説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】 基板上に成膜される薄膜の膜質を向上させる。
【解決手段】 イオンを発生するイオン発生部と、ターゲットを複数配列させたターゲット群を保持し、ターゲット群のうち所定のターゲットにイオンが入射するようターゲット群を回動させるターゲット保持部と、所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が入射されるように基板を保持する基板を保持する基板保持部と、ターゲット保持部に保持され、各ターゲットに対向する部位に第1開口部がそれぞれ形成されると共に、隣接する各ターゲット間を仕切る隔壁を複数有し、所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が他のターゲットに飛散することを抑制する飛散抑制部と、飛散抑制部と基板との間に設けられ、所定のターゲットを露出させるように第2開口部が形成されると共に、他のターゲットに対向する第1開口部を覆うように構成され、所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が他のターゲットに入射することを抑制する入射抑制部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗素子メモリ(MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory))等の半導体装置の製造方法の一工程として、例えば基板上に薄膜を多層に成膜する基板処理工程が実施されている。係る工程を実施する従来の基板処理装置は、イオンを発生するイオン発生部と、イオンが入射するようにターゲットを保持するターゲット保持部と、ターゲットにて発生したスパッタ粒子が入射されるように基板を保持する基板保持部と、を備えていた。
【0003】
なお、基板上に複数種の薄膜を連続して成膜する場合、材質等の異なるターゲットを複数配列させたターゲット群を回動させ、成膜する薄膜の種類に応じて所定のターゲットにイオンが入射するようにしている。そして、所定のターゲットにイオンが入射されて発生させたスパッタ粒子が基板に入射されることで、基板上に薄膜が成膜される。続けて、ターゲット群を再び回動させ、他のターゲットにイオンが入射するように位置させる。そして、他のターゲットにイオンが入射されて発生させたスパッタ粒子が基板に入射されることで、先に成膜された薄膜上に他の種類の薄膜が成膜される。このように成膜が続けて実施されることで、複数種の薄膜が連続的に多層に成膜される(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−205071号公報
【特許文献2】特開2008−75163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにターゲット群においては材質の異なるターゲットが隣接して複数配列されている。そのため、所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が、他のターゲットに飛散したり、基板以外の部位で反跳したスパッタ粒子が他のターゲットに入射等したりして、意図しない不純物として付着してしまう場合があった。そして、この不純物が付着したターゲットを用いて成膜を実施すると、所望した材質のスパッタ粒子と共に、意図しないスパッタ粒子が基板上に入射してしまう場合があった。その結果、薄膜中に不純物が混入してしまい(クロスコンタミネーションと呼ぶ)、成膜する薄膜の膜質が低下してしまう場合があった。
【0006】
本発明は、基板上に成膜する薄膜の膜質を向上させることが可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
イオンを発生するイオン発生部と、
ターゲットを複数配列させたターゲット群を保持し、前記ターゲット群のうち所定のターゲットに前記イオンが入射するよう前記ターゲット群を回動させるターゲット保持部と、
前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が入射されるように基板を保持する基板を保持する基板保持部と、
前記ターゲット保持部に保持され、各前記ターゲットに対向する部位に第1開口部がそれぞれ形成されると共に、隣接する各前記ターゲット間を仕切る隔壁を複数有し、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が他のターゲットに飛散することを抑制する飛散抑制部と、
前記飛散抑制部と前記基板との間に設けられ、前記所定のターゲットを露出させるように第2開口部が形成されると共に、前記他のターゲットに対向する前記第1開口部を覆うように構成され、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が前記他のターゲットに入射することを抑制する入射抑制部と、
を備えた基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
イオン発生部により、イオンを発生させる工程と、
ターゲット保持部により、ターゲットを複数配列させたターゲット群を保持させ、前記ターゲット群のうち所定のターゲットに前記イオンが入射するよう前記ターゲット群を回動させる工程と、
基板保持部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が入射されるように基板を保持させる工程と、
前記スパッタ粒子を前記基板に入射させて前記基板上に薄膜を形成する工程と、を有し
前記薄膜を形成する工程では、
前記ターゲット保持部に保持され、各前記ターゲットに対向する部位に第1開口部がそれぞれ形成されると共に、隣接する各前記ターゲット間を仕切る隔壁を複数有する飛散抑制部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が他のターゲットに飛散することを抑制すると共に、
前記飛散抑制部と前記基板との間に設けられ、前記所定のターゲットを露出させるように第2開口部が形成されると共に、前記他のターゲットに対向する前記第1開口部を覆うように構成された入射抑制部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が前記他のターゲットに入射することを抑制する
半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法によれば、基板上に成膜する薄膜の膜質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の横断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉の縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉の横断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るターゲット保持部を図6のD方向からみた平面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るターゲット回動駆動部、ターゲット保持部、飛散抑制部、及び入射抑制部の縦断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る飛散抑制部を図6のE方向からみた平面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る入射抑制部を図6のF方向からみた平面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るターゲット保持部の平面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る第1の処理炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の第1の実施形態>
