堆積反応炉のための装置および方法
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースを備えるALD(原子層堆積)装置などの装置。本装置は、前駆体ソースからの前駆体蒸気を反応室に供給するための供給管路と、前駆体ソースと反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防ぐために反応室加熱器からの熱を利用するように構成された構造とを備える。複数のパルス送出弁、前駆体ソース、複数の前駆体カートリッジ、および複数の方法も提示される。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、全般的には堆積反応炉のための装置および方法に関する。本発明は、特に、順次自己飽和表面反応によって材料を表面に堆積させるこのような堆積反応炉のための前駆体ソース、装置、および方法に関するが、これだけに限定されるものではない。
【発明の背景】
【0002】
原子層エピタキシー(ALE:Atomic Layer Epitaxy)法は、1970年代初頭にツオモ・サントラ博士(Tuomo Suntola)によって発明された。この方法の別の総称名は原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)であり、今日ではALEの代わりにALDが使用されている。ALDは、加熱された反応空間内に配置された基板に少なくとも2つの反応性前駆体種を順次導入することによる特殊な化学的堆積法である。ALDの成長機構は、化学的吸着(化学吸着)と物理的吸着(物理吸着)との間の結合強度の差異を利用する。ALDは、堆積プロセス中、化学吸着を利用し、物理吸着を排除する。化学吸着中、固相表面の原子(単数または複数)と気相から到達する分子との間に強力な化学結合が形成される。物理吸着による結合は、ファンデルワールス力のみが関与するため、化学結合よりはるかに弱い。物理吸着による結合は、局部温度が分子の凝縮温度を超えたときに熱エネルギーによって容易に破壊される。
【0003】
定義上、ALD反応炉の反応空間は、薄膜の堆積に用いられる各ALD前駆体に交互に順次曝露されうる全ての加熱された表面を含む。基本的なALD堆積サイクルは、連続する4つのステップ、すなわち、パルスA、パージA、パルスB、およびパージB、で構成される。パルスAは、一般に金属前駆体蒸気で構成され、パルスBは非金属前駆体蒸気、特に窒素または酸素前駆体蒸気、で構成される。ガス状の反応副生成物と残留反応物分子とを反応空間からパージするために、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスと真空ポンプとが用いられる。1つの堆積シーケンスは、少なくとも1つの堆積サイクルを含む。1つの堆積シーケンスによって所望の厚さの薄膜が生成されるまで、堆積サイクルが繰り返される。
【0004】
前駆体種は、加熱された表面の反応部位への化学結合を化学吸着によって形成する。一般に、1つの前駆体パルス期間中に固体材料の単一分子層が各表面に形成されるように条件が構成される。したがって、成長プロセスは自己終結または飽和的である。例えば、第1の前駆体は、表面を飽和させるために吸着種に付着したまま、さらなる化学吸着を防止するリガンドを含むことができる。反応空間の温度は、前駆体の分子種が基本的にそのままの状態で基板(単数または複数)に化学吸着されるように、凝縮温度より高く、使用される前駆体の熱分解温度より低い温度に維持される。基本的にそのままの状態でとは、前駆体の分子種が表面に化学吸着されるときに揮発性リガンドが前駆体分子から脱離しうることを意味する。表面は、基本的に、第1の種類の反応部位、すなわち第1の前駆体分子の吸着種、で飽和する。この化学吸着ステップの次に、一般に、第1のパージステップ(パージA)が続く。第1のパージステップ(パージA)では、第1の前駆体の余剰分と発生しうる反応副生成物とが反応空間から除去される。次に、第2の前駆体蒸気が反応空間に導入される。第2の前駆体分子は、一般に、第1の前駆体分子の吸着種と反応し、これにより所望の薄膜材料が形成される。この成長は、吸着された第1の前駆体の全量が消費され、表面が基本的に第2の種類の反応部位で飽和すると、終了する。次に、第2の前駆体蒸気の余剰分と発生しうる反応副生成物蒸気とが第2のパージステップ(パージB)によって除去される。次に、このサイクルは、膜が所望の厚さに成長するまで繰り返される。堆積サイクルをより複雑にすることもできる。例えば、堆積サイクルは、パージステップによってそれぞれ分離された3つ以上の反応物蒸気パルスを含むことができる。これら全ての堆積サイクルによって、論理装置またはマイクロプロセッサによって制御される1つの調時式堆積シーケンスが形成される。
【0005】
ALDによって成長した薄膜は、緻密でピンホールが無く、厚さが一様である。例えば、TMAとも称されるトリメチルアルミニウム(CH3)3Alと水とから250〜300℃で成長させた酸化アルミニウムは、通常、100〜200mmのウェーハ全体にわたる不均一性が約1%である。ALDによって成長させた金属酸化物薄膜は、ゲート絶縁膜、エレクトロルミネセンス表示装置の絶縁体、キャパシタ絶縁膜、および不動態化層に適している。ALDによって成長させた金属窒化物薄膜は、例えばデュアルダマシン構造における、拡散障壁に適している。薄膜をALD成長させるための前駆体およびALD法によって堆積される薄膜材料は、参照により本願明細書に援用するものとする、例えば、M.リタラ(Ritala)らの評論記事「原子層堆積(Atomic Layer Deposition)」、薄膜材料ハンドブック(Handbook of Thin Film Materials)第1巻:薄膜の堆積および処理(Deposition and Processing of Thin Films)第2章、p.103、アカデミック・プレス社(Academic Press)2002年、およびR.プールネン(Puurunen)の「原子層堆積の界面化学:トリメチルアルミニウム/水プロセスのケーススタディ(Surface chemistry of atomic layer deposition: A case study for the trimethylaluminium/water process)」、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Journal of Applied Physics)、第97(2005)巻、p.121301-121352に開示されている。
【0006】
ALE法およびALD法の実現に適した装置は、参照により本願明細書に援用するものとする、例えば、T.サントラ(Suntola)の評論記事「原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy)」、マテリアルズ・サイエンス・レポーツ(Materials Science Report)第4(7)巻、p.261、エルセビヤ・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)B.V.、1989年、およびT.サントラ(Suntola)の「原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy)」、ハンドブック・オブ・クリスタル・グロウス3(Handbook of Crystal Growth 3)、薄膜およびエピタキシー(Thin Films and Epitaxy)、第B部:成長メカニズムおよびダイナミクス(Growth Mechanisms and Dynamics)、第14章、p.601、エルセビヤ・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)B.V.、1994年に開示されている。
【0007】
前駆体ソースは、参照により本願明細書に援用するものとする、米国特許出願公開第2007/0117383号に開示されている。
【0008】
別の前駆体ソースは、これも参照により本願明細書に援用するものとする、国際公開第2006/111618号に開示されている。
【0009】
既存のさまざまな前駆体ソースにはいくつかの問題がある。一般的な問題の1つは、ソース化学物質管路における前駆体蒸気の凝縮を防止するために複雑で高価な加熱システムを必要とする点である。別の一般的な問題は、固体前駆体表面上の表皮の形成を防止するために複雑なソース構造を必要とする点である。さらに別の一般的な問題は、既存の前駆体ソースは極めてかさばり、前駆体ソースのサービスに時間がかかっている点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0117383号
【特許文献2】国際公開第2006/111618号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M.リタラ(Ritala)らの評論記事「原子層堆積(Atomic Layer Deposition)」、薄膜材料ハンドブック(Handbook of Thin Film Materials)第1巻:薄膜の堆積および処理(Deposition and Processing of Thin Films)第2章、p.103、アカデミック・プレス社(Academic Press)、2002年。
【非特許文献2】R.プールネン(Puurunen)の「原子層堆積の界面化学:トリメチルアルミニウム/水プロセスのケーススタディ(Surface chemistry of atomic layer deposition: A case study for the trimethylaluminium/water process)」、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Journal of Applied Physics)、第97(2005)巻、p.121301-121352。
【非特許文献3】T.サントラ(Suntola)の評論記事「原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy)」、マテリアルズ・サイエンス・レポーツ(Materials Science Report)第4(7)巻、p.261、エルセビヤ・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)B.V.、1989年。
【非特許文献4】T.サントラ(Suntola)の「原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy)」、ハンドブック・オブ・クリスタル・グロウス3(Handbook of Crystal Growth 3)、薄膜およびエピタキシー(Thin Films and Epitaxy)、第B部:成長メカニズムおよびダイナミクス(Growth Mechanisms and Dynamics)、第14章、p.601、エルセビヤ・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)B.V.、1994年。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室に、前駆体ソースからの前駆体蒸気を供給するための供給管路と、
前駆体ソースと反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防止するために反応室加熱器からの熱を利用するように構成された構造と、
を備える装置が提供される。
【0013】
1つ以上の基板が存在しうる。
【0014】
一実施態様において、前駆体ソースは反応炉からの熱を受けるように構成された突起を備える。一実施態様において、本装置は、突起の内部にある内側首部と突起の周囲にある外側首部とを備え、内側首部と外側首部とはその間にギャップを形成する。一実施態様において、本装置は、突起から周囲への熱エネルギーの損失を減らすように構成された熱伝導部を供給管路の周囲に備える。
【0015】
一実施態様において、本装置は、着脱可能な(または除去可能な)ソースカートリッジを受け入れるように構成されたソースフレームワークを備える。
【0016】
一実施態様において、本装置は、ソースカートリッジまたはソースブロックを加熱するための加熱器を備える。
【0017】
本発明の第2の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を制御するように構成される、前駆体ソースに搭載された2つのパルス送出弁と、
1つのパルス送出弁から別のパルス送出弁に不活性ガスを供給するための、パルス送出弁間のバイパス管路と、
を備える装置が提供される。
【0018】
一実施態様において、本装置は流量制限器をバイパス管路内に備える。
【0019】
本発明の第3の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を制御するように構成される、前駆体ソースに搭載されたパルス送出弁と、
を備え、
圧力を上昇させて反応室への前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物の順次流を容易にするために、不活性ガスをパルス送出弁経由で前駆体ソースカートリッジに搬送するように構成された装置が提供される。
【0020】
一実施態様において、本装置は、
圧力上昇後、次の前駆体パルス期間の開始まで前駆体カートリッジを閉じるように構成され、
次の前駆体パルス期間の開始時にパルス送出弁経由で反応室に向かうルートを開くようにさらに構成される。
【0021】
本発明の第4の側面によると、前駆体ソースであって、
着脱可能な前駆体カートリッジと、
前駆体カートリッジを前記前駆体ソースに着脱しうるように構成される第1の取り付け具と、
前記前駆体ソースを堆積反応炉デバイスに着脱するための第2の取り付け具と、
を備える前駆体ソースが提供される。
【0022】
一実施態様において、前駆体ソースは、第1の取り付け具に接続された粒子フィルタを備える。一実施態様において、前駆体ソースは、前駆体カートリッジ内から第1の取り付け具への前駆体材料の流出を防ぐために前駆体カートリッジを封止するように構成された封止部または弁を備える。
【0023】
一実施態様において、本前駆体ソースは、
封止部または弁の第1の側にある第3の取り付け具と、
封止部または弁の別の側にある第4の取り付け具と、
を備え、
上記第3および第4の取り付け具は、上記封止部または弁の取り外しおよびカートリッジの洗浄用に開くように構成される。
【0024】
本発明の第5の側面によると、
前駆体材料を備える前駆体ボートと、
内部に装填される上記前駆体ボートを受け入れる焼結カートリッジと、
を備える前駆体カートリッジが提供される。
【0025】
一実施態様において、ソース化学物質が装填される前駆体ボートは、装填口から焼結カートリッジに入るように横向きに配置される。
【0026】
本発明の第6の側面によると、
堆積反応炉の前駆体ソースからの前駆体蒸気を供給管路に沿って、加熱された基板を収容する反応室に供給することと、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させることと、
前駆体ソースと反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防止するために反応室加熱器からの熱を使用することと、
を含む方法が提供される。
【0027】
一実施態様において、本方法は、反応炉からの熱をソース内の突起に受けることを含み、この突起は供給管路を有し、上記受けられた熱がこの供給管路を加熱する。
【0028】
一実施態様において、本方法は、突起から周囲への熱エネルギーの損失を減らすために熱伝導部を供給管路の周囲に配置することを含む。
【0029】
本発明の第7の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させることと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を、前駆体ソースに搭載された2つのパルス送出弁によって制御することと、
一方のパルス送出弁から別のパルス送出弁にバイパス管路経由で不活性ガスを供給することと、
を含む方法が提供される。
【0030】
本発明の第8の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積することと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を、前駆体ソースに搭載された1つのパルス送出弁によって制御することと、
圧力を上昇させて反応室への前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物の順次流を容易にするために、不活性ガスをパルス送出弁経由で前駆体ソースカートリッジに搬送することと、
を含む方法が提供される。
【0031】
本発明の第9の側面によると、
前駆体ソースを作動させることと、
ソース化学物質が装填された横型の前駆体ボートを前駆体ソースの焼結カートリッジで受けることと、
を含む方法が提供される。
【0032】
本発明のさらに別の側面によると、他の何れかの側面の前駆体ソースで使用するための着脱可能な前駆体カートリッジが提供される。
【0033】
一実施態様においては、定量投与弁を取り付けるためのフレームワークと、前駆体カートリッジを取り付けるためのフレームワークと、貫通導管と、少なくとも1つの定量投与弁と、一体型バイパス流導管と、取り外し可能な前駆体カートリッジとを備える、材料を基板上に堆積させるための前駆体ソースが提供される。
【0034】
別の実施態様においては、複数の定量投与弁を取り付け、かつ前駆体容積を収容するためのフレームワークと、貫通導管と、少なくとも1つの定量投与弁と、一体型バイパス流導管とを備える、材料を基板上に堆積させるための前駆体ソースが提供される。
【0035】
これらの装置、ソース、前駆体カートリッジ、および方法は、加熱された表面上に大気圧より低い圧力で材料または薄膜を順次自己飽和表面反応によって成長させることを目的としてもよく、この場合、装置はALD(原子層堆積)またはALE(原子層エピタキシー)装置または同様の装置になる。薄膜の所望の厚さは、一般に、1つの単分子層または分子層から1000nmまたはそれ以上に及ぶ範囲内になるであろう。
