基板検査システム
【課題】従来の電子部品が実装された基板検査は、目視検査による実装の有無及び実装状態を判定しているため、検査時間を要し負担が大きく人為ミスが発生する虞がある。
【解決手段】本発明は、基板に実装された各電子部品に対して当接する可動軸を有するリニアスケールプローブが複数配置された検査パネルを備え、検査パネルを基板に宛がい、電子部品に当接した可動軸の移動により、リニアスケールプローブ内の高周波電力が印加される励磁コイルから発する磁界中を磁性体が移動し、磁性体の磁界移動から検出コイルにより検出された電圧信号に基づき、基板に実装される電子部品の有無及びその実装状態を検査して判定する基板検査システムである。
【解決手段】本発明は、基板に実装された各電子部品に対して当接する可動軸を有するリニアスケールプローブが複数配置された検査パネルを備え、検査パネルを基板に宛がい、電子部品に当接した可動軸の移動により、リニアスケールプローブ内の高周波電力が印加される励磁コイルから発する磁界中を磁性体が移動し、磁性体の磁界移動から検出コイルにより検出された電圧信号に基づき、基板に実装される電子部品の有無及びその実装状態を検査して判定する基板検査システムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板等に実装されている部品の取り付け状態を検査するための基板検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の製造分野においても、作業コストの削減や短期間の製造数の増大のためにロボット装置を用いた自動化が図られている。例えば、プリント配線基板等への部品の実装においても自動化が図られている。また、プリント配線基板等に実装された部品は、電気的な検査が行われる。まず、基板の接続端子に検査治具を接続し、所定のシーケンスにより自動的に試験し、その結果に基づき、良品を選別し、不良品に対しては、再度製造ラインに戻すか廃棄している。しかし、実装された部品の取り付け状態の良否は、取り付け位置の間違いや欠品などは、検査作業員の直視又は特許文献1に開示されているように撮影画像による目視検査を行っている。
【0003】
実装された部品の取り付け状態を検査するシステムは、種々考えられている。例えば、距離を測定するレーザ光を走査させて、その反射光から部品までの距離を算出し、算出した距離データと予め測定した良品の測定データとを比較して良否を検査してもよい。
【0004】
また検査に用いることができる小型プローブが知られている。小型プローブは、外装ケース内に可動軸が収容され、可動軸を検査対象に当接させ、可動軸の移動により電気信号を発する小型プローブが知られている。例えば、シンガーインスツルメンツ&コントロール社(Singer Instruments & Control Ltd.)製の超小型バネ荷重型LVDT(micro-miniature spring-loaded LVDT )が知られている。尚、LVDTは、リニア可変作動トランス(Linear Variable Differential Transformer)である。
【特許文献1】特開平5−249045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように従来は、熟練した検査者の目視による実装の有無及び実装状態を検査して判定結果を出したため、検査に時間を要するだけでなく、検査者に対する負担が大きく、見落としなどの人為ミスが発生する虞があった。
【0006】
また、実装された部品の取り付け状態を検査するシステムにおいては、走査するレーザ光を用いる検査システムは、複雑で大掛かりな構成となり、基板検査に用いるのはあまり現実的ではない。さらに、前述した製品の小型プローブ(LVDT)は、1つのプローブに対して1つの検出器を宛がう構成であるため、多数本を使用しなければならない実装部品検査には、システムとしては構築できない。
【0007】
そこで本発明は、高周波数電力で励磁される磁界中を磁性体が装着された可動軸を収容し、可動軸の移動状態を電気的に検知するリニアスケールプローブを用いた基板検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、筐体内を移動可能で一端が外部に延出し、他端に磁性体が設けられた可動軸と、前記磁性体と対向する位置に励磁用電力が印加され電界を発する一次コイルと、前記電界中の前記磁性体の移動により発生する誘導電流を取り込む2分割された二次コイルと、を備えるリニアスケールプローブが、前記可動軸が各検査対象物に当接するように複数配置される検査パネルと、前記検査パネルを昇降移動させて、前記検査対象物が実装された基板に宛がい、前記可動軸の先端に前記検査対象物を当接させる昇降機構と、前記リニアスケールプローブの前記一次コイルに励磁用電力を印加する電源部と、前記検査対象物に当接した前記可動軸が移動した際に、前記リニアスケールプローブの前記二次コイルから前記誘導電流による検出信号を検出して判定するための電圧信号を生成する検出部と、前記検出部が生成した電圧信号から前記検査対象物の実装の有無及び実装される姿勢を判定する判定部と、を備える基板検査システムを提供する。
【0009】
さらに、筐体内を移動可能で一端が外部に延出し、他端に磁性体が設けられた可動軸と、記磁性体と対向する位置に励磁用電力が印加され電界を発する一次コイルと、前記電界中の前記磁性体の移動により発生する誘導電流を取り込む2分割された二次コイルと、を備えるリニアスケールプローブが、前記可動軸が検査対象の基板に実装された各検査対象物に当接するように、複数配置される検査パネルと、前記検査パネルを昇降移動させて、前記検査対象物が実装された基板に宛がい、前記可動軸の先端に前記検査対象物を当接させる昇降機構と、前記リニアスケールプローブの前記一次コイルに励磁用電力を印加する電源部と、前記検査対象物に当接した前記可動軸が移動した際に、前記リニアスケールプローブの前記二次コイルから前記誘導電流による検出信号により検出して判定するための電圧信号を生成する検出部と、前記検出部が生成した電圧信号から前記検査対象物の実装の有無及び実装される姿勢を判定する判定部と、前記昇降機構、前記電源部、前記検出部及び前記判定部の駆動を制御するスレーブ制御部と、前記制御部の指示により前記判定部による判定結果を告知する告知部と、前記制御部に任意の指示を入力する入力部と、前記スレーブ制御部に対して上位に位置し、システム全体の制御及び動作指示を行うマスタ制御部と、通信回線を通じて接続されて、外部から管理可能に設けられ、前記マスタ制御部とコマンドによりデータ及び指示を通信するホストシステムと、を備える基板検査システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高周波数電力で励磁される磁界中を磁性体が装着された可動軸を収容し、可動軸の移動状態を電気的に検知するリニアスケールプローブを用いた基板検査システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1(a)には、基板検査システムに用いるリニアスケールプローブの構成例を示し説明する。図1(b)は、図1(a)におけるA−Aのリニアスケールプローブの断面構成を示している。
【0012】
このリニアスケールプローブ1は、外装となる筒形状のプローブケース2と、プローブケース2内を長手方向(又は母線方向)に移動可能で一端(先端部)を外部に延出させている可動軸3と、プローブケース2内の可動軸3の他端(後端部)側に装着されたフェライト等からなる磁性体4と、可動軸3の後端部に取り付けられたスプリングガイド5と、可動軸3の後端部に取り付けられるスプリング6と、可動軸3の先端部に設けられたヘッド部7と、プローブケース2の先端側を封止し可動軸3が移動可能に貫通する孔が形成されたつば部8と、プローブケース2の後端側を封止して配線用孔が開口される固定ブッシュ9と、固定ブッシュ9に設けられた溝に嵌合するプローブケース2に設けられた凸形状の固定部10と、通常位置にある磁性体4の略中央部分と対向しプローブケース2の内周面に環装される一次巻き線となる励磁コイル11と、その励磁コイル11の両側に配置され対向する磁性体4の両端から延出しない長さの二次巻き線となる検出コイル12a,12bとで構成される。
【0013】
本実施形態の可動軸3は、直径φ2mm程度の円柱形状であり、プローブケース2は、φ3mm程度の筒形状を成している。また、プローブケース2の長さ(母線長)は、40数mm程度であり、可動軸3は30数mmで、このうち外部に延出した軸の長さは10数mm程度である。可動軸3の外部に延出した軸の長さを含めて、60数mm程度である。勿論、この寸法に限定されるものではなく、測定対象によって設計や仕様により適宜、変更される。
【0014】
可動軸3及びプローブケース2は、金属製が好ましく、剛性の点から例えば、真鍮、ステンレス材料又はチタン材料、又はこれらの合金等の鋼材料が好ましい。また、用途に応じて一回りサイズが大きくてもよければ、アルミニウム又はアルミ合金を用いることも可能である。また、金属材料については単体であっても、複数の金属材料を組み合わせてもよいし、異なる金属による層構造であってもよい。また、磁性体の金属、鉄、ニッケル又はクロム金属等は本実施形態には好適しない。
【0015】
