説明

基板間接続コネクタ構造

【課題】低背化を達成しつつ、合体した回路基板の脱着を容易にするとともに、一旦合体した回路基板が自然状態で分離するのをより確実に阻止できる基板間接続コネクタ構造を得る。
【解決手段】十字状スリット13(メス型端子部)を設けた第1の回路基板10の反対面11b側に、係止部32bを有したスプリング突起部32を突設した絶縁性組立体30を設ける。絶縁性組付体30に、第1の回路基板10を挟んで柱状バンプ22(オス型端子部)を設けた第2の回路基板20を配置する。第2の回路基板20に、スプリング突起部32を受容する係止穴24を形成する。そして、絶縁性組立体30、第1の回路基板10および第2の回路基板20を合体した状態で、係止部32bが係止穴24の周縁部に係止されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの回路基板どうしを脱着可能に合体させる基板間接続コネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパソコンなどの電子機器は小型化や高性能化への要求が高まってきており、その電子機器に構築される回路は、回路基板どうしを合体させる基板間接続コネクタの低背化(薄型化)を可能とすることにより、小型化を達成することができる。
【0003】
そのような基板間接続コネクタの低背化の要求に応じて、従来では一方の回路基板に形成されるメス型端子部を、絶縁フィルムに形成した貫通孔と、この貫通孔に連通してパッド部に形成した小孔とで形成する一方、他方の回路基板に形成されたオス型端子部を、上記メス型端子部の小孔に挿入する導電性突起で形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4059522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の基板間接続コネクタ構造では、メス型端子部の小孔とオス型端子部の導電性突起とによって2つの回路基板の合体が行われるため、回路基板の脱着を反復して行った場合に、小孔が形成されたパッド部に弾性劣化が生じてしまう。このように弾性劣化が生じると、導電性突起の保持性が悪化して合体した2つの回路基板の接続強度が低下されるとともに、メス型とオス型の両端子部間の導通不良を起こしてしまう恐れがある。
【0006】
また、上記特許文献1には、オス型端子部を設けた回路基板に、上記導電性突起とは別に、柱状ガイドや穴付き柱状ガイドを突設する一方、メス型端子部を設けた回路基板にそれらガイド突起を受け入れるメス型のガイドが形成される旨が開示されている。
【0007】
このようにガイド突起をメス型のガイドに挿入することにより、2つの回路基板の固定位置を安定できるのであるが、この場合、メス型のガイドは、回路基板側に形成された開口部であると見なすことができる。
【0008】
しかし、開口部(メス型のガイド)が形成される回路基板は可撓性を有するといえども、ガイド突起をガイドするためにある程度の剛性を備えることが要求される。また、ガイド突起を開口部に位置決めしつつ嵌合するためには、それら両者の嵌合精度を高くする必要がある。このため、2つの回路基板を合体させる際に、ガイド突起の開口部への挿入がきつくなって接続し辛くなるという不具合がある。また、特許文献1に示された柱状ガイドや穴付き柱状ガイドのように、それらガイド突起の外周が全長に亘って単に同径に形成されている場合、開口部に挿入したガイド突起が外部からの振動入力などによって抜け易くなり、合体させた回路基板が自然状態で分離してしまう恐れがあった。
【0009】
そこで、本発明は、低背化を達成しつつ、回路基板の脱着を容易にするとともに、一旦合体した回路基板が自然状態で分離するのをより確実に阻止できる基板間接続コネクタ構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、本発明の基板間接続コネクタ構造にあっては、メス型端子部およびオス型端子部の一方が形成された第1の回路基板と、メス型端子部およびオス型端子部の他方が形成された第2の回路基板とを備え、前記メス型端子部と前記オス型端子部とを接触させつつ、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを合体させる基板間接続コネクタ構造において、前記第1の回路基板の前記端子部の形成面とは反対面側に配置され、前記第1の回路基板に対向する側に、径方向の弾発力をもって縮径自在となり先端部に係止部を有するスプリング突起部が突設された絶縁性組立体を設けるとともに、前記第2の回路基板に前記スプリング突起部を受容する係止穴を設け、かつ、前記第2の回路基板を前記絶縁性組立体に対して第1の回路基板を挟むように配置し、前記絶縁性組立体、前記第1の回路基板および第2の回路基板を合体した状態で、前記係止部が前記係止穴の周縁部に係止されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基板間接続コネクタ構造によれば、第1の回路基板と第2の回路基板との合体は、スプリング突起部を突設した絶縁性組立体を介して行われる。すなわち、絶縁性組付体と第2の回路基板との間に第1の回路基板を挟んだ状態で、スプリング突起部を第2の回路基板の係止穴に挿入しつつ第2の回路基板を全体的に絶縁性組立体に押し付ける。すると、第1の回路基板と第2の回路基板のメス型端子部とオス型端子部とが互いに接触して電気的に導通されるとともに、スプリング突起部の係止部が係止穴の周縁部に係止される。