【0036】
これらの装置、ソース、ソースカートリッジ、および方法は、加熱された表面上に大気圧より低い圧力下で材料または薄膜を順次自己飽和表面反応によって成長させるためのソース化学物質蒸気を生成することを想定してもよい。ソース化学物質蒸気は、例えば固体または液体の化学物質を加熱することによって発生させてもよい。これらの蒸気は、例えば、室温で約10hPa未満の蒸気圧を有してもよい。
【0037】
いくつかの実施態様は、簡略化された加熱システムを有する、堆積反応炉用のモジュール式前駆体ソースを提供する。いくつかの実施態様は、表皮の形成を防止するためにソース全体にわたって温度勾配が制御されたモジュール式前駆体ソースを提供する。いくつかの実施態様は、占有面積が小さいモジュール式前駆体ソースを提供する。
【0038】
いくつかの実施態様においては、高温で固体または液体化学物質から蒸気を発生させる前駆体ソースが用いられる。いくつかの実施態様は、低い蒸気圧の前駆体からソース化学物質蒸気を発生させる装置および方法に関する。
【0039】
一実施態様によると、加熱式前駆体ソースは、取り外し可能な前駆体カートリッジと、搭載された加熱システムによって前駆体ソースを加熱する手段とを備える。この加熱式前駆体ソースは、前駆体ソース全体にわたって温度勾配を生じさせるために前駆体ソースの選択された領域から熱を制御された方法で除去する前駆体ソース冷却手段を備えうる。この加熱式前駆体ソースは、前駆体ソースと反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防止するために反応室の熱を利用する構造を備えうる。
【0040】
上記のさまざまな側面は、それぞれ別個の側面として提示されているが、何れか適切な方法で組み合わせうることは当業者には明らかなはずである。また、本願明細書に開示されている各実施態様および一側面に関する従属請求項の発明対象は、本発明の他の側面に適用可能である。さらに、特定の一側面の一実施態様は、同じ側面の他の実施態様(単数または複数)と何れか適切な方法で組み合わせることができる。
【0041】
次に、添付図面に示されている例示的実施形態を参照しながら本発明をより詳細に説明する。これらの図において、同様の参照符号はさまざまな実施形態において同様の特徴に対して用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】非加熱式液体ソースシステムが堆積反応炉に取り付けられた先行技術の構成の概略図である。
【図2】非加熱式液体ソースシステムが堆積反応炉に取り付けられた先行技術の構成の別の概略図である。
【図3】2つの定量投与弁を有する加熱式前駆体ソースの概略図である。
【図4】1つの定量投与弁を有する加熱式前駆体ソースの概略図である。
【図5】カートリッジ内部に封止部を有する前駆体ソースを示す概略図である。
【図6】カートリッジ内部に封止部を有する前駆体ソースを示す別の概略図である。
【図7】前駆体パルス期間中の前駆体ソースのプロセス計装の状態を示す概略図である。
【図8】ガス充填期間中の前駆体ソースのプロセス計装の状態を示す概略図である。
【図9】パージ期間中の前駆体ソースのプロセス計装の状態を示す概略図である。
【図10】一実施形態による前駆体ソースの圧力およびタイミングを示す概略図である。
【図11】別の実施形態による前駆体ソースの圧力およびタイミングを示す概略図である。
【図12】不活性ガス供給システムを備える加熱式前駆体ソースを示す概略図である。
【図13】弁の少ない不活性ガス供給システムを備える加熱式前駆体ソースの概略図である。
【図14】一実施形態による取り外し可能な前駆体コンテナを備える加熱式前駆体ソースを示す概略図である。
【図15】別の実施形態による加熱式前駆体ソース用の取り外し可能な前駆体コンテナを示す概略図である。
【図16】別の実施形態による加熱式前駆体ソースを示す概略図である。
【図17】別の実施形態による加熱式前駆体ソースを示す概略図である。
【図18】一実施形態による封止可能な前駆体カートリッジを示す概略図である。
【図19】一実施形態による封止可能な前駆体カートリッジの使用法を示す概略図である。
【図20】封止可能な前駆体カートリッジに適した加熱式ソースを示す概略図である。
【図21】閉位置にある封止可能な前駆体カートリッジを示す概略図である。
【図22】開位置にある封止可能な前駆体カートリッジを示す概略図である。
【詳細な説明】
【0043】
以下の説明および論理的考察によって制限されることを望むものではないが、次に図と実施例により本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの図および実施例に限定されるものではない。当業者は、これらの装置および方法の変形例を本発明の範囲から逸脱することなく構成できることを理解されるであろう。
【0044】
図1は、パルス期間中の非加熱式液体前駆体ソース100の概略図を示す。ソース100は、パルス送出弁104によって制御される。パルス期間中、パルス送出弁104は開かれている。液体前駆体は、ソース100の内部で蒸発して前駆体蒸気を発生する。前駆体蒸気は、開いているパルス送出弁104を通って供給管路(または供給導管)108に入るために十分な高圧力を有する。前駆体蒸気は、矢印146で示されているように導管102に沿って流れ、パルス送出弁104を通り、矢印138で示されているように供給導管108に沿って流れる。前駆体蒸気は、基板ホルダー118を収容している加熱された反応室106に到達する。反応室106は、反応室の蓋116によって中間スペース126から密閉されている。反応炉122は、真空室の蓋124によって室内の空気に対して封止されている。前駆体蒸気は、反応室106の内部の加熱されたあらゆる表面に化学吸着される。これらの表面は、前駆体蒸気の最大1つの分子層で飽和する。前駆体蒸気の余剰分と表面反応副生物とは、矢印148で示すように、反応室106から排気管路112を通って真空ポンプ110に流れる。真空ポンプ110はこれらのガスを圧縮し、圧縮されたガスは真空ポンプ110から出口導管114に出る。キャリアおよびパージガスとして不活性ガス、例えば窒素ガス、が用いられる。不活性ガスソース128からの不活性ガス流は2つの部分に分割される。不活性ガス流の一方の部分は中間スペースへの導管132によって導かれ、不活性ガス流のもう一方の部分はソース管路への導管130に導かれる。中間スペース126に向かう不活性ガスの流量は、第1の質量流量コントローラ140によって制御される。不活性ガスは、中間スペース126から流量制限器144を通って排気管路112に排出される。反応室106に向かう不活性ガスの流量は、第2の質量流量コントローラ134によって制御される。不活性ガスは、前駆体蒸気をパルス送出弁104から反応室106側に押しやる。基板ホルダー118と、反応室の蓋116と、真空室の蓋124とは、昇降機構120によって制御される。
【0045】
図2は、パージ期間中の非加熱式液体前駆体ソース100の概略図を示す。パルス送出弁104は閉じられている。液体前駆体ソース100は供給導管108から切り離されている。不活性ガスは残留前駆体蒸気を反応室106に向けてパージする。パージは、供給導管108から気相を一掃する。その後、純粋な不活性ガスのみが、矢印200で示すように、供給管路/導管108に沿って流れる。不活性ガスは、さらに反応室106をパージして表面反応から生じた気体副生物と残留前駆体蒸気とを反応室の気相から一掃する。反応室および中間スペース内のあらゆるガスは最終的に排気管路112に入り、矢印202で示されているように真空ポンプ110に向かって流れる。
【0046】
図3は、低蒸気圧の前駆体を蒸発させるために使用可能な加熱式二重弁ソース300(またはソースシステム)の概略図を示す。ソース300は、熱伝導性のソースフレームワーク302と、断熱カバー304と、制御システム308を有する第1のパルス送出弁306と、制御システム312を有する第2のパルス送出弁310と、前駆体カートリッジ344とを備える。前駆体カートリッジ344は、加熱されると、一般に前駆体を固相または液相354および気相356で収容する。制御システム308、312は一般に空気圧または電気式の制御方法に基づく。ソースフレームワーク302は、導管コネクタ314によって反応室供給管路316に締め付けられる。突起が反応炉の熱エネルギーを利用する。ここで反応炉という用語は、真空室と反応室の両方を含む。突起は、内側首部320と、外側首部328と、首部コネクタとを備え、首部コネクタは、突起を真空室壁330に取り付けるための一対のフランジ322、324とこれらのフランジ間のシール326とを備える。外側首部328と内側首部320との間の真空ギャップ332は、熱エネルギー流の経路長を長くし、突起から周囲の室内雰囲気および冷たい真空室壁330への熱エネルギーの損失を減らす。内側首部320と同軸熱伝導管318との間の空隙321は、熱エネルギー流の経路長を長くし、突起から周囲雰囲気および冷たい真空室壁330への熱エネルギーの損失を減らす。真空室内に配置された加熱器(図示せず)は、突起の供給導管316と内側首部320とを加熱する。熱エネルギー流は、2つの部分に分割される。熱エネルギー流の第1の部分は、伝導によって内側首部320および供給導管316から第1のルートに沿って移動し、供給導管316および熱伝導管318に沿ってコネクタ314に向かう。熱エネルギー流の第2の部分は、大半は伝導によって内側首部320から第2のルートに沿って移動し、フランジ322、324を通り、外側首部328に沿って真空室壁330に達する。断熱カバー304への熱エネルギー流の第2の部分の進入は、同軸断熱パッド325によって制限される。第1のルートは、供給導管をALD反応炉と前駆体ソースとの間で加熱状態に保持する。第2のルートは、供給導管316から真空室壁330への熱損失を最小化するために、極力長く、かつ極力小さな熱伝導率を有する。
【0047】
ALD反応炉への加熱式前駆体ソース300の取り付けまたは取り外しは、導管コネクタ314または首部コネクタによって行われる。導管コネクタ314による取り付け/取り外しレベルは、点線338によって示されている。一例として、導管コネクタ314は、VCRフランジ間に金属シールを有するVCRコネクタである。別の例として、導管コネクタ314は、スウェージロック(Swagelok)社のコネクタまたはVCO Oリングコネクタである。一例として、首部コネクタは、Oリングシールによって締め付けられるフランジコネクタである。
【0048】
チタンイソプロポキシドTi(OiPr)4は、一般に、十分な前駆体蒸気圧を得るために加熱が必要なソース化学物質の一例として使用可能である。Ti(OiPr)4は前駆体カートリッジ344に装填され、任意使用の粒子フィルタ352がカートリッジ344の上部に配置される。一実施形態によると、カートリッジ344はソースフレームワーク302に対してOリングシール318によって封止される。漏れのない接続を行うために、カートリッジ344を締め付けナット348によって底部にさらに締め付けることもできる。カートリッジ344の温度は、カートリッジ344の首部346を通して取り付けられた第1の熱電対358によって測定される。ソースフレームワーク/本体302は、少なくとも1つの熱源によって加熱される。一実施形態によると、この熱源は、電気的に加熱される抵抗体355を備える。発熱抵抗体355は、コンピュータ制御の電源に配線364される。発熱抵抗体355の温度は、第2の熱電対362によって測定される。断熱パッド350は、ソースカートリッジ344から室内雰囲気への熱エネルギーの損失を制限する。2つのパルス送出弁306、310は、例えば金属製の複数のCリングまたはOリングによって、ソースフレームワーク302に対して封止される。第1のパルス送出弁306は、不活性キャリアガス(例えば窒素)をソースカートリッジ344の気相356に定量投与するためのソース入口コントローラとして機能する。第2のパルス送出弁310は、不活性キャリアガスと混合された前駆体蒸気をソース出口導管342に、さらには反応室の供給導管316に定量投与するためのソース出口コントローラとして機能する。パルス送出弁306、310は、例えば、開放パージ導管が弁を貫通する三方弁である。
【0049】
パージ期間中、これらの弁は閉じている。すなわち、これらの弁の第3のポート、すなわち弁306、310のソース側は、これらの弁のパージ導管から切り離されている。パージ期間中、全ての不活性ガスは、第1の弁入口導管371から第1の弁の内部のパージ導管を通ってバイパス導管336に流れて第2の弁に到達し、第2の弁の内部のパージ導管を通り、ソース出口導管342から供給導管316を通って反応炉の反応室に達する。バイパス導管は、適切な流量制限器として機能する狭い流路337を備えることもできる。パルス期間中、弁306、310は開いている。すなわち、これらの弁の第3のポート、すなわち弁306、310のソース側、はこれらの弁のパージ導管と流体連通している。パルス期間中、不活性ガス流は2つの部分に分割される。これらの不活性ガス流の比率は、これらのガス流誘導性の比率によって規定される。不活性ガス流の第1の部分は、第1の弁の内部のパージ導管からカートリッジ入口導管334を通ってカートリッジ344の気相356に達する。不活性ガスは気相356で前駆体蒸気と混ざる。結果として生じたガス混合物は、カートリッジ出口導管338を通って第2の弁310の内側のパージ導管に流れ、ソース出口導管342を通り、供給導管316を通って反応炉の反応室に達する。不活性ガス流の第2の部分は、第1の弁の内部のパージ導管を通ってバイパス導管336に流れ、任意使用の狭い流路337を通って第2の弁に達し、第2の弁の内部のパージ導管を通り、そこで不活性ガス流の第2の部分はカートリッジ出口導管338からのガス混合物と混ざった後、ソース出口導管342を通り、供給導管316を通って反応炉の反応室に達する。
【0050】
別の実施形態によると、ソース入口弁306が最初に開かれ、不活性ガスがソースカートリッジ344の圧力を上昇させ、次にソース入口弁306が閉じられる。その後、ソース出口弁310が開かれ、不活性ガスと前駆体蒸気との混合物が前駆体カートリッジから流れ出て、前駆体カートリッジの圧力が下がる。
【0051】
図4は、加熱式の単一弁前駆体ソース400の概略図を示す。ソース400の構造は、制御システム412を有するソース出口弁410を備える。一実施形態において、弁410は複数のボルトによってソースフレームワーク402に固定される。この図中の参照符号445は、この目的のためにソースフレームワーク402に穿孔される貫通穴を示す。ソースフレームワーク402は断熱カバー404で覆われ、コネクタ314によって反応炉の供給導管316に取り付けられる。一実施形態によると、コネクタ314はVCR金属シールコネクタである。ソースカートリッジは、カートリッジ本体456とカートリッジ首部430とを備える。ソースカートリッジは、カートリッジの底部域に配置されたOリング424、カートリッジの首部域に配置されたラジアル軸シール432、またはカートリッジ首部430の頂部域に配置されたOリング434によってソースフレームワーク402に対して封止される。ロック/締め付けナット426がシールハウジング422に締め付けられ、シールハウジング422またはカートリッジのどちらか一方がシールに押し付けられて漏れのない接続を形成する。断熱パッド428がソースカートリッジから室内雰囲気への熱エネルギーの損失を制限する。前駆体が装填された加熱式ソースカートリッジは、前駆体を固体または液相416および気相418で収容する。ソース400が熱源355を備える場合、カートリッジの温度は、カートリッジの首部420を通して取り付けられた熱電対358によって測定できる。
【0052】
パージ期間中、パルス送出弁410は閉じられている。パルス送出弁を貫通するパージ導管は常に開いているので、不活性ガスは弁入口導管438を通り、パージ導管を通り、ソース出口導管442を通り、供給導管316を通って反応室に向かって流れる。
【0053】
パルス時間中、パルス送出弁410のソースカートリッジ側は開かれている。前駆体蒸気は、カートリッジ出口導管436に沿って流れ、パルス送出弁410の弁座を通り、パルス送出弁のパージ導管に達し、そこで蒸気は弁入口導管438からの不活性ガスと混ざる。したがって、前駆体蒸気は不活性ガス流に注入される。結果として生じた前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物は、ソース出口導管442を通り、供給導管316を通って反応室に向かって流れる。
【0054】
一実施形態によると、不活性ガスの圧力は、弁入口導管438の近くで約8mbarである。前駆体はソース温度に加熱される。この温度において、前駆体の蒸気圧はパルス送出弁の内部の注入点における不活性ガスの圧力より高い。一般に、前駆体の蒸気圧として少なくとも10mbarを得るために、ソース温度は+40℃と+200℃の間の範囲から選択される。
【0055】
熱エネルギーは、制御された方法でソースカートリッジの底部側から失われる。ガス容積の表面上の最冷点により、このガス容積において得られる最大蒸気圧が決まる。前駆体ソースの最冷点は、ソースカートリッジの底面にあり、ソースカートリッジと反応室との間の他のあらゆる表面は、前駆体カートリッジの底面より温度が高い。これらの表面は、パルス送出弁が開かれているとき、ソースカートリッジと流体連通している。前駆体カートリッジの底部と反応室との間のあらゆる表面は前駆体カートリッジの底部より高温であるので、これらの表面では前駆体蒸気の凝縮が回避される。
【0056】
図5は、可動ソースカートリッジが開位置にあるときの加熱式ソースシステム500の概略図を示す。パルス送出弁410が開かれると、前駆体蒸気がソースカートリッジ512からホールウェイ部516を経てソース突起に流れる。ホールウェイ部516は、開口を有し、パルス送出弁410側にホールウェイを形成する。前駆体蒸気は、さらにパルス送出弁410を通って供給導管316に向かって流れる。カートリッジ512は、カートリッジ首部514を備え、ホールウェイ部516はOリングシール518および520を備える。
【0057】
