説明

基板処理装置

【課題】エネルギ効率の良好なバッチ式熱処理装置を提供する。
【解決手段】バッチ式熱処理装置において、プロセスチューブ36外に電磁波を閉じ込めるシールド52を同心円状に設置し、シールド52の中央高さに電磁波導入ポート53を穿設し、電磁波導入ポート53に導波管54の一端を接続し、導波管54の他端にマイクロ波を供給するマイクロ波源55を接続する。マイクロ波源55にマイクロ波の周波数を調整するコントローラを接続し、コントローラに電界強度測定器を接続する。電界強度測定器に電界強度を検出する複数のアンテナ58を接続し、複数のアンテナ58はシールド52に高さ方向および周方向に間隔をとって配置する。各バッチ毎に最適周波数を求め、各バッチ毎にマイクロ波源からの出力マイクロ波の周波数を最適値に調整することで、バッチ相互間の処理時間の変動を防止し、エネルギ効率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという。)が作り込まれる半導体ウエハ(以下、ウエハという。)に熱処理(thermal treatment )を施すのに利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造方法においてウエハに熱処理を施すのに、バッチ式縦型ホットウオール形熱処理装置が広く使用されている。
バッチ式縦型ホットウオール型熱処理装置は処理炉を備えており、処理炉は、処理室を形成したプロセスチューブと、処理室を排気する排気管と、処理室へ処理ガスを供給するガス供給管と、プロセスチューブ外に設置されて処理室内を全体にわたって均一に加熱するヒータユニットとから構成されている。
処理炉の真下近傍にはボートエレベータが設置されており、ボートエレベータのアームにはシールキャップが水平に支持されている。シールキャップ上にはボートが垂直に立脚されており、ボートは複数枚のウエハを中心を備えて水平に保持する。
そして、ボートがボートエレベータによって上昇されるのに伴って、複数枚のウエハが処理室に搬入され、処理室内において処理炉による熱処理を施される。
【0003】
従来のこの種の処理炉のヒータユニットは、抵抗発熱体と断熱筒とによって形成されているのが、一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒータユニットが抵抗発熱体と断熱筒とによって構成されたバッチ式縦形ホットウオール形熱処理装置においては、エネルギ効率が低いという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、エネルギ効率の良好な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するための手段のうち代表的なものは、次の通りである。
基板を複数処理するバッチ式基板処理装置において、
前記基板を加熱するマイクロ波加熱源と、
前記マイクロ波加熱源の周波数を調整する調整部と、
電界強度を検出する電界強度検出部と、
を有する基板処理装置。
【発明の効果】
【0007】
前記した手段によれば、最適の周波数をマイクロ波加熱源に出力させることにより、エネルギ効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】
本実施の形態において、本発明に係る基板処理装置は、ウエハに各種の熱処理を施すバッチ式熱処理装置として構成されている。
【0010】
図1および図2に示されているように、バッチ式熱処理装置10においては、基板であるウエハ1を収納して搬送するためのウエハキャリアとしては、FOUP(以下、ポッドという。)2が使用されている。
バッチ式熱処理装置10は筐体11を備えている。
筐体11の正面壁11aの正面前方部には正面メンテナンス口12が開設されている。正面メンテナンス口12はメンテナンス作業を実施するための開口である。正面メンテナンス口12は正面メンテナンス扉13、13によって開閉される。
筐体11の正面壁11aにはポッド搬入搬出口14が筐体11の内外を連通するように開設されている。ポッド搬入搬出口14はフロントシャッタ15によって開閉される。
ポッド搬入搬出口14の正面前方側にはロードポート16が設置されている。ロードポート16はポッド2を載置されて位置合わせする。
ポッド2はロードポート16上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、ロードポート16上から搬出される。
