説明

基板収納装置

【課題】使用環境に応じて,収納された基板に異物が付着することを効果的に防止する。
【解決手段】基板収納装置100内に外気を取り込む給気部110と,給気部に対向して配置された排気部120と,給気部と排気部との間に設けられ,これらの間を連通する連通孔142を有する基板載置板140と,給気部に設けられた給気フィルタ112と,給気部又は排気部に設けられたファン122とを備え,基板収納装置100内の状態を検出する状態センサと,パーティクル帯電装置と,温調装置とのいずれか又は2つ以上の組合せを装着孔150に着脱自在に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,マスクブランクスなどの基板を収納して搬送する基板収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハやFPD基板上に微細な回路パターンを形成するために,フォトマスクを用いたリソグラフィー技術が知られている。このリソグラフィー技術では,レジスト膜を形成した半導体ウエハなどの基板に,露光用光源の電磁波を回路パターンが形成されたフォトマスクを通して露光することによって,半導体ウエハ上に微細な回路パターンが縮小転写される。
【0003】
このようなフォトマスクは,透光性基板上に遮光性膜を形成したマスクブランクスと呼ばれる基板表面に,成膜,化学機械研磨(CMP),洗浄などの複数のプロセスを繰り返し行うことによって回路パターンを形成することによって製造される。このため,マスクブランクスの表面にパーティクル等の異物があると,形成されるパターンの欠陥の原因となるので,マスクブランクスの表面には異物等が付着しないように清浄に保管される必要がある。
【0004】
このようなマスクブランクスを清浄に収納保管し運搬するための収納容器としては,例えば下記特許文献1,2に記載のものが知られている。特許文献1に記載の収納容器は,その内部に外気からの異物の侵入を防止するため,容器のコーナーにフィルタを設けた通気孔を形成したものである。特許文献2に記載の収納容器は,フォトマスクなどの表面の経時変化を防止するため,容器内に不活性ガスを導入し,拡散板で拡散させて排気するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−43796号公報
【特許文献2】特開2001−53136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,従来の収納容器のように単にフィルタを設けた通気孔を形成したり,容器内に不活性ガスを導入して拡散させたりするだけでは,収納容器を使用する環境下(例えば清浄度,室内温度,乾燥度など)によっては異物対策が不十分であるという問題がある。
【0007】
例えば特許文献1に記載の収納容器であっても,その使用環境によっては通気孔からフィルタを通り抜けて混入する微小な異物がマスクブランクスに付着してしまう場合もある。また,特許文献2に記載の収納容器であっても,収納容器からマスクブランクスを取り出すときには収納容器を開けなければならないため,そのときの使用環境によっては外部から異物が混入してマスクブランクスに付着してしまう場合もある。
【0008】
また,近年では回路パターンも微細化が益々進んでいるため,マスクブランクスの搬送や保管に要求される清浄度も従来以上に厳しくなっている。このため,常に収納容器内のマスクブランクスに異物が付着しないようにするためには,収納容器の使用環境の相違も無視できなくなってきている。
【0009】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,使用環境に応じて,収納された基板に異物が付着することを効果的に防止することができる基板収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,基板を収納する基板収納装置であって,前記基板収納装置内に外気を取り込む給気部と,前記給気部に対向して配置された排気部と,前記給気部と前記排気部との間に設けられ,これらの間を連通する連通孔を有する基板載置板と,前記給気部に設けられた給気フィルタと,前記給気部又は前記排気部に設けられたファンとを備え,前記基板収納装置内の状態を検出する状態センサと,パーティクル帯電装置と,温調装置とのいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設けたことを特徴とする基板収納装置が提供される。
【0011】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板を収納する基板収納装置であって,前記基板収納装置内にパージガスを導入する導入ポートを設けた給気部と,前記給気部に対向して配置された排気部と,前記給気部と前記排気部との間に設けられ,これらの間を連通する連通孔を有する基板載置板と,前記給気部又は前記排気部に設けられたファンとを備え,前記基板収納装置内の状態を検出する状態センサと,パーティクル帯電装置と,温調装置とのいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設けたことを特徴とする基板収納装置が提供される。