磁性体4は、筒形状を成し、可動軸3の後端周囲に嵌装され、接着剤等で固定される。勿論、磁性体4は、筒形状が複数例えば、母線方向に2つに分割された形状を成して、可動軸3の周囲を囲むように取り付けて接着固定されてもよい。この磁性体4の母線方向の長さは、可動軸3における移動距離に応じて適宜、設定される。
【0016】
スプリングガイド5は、スプリング6内に配置され、可動軸3が後退してスプリング6が縮まった際に、可動軸3が固定ブッシュ9に衝突することを回避し且つスプリング6の縮みすぎによる捩れ等の損傷を防止するためのストッパとして機能する。ヘッド部7は、検出時に検査対象物(例えば、電子部品)に当接する部材であり、その大きさや長さは、検査対象物により適宜、最適なサイズを選択して取り付けることができる。但し、ヘッド部7の大きさや重さには制限があり、図2に示すように、磁性体4の側面と、励磁コイル11及び検出コイル12a,12bとが正対向する位置を維持しなくてはならない。例えば、リニアスケールプローブ1のヘッド部を下に向けて垂直方向に取り付けた際に、多少の位置ずれが発生した場合であれば、バネ定数を変更したスプリングコイルに交換して位置補正することもできる。可動軸3の可動範囲は、内部構造により固定されている。
【0017】
つば部8は、後述する樹脂製の検査パネルに挿嵌して装着された際に、固定箇所となるため、固定状態を保持させる強度が必要であり、硬質な部材、例えばステンレスやチタンなどの金属材料や硬質樹脂材料で作製されている。勿論、複数の部材を組み合わせてもよく、可動軸3と接する円盤形状部分に樹脂材料を用いて、外装として金属薄板で覆う2層構造であってもよい。
【0018】
固定ブッシュ9は、例えば樹脂材料により作製され、少なくとも1つの配線用孔が開口され、励磁コイル11と接続する電力供給線14と、検出コイル12a,12bと接続する出力信号線13とが貫通して出力端子15に引き出されている。電力供給線14及び出力信号線13は、システム側に接続され、交流電源16から電力供給線14を通じて高周波電力が一次コイルの励磁コイル11に供給され、検出した二次コイルの検出コイル12a,12bからの出力(出力電圧)を出力端子15を通じて後述する検出部に送出する。
【0019】
次に、励磁コイル11及び検出コイル12a,12bによる検査対象物の検出方法について説明する。
本実施形態のリニアスケールプローブ1は、図2に示すように、磁性体4の略中央部分に配置された励磁コイルに1MHz程度の高周波の正弦波交流電圧(電流)を印加して磁場を発生させる。図2に示すように、磁性体4が検出コイル12a,12bと正対して外れていない場合には、検出コイル12a,12bのそれぞれの出力のバランスが取れて、図3に示す可動軸位置「0」(通常時に停まる基準位置)となり、電圧差は「0」となる。
【0020】
可動軸3の先端部が検査対象物に当接した後、さらにリニアスケールプローブ1が定位置まで押し付けられると、可動軸3はスプリング6に付勢されつつプローブケース2の後方に後退する。この移動に伴い磁性体4が移動して、検出コイル12aとは対向しなくなり、検出コイル12bとは対向を維持している。この対向位置の移動により誘導電流が検出コイル12a,12bに発生する。しかし、検出コイル12a,12bの出力において左右のバランスが不均等になり、その偏りに応じて出力電圧として発生する。磁性体4が後退(図2の点線部分)した場合には、検出コイル12aは出力が減少し、検出コイル12bは出力を維持する。従って、図3に示す矢印側に移動することになり、出力電圧(V)が発生する。尚、図3に示す振幅出力及び位相出力の特性曲線は、それぞれ特性を示すものであり、出力電圧の値については同等レベルで記載するものではない。
【0021】
また例えば、可動軸3がプローブケース2の先端部から後端部に掛けて移動した場合には、大きく分けて3つの状態が発生し、リニアに変動する。まず、磁性体4は検出コイル12aと正対し、検出コイル12bとは外れている位置から、それぞれに正対する位置に移動し、さらに、検出コイル12aとは外れ、検出コイル12bと正対している正対する位置に移動する。これを図3に示す振幅出力特性では、可動軸位置「0」で出力電圧が最小値になり、位相出力では、出力値が高レベルから低レベルに切り換えられる。振幅出力特性においては、可動軸3の移動量に応じた電圧値が出力するため、検出された電圧値から可動軸3の先端部の移動距離を算出することができる。
【0022】
次に、リニアスケールプローブ1のプローブケース2に設けられるスリットについて説明する。
本実施形態の励磁コイル11には、電力供給線14を通じて高周波(例えば、1MHz)の励磁用電力が印加されている。これは、低い低周波で駆動するLVDTと比較して、励磁コイル及び検出コイルの巻き数を減らすことができ、プローブ自体のコストを低く抑えることができる。
【0023】
しかしながら、励磁用電力に高周波電力を用いた場合には、図4(a),(b)に示すような誘導電流即ち、うず電流損が大きくなり、熱に変換されてしまう。従って、検出された検出コイル12a,12bのそれぞれの出力は、うず電流損により減少し、正確には検出できなくなる虞がある。前述した従来の小型プローブ(LVDT)では、このような事態を回避するために、一次巻き線に印加する交流電圧を励磁周波数40Hz〜20KHz帯で比較的低い周波数帯を用いている。
【0024】
そこで、本実施形態においては、図4(c),(d)に示すように、うず電流の電流通路に対して、スリット21(空間による絶縁領域)を設けて、うず電流の電流通路を遮断する。このスリットをリニアスケールプローブ1に適用した場合には、図5(a),(b)に示すように、プローブケース2において、母線方向に少なくとも1つのスリット21を設ける。本実施形態では、対向する位置に2つのスリット21を設けている。これらのスリット21の長さは、磁性体4が移動する範囲内をカバーすることが好ましく、少なくとも励磁コイル11及び検出コイル12a,12bをカバーする範囲とする。また、スリット21の幅は、うず電流の電流通路が遮断できる幅であればよく、実際の設計に基づいて、適宜設定すればよい。
【0025】
また、このようなスリット21は、プローブケース2の母線方向に長く形成する及びスリット数が多いほど、プローブケース2の強度が低下することとなる。
そこで、図6に示すように、プローブケース2の母線方向に縦断するスリット22を設けて、スリット両端の間に連結スペーサ23を挟み込み、接着剤により固定する。これは、スリット両端を連結スペーサ23で繋いで強度を低下させない構造である。この連結スペーサ23は、絶縁体により形成される。例えば、硬質樹脂(絶縁性)、硬質ゴム(絶縁性)、アルミナ等の酸化された金属薄板等々が考えられる。
【0026】
以上説明したように、電流通路を遮断するスリットを設けることにより、うず電流損を減少させて、高周波数帯の励磁用交流電力を一次巻き線である励磁コイルに印加することができる。従って、励磁コイル及び検出コイルの巻き数を減らすことができ、プローブ自体のコストを低く抑えることができる。
【0027】
次に、リニアスケールプローブ1に設けられるコンタクト部の構成例について説明する。図7(a)は、コンタクト部の正面から見た構成の概念図、図7(b)は コンタクト部の側面から見た構成の概念図、図7(c)は、コンタクト部のハウジング部側から見た構成の概念図である。
【0028】
前述した図1では、励磁コイル11と接続する電力供給線14と、検出コイル12a,12bと接続する出力信号線13と固定ブッシュ9の配線用孔から外部に引き出されている構成であった。しかし、実際の製品においては、電力供給線14と出力信号線13が引き出されていた場合に、配線用孔からフリーな状態となるので長期に渡る曲げ伸ばしが行われると被覆の破れや断線する事態が想定される。さらに、後述する検査パネル製作時や使用時に、これらの配線に引っ張り等の負荷が掛かると、被覆が破損していなくとも内部の線芯が断線している事態も想定される。
【0029】
本実施形態では、リニアスケールプローブ1の後端にコンタクト部30を設ける。
コンタクト部30は、硬質プリント配線基板(以下、基板と称する)31と、キャップ部35と、ハウジング部36とで構成される。基板31の表裏主面には、複数のリード端子用電極及び配線用電極が形成されている。本実施形態の基板31は、図7(a)に示すように、表裏主面に形成される2つの長形のリード端子用電極32(32a〜33d)と、表主面の他端側に6個の配線用電極33(33a〜33f)とが設けられている。
【0030】
これらの配線用電極33においては、図1に示したコイル構成であれば、2つの配線用電極33a,33bは短絡パターン接続された上、それぞれに検出コイル12a,12bの一端が半田付け接続される。また、配線用電極33c,33dは、検出コイル12a,12bの他端に半田付け接続し、さらに配線用電極33e,33fは、励磁コイル11と半田付け接続する。また、配線用電極33a,33bは、表主面上でリード端子用電極32a,32bとパターン配線40により接続される。配線用電極33c,33dは、ビアホールを通じて裏主面上のリード端子用電極32c,32dとパターン配線41により接続される。基板31は、半田付け終了後にリード端子用電極32側からキャップ部35に嵌め込まれ、配線用電極33がキャップ部内に埋没するように樹脂を埋め込み固定される。その後、両面のリード端子用電極32には、ハウジング部36のリード端子37がそれぞれ接触する。その状態で半田付けによる接続部42によりリード端子37をリード端子用電極32に固定する。