【0012】
したがって、絶縁性組立体はスプリング突起部を突設するに十分な強度を備えておればよく、絶縁性組立体の形成材料を選定することにより薄肉化することができる。したがって、第1の回路基板、第2の回路基板および絶縁性組立体の合体で構成される基板間接続コネクタの低背化を達成することができる。
【0013】
また、スプリング突起部は、径方向の弾発力をもって縮径自在となっているため、スプリング突起部を縮径させることにより係止穴から抜き出すことができる。これにより、第1の回路基板と第2の回路基板の脱着を容易に行うことができる。
【0014】
さらに、第1の回路基板と第2の回路基板との合体状態は、スプリング突起部の先端部に設けた係止部が係止穴の周縁部に係止されて保持されるため、一旦合体した回路基板が自然状態で分離するのをより確実に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる基板間接続コネクタ構造に用いられる第1の回路基板を示した図であり、(a)は(b)の幅方向(左右方向)に沿う側面図、(b)は要部の底面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる基板間接続コネクタ構造に用いられる第2の回路基板を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の幅方向(左右方向)に沿う側面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる基板間接続コネクタ構造に用いられる絶縁性組立体を示し、(a)は(b)の幅方向(左右方向)に沿う側面図、(b)は要部の底面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる基板間接続コネクタ構造の組付け状態を示す正面図である。
【図5】図5は、図1(b)中I部の拡大図である。
【図6】図6は、図5のA−A断面図である。
【図7】図7は、図2(a)のB−B断面図である。
【図8】図8は、図3に示すスプリング突起部の変形例を示し、(a)は2分岐のスプリング突起の横断面図、(b)は3分岐のスプリング突起の横断面図である。
【図9】図9は、図8(a)に示すスプリング突起部の変形例を示し、(a)は複数のスプリング突起の主弾発方向を直角に交差させた模式的な平面図、(b)は複数のスプリング突起の主弾発方向を斜めに交差させた模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1から図7は本発明にかかる基板間接続コネクタ構造の一実施形態を示しており、図1に示す第1の回路基板10と、図2に示す第2の回路基板20とを、図3に示す絶縁性組立体30を用いて合体させることにより、図4に示す基板間接続コネクタ1が構成されるようになっている。
【0018】
第1の回路基板10は、図1(a)、(b)に示すように、ポリイミド樹脂やガラエポ(ガラスエポキシ)などの絶縁フィルムからなる第1絶縁基板11の一側面(同図(a)中下面)11aに、複数条の導体回路12をパターニングしてFPC基板として形成される。導体回路12の端末には、メス型端子部としての十字状スリット13がそれぞれ設けられている。
【0019】
十字状スリット13は、図5に示すように、導体回路12の端末に設けられた幅広の十字状パッド部12aの中心部に同心状に形成されている。このとき、十字状スリット13は、図6に示すように、十字状パッド部12aおよび第1絶縁基板11を貫通している。
【0020】
第1絶縁基板11は、本実施形態では図1(b)中上下方向に延在する長尺となっており、そして、複数の十字状スリット13は、第1絶縁基板11の長さ方向(図中上下方向)と幅方向(図中左右方向)に、それぞれ複数行(本実施形態では4行)と複数列(本実施形態では6列)がマトリックス状に整然と配列されている。なお、以下に述べる第2の回路基板20および絶縁性組立体30にあっても、第1絶縁基板11の長さ方向に沿った方向を長さ方向、幅方向に沿った方向を幅方向として述べるものとする。
【0021】