【0012】
このような構成の本発明においては,ファンを駆動することによって給気部から外気がフィルタを介して導入され,又は導入ポートからパージガスが導入され,対向する排気部から排気される。これにより,基板収納装置内で給気部と排気部の間に配置される基板には,その給気部側から排気部側に流れる空気の流れが形成される。このため,例えば使用環境によってはフィルタで捕捉しきれないで給気部から微小な異物が入り込んだとしても,その異物を効率よく排気部から排出させることができる。これによって,基板収納装置内の基板に異物が付着することを防止できる。
【0013】
しかも,本発明によれば基板収納装置の使用環境に合わせて状態センサ,パーティクル帯電装置,温調装置のいずれか又はこれらを組み合わせて装着することができるので,使用環境に応じて無駄なく異物付着防止効果を高めることができる。
【0014】
また,上記状態センサは,例えば温度センサ,帯電センサ,パーティクルセンサ,振動センサ,ガスセンサのいずれか又は2つ以上の組み合せである。また,上記状態センサの出力を記憶する記憶部と,前記記憶部に記憶された前記状態センサの出力が所定の閾値を超えたか否かを判定する制御部とを設けるようにしてもよい。前記状態センサの出力が所定の閾値を超えた場合は,異常が発生しているので,収納された基板に異物が付着していると判断することができる。
【0015】
また,上記基板収納装置を覆うように収納する外側容器を備え,前記基板収納装置と前記外側容器との間に,前記排気部からの排気を前記給気部に戻す循環路を形成するようにしてもよい。例えば前記基板収納装置と前記外側容器との間に防振材を設けて,前記防振材の間を前記循環路にすることができる。これによれば,排気部からの排気は循環路を通って給気部に戻るので,例えばクリーンルーム外の環境下でも外側容器内の清浄度を保ちながら搬送できる。
【0016】
また,前記給気部と前記排気部との間には,側板を着脱自在に設けるようにしてもよい。これによれば,例えば側板を取り外すことにより搬送アームなどによって側面から基板を出し入れすることができるようになる。
【0017】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板を収納する基板収納装置であって,前記基板収納装置内に外気を取り込む給気部と,前記給気部に対向して配置された排気部と,前記給気部と前記排気部との間に設けられ,これらの間を連通する連通孔を有する基板載置板と,前記給気部又は前記排気部に設けられたファンと,を備え,前記基板収納装置内の状態を検出する状態センサと,パーティクル帯電装置と,前記基板の表面を温める温調装置とのいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設け,前記排気部と前記給気部との間は開口していることを特徴とする基板収納装置が提供される。
【0018】
このような構成の本発明においては,ファンを駆動することによって給気部から外気がフィルタを介して導入され,対向する排気部から排気される。これにより,基板収納装置内に収納された基板の周囲には給気部側から排気部側に流れる空気の流れが形成される。これにより,たとえ異物が入り込んだとしても,その異物を効率よく排出させることができる。また,基板収納装置内の基板に異物が付着することを防止しながら,側面の開口から搬送アームなどで容易に基板を出し入れすることができる。
【0019】
しかも,本発明によれば基板収納装置の使用環境に合わせて状態センサ,パーティクル帯電装置,温調装置のいずれか又はこれらを組み合わせて装着することができるので,使用環境に応じて無駄なく異物付着防止効果を高めることができる。
【0020】
また,上記基板収納装置を覆うように収納する外側容器を備え,前記外側容器には,前記排気部と前記給気部との間は開口を閉塞する閉塞板を設け,前記基板収納装置と前記外側容器との間に,前記排気部からの排気を前記給気部に戻す循環路を形成するようにしてもよい。この場合には例えば上記基板収納装置と前記外側容器との間に防振材を設けるとともに,前記防振材の間を前記循環路にする。これによれば,基板収納装置を外側容器に収納すると側面の開口は閉塞板で閉塞されるので,基板収納装置内の排気はすべて排気部から排気され,循環路を通って給気部に戻すことができる。これにより,例えばクリーンルーム外の環境下でも外側容器内の清浄度を保ちながら搬送できる。
【0021】