【0031】
このように構成されたハウジング部36にシステム側のハウジング部を嵌合させて、高周波励磁用電力を励磁コイル11に印加し、検出コイル12a,12bからそれぞれ検出信号を読み取る。
【0032】
尚、キャップ部35の直径は、原則として前述したプローブケース2の直径φ3mmよりも小径である。これは、後述する検査パネルに開口された取り付け孔にコンタクト部30から差し込み、つば部8のつば部で固定するためである。
【0033】
以上説明したように、リニアスケールプローブの後端にコンタクト部を設けることにより、このプローブを用いて検査パネル等を作製する際に、ハウジングを嵌合させるだけで
簡単に電気接続が行える。また、電力供給線14と出力信号線13が外部に露呈していないため、曲げ伸ばしや組み立て時の負荷による断線がなくなる。
【0034】
次に、リニアスケールプローブ1を用いた基板検査システムについて説明する。
本実施形態の基板検査システムは、多数の電子部品が実装されたプリント配線基板に対して、検査パネルを用いた一度の検査により、全電子部品における実装の有無、取り付け姿勢の良否を検査するシステムである。
【0035】
図8は、基板検査システムのブロック構成図を示す。この基板検査システムは、複数のリニアスケールプローブ1が嵌装されて構成される検査パネル51と、これらのリニアスケールプローブ1に対して、それぞれ高周波電力の印加と検出信号(出力電圧)の伝搬を行う例えばマルチプレクサからなるインタフェース(IF)部52と、リニアスケールプローブ1に印加する高周波電力を生成する電源部53と、個々のリニアスケールプローブ1から検出信号を受信して出力電圧を生成する検出部54と、出力信号に基づき、全電子部品における実装の有無、取り付け姿勢の良否を判定する判定部55と、判定部55における判定基準設定等のシステム全体の制御及び動作指示を行う制御部56と、検査者による指示入力を行うためのキーボードやタッチパネル等の操作パネルからなる入力部57と、判定結果や入力指示等を表示するための例えば液晶表示画面を有する表示部58と、音声による入力又は音声による告知を行う音声部59とで構成される。
【0036】
図9(a),(b)は、リニアスケールプローブ1が挿嵌された検査パネル51の状態を示す図である。リニアスケールプローブ1は、コンタクト部30側から検査パネル51の開口された固定孔65に差し込み、つば部8まで押し込み挿嵌する。次に、コンタクト部30にシステム側のハウジング部36を差し込む。
【0037】
このように検査パネル51にリニアスケールプローブ1を挿嵌するだけで容易に作製することができる。
【0038】
さらに、図9(a)に示すように、リニアスケールプローブ1のプローブケース2の一部にコの字型の切り込み部を入れておき、その切り込み部の先端部分を突出させて、挿嵌後の固定強化及び脱落防止として機能するストッパを形成してもよい。また、図9(b)に示すように、例えば、電子部品のうち、CPU68などのリード端子が多数あり、実装面積の大きい電子部品に対しては、例えば4隅に対してリニアスケールプローブ1を配置する。このような配置により、実装の有無だけではなく、その実装された姿勢例えば、基板に対して傾斜して取り付けられていないか否かを検査することができる。
【0039】
ここで図10(a),(b)には、リニアスケールプローブ1が嵌装された検査パネルの第1の例を示し説明する。
図10(a)に示すように、基板71上に実装される電子部品群72は、それぞれの電子部品で実装面積が異なるだけでなく、その高さも異なっている。例えば、コンデンサ等は比較的高さを有しているが、CPU等は低くなっている。従って、同じストローク長の可動軸のリニアスケールプローブ1を用いる場合には、検査パネル51に高さ調整用のスペーサ73を貼り付けて、実装された部品に適応させる必要がある。例えば図10(a)に示すように、厚さの異なったスペーサ73を検査パネル51に貼り付けて、プローブ配置位置に固定孔を開口して、リニアスケールプローブ1を挿嵌する。
【0040】
以上のように、平坦な検査パネル51に検査対象となる電子部品の高さに合わせてスペーサを取り付けることにより、どのような実装基板にも対応できる自由度の高い検査パネルを作製することができる。
【0041】
図11(a),(b)には、リニアスケールプローブ1が嵌装された検査パネルの第2の例を示し説明する。
図11(a)に示すように、平坦な検査パネル51に同じストローク長の可動軸3のリニアスケールプローブ1を実装位置に合わせて嵌装する。
【0042】
図11(b)に示すように、検査対象となる電子部品の高さに合わせた長さのキャップ部74を可動軸3の先端部に差し込み、接着剤などを用いて固定する。このヘッド部74は、樹脂のような軽量な材料により形成される。ヘッド部74の内部は樹脂製で中空なキャップ構造であってもよい。例えば、長尺なパイプを部品までの距離に応じた長さに切り取り、可動軸3に差し込み固定することでキャップ部74を形成してもよい。尚、このキャップ部74を取り付けたことにより、前述した図1に示した磁性体4の側面と励磁コイル11及び検出コイル12a,12bとが正対向する位置から位置ずれが発生した場合には、バネ定数を変更したスプリングコイルに交換して位置補正すればよい。
【0043】
以上説明したように、平坦な検査パネル51に平行するように挿嵌するリニアスケールプローブ1の可動軸3の先端部に、検査する部品までの距離に応じた長さのヘッド部を取り付けることにより、どのような実装基板にも対応できる自由度の高い検査パネルを作製することができる。
【0044】
図12には、リニアスケールプローブ1が嵌装された検査パネルの第3の例を示し説明する。
この第3の例においては、厚い検査パネル75を用いる。リニアスケールプローブ1ごとの検査する実装部品までの距離に応じて、検査パネル75の不要部分を切削する。不要部分を削り取った検査パネル75のプローブ配置位置に固定孔を開口して、リニアスケールプローブ1を挿嵌する。
【0045】
以上説明したように、検査パネルの削りだしより、どのような実装基板にも対応できる自由度の高い検査パネルを作製することができる。
【0046】
次に、本実施形態の基板検査システムによる基板検査について説明する。
まず、前述したように、設計図面上又は、実装した検査サンプル(実製品でもよい)の実測データを用いて、前述した第1乃至第3の例による検査パネル51を作製する。作製した検査パネル51をモータ等の駆動源により下降及び上昇の微小な移動が可能な昇降機構61に取り付ける。検査パネル51に挿嵌されたリニアスケールプローブ1のコンタクト部30にIF部52(マルチプレクサ)側のハウジングを嵌合する。測定用テーブルに予め定めている検査条件を判定部55に読み出し、判定基準として設定する。例えば、検査パネル51を作製したときの作成条件(ヘッド部から電子部品までの距離)を実装基板の製造番号やロット番号で登録しておき、入力部57で指定して読み出す。
【0047】
次に、検査を行う実装基板を検査パネル下方の検査テーブル62に設置する。検査テーブル62は、昇降機構61の昇降方向と直交する2次元方向(XY方向)に移動可能に構成されて、検査パネルに対して位置合わせを行うことができる。昇降機構により検査条件に従って、検査パネル51を実装基板に実装されている各電子部品に当接させる。
【0048】
この時の各リニアスケールプローブ1の出力電圧を検査部54で順次読み取り、判定部55により良否判定を行う。この判定結果は、制御部56により表示部58にその判定結果が表示される。また、この時の検査結果の各電子部品における詳細に検出データを表示させてもよい。
【0049】
尚、前述した検査パネルの検査方法においは、電子部品の実装面側から検査パネルを宛ててリニアスケールプローブにより検出したが、実装面側に限定されるものではなく、非実装面からリニアスケールプローブを当接させることにより、回路パターンにおける半田付け状態を検査することもできる。また、検査パネル上に均一にリニアスケールプローブを配置して、プリント基板などの板形状の検査対象物の平坦度を検査することもできる。同様に、凹凸を設けた板形状の検査対象物であっても、表面の凹凸形状を同様に検査することができる。
【0050】
以上説明したように、検査対象となるそれぞれの実装部品にリニアスケールプローブが担当するように配置された検査パネルを用いることにより、一度の検査により、実装部品の欠落や実装状態の検査が正確で且つ簡単に検査の結果を求めることができる。従来では、熟練した検査者の目視による実装の有無及び実装状態を検査して判定結果を出したため、検査者に対する負担が大きく、見落としなどの人為ミスが発生したが、これらの課題を解決することができる。つまり、判定はコンピュータ等による判定部が判断し、熟練度を要さず、また見落としなどの人為的な検査ミスを防止することができる。
【0051】
さらに、基板検査システムで用いている検査パネルは、リニアスケールプローブを挿嵌した構成であるため、新しい設計の実装基板や実装基板に設計変更があった場合にも容易に短時間で対応することができる。
【0052】
また、基板検査システムは、実用にあたっては、複数の実装基板に対して、同時又は並列的に検査できるように、複数の検査パネル51を搭載するシステムを構築する。
【0053】
