説明

基板搬送用装置

【課題】 基板保護、装置保護のための基板有無検出、および衝突検出を小型、低コストな1つのセンサにて精度よく検出し、基板の大型化に対する鉛直方向の振動についても同時に低減できる基板搬送用装置を提供する。
【解決手段】 エンドエフェクタに取り付けたひずみセンサと、ひずみセンサ出力から基板有無を検出する基板有無検出部と、衝突有無を検出する衝突有無検出部と、鉛直方向の振動を低減する振動低減部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶等の基板を搬送する基板搬送用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハなどの基板搬送用装置は、半導体製造装置内の、または装置間の基板の受渡しに用いられており、基板保護の観点から、基板搬送用装置上での基板有無確認を行ってほしいというような要望があった。この一般的な技術課題を解決するために、従来の基板搬送用装置は、専用のセンサ(たとえば、歪センサ等)が基板搬送用装置に取り付けられていた(たとえば特許文献1参照)。もしくは、基板搬送用装置が設置される半導体製造装置等に取り付けられたカメラやその他の光学的手段により基板有無確認が行われる場合もあった。
また、基板搬送用装置自身や半導体製造装置などの装置の保護の観点から、基板搬送用装置と外界との衝突を検出し、基板搬送用装置の動作を停止してほしいというような要望があった。このような技術課題を解決するために、衝突を検出するための専用のセンサが取り付けられ、これによって衝突を検出するような構成が取られていた(たとえば特許文献2参照)。
このように、従来の基板搬送用装置は、基板の有無、衝突の検出の目的別に専用のセンサを配置して機能を達成するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−273191号公報
【特許文献2】特開平6−349930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板搬送用装置に要求されるスペース制約は厳しい。特に基板搬送用装置おけるエンドエフェクタ部においてのスペース制約は厳しく、スペースの制約のみならず、動作特性上への影響を小さくするために軽量化も求められる。さらには、エンドエフェクタ部へ至るまでの配線、配管等の最小化も求められている。これに対して、従来の基板搬送用装置では、基板有無センサと、衝突検出のためのセンサは別々となっており、小型化、軽量化、配線スペース減少、コスト低減などの課題を残していた。これに対して、衝突検出については他の代替手段により衝突を推定するという方法もあるものの、センサによる直接的な検出と比較して検出精度が悪いという問題があった。
また、基板搬送用装置に要求されるスペース制約が厳しいことと同様に、エンドエフェクタが動作中の軌跡逸脱量についても制約は厳しい。しかしながら、昨今の基板の大型化、これに伴うエンドエフェクタ部の大型化により、エンドエフェクタ部の鉛直方向の揺れが問題となってきた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、省スペース、低コストにて基板有無の確認と、衝突を検出する2つの機能を1つのセンサにて実現する手段を提供する。かつ、同一センサにて動作中のエンドエフェクタ部の鉛直方向の揺れを検出し、これを抑制する手段を提供する。
これらによって、低コスト、省スペースでありながら基板有無検出と、高精度な外界との衝突検出、および基板搬送時の鉛直方向の揺れ低減を実現する基板搬送用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
本発明は、基板を載置するエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタに設けられたひずみセンサと、前記エンドエフェクタを水平方向および鉛直方向に移動させるアーム部と、前記アーム部を制御するコントローラと、を備えた基板搬送用装置において、前記コントローラが、前記ひずみセンサからの信号によって、前記エンドエフェクタ上の前記基板の有無判断と、前記エンドエフェクタの衝突判断と、前記エンドエフェクタの移動時の鉛直方向の振動の低減制御と、の3つの機能を行なうことを特徴とする基板搬送用装置とするものである。