第2の回路基板20は、図2(a)、(b)に示すように、四隅を面取りした矩形状の第2絶縁基板21を備え、この第2絶縁基板21の一側面(同図(b)中上面)21aにオス型端子部としての柱状バンプ22を突設して形成される。
【0022】
第2絶縁基板21は、第1絶縁基板11の幅W1(図1(b)参照)よりも大きな幅W2(図2(a)参照)をもって形成され、W1<W2となっている。このとき、第2絶縁基板21の幅W2は、後述する係止穴24を第2絶縁基板21の幅方向両端部に設ける寸法分が第1絶縁基板11よりも幅広となっている。すなわち、図2(a)に示すように、係止穴24の幅方向の形成スペース寸法をSとすると、W2>W1+2Sとなっている。
【0023】
柱状バンプ22は、第1の回路基板10の十字状スリット13に、この十字状スリット13の周縁部を第1絶縁基板11とともに変形させつつ挿入(圧入)される径をもって円柱状に形成されている。このとき、柱状バンプ22は、十字状スリット13を周方向で等しく押し開くには断面円形となった円柱状が好ましいが、特に、その断面形状は円形に限ることなく楕円や多角形などの非円形であってもよい。
【0024】
また、柱状バンプ22は、金属や導電性樹脂などの導電材料によって形成され、その柱状バンプ22の基部22aは、図7に示すように、第2絶縁基板21に形成された挿通孔23に貫通して植設されている。第2絶縁基板21の一側面21aから突出した柱状バンプ22は、第2絶縁基板21に植設された基部22aとオフセットしており、それら柱状バンプ22と基部22aとは、第2絶縁基板21の一側面21aに沿って配置される亜鈴状の連結板22bによって連結される。
【0025】
柱状バンプ22の基部22aは、第2絶縁基板21の他側面21bから若干突出され、その突出端部に鍔状の係止部22cが形成される。そして、この係止部22cによって基部22aおよび柱状バンプ22が第2絶縁基板21から抜止めされるとともに、その係止部22cの露出した先端面が図示省略した他の回路基板や電子部品との接点となる。
【0026】
もちろん、柱状バンプ22は、マトリックス状に配列した十字状スリット13にそれぞれ対応する位置に設けられ、それら複数の柱状バンプ22もマトリックス状に配列される。
【0027】
絶縁性組立体30は、図3(a)、(b)に示すように、絶縁材料たとえば合成樹脂によって全体が一体成形され、第1の回路基板10の端子部(十字状スリット13)の形成面とは反対面側、つまり、第1絶縁基板11の他側面11b側(図1(a)中上方)に配置される。
【0028】
絶縁性組立体30は、第2絶縁基板21とほぼ同じ外側形状となる矩形状に形成されたベース板31を備え、このベース板31の一側面31aの幅方向両端部にスプリング突起部32およびパイロット柱33がそれぞれ突設されている。
【0029】
一方、第1絶縁基板11の幅方向両端部には、パイロット柱33に対応した位置にそのパイロット柱33を挿通するパイロット穴14が形成される。また、第2絶縁基板21の幅方向両端部には、スプリング突起部32とパイロット柱33にそれぞれ対応した位置に、スプリング突起部32を挿通する係止穴24と、パイロット柱33を挿通するパイロット穴25とが形成される。この場合、第1絶縁基板11のパイロット穴14と第2絶縁基板21のパイロット穴25とは同径かつ対面状態で同位置に形成されるようになっている。
【0030】
スプリング突起部32は、ベース板31の幅方向両側端部に位置し、この幅方向両端部で長さ方向に対を成して配置されることにより、合計4本のスプリング突起部32が設けられている。また、パイロット柱33は、スプリング突起部32よりも幅方向の内側に位置して、ベース板31の1組の対角部分に対を成して合計2本が設けられている。
【0031】
スプリング突起部32は、全体としてほぼ円柱状に形成されるとともに、中心軸Cを中心として十字状に4分岐され、それぞれの分岐片32a、32a…が径方向に弾発力を有するように分岐されている。これにより、スプリング突起部32は、全体的に径方向の弾発力をもって縮径自在となっている。
【0032】
なお、スプリング突起部32の分岐数は4分岐に限ることなく、たとえば、図8(a)に示すように2分岐であってもよく、また、同図(b)に示すように3分岐であってもよく、さらには、図示は省略したが5分岐以上であってもよい。
【0033】
また、スプリング突起部32の先端部には、上述した係止穴24の外側(他側面21b)周縁部に係止される係止部32bが設けられている。この係止部32bの外側面は、先端に行くに従って縮径されるテーパ状に形成され、その先端面形状は係止穴24に包含される形状、つまり係止穴24よりも小径となっている。これにより、スプリング突起部32を係止穴24に挿入する際に、係止部32bの先端部がガイドとなってスムーズに挿入される。また、係止穴24は、自然状態にあるスプリング突起部32の一般部分の外径よりも僅かに小さく形成され、スプリング突起部32が挿入された状態で一般部分の外周が係止穴24の内周に圧接されるようになっている。