一実施形態によると、ソースフレームワーク402は、Oリングシール508と共に反応炉の供給導管316に取り付けられる。平板状フランジ504が同軸ボルト502によってOリング508に押し付けられる。この図中の参照符号506は、同軸ボルト502のためのねじ山を示す。同軸断熱パッド318を取り外した後、工具(例えばセットレンチ)を同軸ボルト502の頂部にあてがうことによって、同軸ボルト502を緩めることができる。
【0058】
図6は、可動ソースカートリッジが閉位置にあるときの加熱式ソースシステム500の概略図を示す。ロックナット426は開かれており、ソースカートリッジ512は引き下げられている。カートリッジ首部514はOリング518、520によって封止され、出口開口部のみがこれらのOリングによって封止された領域にある。前駆体蒸気の容積418はソース導管の残りの部分から効果的に切り離されている。蒸気容積が切り離されるため、前駆体ソースシステムがソース温度から室温に冷却されているとき、ソース化学物質蒸気はソースカートリッジの内部でのみ凝縮可能である。
【0059】
図7は、前駆体パルス期間中の単一弁加熱式ソース700の概略図を示す。ソース700は、ソースフレームワーク702と、加熱器720と、貫通突起728と、パルス送出弁716と、前駆体カートリッジ706とを備える。ソースフレームワーク702は、加熱式ソース700から周囲空気への熱損失を減らすために、断熱層704によって覆われている。カートリッジ容積752の一部が固体または液体前駆体で占められ、カートリッジ容積の残りの部分、いわゆる前駆体蒸気スペース、754が気相種のために利用可能であるように、前駆体カートリッジ706に液体または固体前駆体が装填される。前駆体カートリッジ706は、容器と、カートリッジをソースフレームワーク702に対してOリングまたはラジアル軸シール762によって封止するための首部708と、カートリッジ操作用の尾部突起758とを有する。尾部突起758から周囲空気に失われる熱エネルギー量を制御するために、取り外し可能な断熱層760が尾部突起758の周囲に配置される。加熱器720の温度は加熱器の熱電対724によって測定され、前駆体カートリッジ706の温度はカートリッジの熱電対764によって測定される。加熱器の熱電対724は、加熱器に供給される電力722を制御するために用いられる。加熱器の温度がプログラムされた温度上限を超えると、電力が加熱器720に供給されない。熱電対764によって得られた熱電電圧は、アナログ/デジタル(AD:analog/digital)変換器によってデジタル値に変換され、正しいソース温度に達するために加熱器720に供給される電力量を制御するためのPIDコントローラによって使用される。ソースフレームワーク702は前駆体カートリッジ706をほぼ取り囲む。前駆体カートリッジは、ソースフレームワークに熱的に接触している。ソースフレームワークが一定のソース温度に加熱されると、前駆体カートリッジはソースフレームワークから熱エネルギーを受け、前駆体カートリッジの温度はソースフレームワークの温度に達する。尾部の突起領域は、断熱層704より若干高い熱伝導率を有する。したがって、尾部突起758に流れる熱エネルギーが少ないため、尾部突起に近い前駆体カートリッジの内面は、カートリッジの残りの部分より、例えば0.1〜10℃低い、または一部の実施形態においては1〜3℃低い、温度に維持される。連続するガス空間の内部の最冷点によって、存在する化学物質種の最大蒸気圧が決まる。したがって、パルス送出弁の近くの表面は尾部突起の壁より暖かいため、前駆体蒸気はこれらの表面で凝縮できないので、これらの表面は汚れない。加熱式ソース700の動作原理は、前駆体蒸気スペース754の内部の実際のガス圧が反映されるバーチャル圧力計756を用いて扱われる。
【0060】
パルス送出弁716は、ダイアフラム流れシール(図示せず)と、開放弁入口717と、制御されたソース入口718と、ソース出口導管730側の開放弁出口714と、アクチュエータ710とを備える。パルス送出弁のアクチュエータ710以外のあらゆる部分は、ソースフレームワークと同じソース温度に加熱される。アクチュエータ710は、例えば、空圧式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、または電磁式アクチュエータにすることができる。アクチュエータ710は、ソースフレームワークの外側に配置でき、ステムが機械動力をアクチュエータから弁開閉器(図示せず)に伝える。アクチュエータ710の制御は、制御システム712から行える。アクチュエータ710の寿命を延ばすために、アクチュエータは極力低い温度、例えば20〜100℃、一部の実施形態においては20〜50℃、に維持される。弁開閉器は、ソース入口718から弁出口714へのガスの流れを制御する金属製の常閉ダイアフラムであることが好ましい。空気圧によって作動される高温のSwagelok(登録商標)ALDダイアフラム弁が本加熱式前駆体ソースに適したパルス送出弁716の一例として使用可能である。
【0061】
不活性ガスソース736からの窒素ガス(または不活性ガス)の流量をコンピュータ制御のシステムによって変化させる。一実施形態によると、質量流量コントローラ738は、不活性ガスの新しい質量流量を、例えば0.05〜1s以内、一部の実施形態においては0.05〜0.1s以内、に設定740できるほど十分高速である。別の実施形態によると、開放弁入口717に達する不活性ガスの総質量流量を低値と高値との間で変化させるように、不活性ガスの基本的な一定の質量流量の設定に標準の熱式質量流量コントローラ738が用いられ、ソース進入導管780へのさらなる不活性ガスの追加を制御する746ためにパルス送出弁744が用いられる。上記低値は、例えば10〜500sccmの範囲から選択され、一部の実施形態においては50〜100sccmの範囲から選択される。高値が低値より高くなるように、上記高値は、例えばニードル弁742または毛細管によって、調整され、上記高値は、例えば100〜2000sccmの範囲から選択され、一部の実施形態においては300〜500sccmの範囲から選択される。ソース進入導管の圧力は、アナログまたはデジタル信号750をデータ処理システムに送信する圧力変換器748によって測定される。上記信号は、不活性ガスの流量を適切な範囲に調整し易くするために用いられる。本構成の利点の1つは、比較的高価な構成要素、すなわち不活性ガス質量流量コントローラ738、不活性ガスパルス送出弁744、および圧力変換器748、が冷たい領域にあり、不活性窒素ガスとのみ接触することである。
【0062】
前駆体蒸気または前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物は、流量制御弁(またはパルス送出弁)716によって不活性キャリアガスの流れに注入され、不活性キャリアガスによってソース出口導管730および反応空間側に押しやられる。
【0063】
図8は、ガス充填期間中の単一弁加熱式ソース700の略側面図を示す。場合によっては、パルス期間中に反応炉に効率的に進入できないほど、前駆体の蒸気圧が低くなりすぎることがある。図8に示す実施形態においては、ガス充填期間中にソース内部の蒸気圧が上げられる。この実施形態においては、圧力を上げるために、不活性ガスが弁716を経由して前駆体ソースコンテナ/カートリッジ706に搬送される。その後、弁716のソース入口718は、次の前駆体パルスの開始まで、図9に示すように閉じられている。この閉鎖状態において、前駆体蒸気と不活性ガスの混合物は、ソース入口718を通ってソース進入導管780に流れ込むことも、ソース出口導管730に流れ込むこともできない。次の前駆体パルスの開始時に、弁716が開かれるので、圧力が上昇した混合物は、図7に示すように、ソース入口718を通り、ソース出口導管730を経由して反応炉に向かってより容易に流れる。
【0064】
いくつかの実施形態における加熱式前駆体ソースのいくつかの設計規則は、以下のように提示できる。すなわち、大量輸送は拡散によるより強制流による方が高速であり、ガスはより高い圧力からより低い圧力へと必ず流れるため、圧力差を利用する。熱エネルギーはより高い温度からより低い温度へと必ず移動し、ガス空間内部の化学物質種の蒸気圧はガス空間内部の最冷点により決まるため、温度差を利用する。機械的可動部は低温の方が長持ちするため、存在しうるあらゆる機械的可動部を冷たい領域に配置する。
【0065】
図7〜9に示す加熱式ソースの動作を堆積プロセスの説明によってさらに例示する。加熱された塩化アルミニウムAlCl3(二量体Al2Cl6とも表記)と蒸発した水H2Oとから酸化アルミニウムAl2O3を成長させる。加熱式前駆体ソース700の内部に配置されるカートリッジ706にAlCl3片を装填する。固体AlCl3片の上方に約0.05〜10hPaのAlCl3蒸気圧を生じさせるために、加熱式前駆体ソースをプログラムされたソース温度に加熱する。例えば、ソース温度が100℃であると、結果として生じるAlCl3蒸気圧は、前駆体蒸気スペース754の内部で1hPaである。一部の実施形態においては、加熱式ソースの内部での感熱性前駆体の分解を回避するために、極力低いソース温度でソース化学物質を蒸発させながら、基板表面全体を覆うに十分な前駆体蒸気の定量投与量を発生させると都合がよい。
【0066】
低ソース圧力でAlCl3を蒸発させる利点は、低い圧力は、ガス分子の拡散速度を上げ、AlCl3の平衡蒸気圧の極力速かな回復を助けることである。一実施形態において、固体AlCl3片の上方の約0.05〜10hPaのAlCl3蒸気圧が得られるまで、AlCl3を約0.5〜4.0s間蒸発させる。ソース入口導管780を通る不活性ガス流は、例えば1000sccmに増加する。これにより、ソース入口導管内の不活性ガスの圧力は、前駆体ガス空間754の内部のガス圧力より高い圧力値に上昇する。次に、パルス送出弁718のソース側が開かれる。不活性ガスは、不活性ガスによってソースコンテナ706の圧力が約5〜20hPaに上昇するまで、ソース入口導管780から前駆体ガス空間に、例えば0.2〜1.0s、流れる。不活性ガスはソース化学物質蒸気と混ざる。次に、ソース入口管路780内の不活性ガスのガス圧を下げるために、不活性ガスの流量を、例えば1000sccmから100sccmに、下げる。この結果、ガス流の方向は逆向きになり、ガス混合物はソースコンテナの前駆体蒸気スペース754からパルス送出弁716を通って反応炉供給管路730に流れ込む。キャリアガス流、例えば100sccmの窒素ガス、は不活性ガス/前駆体蒸気の混合物を反応空間(図示せず)内に押しやる。この実施形態の利点の1つは、前駆体ソースの被加熱領域に必要なパルス送出弁が単一であることである。
【0067】
基板が配置された反応空間の内部では、利用可能な反応性表面部位、すなわちOH基、が消費されて表面がAlCl3分子、より正確にはAlCl3分子のClAl<およびCl2Al-画分、の分子層で飽和するまで、AlCl3分子が基板表面に化学吸着される。ここで、「-」は、1つのAl原子と1つの表面酸素原子との間の1つの化学結合を示し、「<」は、1つのAl原子と複数の表面酸素原子との間の2つの化学結合を示す。元のAlCl3分子は、中心のAl原子に結合した3つの塩素Cl原子を有する。AlCl3分子が表面のヒドロキシルOH基と反応すると、1つまたは2つの塩素原子が1つの水素原子を受け取り、反応副生成物としてガス状の塩化水素HCl分子を形成する。
【0068】
これで表面は塩素原子によって覆われる。Clで覆われた表面にAlCl3分子が付着する唯一の方法は、物理的な吸着(物理吸着)による。ただし、基板温度はAlCl3蒸気の凝縮温度より上に維持されているため、物理吸着は不可能であり、余分なAlCl3分子は気相に留まる。結果として、AlCl3分子画分から成る単一分子層のみが基板表面に留まることができる。AlCl3への曝露期間が終了すると、パルス送出弁のソース側718は閉じられ、前駆体蒸気スペース754からのAlCl3蒸気と不活性ガスとの混合物はパルス送出弁716を通って流れる不活性ガス流に注入されなくなり、堆積サイクルは第1の除去期間に進む。閉じられたパルス送出弁によって前駆体蒸気スペース754が周囲のガス導管から切り離されると、ソース化学物質パルス期間中にAlCl3蒸気が枯渇した前駆体蒸気スペース754は固体AlCl3片752から蒸発するAlCl3によって回復し始める。反応炉供給導管730から到来するガスの組成は、AlCl3蒸気と不活性ガスとの混合物から純粋な不活性ガスに急速に変化する。残留AlCl3分子と反応副生成物分子(HCl)とは、流れる不活性ガスによって反応空間から排気管路に導かれる。
【0069】
堆積プロセスのための酸素ソース(より一般的には、非金属ソース)については、図1〜2を参照する。非金属への曝露期間中、H2O蒸気が温度制御された液体ソース100から(三方弁104を通って)不活性ガス流に注入され、結果として生じたガス混合物は、矢印138で示すように、反応炉供給導管108を通って流れる。このガス流は、反応炉供給導管から基板118が配置されている反応室106に導かれる。もう一方の前駆体導管、すなわちAlCl3ソース用の反応炉供給管路、には、反応室106に向かう不活性ガス流が存在する。したがって、一方の前駆体導管はソース化学物質蒸気を反応室にパルス送入するために用いられ、もう一方の前駆体導管は流れる不活性ガス雰囲気によって保護される。
【0070】
反応空間においては、利用可能な反応性表面部位、すなわち表面Cl原子、が消費されて表面がH2O分子から発生したヒドロキシルOH基の分子層で飽和するまで、前の前駆体への曝露中にAlCl3分子画分で飽和した基板118表面にH2O分子が化学吸着される。その後、H2O分子が表面に付着しうる唯一の方法は物理吸着である。ただし、基板温度はH2O蒸気の凝縮温度より上に維持されているため、物理吸着は不可能であり、余分なH2O分子は気相に留まる。結果として、H2O分子画分から成る単一分子層のみが基板表面に結合して薄膜材料を形成することができる。H2Oへの曝露期間が終了すると、H2O蒸気は不活性ガス流に注入されなくなり、堆積サイクルは第2の除去期間に進む。
【0071】
第2の除去期間中、反応炉供給導管108から到来するガスの組成は、H2O蒸気と不活性ガスとの混合物から純粋な不活性ガスに急速に変化する。残留H2O分子と反応副生成物分子、すなわちメタンCH4分子、とは、流れる不活性ガスによって反応空間から排気管路側に導かれる。これで、基板表面は最大1つの分子層から成る薄膜材料、この場合は表面OH基を有する酸化アルミニウムAl2O3、によって均一に覆われる。これで、基板は、第1の除去期間、H2Oへの曝露期間、および第2の除去期間の間に回復した加熱式前駆体ソース700からの次のAlCl3蒸気への曝露のための準備が整う。AlCl3への曝露期間と、第1の除去期間と、H2Oへの曝露期間と、第2の除去期間とで構成される堆積サイクルは、所望の厚さのAl2O3膜が得られるまで繰り返される。本プロセスによって得られるAl2O3薄膜の一般的な成長速度は、約0.9A/堆積サイクルである。
【0072】
図10は、第1の前駆体ソース管路の圧力1006と第1の前駆体ソースコンテナの圧力1008とを時間の関数として任意単位で示す。この実施形態においては、前駆体の蒸気圧が平衡レベルに回復している間、ソースコンテナの内部では比較的高いガス圧力が維持される。上に提示した加熱式前駆体ソースは、第1の前駆体ソースとして用いられる。時刻t1において、加熱式ソース700(図7)のパルス送出弁716(図7)が開かれ、前駆体コンテナのガス容積754(図7)の圧力1008が下がる。t2において、ソース進入導管780(図7)内の不活性ガスの流量が質量流量コントローラ738(図7)または不活性ガスパルス送出弁744(図7)によって増やされ、管路圧力変換器748(図7)によって測定されるソース進入導管780の内部のガス圧力1006が急速に上昇する。不活性ガスの一部はソースコンテナに流れ込み、前駆体コンテナのガス容積の圧力は、t2〜t3期間1028中に平衡圧力に達するまで上昇する。t3において、パルス送出弁716(図7)が閉じられ、ソースコンテナはソース管路から切り離される。ソース管路のパージが高速で継続する。t4において、ソース進入導管内の不活性ガス流量が減少して低レベルになる。t4〜t5期間1038中、反応炉の全てのパルス送出弁は閉じられたままであり、不活性ガスによる各ソース導管および反応室のパージが継続する。この場合、前駆体カートリッジは多くの蒸発面を有しており、したがって時刻t5において、前駆体の蒸気圧は平衡圧力、すなわちソース温度において到達可能な最大蒸気圧、に既に達しており、加熱式前駆体ソースは次の前駆体パルスを受ける準備が整っている。利用可能な前駆体蒸気の定量投与量を最大化するために、時刻t8において次のパルス送出サイクルが開始される前に、前駆体の平衡圧力に達していることが好ましい。時刻t6において、第2の前駆体ソースのパルス送出弁が開かれ、第2の前駆体蒸気が第2の前駆体ソース管路内の不活性ガス流に注入される。時刻t7において、第2の前駆体ソースのパルス送出弁が閉じられ、第2のソース管路内の不活性ガスの流量が減る。t7〜t8期間1036中、反応炉の全てのパルス送出弁は閉じており、不活性ガスによる各ソース導管および反応室のパージが継続する。1つのパルス送出サイクルはt1〜t8期間1040に及ぶ。t8において、時刻t1と同じ方法で第1の前駆体ソースのパルス送出弁を開くことによって、次のパルス送出サイクルの実行が開始される。
【0073】