図13には、図8に示した基板検査システムを複数用いて、主従関係を持たせたネットワークに適用できるホストシステムによる集中管理可能な基板検査システムの構成例を示している。ここで、図8に示した構成部位と同等のものには同じ参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
この基板検査システムは、多数のリニアスケールプローブ1が嵌装される複数の検査パネル51a〜51nと、これらのリニアスケールプローブ1に対して、選択機能を有し、一括的に又は個々に励磁用高周波電力の印加と検出信号(出力電圧)の伝搬を行う例えばマルチプレクサからなるインタフェース(IF)部52a〜52nと、リニアスケールプローブ1に印加する高周波電力を生成する電源部53a〜53nと、個々のリニアスケールプローブ1からの検出信号を受信して実装の有無、取り付け姿勢の良否を判定する検出/判定部63a〜63nと、検査パネル51a〜51n毎に制御を行うスレーブ制御部81a〜81nと、スレーブ制御部81a〜81nに対して上位に位置し、判定基準設定等のシステム全体の制御及び動作指示を行うマスタ制御部82と、通信回線により接続され外部から管理可能に設けられ、マスタ制御部82とコマンドによりデータ及び指示等を通信するホストシステム83と、マスタ制御部82及びホストシステム83にそれぞれ設けられる表示部84,86と、入力部85,87とで構成される。
【0055】
入力部85,87は、検査者による指示入力を行うためのキーボードやタッチパネル等の操作パネル等が好適する。また表示部84,86は、判定結果や入力指示等を表示するための例えば液晶表示装置により構成される。
【0056】
以上説明したように、主従関係を持たせた制御部は、LAN等のネットワークを用いたシステム構築することができ、異なる居所から複数の検査対象となる実装部品に対して、同時又は並列的に検査に対する指示を行うことができる。これは、ホストシステムを設けることにより作業現場以外の居所より、遠隔的に指示を与えたり、適宜、検査結果を得ることができ、検査状況を把握するためには非常に有用である。また、マスタ制御部により、一括的に管理ができ、効率的である。
【0057】
さらに、部品の配置が異なる検査パネルであっても、同時に又は並列的に検査を実施することができる。さらに、他の仕様の検査パネルに変更する際にも、ブロック単位で制御できるため、あるブロックで検査を実施しつつ、他のブロックでは検査パネルの仕様変更の作業を行うことができる。従って、新しい設計の実装基板や実装基板に設計変更があった場合にも容易に短時間で且つ効率的に対応することができる。
【0058】
尚、本実施形態では、マスタ制御部と各スレーブ制御部81a〜81nがシリーズに接続されたネットワークであるが、これに限定されず、周知なバス型ネットワーク、スター型ネットワーク及びリング型ネットワークのいずれにおいても実施形態を適用して、ネットワークを構築できることは勿論である。また、各スレーブ制御部81a〜81n、マスタ制御部82及びホストシステム83とは、LANだけではなく、インターネットを介して、接続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1(a)は、基板検査システムに用いるリニアスケールプローブの構成例を示す図、図1(b)は、図1(a)におけるA−Aのリニアスケールプローブの断面構成を示す図である。
【図2】リニアスケールプローブにおける磁性体と、励磁コイル及び検出コイルの位置関係と発生する電圧について説明するための図である。
【図3】可動軸の位置と振幅出力と位相出力について説明するための図である。
【図4】うず電流とスリットとの関係について説明するための図である。
【図5】スリットが設けられたリニアスケールプローブの構成例を示す図である。
【図6】連結スペーサが挟み込まれるスリットが設けられたリニアスケールプローブの構成例を示す図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、リニアスケールプローブに設けられるコンタクト部の構成例を示す図である。
【図8】実施形態として基板検査システムのブロック構成を示す図である。
【図9】図9(a),(b)は、リニアスケールプローブが挿嵌された検査パネルを示す図である。
【図10】図10(a),(b)は、リニアスケールプローブが嵌装された検査パネルの第1の例を示す図である。
【図11】リニアスケールプローブが嵌装された検査パネルの第2の例を示す図である。
【図12】リニアスケールプローブが嵌装された検査パネルの第2の例を示す図である。
【図13】複数の検査パネルによる主従関係を有する基板検査システムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1…リニアスケールプローブ、2…プローブケース、3…可動軸、4…磁性体、5…スプリングガイド、6…スプリング、7…ヘッド部、8…つば部、9…固定ブッシュ、10…固定部、11…励磁コイル、12a,12b…検出コイル、30…コンタクト部、51,51a〜51n…検査パネル、52,52a〜52n…IF部(マルチプレクサ)、53,53a〜53n…電源部、54…検査部、55…判定部、56…制御部、57,85,87…入力部、58,84,86…表示部、59…音声部、61…昇降機構、62…検査テーブル、63a〜63n…検出/判定部、81a〜81n…スレーブ制御部、83…ホストシステム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板等に実装されている部品の取り付け状態を検査するための基板検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の製造分野においても、作業コストの削減や短期間の製造数の増大のためにロボット装置を用いた自動化が図られている。例えば、プリント配線基板等への部品の実装においても自動化が図られている。また、プリント配線基板等に実装された部品は、電気的な検査が行われる。まず、基板の接続端子に検査治具を接続し、所定のシーケンスにより自動的に試験し、その結果に基づき、良品を選別し、不良品に対しては、再度製造ラインに戻すか廃棄している。しかし、実装された部品の取り付け状態の良否は、取り付け位置の間違いや欠品などは、検査作業員の直視又は特許文献1に開示されているように撮影画像による目視検査を行っている。
【0003】
実装された部品の取り付け状態を検査するシステムは、種々考えられている。例えば、距離を測定するレーザ光を走査させて、その反射光から部品までの距離を算出し、算出した距離データと予め測定した良品の測定データとを比較して良否を検査してもよい。
【0004】
また検査に用いることができる小型プローブが知られている。小型プローブは、外装ケース内に可動軸が収容され、可動軸を検査対象に当接させ、可動軸の移動により電気信号を発する小型プローブが知られている。例えば、シンガーインスツルメンツ&コントロール社(Singer Instruments & Control Ltd.)製の超小型バネ荷重型LVDT(micro-miniature spring-loaded LVDT )が知られている。尚、LVDTは、リニア可変作動トランス(Linear Variable Differential Transformer)である。
【特許文献1】特開平5−249045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように従来は、熟練した検査者の目視による実装の有無及び実装状態を検査して判定結果を出したため、検査に時間を要するだけでなく、検査者に対する負担が大きく、見落としなどの人為ミスが発生する虞があった。
【0006】
また、実装された部品の取り付け状態を検査するシステムにおいては、走査するレーザ光を用いる検査システムは、複雑で大掛かりな構成となり、基板検査に用いるのはあまり現実的ではない。さらに、前述した製品の小型プローブ(LVDT)は、1つのプローブに対して1つの検出器を宛がう構成であるため、多数本を使用しなければならない実装部品検査には、システムとしては構築できない。
【0007】
そこで本発明は、高周波数電力で励磁される磁界中を磁性体が装着された可動軸を収容し、可動軸の移動状態を電気的に検知するリニアスケールプローブを用いた基板検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、筐体内を移動可能で一端が外部に延出し、他端に磁性体が設けられた可動軸と、前記磁性体と対向する位置に励磁用電力が印加され電界を発する一次コイルと、前記電界中の前記磁性体の移動により発生する誘導電流を取り込む2分割された二次コイルと、を備えるリニアスケールプローブが、前記可動軸が各検査対象物に当接するように複数配置される検査パネルと、前記検査パネルを昇降移動させて、前記検査対象物が実装された基板に宛がい、前記可動軸の先端に前記検査対象物を当接させる昇降機構と、前記リニアスケールプローブの前記一次コイルに励磁用電力を印加する電源部と、前記検査対象物に当接した前記可動軸が移動した際に、前記リニアスケールプローブの前記二次コイルから前記誘導電流による検出信号を検出して判定するための電圧信号を生成する検出部と、前記検出部が生成した電圧信号から前記検査対象物の実装の有無及び実装される姿勢を判定する判定部と、を備える基板検査システムを提供する。