【0011】
筐体11内の前後方向の略中央部における上部には、回転式ポッド棚17が設置されており、回転式ポッド棚17は複数個のポッド2を保管する。
すなわち、回転式ポッド棚17は支柱18および複数枚の棚板19を備えている。支柱18は水平面内で間欠回転される。複数枚の棚板19は支柱18に上中下段の各位置に配置され、放射状に支持されている。複数枚の棚板19はポッド2を複数個宛それぞれ載置した状態で保持する。
【0012】
筐体11内におけるロードポート16と回転式ポッド棚17との間には、ポッド搬送装置20が設置されている。ポッド搬送装置20はポッドエレベータ20aおよびポッド搬送機構20bを備えている。ポッド搬送装置20はポッドエレベータ20aとポッド搬送機構20bとの連続動作により、ロードポート16と回転式ポッド棚17とポッドオープナ21との間でポッド2を搬送する。
【0013】
ポッドオープナ21はポッド2を載置する載置台22、22と、ポッド2のキャップを着脱するキャップ着脱機構23、23とを備えている。ポッドオープナ21は載置台22に載置されたポッド2のキャップをキャップ着脱機構23によって装着したり外したりする。これにより、ポッド2はウエハ出し入れ口を開いたり閉じたりされる。
【0014】
筐体11内には前後方向略中央部下部に、サブ筐体24が後端まで構築されている。サブ筐体24の正面壁24aには一対のウエハ搬入搬出口25、25が垂直方向に上下二段に並べられて開設されている。上下段のウエハ搬入搬出口25、25には一対のポッドオープナ21、21がそれぞれ設置されている。ウエハ搬入搬出口25はウエハ1をサブ筐体24内に搬入したり、ウエハ1をサブ筐体24内から搬出するための出し入れ口(ゲート)である。
【0015】
サブ筐体24はポッド搬送装置20および回転式ポッド棚17の設置空間から流体的に隔絶された移載室26を構成している。移載室26は前側領域にウエハ移載機構27を設置されている。
ウエハ移載機構27はウエハ移載装置27a、ウエハ移載装置エレベータ27bおよびツィーザ27cを備えている。ウエハ移載装置27aは水平面内において回転または直動する。ウエハ移載装置エレベータ27bはウエハ移載装置27aを昇降させる。ツィーザ27cはウエハ移載装置27aに支持されており、ウエハ1を水平に保持する。
ウエハ移載装置エレベータ27bおよびウエハ移載装置27aの連続動作により、ツィーザ27cによって保持したウエハ1を後記するボートに搬送して装填(チャージング)したり、ボートに装填されたウエハ1をツィーザ27cによって受け取る。
図1に想像線で示されているように、ウエハ移載装置エレベータ27bは筐体11の右側端部とサブ筐体24の移載室26の前方領域右端部との間に設置されている。
【0016】
移載室26の後側領域には待機部28が構成されている。待機部28はボートを収容して待機させる予備室である。待機部28の天井面には炉口シャッタ29が設けられており、炉口シャッタ29は後記する処理炉の炉口を開閉する。
【0017】
図1に想像線で示されているように、筐体11の右側端部とサブ筐体24の待機部28の右端部との間には、ボートエレベータ30が設置されている。ボートエレベータ30のアーム31にはシールキャップ32が水平に据え付けられている。アーム31はボートエレベータ30の昇降台に連結された連結具である。シールキャップ32は処理炉の炉口を閉塞する蓋体である。
【0018】
図1に示されているように、ウエハ移載装置エレベータ27b側およびボートエレベータ30側と反対側である移載室26左側端部には、クリーンユニット33が設置されている。クリーンユニット33は供給フアンおよび防塵フィルタによって構成されている。クリーンユニット33は清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア34(図1の矢印参照)を供給する。
図示はしないが、ウエハ移載装置27aとクリーンユニット33との間にはノッチ合わせ装置が設置されている。ノッチ合わせ装置はウエハの円周方向の位置を整合させる。
クリーンユニット33から吹き出されたクリーンエア34は、ノッチ合わせ装置、ウエハ移載装置27aおよびボートを流通する。その後に、クリーンエア34は図示しないダクトにより吸い込まれる。吸い込まれたクリーンエア34は筐体11の外部に排気がなされるか、または、クリーンユニット33の吸い込み側である一次側(供給側)に戻されて、クリーンユニット33から移載室26内に再び吹き出される。