また、前記コントローラが、ローパスフィルタを備えて前記ローパスフィルタから得られた信号を予め設定しておいた閾値と比較することによって前記基板の有無判断を行なう基板有無判断部と、ハイパスフィルタを備えて前記ハイパスフィルタから得られた信号を予め設定しておいた閾値と比較することによって前記エンドエフェクタの衝突判断を行なう衝突判断部と、特定帯域を抽出するバンドパスフィルタを備えて前記バンドパスフィルタから得られた信号を、前記エンドエフェクタを鉛直方向に移動させる鉛直方向駆動機構の制御部の制御出力へ加算する振動低減部と、を備える構成とするとよい。
また、前記基板有無判断部は、前記アーム部が動作中である場合か、あるいは前記動作中でなくても前記エンドエフェクタ部に前記基板の重量が影響しない姿勢である場合には、前記基板の有無判断を行わない構成にするとよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、1つのセンサにて、基板有無の検出と衝突の検出が精度よく行うことができ、省スペース、低コストにて基板保護と装置保護という機能を実現することができる。
また、本発明によると、基板有無の誤検出を防止することができる。
また、本発明によると、基板、エンドエフェクタの大型化により問題がより顕著になってきている鉛直方向の振動を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例を示す基板搬送用装置の構成図
【図2】本発明の第1の実施例での基板有無検出部の動作を示す図
【図3】本発明の第1の実施例での衝突有無検出部の動作を示す図
【図4】本発明の第2の実施例での振動抑制部の振動検出を示す図
【図5】本発明の第2の実施例での振動抑制部の動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明を適用した基板搬送用装置の概略構成図である。図において、基板搬送用装置1はベース10に設置されたフレーム11上に第1アーム12、第1アーム12上に第2アーム13、第2アーム13上に第3アーム14が設置され、フレーム11に対して第1アーム12が水平面内を動作可能であり、同様に第2アーム13は第1アーム12に対して、第3アーム14は第2アーム13に対して水平面内を動作可能である。なお、これらアーム部のアームの数は任意で問題ない。また、図5に記載のように、フレーム11内に設置された鉛直方向駆動機構45によって、第1アーム12より上の部位は鉛直方向に動作可能となっている。エンドエフェクタ15には基板3が搭載され、この基板3を搬送するように、図示しない上位コントローラからコントローラ4に命令がシリアル通信などによって伝達され、これに従って基板搬送用装置1が動作することによって基板3が搬送される。
本発明では、エンドエフェクタ3に基板3が搭載される、エンドエフェクタ15が障害物6と衝突する、など、エンドエフェクタ15が撓みの変形を生じることによってひずみセンサ2が反応し、出力された信号がコントローラ4にアナログ信号などの形で伝送される。
【0010】
ひずみセンサ2は、基板搬送用装置1のエンドエフェクタ3に設置する。これにより、エンドエフェクタ3に荷重がかかり、エンドエフェクタ3に撓みが発生した場合に、ひずみセンサ2による検出が可能となる。また、エンドエフェクタ2が障害物と衝突をした場合にも、エンドエフェクタ2には確実に荷重がかかるため検出が可能となる。ひずみセンサは、特許文献1に記載されたようなセンサでも、一般にひずみゲージとして販売されているようなものでもよく、センサの伸縮、屈曲を検出するものであればよい。
【0011】
コントローラ4には、ひずみセンサ2の信号を同時に受信する、基板有無検出部40、衝突有無検出部41、振動抑制部42の3つが備えられている。以下、各部の動作と機能について説明する。
基板有無検出部40についての動作は、図2に示すとおりである。基板3を基板搬送用装置1のエンドエフェクタ15に搭載する。このとき、基板3の重量によって、エンドエフェクタ取り付け部を支点として、エンドエフェクタ15には撓みが発生する。この撓みをひずみセンサ2にて検出し、図示しないアンプによって信号が増幅され、基板搬送用装置1のコントローラ4に伝送される。
基板搭載時のひずみセンサ出力信号は、基板有り時ひずみセンサ出力信号401のように出力され、基板3搭載時にエンドエフェクタ15に撓みが発生するため大きく変化し、基板3搭載後はエンドエフェクタ15は一定の撓み量となる。ひずみセンサ出力信号は、基板3搭載前と比較してDC成分が変化する。この信号にローパスフィルタ400をかけることによって、ひずみセンサ出力信号401はフィルタ通過後、基板有り時フィルタ通過信号402のように変化するのである。