【0009】
さらに、筐体内を移動可能で一端が外部に延出し、他端に磁性体が設けられた可動軸と、記磁性体と対向する位置に励磁用電力が印加され電界を発する一次コイルと、前記電界中の前記磁性体の移動により発生する誘導電流を取り込む2分割された二次コイルと、を備えるリニアスケールプローブが、前記可動軸が検査対象の基板に実装された各検査対象物に当接するように、複数配置される検査パネルと、前記検査パネルを昇降移動させて、前記検査対象物が実装された基板に宛がい、前記可動軸の先端に前記検査対象物を当接させる昇降機構と、前記リニアスケールプローブの前記一次コイルに励磁用電力を印加する電源部と、前記検査対象物に当接した前記可動軸が移動した際に、前記リニアスケールプローブの前記二次コイルから前記誘導電流による検出信号により検出して判定するための電圧信号を生成する検出部と、前記検出部が生成した電圧信号から前記検査対象物の実装の有無及び実装される姿勢を判定する判定部と、前記昇降機構、前記電源部、前記検出部及び前記判定部の駆動を制御するスレーブ制御部と、前記制御部の指示により前記判定部による判定結果を告知する告知部と、前記制御部に任意の指示を入力する入力部と、前記スレーブ制御部に対して上位に位置し、システム全体の制御及び動作指示を行うマスタ制御部と、通信回線を通じて接続されて、外部から管理可能に設けられ、前記マスタ制御部とコマンドによりデータ及び指示を通信するホストシステムと、を備える基板検査システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高周波数電力で励磁される磁界中を磁性体が装着された可動軸を収容し、可動軸の移動状態を電気的に検知するリニアスケールプローブを用いた基板検査システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1(a)には、基板検査システムに用いるリニアスケールプローブの構成例を示し説明する。図1(b)は、図1(a)におけるA−Aのリニアスケールプローブの断面構成を示している。
【0012】
このリニアスケールプローブ1は、外装となる筒形状のプローブケース2と、プローブケース2内を長手方向(又は母線方向)に移動可能で一端(先端部)を外部に延出させている可動軸3と、プローブケース2内の可動軸3の他端(後端部)側に装着されたフェライト等からなる磁性体4と、可動軸3の後端部に取り付けられたスプリングガイド5と、可動軸3の後端部に取り付けられるスプリング6と、可動軸3の先端部に設けられたヘッド部7と、プローブケース2の先端側を封止し可動軸3が移動可能に貫通する孔が形成されたつば部8と、プローブケース2の後端側を封止して配線用孔が開口される固定ブッシュ9と、固定ブッシュ9に設けられた溝に嵌合するプローブケース2に設けられた凸形状の固定部10と、通常位置にある磁性体4の略中央部分と対向しプローブケース2の内周面に環装される一次巻き線となる励磁コイル11と、その励磁コイル11の両側に配置され対向する磁性体4の両端から延出しない長さの二次巻き線となる検出コイル12a,12bとで構成される。
【0013】
本実施形態の可動軸3は、直径φ2mm程度の円柱形状であり、プローブケース2は、φ3mm程度の筒形状を成している。また、プローブケース2の長さ(母線長)は、40数mm程度であり、可動軸3は30数mmで、このうち外部に延出した軸の長さは10数mm程度である。可動軸3の外部に延出した軸の長さを含めて、60数mm程度である。勿論、この寸法に限定されるものではなく、測定対象によって設計や仕様により適宜、変更される。
【0014】
可動軸3及びプローブケース2は、金属製が好ましく、剛性の点から例えば、真鍮、ステンレス材料又はチタン材料、又はこれらの合金等の鋼材料が好ましい。また、用途に応じて一回りサイズが大きくてもよければ、アルミニウム又はアルミ合金を用いることも可能である。また、金属材料については単体であっても、複数の金属材料を組み合わせてもよいし、異なる金属による層構造であってもよい。また、磁性体の金属、鉄、ニッケル又はクロム金属等は本実施形態には好適しない。
【0015】
磁性体4は、筒形状を成し、可動軸3の後端周囲に嵌装され、接着剤等で固定される。勿論、磁性体4は、筒形状が複数例えば、母線方向に2つに分割された形状を成して、可動軸3の周囲を囲むように取り付けて接着固定されてもよい。この磁性体4の母線方向の長さは、可動軸3における移動距離に応じて適宜、設定される。
【0016】
スプリングガイド5は、スプリング6内に配置され、可動軸3が後退してスプリング6が縮まった際に、可動軸3が固定ブッシュ9に衝突することを回避し且つスプリング6の縮みすぎによる捩れ等の損傷を防止するためのストッパとして機能する。ヘッド部7は、検出時に検査対象物(例えば、電子部品)に当接する部材であり、その大きさや長さは、検査対象物により適宜、最適なサイズを選択して取り付けることができる。但し、ヘッド部7の大きさや重さには制限があり、図2に示すように、磁性体4の側面と、励磁コイル11及び検出コイル12a,12bとが正対向する位置を維持しなくてはならない。例えば、リニアスケールプローブ1のヘッド部を下に向けて垂直方向に取り付けた際に、多少の位置ずれが発生した場合であれば、バネ定数を変更したスプリングコイルに交換して位置補正することもできる。可動軸3の可動範囲は、内部構造により固定されている。
【0017】
つば部8は、後述する樹脂製の検査パネルに挿嵌して装着された際に、固定箇所となるため、固定状態を保持させる強度が必要であり、硬質な部材、例えばステンレスやチタンなどの金属材料や硬質樹脂材料で作製されている。勿論、複数の部材を組み合わせてもよく、可動軸3と接する円盤形状部分に樹脂材料を用いて、外装として金属薄板で覆う2層構造であってもよい。
【0018】
固定ブッシュ9は、例えば樹脂材料により作製され、少なくとも1つの配線用孔が開口され、励磁コイル11と接続する電力供給線14と、検出コイル12a,12bと接続する出力信号線13とが貫通して出力端子15に引き出されている。電力供給線14及び出力信号線13は、システム側に接続され、交流電源16から電力供給線14を通じて高周波電力が一次コイルの励磁コイル11に供給され、検出した二次コイルの検出コイル12a,12bからの出力(出力電圧)を出力端子15を通じて後述する検出部に送出する。
【0019】
次に、励磁コイル11及び検出コイル12a,12bによる検査対象物の検出方法について説明する。
本実施形態のリニアスケールプローブ1は、図2に示すように、磁性体4の略中央部分に配置された励磁コイルに1MHz程度の高周波の正弦波交流電圧(電流)を印加して磁場を発生させる。図2に示すように、磁性体4が検出コイル12a,12bと正対して外れていない場合には、検出コイル12a,12bのそれぞれの出力のバランスが取れて、図3に示す可動軸位置「0」(通常時に停まる基準位置)となり、電圧差は「0」となる。
【0020】
可動軸3の先端部が検査対象物に当接した後、さらにリニアスケールプローブ1が定位置まで押し付けられると、可動軸3はスプリング6に付勢されつつプローブケース2の後方に後退する。この移動に伴い磁性体4が移動して、検出コイル12aとは対向しなくなり、検出コイル12bとは対向を維持している。この対向位置の移動により誘導電流が検出コイル12a,12bに発生する。しかし、検出コイル12a,12bの出力において左右のバランスが不均等になり、その偏りに応じて出力電圧として発生する。磁性体4が後退(図2の点線部分)した場合には、検出コイル12aは出力が減少し、検出コイル12bは出力を維持する。従って、図3に示す矢印側に移動することになり、出力電圧(V)が発生する。尚、図3に示す振幅出力及び位相出力の特性曲線は、それぞれ特性を示すものであり、出力電圧の値については同等レベルで記載するものではない。
【0021】
また例えば、可動軸3がプローブケース2の先端部から後端部に掛けて移動した場合には、大きく分けて3つの状態が発生し、リニアに変動する。まず、磁性体4は検出コイル12aと正対し、検出コイル12bとは外れている位置から、それぞれに正対する位置に移動し、さらに、検出コイル12aとは外れ、検出コイル12bと正対している正対する位置に移動する。これを図3に示す振幅出力特性では、可動軸位置「0」で出力電圧が最小値になり、位相出力では、出力値が高レベルから低レベルに切り換えられる。振幅出力特性においては、可動軸3の移動量に応じた電圧値が出力するため、検出された電圧値から可動軸3の先端部の移動距離を算出することができる。
【0022】
次に、リニアスケールプローブ1のプローブケース2に設けられるスリットについて説明する。
本実施形態の励磁コイル11には、電力供給線14を通じて高周波(例えば、1MHz)の励磁用電力が印加されている。これは、低い低周波で駆動するLVDTと比較して、励磁コイル及び検出コイルの巻き数を減らすことができ、プローブ自体のコストを低く抑えることができる。
【0023】
しかしながら、励磁用電力に高周波電力を用いた場合には、図4(a),(b)に示すような誘導電流即ち、うず電流損が大きくなり、熱に変換されてしまう。従って、検出された検出コイル12a,12bのそれぞれの出力は、うず電流損により減少し、正確には検出できなくなる虞がある。前述した従来の小型プローブ(LVDT)では、このような事態を回避するために、一次巻き線に印加する交流電圧を励磁周波数40Hz〜20KHz帯で比較的低い周波数帯を用いている。