【0019】
図1および図2に示されているように、筐体11の後側上部には処理炉35が垂直に設置されている。
図3に示されているように、処理炉35はプロセスチューブ36を備えている。プロセスチューブ36は石英等の誘電体が使用されて一端開口で他端閉塞の円筒形状に形成されており、プロセスチューブ36は中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持されている。
プロセスチューブ36の筒中空部は複数枚のウエハ1が収容される処理室37を形成しており、プロセスチューブ36の内径は取り扱うウエハ1の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
プロセスチューブ36の下端部には炉口フランジ38が設置されている。炉口フランジ38は処理炉35の炉口39を形成している。炉口フランジ38がサブ筐体24に支持された状態で、プロセスチューブ36は垂直に据え付けられた状態になっている。
【0020】
図3に示されているように、ボートエレベータ30は処理炉35の真下近傍に設置されている。ボートエレベータ30のアーム31に支持されたシールキャップ32は炉口39を閉塞する。すなわち、シールキャップ32は炉口フランジ38の外径と略等しい円盤形状に形成されており、ボートエレベータ30によって上昇されることにより、炉口39を気密シールする。
【0021】
プロセスチューブ36の下端部の側壁には排気管40の一端が接続されており、排気管40は他端を排気装置(図示せず)に接続されている。排気装置は排気管40を介して処理室37を排気する。
プロセスチューブ36の排気管40と異なる位置には、処理室37へ処理ガスを供給するためのガス供給管41の一端が接続されている。
【0022】
シールキャップ32上にはボート42が垂直に立脚されて支持されている。ボート42は複数枚のウエハ1を保持して、処理室37内に搬入(ボートローディング)したり、処理室37外へ搬出(ボートアンローディング)したりする。
ボート42は石英等の誘電体が使用されて形成されている。
ボート42は上下で一対の端板43、44と、3本の保持柱45、45、45とを備えている。3本の保持柱45、45、45は両端板43、44間に垂直に架橋されている。3本の保持柱45、45、45には複数の保持溝46が、上下方向に等間隔に配置されてそれぞれ形成されており、同一段の保持溝46、46、46は同一平面を構成している。すなわち、ボート42は同一段の保持溝46、46、46によってウエハ1の外周縁部を保持することにより、複数枚のウエハ1を中心を揃えて整列させた状態で保持する。
ボート42の下部には複数枚の断熱板47が配置されている。断熱板47は処理室37からの熱の放射を抑制する。
シールキャップ32下面の中央にはロータリーアクチュエータ48が設置されている。ロータリーアクチュエータ48の回転軸49はボート42を支持する。すなわち、ロータリーアクチュエータ48は回転軸49によってボート42を回転させる。
【0023】
プロセスチューブ36の外部にはベース51が水平に配置されており、ベース51上にはシールド52がプロセスチューブ36と同心円状に設置されている。シールド52は上端が閉塞した八角形筒形状、もしくは他の多角形筒状に形成されており、プロセスチューブ36よりも大きい。シールド52はプロセスチューブ36の外側を取り囲んで電磁波を閉じ込め、かつまた、反射させる。
シールド52は電磁波の外部への漏洩を効果的に防止可能な導電性材料によって形成されている。例えば、このような導電性材料としては、銅、アルミニウム、ステンレス、白金、銀等を挙げることができる。
但し、シールド52は導電性材料のみによって形成するに限らない。シールド52は多層シールド材料によって形成してもよい。例えば、多層シールド材料は、導電性材料からなる基材のプロセスチューブ36側表面に、電磁波を反射する反射面および電磁波を吸収する吸収層を形成することにより、構築することができる。
【0024】
シールド52の側壁は電磁波導入ポート53を穿設されている。電磁波導入ポート53にはシールド52内に電磁波を供給するための導波管54の一端が接続されている。
導波管54の他端には電磁波であるマイクロ波を供給する電磁波源(以下、マイクロ波源という。)55が接続されている。マイクロ波は波長1m以下の電波で極超短波とも称される。マイクロ波には遠赤外部に接する1mm以下のサブミリ波まで含まれる。