また,上記基板収納装置の外側又は前記外側容器の外側に防振材を設けるようにしてもよい。これによれば,例えばクリーンルーム外の環境下で搬送する場合の衝撃などを吸収できるので,たとえ基板収納装置内に異物が付着したとしてもそれが剥がれ落ちて基板に付着することを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば,基板収納装置内の基板に異物が付着することを効果的に防止できるだけでなく,使用環境に合わせて状態センサ,パーティクル帯電装置,温調装置のいずれか又はこれらを組み合わせて装着できるので,使用環境に応じて無駄なく異物付着防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態にかかる基板収納装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す基板収納装置の縦断面図である。
【図3】同実施形態にかかる基板処理装置に状態センサを装着した場合を説明するための縦断面図である。
【図4】同実施形態にかかる基板処理装置に状態センサとパーティクル帯電装置を組み合わせて装着した場合を説明するための縦断面図である。
【図5】同実施形態にかかる基板処理装置に状態センサと温調装置を組み合わせて装着した場合を説明するための縦断面図である。
【図6】図1に示す基板処理装置に装着する防振材の具体例を説明するための外観斜視図である。
【図7】図6に示す防振材の変形例を説明するための外観斜視図である。
【図8】図7に示す防振材を装着した基板処理装置を外側容器に収納した場合を説明するための縦断面図である。
【図9】同実施形態にかかる基板処理装置の変形例を説明するための断面図である。
【図10】同実施形態にかかる基板処理装置の他の変形例を説明するための外観斜視図である。
【図11】図10に示す基板収納装置に装着する防振材の具体例を説明するための外観斜視図である。
【図12】図11に示す防振材を装着した基板処理装置を外側容器に収納した場合を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
(基板収納装置の構成)
先ず,本実施形態にかかる基板収納装置を図面を参照しながら説明する。ここでは,基板としてのマスクブランクスを1枚ずつ収納して搬送する基板収納装置を例に挙げる。図1は本実施形態にかかる基板収納装置の構成例を示す斜視図であり,図2は基板収納装置の縦断面図である。図1に示すように基板収納装置100の外観は箱状であり,その内部に1枚のマスクブランクスMを水平に収納できるように構成されている。
【0026】
基板収納装置100は,その内部に外気を取り込む給気部110と,これに対向して設けられ,内部の雰囲気を排気する排気部120とを備える。図1では,基板収納装置100の上部を給気部110で構成し,下部を排気部120で構成した例を挙げている。なお,これら給気部110と排気部120の構成はこれに限定されるものではない。例えば基板収納装置100の上部と下部の一部にそれぞれ,給気部110と排気部120を設けるようにしてもよい。給気部110と排気部120との間には,基板収納装置100の周囲を囲むように側壁130が気密に設けられている。
【0027】
給気部110は図2にも示すように,基板収納装置100内に取り込まれる外気をフィルタリングする給気フィルタ112が設けられている。給気フィルタ112によって外気に含まれる異物を除去して取り込むことで,基板収納装置100内のマスクブランクスMに異物が付着することを防止できる。
【0028】
このような給気フィルタ112は,例えば外気に含まれる塵やゴミなどの粒子(パーティクル)を除去する粒子除去フィルタで構成される。粒子除去フィルタとしてはHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタやULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタが挙げられる。
【0029】
排気部120は,基板収納装置100内の雰囲気を排気するファン122と,ファン122を備える。図2では,1つのファン122を排気部120の中央に設けた場合を例に挙げたものである。なお,ファン122の数は図示した場合に限られるものではなく,2つ以上設けるようにしてもよい。また,ファン122は給気部110に設けるようにしてもよい。この場合,ファン122は給気フィルタ112の上側に設けるようにしてもよく,また下側に設けるようにしてもよい。
【0030】
基板収納装置100の内部には,給気部110と排気部120との間に,基板載置板140が設けられている。マスクブランクスMはこの基板載置板140の上部に載置されるようになっている。
【0031】
基板載置板140は基板収納装置100の内部空間を給気部110側と排気部120側に区画するように設けられている。基板載置板140にはこれら給気部110側の空間と排気部120側の空間を連通する連通孔142が設けられている。
【0032】