【0034】
パイロット柱33は、全体として円柱状に形成されており、パイロット柱33の先端部分には先端に行くに従って縮径されるテーパ部33aが形成されている。このテーパ部33aの先端面は、第1絶縁基板11のパイロット穴14および第2絶縁基板21のパイロット穴25よりも小径となっている。また、それぞれのパイロット穴14、24は、パイロット柱33の外径と同径もしくは僅かに大径に形成され、パイロット柱33が挿入された状態で、パイロット柱33の外周がパイロット穴14、24の内周に密接もしくはほぼ密接されるようになっている。ところで、パイロット柱33は、図3(a)に示すように、スプリング突起部32に対して係止部32bのほぼ軸方向長さ分だけ短く形成され、パイロット柱33が第2絶縁基板21の他側面21bから突出されないようになっている。
【0035】
さらに、絶縁性組立体30のベース板31は、組付状態では第1の回路基板10の第1絶縁基板11に密着されるのであるが、このベース板31には、それぞれの十字状スリット13に対応した位置に所定の径をもって複数の透孔34が形成されている。もちろん、これら透孔34もマトリックス状に配置され、かつ、それら透孔34はそれぞれの柱状バンプ22の位置にも対応されている。
【0036】
そして、第1の回路基板10と第2の回路基板20とを合体させるには、図4に示すように、絶縁性組立体30と第2の回路基板20との間に第1の回路基板10を位置させる。そして、絶縁性組立体30のスプリング突起部32を第2の回路基板20の係止穴24に弾発力をもって挿入するとともに、絶縁性組立体30のパイロット柱33を第1の回路基板10および第2の回路基板20のパイロット穴14、25に挿入する。
【0037】
このとき、第2の回路基板20を絶縁性組立体30のベース板31に押し付けることにより、スプリング突起部32およびパイロット柱33が係止穴24およびパイロット穴14、25に挿入されるとともに、第1の回路基板10と第2の回路基板20とが近接方向に圧接される。これにより、第2の回路基板20の柱状バンプ22が第1の回路基板10の十字状スリット13に挿入されて、それぞれの端子部が電気的に導通される。
【0038】
本実施形態では、上述したように第1の回路基板10と第2の回路基板20とを絶縁性組立体30を介して合体させる際、まず、第1絶縁基板11の他側面11b側(図1(a)中上方)に絶縁性組立体30を配置して、パイロット柱33を第1の回路基板10のパイロット穴14に挿入しておく。これにより、第1の回路基板10と絶縁性組立体30とが予備組付けされる。
【0039】
次に、予備組付けされた第1の回路基板10と絶縁性組立体30に対して、第1絶縁基板11の一側面11a側(図1(a)中下方)に第2の回路基板20を配置する。そして、第2絶縁基板21の係止穴24を絶縁性組立体30のスプリング突起部32に位置合せするとともに、パイロット穴25を、第1絶縁基板11のパイロット穴14から突出しているパイロット柱33に位置合せする。この状態で第2の回路基板20を第1の回路基板10側に押し付けつつ、係止穴24をスプリング突起部32に挿入するとともに、パイロット穴25をパイロット柱33に挿入する。
【0040】
これにより、柱状バンプ22が十字状スリット13との嵌合位置に案内され、第2絶縁基板21の更なる押し付けで柱状バンプ22が十字状スリット13に挿入される。また、これと同時に第2の回路基板20の係止穴24の外側周縁部に、スプリング突起部32の係止部32bが係止される。この状態で、第1の回路基板10、第2の回路基板20および絶縁性組立体30の三者は、図4に示すように、一体に合体されて基板間接続コネクタ1が構成される。
【0041】
このとき、第1絶縁基板11は、ベース板31と第2絶縁基板21との間に密着して挟持されている。また、このように絶縁基板11、21およびベース板31の三者が密着した状態で、係止部32bが係止穴24の外側周縁部に係止されるようにスプリング突起部32の長さが予め設定されている。
【0042】
以上の構成により、本実施形態の基板間接続コネクタ構造によれば、絶縁性組立体30と第2の回路基板20との間、つまりベース板31と第2絶縁基板21との間に第1の回路基板10の第1絶縁基板11を挟んだ状態で、第2の回路基板20を全体的に絶縁性組立体30に押し付けつつ、絶縁性組立体30のスプリング突起部32を第2の回路基板20の係止穴24に挿入する。
【0043】
すると、第1の回路基板10の十字状スリット13に第2の回路基板20の柱状バンプ22が挿入されて、それら両者が電気的に導通される。また、これと同時に、係止穴24に挿入したスプリング突起部32の係止部32bが係止穴24の外側周縁部に係止される。これにより、絶縁性組立体30と第2の回路基板10との間に第1の回路基板10を挟持した状態でそれぞれの分離が阻止され、ひいては十字状スリット13と柱状バンプ22との嵌合状態、つまり電気的な導通状態を確保することができる。