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の第1の実施形態にかかる基板処理装置の概要構成例を、図1、図2を用いて説明する。本発明が適用される基板処理装置では、基板としてのウエハ1を搬送するキャリヤとして、FOUP(Front Opening Unified Pod:以下、ポッドという。)が使用される。また、以下の説明において、前後左右は図1を基準とし、上下は図2を基準とする。すなわち、図1が示されている紙面に対して、前は紙面の下、後ろは紙面の上、左右は紙面の左右とし、図2が示されている紙面に対して、上下は紙面の左右とする。
【0012】
(第1の搬送室)
図1及び図2に示されているように、基板処理装置は、第1の搬送室12を備えている。第1の搬送室12は、真空状態などの大気圧未満の圧力(負圧)に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。第1の搬送室12の筐体11は、平面視が六角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。第1の搬送室12内には、負圧下でウエハ1を移載する第1の基板移載機13が設置されている。第1の基板移載機13は、エレベータ14によって、第1の搬送室12内の気密性を維持しつつ昇降できるように構成されている。
【0013】
(予備室)
筐体11の六枚の側壁のうち前側に位置する二枚の側壁には、搬入用の予備室15と搬出用の予備室16とが、それぞれゲートバルブ17,18を介して連結されている。予備室15及び予備室16は、それぞれ負圧に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。さらに、予備室15には、搬入用の基板置き台19が設置されている。また、予備室16には、搬出用の基板置き台20が設置されている。
【0014】
(第2の搬送室)
予備室15及び予備室16の前側には、略大気圧下で用いられる第2の搬送室22が、ゲートバルブ23、24を介して連結されている。第2の搬送室22には、ウエハ1を移載する第2の基板移載機25が設置されている。第2の基板移載機25は、第2の搬送室22に設置されたエレベータ26によって昇降されるように構成されているとともに、リニアアクチュエータ27によって左右方向に往復移動されるように構成されている。
【0015】
第2の搬送室22の左側には、ノッチ又はオリフラ合わせ装置28が設置されている(図1参照)。また、第2の搬送室22の上部には、クリーンエアを供給するクリーンユニット29が設置されている(図2参照)。
【0016】
第2の搬送室22の筐体21の前側には、ウエハ1を第2の搬送室22に対して搬入搬出するウエハ搬入搬出口30と、ポッドオープナ31とが設置されている。ウエハ搬入搬出口30を挟んでポッドオープナ31と反対側、すなわち筐体21の外側にはIOステージ32が設置されている。ポッドオープナ31は、ポッド2のキャップ2aを開閉すると共に、ウエハ搬入搬出口30を閉塞可能なクロージャ31aと、クロージャ31aを駆動する駆動機構31bとを備えている。ポッドオープナ31は、IOステージ32に載置されたポッド2のキャップ2aを開閉することにより、ポッド2に対するウエハ1の出し入れを可能にする。また、ポッド2は図示しない工程内搬送装置(RGV)によって、IOステージ32に対して、搬入(供給)及び搬出(排出)されるようになっている。
【0017】
(処理炉及びクーリングユニット)
図1に示されているように、筐体11の六枚の側壁のうち後ろ側(背面側)に位置する
二枚の側壁には、ウエハ1に所望の処理を行う第1の処理炉33と第2の処理炉34とが、ゲートバルブ35、36を介してそれぞれ隣接して連結されている。第1の処理炉33及び第2の処理炉34は、いずれもホットウォール式の処理炉として構成されている。なお、本実施形態では、第1の処理炉33及び第2の処理炉34において、後述するようにスパッタリング成膜が実施されるように構成されている。
【0018】
また、筐体11における六枚の側壁のうちの残りの互いに対向する二枚の側壁には、冷却室としての第1のクーリングユニット37と、第2のクーリングユニット38とがそれぞれ連結されている。第1のクーリングユニット37及び第2のクーリングユニット38は、いずれも処理済みのウエハ1を冷却するように構成されている。
【0019】
なお、基板処理装置には、第1の搬送室12、第2の搬送室22、予備室15,16、第1の処理炉33、第2の処理炉34、第1のクーリングユニット37、第2のクーリングユニット38の全ての動作を制御する制御部としてのコントローラ240が設けられている。
【0020】
(2)基板処理装置の動作
次に、基板処理装置におけるウエハ1の処理の一連の流れを、図1及び図2に即して説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ240により全体的に制御される。
【0021】
未処理のウエハ1を例えば25枚収納したポッド2を工程内搬送装置(図示しない)によって基板処理装置へ搬送する。図1及び図2に示すように、ポッド2は、工程内搬送装置から受け渡されてIOステージ32上に載置される。ポッド2のキャップ2aをポッドオープナ31によって取り外し、ポッド2のウエハ出し入れ口を開放する。
【0022】
ポッドオープナ31によりポッド2を開放すると、第2の基板移載機25がポッド2内からウエハ1をピックアップして予備室15内に搬入し、ウエハ置き台19上にウエハ1を移載する。この移載作業中には、予備室15の第1の搬送室12側のゲートバルブ17を閉じており、第1の搬送室12内の負圧を維持している。ポッド2に収納された所定枚数、例えば25枚のウエハ1のウエハ置き台19上への移載を完了すると、ゲートバルブ23を閉じ、予備室15内を排気装置(図示せず)によって負圧に排気する。
【0023】
予備室15内が予め設定した圧力値になると、ゲートバルブ17を開き、予備室15と第1の搬送室12とを連通させる。続いて、第1の搬送室12の第1の基板移載機13が、ウエハ置き台19上からウエハ1をピックアップして第1の搬送室12内に搬入する。ゲートバルブ17を閉じた後、ゲートバルブ35を開き、第1の搬送室12と第1の処理炉33とを連通させる。続いて、第1の基板移載機13が第1の搬送室12内から第1の処理炉33内にウエハ1を搬入し、第1の処理炉33内の支持具上に移載する。ゲートバルブ35を閉じた後、後述するように、磁性薄膜等の薄膜を形成する基板処理工程を第1の処理炉33において実施する。
【0024】
第1の処理炉33において基板処理工程が完了すると、ゲートバルブ35を開き、第1の基板移載機13によって、第1の処理炉33内から第1の搬送室12内に処理済みのウエハ1を搬出する。第1の処理炉33内からウエハ1を搬出した後、ゲートバルブ35を閉じる。
【0025】
第1の基板移載機13によって第1の処理炉33内から搬出したウエハ1を、第1のクーリングユニット37内へ搬入し、処理済みのウエハ1を冷却する。
【0026】
処理済みのウエハ1を冷却している間、予備室15内のウエハ置き台19上に予め準備していたウエハ1を、第1の基板移載機13によって第1の処理炉33内に搬入する。第1の処理炉33のゲートバルブ35を閉じた後、基板処理工程を第1の処理炉33において実施する。
【0027】
第1のクーリングユニット37において予め設定した冷却時間が経過したら、第1の基板移載機13によって、第1のクーリングユニット37内から第1の搬送室12内に冷却済みのウエハ1を搬出する。
【0028】
第1のクーリングユニット37内から第1の搬送室12内に冷却済みのウエハ1を搬出した後、ゲートバルブ18を開く。そして、第1のクーリングユニット37から搬出したウエハ1を予備室16内へ搬送し、ウエハ置き台20上に移載した後、ゲートバルブ18によって予備室16を閉じる。
【0029】
以上の作動を繰り返すことにより、予備室15内に搬入した所定枚数、例えば、25枚のウエハ1を順次処理していく。
【0030】
予備室15内に搬入した全てのウエハ1に対する処理を終了し、全ての処理済みウエハ1を予備室16内に収納して、ゲートバルブ18によって予備室16を閉じる。そして、予備室16内に不活性ガスを供給して略大気圧にする。予備室16内を略大気圧にしたら、ゲートバルブ24を開き、IOステージ32に載置した空のポッド2のキャップ2aをポッドオープナ31によって開く。続いて、第2の搬送室22内の第2の基板移載機25が、ウエハ置き台20上からウエハ1をピックアップして第2の搬送室22内に搬出し、第2の搬送室22におけるウエハ搬入搬出口30を通してポッド2内に収納していく。