このフィルタ通過後信号402に対して、あらかじめ設定しておいた基板有無判定閾値403と比較を行い、閾値403よりも信号402が大きくなった場合には基板有りと判定する。この閾値403、およびローパスフィルタ400のカットオフ周波数は予め実験において求めても、設計時に求めておいてもよいことはもちろんのことである。
【0012】
次に、衝突検出部41についての動作は、図3に示すとおりである。基板搬送用装置1のエンドエフェクタ15が障害物6と衝突する。このとき、エンドエフェクタ15は第3アーム14に固定されているため、撓みが発生する。このときの撓みをひずみセンサ2にて検出し、前記基板有無検出時と同様に、信号がコントローラ4に伝送される。
衝突時のひずみセンサ出力信号は、衝突有り時ひずみセンサ出力信号411のように出力され、衝突時にエンドエフェクタ15に撓みが発生するため大きく変化し、その後も障害物6に接触し続けた場合には、エンドエフェクタ15は一定の撓み量となるため、ひずみセンサ出力信号は、衝突前と比較してDC成分が変化する。また、何らかの要因により、障害物6との接触がなくなった場合には、エンドエフェクタ15の撓みはなくなるため、衝突前のDC成分と同等となる。この信号にハイパスフィルタ410をかけることによって、ひずみセンサ出力信号411はフィルタ通過後信号412のように変化するのである。
このフィルタ通過後信号412に対して、あらかじめ設定しておいた衝突有無判定閾値413と比較を行い、閾値413よりも信号412が大きくなった場合には衝突有りと判定する。この閾値413、およびハイパスフィルタ410のカットオフ周波数は予め実験において求めても、設計時に求めておいてもよいことはもちろんのことである。
また、図2に示すとおり、基板有無検出については、ひずみセンサ2の出力信号がDC成分として変化するが、衝突時にはひずみセンサ2出力は、パルス状に大きなAC成分を持って変化する。
この違いを利用し、衝突および基板有無検出を実現するフローは以下の通りである。
1.ひずみセンサ2の出力信号に対して、ハイパスフィルタ410を適用し、DC成分を除去する。
2.DC成分を除去された信号412に対して、信号の最大値を求める。
3.予め設定された衝突検出閾値413と信号の最大値の比較を行い、信号の最大値のほうが大きければ衝突と判断し、検出処理を終了する。
4.現在、基板搬送用装置1が動作中であるか、動作中でなくてもエンドエフェクタ15に基板3重量が影響しない姿勢である場合には、基板有無検出を無効として検出処理を終了する。これは本発明におけるひずみセンサ2はエンドエフェクタに配置し、エンドエフェクタの上下方向の撓みを検出していることに大きく影響している。特に基板有無検出に関しては、DC成分を検出するため重力による影響が大きい。このため、鉛直方向への荷重変動を伴うような動作、たとえばエンドエフェクタ15の鉛直方向への動作、エンドエフェクタ15に基板重量が影響しないような姿勢においては、DC成分は大きく変化する可能性があり、基板3有無を誤検出する可能性があるためである。
5.前記ステップ3にて衝突と判断されず、かつステップ4にて基板有無検出が無効でなければ、ひずみセンサ2出力に対してローパスフィルタ400を適用し、AC成分を除去する。
6.AC成分を除去された信号402に対して、さらに予め設定された時間にて移動平均値を求める。
7.ステップ5にて求められた移動平均値と、予め設定された基板有無検出閾値403を比較し、移動平均値のほうが大きければ基板有り、小さければ基板なしと判断する。
以上のように、ひずみセンサ2をエンドエフェクタ15に設置することによって、基板3有無の検出と、基板搬送用装置1の障害物6との衝突を検出できるのである。
【0013】
次に、ひずみセンサ2を用いて、基板3搬送時の鉛直方向のゆれを低減する方法について説明する。図5はひずみセンサ2出力を用いて鉛直方向のゆれを低減する制御方式のブロック図である。
衝突および、基板3の搭載/離脱等の接触を含まない動作における基板3搬送時の鉛直方向のゆれは、エンドエフェクタ15の固有振動数付近の周波数であるなど、およその周波数範囲が限定される。これを利用し、鉛直方向振動を低減する。