図11は、第1の前駆体ソース管路の圧力1106と第1の前駆体ソースコンテナの圧力1108とを時間の関数として任意単位で示す。この実施形態においては、前駆体の蒸気圧が平衡レベルに回復している間、ソースコンテナの内部で比較的低いガス圧力が維持される。上に提示した加熱式前駆体ソースは、第1の前駆体ソースとして用いられる。時刻t9において、ソース進入導管780(図7)内の不活性ガス流量が質量流量コントローラ738(図7)または不活性ガスパルス送出弁744(図7)によって増やされ、管路圧力変換器748(図7)によって測定されるソース進入導管780内のガス圧力1106が急速に上昇する。時刻t10において、加熱式ソース700(図7)のパルス送出弁716(図7)が開かれる。不活性ガスの一部はソースコンテナに流れ込み、前駆体コンテナのガス容積の圧力1108はt10〜t11期間1128中、平衡圧力に達するまで上昇する。これらのソースコンテナ内の圧力変動により、不活性ガスが前駆体蒸気に効率的に混合され、結果として不活性ガスと前駆体蒸気との比較的高圧力の有用な混合物が得られる。時刻t11において、ソース進入導管780内の不活性ガス流量が低レベルに減少し、ソース進入導管の圧力が急速に下がる(曲線1106)。同時に、ソース管路の圧力がソースコンテナの圧力より低下し、パルス送出弁は依然として開いており、ソースコンテナはソース管路に流体連通しているため、ソースコンテナの圧力が下がり始める。t12において、パルス送出弁716(図7)が閉じられ、ソースコンテナはソース管路から切り離される。前駆体の蒸気圧は上昇し始め、時刻t13において前駆体の平衡蒸気圧レベルに達する。ソース管路のパージが継続する。t12〜t14期間1138中、反応炉の全てのパルス送出弁は閉じられており、不活性ガスによる各ソース導管および反応室のパージが継続する。全ての残留前駆体分子と揮発性反応副生物とが反応炉の排気管路に押し出される。この場合、前駆体カートリッジは多くの蒸発面を有しており、したがって時刻t13において、前駆体の蒸気圧は平衡圧力、すなわちソース温度において到達可能な最大蒸気圧、に既に達しており、加熱式前駆体ソースは次の前駆体パルスを受ける準備が整っている。利用可能な前駆体蒸気の定量投与量を最大化するために、次のパルス送出サイクルが時刻t16において開始される前に、前駆体の平衡蒸気圧に達していることが好ましい。時刻t14において、第2の前駆体ソースのパルス送出弁が開かれ、第2の前駆体蒸気が第2の前駆体ソース管路内の不活性ガス流に注入される。時刻t15において、第2の前駆体ソースのパルス送出弁が閉じられ、第2のソース管路内の不活性ガスの流量が減少する。t15〜16期間1136中、反応炉の全てのパルス送出弁は閉じられており、不活性ガスによる各ソース導管および反応室のパージが継続する。全ての残留前駆体分子と揮発性反応副生物とが反応炉の排気管路に押し出される。1つのパルス送出サイクルはt9〜t16期間1140に及ぶ。t16において、時刻t9と同じ方法で第1の前駆体ソースのパルス送出弁を開くことによって、次のパルス送出サイクルの実行が開始される。
【0074】
図10の説明は、液体または固体前駆体自体の蒸気圧が低すぎるためにパルス期間中に反応炉に効率的に進入できず、かつ前駆体の蒸発速度が遅い実施形態に適している。一方、図11の説明は、前駆体自体の蒸気圧が低すぎるためにパルス期間中に反応炉に効率的に進入できず、かつ前駆体の蒸発速度は十分高速であるために前駆体蒸気圧の高速回復が可能な実施形態に適している。図10および図11の説明は、前駆体コンテナへの不活性ガスの搬入と不活性ガスと前駆体蒸気とを含むガス混合物の前駆体コンテナからの搬出とを調時的に行うことによる追加の圧力上昇を利用する。
【0075】
図12は、ソースの前駆体装填側から到来する強制一次キャリアガス流を有する加熱式前駆体ソース1200の概略図を示す。一次キャリアガス流は、一次不活性ガスソース1202と、不活性ガス質量流量コントローラ1204に対する設定値を受け取り、かつ質量流量読み取り値を送出するI/Oインタフェース1206を有する不活性ガス質量流量コントローラ1204と、手動調整可能な流量制限器として機能するニードル弁1210と、一次進入導管1212と、昇華物収集導管1214と、カートリッジ進入導管1216とによって構成される。二次キャリアおよびパージガス流は、二次不活性ガスソース736と不活性ガス質量流量コントローラ738とで構成される。二次不活性ガスソース736は、一次不活性ガスソース1202と同じガスソースにすることも別個のガスソースにすることもできる。一次キャリアガス流は、前駆体カートリッジ706の内部のガス空間754において前駆体蒸気と混ざり、この混合物はソースのパルス送出弁710によって分割送出される。カートリッジ進入導管1216は分子拡散用の経路を長くし、一次キャリアガス管路の上方に昇華物収集導管1214の領域まで拡散する前駆体蒸気の量を減らす。カートリッジ進入導管1216の内径は、例えば約1〜20mm、一部の実施形態においては4〜8mm、にすることができ、カートリッジ進入導管の長さは、例えば10〜100mm、一部の実施形態においては30〜50mm、にすることができる。不活性ガス流を固体または液体前駆体752に向けて導くためのカップ(図示せず)をカートリッジ進入導管の先端に設けることもできる。
【0076】
一実施形態によると、質量流量コントローラ1204は、相対的に長い設定時間を有する熱式コントローラである。ALDプロセスは一般に0.1〜1s台の短いパルスを使用するので、一次キャリアガス流のためのバイパス管路1208を配置すると都合がよい。バイパス管路1208は、パルス送出弁716が閉じているとき、パージ期間を含む全堆積期間中、不活性ガス流を質量流量コントローラ1204に通す。バイパス管路1208は流量の変動を減らす。別の実施形態によると、質量流量コントローラは、パルス送出弁716が発生させた圧力変動に十分応動できる高速な圧力ベースのコントローラである。
【0077】
前駆体カートリッジ706の温度は、第2のソース熱電対1218によって測定される。この温度読み取り値は、前駆体ソースの加熱器720に供給される加熱用電力722の量を調整するために用いられる。第2のソース熱電対1218は、前駆体ソースの被加熱容積に熱的に接触する。
【0078】
前駆体ソース1200は取り外し可能であることが好ましい。出口接続部732と、一次キャリアガス管路接続部1220と、二次キャリアおよびパージガス管路の接続部734とを開くと、前駆体ソースを堆積反応炉(図示せず)から取り外せるようになる。前駆体カートリッジ706はソース温度に加熱される。一部の実施形態においては、ソース温度は+40℃と+200℃との間の範囲から選択される。パルス送出弁716は閉じられたままである。不活性ガスは、不活性ガスソース1202から質量流量コントローラ1204を通ってバイパス導管1208に流れる。ガス空間754は、一次進入導管1212とニードル弁1210とを介して不活性ガスソースに静的に流体連通しているので、不活性ガス流は、ソースカートリッジ706のガス空間754を選択された圧力値、一部の実施形態においては5〜30mbar、に加圧し続ける。前駆体化学物質752は、この前駆体化学物質固有の蒸気圧に達するまで蒸発して前駆体カートリッジの気相754になる。ガス空間754内の前駆体分子の一部はカートリッジ進入導管1216を通って昇華物収集導管1214に拡散し、そこで前駆体分子は昇華物収集導管1214の内面に凝縮する。昇華物収集導管1214の温度は、前駆体カートリッジの706のガス空間754の温度より低い。化学物質固有の蒸気圧は、化学物質の蒸気温度に応じて決まる。昇華物収集導管1214の表面温度が十分低いとき、化学物質固有の蒸気圧は表面近くでは無視できるほど小さく、前駆体分子は一次進入導管1212まで上流に拡散できない。前駆体ソース1200の加熱、使用、および冷却中、昇華物収集導管1214の表面温度は室温より高いことが好ましく、かつ第2のソース熱電対1218で測定されたソース温度より低いことが好ましい。パルス期間が開始するとパルス送出弁716が開かれ、パルス期間が終了するとパルス送出弁716が閉じられる。パルス期間中、前駆体カートリッジのガス空間754は、開いているパルス送出弁を通してソース出口導管730に流体連通しており、前駆体蒸気は一次不活性ガス流の助けにより前駆体カートリッジから基板(図示せず)を収容している反応空間に向かって流れる。
【0079】
図13は、前駆体カートリッジ344から分離された昇華物収集導管1302と単一のパルス送出弁410とを有する加熱式前駆体ソース1300の概略図を示す。昇華物収集導管1302はシール1306と共にソース本体402に装着されている。最初は、パルス送出弁410は閉じられている。液体または固体の前駆体1328は、ソース温度、例えば+40℃と+200℃との間の範囲から選択された温度、に加熱される。前駆体1328は蒸発し、前駆体固有の蒸気圧に達するまで、前駆体カートリッジ344のガス空間1330の圧力を上昇させる。パルス期間中、パルス送出弁410は開いている。不活性キャリアガスは、外部の不活性ガスソース1304から昇華物収集空間を通って前駆体カートリッジのガス空間1330に流れ込み、そこで不活性キャリアガスと前駆体蒸気とが混ざる。結果として生じた混合物は、パルス送出弁410を通ってソース出口導管442に流れ、さらに基板(図示せず)を収容している反応空間に流れる。パージ期間中、パルス送出弁410は閉じられており、前駆体蒸気は前駆体ソースを通って流れない。一部の前駆体分子は、ガス空間1330を通って、前駆体カートリッジ344より低温に維持されている昇華物収集導管1302に拡散し、昇華物収集導管の内面に凝縮液1310を形成する。
【0080】
図14は、前駆体カートリッジ1402を備える加熱式前駆体ソース1400を示す。前駆体カートリッジ1402は、手動カートリッジ弁1408によって封止でき、取り付け具1412を開くことによって加熱式前駆体ソースから取り外すことができる。前駆体ソース1400は、堆積反応炉デバイスへの前駆体ソース1400の着脱用の第2の取り付け具1422を備える。弁本体1418を備える三方パルス送出弁1405は、空気圧によって制御される。この目的のために、パルス送出弁は、圧縮空気を受け入れるための接続部1420を有しうる。前駆体ソースは、熱伝導性のソース本体1424と、電源1428と、熱電対による温度測定部1430とを有する加熱器カートリッジ1426と、断熱層1432と、カバー1434とを備える。前駆体ソースは、前駆体カートリッジ1402の底部近くに熱伝導性の突起1406をさらに備える。突起1406は、コンピュータ制御システム(図示せず)への接続部1436を有する曲がった熱電対1438を収容するための機械加工された溝を有する。
【0081】
前駆体ソース1400は、取り付け具1412のフランジ間に、カートリッジ弁1408側に下向きの金属またはセラミック材料製の粒子フィルタ(またはガスケットフィルタ)1416を有するシール1414を備えることもできる。粒子フィルタ1416は、パルス送出弁1418への、さらには反応炉供給管路への、固体前駆体粒子の進入を防止する。上方に移動する前駆体粒子は、粒子フィルタ1416の外面で阻止され、落下して前駆体カートリッジ1402に戻る。
【0082】
前駆体カートリッジ1402の交換前に行うソース管路のパージ方法について以下に説明する。手動カートリッジ弁1408を閉じる。各導管の壁上のあらゆる固体または液体前駆体残渣から前駆体蒸気圧を発生させるために、加熱式前駆体ソースを十分高温に加熱する。パルス送出弁1405を開く。三方パルス送出弁1405を通ってソース出口導管1442に流れる不活性ガスの流量を高値、例えば1000sccm、と低値、例えば100sccm、との間で変化させる。流量を増やすと、三方パルス送出弁1405における不活性ガスの圧力が上昇し、流量を減らすと三方パルス送出弁1405における不活性ガスの圧力が下がるため、ガスのポンピング効果が生じる。可変ガス圧力は、あらゆるガス状の残留前駆体をデッドエンドおよびガスポケットから効率的に除去する。温度は、固体または液体の前駆体残渣を蒸発させるに十分な高温にする必要がある。パージ速度を上げるために、通常、少なくとも約0.1hPaの前駆体蒸気圧を発生可能なソース温度を用いることができる。一実施形態においては、反応空間の表面での前駆体蒸気の凝縮を防ぐために、反応空間を前駆体ソースと少なくとも同じ温度に加熱する。
【0083】
中間導管1444とソース出口導管1442とを不活性ガスによって、例えば5hPaから20hPaに、1分間加圧し、次に1分間排気して20hPaから5hPaに戻す。残留前駆体を各導管から除去するために、加圧および排気サイクルを複数回、例えば少なくとも5回、一部の実施形態においては少なくとも10回、繰り返す。
【0084】
前駆体ソース1400は、前駆体材料をカートリッジに充填した後で化学物質製造業者が閉じることができる第3の取り付け具1410をさらに備えることもできる。前駆体ソース1400は、カートリッジの洗浄用に開くことができる第4の取り付け具1404をさらに備えることもできる。
【0085】
図15は、別の実施形態による加熱式前駆体ソース用の取り外し可能な前駆体コンテナ1500を示す。コンテナ1500は、前駆体室1502と、前駆体を保持する前駆体容器1514と、前駆体室1514の着脱用の取り付け具1504と、前駆体室のガス空間をソース出口導管1515から切り離すための弁1508とを備える。前駆体室1502は、洗浄用に前駆体コンテナ1500を分解するための任意使用の首部取り付け具1506を有する。前駆体蒸気を取り付け具1504領域から遠ざけておくために、前駆体容器1514の壁を前駆体室1502の壁に対してシール1520によって封止することが好ましい。前駆体容器1514は、場合によっては、取り付け具1504を開いた後に容器を前駆体室1502から引き出すためのハンドル1516と、前駆体容器からの固体前駆体または粉体粒子の放出を防止するためのフィルタ1518とを備える。前駆体コンテナ1500は、取り付け具1512によって前駆体ソースの他の部分への取り付けまたは取り外しが可能である。
【0086】
図16は、別の実施形態による加熱式前駆体ソースを示す。側面1600および正面1602から図示されている加熱式前駆体ソースは、ソース本体1604と、封止可能な正面フランジ1606と、装填口1608と、不活性ガス入口弁1610と、前駆体蒸気出口弁1612と、取り付け用フランジ1614と、ソース本体の断熱部1616と、パルス送出弁の断熱部1618と、装填口の断熱部1620とを備える。不活性キャリアおよびパージガス(例えば窒素またはアルゴン)は、ガス入口接続部1622を通って加熱式ソースに達する。不活性ガス入口弁1610と前駆体蒸気出口弁1612とが閉じられているとき、不活性ガスは入口導管1624を通り、ソースバイパス導管1628を通り、さらにはソース出口導管1632を通り、反応炉供給導管1636を通って反応空間(図示せず)に流れる。不活性ガス入口弁1610と前駆体蒸気出口弁1612とが開いているとき、不活性/キャリアガス流は2つの部分に分割される。ガス流の第1の部分はバイパス管路1628を通る。ガス流の第2の部分は、蒸気スペース入口導管1626を通って加熱式ソースの蒸気スペース1650に入る。ガス流の第2の部分は、加熱式ソースの蒸気スペース1650の内部で前駆体蒸気と混ざる。結果として生じた第1のガス/蒸気混合物は、蒸気スペースの出口導管1630を通って蒸気スペースを出る。第1のガス/蒸気混合物は、ソースバイパス導管1628から到来したガス流の第1の部分に追加されて、第2のガス/蒸気混合物を形成する。第2のガス/蒸気混合物は、ソース出口導管1632を通り、反応炉供給導管1636を通って反応空間(図示せず)に流れる。横型の前駆体ボート1642が焼結カートリッジ1638内に装填される。前駆体ボート1642は、一部の実施形態においては、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、石英ガラス、SiC、またはAl2O3などの不活性材料から成る。焼結カートリッジ1638は、封止可能な正面フランジ1606に取り付け具1640によって取り付けられる。
【0087】
図17は、別の実施形態による加熱式前駆体ソースを示す。側面1700および正面1702から図示されている加熱式前駆体ソースは、ソース本体1704と、封止可能な正面フランジ1706と、装填口1708と、不活性ガス入口弁1714と、前駆体蒸気出口弁1716と、取り付け用フランジ1614と、ソース本体およびパルス送出弁の断熱部1740と、装填口の断熱部1738と、供給管路の断熱部1742とを備える。あるいは、ソース本体およびパルス送出弁の断熱部1740をそれぞれ別個の断熱部として、すなわちソース本体用に1つとパルス送出弁用に1つ、実装することもできる。
【0088】
加熱式前駆体ソース1700、1702はいくつかの利点をもたらす。パルス送出弁1714、1716は、ソース本体1704の背面に水平方向に取り付けられる。ソースの装填口1708は、反応炉の正面側にあり、加熱式ソースの操作者側にある。前駆体カートリッジ1758の着脱は容易である。
【0089】
加熱式ソースの温度は、ワイヤ1734によって制御部(図示せず)に接続された熱電対1732によって測定される。加熱カートリッジ1736は、発熱体と、加熱カートリッジの局部温度を測定するための熱電対とを備える。不活性ガス入口弁1714と前駆体蒸気出口弁1716とが閉じているとき、不活性パージ/キャリアガス(例えば窒素またはアルゴン)は、ソース入口接続部1718と、不活性ガス入口弁1714と、流量制限器を有するソースバイパス管路1722と、前駆体蒸気出口弁1716と、ソース出口導管1726と、反応炉供給導管1728とを通って流れる。
【0090】
不活性ガス入口弁1714と前駆体蒸気出口弁1716とが開いているとき、不活性/キャリアガス流は2つの部分に分割される。ガス流の第1の部分は、流量制限器を有するバイパス管路1722を通る。ガス流の第2の部分は、蒸気スペース入口導管1720を通って加熱式ソースの蒸気スペース1730に入る。ガス流の第2の部分は、加熱式ソースの蒸気スペース1730の内部で前駆体蒸気と混ざる。結果として生じた第1のガス/蒸気混合物は、蒸気スペース出口導管1724を通って蒸気スペースを出る。第1のガス/蒸気混合物は、バイパス管路から到来したガス流の第1の部分に追加されて第2のガス/蒸気混合物を形成する。第2のガス/蒸気混合物は、ソース出口導管1726を通り、反応炉供給導管1728を通って反応空間(図示せず)に流れる。
【0091】
この加熱式前駆体システムは、反応室の加熱器の方向から供給導管1728を通って加熱式ソース本体1704側に漏れる熱エネルギーを利用する。加熱式ソースの首部320から周囲への熱損失は、首部の断熱部1742によって最小化される。
【0092】
サービス時は、ソース入口接続部1718と貫通取り付け具1710とを開くことによって加熱式前駆体ソース1700を反応炉から取り外す。
【0093】