【0031】
25枚の処理済みウエハ1のポッド2内への収納を完了すると、ポッドオープナ31によってポッド2のキャップ2aを閉じる。そして、閉じたポッド2を、IOステージ32上から次の工程へと工程内搬送装置によって搬送する。
【0032】
以上の動作は、第1の処理炉33及び第1のクーリングユニット37を使用する場合を例にして説明したが、第2の処理炉34及び第2のクーリングユニット38を使用する場合についても同様の動作を実施する。なお、上述の連続処理装置では、一方の予備室15を搬入用、他方の予備室16を搬出用としたが、一方の予備室16を搬入用、他方の予備室15を搬出用としてもよい。第1の処理炉33と第2の処理炉34とは、それぞれ同じ処理を行ってもよいし、別の処理を行ってもよい。第1の処理炉33と第2の処理炉34とで別の処理を行う場合、例えば、第1の処理炉33でウエハ1に所定の基板処理を行った後に、続けて、第2の処理炉34で別の基板処理を行ってもよい。また、第1の処理炉33でウエハ1に所定の基板処理を行った後に、第2の処理炉34で別の基板処理を行わない場合においては、第1のクーリングユニット37又は第2のクーリングユニット38を経由するようにしてもよい。また、第1の処理炉33と第2の処理炉34とでの処理で熱処理しない等、必要に応じ、第1のクーリングユニット37又は第2のクーリングユニット38を経由しないようにしてもよい。
【0033】
(3)処理炉の構成
続いて、スパッタリング成膜を実施可能に構成された第1の処理炉33及び第2の処理炉34の構成について、図3及び図4を主に用いて説明する。なお、第1の処理炉33及び第2の処理炉34の構成はほぼ同一であるため、以下の説明では、第1の処理炉33を例に挙げて説明することとする。
【0034】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉33の縦断面図である。図4は、
本発明の第1の実施形態に係る第1の処理炉33の横断面図である。なお、図4では、便宜上、ターゲット回動駆動部44及び回動軸44aを記載していない。
【0035】
図3及び図4に示すように、第1の処理炉33は、成膜室42及びスパッタリング室41を主に備えた処理室40を備えている。
【0036】
(成膜室)
先ず、成膜室42の構成について説明する。成膜室42は、真空容器42a内に形成されている。真空容器42aは、立方体形状に構成されている。真空容器42aは、筐体11における背面壁(図中右側)に隣接して連結されている。真空容器42aの筐体11に隣接した側壁(以下、正面壁とする。)には、成膜室42内にウエハ1を搬送する搬入搬出口43が開設されている。搬入搬出口43は、ゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって開閉されるように構成されている。成膜室42内外へのウエハ1の搬送は、上述したように図1に示した第1の基板移載機13によって行われる。そして、ゲートバルブ35を開放することより、第1の搬送室12と成膜室42との間で、ウエハ1を搬送可能となるように構成されている。また、真空容器42aのスパッタリング室41に隣接した側壁(以下、背面壁とする。)には、スパッタリング室41に連通する開口42bが開設されている。開口42bは、図示しないゲートバルブによって開閉可能となっており、スパッタリング室41からのスパッタ粒子98が入射可能に構成されている。なお、成膜室42内のガス雰囲気は、後述するようにスパッタリング室41内を介して排気可能に構成されている。
【0037】
(基板保持部)
成膜室42内には、基板としてのSiで構成されているウエハ1を保持する基板保持部50が設けられている。基板保持部50は例えば真空チャックや静電チャック等のチャック機構として構成され、基板保持部50の上面(保持面)にウエハ1が保持される。基板保持部50はチルト機構52によって姿勢制御されるように構成されている。そして、基板保持部50に保持されたウエハ1は、水平姿勢(ウエハ1の搬送時、ウエハ1の上面が真空容器42aの天井に向く姿勢)とされるか、或いは垂直姿勢(ウエハ1の上面がターゲット保持部46側に向く姿勢)とされるように構成されている。なお、図3では、基板保持部50が水平姿勢(ウエハ1が水平)となっている様子を点線で示し、基板保持部50が垂直姿勢(ウエハ1が垂直)となっている様子を実線で示している。
【0038】
成膜時には、基板保持部50上に載置されるウエハ1の上面(薄膜が成膜される処理面)が、後述するターゲット保持部46に保持されるターゲット群48のうち、いずれか選択された1つのターゲット(所定のターゲットとも呼ぶ)47に対向するように構成されている。そして、ウエハ1の上面に、後述する所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が入射されるように構成されている。
【0039】
基板保持部50は、回動機構51によってウエハ1の主面に対し周方向に回動可能に構成されている。回動機構51及びチルト機構52は、例えばサーボモータ等によって構成されている。なお、回動機構51及びチルト機構52は、コントローラ240によって制御されるようになっている。
【0040】
(スパッタリング室)
スパッタリング室41は、真空容器41a内に形成されている。真空容器41aは、直方体形状に構成されている。真空容器41aは、成膜室42における背面壁に隣接して連結されている。真空容器41aの成膜室42に隣接した側壁(以下、正面壁とする。)には、成膜室42に連通する開口41bが開設されている。開口41bは、図示しないゲートバルブによって開閉可能となっており、スパッタリング室41で発生したスパッタ粒子
98を出射可能に構成されている。なお、スパッタリング室41は、後述するように開口41bを介して成膜室42内のガス雰囲気を排気可能に構成されている。スパッタリング室41には、後述するイオン発生部80、ターゲット保持部46、飛散抑制部101及び入射抑制部102が設けられている。
【0041】
(ガス排気部)
真空容器41a内の背面壁下部(図4の図中左側)には、排気口53a,53bが形成されている。排気口53aには、配管54aが接続されている。配管54aには、排気ポンプとして例えばクライオポンプ55aが接続されている。また、排気口53bには、配管54bが接続されている。配管54bには、排気ポンプとして例えばターボ分子ポンプ55bが接続されている。スパッタリング室41内は、成膜室42内と共にガス雰囲気が排気されるように構成されている。すなわち、成膜室42の搬入搬出口43を閉じると共に、開口41b,42bを開放することで、成膜室42内及びスパッタリング室41内は、真空排気可能に構成されている。主に、排気口53a,53b、配管54a,54b及びクライオポンプ55a,ターボ分子ポンプ55bにより、本実施形態に係るガス排気部が構成されている。なお、クライオポンプ55a及びターボ分子ポンプ55bは、コントローラ240によって制御されるようになっている。
【0042】
(イオン発生部)
真空容器41aの外周下部には、イオン発生部80が設置されている。イオン発生部80は、後述するように例えばArガスのイオン97を発生させ、この発生させたイオン97をスパッタリング室41内へ供給するように構成されている。
【0043】
図3に示すように、イオン発生部80は、筐体81を備えている。筐体81内には、イオン源室82が形成されている。筐体81は、一端(真空容器41aとの接続側とは反対側)が閉塞した円筒形状に形成されている。真空容器41aの側壁下部(筐体81との接続部)には、イオン照射口83が開設されている。イオン照射口83には、イオン発生部80の筐体81の開口が整合されている。筐体81の閉塞壁には、イオン源としての例えばArガスをイオン源室82内に導入(供給)するガス導入管84が接続されている。イオン発生部80の筐体81外周には、磁石85が設置されている。磁石85は、プラズマを閉じ込めるカスプ磁場を筐体81内に生成するように構成されている。
【0044】
