100で最終的にリンス処理を受けた基板を基板搬送装置300により乾燥処理装置200に搬送して乾燥処理を実行する。なお、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
この実施形態の乾燥処理装置200では、基板Wのほぼ中心の上方位置(図14の破線位置)と基板Wから外れた退避位置(図14の実線位置)との間で移動可能な液体ノズル74が設けられている。この液体ノズル74には液体供給ユニット49が接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて液体供給ユニット49を作動させることで所定の液体を液体ノズル74に圧送する。これにより液体ノズル74から基板表面Wfに液体が供給される。液体としては例えば純水やDIWが用いられる。なお、この液体は、この実施形態では湿式処理装置100で用いられるリンス液と同一でなくてもよい。このように、この実施形態では、液体ノズル74が本発明の「第1ノズル」に相当し、液体ノズル74および液体供給ユニット49が、本発明の「液体層形成手段」および「第1液体供給手段」として機能することとなる。
【0074】
そして、基板搬送装置300により基板Wを乾燥処理装置200に搬送した後であって、近接ブロック3の対向面31を基板表面Wfに対向させて液密層23を形成する前に、液体ノズル74を基板Wのほぼ中心の上方位置(図14の破線位置)に配置し、液体供給ユニット49を作動させて液体ノズル74から基板表面Wfに液体を供給するとともに基板Wを回転させて、基板表面Wfの全体にパドル状の液体層を形成する。この実施形態によれば、近接ブロック3の対向面31を基板表面Wfに対向させて液密層23を形成する前に、液体ノズル74から供給した液体により基板表面Wfの全体にパドル状の液体層を形成しているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、近接ブロック3は幅方向の長さが基板Wと同一あるいはそれよりも長く延びる棒状形状を有しているが、近接ブロック3の外形形状はこれに限定されるものではなく、例えば基板Wの外周形状に対応した半リング形状を有するものを用いてもよい。また、上記実施形態では、基板Wを固定配置した状態で近接ブロック3を移動させて乾燥処理を実行しているが、基板側も同時に相対移動させるように構成してもよい。また、近接ブロック3を固定配置する一方、基板Wのみを移動させてもよい。要は、基板表面Wfから離間配置された対向面31と基板表面Wfとに挟まれた間隙空間SPにリンス液を満たして液密層23を形成した状態で、基板Wに対して近接ブロック3を移動方向に相対移動させるように構成すればよい。
【0076】
また、上記第3実施形態では、液体ノズル7から近接ブロック3に対して移動方向の下流側(―X)で基板表面Wfに向けて液体を供給しているが、液体の供給方法はこれに限定されない。例えば図15に示すように、近接ブロック3の上面34に、1本または複数本の液体供給用ポート72を取り付けて近接ブロック3の内部を通して液体を液密層23に供給するようにしてもよい。液体供給用ポート72は近接ブロック3の内部に設けられた供給通路73に接続されている。また、液体供給用ポート72は液体供給ユニット45に連通されている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて液体供給ユニット45が作動することで液体供給ユニット45から液体が液体供給用ポート72および供給通路73を介して近接ブロック3と基板表面Wfとに挟まれた間隙空間SPに供給される。したがって、液密層23に液体が追加供給されることで、基板表面Wfにパドル状のリンス層21が形成された状態が保持される。その結果、上記実施形態と同様に、基板表面Wfにおいて自然乾燥により乾燥した領域が発生するのを避けることができ、ウォーターマーク発生を未然に防止することができる。
【0077】
また、上記第3実施形態では、図8に示すように、液体ノズル7から近接ブロック3に対して移動方向の下流側(―X)で基板表面Wfに向けて液体を供給しているが、これに限られず、例えば、液体ノズル7に代えて、リンスノズル8を液体ノズル7の位置に位置決め可能に構成し、このリンスノズル8から近接ブロック3に対して移動方向の下流側(―X)で基板表面Wfに向けて液体を供給するようにしてもよい。この形態によれば、液体ノズル7および液体供給ユニット45が不要になるため、構成を簡素化することができる。なお、これらの場合において、液体ノズル7やリンスノズル8を近接ブロック3とともに移動可能に構成し、液体ノズル7やリンスノズル8を近接ブロック3とともに移動させつつ、近接ブロック3に対して移動方向の下流側(―X)で基板表面Wfに向けて液体を供給するようにしてもよい。
【0078】
また、上記第7実施形態では、基板搬送装置300により基板Wを乾燥処理装置200に搬送した後であって近接ブロック3の移動前に、液体ノズル74から液体を供給して基板表面Wfの全体にパドル状の液体層を形成しているが、本発明はこれに限られない。例えば、湿式処理装置100でリンス処理を受けた基板表面の全体にパドル状のリンス層を形成した状態で、基板を基板搬送装置300により乾燥処理装置200に搬送して、乾燥処理を実行してもよい。この形態では、湿式処理装置100が本発明の「液体層形成手段」および「湿式処理手段」に相当する。この形態によれば、液体ノズル74および液体供給ユニット45が不要になるため、上記第7実施形態に比べて乾燥処理装置200の構成を簡素化することができる。
【0079】