図18は、一実施形態による封止可能な前駆体カートリッジを示す。前駆体カートリッジ1800(その首部領域の拡大図が図18の上部に示されている)は、カートリッジ本体1804と、カートリッジ開口部1834を有するカートリッジ首部1805と、動的シール1836、1838(例えばラジアル軸シール)によってカートリッジ首部1805に対して封止されるスライドスリーブ1806と、伸縮ばね1830と、抜け止め用隆起部1832と、任意使用のハンドル1808とを備える。固体または液体状の前駆体化学物質1824を前駆体カートリッジに充填する。ソース温度および前駆体固有の平衡蒸気圧に達するまで、前駆体をカートリッジ1826のガス空間に蒸発させる。カートリッジの炉1810は、静的シール1820(例えばOリングまたはラジアル軸シール)によってカートリッジ本体1804に対して封止可能な炉筒1822と、スリーブプッシャ1818とを備える。カートリッジの炉1810に至る導管1835に三方パルス送出弁1815が取り付けられる。パルス送出弁1815は、前駆体ソース入口1812と、不活性ガス用の入口1814と、反応空間(図示せず)側の出口1816とを有する。
【0094】
図19は、封止可能な前駆体カートリッジの使用方法を示す。図19の上部に示されているように、最初に、ソースシステムを不活性ガスによってパージする。炉の静的シール1820がカートリッジ本体1804に対して封止を形成してカートリッジ炉のガス空間を周囲のガス雰囲気(例えば室内空気)から切り離すまで、前駆体カートリッジ1804を炉筒1810に押し込む。不活性ガスが、パルス送出弁1815のパージ入口1814からソース管路を通ってパルス送出弁の出口1816に流れる。パルス送出弁の前駆体ソース入口1812が開いているとき、炉筒1822の内部のガス空間はソース管路1814、1816と流体連通している。ソース管路の不活性ガスの圧力は、質量流量コントローラ(図示せず)によって変えられる。不活性ガスの流量が小さいとき(例えば100sccm)、ソース管路の圧力は低値(例えば4hPa)に下がる。低流量を一定時間、例えば約1分間、維持する。不活性ガスの流量が大きいとき(例えば1000sccm)、ソース管路の圧力は高値(例えば15hPa)に上昇する。高流量を一定時間、例えば約1分間、維持する。この圧力変動を一定回数、例えば少なくとも10回、繰り返す。この圧力変動によるポンピング効果は、残留空気をカートリッジ炉1810のガス空間から一掃し、純粋な不活性ガスのみを炉筒1822内のガス空間に残す。パージ後、パルス送出弁入口1812を閉じる。
【0095】
次に、カートリッジ首部のカートリッジ開口部1834が露出されて前駆体カートリッジの蒸気スペース1826がカートリッジ筒1822のガス空間と流体連通するまで、前駆体カートリッジを内側に押し込む。前駆体カートリッジ1804がソース温度に加熱されると、カートリッジ炉のガス空間1826が前駆体蒸気で飽和するまで、液体または固体の前駆体1824の一部がガス空間に蒸発する。パルス送出弁の前駆体ソース入口1812を開くと、前駆体蒸気はパルス送出弁1815を通ってパルス送出弁の出口1816に流れる。パルス送出弁のパージ入口1814から三方弁を通ってパルス送出弁の出口1816に流れるキャリアガスは、前駆体蒸気を反応室(図示せず)側に押しやる。パルス送出弁入口1812が閉じられているとき、前駆体蒸気が枯渇した前駆体カートリッジのガス空間1826は、ガス空間が前駆体蒸気で再度飽和して前駆体ソースが次の前駆体パルスを送出する準備が整うまで、蒸発する液体または固体前駆体1824からの新しい前駆体蒸気を受け入れる。
【0096】
使用した前駆体カートリッジ1800を加熱式ソースから取り外すとき、または新しい前駆体カートリッジに交換するときは、前駆体カートリッジをソース温度に維持し、伸縮ばね1830がスライドスリーブ1806をカートリッジ開口部1834の先まで押して前駆体カートリッジの蒸気スペース1826をカートリッジ炉1810のガス空間から切り離せるようになるまで、カートリッジをカートリッジ炉1810から引き抜く。前駆体カートリッジ1800の表面に依然として接触している炉の静的シール1820は、カートリッジ炉1810のガス空間を室内空気から切り離し続ける。パルス送出弁1815の入口側を開き、変動圧力を有する不活性ガスによってカートリッジ炉1810のガス空間をパージする。パージによってカートリッジ筒1822の内部のガス空間から全ての残留前駆体を除去した後、パルス送出弁の入口側1812を閉じる。次に、前駆体カートリッジ1800をカートリッジ炉1810から取り外し、新しい前駆体カートリッジをカートリッジ炉に据え付ける。
【0097】
図20は、封止可能な前駆体カートリッジに適した加熱式前駆体ソース(またはソースシステム)を示す。加熱式前駆体ソース2000は、ソース本体(またはフレームワーク)302と、ソース本体用の断熱材304と、電力接続部362と加熱器カートリッジの温度を測定するための熱電対接続部364とを有する加熱器カートリッジ355と、ソース本体304の温度測定用の熱電対接続部1734と、封止可能な前駆体カートリッジ用の空間2002と、パージ入口導管371と、ソースバイパス導管336と、ソース出口導管342と、バイパス流量制限器337と、カートリッジ入口導管334と、カートリッジ出口導管338とを備える。パルス送出弁2006、2008は、前駆体ソースの被加熱領域2012の内部にある。ソース出口導管342は断熱部320によって取り囲まれ、導管は反応室の加熱器(図示せず)の方向から到来する熱エネルギーを利用して受動的に加熱される。加熱式前駆体ソース2000は、ロックナット(図21)用のねじ山2004をさらに備えてもよい。ソース入口弁2006とソース出口弁2008とが閉じられるため、不活性キャリア/パージガスは、パージ入口導管371からソースバイパス導管336に流れ、さらにソース出口導管342に流れることしかできない。流れの方向は、矢印2014、2016、および2022によって示されている。バイパス流量制限器337(例えば、0.6mm孔を有する20mm長のガラス毛細管)は、近傍の各導管に比べ、流れのコンダクタンスが限られている。したがって、バイパス流量制限器の上流側導管の圧力は、バイパス流量制限器の下流側導管の圧力より高い(例えば3〜10hPa高い)。
【0098】
図21は、閉位置にある封止可能な前駆体カートリッジを示す。一実施形態によると封止可能な前駆体カートリッジ組み立て体は、カートリッジケーシング2102と、ケーシングシール2104(例えばOリング)と、ケーシング用のロックナット2106と、カートリッジケーシング2102に対する許容誤差が厳しい取り付け具および穴2114を有するカートリッジアダプタ2108と、カートリッジキャップ2110と、カートリッジシール2112(例えばOリング)と、カートリッジ本体2116と、調整用ベローズ2118と、カートリッジ本体をカートリッジキャップ2110と共に上昇および下降させるための調整軸またはねじ2120と、カートリッジ本体2116の温度を測定するためのカートリッジ熱電対2122とを備える。カートリッジシール2112があるため、前駆体蒸気はガス空間2126から穴2114を通って昇降空間2125に進入できない。
【0099】
最初に、加熱器カートリッジ355によって前駆体ソース本体2102を十分高い温度(例えば、所望の前駆体温度に応じて80〜150℃)に加熱する。加熱器カートリッジ355の最大許容温度は、前駆体ソースの操作者によってプログラムされる。一般に、最大許容温度は、ソース本体の所望の温度より約+50℃高い。加熱器カートリッジ355への電力をオンに切り替えると、加熱器カートリッジの温度が上昇し、熱エネルギーが高温側の加熱器カートリッジ355から低温側のソース本体2102に流れ始める。加熱器カートリッジ355の温度がプログラムされた最大許容温度に達すると、加熱器カートリッジへの電力がオフに切り替えられる。ソース本体302は高い熱伝導率を有するため、ソース本体の各部間の温度は均一になりやすい。ソース本体302は断熱部304で覆われているため、ソース本体302の温度を維持するための加熱用電力は殆ど必要ない。前駆体カートリッジの底部をソース本体302より低温(例えば1〜5℃低い温度)に維持すると都合がよい。前駆体カートリッジの底部側は、ソース本体302より断熱部が少ない。したがって、前駆体ソースの最冷点は前駆体カートリッジの底部に形成される。ソース化学物質の蒸気圧は、閉じられたガス容積内の最冷点の近くで最低値を有する。ソースシステムの最冷点はカートリッジ入口334およびカートリッジ出口338の上記各導管から離れているため、上記各導管へのソース化学物質の凝縮が回避される。
【0100】
一実施形態によると、最初にソース本体302をソース温度に加熱し、次にカートリッジケーシングのねじ山付きロックナット2106を締め付けることによって、液体または固体の前駆体2124が充填された前駆体カートリッジ2116を保持するカートリッジケーシング2102をケーシングのOリング2104によってソース本体302に対して封止する。空間2125を不活性ガスでパージすることによって、残留空気を昇降空間2125から除去する。変動圧力を昇降空間2125の内部と導管334および338とに発生させるために、ソース入口弁2006とソース出口弁2008とを開き、パージ入口導管371から到来する不活性ガスの流量を低値(例えば100sccm)と高値(例えば1000sccm)との間で変化させる。圧力変動によって残留空気が加熱式ソースから搬出される。
【0101】
図22は、開位置にある封止可能な前駆体カートリッジを示す。パージ後、カートリッジキャップ2110とカートリッジシール2112との間に十分大きなギャップ(例えば2〜5mm)が生じるまで、カートリッジ組み立て体(カートリッジアダプタ2108、カートリッジキャップ2110、およびカートリッジ本体2116)を調整軸またはねじ2120によって上昇させる。前駆体蒸気は、前駆体カートリッジの蒸気スペース2126から穴2114を通って上記ギャップから昇降空間2125に、さらには任意使用の粒子フィルタ2204を通ってカートリッジ入口導管334およびカートリッジ出口導管338に流れ、および/または拡散する。パルス期間中、ソース入口弁2006とソース出口弁2008とは開かれている。バイパス流量制限器2020により、パージ入口導管371における不活性ガスの圧力は、カートリッジ入口導管334における前駆体蒸気の圧力より高い値に維持される。結果として、矢印2202で示されているように入口導管334に沿って流れる不活性ガスは、矢印2206で示されているように前駆体蒸気をカートリッジ出口導管338側に押しやる。前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物は、開いているソース出口弁2008を通って流れ、次に、矢印2016で示されているようにバイパス管路336に沿って到来した小さな不活性ガス流によって、矢印2022で示されているようにソース出口導管側に押しやられ、さらに反応室(図示せず)側に押しやられる。矢印2014、2016、2022、2202、および2008の長さは、実際の流量に比例している。
【0102】
提示されている各加熱式前駆体ソースシステムは、例えば、約200℃未満の温度において少なくとも約0.5hPaの蒸気圧を有する前駆体蒸気を固体または液体化学物質から発生させるために適している。提示されている各加熱式前駆体ソースシステムに利用可能な化学物質は、金属ハロゲン化物(例えばAlCl3、TaCl5)、シクロペンタジエニル金属類およびシクロペンタジエニル金属類の誘導体(例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウムCp2Ru、トリス(メチルシクロペンタジエニル)スカンジウム(CH3Cp)3Sc、ビス(メチル-η5-シクロペンタジエニル)マグネシウム)、金属アルコキシド類(例えば、チタンイソプロポキシドTi(OiPr)4、タンタルペンタエトキシドTa(OEt)5)、金属ベータジケトネート類(例えばトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタネジオナート)ランタンLa(thd)3、ビス(アセチルアセトナート)ニッケルNi(acac)2)、アルキルアミド金属類(例えば、TEMAHとしても公知のテトラキス(エチルメチル)アミドハフニウム[(EtMe)N]4Hf)を含む。
【0103】
加熱式前駆体ソース(単数または複数)から得られた前駆体蒸気によって堆積可能な薄膜として、酸化マグネシウムMgOを含むIIA族の酸化物類、酸化スカンジウムSc2O3、酸化イットリウムY2O3を含むIIIA族の酸化物類、酸化ランタンLa2O3およびランタニド酸化物類、例えば酸化ガドリニウムGd2O3、二酸化チタンTiO2、二酸化ジルコニウムZrO2、および二酸化ハフニウムHfO2を含むIVA族の酸化物類、五酸化タンタルTa2O5を含むVA族の酸化物類、三酸化タングステンWO3を含むVIA族の酸化物類、酸化マンガン(III)Mn2O3を含むVIIA族の酸化物類、二酸化ルテニウムRuO2および酸化ニッケル(II)NiOを含むVIII族の酸化物類、酸化銅(II)CuOを含むIB族の酸化物類、酸化亜鉛ZnOを含むIIB族の酸化物類、酸化アルミニウムAl2O3を含むIIIB族の酸化物類、二酸化シリコンSiO2および二酸化スズSnO2を含むIVB族の酸化物類、ならびに酸化ビスマスBi2O3を含むVB族の酸化物類などの二成分金属酸化物類、金属アルミネートおよび金属シリケート類など上記族類の三成分および四成分金属酸化物類、Al2O3/HfO2など上記族類の金属酸化物ナノラミネート類および金属酸化物類の固溶体、窒化ランタンLaNを含むランタニド族の窒化物類、窒化チタンTiNを含むIVA族の窒化物類、窒化ニオブNbNおよび窒化タンタルTa3N5を含むVA族の窒化物類、窒化モリブデンMoNを含むVIA族の窒化物類、窒化アルミニウムAlNを含むIIIB族の窒化物類、窒化ケイ素Si3N4を含むIVB族の窒化物類、ならびにタングステン窒化物カーバイドWNxCyを含む他の金属化合物類などの金属窒化物類が挙げられる。
【0104】
加熱式前駆体ソースのソース温度は、一部の実施形態においては、約40〜200℃の範囲から選択できる。なお、この範囲は現時点で代表的な範囲であるに過ぎず、他の実施形態においては、これより高い温度も適切でありうる。加熱式前駆体ソースの作業圧力は、通常、堆積プロセス中は約0.5〜50hPaの範囲内であるが、他の実施形態においてはこれより低い、または高い、ソース圧力が可能である。本加熱式前駆体ソース(単数または複数)は、3"〜12"シリコンウェーハなどの単一基板上に、バッチプロセス反応炉では2〜50枚の3"〜12"シリコンウェーハなど複数の基板上に、粉体カートリッジ反応炉内の1〜1000gの10μm〜1mmのSiO2などの粉体に、薄膜を堆積させるために使用できる。本加熱式前駆体ソース(単数または複数)は、CVD反応炉における前駆体蒸気の連続供給、または好ましくはALD反応炉における前駆体蒸気のパルス式供給、のために使用できる。ALD反応炉には、一般に1〜3つの加熱式前駆体ソースが取り付けられる。一部の実施形態においては、3つを超える数の加熱式前駆体ソースが反応炉に取り付けられる。本加熱式前駆体ソースの容量は、一般に1〜100gのソース化学物質であるが、一部の実施形態においては、100gを超えるソース化学物質が製造用ソースコンテナに装填される。
【0105】
構成材料の選択は、ソース化学物質に応じて異なる。アルミニウム、ステンレス鋼AISI316L、チタン、ニッケル、およびハステロイが構成材料の例として使用可能である。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態においては、ソースの補給のために、加熱式前駆体ソース全体を、加熱器および断熱材と共に、反応炉に容易に取り付けることができ、また反応炉から容易に取り外すことができる。別の利点は、ソースシステムの温度を単純な単一の加熱器によって制御できることである。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、いくつかの実施形態をさらに例示する。
【実施例1】
【0108】
〔加熱式前駆体ソースの蒸気発生容量〕
換算係数:
100cm3=0.1dm3=l*10-4m3
1mbar=100Pa=1hPa
【0109】
TEMAHとしても公知のテトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムをソース化学物質として使用する。前駆体の平衡蒸気圧が約+104℃において3hPaであり、管路圧力が15hPaであるとき、結果として生じたガスと蒸気の混合物は3hPa/15hPa*100vol.-%=20vo1.-%の前駆体蒸気を含んでいる。前駆体カートリッジの蒸気相容積は100cm3である。パルス期間中にソース圧力を5hPaに下げると、(15hPa-5hPa)/15hPa*100%=67%の前駆体蒸気が前駆体カートリッジから導き出される。67%*3hPa*100cm3=200mbar*cm3。
【0110】
ソース温度が+104℃(377K)であると、理想気体の法則により、pV=nRT->n=pV/RT=200Pa*1*10-4m3/(8.31441Jmol-1K-1*377K)=200N/m2*l*10-4m3/(8.31441Nmmol-1K-1*377K)=0.02Nm/3135Nmmol-1=0.00000638molおよびm(TEMAH)=411.89g/mol*0.00000638mol=0.00263g=2.63mgになる。
【0111】