筐体81内の閉塞壁(イオン照射口83の反対側の端部)には、フィラメント86が設置されている。フィラメント86には、フィラメント86に電力を供給するフィラメント電源(直流電源)87が接続されている。フィラメント電源87の陰極は、イオン源室82内にプラズマを形成するアーク電源(直流電源)88の陰極に接続されている。筐体81のイオン照射口83側の端部には、接地電極90と、減速電極92と、加速電極95とが、イオン照射口83側から順に設置されている。接地電極90は、アースに接続されている。減速電極92は、減速電源(直流電源)91の陰極に接続されている。減速電源91の陽極は、アースに接続されている。加速電極95は、抵抗93を介して加速電源(直流電源)94の陽極に接続されている。また、筐体81及びアーク電源88の陽極も加速電源94の陽極に接続されている。加速電源94の陰極はアースに接続されている。
【0045】
接地電極90、減速電極92及び加速電極95は、円形の平板形状に形成されている。接地電極90、減速電極92及び加速電極95(以下各電極とも呼ぶ)には、それぞれ、円形の小孔として形成され、イオン97を透過させる透過口96が多数形成されている。なお、フィラメント電源87、アーク電源88、減速電源91及び加速電源94は、コントローラ240によって制御されるようになっている。
【0046】
(ターゲット保持部)
真空容器41aの背面壁上部(排気口53a,53bの上側)には、ターゲット保持部46が設けられている。ターゲット保持部46は、ターゲット47を複数配列させたターゲット群48を保持するように構成されている。ターゲット保持部46は、例えば8枚のターゲット47(47A〜47H)で構成されるターゲット群48を保持するターゲット台座45と、ターゲット台座45を回動させるターゲット回動駆動部44と、を備える。
【0047】
図5に示すように、ターゲット台座45は、例えば円錐台形状に構成されている。ターゲット台座45は、ターゲット回動駆動部44の回動軸44aに対してターゲット47(47A〜47H)を放射状に複数配列させるように構成されている。具体的には、ターゲット台座45は、ターゲット回動駆動部44の回動軸44a上に対し垂直方向に延在するターゲットホルダ49を複数備えている。ターゲットホルダ49は、それぞれ各ターゲット47を保持するように構成されている。そして、各ターゲット47は、ターゲットホルダ49によってターゲット台座45の上面に対して斜めに保持されるように構成されている。なお、ターゲットホルダ49は、それぞれ隣接する各ターゲット47を互いに離間して保持するように構成されている。本実施形態では、ターゲット台座45に直接ターゲット47が配設されないので、スパッタリングにより発生される熱がターゲット台座45等の他の部位に伝達し難くなり、他の部位の昇温や劣化を抑制させることができる。また、ターゲットホルダ49によりターゲット47を個別に角度、位置調整等が容易となる。さらに、ターゲット台座45はターゲットホルダ49を取り付け可能な大きさ、形状であればよいので、その分ターゲット台座45の軽量化が可能となり、ターゲット回動駆動部44aの出力を小さく構成させることができる。
【0048】
図3及び図4に示すように、ターゲット回動駆動部44の回動軸44aは、スパッタリング室41内に回動自在に支持されている。ターゲット回動駆動部44は、ターゲット台座45を回動させることで、ターゲット群48のうち所定のターゲット47を、イオン発生部80のイオン照射口83に対向させると共に、基板保持部50に保持されたウエハ1に対向させるように構成されている。これにより、ターゲット台座45を回動させるだけで、イオン発生部80にて発生されるイオン97を、ターゲット群48のうち、所定のターゲット47に照射可能であり、かつ所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98をウエハ1の上面へ照射可能となっている。なお、図6に示すように、ターゲット回動駆動部44は、モータ61と、モータ61により回動されるプーリ62と、プーリ62に掛けられる伝達ベルト63と、伝達ベルト63からのモータ61の回動を回動軸44aに伝達するプーリ64と、を備えている。モータ61が駆動すると、モータ61の回動(回転)はプーリ62、伝達ベルト63及びプーリ64を介して回動軸44aに伝達され、回動軸44aが回動するよう構成されている。なお、モータ61は、コントローラ240によって制御されるようになっている。
【0049】
ターゲット群48の各ターゲット47の材質は、互いに異なる金属や酸化マグネシウム(MgO)等の絶縁材等とすることができ、ウエハ1上に成膜する薄膜の種類に応じて適宜変更される。例えば、ウエハ1上にCoFeB(コバルト、鉄、ボロン)からなる磁性薄膜を成膜する場合には、ターゲット47の材質としてCoFeB合金を用いることができる。また、ウエハ1上にPtFeP(プラチナ、鉄、りん)からなる磁性薄膜を成膜する場合には、ターゲット47の材質としてPtFeP合金を用いることができる。また、薄膜の種類によっては、ターゲット47の材質として、上述の三元系の合金にさらにCuやNi等を混合した四元又は五元系合金を用いても良い。また、ターゲット47の材質として、Fe、Cu及びNi等の単体を用いてもよい。また、ターゲット47を、例えばCoやPt等からなる部材上にFeP合金チップ、FeCu合金チップ、FeNi合金チップ、FeCuP合金チップ、FeNiP合金チップ等の合金チップのうち少なくとも1種のチップを所定の組成割合となるようにして載せた複合ターゲットとして構成してもよい。なお、ターゲット47の材質としては、単体のTa(タンタル)、Ti(チタン)、R
u(ルテニウム)等を用いても勿論構わないし、2元系のNiFe(ニッケル、鉄)、CoFe(コバルト、鉄)、MnIr(マンガン、イリジウム)を用いても構わない。
【0050】
(飛散抑制部及び入射抑制部)
真空容器41aの正面壁上部(開口41bの上側)には、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に飛散することを抑制する飛散抑制部101と、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に入射することを抑制する入射抑制部102と、が設けられている。
【0051】
(飛散抑制部)
先ず、飛散抑制部101について説明する。飛散抑制部101は、ターゲット保持部46に保持されている。図6及び図7に示すように、飛散抑制部101には、各ターゲット47に対向する部位に第1開口部103がそれぞれ形成されていると共に、隣接する各ターゲット47間を仕切る隔壁104を複数有する。
【0052】
第1開口部103は、各ターゲット47をそれぞれ露出させるように例えば放射状に8つ配列されるよう形成されている。第1開口部103は、イオン97が所定のターゲット47に入射可能で、かつ所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98がウエハ1へ出射可能な大きさ、形状に構成されている。なお、第1開口部103は、各ターゲット47毎にそれぞれ大きさ、形状が適宜調整されて構成されていてもよい。
【0053】
隔壁104は、隣り合うターゲット47の間を仕切る側壁104aをターゲット保持部46側に備えている。側壁104aは、例えば板状に形成され、隣接する第1開口部103をそれぞれ囲うように放射状に8個配列されて構成されている。これにより、側壁104aは、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が隣り合う他のターゲット47に飛散することを抑制可能に構成されている。また、側壁104aは、イオン発生部80からのイオン97が隣り合う他のターゲット47に同時に照射されてしまうことを防止し、複数のターゲット47により複数種のスパッタ粒子98が同時に発生することを防止可能に構成されている。さらに隔壁104は、回動軸44aとターゲット47との間を仕切る内側壁104bをターゲット保持部46側に備えている。内側壁104bは、例えば板状に形成され、回動軸44aの外周を囲うように略円形状に1個構成されている。これにより、内側壁104bは、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が回動軸44a方向側に飛散することを抑制可能に構成されている。
【0054】