このような基板収納装置100においては,排気部120のファン122が駆動すると,図2に示すように,給気部110から外気が取り込まれ,基板載置板140の連通孔142を通って排気部120から排気される。このため,基板収納装置100内には上部の給気部110から下部の排気部120に向かう空気の流れが形成される。これにより,基板載置板140上のマスクブランクスMには,給気部110側から吹き付けられる空気の流れが生じる。
【0033】
この場合,外気は給気フィルタ112を介して取り込まれるので,ほとんどの異物は給気フィルタ112で除去されて基板収納装置100に入り込むことはない。これに対して,基板収納装置100が使用される環境によっては,給気フィルタ112でも除去できない程度の微小な異物が外気に含まれることも考えられる。
【0034】
この点,基板収納装置100内には常に給気部110から排気部120に向かう空気の流れが形成されるので,たとえ給気フィルタ112で除去されずに入り込んだ微小な異物も,その空気の流れに沿って排気部120から排気される。このような異物は微小なほどその自重も微小なので,基板載置板140上のマスクブランクスMに付着することなく,排気部120から排気される。こうして,外気に含まれる異物の大きさに拘わらず,基板収納装置100内のマスクブランクスMに付着することを効果的に防止できる。
【0035】
ところで,基板収納装置100が使用される環境によっては,上記のように基板収納装置100内に空気の流れを形成しただけでは不十分な場合も考えられる。例えば異物が微小であっても帯電していたり,大量に入り込んだりすると,マスクブランクスMに付着する可能性も高くなる。
【0036】
そこで,本実施形態にかかる基板収納装置100は,内部状態を検出する状態センサ,パーティクル帯電装置,温調装置のいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設けることで,使用環境に合わせて最適な機能を備えることができるようにしている。
【0037】
例えば基板収納装置100に状態センサを設けて内部状態を検出することで,異物が付着し易い使用環境であるか否かを判断することができる。また,基板収納装置100にパーティクル帯電装置を設けて異物やマスクブランクスMを除電したり帯電極性を制御したりすることで,マスクブランクスMに異物が付着し難くすることができる。
【0038】
また,温度差がある環境では微小な異物は温度が低い方に集まる性質があるので,基板収納装置100に温調装置を設けてマスクブランクスMやその周囲の温度を調整することで,マスクブランクスMに異物が付着し難くすることができる。さらに,これらを組み合わせることで,より一層マスクブランクスMに異物が付着し難くすることができる。このように,使用環境に合わせてこれらを装着できるので,基板収納装置100の使用環境に応じて無駄なくマスクブランクスMへの異物の付着を効果的に防止することができる。
【0039】
(基板処理装置の具体例)
次に,上述した状態センサ,パーティクル帯電装置,温調装置を装着した基板収納装置100の具体例について説明する。例えば図1に示すように本実施形態にかかる基板収納装置100はその給気部110に装着孔150を設け,状態センサ,パーティクル帯電装置,温調装置に設けた装着部152をこの装着孔150に取り付けることによって着脱自在に装着できる。
【0040】
このようなセンサや装置を装着した場合について図面を参照しながらより詳細に説明する。図3は,状態センサ154のみを装着した場合の構成例を示す断面図である。図4は状態センサ154とパーティクル帯電装置156を組み合わせて装着した場合の構成例を示す断面図である。図5は状態センサ154と温調装置158を組み合わせて装着した場合の構成例を示す断面図である。
【0041】
先ず,状態センサ154のみを装着した場合について図3を参照しながら説明する。状態センサ154は,これを配設した装着部152を装着孔150に取り付けることによって,基板収納装置100に装着される。状態センサ154は,基板収納装置100の内部状態(例えば温度,帯電度,異物混入度など)を検出する。このような状態センサとしては,例えば温度センサ,帯電センサ,パーティクルセンサ,振動センサ,ガスセンサが挙げられる。これらを単体で設けてもよく,またこれらを2つ以上組み合せて設けてもよい。
【0042】
温度センサでは基板収納装置100の内部,マスクブランクスMなどの温度を検出する。帯電センサでは基板収納装置100内の異物,マスクブランクスMなどの帯電極性や帯電度を検出する。パーティクルセンサでは基板収納装置100内の異物の量を検出する。振動センサでは大きな振動や細かい振動を検出する。振動センサとして,大きな振動を検出する場合は加速度センサを用い,細かい振動を検出する場合は超音波センサを用いるようにしてもよい。
【0043】