この実施例においては、前駆体蒸気の25%が基板表面に化学吸着され、前駆体蒸気の75%が反応室壁上での薄膜の成長に失われるか、またはALD反応炉の排気管路に直接失われると想定する。HfO2の最大密度は9.68g/cm3(9.68mg/mm3=9.68*10-9mg/μm3に等しい)である。文献によると、TEMAHおよびH2OからのHfO2の成長速度は、+300℃において0.06nm/サイクルである。したがって、1cm2の平滑面上に追加されるHfO2の量は0.06nm*0.01*109nm*0.01*109nm=6*1012nm3=6000μm3であり、質量は9.68*10-9mg/μm3*6000μm3=0.0000581mgである。二酸化ハフニウムのモル質量M(HfO2)は、210.49g/molであり、TEMAHのモル質量は411.89g/molである。したがって、1cm2の平滑面を覆うには411.89g/mol/210.49g/mol*0.0000581mg=0.00011mgのTEMAHが必要とされ、1cm2の平滑基板面を覆うには、25%の化学吸着効率により、0.00045mgのTEMAH蒸気を反応室に供給する必要がある。前駆体ソースは、前駆体パルス期間中に2.66mgのTEMAHを供給し、これにより、2.66mg/0.00045mg/cm2=5900cm2の平滑基板面を覆うことができるため、1回分の75枚の4インチウェーハの処理に十分である。90%縮小されて100cm3から10cm3になった蒸気スペースにソース化学物質が充填され、蒸気圧が80%下げられて3hPaから0.5hPaになった加熱式前駆体ソースでも、5900cm2*0.1*0.2=118cm2上に薄膜を堆積するために十分な前駆体蒸気を供給でき、これは100mm(4インチ)の単一ウェーハを被膜するに十分であると推定できる。ソースシステムの温度は、ソースカートリッジの底部近くに配置された熱電対によって測定する。ソースシステムは、ソースフレームワークの内部に配置された抵抗加熱器によって加熱される。加熱器は、加熱器の温度を測定するための内部熱電対を備える。加熱器の消費電力は、一般に50〜500Wの範囲内であり、好ましくは100〜200Wの範囲内である。このような低消費電力は、加熱器の駆動にPID温度コントローラ付きの24V直流電源を使用できることを意味するが、他の実施形態においては、加熱器を駆動するために温度コントローラによってライン交流パルス電圧が使用される。ソース出口導管は、二方向から受動的に加熱される。熱は伝導によってソースフレームワークからソース出口導管の底部側に流れ、放射および対流によって反応室の加熱器からソース出口導管の上部に流れる。熱損失は、断熱層と貫通突起の輪郭設計とによって最小化される。貫通突起は、反応炉の中間スペースから貫通フランジに延在する。外側の貫通突起と内側の貫通突起との間の外側の隙間は、熱伝導経路を延長し、これにより、反応炉の底部フランジへの伝導によって失われる熱の量を減らす。鍔形の首部絶縁体がシール締め付けナットを取り巻く。均熱化ブロックと内側の貫通突起との間の内側の隙間は、均熱化ブロックから反応炉の底部フランジに熱を移動させにくくする。他の実施形態においては、ソース管路温度を前駆体蒸気の凝縮温度より高く維持するために別の加熱器を貫通領域に設けることができる。
【0112】
ソースシステムを貫通突起とは別個に反応炉の底部フランジから取り外すには、首部の絶縁体を取り外し、シール締め付けナットを緩める。ソースシステムを貫通突起と共に反応炉の底フランジから取り外すには、締め付けシールを緩める。
【0113】
断熱材用に適した材料の一例として、最大200〜250℃の温度に耐えられるシリコーンゴム発泡体が使用可能である。極めてコンパクトなソースシステムにするには、断熱する表面をSupertherm(登録商標)塗料などの断熱セラミック塗料で被膜することもできる。Supertherm(登録商標)塗料は約+260℃に連続的に耐え、熱伝導と赤外線の両方を阻止する。乾燥した塗料の一体構造により、対流による熱損失も極めて小さい。比較として、約0.25〜0.5mm厚の乾燥セラミック塗料層は、100mm厚のゴム発泡体片と同じ効率でフレームワークを断熱する。
【0114】
ソースカートリッジは、カートリッジ本体と、カートリッジシールと、任意使用の粒子フィルタとを備える。先端を有するねじ山付きカートリッジフランジはカートリッジ本体をソースフレームワークに押し付け、カートリッジ本体とソースフレームワークとの間で圧迫されたカートリッジシールは室内空気に対してカートリッジを気密にする。カートリッジシールは、最大200〜230℃の温度の耐えられる例えばバイトン(Viton)ゴムまたは過フッ化ゴムKalrez(登録商標)、Simriz(登録商標)、またはChemraz(登録商標)など)のOリングにすることができる。ソース内のシールに適切な他の材料は、例えばエリックス(Eriks)社のOリング技術マニュアルから選択できる。
【0115】
ソース導管の先端を、例えば公差嵌合、VCR嵌合、または金属フェルール嵌合によって、反応室に取り付けることができる。
【実施例2】
【0116】
〔加熱式前駆体ソースによる五酸化タンタルTa2O5の堆積〕
フィンランドのピコサン・オイ(Picosun Oy)社製のSUNALE(商標)R-150 ALD反応炉の内部で4"シリコン基板上にTa2O5薄膜を堆積させるための前駆体として五酸化タンタルTa(OEt)5と水とを用いた。Ta(OEt)5は、室温近くで強粘液であり、+120℃における蒸気圧が10hPaである。1hPa=100Pa=1mbarである。Ta(OEt)5の室温近くでの蒸気圧は無視できるほど小さいため、十分なソース蒸気圧を高ソース温度で得るために加熱式前駆体ソースを用いた。加熱式前駆体ソースのラジアル軸シールに押し付けられたガラス製カートリッジにTa(OEt)5を注射器と針とを用いて充填した。水は室温において液体であり、20℃における蒸気圧は23hPaである。水を室温25℃近くで蒸発させるために液体前駆体ソースを用いた。
【0117】
100mmのシリコンウェーハを基板として用いた。この基板を基板ホルダーに配置し、ホルダーをALD反応炉の反応室に降下させた。反応空間と中間スペースとを機械的真空ポンプによって1hPa絶対圧未満に降圧した。真空ポンプの運転中、流れる窒素ガスによって反応空間の圧力を約1〜3hPaの圧力範囲に調整した。前駆体蒸気が反応空間から中間スペースに漏れないように、中間スペースの圧力を反応空間の圧力より約3〜5hPa高く維持した。他の実施形態においては、ガスを反応空間から排気管路に十分素早く除去でき、かつ反応性ガスが中間スペース側に漏れない限り、他の種類の圧力範囲を実現可能である。基板の加熱を加速するために、反応空間を300℃に予熱しておいた。反応空間内の圧力が安定化した後、反応空間内の温度が均一になるまで、プロセス制御を約5分間待機させた。
【0118】
堆積サイクルをTa(OEt)5蒸気への曝露期間(0.2s)と、第1の除去期間(2.0s)と、H2O蒸気への曝露期間(0.1s)と、第2の除去期間(4.0s)の4つの基本的な順次ステップで構成した。プロセス制御部が1000の同一堆積サイクルから成る堆積シーケンスを完了したとき、ポンピング弁を閉じ、反応炉に純粋な窒素ガスを大気圧に達するまで通気した。基板ホルダーを反応室から上昇させ、測定のために基板を基板ホルダーから取り外した。堆積実験の結果として、厚さ40nmのTa2O5薄膜が基板上に得られた。Ta2O5の成長速度は、300℃において0.07nm/サイクルであった。
【実施例3】
【0119】
〔3つの前駆体ソースによる不純物添加金属酸化物薄膜の堆積〕
ジエチル亜鉛(DEZ)を充填した1つのPicosolution(商標)前駆体ソースと、精製水を充填した1つのPicosolution(商標)前駆体ソースと、ビス(メチル-η5-シクロペンタジエニル)マグネシウム(CPMM)を充填した1つのPicohot(商標)ソースシステムとをALD反応炉に据え付けた。CPMMソースを+95℃に加熱した。これにより、蒸気圧が約10hPaになった。水源温度が好ましくは僅かに室温未満になるように、水源温度をペルチェ素子冷却器によって制御したが、他の実施形態においては、水の凝縮を防止するためにソース管路が十分に断熱されている限り、室温より高い温度を使用できる。この堆積例において、冷却された水源の温度は+18℃であった。
【0120】
ALD反応炉の反応室を+250℃に加熱した。6インチのシリコンウェーハを反応室に装填した。ウェーハの温度を反応室の温度に安定化させるために、安定化タイマを約5分に設定した。
【0121】
最初に、基板表面をヒドロキシル(OH)基で飽和させるために、水蒸気パルスを反応室に供給した。他の実施形態によると、基板表面は一般に、薄膜成長を開始させるに十分なOH基を含んでいるので、金属前駆体パルスの供給を直接開始することも可能である。
【0122】
次に、堆積プログラムは、窒素パージガスによってそれぞれ分離されたDEZ、CPMM、および水蒸気の各パルスを反応室に供給した。結果として、Mgが添加されたn型ZnO薄膜がウェーハ上に2A/サイクルの成長速度で成長した。
【0123】
いくつかの利点を上で説明したことに留意されたい。勿論、本発明の何れか特定の実施形態によっては、このような利点の全てが必ずしも実現されないこともあり得ることを理解されたい。したがって、例えば、本願明細書に教示されているように1つの利点または利点群を、本願明細書に教示または示唆されているような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、実現または最適化するように本発明を具現化または実施しうることを当業者は認識されるであろう。
【0124】
さらに、この発明はいくつかの好適な実施形態および実施例の文脈で開示されているが、本発明は具体的に開示された実施形態を超えて本発明の他の代替実施形態および/または用途、およびその自明の変更物ならびに等価物にまで及ぶことを当業者は理解されるであろう。また、本発明のいくつかの変形例を図示し詳細に説明してきたが、この開示に基づき当業者には本発明の範囲に含まれる他の変更物も容易に明らかになるであろう。例えば、各実施形態の特定の特徴および側面のさまざまな組み合わせまたは部分的組み合わせが可能であり、これらの組み合わせまたは部分的組み合わせも本発明の範囲に含まれると考えられる。したがって、開示されている発明の変形モードを形成するために、開示されている実施形態のさまざまな特徴および側面を互いに組み合わせることも入れ替えることもできることを理解されたい。したがって、本願明細書に開示されている本発明の範囲は、開示されている上記の特定の実施形態によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を公正に閲読することによってのみ判断されるべきものである。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、全般的には堆積反応炉のための装置および方法に関する。本発明は、特に、順次自己飽和表面反応によって材料を表面に堆積させるこのような堆積反応炉のための前駆体ソース、装置、および方法に関するが、これだけに限定されるものではない。
【発明の背景】
【0002】
原子層エピタキシー(ALE:Atomic Layer Epitaxy)法は、1970年代初頭にツオモ・サントラ博士(Tuomo Suntola)によって発明された。この方法の別の総称名は原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)であり、今日ではALEの代わりにALDが使用されている。ALDは、加熱された反応空間内に配置された基板に少なくとも2つの反応性前駆体種を順次導入することによる特殊な化学的堆積法である。ALDの成長機構は、化学的吸着(化学吸着)と物理的吸着(物理吸着)との間の結合強度の差異を利用する。ALDは、堆積プロセス中、化学吸着を利用し、物理吸着を排除する。化学吸着中、固相表面の原子(単数または複数)と気相から到達する分子との間に強力な化学結合が形成される。物理吸着による結合は、ファンデルワールス力のみが関与するため、化学結合よりはるかに弱い。物理吸着による結合は、局部温度が分子の凝縮温度を超えたときに熱エネルギーによって容易に破壊される。
【0003】
定義上、ALD反応炉の反応空間は、薄膜の堆積に用いられる各ALD前駆体に交互に順次曝露されうる全ての加熱された表面を含む。基本的なALD堆積サイクルは、連続する4つのステップ、すなわち、パルスA、パージA、パルスB、およびパージB、で構成される。パルスAは、一般に金属前駆体蒸気で構成され、パルスBは非金属前駆体蒸気、特に窒素または酸素前駆体蒸気、で構成される。ガス状の反応副生成物と残留反応物分子とを反応空間からパージするために、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスと真空ポンプとが用いられる。1つの堆積シーケンスは、少なくとも1つの堆積サイクルを含む。1つの堆積シーケンスによって所望の厚さの薄膜が生成されるまで、堆積サイクルが繰り返される。
【0004】
前駆体種は、加熱された表面の反応部位への化学結合を化学吸着によって形成する。一般に、1つの前駆体パルス期間中に固体材料の単一分子層が各表面に形成されるように条件が構成される。したがって、成長プロセスは自己終結または飽和的である。例えば、第1の前駆体は、表面を飽和させるために吸着種に付着したまま、さらなる化学吸着を防止するリガンドを含むことができる。反応空間の温度は、前駆体の分子種が基本的にそのままの状態で基板(単数または複数)に化学吸着されるように、凝縮温度より高く、使用される前駆体の熱分解温度より低い温度に維持される。基本的にそのままの状態でとは、前駆体の分子種が表面に化学吸着されるときに揮発性リガンドが前駆体分子から脱離しうることを意味する。表面は、基本的に、第1の種類の反応部位、すなわち第1の前駆体分子の吸着種、で飽和する。この化学吸着ステップの次に、一般に、第1のパージステップ(パージA)が続く。第1のパージステップ(パージA)では、第1の前駆体の余剰分と発生しうる反応副生成物とが反応空間から除去される。次に、第2の前駆体蒸気が反応空間に導入される。第2の前駆体分子は、一般に、第1の前駆体分子の吸着種と反応し、これにより所望の薄膜材料が形成される。この成長は、吸着された第1の前駆体の全量が消費され、表面が基本的に第2の種類の反応部位で飽和すると、終了する。次に、第2の前駆体蒸気の余剰分と発生しうる反応副生成物蒸気とが第2のパージステップ(パージB)によって除去される。次に、このサイクルは、膜が所望の厚さに成長するまで繰り返される。堆積サイクルをより複雑にすることもできる。例えば、堆積サイクルは、パージステップによってそれぞれ分離された3つ以上の反応物蒸気パルスを含むことができる。これら全ての堆積サイクルによって、論理装置またはマイクロプロセッサによって制御される1つの調時式堆積シーケンスが形成される。
【0005】
ALDによって成長した薄膜は、緻密でピンホールが無く、厚さが一様である。例えば、TMAとも称されるトリメチルアルミニウム(CH3)3Alと水とから250〜300℃で成長させた酸化アルミニウムは、通常、100〜200mmのウェーハ全体にわたる不均一性が約1%である。ALDによって成長させた金属酸化物薄膜は、ゲート絶縁膜、エレクトロルミネセンス表示装置の絶縁体、キャパシタ絶縁膜、および不動態化層に適している。ALDによって成長させた金属窒化物薄膜は、例えばデュアルダマシン構造における、拡散障壁に適している。薄膜をALD成長させるための前駆体およびALD法によって堆積される薄膜材料は、参照により本願明細書に援用するものとする、例えば、M.リタラ(Ritala)らの評論記事「原子層堆積(Atomic Layer Deposition)」、薄膜材料ハンドブック(Handbook of Thin Film Materials)第1巻:薄膜の堆積および処理(Deposition and Processing of Thin Films)第2章、p.103、アカデミック・プレス社(Academic Press)2002年、およびR.プールネン(Puurunen)の「原子層堆積の界面化学:トリメチルアルミニウム/水プロセスのケーススタディ(Surface chemistry of atomic layer deposition: A case study for the trimethylaluminium/water process)」、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Journal of Applied Physics)、第97(2005)巻、p.121301-121352に開示されている。
【0006】
ALE法およびALD法の実現に適した装置は、参照により本願明細書に援用するものとする、例えば、T.サントラ(Suntola)の評論記事「原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy)」、マテリアルズ・サイエンス・レポーツ(Materials Science Report)第4(7)巻、p.261、エルセビヤ・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)B.V.、1989年、およびT.サントラ(Suntola)の「原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy)」、ハンドブック・オブ・クリスタル・グロウス3(Handbook of Crystal Growth 3)、薄膜およびエピタキシー(Thin Films and Epitaxy)、第B部:成長メカニズムおよびダイナミクス(Growth Mechanisms and Dynamics)、第14章、p.601、エルセビヤ・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)B.V.、1994年に開示されている。
【0007】
前駆体ソースは、参照により本願明細書に援用するものとする、米国特許出願公開第2007/0117383号に開示されている。
【0008】
別の前駆体ソースは、これも参照により本願明細書に援用するものとする、国際公開第2006/111618号に開示されている。
【0009】
既存のさまざまな前駆体ソースにはいくつかの問題がある。一般的な問題の1つは、ソース化学物質管路における前駆体蒸気の凝縮を防止するために複雑で高価な加熱システムを必要とする点である。別の一般的な問題は、固体前駆体表面上の表皮の形成を防止するために複雑なソース構造を必要とする点である。さらに別の一般的な問題は、既存の前駆体ソースは極めてかさばり、前駆体ソースのサービスに時間がかかっている点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0117383号
【特許文献2】国際公開第2006/111618号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M.リタラ(Ritala)らの評論記事「原子層堆積(Atomic Layer Deposition)」、薄膜材料ハンドブック(Handbook of Thin Film Materials)第1巻:薄膜の堆積および処理(Deposition and Processing of Thin Films)第2章、p.103、アカデミック・プレス社(Academic Press)、2002年。