なお、内側壁104bは、ターゲット保持部46に飛散抑制部101を保持する連結部を兼ね、ターゲット保持部46に飛散抑制部101を固定するよう構成されている。すなわち、飛散抑制部101は、ターゲット保持部46を覆ってターゲット保持部46と一体的に回動されるよう構成されている。これにより、第1開口部103が各ターゲット47の位置と同じ位置を維持し、第1開口部103と各ターゲット47との位置がずれることを防止可能に構成されている。その結果、イオン97が所定のターゲット47に入射可能であり、かつ所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98がウエハ1に向って入射可能である。なお、内側壁104bと連結部とは、それぞれ別個に構成されてもよい。
【0055】
(入射抑制部)
次に、入射抑制部102について説明する。入射抑制部102は、飛散抑制部101とウエハ1との間に設けられている。入射抑制部102は、支持部106によってスパッタリング室41の正面壁に支持され固定されている(図3参照)。図6及び図8に示すように、入射抑制部102には、所定のターゲット47を露出させるように第2開口部105が1つ形成されていると共に、他のターゲット47に対向する第1開口部103を覆うように構成されている。第2開口部105は、第1開口部103と同様にイオン97が所定
のターゲット47に入射可能で、かつ所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98がウエハ1へ出射可能な大きさ、形状に構成されている。これにより、入射抑制部102は、他のターゲット47に対しては第1開口部103を塞ぐことで、所定のターゲット47にて発生し、スパッタリング室41や成膜室42の内壁で反射して反跳したスパッタ粒子98が他のターゲット47に入射することを抑制可能に構成されている。
【0056】
なお、飛散抑制部101及び入射抑制部102は、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の非金属材料により構成することができる。かかる場合、ウエハ1や処理室40内の金属汚染を抑制できる。また、飛散抑制部101及び入射抑制部102は、スパッタリングされにくい材料、例えばW(タングステン)等により構成してもよい。
【0057】
また、飛散抑制部101及び入射抑制部102の表面は、表面粗さ処理として例えばサンドブラストにより加工されている。飛散抑制部101及び入射抑制部102の外表面の表面仕上げが細かいと、スパッタ粒子98が付着し難くなり、付着しても剥がれ等が生じ、パーティクル等の原因となる。本実施形態では、表面粗さ処理されているので、飛散抑制部101及び入射抑制部102の表面にスパッタ粒子98が付着し易くなり、付着しても剥がれ等が生じることを抑制してパーティクル等の発生を抑制可能に構成されている。
【0058】
なお、飛散抑制部101及び入射抑制部102は、スパッタ粒子98が所定の付着量になったとき、交換可能に構成されている。このメンテナンスサイクルは、ターゲット47(薄膜の膜種)により、例えば処理室40内壁に装着している防着板(図示しない)との交換時機と同じであり、12時間/日使用時で約2ヶ月に1回程度である。
【0059】
このように構成された基板処理装置は、飛散抑制部101により所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に飛散することを抑制すると共に、入射抑制部102により所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に入射することを抑制することで、ターゲット47への不純物の付着を抑制させることが可能となる。
【0060】
(4)基板処理工程
次に、磁気抵抗素子メモリ等の半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程を、図9のフローチャートに従って、主に図3及び図4を参照しながら説明する。本工程では、ウエハ1上にCoFeB薄膜、MgO薄膜、Ru薄膜を順に積層するように成膜する。図9は、本発明の第1の実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。基板処理工程は、上記構成に係る基板処理装置により実施される。
【0061】
(ウエハを搬入する工程(ステップS1))
まず、予め所定の圧力に減圧した成膜室42内に搬入搬出口43からウエハ1を搬入し、水平姿勢の基板保持部50上に載置する。
【0062】
(ウエハを保持する工程(ステップS2))
基板保持部50は、ウエハ1をチャックして位置決め保持する。そして、図3及び図4に示すように、基板保持部50をチルト機構52によって垂直姿勢(ウエハ1の上面がターゲット保持部46側に向く姿勢)にする。続いて、基板保持部50を回動機構51によって回動させウエハ1を回動させる。なお、ウエハ1の回転は、後述するウエハ搬出工程時まで継続する。
【0063】
続いて、搬入搬出口43をゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって閉じた後、スパッタリング室41内及び成膜室42内をクライオポンプ55a及びターボ分子ポンプ55bによって真空引きし、室内を例えば0.1〜0.01Paに減圧する。
【0064】
(CoFeB薄膜を成膜する工程)
続いて、以下のステップS3〜S5を実施することで、ウエハ1上にCoFeB薄膜を成膜する。
【0065】
(ターゲット群を回動させる工程(ステップS3))
先ず、ターゲット回動駆動部44によってターゲット台座45を所定の角度だけ回動させてターゲット群48を回動させ、所定のターゲット47、例えばCoFeB合金からなるターゲット47(CoFeBターゲットとも呼ぶ)を、イオン発生部80のイオン照射口83に対向させると共に、基板保持部50に保持されたウエハ1の上面に対向させる。このとき、飛散抑制部101は、ターゲット保持部46を覆ってターゲット保持部46と一体的に回動することで、第1開口部103が各ターゲット47の位置と同じ位置を維持し、第1開口部103と各ターゲット47との位置がずれることを防止している。これにより、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98がウエハ1に向って入射可能となる。
【0066】
(イオンを発生させる工程(ステップS4))
続いて、イオン発生部80にてArガスをプラズマ化し、Arのイオン97を発生させる。具体的には、ガス導入管84からイオン発生部80のイオン源室82内にArガスを所定の流量、例えば2〜20sccmで供給する。そして、フィラメント電源87をONにし、フィラメント86から熱電子を放出させる。そして、アーク電源88をONにし、イオン源室82内で電子を移動させてAr原子に衝突させ、イオン源室82内に供給されたArガスをプラズマ化させる。そして、減速電源91及び加速電源94をONとし、加速電極95をプラス電位、減速電極92をマイナス電位とする。その結果、加速電極95、減速電極92及び接地電極90の電位差から生じる電界により、Arイオン97を透過口96群から成膜室42内に向けて引き出してイオン97(イオンビーム)を発生させる。なお、減速電極92と接地電極90との間の電位差は、スパッタリング室41内にある電子がイオン源室82内に入り込むのを阻止する役目を果たす。
【0067】
(成膜工程(ステップS5))
イオン発生部80から透過口96群を介して成膜室42内に向けて引き出されたイオン97は、所定のターゲット47(ここではCoFeB合金からなるターゲット)に照射される。すると、CoFeB合金を構成する分子等のスパッタ粒子98が所定のターゲット47(CoFeBターゲット)から飛び出す。そして、飛び出したスパッタ粒子98がウエハ1の上面に入射して吸着(堆積)し、ウエハ1の上面に、例えば磁性薄膜であるCoFeB薄膜が成膜される。
【0068】
