説明

基準尺を挟持して固定するための装置

位置測定装置の基準尺(2)は、挟持部材(1)を用いて支持体(3)上に固定されている。挟持部材(1)は、第一の挟持力(F1)で基準尺(2)を取付面(31)上に押し付ける第一のスプリングアーム部(11)を有する。挟持部材(1)は、取付面(31)に対して垂直な方向に延びるストッパ面(32)上に第二の挟持力(F2)で基準尺(2)を押し付ける第二のスプリングアーム部(12)を有する。挟持部材(1)を支持体(3)上に固定することによって、第一の挟持力(F1)と第二の挟持力(F2)が一緒に生み出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく基準尺を挟持して固定するための装置に関する。
【0002】
更に、本発明は、請求項6の特徴に基づく基準尺が支持体の取付面上に挟持して固定されている機器に関する。
【背景技術】
【0003】
そのように挟持することは、基準尺を取付面上に固定するための広く普及した形態である。
【0004】
そのような挟持のために、スプリングクリップの形の付勢力を加える挟持部材が使用されており、その部材は、取付面に螺子止めされており、それによって基準尺に挟持力を加えている。そのような装置は、特許文献1により周知である。
【0005】
本発明が出発点とする、基準尺を挟持して固定するための別の装置が、特許文献2に記載されている。そこでも、基準尺を取付面上に押し付ける、スプリングクリップの形の挟持部材が使用されている。特許文献2は、一方では基準尺を取付面上に押し付けるとともに、他方ではそれに対して垂直な方向にも挟み込む工夫が既に行われていることを開示している。特許文献2の図5と図7〜11は、そのための挟持部材を図示しており、それらの部材は、それぞれ第一の方向に対して基準尺を取付面上に押し付けるスプリング部材を有するとともに、それぞれ第一のスプリング部材に対して垂直な方向に付勢するように構成された、第二の方向に対する挟持力を基準尺に加える別のスプリング部材を有する。しかし、その場合の問題は、そのような第二の方向に対して挟持力を加える、或いは生じさせることである。特許文献2の図9と10に図示されている通り、そのための組立装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許公開第3008384号明細書
【特許文献2】国際特許公開第2006/133753号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、簡単かつ再現可能な形で基準尺を固定することができる装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、請求項1の特徴を有する装置によって解決される。
【0009】
更に、本課題は、請求項6の特徴を有する機器によって解決される。
【0010】
本発明に基づき構成された装置の利点は、互いに垂直な二つの方向に対して基準尺を支持体上に挟持することが、挟持部材を支持体上に簡単に固定することによって実現されることである。挟持部材を支持体上に螺子止めすることによって、第一のスプリング部材によって、第一の挟持力を基準尺上に生じさせ、第二のスプリング部材によって、第一の挟持力に対して垂直な方向に作用する第二の挟持力を基準尺上に生じさせている。これらの二つの挟持力は、挟持部材の実現形態によって、再現可能な形で生み出されている。
【0011】
本発明の有利な実施構成は、従属請求項に記載されている。
【0012】
図面に基づき、本発明の実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に基づき構成された挟持部材の斜視図
【図2】図1の挟持部材を基準尺に取り付けた状態の図
【図3】挟持部材の第二の取付状態の図
【図4】挟持部材の第三の取付状態の図
【図5】挟持部材が基準尺を挟持した最終的な挟持状態の図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明に基づき構成された挟持部材1が、斜視図で図示されている。この挟持部材1を用いて、如何にして、基準尺2を支持体3上に挟持して固定するかが、図2〜5に、それぞれ測定方向に対して垂直な断面で図示されている。基準尺2は、例えば、ガラス又は金属から構成されており、互いに平行に延びる二つの表面、即ち、上側23と下側21、並びにそれらに対して垂直な方向を向いた二つの側面22と24を有する。基準尺の上側23には、図示されていない光電式、磁気式、誘導式又は容量式に走査可能な測定目盛が配備されている。
【0015】
支持体3は、有利には、位置を測定すべき機械部分自体である。しかし、支持体3は、中間の支持体とすることも可能であり、更に、それを測定すべき物体と固定することができる。
【0016】
挟持部材1は、一方では第一の挟持力F1で基準尺2を取付面31上に押し付けるとともに、他方では取付面31に対して垂直な方向に作用するストッパ32上に第二の挟持力F2で基準尺を押し付けるように構成されている。ストッパ32は、例えば、取付面31に対して垂直な方向を向いたストッパ面32である。そのために、挟持部材1は、取付面31の方に向かう第一の方向に付勢力を加えて、取り付けた際に、第一の挟持力F1を基準尺2上に加える第一のスプリング部材11を有する。更に、挟持部材1は、ストッパ面32の方に向かう第二の方向に付勢力を加えて、取り付けた際に、第二の挟持力F2を基準尺2上に加える第二のスプリング部材12を有する。
【0017】
図示されている例では、挟持部材1は、ばね鋼板から成る折れ曲がった部品であり、その部品では、第一のスプリング部材11が、付勢力を加える第一の折れ曲がったアーム部であり、第二のスプリング部材12が、付勢力を加える第二の折れ曲がったアーム部である。これらの折れ曲がったアーム部の形の第一のスプリング部材11と折れ曲がったアーム部の形の第二のスプリング部材12は、挟持部材を支持体3上に固定する際に、固定部材4が嵌め込まれる、挟持部材1の固定部分13と接して配置されている。
【0018】
図2に図示されている通り、基準尺2を支持体3上に取り付けるために、基準尺2の下側21を取付面31上に載せるとともに、その下側に対して垂直な方向に延びる側面22をストッパ面32に当接させる。挟持部材1は、基準尺2上に置かれ、その結果第一のスプリング部材11が、基準尺2の上側23と接触し、第二のスプリング部材12は、その上側に対して垂直な方向に延びる基準尺2の側面24と接触する。挟持部材1は、その固定部分13に設けられた穴14が支持体3に設けられた螺子穴の上に来るように、測定方向に対して位置決めされる。