【0024】
そこで、本実施形態においては、図4(c),(d)に示すように、うず電流の電流通路に対して、スリット21(空間による絶縁領域)を設けて、うず電流の電流通路を遮断する。このスリットをリニアスケールプローブ1に適用した場合には、図5(a),(b)に示すように、プローブケース2において、母線方向に少なくとも1つのスリット21を設ける。本実施形態では、対向する位置に2つのスリット21を設けている。これらのスリット21の長さは、磁性体4が移動する範囲内をカバーすることが好ましく、少なくとも励磁コイル11及び検出コイル12a,12bをカバーする範囲とする。また、スリット21の幅は、うず電流の電流通路が遮断できる幅であればよく、実際の設計に基づいて、適宜設定すればよい。
【0025】
また、このようなスリット21は、プローブケース2の母線方向に長く形成する及びスリット数が多いほど、プローブケース2の強度が低下することとなる。
そこで、図6に示すように、プローブケース2の母線方向に縦断するスリット22を設けて、スリット両端の間に連結スペーサ23を挟み込み、接着剤により固定する。これは、スリット両端を連結スペーサ23で繋いで強度を低下させない構造である。この連結スペーサ23は、絶縁体により形成される。例えば、硬質樹脂(絶縁性)、硬質ゴム(絶縁性)、アルミナ等の酸化された金属薄板等々が考えられる。
【0026】
以上説明したように、電流通路を遮断するスリットを設けることにより、うず電流損を減少させて、高周波数帯の励磁用交流電力を一次巻き線である励磁コイルに印加することができる。従って、励磁コイル及び検出コイルの巻き数を減らすことができ、プローブ自体のコストを低く抑えることができる。
【0027】
次に、リニアスケールプローブ1に設けられるコンタクト部の構成例について説明する。図7(a)は、コンタクト部の正面から見た構成の概念図、図7(b)は コンタクト部の側面から見た構成の概念図、図7(c)は、コンタクト部のハウジング部側から見た構成の概念図である。
【0028】
前述した図1では、励磁コイル11と接続する電力供給線14と、検出コイル12a,12bと接続する出力信号線13と固定ブッシュ9の配線用孔から外部に引き出されている構成であった。しかし、実際の製品においては、電力供給線14と出力信号線13が引き出されていた場合に、配線用孔からフリーな状態となるので長期に渡る曲げ伸ばしが行われると被覆の破れや断線する事態が想定される。さらに、後述する検査パネル製作時や使用時に、これらの配線に引っ張り等の負荷が掛かると、被覆が破損していなくとも内部の線芯が断線している事態も想定される。
【0029】
本実施形態では、リニアスケールプローブ1の後端にコンタクト部30を設ける。
コンタクト部30は、硬質プリント配線基板(以下、基板と称する)31と、キャップ部35と、ハウジング部36とで構成される。基板31の表裏主面には、複数のリード端子用電極及び配線用電極が形成されている。本実施形態の基板31は、図7(a)に示すように、表裏主面に形成される2つの長形のリード端子用電極32(32a〜33d)と、表主面の他端側に6個の配線用電極33(33a〜33f)とが設けられている。
【0030】
これらの配線用電極33においては、図1に示したコイル構成であれば、2つの配線用電極33a,33bは短絡パターン接続された上、それぞれに検出コイル12a,12bの一端が半田付け接続される。また、配線用電極33c,33dは、検出コイル12a,12bの他端に半田付け接続し、さらに配線用電極33e,33fは、励磁コイル11と半田付け接続する。また、配線用電極33a,33bは、表主面上でリード端子用電極32a,32bとパターン配線40により接続される。配線用電極33c,33dは、ビアホールを通じて裏主面上のリード端子用電極32c,32dとパターン配線41により接続される。基板31は、半田付け終了後にリード端子用電極32側からキャップ部35に嵌め込まれ、配線用電極33がキャップ部内に埋没するように樹脂を埋め込み固定される。その後、両面のリード端子用電極32には、ハウジング部36のリード端子37がそれぞれ接触する。その状態で半田付けによる接続部42によりリード端子37をリード端子用電極32に固定する。
【0031】
このように構成されたハウジング部36にシステム側のハウジング部を嵌合させて、高周波励磁用電力を励磁コイル11に印加し、検出コイル12a,12bからそれぞれ検出信号を読み取る。
【0032】
尚、キャップ部35の直径は、原則として前述したプローブケース2の直径φ3mmよりも小径である。これは、後述する検査パネルに開口された取り付け孔にコンタクト部30から差し込み、つば部8のつば部で固定するためである。
【0033】
以上説明したように、リニアスケールプローブの後端にコンタクト部を設けることにより、このプローブを用いて検査パネル等を作製する際に、ハウジングを嵌合させるだけで
簡単に電気接続が行える。また、電力供給線14と出力信号線13が外部に露呈していないため、曲げ伸ばしや組み立て時の負荷による断線がなくなる。
【0034】
次に、リニアスケールプローブ1を用いた基板検査システムについて説明する。
本実施形態の基板検査システムは、多数の電子部品が実装されたプリント配線基板に対して、検査パネルを用いた一度の検査により、全電子部品における実装の有無、取り付け姿勢の良否を検査するシステムである。
【0035】
図8は、基板検査システムのブロック構成図を示す。この基板検査システムは、複数のリニアスケールプローブ1が嵌装されて構成される検査パネル51と、これらのリニアスケールプローブ1に対して、それぞれ高周波電力の印加と検出信号(出力電圧)の伝搬を行う例えばマルチプレクサからなるインタフェース(IF)部52と、リニアスケールプローブ1に印加する高周波電力を生成する電源部53と、個々のリニアスケールプローブ1から検出信号を受信して出力電圧を生成する検出部54と、出力信号に基づき、全電子部品における実装の有無、取り付け姿勢の良否を判定する判定部55と、判定部55における判定基準設定等のシステム全体の制御及び動作指示を行う制御部56と、検査者による指示入力を行うためのキーボードやタッチパネル等の操作パネルからなる入力部57と、判定結果や入力指示等を表示するための例えば液晶表示画面を有する表示部58と、音声による入力又は音声による告知を行う音声部59とで構成される。
【0036】
図9(a),(b)は、リニアスケールプローブ1が挿嵌された検査パネル51の状態を示す図である。リニアスケールプローブ1は、コンタクト部30側から検査パネル51の開口された固定孔65に差し込み、つば部8まで押し込み挿嵌する。次に、コンタクト部30にシステム側のハウジング部36を差し込む。
【0037】
このように検査パネル51にリニアスケールプローブ1を挿嵌するだけで容易に作製することができる。
【0038】
さらに、図9(a)に示すように、リニアスケールプローブ1のプローブケース2の一部にコの字型の切り込み部を入れておき、その切り込み部の先端部分を突出させて、挿嵌後の固定強化及び脱落防止として機能するストッパを形成してもよい。また、図9(b)に示すように、例えば、電子部品のうち、CPU68などのリード端子が多数あり、実装面積の大きい電子部品に対しては、例えば4隅に対してリニアスケールプローブ1を配置する。このような配置により、実装の有無だけではなく、その実装された姿勢例えば、基板に対して傾斜して取り付けられていないか否かを検査することができる。
【0039】
ここで図10(a),(b)には、リニアスケールプローブ1が嵌装された検査パネルの第1の例を示し説明する。
図10(a)に示すように、基板71上に実装される電子部品群72は、それぞれの電子部品で実装面積が異なるだけでなく、その高さも異なっている。例えば、コンデンサ等は比較的高さを有しているが、CPU等は低くなっている。従って、同じストローク長の可動軸のリニアスケールプローブ1を用いる場合には、検査パネル51に高さ調整用のスペーサ73を貼り付けて、実装された部品に適応させる必要がある。例えば図10(a)に示すように、厚さの異なったスペーサ73を検査パネル51に貼り付けて、プローブ配置位置に固定孔を開口して、リニアスケールプローブ1を挿嵌する。
【0040】
以上のように、平坦な検査パネル51に検査対象となる電子部品の高さに合わせてスペーサを取り付けることにより、どのような実装基板にも対応できる自由度の高い検査パネルを作製することができる。
【0041】
図11(a),(b)には、リニアスケールプローブ1が嵌装された検査パネルの第2の例を示し説明する。
図11(a)に示すように、平坦な検査パネル51に同じストローク長の可動軸3のリニアスケールプローブ1を実装位置に合わせて嵌装する。
【0042】
図11(b)に示すように、検査対象となる電子部品の高さに合わせた長さのキャップ部74を可動軸3の先端部に差し込み、接着剤などを用いて固定する。このヘッド部74は、樹脂のような軽量な材料により形成される。ヘッド部74の内部は樹脂製で中空なキャップ構造であってもよい。例えば、長尺なパイプを部品までの距離に応じた長さに切り取り、可動軸3に差し込み固定することでキャップ部74を形成してもよい。尚、このキャップ部74を取り付けたことにより、前述した図1に示した磁性体4の側面と励磁コイル11及び検出コイル12a,12bとが正対向する位置から位置ずれが発生した場合には、バネ定数を変更したスプリングコイルに交換して位置補正すればよい。