このとき、ターゲット保持部46に保持され、各ターゲット47に対向する部位に第1開口部103がそれぞれ形成されると共に、隣接する各ターゲット47間を仕切る隔壁104を複数有する飛散抑制部101により、所定のターゲット47(CoFeBターゲット)にて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に飛散することを抑制する。具体的には、飛散抑制部101の隔壁104aにより、所定のターゲット47(CoFeBターゲット)にて発生したスパッタ粒子98が隣り合う他のターゲット47に飛散することを抑制する。また、内側壁104bにより、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98の回動軸44a方向側に飛散することを抑制する。
【0069】
また、飛散抑制部101とウエハ1との間に設けられ、所定のターゲット47(CoFeBターゲット)を露出させるように第2開口部105が形成されると共に、他のターゲット47に対向する第1開口部103を覆うように構成された入射抑制部102により、所定のターゲット47(CoFeBターゲット)にて発生したスパッタ粒子98が他のタ
ーゲット47に入射することを抑制する。具体的には、入射抑制部102により、他のターゲット47に対しては第1開口部103を塞ぐことで、ウエハ1の上面以外の例えばスパッタリング室41や成膜室42の内壁で反射して反跳したスパッタ粒子98が他のターゲット47に入射することを抑制する。
【0070】
なお、所定のターゲット47(CoFeBターゲット)にイオン97が入射される際、飛散抑制部101により、イオン97が隣り合う他のターゲット47に同時に照射されてしまうことを防止し、複数のターゲット47により複数種のスパッタ粒子98が同時に発生することを防止している。
【0071】
所定時間(例えば30〜180秒)が経過し、ウエハ1の上面に所望の膜厚のCoFeB薄膜を形成したら、イオン発生部80によるイオン97の供給を停止し、成膜工程を終了する。
【0072】
(MgO薄膜を成膜する工程)
続いて、上述のステップS3〜S5を再び実施することで、他の薄膜、例えば絶縁薄膜であるMgO薄膜をCoFeB薄膜上に積層するように成膜する(ステップS6で「No」の場合)。
【0073】
具体的には、ターゲット回動駆動部44によりターゲット台座45を所定の角度だけ再び回動させ、MgOからなるターゲット47(MgOターゲットとも呼ぶ)を、イオン照射口83に対向させると共に、ウエハ1の上面に対向させる(ステップS3)。このとき、飛散抑制部101は、ターゲット保持部46と一体的に回動し、MgOターゲットにて発生したスパッタ粒子98がウエハ1に向って入射可能となる。次に、イオン発生部80にてArのイオン97を発生させ(ステップS4)、このArのイオン97をMgOターゲットに照射させる。そして、MgOターゲットから飛び出したスパッタ粒子98がウエハ1の上面に入射し、ウエハ1のCoFeB薄膜上にMgO薄膜が成膜される(ステップS5)。このとき、飛散抑制部101により、MgOターゲットにて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に飛散することを抑制すると共に、入射抑制部102により、MgOターゲットにて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に入射することを抑制する。
【0074】
(Ru薄膜を成膜する工程)
続いて、上述のステップS3〜S5を再び実施することで、他の薄膜、例えば非磁性薄膜であるRu薄膜をMgO薄膜上に積層するように成膜する(ステップS6で「No」の場合)。
【0075】
具体的には、ターゲット回動駆動部44によりターゲット台座45を所定の角度だけ回動させ、Ruターゲットをイオン照射口83に対向させると共に、ウエハ1の上面に対向させる。飛散抑制部101は、ターゲット保持部46と一体的に回動し、Ruターゲットにて発生したスパッタ粒子98がウエハ1に向って入射可能となる。次に、イオン発生部80にてArのイオン97を発生させ(ステップS4)、このArのイオン97をRuターゲットに照射させる。そして、Ruターゲットから飛び出したスパッタ粒子98がウエハ1の上面に入射し、ウエハ1のMgO薄膜上にRu薄膜が成膜される(ステップS5)。このとき、飛散抑制部101により、Ruターゲットにて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に飛散することを抑制すると共に、入射抑制部102により、Ruターゲットにて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に入射することを抑制する。
【0076】
(ウエハ搬出工程(ステップS7))
そして、次に成膜する薄膜がなく終了する場合(ステップS6で「Yes」の場合)は、スパッタリング室41内及び成膜室42内にパージガスとしてArガスを供給しつつ、スパッタリング室41内及び成膜室42内のガス雰囲気を排気する。所定時間が経過したら、回動機構51を停止してウエハ1の回転を停止する。そして、ウエハ1を搬出して基板処理工程を終了する。その後、ゲートバルブ35(図1及び図2参照)によって搬入搬出口43を開放し、基板保持部50に保持した処理済みのウエハ1を搬入搬出口43から搬出する。そして、基板処理工程終了から所定時間経過後、ターボ分子ポンプ55bからクライオポンプ55aに切り換え、処理室40内を高真空に維持する。
【0077】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0078】
(a)本実施形態によれば、ターゲット保持部46に保持され、各ターゲット47に対向する部位に第1開口部103がそれぞれ形成されると共に、隣接する各ターゲット47間を仕切る隔壁104を複数有する飛散抑制部101を備えている。これにより、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が、所定のターゲット47とは異なる材質である他のターゲット47に飛散することを抑制させることができる。
【0079】
(b)本実施形態によれば、飛散抑制部101が連結部を兼ねる内側壁104bによりターゲット保持部46に保持され、ターゲット保持部46を覆ってターゲット保持部46と一体的に回動されるよう構成されている。これにより、第1開口部103が各ターゲット47の位置と同じ位置を維持し、第1開口部103と各ターゲット47との位置がずれることを防止可能としている。その結果、イオン97が所定のターゲット47に入射可能であり、かつ所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98がウエハ1に向って入射可能である。
【0080】
(c)本実施形態によれば、隔壁104が隣り合うターゲット47の間を仕切る側壁104aを備えている。これにより、側壁104aは、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が隣り合う他のターゲット47に飛散することを抑制させることができる。
【0081】
(d)本実施形態によれば、隔壁104が回動軸44aとターゲット47との間を仕切る内側壁104bを備えている。これにより、内側壁104bは、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が回動軸44a方向側に飛散することを抑制させることができる。
【0082】
なお、隔壁104は、図示しないがターゲット群48の周囲を囲う外側壁を備えてもよい。この場合、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98がターゲット群48の外周側から飛散することを抑制することが可能となる。
【0083】
(e)本実施形態によれば、飛散抑制部101とウエハ1との間に設けられ、所定のターゲット47を露出させるように第2開口部105が形成されると共に、他のターゲット47に対向する第1開口部103を覆うように構成される入射抑制部102を備えている。これにより、入射抑制部102は、他のターゲット47に対しては第1開口部103を塞ぐことで、所定のターゲット47にて発生し、ウエハ1の上面以外の例えばスパッタリング室41や成膜室42の内壁で反射して反跳したスパッタ粒子98が他のターゲット47に入射することを抑制することができる。
【0084】
(f)本実施形態によれば、所定のターゲット47にて発生したスパッタ粒子98が他のターゲット47に飛散することを抑制すると共に、所定のターゲット47にて発生した