【0044】
したがって、絶縁性組立体30はスプリング突起部32やパイロット柱33を突設するに十分な強度を備えておればよく、絶縁性組立体30の形成材料の選定によってベース板31を薄肉化することができる。これにより、第1の回路基板10、第2の回路基板20および絶縁性組立体30の合体で構成される基板間接続コネクタ1の低背化を達成することができる。
【0045】
また、スプリング突起部32が縮径自在であるため、スプリング突起部32を縮径させることにより係止穴24から容易に抜き出すことができる。これにより、絶縁性組立体30と第2の回路基板20との分離が可能となり、ひいては合体した第1の回路基板10と第2の回路基板20との人的な脱着が容易となり、回路基板の組み換えが可能となる。このとき、本実施形態では第1の回路基板10と第2の回路基板20との合体保持は、十字状スリット13と柱状バンプ22との嵌合部分で行われるものでは無いため、第1の回路基板10と第2の回路基板20との脱着時にも端子部の導通不良の発生を抑制できる。
【0046】
さらに、第1の回路基板10と第2の回路基板20との合体状態では、スプリング突起部32の先端部に設けた係止部32bが係止穴24の外側周縁部に係止されるため、一旦合体した第1の回路基板10と第2の回路基板20とが自然状態で分離するのをより確実に阻止できる。
【0047】
また、本実施形態では、スプリング突起部32が4分岐されて径方向の弾発力を有しているため、スプリング突起部32が係止穴24に挿入された状態では、絶縁性組立体30と第2の回路基板20との微妙な相対位置を矯正して、十字状スリット13と柱状バンプ22との嵌合状態を適正に保持できる。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、絶縁性組立体30のパイロット柱33は、第1絶縁基板11および第2絶縁基板21にそれぞれ形成されたパイロット穴14、25に密接もしくはほぼ密接して挿入される。これにより、絶縁性組付体30に第1の回路基板10および第2の回路基板20を合体させる際に、それらの組付け位置をパイロット柱33およびパイロット穴14、25を介して精度良く案内することができる。したがって、十字状スリット13と柱状バンプ22との位置合せの精度をより高めることができるとともに、第1の回路基板10、第2の回路基板20および絶縁性組付体30の三者の合体を迅速かつ正確に行うことができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、絶縁性組立体30のベース板31には第1の回路基板10の第1絶縁基板11が密着されるが、このベース板31には十字状スリット13に対応した位置に透孔34が形成されている。これにより、第2絶縁基板21を第1絶縁基板11側に押し付けて柱状バンプ22を十字状スリット13に圧入する際に、FPC基板として形成された第1絶縁基板11が透孔34部分で撓み易くなるため、柱状バンプ22の挿入をよりスムーズに行うことができる。
【0050】
ところで、本実施形態では、図3(b)に示すように、4つの分岐片32aに分岐したスプリング突起部32は、それぞれの分岐幅δ1、δ2を等しくして周方向で等しい弾発力が発揮されるようにしてある。しかし、分岐幅δ1、δ2を幅方向(図中左右方向)と長さ方向(図中上下方向)で異ならせることにより、スプリング突起部32の径方向の弾発力を主に支配する主弾発方向Mを決定することができる。主弾発方向Mとは弾発力(ばね定数)が大きくなる方向である。
【0051】
この場合、たとえば、幅方向の分岐幅δ1を長さ方向の分岐幅δ2よりも幅狭に形成しておくことにより、図3(b)中、X1で示すスプリング突起部32の主弾発方向Mは幅方向とすることができる。
【0052】
そして、このようにして同図中X1、X2、X3、X4で示す4本のスプリング突起部32の主弾発方向Mを決定する際、それぞれのスプリング突起部32の主弾発方向Mが相互に交差するように配置されることが好ましい。
【0053】
すなわち、X1で示すスプリング突起部32の主弾発方向Mが上述したように幅方向である場合、そのX1で示すスプリング突起部32に長さ方向で対向したX2で示すスプリング突起部32の主弾発方向Mは長さ方向とする。また、X1で示すスプリング突起部32に幅方向で対向したX3で示すスプリング突起部32の主弾発方向Mも長さ方向とする。さらに、そのX3で示すスプリング突起部32に長さ方向で対向したX4で示すスプリング突起部32の主弾発方向Mは幅方向とする。
【0054】