また、近接ブロック3の形状については上記実施形態のように対向面31に対して側面(延設面)32が鋭角θとなるように構成されているが、近接ブロック3の形状はこれに限定されるものではなく、例えば対向面31に対して側面32が直角となるように構成してもよい。なお、対向面31に対して側面32を直角とする場合には、液体を側面32に溜めることはできないことから、液体を供給しながら乾燥処理を実行するときは、第3〜第5実施形態や図14に示す形態のように、液体ノズル7、71や液体供給用ポート72から液体を供給する必要がある。
【0080】
また、上記実施形態では略円盤状の基板Wに対して乾燥処理を施しているが、本発明にかかる基板処理装置の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば液晶表示用ガラス基板などのように角型基板の基板表面を乾燥させる基板処理装置に対しても本発明を適用することができる。例えば図16に示すように、本発明の「駆動手段」に相当する複数の搬送ローラ68を搬送方向(+X)に配置するとともに、該搬送ローラ68により基板Wを搬送しながら上記実施形態と同一構成の近接ブロック3を固定配置してもよい。この基板処理装置においては、基板Wが搬送方向(+X)に搬送されるため、本発明の「所定の移動方向」は搬送方向と反対の方向(−X)に相当するが、基本的な動作は上記実施形態と全く同一であり、同様の作用効果が得られる。
【0081】
また、上記実施形態では、基板表面Wfの全面にパドル状のリンス層21または液体層を形成した後に、近接ブロック3の対向面31が基板表面Wfから離間配置されて間隙空間SPに液密層23を形成するようにしているが、この発明は、基板表面Wfの全面にパドル状のリンス層21または液体層を形成するのに限られない。要は、移動方向における液密層23の上流側端部231より下流側(−X)の基板表面Wf全体にパドル状のリンス層または液体層を形成すればよい。これによって、液体で濡れた状態からマランゴニ効果による乾燥が行われることとなり、自然乾燥による乾燥は発生せず、基板表面Wfをマランゴニ効果のみにより良好に乾燥することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、乾燥処理を施すべき基板表面Wfが上方を向いた状態で該基板Wに対して近接ブロック3を移動方向に相対移動させて乾燥処理を行っているが、基板姿勢はこれに限定されるものではない。
【0083】
さらに、上記実施形態では、リンス液で濡れた基板表面Wfを乾燥させているが、リンス液以外の液体で濡れた基板表面を乾燥させる基板処理装置に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などを含む基板全般の表面に対して乾燥処理を施す基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の部分拡大図である。
【図3】近接ブロックの斜視図である。
【図4】溶剤ガス供給ユニットの構成の一例を示す図である。
【図5】図1の基板処理装置の動作を示す模式図である。
【図6】近接ブロックの移動による乾燥動作を示す図である。
【図7】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図8】この発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図9】図8の基板処理装置の部分拡大図である。
【図10】この発明にかかる基板処理装置の第4実施形態を示す図である。
【図11】この発明にかかる基板処理装置の第5実施形態を示す図である。
【図12】この発明にかかる基板処理装置の第6実施形態を示す図である。
【図13】この発明にかかる基板処理装置の第7実施形態である乾燥処理装置を備えた基板処理システムを示す図である。
【図14】図13の乾燥処理装置を示す図である。
【図15】本発明にかかる基板処理装置の他の実施形態を示す側面図である。
【図16】本発明にかかる基板処理装置の別の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
3…近接ブロック(近接部材)、7…液体ノズル(第2液体供給手段)、8…リンスノズル(液体層形成手段、湿式処理手段)、31…対向面、32…側面(非対向面、延設面)、33…上流辺部、34、35…側面(非対向面)、36…下流辺部、37…案内面、38…下面(上流側対向部位)、39…ガス吐出口、41…ブロック駆動機構(駆動手段)、45…液体供給ユニット(第2液体供給手段)、48…リンス液供給ユニット(液体層形成手段、湿式処理手段)、49…液体供給ユニット(液体層形成手段、第1液体供給手段)、58…カバー部材、71…液体ノズル(第2ノズル、第2液体供給手段)、74…液体ノズル(液体層形成手段、第1ノズル、第1液体供給手段)、100…湿式処理装置(液体層形成手段、湿式処理手段)、231…(液密層の)上流側端部(移動方向における液密層の上流側端部)、231a…(液密層の)上流側界面、SP…間隙空間、UA…(液密層の)上流側雰囲気、W…基板、Wf…基板表面、X…移動方向、θ…鋭角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体で濡れた基板表面を乾燥させる基板処理装置において、
前記基板表面に対向する対向面を有し、該対向面が前記基板表面から離間配置されるとともに該対向面と前記基板表面とに挟まれた間隙空間に前記液体が満たされて液密層が形成された状態で、前記基板に対して所定の移動方向に相対移動自在な近接部材と、
前記近接部材を前記基板に対して前記移動方向に相対移動させる駆動手段と、
前記液体に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分を必須的に含む溶剤ガスを前記移動方向における前記液密層の上流側端部に向けて供給する溶剤ガス供給手段と、