状態センサ154は,基板収納装置100の全体を制御する制御部160に接続されている。制御部160は記憶部162と操作部164などを備える。記憶部162には状態センサ154から検出されたデータなどが記憶される。操作部164には電源スイッチなどが設けられている。
【0044】
制御部160は,状態センサ154からの出力に基づいて,基板収納装置100内のマスクブランクスMに異物が付着したか否かの判定,基板収納装置100の使用環境の判定を行う。例えば基板収納装置100の温度や帯電度などの内部状態が変化すると,マスクブランクスMには異物が付着し易くなる。このため,これらの内部状態を監視し,その変化を検出することでマスクブランクスMに異物が付着したか否かを判定することができる。
【0045】
具体的には,制御部160は,状態センサ154からの出力を取り込むと記憶部162に記憶し,基板収納装置100の内部状態を監視する。そして,状態センサ154からの出力が所定の閾値を超えた場合には,そのマスクブランクスMには異物が付着していると判断する。
【0046】
また,制御部160は状態センサ154からの出力に基づいて基板収納装置100の使用環境(例えば異物が帯電している使用環境,異物の量が多い使用環境など)を判定し,その判定結果に応じて例えばパーティクル帯電装置156,温調装置158を装着するか否か,装着する場合はいずれを装着するか,どの組合せで装着するかなどを判断する。例えば異物が帯電している使用環境の場合は,パーティクル帯電装置156の装着が必要と判断し,異物の量が多い使用環境では温調装置158を装着が必要と判断する。なお,この判断は,必ずしも自動的に行われる必要はなく,基板収納装置100の操作者が使用環境の判定結果を見て判断してもよい。
【0047】
次に,状態センサ154とパーティクル帯電装置156を組み合わせて装着した場合について図4を参照しながら説明する。パーティクル帯電装置156は,マスクブランクスMの上方に給気フィルタ112から離間して配置されるように装着部152に固定される。装着部152には状態センサ154が設けられる。これによれば,装着部152を装着孔150に取り付けることによって,状態センサ154とパーティクル帯電装置156の両方を基板収納装置100に装着できる。
【0048】
パーティクル帯電装置156は,例えば軟X線源,UV光源,イオナイザーなどで構成することができる。このようなパーティクル帯電装置156によって基板収納装置100の内部を除電することによって,基板収納装置100内に入り込んだ異物の帯電を除去できるので,そのような異物がマスクブランクスMに付着することを効果的に防止できる。
【0049】
また,イオナイザーでイオンを発生させることによって,マスクブランクスMと同極性に異物を帯電させるようにしてもよい。これにより,そのような異物がマスクブランクスMに付着することを効果的に防止できる。なお,この場合は異物と同極性の電圧をマスクブランクスMの下部から印加するようにしてもよい。なお,状態センサ154を帯電センサで構成して制御部160にて帯電度を検出し,それに応じて制御部160はパーティクル帯電装置156の出力を制御するようにしてもよい。
【0050】
次に,状態センサ154と温調装置158を組み合わせて装着した場合について図5を参照しながら説明する。温調装置158は,マスクブランクスMの上方に給気フィルタ112から離間して配置されるように装着部152に固定される。装着部152には状態センサ154が設けられる。これによれば,装着部152を装着孔150に取り付けることによって,状態センサ154と温調装置158の両方を基板収納装置100に装着できる。
【0051】
温調装置158は,ヒータ,加熱ランプなどで構成することができる。温調装置158によってマスクブランクスMの表面温度を周辺温度よりも高くなるように温度差を与えることによりマスクブランクスMの表面近傍の異物には表面から離間する方向に熱泳動力が作用する。しかも,異物に作用する熱泳動力はマスクブランクスMの表面に近づくほど大きくなるので,マスクブランクスMの表面に異物が付着し難くすることができる。なお,上記温度差は,少なくとも5℃以上にすることが好ましく,15℃以上にするのがより好ましい。但し,マスクブランクスMが溶けない程度(例えば500℃)まで温度差を設けることができる。
【0052】
また,温調装置158を冷却装置で構成して,マスクブランクスMの表面よりもマスクブランクスMの周囲や裏側の温度を低くすることで,相対的にマスクブランクスMの表面の方が高くなるように上記温度差を設けるようにしてもよい。なお,状態センサ154を温度センサで構成して制御部160にて温度を検出し,それに応じて制御部160は温調装置158の温度を制御するようにしてもよい。
【0053】
このように,本実施形態かかる基板収納装置100は,状態センサ154,パーティクル帯電装置156,温調装置158のいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設けることができるようにしたことで,使用環境に合わせて無駄なく的確に異物付着防止効果を高めることができる。