【0019】
第一のスプリング部材11は、固定部材4を用いて挟持部材1を支持体3上に固定した際に、第一の挟持力F1を生じさせるように構成されており、第二のスプリング部材12も、固定部材4を用いて挟持部材1を支持体3上に固定した際に、第二の挟持力F2を生じさせるように構成されている。そのために、挟持部材1は、固定部分13を有し、その部分には、固定部材4が、嵌め込まれて、固定部分13を取付面31上に押し付けて、それによって、挟持力F1とF2が生み出される。
【0020】
図3には、如何にして、螺子の形の固定部材4が、固定部分13の穴14を通して支持体3に螺子込まれ、それによって、螺子4の頭が、固定部分13を取付面31の方に動かすかが図示されている。図4に図示されている通り、螺子4を螺子込み続けると、挟持力F1の増大と同時に、挟持力F2の増大も起こる。そのために、固定部分13は、取付面31に対して傾斜した形で延びており、取付面31上の一カ所で支えられている。螺子4を支持体3に螺子込んで行くと、取付面31に対する固定部分13の傾斜角が変化して行く、例えば、傾斜角が小さくなって行く。固定部分13の傾斜角が変化して行く、即ち、傾いて行くと、挟持力F1の増大と同時に、挟持力F2の増大も起こる。
【0021】
図5は、挟持が完了した状態の基準尺2を図示している。この状態では、固定部分13は、完全に取付面31上に押し込められて、取付面31に対して平行に延びている。
【0022】
第二のスプリング部材12が基準尺2の真中と接触して、その結果挟持が完了した状態での挟持力F2が、基準尺2の中立面に作用するのが特に有利である。
【0023】
本発明によって、挟持部材の構造により得られる挟持力F1,F2で、基準尺2を支持体3上に再現可能な形で固定することが可能となる。互いに垂直な二つの方向に対して挟持するのに必要な力F1とF2は、固定部材4を支持体3上に固定することだけで生じるので、組立者個々の操作が異なるために生じる組立誤差が解消される、少なくとも低減されることとなる。
【0024】
固定部分13と螺子4の頭の間に、ワッシャー42を差し込むことができる。ワッシャー42の直径を変えることによって、挟持力F2を変えることができる。ワッシャー42の直径が大きくなる程、螺子4を固定する力が、第二のスプリング部材12の方に近付いて行き、その結果小さいワッシャーの使用と比べて、挟持力F2が増大する。
【0025】
挟持部材1は、ばね鋼板から成る折れ曲がった部品として一体的に構成されると、特に安価に製造することが可能となる。しかし、図示されていない手法により、本機能に必要な折れ曲がったジョイントが、特に、固体式ジョイントとして構成されている、より肉厚な部材とすることもできる。
【0026】
基準尺2の長さに応じて、前述した固定用の挟持部材1を複数使用して、測定方向に見て、それらの部材を互いに間隔を開けて配置することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材(4)を用いて支持体(3)上に固定することが可能な少なくとも一つの挟持部材(1)から構成される、支持体(3)の取付面(31)上に基準尺(2)を挟持して固定するための装置であって、挟持部材(1)は、取付面(31)の方に向かう第一の方向に付勢力を加えて、固定部材(4)を用いて挟持部材(1)を固定した際に、取付面(31)の方向に向かう第一の挟持力(F1)を基準尺(2)に対して生じさせる第一のスプリング部材(11)を有するとともに、挟持部材(1)は、第一の方向に対して垂直な方向に延びる第二の方向に向かって付勢力を加える第二のスプリング部材(12)を有する装置において、
第二のスプリング部材(12)は、固定部材(4)を用いて挟持部材(1)を固定した際に、この第二のスプリング部材が第二の方向に向かう第二の挟持力(F2)を基準尺(2)に対して生じせるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
第一のスプリング部材(11)と第二のスプリング部材(12)が、それぞれ挟持部材(1)の固定部分(13)と接して配置されており、この固定部分は、当該の固定の際に固定部材(4)によって動かされ、その動きによって、第一の挟持力(F1)と第二の挟持力(F2)を生じせることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
当該の動きが、取付面(31)と固定部分(13)の間の傾斜角の変化であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
挟持部材(1)が、ばね鋼板から成る折れ曲がった部品であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
固定部材(4)が、支持体(3)に螺子込み可能な螺子であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
基準尺(2)と、取付面(31)を有する支持体(3)とを備えた機器であって、基準尺(2)が、請求項1から5までのいずれか一つに記載の装置によって、支持体(3)の取付面(31)上に挟持して固定されている機器。
【請求項7】
支持体(3)が、取付面(31)に対して垂直な方向に作用するストッパ(32)を有し、挟持部材(1)の第二のスプリング部材(12)が、ストッパ(32)の方向を向いた第二の挟持力(F2)で基準尺(2)を押し付けていることを特徴とする請求項6に記載の機器。
【請求項8】
第二のスプリング部材(12)が、基準尺(2)の厚さ方向の真中に接触して、その位置に第二の挟持力(F2)を加えていることを特徴とする請求項7に記載の機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−526364(P2011−526364A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515273(P2011−515273)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056139
【国際公開番号】WO2010/000541
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(390014281)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】