スパッタ粒子98が他のターゲット47に入射することを抑制することができる。この結果、ターゲット47の清浄度を維持できて、ウエハ1上に成膜される薄膜中に不純物が混入すること(クロスコンタミネーション)を抑制させることができ、ウエハ1上に成膜される薄膜の膜質を向上させることが可能となる。
【0085】
(g)本実施形態によれば、飛散抑制部101及び入射抑制部102の外表面は、表面粗さ処理されている。飛散抑制部101及び入射抑制部102の外表面の表面仕上げが細かいと、スパッタ粒子98が付着し難くなり、付着しても剥がれ等が生じ、パーティクル等の原因となる。本実施形態では、表面粗さ処理されているので、飛散抑制部101及び入射抑制部102の表面にスパッタ粒子98が付着し易くなり、付着しても剥がれ等が生じることを抑制してパーティクル等の発生を抑制可能である。
【0086】
(h)本実施形態によれば、ターゲット群48を保持するターゲット台座45と、ターゲット台座45を回動させるターゲット回動駆動部44と、を備えるターゲット保持部46を備えている。これにより、ターゲット台座45を回動させるだけで、ターゲット群48を回動させて所定のターゲット47を容易にイオン照射口83に対向させると共に、ウエハ1の上面に対向させることができる。
【0087】
(i)本実施形態によれば、ターゲット回動駆動部44の回動軸44a上に対し垂直方向に延在するターゲットホルダ49を複数備え、各ターゲット47を保持するように構成されている。これにより、ターゲット台座45に直接ターゲット47が配設されないので、スパッタリングにより発生される熱がターゲット台座45等の他の部位に伝達し難くなり、他の部位の昇温や劣化を抑制させることができる。また、ターゲットホルダ49によりターゲット47を個別に角度、位置調整等が容易となる。さらに、ターゲット台座45はターゲットホルダ49を取り付け可能な大きさ、形状であればよいので、その分ターゲット台座45の軽量化が可能となり、ターゲット回動駆動部44aの出力を小さく構成させることができる。
【0088】
(j)本実施形態によれば、イオン発生部80、ターゲット保持部46、飛散抑制部101及び入射抑制部102が設けられるスパッタリング室41と、スパッタリング室41に連通し、基板保持部50が設けられる成膜室42と、を備える。すなわち、スパッタ粒子98を発生させるスパッタリング室41と、ウエハ1上への成膜を行う成膜室42とが、分離して構成されている。これにより、それぞれ独立に調整、清掃し易い。
【0089】
なお、ウエハ1上での多層膜形成において、薄膜中の不純物低減、処理室42内の水分濃度等の低減による清浄度を維持するために、高真空の環境を保つ必要がある。本実施形態では、クライオポンプ55aを用いている。クライオポンプ55aは、図示しないがポンプ内の容器内壁に設置した極低温面に容器内の気体分子を凝縮又は吸着させて捕捉させる貯め込み式ポンプである。ここで、成膜時にクライオポンプ55aを稼動していると、スパッタリング室41内の例えばArガス、キセノンガス等のガスがポンプ内容器に付着する。クライオポンプ55aは、ある程度のガス付着量で定期的にメンテナンス(再生とも呼ぶ)を行う必要がある。このメンテナンス方法は、一度クライオポンプ55a内容器の極低温面を10Kから常温まで昇温し、凝縮又は吸着しているガスを気体に戻して容器内を排気することで行われる。昇温時間は、約2時間程度である。本実施形態では、同一処理室42内にターボ分子ポンプ55bとクライオポンプ55aとを併用している。そして、成膜時にはターボ分子ポンプ55bを用い、成膜時以外にはクライオポンプ55aを用いる。これにより、成膜室42内及びスパッタリング室41内は常に高真空の雰囲気が維持され、清浄度が保持される。そして、成膜時におけるクライオポンプ55a内のガス成分の付着が抑制され、クライオポンプ55a内でのガス吸着が抑制される。従って、メンテナンスサイクルは例えば12時間/日で運用していても2ヶ月に一度程度で十分とな
る。メンテナンスタイミングとしては、後述するイオン発生部80の電極のメンテナンス時に同時に実施するとよい。なお、クライオポンプ55aのみ用いる場合、2週間に一度程度は、メンテナンスが必要となる。このため、クライオポンプ55aと共に、ターボ分子ポンプ55bを用いることは有効である。
【0090】
<第2の実施形態>
図10は、本発明の第2の実施形態に係るターゲット保持部46Bの平面図である。図11は、本発明の第2の実施形態に係る第1の処理炉33の縦断面図である。本実施形態では、ターゲット保持部46に直接ターゲット47を配列させる点が第1の実施形態と異なる。それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
【0091】
すなわち、図10及び図11に示すように、ターゲット保持部46Bは、ターゲット台座45Bを備えている。ターゲット台座45Bは錐形状に構成され、ターゲット台座45Bの錐面に直接ターゲット47を複数配列させるように構成されている。具体的には、ターゲット台座45Bは、例えば八角錐台状に構成されている。ターゲット台座45Bの各側面(8枚の側面)には、ターゲット群48のうち、所定のターゲット47(47A〜47H)のいずれかがそれぞれ直接保持されるように構成されている。そして、ターゲット台座45Bの錐面は、隣接するターゲット47を互いに離間して保持するように構成されている。なお、ターゲット保持部46Bは、八角錐台状に形成される場合に限らず、他の多角錐台状に構成されていてもよい。
【0092】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることに加え、ターゲット台座45Bの錐面に直接各ターゲット47を配列できるので、ターゲット台座45Bの構造を簡略化できると共に、コストを抑制させることができる。
【0093】
<本発明の他の実施形態>
なお、本実施形態では、隔壁104をターゲット保持部46側にのみ設けるように構成しているが、本実施形態はこれに限定されない。図示しないが、入射抑制部102側に隔壁104をさらに設け、ターゲット保持部46側と入射抑制部102側との両方の隔壁104により隔壁104を構成してもよい。その場合、飛散抑制部101は、ターゲット47が第1開口部103から突出するようターゲット47の下層側に設ける。これにより、所定のターゲット47で発生したスパッタ粒子98が飛散抑制部101と入射抑制部102との間で入射抑制部102側の隔壁104により抑制されて他のターゲット47に入射されることを抑制可能となる。なお、隔壁104を入射抑制部102側にのみ設けるように構成してもよい。
【0094】
また、本実施形態では、隔壁104を飛散抑制部101に設けるように構成しているが、本実施形態はこれに限定されない。隔壁104をターゲット保持部46に一体的に設けるように構成してもよい。
【0095】
また、本実施形態では、入射抑制部102と飛散抑制部101のいずれも設けるように構成しているが、本実施形態はこれに限定されない。入射抑制部102と飛散抑制部101のいずれか一方のみ設けるように構成しても良い。
【0096】
なお、上述の実施形態においては、磁性薄膜であるCoFeB薄膜を成膜する工程を行い、その後、絶縁薄膜であるMgO薄膜を成膜する工程を行った後、Ru薄膜を成膜する工程を行って三層成膜する基板処理工程を実施したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、成膜する薄膜は、CoFeB薄膜やMgO薄膜やRu薄膜等に限らず、例えばPtFeP薄膜等であってもよい。さらに、CoFeB薄膜やPtFeP薄膜等の三元系の薄膜に限らず、例えばCuやNi等を混合した四元又は五元系以上の薄膜を成膜する場合
にも適用可能である。また、ウエハ1上に二層以下の積層膜を形成する場合や、四層以上の積層膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用可能である。
【0097】
また、薄膜が成膜される基板としては、Siウエハの他に石英ガラス基板、結晶化ガラス基板、MgO基板等であってもよい。また、本発明は、本実施形態にかかる半導体製造装置等のウエハ基板を処理する基板処理装置に限らず、プリント配線基板、液晶パネル、磁気ディスクやコンパクトディスク等の基板を処理する基板処理装置にも好適に適用できる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0099】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0100】