【0043】
以上説明したように、平坦な検査パネル51に平行するように挿嵌するリニアスケールプローブ1の可動軸3の先端部に、検査する部品までの距離に応じた長さのヘッド部を取り付けることにより、どのような実装基板にも対応できる自由度の高い検査パネルを作製することができる。
【0044】
図12には、リニアスケールプローブ1が嵌装された検査パネルの第3の例を示し説明する。
この第3の例においては、厚い検査パネル75を用いる。リニアスケールプローブ1ごとの検査する実装部品までの距離に応じて、検査パネル75の不要部分を切削する。不要部分を削り取った検査パネル75のプローブ配置位置に固定孔を開口して、リニアスケールプローブ1を挿嵌する。
【0045】
以上説明したように、検査パネルの削りだしより、どのような実装基板にも対応できる自由度の高い検査パネルを作製することができる。
【0046】
次に、本実施形態の基板検査システムによる基板検査について説明する。
まず、前述したように、設計図面上又は、実装した検査サンプル(実製品でもよい)の実測データを用いて、前述した第1乃至第3の例による検査パネル51を作製する。作製した検査パネル51をモータ等の駆動源により下降及び上昇の微小な移動が可能な昇降機構61に取り付ける。検査パネル51に挿嵌されたリニアスケールプローブ1のコンタクト部30にIF部52(マルチプレクサ)側のハウジングを嵌合する。測定用テーブルに予め定めている検査条件を判定部55に読み出し、判定基準として設定する。例えば、検査パネル51を作製したときの作成条件(ヘッド部から電子部品までの距離)を実装基板の製造番号やロット番号で登録しておき、入力部57で指定して読み出す。
【0047】
次に、検査を行う実装基板を検査パネル下方の検査テーブル62に設置する。検査テーブル62は、昇降機構61の昇降方向と直交する2次元方向(XY方向)に移動可能に構成されて、検査パネルに対して位置合わせを行うことができる。昇降機構により検査条件に従って、検査パネル51を実装基板に実装されている各電子部品に当接させる。
【0048】
この時の各リニアスケールプローブ1の出力電圧を検査部54で順次読み取り、判定部55により良否判定を行う。この判定結果は、制御部56により表示部58にその判定結果が表示される。また、この時の検査結果の各電子部品における詳細に検出データを表示させてもよい。
【0049】
尚、前述した検査パネルの検査方法においは、電子部品の実装面側から検査パネルを宛ててリニアスケールプローブにより検出したが、実装面側に限定されるものではなく、非実装面からリニアスケールプローブを当接させることにより、回路パターンにおける半田付け状態を検査することもできる。また、検査パネル上に均一にリニアスケールプローブを配置して、プリント基板などの板形状の検査対象物の平坦度を検査することもできる。同様に、凹凸を設けた板形状の検査対象物であっても、表面の凹凸形状を同様に検査することができる。
【0050】
以上説明したように、検査対象となるそれぞれの実装部品にリニアスケールプローブが担当するように配置された検査パネルを用いることにより、一度の検査により、実装部品の欠落や実装状態の検査が正確で且つ簡単に検査の結果を求めることができる。従来では、熟練した検査者の目視による実装の有無及び実装状態を検査して判定結果を出したため、検査者に対する負担が大きく、見落としなどの人為ミスが発生したが、これらの課題を解決することができる。つまり、判定はコンピュータ等による判定部が判断し、熟練度を要さず、また見落としなどの人為的な検査ミスを防止することができる。
【0051】
さらに、基板検査システムで用いている検査パネルは、リニアスケールプローブを挿嵌した構成であるため、新しい設計の実装基板や実装基板に設計変更があった場合にも容易に短時間で対応することができる。
【0052】
また、基板検査システムは、実用にあたっては、複数の実装基板に対して、同時又は並列的に検査できるように、複数の検査パネル51を搭載するシステムを構築する。
【0053】
図13には、図8に示した基板検査システムを複数用いて、主従関係を持たせたネットワークに適用できるホストシステムによる集中管理可能な基板検査システムの構成例を示している。ここで、図8に示した構成部位と同等のものには同じ参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
この基板検査システムは、多数のリニアスケールプローブ1が嵌装される複数の検査パネル51a〜51nと、これらのリニアスケールプローブ1に対して、選択機能を有し、一括的に又は個々に励磁用高周波電力の印加と検出信号(出力電圧)の伝搬を行う例えばマルチプレクサからなるインタフェース(IF)部52a〜52nと、リニアスケールプローブ1に印加する高周波電力を生成する電源部53a〜53nと、個々のリニアスケールプローブ1からの検出信号を受信して実装の有無、取り付け姿勢の良否を判定する検出/判定部63a〜63nと、検査パネル51a〜51n毎に制御を行うスレーブ制御部81a〜81nと、スレーブ制御部81a〜81nに対して上位に位置し、判定基準設定等のシステム全体の制御及び動作指示を行うマスタ制御部82と、通信回線により接続され外部から管理可能に設けられ、マスタ制御部82とコマンドによりデータ及び指示等を通信するホストシステム83と、マスタ制御部82及びホストシステム83にそれぞれ設けられる表示部84,86と、入力部85,87とで構成される。
【0055】
入力部85,87は、検査者による指示入力を行うためのキーボードやタッチパネル等の操作パネル等が好適する。また表示部84,86は、判定結果や入力指示等を表示するための例えば液晶表示装置により構成される。
【0056】
以上説明したように、主従関係を持たせた制御部は、LAN等のネットワークを用いたシステム構築することができ、異なる居所から複数の検査対象となる実装部品に対して、同時又は並列的に検査に対する指示を行うことができる。これは、ホストシステムを設けることにより作業現場以外の居所より、遠隔的に指示を与えたり、適宜、検査結果を得ることができ、検査状況を把握するためには非常に有用である。また、マスタ制御部により、一括的に管理ができ、効率的である。
【0057】
さらに、部品の配置が異なる検査パネルであっても、同時に又は並列的に検査を実施することができる。さらに、他の仕様の検査パネルに変更する際にも、ブロック単位で制御できるため、あるブロックで検査を実施しつつ、他のブロックでは検査パネルの仕様変更の作業を行うことができる。従って、新しい設計の実装基板や実装基板に設計変更があった場合にも容易に短時間で且つ効率的に対応することができる。
【0058】
尚、本実施形態では、マスタ制御部と各スレーブ制御部81a〜81nがシリーズに接続されたネットワークであるが、これに限定されず、周知なバス型ネットワーク、スター型ネットワーク及びリング型ネットワークのいずれにおいても実施形態を適用して、ネットワークを構築できることは勿論である。また、各スレーブ制御部81a〜81n、マスタ制御部82及びホストシステム83とは、LANだけではなく、インターネットを介して、接続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1(a)は、基板検査システムに用いるリニアスケールプローブの構成例を示す図、図1(b)は、図1(a)におけるA−Aのリニアスケールプローブの断面構成を示す図である。
【図2】リニアスケールプローブにおける磁性体と、励磁コイル及び検出コイルの位置関係と発生する電圧について説明するための図である。
【図3】可動軸の位置と振幅出力と位相出力について説明するための図である。
【図4】うず電流とスリットとの関係について説明するための図である。
【図5】スリットが設けられたリニアスケールプローブの構成例を示す図である。
【図6】連結スペーサが挟み込まれるスリットが設けられたリニアスケールプローブの構成例を示す図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、リニアスケールプローブに設けられるコンタクト部の構成例を示す図である。
【図8】実施形態として基板検査システムのブロック構成を示す図である。
【図9】図9(a),(b)は、リニアスケールプローブが挿嵌された検査パネルを示す図である。
【図10】図10(a),(b)は、リニアスケールプローブが嵌装された検査パネルの第1の例を示す図である。
【図11】リニアスケールプローブが嵌装された検査パネルの第2の例を示す図である。
【図12】リニアスケールプローブが嵌装された検査パネルの第2の例を示す図である。