マイクロ波源55は0.5〜50GHzのマイクロ波を導波管54に供給する。マイクロ波源55は基板であるウエハを加熱するマイクロ波加熱源を構成している。
マイクロ波源55にはコントローラ56が接続されている。コントローラ56は供給するマイクロ波の周波数を増減して調整する調整部を構成している。
コントローラ56には電界強度測定器57が接続されており、電界強度測定器57には複数のアンテナ58が接続されている。複数のアンテナ58はシールド52側壁の複数箇所に高さ方向および周方向に間隔をとって配置されている。複数のアンテナ58はシールド52側壁にそれぞれ配置された場所の電界強度を検出し、電界強度測定器57に送信する。電界強度測定器57は複数のアンテナ58が検出した各場所の電界強度を測定し、測定結果をコントローラ56に送信する。すなわち、複数のアンテナ58および電界強度測定器57は、電界強度すなわち電場の強さ(V/m)を検出する電界強度検出部を構成している。
コントローラ56は電界強度測定器57からの測定結果に基づいて、後述する最適制御を実施する。
【0025】
なお、電磁波導入ポート53はシールド52の一箇所に配置するに限らず、複数箇所に配置してもよい。
また、導波管54は電磁波導入ポート53に直接的に接続するに限らず、電磁的拡散レンズ等の電磁波を拡散する電磁波拡散手段を介在させてもよい。
【0026】
次に、前記構成に係るバッチ式熱処理装置10を用いる本発明の一実施形態であるICの製造方法の熱処理工程を説明する。
【0027】
図1および図2に示されているように、ポッド2がロードポート16に供給されると、フロントシャッタ15はポッド搬入搬出口14を開放する。
ポッド搬入搬出口14が開放すると、ポッド搬送装置20はロードポート16上のポッド2を筐体11内へポッド搬入搬出口14から搬入する。ポッド搬送装置20は搬入したポッド2を回転式ポッド棚17の指定された棚板19へ搬送して受け渡す。
ポッド2を棚板19に一時的に保管した後、ポッド搬送装置20はポッド2を棚板19から一方のポッドオープナ21に搬送し、載置台22に移載する。
なお、ポッド搬送装置20はロードポート16上のポッド2を回転式ポッド棚17に搬送せずに、ポッドオープナ21に直接搬送する場合もある。
【0028】
ポッド2搬送中、キャップ着脱機構23はポッドオープナ21のウエハ搬入搬出口25を閉じている。クリーンユニット33は移載室26にクリーンエア34を流通させて循環させる。
クリーンユニット33が移載室26にクリーンエア34として窒素ガスを循環させることにより、移載室26内の酸素濃度は筐体11内(大気雰囲気)の酸素濃度よりも遥かに低く(例えば、20ppm以下)維持される。
【0029】
ポッドオープナ21は載置台22に載置されたポッド2の開口側端面をサブ筐体正面壁24aの搬入搬出口25開口縁辺部に押し付ける。キャップ着脱機構23はポッド2のキャップを取り外し、ウエハ出し入れ口を開放させる。
ポッド2が開放されると、ウエハ移載装置27aはツィーザ27cによってウエハ1をポッド2からウエハ出し入れ口を通じてピックアップしノッチ合わせ装置に搬送する。
ノッチ合わせ装置がウエハ1のノッチを合わせると、ウエハ移載装置27aはウエハ1をノッチ合わせ装置からピックアップし、移載室26の後方にある待機部28へ搬入し、ボート42に装填(チャージング)する。
ボート42にウエハ1を受け渡したウエハ移載装置27aはポッド2に戻り、次のウエハ1をピックアップし、再び、ボート42に搬送し、ボート42に装填する。
【0030】
この一方(上段または下段)のポッドオープナ21からボート42へのウエハ1の装填作業中に、ポッド搬送装置20は回転式ポッド棚17から別のポッド2を他方(下段または上段)のポッドオープナ21に搬送し移載する。ポッドオープナ21はポッド2を開放する。すなわち、ウエハ移載装置27aによるウエハ装填作業と、ポッド搬送装置20およびポッドオープナ21によるポッド開放作業とが、同時進行される。
【0031】
ボートエレベータ30は所定枚数のウエハ1が移載されたボート42を上昇させ、図4に示されているように、処理炉35の処理室37に搬入(ボートローディング)する。
ボート42が上限に達すると、シールキャップ32が炉口39をシール状態に閉塞するので、処理室37は気密に閉じられた状態になる。
【0032】
気密に閉じられると、排気管40は処理室37を排気する。