【非特許文献2】R.プールネン(Puurunen)の「原子層堆積の界面化学:トリメチルアルミニウム/水プロセスのケーススタディ(Surface chemistry of atomic layer deposition: A case study for the trimethylaluminium/water process)」、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Journal of Applied Physics)、第97(2005)巻、p.121301-121352。
【非特許文献3】T.サントラ(Suntola)の評論記事「原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy)」、マテリアルズ・サイエンス・レポーツ(Materials Science Report)第4(7)巻、p.261、エルセビヤ・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)B.V.、1989年。
【非特許文献4】T.サントラ(Suntola)の「原子層エピタキシー(Atomic Layer Epitaxy)」、ハンドブック・オブ・クリスタル・グロウス3(Handbook of Crystal Growth 3)、薄膜およびエピタキシー(Thin Films and Epitaxy)、第B部:成長メカニズムおよびダイナミクス(Growth Mechanisms and Dynamics)、第14章、p.601、エルセビヤ・サイエンス・パブリッシャーズ(Elsevier Science Publishers)B.V.、1994年。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室に、前駆体ソースからの前駆体蒸気を供給するための供給管路と、
前駆体ソースと反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防止するために反応室加熱器からの熱を利用するように構成された構造と、
を備える装置が提供される。
【0013】
1つ以上の基板が存在しうる。
【0014】
一実施態様において、前駆体ソースは反応炉からの熱を受けるように構成された突起を備える。一実施態様において、本装置は、突起の内部にある内側首部と突起の周囲にある外側首部とを備え、内側首部と外側首部とはその間にギャップを形成する。一実施態様において、本装置は、突起から周囲への熱エネルギーの損失を減らすように構成された熱伝導部を供給管路の周囲に備える。
【0015】
一実施態様において、本装置は、着脱可能な(または除去可能な)ソースカートリッジを受け入れるように構成されたソースフレームワークを備える。
【0016】
一実施態様において、本装置は、ソースカートリッジまたはソースブロックを加熱するための加熱器を備える。
【0017】
本発明の第2の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を制御するように構成される、前駆体ソースに搭載された2つのパルス送出弁と、
1つのパルス送出弁から別のパルス送出弁に不活性ガスを供給するための、パルス送出弁間のバイパス管路と、
を備える装置が提供される。
【0018】
一実施態様において、本装置は流量制限器をバイパス管路内に備える。
【0019】
本発明の第3の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を制御するように構成される、前駆体ソースに搭載されたパルス送出弁と、
を備え、
圧力を上昇させて反応室への前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物の順次流を容易にするために、不活性ガスをパルス送出弁経由で前駆体ソースカートリッジに搬送するように構成された装置が提供される。
【0020】
一実施態様において、本装置は、
圧力上昇後、次の前駆体パルス期間の開始まで前駆体カートリッジを閉じるように構成され、
次の前駆体パルス期間の開始時にパルス送出弁経由で反応室に向かうルートを開くようにさらに構成される。
【0021】
本発明の第4の側面によると、前駆体ソースであって、
着脱可能な前駆体カートリッジと、
前駆体カートリッジを前記前駆体ソースに着脱しうるように構成される第1の取り付け具と、
前記前駆体ソースを堆積反応炉デバイスに着脱するための第2の取り付け具と、
を備える前駆体ソースが提供される。
【0022】
一実施態様において、前駆体ソースは、第1の取り付け具に接続された粒子フィルタを備える。一実施態様において、前駆体ソースは、前駆体カートリッジ内から第1の取り付け具への前駆体材料の流出を防ぐために前駆体カートリッジを封止するように構成された封止部または弁を備える。
【0023】
一実施態様において、本前駆体ソースは、
封止部または弁の第1の側にある第3の取り付け具と、
封止部または弁の別の側にある第4の取り付け具と、
を備え、
上記第3および第4の取り付け具は、上記封止部または弁の取り外しおよびカートリッジの洗浄用に開くように構成される。
【0024】
本発明の第5の側面によると、
前駆体材料を備える前駆体ボートと、
内部に装填される上記前駆体ボートを受け入れる焼結カートリッジと、
を備える前駆体カートリッジが提供される。
【0025】
一実施態様において、ソース化学物質が装填される前駆体ボートは、装填口から焼結カートリッジに入るように横向きに配置される。
【0026】
本発明の第6の側面によると、
堆積反応炉の前駆体ソースからの前駆体蒸気を供給管路に沿って、加熱された基板を収容する反応室に供給することと、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させることと、
前駆体ソースと反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防止するために反応室加熱器からの熱を使用することと、
を含む方法が提供される。
【0027】
一実施態様において、本方法は、反応炉からの熱をソース内の突起に受けることを含み、この突起は供給管路を有し、上記受けられた熱がこの供給管路を加熱する。
【0028】
一実施態様において、本方法は、突起から周囲への熱エネルギーの損失を減らすために熱伝導部を供給管路の周囲に配置することを含む。
【0029】
本発明の第7の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させることと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を、前駆体ソースに搭載された2つのパルス送出弁によって制御することと、
一方のパルス送出弁から別のパルス送出弁にバイパス管路経由で不活性ガスを供給することと、
を含む方法が提供される。
【0030】
本発明の第8の側面によると、
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積することと、
基板を収容し反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を、前駆体ソースに搭載された1つのパルス送出弁によって制御することと、
圧力を上昇させて反応室への前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物の順次流を容易にするために、不活性ガスをパルス送出弁経由で前駆体ソースカートリッジに搬送することと、
を含む方法が提供される。
【0031】
本発明の第9の側面によると、
前駆体ソースを作動させることと、
ソース化学物質が装填された横型の前駆体ボートを前駆体ソースの焼結カートリッジで受けることと、
を含む方法が提供される。
【0032】
本発明のさらに別の側面によると、他の何れかの側面の前駆体ソースで使用するための着脱可能な前駆体カートリッジが提供される。
【0033】
一実施態様においては、定量投与弁を取り付けるためのフレームワークと、前駆体カートリッジを取り付けるためのフレームワークと、貫通導管と、少なくとも1つの定量投与弁と、一体型バイパス流導管と、取り外し可能な前駆体カートリッジとを備える、材料を基板上に堆積させるための前駆体ソースが提供される。
【0034】
別の実施態様においては、複数の定量投与弁を取り付け、かつ前駆体容積を収容するためのフレームワークと、貫通導管と、少なくとも1つの定量投与弁と、一体型バイパス流導管とを備える、材料を基板上に堆積させるための前駆体ソースが提供される。
【0035】
これらの装置、ソース、前駆体カートリッジ、および方法は、加熱された表面上に大気圧より低い圧力で材料または薄膜を順次自己飽和表面反応によって成長させることを目的としてもよく、この場合、装置はALD(原子層堆積)またはALE(原子層エピタキシー)装置または同様の装置になる。薄膜の所望の厚さは、一般に、1つの単分子層または分子層から1000nmまたはそれ以上に及ぶ範囲内になるであろう。
【0036】
これらの装置、ソース、ソースカートリッジ、および方法は、加熱された表面上に大気圧より低い圧力下で材料または薄膜を順次自己飽和表面反応によって成長させるためのソース化学物質蒸気を生成することを想定してもよい。ソース化学物質蒸気は、例えば固体または液体の化学物質を加熱することによって発生させてもよい。これらの蒸気は、例えば、室温で約10hPa未満の蒸気圧を有してもよい。
【0037】
いくつかの実施態様は、簡略化された加熱システムを有する、堆積反応炉用のモジュール式前駆体ソースを提供する。いくつかの実施態様は、表皮の形成を防止するためにソース全体にわたって温度勾配が制御されたモジュール式前駆体ソースを提供する。いくつかの実施態様は、占有面積が小さいモジュール式前駆体ソースを提供する。
【0038】
いくつかの実施態様においては、高温で固体または液体化学物質から蒸気を発生させる前駆体ソースが用いられる。いくつかの実施態様は、低い蒸気圧の前駆体からソース化学物質蒸気を発生させる装置および方法に関する。
【0039】
一実施態様によると、加熱式前駆体ソースは、取り外し可能な前駆体カートリッジと、搭載された加熱システムによって前駆体ソースを加熱する手段とを備える。この加熱式前駆体ソースは、前駆体ソース全体にわたって温度勾配を生じさせるために前駆体ソースの選択された領域から熱を制御された方法で除去する前駆体ソース冷却手段を備えうる。この加熱式前駆体ソースは、前駆体ソースと反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防止するために反応室の熱を利用する構造を備えうる。
【0040】
上記のさまざまな側面は、それぞれ別個の側面として提示されているが、何れか適切な方法で組み合わせうることは当業者には明らかなはずである。また、本願明細書に開示されている各実施態様および一側面に関する従属請求項の発明対象は、本発明の他の側面に適用可能である。さらに、特定の一側面の一実施態様は、同じ側面の他の実施態様(単数または複数)と何れか適切な方法で組み合わせることができる。
【0041】
次に、添付図面に示されている例示的実施形態を参照しながら本発明をより詳細に説明する。これらの図において、同様の参照符号はさまざまな実施形態において同様の特徴に対して用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】非加熱式液体ソースシステムが堆積反応炉に取り付けられた先行技術の構成の概略図である。
【図2】非加熱式液体ソースシステムが堆積反応炉に取り付けられた先行技術の構成の別の概略図である。
【図3】2つの定量投与弁を有する加熱式前駆体ソースの概略図である。
【図4】1つの定量投与弁を有する加熱式前駆体ソースの概略図である。
【図5】カートリッジ内部に封止部を有する前駆体ソースを示す概略図である。
【図6】カートリッジ内部に封止部を有する前駆体ソースを示す別の概略図である。
【図7】前駆体パルス期間中の前駆体ソースのプロセス計装の状態を示す概略図である。
【図8】ガス充填期間中の前駆体ソースのプロセス計装の状態を示す概略図である。
【図9】パージ期間中の前駆体ソースのプロセス計装の状態を示す概略図である。
【図10】一実施形態による前駆体ソースの圧力およびタイミングを示す概略図である。
【図11】別の実施形態による前駆体ソースの圧力およびタイミングを示す概略図である。
【図12】不活性ガス供給システムを備える加熱式前駆体ソースを示す概略図である。
【図13】弁の少ない不活性ガス供給システムを備える加熱式前駆体ソースの概略図である。
【図14】一実施形態による取り外し可能な前駆体コンテナを備える加熱式前駆体ソースを示す概略図である。
【図15】別の実施形態による加熱式前駆体ソース用の取り外し可能な前駆体コンテナを示す概略図である。
【図16】別の実施形態による加熱式前駆体ソースを示す概略図である。
【図17】別の実施形態による加熱式前駆体ソースを示す概略図である。
【図18】一実施形態による封止可能な前駆体カートリッジを示す概略図である。
【図19】一実施形態による封止可能な前駆体カートリッジの使用法を示す概略図である。
【図20】封止可能な前駆体カートリッジに適した加熱式ソースを示す概略図である。
【図21】閉位置にある封止可能な前駆体カートリッジを示す概略図である。
【図22】開位置にある封止可能な前駆体カートリッジを示す概略図である。
【詳細な説明】
【0043】
以下の説明および論理的考察によって制限されることを望むものではないが、次に図と実施例により本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの図および実施例に限定されるものではない。当業者は、これらの装置および方法の変形例を本発明の範囲から逸脱することなく構成できることを理解されるであろう。
【0044】
図1は、パルス期間中の非加熱式液体前駆体ソース100の概略図を示す。ソース100は、パルス送出弁104によって制御される。パルス期間中、パルス送出弁104は開かれている。液体前駆体は、ソース100の内部で蒸発して前駆体蒸気を発生する。前駆体蒸気は、開いているパルス送出弁104を通って供給管路(または供給導管)108に入るために十分な高圧力を有する。前駆体蒸気は、矢印146で示されているように導管102に沿って流れ、パルス送出弁104を通り、矢印138で示されているように供給導管108に沿って流れる。前駆体蒸気は、基板ホルダー118を収容している加熱された反応室106に到達する。反応室106は、反応室の蓋116によって中間スペース126から密閉されている。反応炉122は、真空室の蓋124によって室内の空気に対して封止されている。前駆体蒸気は、反応室106の内部の加熱されたあらゆる表面に化学吸着される。これらの表面は、前駆体蒸気の最大1つの分子層で飽和する。前駆体蒸気の余剰分と表面反応副生物とは、矢印148で示すように、反応室106から排気管路112を通って真空ポンプ110に流れる。真空ポンプ110はこれらのガスを圧縮し、圧縮されたガスは真空ポンプ110から出口導管114に出る。キャリアおよびパージガスとして不活性ガス、例えば窒素ガス、が用いられる。不活性ガスソース128からの不活性ガス流は2つの部分に分割される。不活性ガス流の一方の部分は中間スペースへの導管132によって導かれ、不活性ガス流のもう一方の部分はソース管路への導管130に導かれる。中間スペース126に向かう不活性ガスの流量は、第1の質量流量コントローラ140によって制御される。不活性ガスは、中間スペース126から流量制限器144を通って排気管路112に排出される。反応室106に向かう不活性ガスの流量は、第2の質量流量コントローラ134によって制御される。不活性ガスは、前駆体蒸気をパルス送出弁104から反応室106側に押しやる。基板ホルダー118と、反応室の蓋116と、真空室の蓋124とは、昇降機構120によって制御される。
【0045】
図2は、パージ期間中の非加熱式液体前駆体ソース100の概略図を示す。パルス送出弁104は閉じられている。液体前駆体ソース100は供給導管108から切り離されている。不活性ガスは残留前駆体蒸気を反応室106に向けてパージする。パージは、供給導管108から気相を一掃する。その後、純粋な不活性ガスのみが、矢印200で示すように、供給管路/導管108に沿って流れる。不活性ガスは、さらに反応室106をパージして表面反応から生じた気体副生物と残留前駆体蒸気とを反応室の気相から一掃する。反応室および中間スペース内のあらゆるガスは最終的に排気管路112に入り、矢印202で示されているように真空ポンプ110に向かって流れる。
【0046】
図3は、低蒸気圧の前駆体を蒸発させるために使用可能な加熱式二重弁ソース300(またはソースシステム)の概略図を示す。ソース300は、熱伝導性のソースフレームワーク302と、断熱カバー304と、制御システム308を有する第1のパルス送出弁306と、制御システム312を有する第2のパルス送出弁310と、前駆体カートリッジ344とを備える。前駆体カートリッジ344は、加熱されると、一般に前駆体を固相または液相354および気相356で収容する。制御システム308、312は一般に空気圧または電気式の制御方法に基づく。ソースフレームワーク302は、導管コネクタ314によって反応室供給管路316に締め付けられる。突起が反応炉の熱エネルギーを利用する。ここで反応炉という用語は、真空室と反応室の両方を含む。突起は、内側首部320と、外側首部328と、首部コネクタとを備え、首部コネクタは、突起を真空室壁330に取り付けるための一対のフランジ322、324とこれらのフランジ間のシール326とを備える。外側首部328と内側首部320との間の真空ギャップ332は、熱エネルギー流の経路長を長くし、突起から周囲の室内雰囲気および冷たい真空室壁330への熱エネルギーの損失を減らす。内側首部320と同軸熱伝導管318との間の空隙321は、熱エネルギー流の経路長を長くし、突起から周囲雰囲気および冷たい真空室壁330への熱エネルギーの損失を減らす。真空室内に配置された加熱器(図示せず)は、突起の供給導管316と内側首部320とを加熱する。熱エネルギー流は、2つの部分に分割される。熱エネルギー流の第1の部分は、伝導によって内側首部320および供給導管316から第1のルートに沿って移動し、供給導管316および熱伝導管318に沿ってコネクタ314に向かう。熱エネルギー流の第2の部分は、大半は伝導によって内側首部320から第2のルートに沿って移動し、フランジ322、324を通り、外側首部328に沿って真空室壁330に達する。断熱カバー304への熱エネルギー流の第2の部分の進入は、同軸断熱パッド325によって制限される。第1のルートは、供給導管をALD反応炉と前駆体ソースとの間で加熱状態に保持する。第2のルートは、供給導管316から真空室壁330への熱損失を最小化するために、極力長く、かつ極力小さな熱伝導率を有する。