【0054】
基板収納装置100に収納可能なマスクブランクスMは,その基体をなすガラス基板の表面に成膜,化学機械研磨(CMP:chemical Mechanical Polishing),洗浄などの複数のプロセスを繰り返し行うことによって回路パターンを形成する。これにより,回路パターンが形成されたフォトマスクが製造される。
【0055】
これら成膜,化学機械研磨などの各プロセスは別々の装置で実行されるので,マスクブランクスMを各装置間で搬送する必要がある。このとき,マスクブランクスMの搬送中や保管中にその表面に異物が付着すると,その後のプロセスにおいて欠陥(異物そのものや異物によるキズなど)が発生する。例えば異物が付着したまま成膜などのプロセスが実行されると,その欠陥によって各成膜層が歪んで位相欠陥などが発生し,異物による欠陥やキズが残ったままフォトマスクが出来上がってしまう。
【0056】
このため,マスクブランクスMを搬送したり保管したりする場合は,本実施形態にかかる基板収納装置100内にマスクブランクスMを収納する。その際,基板収納装置100が使用される例えばクリーンルームの環境に合わせて状態センサ154,パーティクル帯電装置156,温調装置158のいずれか又は組合せを選択して装着する。これにより,そのクリーンルームの環境に合わせて無駄のない装備で的確に異物付着防止効果を高めることができる。
【0057】
また,近年では極端紫外線(EUV:Extreme Ultra−Violet)を用いた露光技術が次世代の露光技術として注目されている。EUVは,波長13ナノメートルの極紫外線なので,これによれば50ナノメートル以下の極微小な回路幅のパターンも形成できるようになる。このため,これに用いられるEUV用のマスクブランクスMにおいては,例えば数十〜十数ナノメートルオーダーの極微小な異物が付着してもその後のプロセスに影響を与える虞がある。
【0058】
このような極微小な異物は特に帯電や温度によって効果的にマスクブランクスMへの付着防止効果を高めることができるので,本実施形態にかかる基板収納装置100を用いて搬送,保管することの効果は極めて大きい。しかも,基板収納装置100によれば,その帯電や温度についても使用環境に応じて制御できるので,より一層異物付着防止効果を高めることができる。
【0059】
なお,基板収納装置100は防振材を取り付けることにより,振動を防止できるようにしてもよい。これによれば,基板収納装置100の内部に異物が付着している場合に,搬送中の振動によってその異物が剥がれ落ちてマスクブランクスMの表面に付着することを防止できる。具体的には例えば図6に示すように,給気部110と排気部120の両方の外周に防振材170を設ける。なお,防振材170の形状や取付位置などはこれに限られるものではない。例えば図7に示すように基板収納装置100の4つの角部に給気部110から排気部120まで延出した形状の防振材172を設けるようにしてもよい。
【0060】
また,基板収納装置100ごと収納できる外側容器を設けるようにしてもよい。これによれば,例えば基板収納装置100をクリーンルームから出してトラックなどで輸送する際に,マスクブランクスMの異物付着防止効果を一層高めることができる。具体的には例えば図8に示すように基板収納装置100を覆うように収納する外側容器180を設ける。
【0061】
この場合,防振材を取り付けたまま基板収納装置100を外側容器180に収納することによって,外側容器180ごと搬送する際の防振効果をより高めることができる。なお,防振材は必ずしも外側容器180の内側に設ける必要はなく,外側容器180の外側に設けてもよい。また,外側容器180の内側と外側の両方に防振材を設けるようにしてもよい。
【0062】
さらに状態センサ154として防振センサを設けて振動を検出すれば,大きい振動が発生したことも検出できる。外側容器180を搬送する際に振動が大きいほど基板収納装置100の内部に付着した異物が剥がれ落ち易くなるので,その異物がマスクブランクスMに付着し易くなる。このため,例えば防振センサを監視して,所定の閾値以上の大きな振動が発生したときには,マスクブランクスMの異物が付着したと判定してもよい。
【0063】
また,基板収納装置100と外側容器180との間に,排気部120からの排気を給気部110に戻す循環路182を形成してもよい。図8は,基板収納装置100と外側容器180との間に図7に示すような防振材172を設けることで,防振材172の間を循環路182にした場合の具体例である。これによれば,基板収納装置100の内部には常に空気の流れが生じているため,例えば外側容器180の搬送中のマスクブランクスMの異物付着防止効果を高めることができる。しかも,外側容器180内に異物が入り込んだとしても,循環路182を循環することで給気フィルタ112により異物は除去されるので,外側容器180内を常に清浄に保つことができる。