【図13】複数の検査パネルによる主従関係を有する基板検査システムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1…リニアスケールプローブ、2…プローブケース、3…可動軸、4…磁性体、5…スプリングガイド、6…スプリング、7…ヘッド部、8…つば部、9…固定ブッシュ、10…固定部、11…励磁コイル、12a,12b…検出コイル、30…コンタクト部、51,51a〜51n…検査パネル、52,52a〜52n…IF部(マルチプレクサ)、53,53a〜53n…電源部、54…検査部、55…判定部、56…制御部、57,85,87…入力部、58,84,86…表示部、59…音声部、61…昇降機構、62…検査テーブル、63a〜63n…検出/判定部、81a〜81n…スレーブ制御部、83…ホストシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内を移動可能で一端が外部に延出し、他端に磁性体が設けられた可動軸と、前記磁性体と対向する位置に励磁用電力が印加され電界を発する一次コイルと、前記電界中の前記磁性体の移動により発生する誘導電流を取り込む2分割された二次コイルと、を備えるリニアスケールプローブが、前記可動軸が検査対象の基板に実装された各検査対象物に当接するように、複数配置される検査パネルと、
前記検査パネルを昇降移動させて、前記検査対象物が実装された基板に宛がい、前記可動軸の先端に前記検査対象物を当接させる昇降機構と、
前記リニアスケールプローブの前記一次コイルに励磁用電力を印加する電源部と、
前記検査対象物に当接した前記可動軸が移動した際に、前記リニアスケールプローブの前記二次コイルから前記誘導電流による検出信号を検出して判定するための電圧信号を生成する検出部と、
前記検出部が生成した電圧信号から前記検査対象物の実装の有無及び実装される姿勢を判定する判定部と、
前記昇降機構、前記電源部、前記検出部及び前記判定部の駆動を制御する制御部と、
前記制御部の指示により前記判定部による判定結果を告知する告知部と、
前記制御部に任意の指示を入力する入力部と、
を具備することを特徴とする基板検査システム。
【請求項2】
前記基板検査システムの前記検査パネルにおいて、
前記検査対象の基板に実装された形状が異なる複数の前記検査対象物に対して、前記可動軸の先端部が当接するまでの距離が均一となるように、リニアスケールプローブが嵌装されるようにスペーサを設けたことを特徴とする請求項1に記載の基板検査システム。
【請求項3】
前記基板検査システムの前記検査パネルにおいて、
前記検査対象の基板に実装された形状が異なる複数の前記検査対象物に対して、前記可動軸の先端部が当接するまでの距離が均一となるように、前記検査パネルの厚さに対して高低差となる凹凸部を形成することを特徴とする請求項1に記載の基板検査システム。
【請求項4】
前記基板検査システムの前記検査パネルにおいて、
前記検査対象の基板に実装された形状が異なる複数の前記検査対象物に対して、前記可動軸の先端部が当接するまでの距離が均一となるように、前記可動軸の長さを取ることを特徴とする請求項1に記載の基板検査システム。
【請求項5】
前記基板検査システムの前記検査パネルにおいて、
前記検査対象の基板に実装された形状が異なる複数の前記検査対象物に対して、前記可動軸の先端部が当接するまでの距離が均一となるように、前記可動軸の先端部にキャップ部を取り付けることを特徴とする請求項1に記載の基板検査システム。
【請求項6】
筐体内を移動可能で一端が外部に延出し、他端に磁性体が設けられた可動軸と、前記磁性体と対向する位置に励磁用電力が印加され電界を発する一次コイルと、前記電界中の前記磁性体の移動により発生する誘導電流を取り込む2分割された二次コイルと、を備えるリニアスケールプローブが、前記可動軸が検査対象の基板に実装された各検査対象物に当接するように、複数配置される検査パネルと、
前記検査パネルを昇降移動させて、前記検査対象物が実装された基板に宛がい、前記可動軸の先端に前記検査対象物を当接させる昇降機構と、
前記リニアスケールプローブの前記一次コイルに励磁用電力を印加する電源部と、
前記検査対象物に当接した前記可動軸が移動した際に、前記リニアスケールプローブの前記二次コイルから前記誘導電流による検出信号により検出して判定するための電圧信号を生成する検出部と、
前記検出部が生成した電圧信号から前記検査対象物の実装の有無及び実装される姿勢を判定する判定部と、
前記昇降機構、前記電源部、前記検出部及び前記判定部の駆動を制御するスレーブ制御部と、
前記制御部の指示により前記判定部による判定結果を告知する告知部と、
前記制御部に任意の指示を入力する入力部と、
前記スレーブ制御部に対して上位に位置し、システム全体の制御及び動作指示を行うマスタ制御部と、
通信回線を通じて接続されて、外部から管理可能に設けられ、前記マスタ制御部とコマンドによりデータ及び指示を通信するホストシステムと、
を具備することを特徴とする基板検査システム。
【請求項1】
筐体内を移動可能で一端が外部に延出し、他端に磁性体が設けられた可動軸と、前記磁性体と対向する位置に励磁用電力が印加され電界を発する一次コイルと、前記電界中の前記磁性体の移動により発生する誘導電流を取り込む2分割された二次コイルと、を備えるリニアスケールプローブが、前記可動軸が検査対象の基板に実装された各検査対象物に当接するように、複数配置される検査パネルと、
前記検査パネルを昇降移動させて、前記検査対象物が実装された基板に宛がい、前記可動軸の先端に前記検査対象物を当接させる昇降機構と、
前記リニアスケールプローブの前記一次コイルに励磁用電力を印加する電源部と、
前記検査対象物に当接した前記可動軸が移動した際に、前記リニアスケールプローブの前記二次コイルから前記誘導電流による検出信号を検出して判定するための電圧信号を生成する検出部と、
前記検出部が生成した電圧信号から前記検査対象物の実装の有無及び実装される姿勢を判定する判定部と、
前記昇降機構、前記電源部、前記検出部及び前記判定部の駆動を制御する制御部と、
前記制御部の指示により前記判定部による判定結果を告知する告知部と、
前記制御部に任意の指示を入力する入力部と、
を具備することを特徴とする基板検査システム。
【請求項2】
前記基板検査システムの前記検査パネルにおいて、
前記検査対象の基板に実装された形状が異なる複数の前記検査対象物に対して、前記可動軸の先端部が当接するまでの距離が均一となるように、リニアスケールプローブが嵌装されるようにスペーサを設けたことを特徴とする請求項1に記載の基板検査システム。
【請求項3】
前記基板検査システムの前記検査パネルにおいて、
前記検査対象の基板に実装された形状が異なる複数の前記検査対象物に対して、前記可動軸の先端部が当接するまでの距離が均一となるように、前記検査パネルの厚さに対して高低差となる凹凸部を形成することを特徴とする請求項1に記載の基板検査システム。
【請求項4】
前記基板検査システムの前記検査パネルにおいて、
前記検査対象の基板に実装された形状が異なる複数の前記検査対象物に対して、前記可動軸の先端部が当接するまでの距離が均一となるように、前記可動軸の長さを取ることを特徴とする請求項1に記載の基板検査システム。
【請求項5】
前記基板検査システムの前記検査パネルにおいて、
前記検査対象の基板に実装された形状が異なる複数の前記検査対象物に対して、前記可動軸の先端部が当接するまでの距離が均一となるように、前記可動軸の先端部にキャップ部を取り付けることを特徴とする請求項1に記載の基板検査システム。
【請求項6】
筐体内を移動可能で一端が外部に延出し、他端に磁性体が設けられた可動軸と、前記磁性体と対向する位置に励磁用電力が印加され電界を発する一次コイルと、前記電界中の前記磁性体の移動により発生する誘導電流を取り込む2分割された二次コイルと、を備えるリニアスケールプローブが、前記可動軸が検査対象の基板に実装された各検査対象物に当接するように、複数配置される検査パネルと、
前記検査パネルを昇降移動させて、前記検査対象物が実装された基板に宛がい、前記可動軸の先端に前記検査対象物を当接させる昇降機構と、
前記リニアスケールプローブの前記一次コイルに励磁用電力を印加する電源部と、
前記検査対象物に当接した前記可動軸が移動した際に、前記リニアスケールプローブの前記二次コイルから前記誘導電流による検出信号により検出して判定するための電圧信号を生成する検出部と、
前記検出部が生成した電圧信号から前記検査対象物の実装の有無及び実装される姿勢を判定する判定部と、
前記昇降機構、前記電源部、前記検出部及び前記判定部の駆動を制御するスレーブ制御部と、
前記制御部の指示により前記判定部による判定結果を告知する告知部と、
前記制御部に任意の指示を入力する入力部と、
前記スレーブ制御部に対して上位に位置し、システム全体の制御及び動作指示を行うマスタ制御部と、
通信回線を通じて接続されて、外部から管理可能に設けられ、前記マスタ制御部とコマンドによりデータ及び指示を通信するホストシステムと、
を具備することを特徴とする基板検査システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−177247(P2008−177247A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7479(P2007−7479)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(594157142)オー・エイチ・ティー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(594157142)オー・エイチ・ティー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
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