1.ひずみセンサ2出力に対して、特定帯域のみを抽出するバンドパスフィルタ420を適用し、特定周波数帯域の振動を検出する。
2.バンドパスフィルタ420出力を、振動低減部42へ入力する。
3.振動低減部42では、入力に対して予め設定されたゲインを乗じるなどして、出力を行う。
4.振動低減部42の出力を鉛直方向の駆動制御部43出力に加える。
5.振動低減部42の出力と、図示しない上位コントローラからの指令による駆動力を演算した駆動制御部43の出力を加えた駆動指令が鉛直方向駆動機構45に伝達される。
6.鉛直方向駆動機構45が指令どおりに動作することによって、鉛直方向振動が低減される。
このようにすることによって、基板3搬送時の鉛直方向の振動は低減されるのである。
【0014】
また、基板3搬送時の鉛直方向の振動を前記ステップ4のように常時フィードバックするのではなく、下記の方法によっても同様の効果が得られるのはもちろんのことである。
1.鉛直方向の振動観測用に、基板3の搬送を試験的に実施する。
2.ひずみセンサ2出力を観測し、鉛直方向の振動における周波数/振幅を記録する。
3.ひずみセンサ2出力を観測し、鉛直方向の振動の発生する搬送位置、姿勢を記録する。
4.基板3搬送時に鉛直方向の振動が観測された搬送位置、姿勢であることをコントローラ4にて判断し、このときに、上記2にて求められた周波数/振幅の制御出力を駆動制御部43の出力に加える。

【符号の説明】
【0015】
1 基板搬送用装置
10 ベース
11 フレーム
12 第1アーム
13 第2アーム
14 第3アーム
15 エンドエフェクタ
2 ひずみセンサ
21 応力インピーダンス素子
22 弾性体
23 電極
24 回路基板
3 基板
4 コントローラ
40 基板有無検出部
41 衝突有無検出部
42 振動抑制部
43 駆動制御部
44 動作指令
400 基板有無検出用ローパスフィルタ
401 基板有り時ひずみセンサ出力信号
402 基板有り時フィルタ通過信号
403 基板有無判定閾値
410 衝突有無検出用ハイパスフィルタ
411 衝突有り時ひずみセンサ出力信号
412 衝突有り時フィルタ通過信号
413 衝突有無判定閾値
420 鉛直方向振動検出用バンドパスフィルタ
421 鉛直方向振動ひずみセンサ出力信号
422 鉛直方向振動フィルタ通過信号
45 鉛直方向駆動機構
5 衝突検出装置
50 受信器
51 検知回路
52 無線発信器
53 弾性体
54 リミットスイッチ
55 バッテリ
6 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するエンドエフェクタと、前記エンドエフェクタに設けられたひずみセンサと、前記エンドエフェクタを水平方向および鉛直方向に移動させるアーム部と、前記アーム部を制御するコントローラと、を備えた基板搬送用装置において、
前記コントローラが、前記ひずみセンサからの信号によって、前記エンドエフェクタ上の前記基板の有無判断と、前記エンドエフェクタの衝突判断と、前記エンドエフェクタの移動時の鉛直方向の振動の低減制御と、の3つの機能を行なうことを特徴とする基板搬送用装置。
【請求項2】
前記コントローラが、
ローパスフィルタを備えて前記ローパスフィルタから得られた信号を予め設定しておいた閾値と比較することによって前記基板の有無判断を行なう基板有無判断部と、
ハイパスフィルタを備えて前記ハイパスフィルタから得られた信号を予め設定しておいた閾値と比較することによって前記エンドエフェクタの衝突判断を行なう衝突判断部と、
特定帯域を抽出するバンドパスフィルタを備えて前記バンドパスフィルタから得られた信号を、前記エンドエフェクタを鉛直方向に移動させる鉛直方向駆動機構の制御部の制御出力へ加算する振動低減部と、
を備えたことを特徴とする基板搬送用装置。
【請求項3】
前記基板有無判断部は、前記アーム部が動作中である場合か、あるいは前記動作中でなくても前記エンドエフェクタ部に前記基板の重量が影響しない姿勢である場合には、前記基板の有無判断を行わないことを特徴とする請求項1記載の基板搬送用装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−152621(P2011−152621A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16212(P2010−16212)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】