【0064】
上記実施形態では,給気部110には給気フィルタ112を設け,給気フィルタ112を介して外気を取り込むように構成した場合を例に挙げて説明したが,給気部110に給気フィルタ112を設ける代わりにパージガスを導入する導入ポートを設けるようにしてもよい。これによれば,基板収納装置100内に外気を取り込む代わりに,導入ポートからドライエアや窒素などのパージガスを導入することができる。具体的には図9に示すように,給気部110に導入ポート114を設け,導入ポート114にはパージガスのガス供給源116を接続する。ガス供給源116からのパージガスを導入ポート114に導入することにより,基板収納装置100内に外気よりも清浄なガスの流れを形成することができる。
【0065】
また,上記実施形態では,給気部110と排気部120との間に側壁130を気密に設けた場合を例に挙げて説明したが,これに限られるものではない。例えば側壁130は着脱自在に設けてもよく,開閉自在に設けてもよい。側壁130を開閉自在に設けることにより,図示しない搬送アームなどによってマスクブランクスMを側方から出し入れすることができる。さらに,側壁130は基板収納装置100の4つの側面の一部に設けるようにしてもよく,必ずしも設けなくてもよい。
【0066】
例えば図10に示すように基板収納装置100の4つのすべての側面に側壁130を設けないようにしてもよい。この場合は,給気部110と排気部120の4つの角部を支持部材132で支持するようにして,側面を開口させてもよい。これによれば,図示しない搬送アームなどによってマスクブランクスMを開口している側面から出し入れし易くなる。
【0067】
なお,この場合にファン122を駆動すると,外気は給気フィルタ112からだけでなく,側面の開口からも外気が入り込むようになるが,この場合も排気部120に向かう流れが常に形成されているので,マスクブランクスMに異物が付着することを防止できる。さらに,図10に示す基板収納装置100の場合にも,図1に示す場合と同様の装着孔150を設け,状態センサ154,パーティクル帯電装置156,温調装置158のいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設けることができる。これにより,使用環境に合わせて最適な機能を備えることができるので,たとえ側面から外気とともに異物が入り込んでも,マスクブランクスMに異物が付着することを効果的に防止できる。
【0068】
図10に示す基板収納装置100の場合も,その外側に防振材を設けるようにしてもよい。図6に示す防振材170,図7に示す防振材172を設けるようにしてもよく,また図10に示すように給気部110と排気部120のそれぞれの4つの角部に防振材174を設けるようにしてもよい。
【0069】
また,図10に示す基板収納装置100の場合も,基板収納装置100ごと収納できる外側容器を設けるようにしてもよい。これによれば,例えば基板収納装置100をクリーンルームから出してトラックなどで輸送する際に,マスクブランクスMの異物付着防止効果を一層高めることができる。具体的には例えば図12に示すように基板収納装置100を覆うように収納する外側容器180を設ける。
【0070】
この場合,図12に示すように防振材174を取り付けたまま基板収納装置100を外側容器180に収納することによって,外側容器180ごと搬送する際の防振効果をより高めることができる。また,この場合の外側容器180には基板収納装置100を収納したときに,側面の開口をすべて塞ぐ閉塞板184を設け,基板収納装置100と外側容器180との間に,排気部120からの排気を給気部110に戻す循環路182を形成してもよい。図12は基板収納装置100と外側容器180との間に図11に示すような防振材174を設けることで,閉塞板184の外側であって防振材174の間を循環路182にした場合の具体例である。
【0071】
このように,基板収納装置100の側面の開口を閉塞板184で塞ぐことにより,その開口から入り込む空気の流れを防止することができる。これにより,基板収納装置100の内部には常に排気部120から給気部110に戻る空気の流れが生じているため,外側容器180内に異物が入り込んだとしても,循環路182を循環することで給気フィルタ112により異物は除去されるので,外側容器180内を常に清浄に保つことができる。なお,状態センサ154,パーティクル帯電装置156,温調装置158の着脱自在な構成は上記実施形態に限られるものではない。
【0072】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
例えば上記実施形態では,本発明をマスクブランクスを収納する基板収納装置に適用した場合を挙げて説明したが,これに限られるものではない。例えば半導体ウエハ,FPD用基板,フォトマスクの基板収納装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は,マスクブランクスなどの基板を収納して搬送する基板収納装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 基板収納装置