マイクロ波源55はウエハ1を所定温度(例えば、200℃程度)に昇温させる。すなわち、マイクロ波源55はマイクロ波を導波管54を経由してシールド52内に供給する。シールド52内に供給されたマイクロ波はプロセスチューブ36およびウエハ1に入射して効率的に吸収されるために、プロセスチューブ36およびウエハ1をきわめて効果的に昇温させる。
ウエハ1が所定の温度に昇温すると、ロータリーアクチュエータ48がボート42を回転させながら、ガス供給管41が所定処理ガス(図示せず)を所定時間だけ供給する。
【0033】
予め設定された処理時間が経過すると、ボート42の回転、処理ガスの供給、マイクロ波の供給および排気管40の排気が停止する。
その後に、ボートエレベータ30はシールキャップ32を下降させることにより、炉口39を開口するとともに、ボート42を炉口39から処理室37の外部に搬出(ボートアンローディング)する。
【0034】
ウエハ移載機構27はボート42のウエハ1をポッド2内に、前述した作動とは逆の手順により収める。
以上の作動が繰り返されることにより、複数枚のウエハ1がバッチ処理される。
【0035】
ところで、前述した熱処理工程において、マイクロ波の周波数は3〜10GHzの範囲内で最も加熱効率が高い値に設定される。このマイクロ波の最適周波数は、実験やコンピュータシミュレーションおよび過去の実績データの活用のような経験的手法によって求めることができる。
しかし、このような経験的手法によってマイクロ波の最適周波数を求めるには、時間や手間がかかるという問題点がある。
また、処理炉35のセットアップの仕方やボート42の回転およびボート42の傾き等によってシールド52内の条件が大きく変動することにより、最適周波数の値が変動するために、図5(a)に示されているように、バッチ相互間で処理時間が変動してしまうという問題点がある。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、図5(b)に示されたシーケンスのように、各バッチの加熱ステップ前にチューニングステップを実施することにより、各バッチ毎に最適周波数のマイクロ波によって加熱ステップを実施するものとした。
チューニングステップは、各バッチ毎にマイクロ波の最適周波数を求めてマイクロ波源55からの出力マイクロ波の周波数を最適値に調整するステップである。
【0037】
次に、チューニングステップの一例を、図6によって説明する。
コントローラ56はマイクロ波源55を制御することにより、図6に示されているように、互いに異なる周波数A、周波数B、周波数Cのマイクロ波をマイクロ波源55から時間をずらして順にそれぞれ出力させる。
マイクロ波源55のマイクロ波の出力に伴って、複数のアンテナ58は周波数A、周波数Bおよび周波数Cのマイクロ波毎に電界強度をそれぞれ検出し、電界強度測定器57にそれぞれ送信する。電界強度測定器57は測定値として電界強度(V/m)をコントローラ56に送信する。例えば、電界強度測定器57は表1に示された測定値をコントローラ56に送信する。
【表1】


コントローラ56は電界強度測定器57からの測定値に基づいて最適周波数を求める。表1に示された例では、各アンテナの電界強度のばらつきは周波数Bのマイクロ波についての場合が最小であるので、コントローラ56は周波数Bのマイクロ波を最適周波数のマイクロ波として採用する。
第一バッチの加熱ステップに際して、コントローラ56は周波数Bのマイクロ波をマイクロ波源55に出力させる。
以上のチューニングステップが第二バッチ、第三バッチと各バッチ毎に実施される。
【0038】
前記実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0039】
1) マイクロ波によってウエハを加熱することにより、ウエハを直接的に加熱することができるので、ウエハをエネルギ効率よく加熱することができ、また、低温領域での温度を適正かつ精密に制御することができる。
【0040】
2) 複数枚のウエハをマイクロ波によって一律に加熱することにより、ウエハのボート全長および各ウエハ面内の温度を均一に分布させることができるため、ウエハの熱処理状況をウエハ面内および各ウエハ相互間のいずれにおいても均一化することができる。
【0041】
3) 複数枚のウエハを一括してバッチ処理することにより、ウエハを一枚ずつ枚葉処理する場合に比べて、スループットを大幅に向上させることができる。
【0042】
4) 各バッチ毎に最適周波数の値を求めて、各バッチ毎にマイクロ波源の出力マイクロ波の周波数を最適値に調整することにより、シールド内の条件の変動にかかわらず、バッチ相互間の処理時間の変動を防止することができる。その結果、エネルギ効率を高めることができる。