このように、スプリング突起部32が複数本設けられた場合に、それぞれのスプリング突起部32の主弾発方向Mが相互に交差されることにより、複数のスプリング突起部32を係止穴24に挿入した際に、第2の回路基板20と絶縁性組立体30との位置合せを複数方向の弾発力で決定できる。これにより、絶縁性組立体30に対する第2の回路基板20の位置精度をより高めることができる。
【0055】
図9(a)、(b)は、スプリング突起部32Aを2分岐した場合の主弾発方向Mを示し、同図(a)は対向するスプリング突起部32Aの主弾発方向Mが互いに直交された場合を示し、同図(b)は対向するスプリング突起部32Aの主弾発方向Mが所定角度をもって交差された場合を示す。これらの場合にあっても位置合せの精度をより高めるという同様の機能を発揮できる。もちろん、スプリング突起部32が3分岐または5分岐以上である場合にも、個々に主弾発方向Mを設定してそれぞれを相互に交差させておくことにより同様の機能を発揮できる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、メス型端子部およびオス型端子部は十字状スリット13および柱状バンプ22に限ることなく、互いに嵌合により電気的に導通される端子部構造であればよい。
【0057】
また、メス型端子部(十字状スリット13)を第1の回路基板10に設け、オス型端子部(柱状バンプ22)を第2の回路基板20に設けたが、それらを逆に設けてあってもよい。
【0058】
さらに、メス型端子部およびオス型端子部を第1の回路基板10および第2の回路基板20の中央部に有効に配置するため、スプリング突起部32およびパイロット柱33を幅方向両端部に形成したが、それらスプリング突起部32およびパイロット柱33の形成位置はこれに限ることは無く、各端子部との兼ね合いで任意な位置に設けることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 基板間接続コネクタ
10 第1の回路基板
13 十字状スリット(メス型端子部)
14 パイロット穴
20 第2の回路基板
22 柱状バンプ(オス型端子部)
24 係止穴
25 パイロット穴
30 絶縁性組立体
32 スプリング突起部
32a 分岐片
32b 係止部
33 パイロット柱
34 透孔
M スプリング突起部の主弾発方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メス型端子部およびオス型端子部の一方が形成された第1の回路基板と、メス型端子部およびオス型端子部の他方が形成された第2の回路基板とを備え、前記メス型端子部と前記オス型端子部とを接触させつつ、前記第1の回路基板と前記第2の回路基板とを合体させる基板間接続コネクタ構造において、
前記第1の回路基板の前記端子部の形成面とは反対面側に配置され、前記第1の回路基板に対向する側に、径方向の弾発力をもって縮径自在となり先端部に係止部を有するスプリング突起部が突設された絶縁性組立体を設けるとともに、
前記第2の回路基板に前記スプリング突起部を受容する係止穴を設け、かつ、前記第2の回路基板を前記絶縁性組立体に対して第1の回路基板を挟むように配置し、
前記絶縁性組立体、前記第1の回路基板および第2の回路基板を合体した状態で、前記係止部が前記係止穴の周縁部に係止されるようにしたことを特徴とする基板間接続コネクタ構造。
【請求項2】
前記絶縁性組立体には、前記スプリング突起部と同方向に突設されるパイロット柱が設けられており、
前記第1の回路基板および第2の回路基板には、前記パイロット柱を密接もしくはほぼ密接して受容するパイロット穴がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基板間接続コネクタ構造。
【請求項3】
前記絶縁性組立体を、前記第1の回路基板と合体させた状態で当該第1の回路基板に密着させるようにするとともに、前記絶縁性組立体の前記メス型端子部およびオス型端子部に対応した位置に透孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板間接続コネクタ構造。
【請求項4】
前記スプリング突起部が、前記絶縁性組立体に複数設けられるとともに、各スプリング突起部は、分岐片が径方向に弾発力を有するように周方向に少なくとも2分岐以上に分岐され、かつ
各スプリング突起部は、径方向の弾発力を主に支配する主弾発方向が相互に交差するように配置されていることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の基板間接続コネクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59507(P2012−59507A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201068(P2010−201068)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】