110 給気部
112 給気フィルタ
114 導入ポート
116 ガス供給源
120 排気部
122 ファン
130 側壁
132 支持部材
140 基板載置板
142 連通孔
150 装着孔
152 装着部
154 状態センサ
156 パーティクル帯電装置
158 温調装置
160 制御部
162 記憶部
164 操作部
170,172,174 防振材
180 外側容器
182 循環路
184 閉塞板
M マスクブランクス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する基板収納装置であって,
前記基板収納装置内に外気を取り込む給気部と,
前記給気部に対向して配置された排気部と,
前記給気部と前記排気部との間に設けられ,これらの間を連通する連通孔を有する基板載置板と,
前記給気部に設けられた給気フィルタと,
前記給気部又は前記排気部に設けられたファンと,を備え,
前記基板収納装置内の状態を検出する状態センサと,パーティクル帯電装置と,温調装置とのいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設けたことを特徴とする基板収納装置。
【請求項2】
前記状態センサは,温度センサ,帯電センサ,パーティクルセンサ,振動センサ,ガスセンサのいずれか又は2つ以上の組み合せであることを特徴とする請求項1に記載の基板収納装置。
【請求項3】
前記状態センサの出力を記憶する記憶部と,
前記記憶部に記憶された前記状態センサの出力が所定の閾値を超えたか否かを判定する制御部と,
を設けたことを特徴とする請求項2に記載の基板収納装置。
【請求項4】
前記基板収納装置を覆うように収納する外側容器を備え,
前記基板収納装置と前記外側容器との間に,前記排気部からの排気を前記給気部に戻す循環路を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板収納装置。
【請求項5】
前記基板収納装置と前記外側容器との間に防振材を設けて,前記防振材の間を前記循環路にしたことを特徴とする請求項4に記載の基板収納装置。
【請求項6】
前記基板収納装置の外側又は前記外側容器の外側に防振材を設けたことを特徴とする請求項4に記載の基板収納装置。
【請求項7】
前記給気部と前記排気部との間には,側板を着脱自在に設けたことを特徴とする請求項6に記載の基板収納容器。
【請求項8】
基板を収納する基板収納装置であって,
前記基板収納装置内にパージガスを導入する導入ポートを設けた給気部と,
前記給気部に対向して配置された排気部と,
前記給気部と前記排気部との間に設けられ,これらの間を連通する連通孔を有する基板載置板と,
前記給気部又は前記排気部に設けられたファンと,を備え,
前記基板収納装置内の状態を検出する状態センサと,パーティクル帯電装置と,温調装置とのいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設けたことを特徴とする基板収納装置。
【請求項9】
基板を収納する基板収納装置であって,
前記基板収納装置内に外気を取り込む給気部と,
前記給気部に対向して配置された排気部と,
前記給気部と前記排気部との間に設けられ,これらの間を連通する連通孔を有する基板載置板と,
前記給気部又は前記排気部に設けられたファンと,を備え,
前記基板収納装置内の状態を検出する状態センサと,パーティクル帯電装置と,温調装置とのいずれか又は2つ以上の組合せを着脱自在に設け,
前記排気部と前記給気部との間は開口していることを特徴とする基板収納装置。
【請求項10】
前記基板収納装置を覆うように収納する外側容器を備え,
前記外側容器には,前記排気部と前記給気部との間は開口を閉塞する閉塞板を設け,
前記基板収納装置と前記外側容器との間に,前記排気部からの排気を前記給気部に戻す循環路を形成したことを特徴とする請求項9に記載の基板収納装置。
【請求項11】
前記基板収納装置と前記外側容器との間に防振材を設けるとともに,前記防振材の間を前記循環路にしたことを特徴とする請求項10に記載の基板収納装置。
【請求項12】
前記基板収納装置の外側又は前記外側容器の外側に防振材を設けたことを特徴とする請求項10に記載の基板収納装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−186006(P2011−186006A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48380(P2010−48380)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】