前記移動方向における前記液密層の上流側端部より下流側の前記基板表面全体にパドル状の液体層を形成する液体層形成手段と
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記液体層形成手段は、前記基板表面に対して前記液体を用いた所定の湿式処理を実行するとともに、該湿式処理の実行後に前記基板表面の全面に前記パドル状の液体層を形成する湿式処理手段を有し、
前記基板表面の全面に前記パドル状の液体層が形成された後に、前記近接部材の前記対向面が前記基板表面から離間配置されて前記間隙空間に前記液密層が形成される請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液体がリンス液であり、前記湿式処理手段は、前記湿式処理としてリンス処理を実行する請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記液体層形成手段は、前記近接部材の前記対向面が前記基板表面から離間配置されて前記間隙空間に前記液密層が形成される前に、前記基板表面に向けて前記液体を供給して前記基板表面の全面に前記パドル状の液体層を形成する第1液体供給手段を有する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1液体供給手段は、前記基板表面に向けて前記液体を吐出する第1ノズルを有する請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記近接部材の相対移動中に前記移動方向における前記液密層の上流側端部より下流側の前記基板表面に向けて前記液体を供給する第2液体供給手段をさらに備えた請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第2液体供給手段は、前記近接部材の対向面を除く非対向面に向けて前記液体を吐出する第2ノズルを有し、
前記近接部材は、前記第2ノズルから前記非対向面に吐出された前記液体を前記非対向面に沿って、前記対向面を規定する辺部のうち前記移動方向の上流側に位置する上流辺部に向けて導く請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記近接部材は、前記第2ノズルから前記非対向面に吐出された前記液体を前記非対向面に沿って、前記対向面を規定する辺部のうち前記上流辺部とともに前記移動方向の下流側に位置する下流辺部に向けて導く請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記近接部材は、前記非対向面として前記上流辺部と接続されるとともに該接続位置から前記移動方向の上流側を臨みながら前記基板表面から離れる方向に延設された延設面をさらに有し、前記第2ノズルから吐出された前記液体を前記延設面を介して前記上流辺部に向けて導く請求項7または8記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記近接部材の上流側端部では、前記対向面と前記延設面とが鋭角をなしている請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記近接部材は、前記延設面と対向して前記液体を前記上流辺部に向けて導く案内面をさらに有し、前記第2ノズルから吐出された前記液体で前記延設面と前記案内面との間を液密状態に満たしながら前記上流辺部に向けて前記液体を導く請求項9または10記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記溶剤ガス供給手段は、前記移動方向において前記液密層の上流側に位置する上流側雰囲気を取り囲むカバー部材を有し、前記上流側雰囲気に前記溶剤ガスを供給する請求項1ないし11のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記近接部材は、前記対向面の前記移動方向の上流側に前記基板表面に対向しながら離間配置されるとともに、ガス吐出口が開口された上流側対向部位をさらに有し、
前記溶剤ガス供給手段は、前記ガス吐出口から前記溶剤ガスを前記液密層の前記移動方向の上流側に向けて吐出する請求項1ないし11のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記近接部材が石英で形成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項15】
液体で濡れた基板表面を乾燥させる基板処理方法において、
前記基板表面に対向する対向面を有する近接部材を、前記基板表面から前記対向面が離間するように配置することによって、前記対向面と前記基板表面とに挟まれた間隙空間に前記液体を満たして液密層を形成する工程と、
前記液密層が形成された状態を維持しつつ前記近接部材を前記基板に対して所定の移動方向に相対移動させる工程と、
前記液体に溶解して表面張力を低下させる溶剤成分を必須的に含む溶剤ガスを前記移動方向における前記液密層の上流側端部に向けて供給する工程と、
前記移動方向における前記液密層の上流側端部より下流側の前記基板表面全体にパドル状の液体層を形成する工程と
を備えたことを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−273575(P2007−273575A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95041(P2006−95041)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】