すなわち、バッチ毎にチューニングステップを実施しない図5(a)の場合に比べて、各バッチ毎にチューニングステップを実施する図5(b)の場合は、加熱ステップの時間は各バッチ毎で略一定している。
【0043】
5) 各バッチ毎に最適周波数の値を求めて、各バッチ毎にマイクロ波源の出力マイクロ波の周波数を最適値に調整することにより、経験的手法によってマイクロ波の最適周波数を求める場合に比べて、時間や手間を低減することができるため、全体としての生産性を高めることができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0045】
例えば、プロセスチューブは省略してもよい。
【0046】
本発明に係るバッチ式熱処理装置は、拡散装置や減圧CVD装置およびアニール装置等の基板処理装置全般に使用することができる。特に、本発明に係る基板処理装置は、減圧下で低温領域の熱処理を施す場合に優れた効果を奏する。
【0047】
また、被処理基板はウエハに限らず、ホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態であるバッチ式熱処理装置を示す一部省略斜視図である。
【図2】側面断面図である。
【図3】処理炉を通る正面断面図である。
【図4】処理ステップにおける処理炉部分を示す正面断面図である。
【図5】シーケンスチャートであり、(a)はチューニングステップを実施しない場合を示し、(b)はチューニングステップを実施する場合を示している。
【図6】チューニングステップで出力されるマイクロ波を示す波形図である。
【符号の説明】
【0049】
1…ウエハ(基板)、2…ポッド、
10…バッチ式熱処理装置(基板処理装置)、11…筐体、11a…正面壁、12…正面メンテナンス口、13…正面メンテナンス扉、14…ポッド搬入搬出口、15…フロントシャッタ、16…ロードポート、
17…回転式ポッド棚、18…支柱、19…棚板、
20…ポッド搬送装置、20a…ポッドエレベータ、20b…ポッド搬送機構、
21…ポッドオープナ、22…載置台、23…キャップ着脱機構、
24…サブ筐体、24a…正面壁、25…ウエハ搬入搬出口、26…移載室、
27…ウエハ移載機構、27a…ウエハ移載装置、27b…ウエハ移載装置エレベータ、27c…ツィーザ、
28…待機部、29…炉口シャッタ、
30…ボートエレベータ、31…アーム、32…シールキャップ、
33…クリーンユニット、34…クリーンエア、
35…処理炉、36…プロセスチューブ、37…処理室、38…炉口フランジ、39…炉口、40…排気管、41…ガス供給管、
42…ボート(搬送治具)、43、44…端板、45…保持柱、46…保持溝、47…断熱板、48…ロータリーアクチュエータ、49…回転軸、
51…ベース、52…シールド、53…電磁波導入ポート、54…導波管、55…マイクロ波源(マイクロ波加熱源)、56…コントローラ(調整部)、57…電界強度測定器(電界強度検出部)、58…アンテナ(電界強度検出部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を複数処理するバッチ式基板処理装置において、
前記基板を加熱するマイクロ波加熱源と、
前記マイクロ波加熱源の周波数を調整する調整部と、
電界強度を検出する電界強度検出部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記基板加熱前に、前記調整部が調整した複数の周波数のマイクロ波を前記マイクロ波加熱源が出力し、前記電界強度検出部が複数のマイクロ波毎に電界強度を検出し、前記電界強度検出部が検出した電界強度に基づき最適周波数を判断し、前記基板加熱時に、最適周波数のマイクロ波を前記マイクロ波加熱源から力することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記電界強度検出部が複数設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−188087(P2009−188087A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24909(P2008−24909)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】