イオンを発生するイオン発生部と、
ターゲットを複数配列させたターゲット群を保持し、前記ターゲット群のうち所定のターゲットに前記イオンが入射するよう前記ターゲット群を回動させるターゲット保持部と、
前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が入射されるように基板を保持する基板保持部と、
前記ターゲット保持部に保持され、各前記ターゲットに対向する部位に第1開口部がそれぞれ形成されると共に、隣接する各前記ターゲット間を仕切る隔壁を複数有し、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が他のターゲットに飛散することを抑制する飛散抑制部と、
前記飛散抑制部と前記基板との間に設けられ、前記所定のターゲットを露出させるように第2開口部が形成されると共に、前記他のターゲットに対向する前記第1開口部を覆うように構成され、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が前記他のターゲットに入射することを抑制する入射抑制部と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0101】
好ましくは、前記飛散抑制部は、前記ターゲット保持部を覆うように該ターゲット保持部に保持される。
【0102】
より好ましくは、前記隔壁は、隣り合う前記ターゲットの間を仕切る側壁を備える。
【0103】
より好ましくは、前記隔壁は、前記ターゲット群を回動させる回動軸とターゲットとの間を仕切る内側壁を備える。
【0104】
より好ましくは、前記隔壁は、前記ターゲット群の周囲を囲う外側壁を備える。
【0105】
(飛散抑制部及び入射抑制部の外表面)
より好ましくは、前記飛散抑制部及び前記入射抑制部の外表面は、表面粗さ処理されている。
【0106】
より好ましくは、前記ターゲット保持部は、
前記ターゲット群を保持するターゲット台座と、
前記ターゲット台座を回動させるターゲット回動駆動部と、
を備える。
【0107】
より好ましくは、前記ターゲット台座は、前記ターゲット回動駆動部の回動軸に対して前記ターゲットを放射状に複数配列させるように構成されている。
【0108】
より好ましくは、前記ターゲット台座は、前記ターゲット回動駆動部の回動軸上に対し垂直方向に延在するターゲットホルダを複数備え、該ターゲットホルダにそれぞれ前記ターゲットが保持されるように構成されている。
【0109】
より好ましくは、前記ターゲット台座は、錐形状に構成され、前記ターゲット台座の錐面に前記ターゲットを複数配列させるように構成されている。
【0110】
より好ましくは、前記ターゲットホルダは、隣接する前記ターゲットを互いに離間して保持するように構成されている。
【0111】
より好ましくは、前記ターゲット台座は、前記錐面に隣接する前記ターゲットを互いに離間して保持するように構成されている。
【0112】
より好ましくは、前記イオン発生部、前記ターゲット保持部、前記飛散抑制部、及び前記入射抑制部が設けられるスパッタリング室と、前記スパッタリング室に連通し、前記基板保持部が設けられる成膜室と、を備える。
【0113】
本発明の他の態様によれば、
イオン発生部により、イオンを発生させる工程と、
ターゲット保持部により、ターゲットを複数配列させたターゲット群を保持させ、前記ターゲット群のうち所定のターゲットに前記イオンが入射するよう前記ターゲット群を回動させる工程と、
基板保持部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が入射されるように基板を保持させる工程と、
前記スパッタ粒子を前記基板に入射させて前記基板上に薄膜を形成する工程と、を有し
前記薄膜を形成する工程では、
前記ターゲット保持部に保持され、各前記ターゲットに対向する部位に第1開口部がそれぞれ形成されると共に、隣接する各前記ターゲット間を仕切る隔壁を複数有する飛散抑制部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が他のターゲットに飛散することを抑制すると共に、
前記飛散抑制部と前記基板との間に設けられ、前記所定のターゲットを露出させるように第2開口部が形成されると共に、前記他のターゲットに対向する前記第1開口部を覆うように構成された入射抑制部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が前記他のターゲットに入射することを抑制する
半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0114】
1 ウエハ(基板)
46 ターゲット保持部
47(47A〜47H) ターゲット
48 ターゲット群
50 基板保持部
80 イオン発生部
97 イオン(イオンビーム)
98 スパッタ粒子
101 飛散抑制部
102 入射抑制部
103 第1開口部
104 隔壁
105 第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを発生するイオン発生部と、
ターゲットを複数配列させたターゲット群を保持し、前記ターゲット群のうち所定のターゲットに前記イオンが入射するよう前記ターゲット群を回動させるターゲット保持部と、
前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が入射されるように基板を保持する基板保持部と、
前記ターゲット保持部に保持され、各前記ターゲットに対向する部位に第1開口部がそれぞれ形成されると共に、隣接する各前記ターゲット間を仕切る隔壁を複数有し、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が他のターゲットに飛散することを抑制する飛散抑制部と、
前記飛散抑制部と前記基板との間に設けられ、前記所定のターゲットを露出させるように第2開口部が形成されると共に、前記他のターゲットに対向する前記第1開口部を覆うように構成され、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が前記他のターゲットに入射することを抑制する入射抑制部と、を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
イオン発生部により、イオンを発生させる工程と、
ターゲット保持部により、ターゲットを複数配列させたターゲット群を保持させ、前記ターゲット群のうち所定のターゲットに前記イオンが入射するよう前記ターゲット群を回動させる工程と、
基板保持部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が入射されるように基板を保持させる工程と、
前記スパッタ粒子を前記基板に入射させて前記基板上に薄膜を形成する工程と、を有し
前記薄膜を形成する工程では、
前記ターゲット保持部に保持され、各前記ターゲットに対向する部位に第1開口部がそれぞれ形成されると共に、隣接する各前記ターゲット間を仕切る隔壁を複数有する飛散抑制部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が他のターゲットに飛散することを抑制すると共に、
前記飛散抑制部と前記基板との間に設けられ、前記所定のターゲットを露出させるように第2開口部が形成されると共に、前記他のターゲットに対向する前記第1開口部を覆うように構成された入射抑制部により、前記所定のターゲットにて発生したスパッタ粒子が前記他のターゲットに入射することを抑制する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−168828(P2011−168828A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33004(P2010−33004)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】