【0047】
ALD反応炉への加熱式前駆体ソース300の取り付けまたは取り外しは、導管コネクタ314または首部コネクタによって行われる。導管コネクタ314による取り付け/取り外しレベルは、点線338によって示されている。一例として、導管コネクタ314は、VCRフランジ間に金属シールを有するVCRコネクタである。別の例として、導管コネクタ314は、スウェージロック(Swagelok)社のコネクタまたはVCO Oリングコネクタである。一例として、首部コネクタは、Oリングシールによって締め付けられるフランジコネクタである。
【0048】
チタンイソプロポキシドTi(OiPr)4は、一般に、十分な前駆体蒸気圧を得るために加熱が必要なソース化学物質の一例として使用可能である。Ti(OiPr)4は前駆体カートリッジ344に装填され、任意使用の粒子フィルタ352がカートリッジ344の上部に配置される。一実施形態によると、カートリッジ344はソースフレームワーク302に対してOリングシール318によって封止される。漏れのない接続を行うために、カートリッジ344を締め付けナット348によって底部にさらに締め付けることもできる。カートリッジ344の温度は、カートリッジ344の首部346を通して取り付けられた第1の熱電対358によって測定される。ソースフレームワーク/本体302は、少なくとも1つの熱源によって加熱される。一実施形態によると、この熱源は、電気的に加熱される抵抗体355を備える。発熱抵抗体355は、コンピュータ制御の電源に配線364される。発熱抵抗体355の温度は、第2の熱電対362によって測定される。断熱パッド350は、ソースカートリッジ344から室内雰囲気への熱エネルギーの損失を制限する。2つのパルス送出弁306、310は、例えば金属製の複数のCリングまたはOリングによって、ソースフレームワーク302に対して封止される。第1のパルス送出弁306は、不活性キャリアガス(例えば窒素)をソースカートリッジ344の気相356に定量投与するためのソース入口コントローラとして機能する。第2のパルス送出弁310は、不活性キャリアガスと混合された前駆体蒸気をソース出口導管342に、さらには反応室の供給導管316に定量投与するためのソース出口コントローラとして機能する。パルス送出弁306、310は、例えば、開放パージ導管が弁を貫通する三方弁である。
【0049】
パージ期間中、これらの弁は閉じている。すなわち、これらの弁の第3のポート、すなわち弁306、310のソース側は、これらの弁のパージ導管から切り離されている。パージ期間中、全ての不活性ガスは、第1の弁入口導管371から第1の弁の内部のパージ導管を通ってバイパス導管336に流れて第2の弁に到達し、第2の弁の内部のパージ導管を通り、ソース出口導管342から供給導管316を通って反応炉の反応室に達する。バイパス導管は、適切な流量制限器として機能する狭い流路337を備えることもできる。パルス期間中、弁306、310は開いている。すなわち、これらの弁の第3のポート、すなわち弁306、310のソース側、はこれらの弁のパージ導管と流体連通している。パルス期間中、不活性ガス流は2つの部分に分割される。これらの不活性ガス流の比率は、これらのガス流誘導性の比率によって規定される。不活性ガス流の第1の部分は、第1の弁の内部のパージ導管からカートリッジ入口導管334を通ってカートリッジ344の気相356に達する。不活性ガスは気相356で前駆体蒸気と混ざる。結果として生じたガス混合物は、カートリッジ出口導管338を通って第2の弁310の内側のパージ導管に流れ、ソース出口導管342を通り、供給導管316を通って反応炉の反応室に達する。不活性ガス流の第2の部分は、第1の弁の内部のパージ導管を通ってバイパス導管336に流れ、任意使用の狭い流路337を通って第2の弁に達し、第2の弁の内部のパージ導管を通り、そこで不活性ガス流の第2の部分はカートリッジ出口導管338からのガス混合物と混ざった後、ソース出口導管342を通り、供給導管316を通って反応炉の反応室に達する。
【0050】
別の実施形態によると、ソース入口弁306が最初に開かれ、不活性ガスがソースカートリッジ344の圧力を上昇させ、次にソース入口弁306が閉じられる。その後、ソース出口弁310が開かれ、不活性ガスと前駆体蒸気との混合物が前駆体カートリッジから流れ出て、前駆体カートリッジの圧力が下がる。
【0051】
図4は、加熱式の単一弁前駆体ソース400の概略図を示す。ソース400の構造は、制御システム412を有するソース出口弁410を備える。一実施形態において、弁410は複数のボルトによってソースフレームワーク402に固定される。この図中の参照符号445は、この目的のためにソースフレームワーク402に穿孔される貫通穴を示す。ソースフレームワーク402は断熱カバー404で覆われ、コネクタ314によって反応炉の供給導管316に取り付けられる。一実施形態によると、コネクタ314はVCR金属シールコネクタである。ソースカートリッジは、カートリッジ本体456とカートリッジ首部430とを備える。ソースカートリッジは、カートリッジの底部域に配置されたOリング424、カートリッジの首部域に配置されたラジアル軸シール432、またはカートリッジ首部430の頂部域に配置されたOリング434によってソースフレームワーク402に対して封止される。ロック/締め付けナット426がシールハウジング422に締め付けられ、シールハウジング422またはカートリッジのどちらか一方がシールに押し付けられて漏れのない接続を形成する。断熱パッド428がソースカートリッジから室内雰囲気への熱エネルギーの損失を制限する。前駆体が装填された加熱式ソースカートリッジは、前駆体を固体または液相416および気相418で収容する。ソース400が熱源355を備える場合、カートリッジの温度は、カートリッジの首部420を通して取り付けられた熱電対358によって測定できる。
【0052】
パージ期間中、パルス送出弁410は閉じられている。パルス送出弁を貫通するパージ導管は常に開いているので、不活性ガスは弁入口導管438を通り、パージ導管を通り、ソース出口導管442を通り、供給導管316を通って反応室に向かって流れる。
【0053】
パルス時間中、パルス送出弁410のソースカートリッジ側は開かれている。前駆体蒸気は、カートリッジ出口導管436に沿って流れ、パルス送出弁410の弁座を通り、パルス送出弁のパージ導管に達し、そこで蒸気は弁入口導管438からの不活性ガスと混ざる。したがって、前駆体蒸気は不活性ガス流に注入される。結果として生じた前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物は、ソース出口導管442を通り、供給導管316を通って反応室に向かって流れる。
【0054】
一実施形態によると、不活性ガスの圧力は、弁入口導管438の近くで約8mbarである。前駆体はソース温度に加熱される。この温度において、前駆体の蒸気圧はパルス送出弁の内部の注入点における不活性ガスの圧力より高い。一般に、前駆体の蒸気圧として少なくとも10mbarを得るために、ソース温度は+40℃と+200℃の間の範囲から選択される。
【0055】
熱エネルギーは、制御された方法でソースカートリッジの底部側から失われる。ガス容積の表面上の最冷点により、このガス容積において得られる最大蒸気圧が決まる。前駆体ソースの最冷点は、ソースカートリッジの底面にあり、ソースカートリッジと反応室との間の他のあらゆる表面は、前駆体カートリッジの底面より温度が高い。これらの表面は、パルス送出弁が開かれているとき、ソースカートリッジと流体連通している。前駆体カートリッジの底部と反応室との間のあらゆる表面は前駆体カートリッジの底部より高温であるので、これらの表面では前駆体蒸気の凝縮が回避される。
【0056】
図5は、可動ソースカートリッジが開位置にあるときの加熱式ソースシステム500の概略図を示す。パルス送出弁410が開かれると、前駆体蒸気がソースカートリッジ512からホールウェイ部516を経てソース突起に流れる。ホールウェイ部516は、開口を有し、パルス送出弁410側にホールウェイを形成する。前駆体蒸気は、さらにパルス送出弁410を通って供給導管316に向かって流れる。カートリッジ512は、カートリッジ首部514を備え、ホールウェイ部516はOリングシール518および520を備える。
【0057】
一実施形態によると、ソースフレームワーク402は、Oリングシール508と共に反応炉の供給導管316に取り付けられる。平板状フランジ504が同軸ボルト502によってOリング508に押し付けられる。この図中の参照符号506は、同軸ボルト502のためのねじ山を示す。同軸断熱パッド318を取り外した後、工具(例えばセットレンチ)を同軸ボルト502の頂部にあてがうことによって、同軸ボルト502を緩めることができる。
【0058】
図6は、可動ソースカートリッジが閉位置にあるときの加熱式ソースシステム500の概略図を示す。ロックナット426は開かれており、ソースカートリッジ512は引き下げられている。カートリッジ首部514はOリング518、520によって封止され、出口開口部のみがこれらのOリングによって封止された領域にある。前駆体蒸気の容積418はソース導管の残りの部分から効果的に切り離されている。蒸気容積が切り離されるため、前駆体ソースシステムがソース温度から室温に冷却されているとき、ソース化学物質蒸気はソースカートリッジの内部でのみ凝縮可能である。
【0059】
図7は、前駆体パルス期間中の単一弁加熱式ソース700の概略図を示す。ソース700は、ソースフレームワーク702と、加熱器720と、貫通突起728と、パルス送出弁716と、前駆体カートリッジ706とを備える。ソースフレームワーク702は、加熱式ソース700から周囲空気への熱損失を減らすために、断熱層704によって覆われている。カートリッジ容積752の一部が固体または液体前駆体で占められ、カートリッジ容積の残りの部分、いわゆる前駆体蒸気スペース、754が気相種のために利用可能であるように、前駆体カートリッジ706に液体または固体前駆体が装填される。前駆体カートリッジ706は、容器と、カートリッジをソースフレームワーク702に対してOリングまたはラジアル軸シール762によって封止するための首部708と、カートリッジ操作用の尾部突起758とを有する。尾部突起758から周囲空気に失われる熱エネルギー量を制御するために、取り外し可能な断熱層760が尾部突起758の周囲に配置される。加熱器720の温度は加熱器の熱電対724によって測定され、前駆体カートリッジ706の温度はカートリッジの熱電対764によって測定される。加熱器の熱電対724は、加熱器に供給される電力722を制御するために用いられる。加熱器の温度がプログラムされた温度上限を超えると、電力が加熱器720に供給されない。熱電対764によって得られた熱電電圧は、アナログ/デジタル(AD:analog/digital)変換器によってデジタル値に変換され、正しいソース温度に達するために加熱器720に供給される電力量を制御するためのPIDコントローラによって使用される。ソースフレームワーク702は前駆体カートリッジ706をほぼ取り囲む。前駆体カートリッジは、ソースフレームワークに熱的に接触している。ソースフレームワークが一定のソース温度に加熱されると、前駆体カートリッジはソースフレームワークから熱エネルギーを受け、前駆体カートリッジの温度はソースフレームワークの温度に達する。尾部の突起領域は、断熱層704より若干高い熱伝導率を有する。したがって、尾部突起758に流れる熱エネルギーが少ないため、尾部突起に近い前駆体カートリッジの内面は、カートリッジの残りの部分より、例えば0.1〜10℃低い、または一部の実施形態においては1〜3℃低い、温度に維持される。連続するガス空間の内部の最冷点によって、存在する化学物質種の最大蒸気圧が決まる。したがって、パルス送出弁の近くの表面は尾部突起の壁より暖かいため、前駆体蒸気はこれらの表面で凝縮できないので、これらの表面は汚れない。加熱式ソース700の動作原理は、前駆体蒸気スペース754の内部の実際のガス圧が反映されるバーチャル圧力計756を用いて扱われる。
【0060】
パルス送出弁716は、ダイアフラム流れシール(図示せず)と、開放弁入口717と、制御されたソース入口718と、ソース出口導管730側の開放弁出口714と、アクチュエータ710とを備える。パルス送出弁のアクチュエータ710以外のあらゆる部分は、ソースフレームワークと同じソース温度に加熱される。アクチュエータ710は、例えば、空圧式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、または電磁式アクチュエータにすることができる。アクチュエータ710は、ソースフレームワークの外側に配置でき、ステムが機械動力をアクチュエータから弁開閉器(図示せず)に伝える。アクチュエータ710の制御は、制御システム712から行える。アクチュエータ710の寿命を延ばすために、アクチュエータは極力低い温度、例えば20〜100℃、一部の実施形態においては20〜50℃、に維持される。弁開閉器は、ソース入口718から弁出口714へのガスの流れを制御する金属製の常閉ダイアフラムであることが好ましい。空気圧によって作動される高温のSwagelok(登録商標)ALDダイアフラム弁が本加熱式前駆体ソースに適したパルス送出弁716の一例として使用可能である。
【0061】
不活性ガスソース736からの窒素ガス(または不活性ガス)の流量をコンピュータ制御のシステムによって変化させる。一実施形態によると、質量流量コントローラ738は、不活性ガスの新しい質量流量を、例えば0.05〜1s以内、一部の実施形態においては0.05〜0.1s以内、に設定740できるほど十分高速である。別の実施形態によると、開放弁入口717に達する不活性ガスの総質量流量を低値と高値との間で変化させるように、不活性ガスの基本的な一定の質量流量の設定に標準の熱式質量流量コントローラ738が用いられ、ソース進入導管780へのさらなる不活性ガスの追加を制御する746ためにパルス送出弁744が用いられる。上記低値は、例えば10〜500sccmの範囲から選択され、一部の実施形態においては50〜100sccmの範囲から選択される。高値が低値より高くなるように、上記高値は、例えばニードル弁742または毛細管によって、調整され、上記高値は、例えば100〜2000sccmの範囲から選択され、一部の実施形態においては300〜500sccmの範囲から選択される。ソース進入導管の圧力は、アナログまたはデジタル信号750をデータ処理システムに送信する圧力変換器748によって測定される。上記信号は、不活性ガスの流量を適切な範囲に調整し易くするために用いられる。本構成の利点の1つは、比較的高価な構成要素、すなわち不活性ガス質量流量コントローラ738、不活性ガスパルス送出弁744、および圧力変換器748、が冷たい領域にあり、不活性窒素ガスとのみ接触することである。
【0062】
前駆体蒸気または前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物は、流量制御弁(またはパルス送出弁)716によって不活性キャリアガスの流れに注入され、不活性キャリアガスによってソース出口導管730および反応空間側に押しやられる。
【0063】
図8は、ガス充填期間中の単一弁加熱式ソース700の略側面図を示す。場合によっては、パルス期間中に反応炉に効率的に進入できないほど、前駆体の蒸気圧が低くなりすぎることがある。図8に示す実施形態においては、ガス充填期間中にソース内部の蒸気圧が上げられる。この実施形態においては、圧力を上げるために、不活性ガスが弁716を経由して前駆体ソースコンテナ/カートリッジ706に搬送される。その後、弁716のソース入口718は、次の前駆体パルスの開始まで、図9に示すように閉じられている。この閉鎖状態において、前駆体蒸気と不活性ガスの混合物は、ソース入口718を通ってソース進入導管780に流れ込むことも、ソース出口導管730に流れ込むこともできない。次の前駆体パルスの開始時に、弁716が開かれるので、圧力が上昇した混合物は、図7に示すように、ソース入口718を通り、ソース出口導管730を経由して反応炉に向かってより容易に流れる。
【0064】
いくつかの実施形態における加熱式前駆体ソースのいくつかの設計規則は、以下のように提示できる。すなわち、大量輸送は拡散によるより強制流による方が高速であり、ガスはより高い圧力からより低い圧力へと必ず流れるため、圧力差を利用する。熱エネルギーはより高い温度からより低い温度へと必ず移動し、ガス空間内部の化学物質種の蒸気圧はガス空間内部の最冷点により決まるため、温度差を利用する。機械的可動部は低温の方が長持ちするため、存在しうるあらゆる機械的可動部を冷たい領域に配置する。
【0065】
図7〜9に示す加熱式ソースの動作を堆積プロセスの説明によってさらに例示する。加熱された塩化アルミニウムAlCl3(二量体Al2Cl6とも表記)と蒸発した水H2Oとから酸化アルミニウムAl2O3を成長させる。加熱式前駆体ソース700の内部に配置されるカートリッジ706にAlCl3片を装填する。固体AlCl3片の上方に約0.05〜10hPaのAlCl3蒸気圧を生じさせるために、加熱式前駆体ソースをプログラムされたソース温度に加熱する。例えば、ソース温度が100℃であると、結果として生じるAlCl3蒸気圧は、前駆体蒸気スペース754の内部で1hPaである。一部の実施形態においては、加熱式ソースの内部での感熱性前駆体の分解を回避するために、極力低いソース温度でソース化学物質を蒸発させながら、基板表面全体を覆うに十分な前駆体蒸気の定量投与量を発生させると都合がよい。
【0066】
低ソース圧力でAlCl3を蒸発させる利点は、低い圧力は、ガス分子の拡散速度を上げ、AlCl3の平衡蒸気圧の極力速かな回復を助けることである。一実施形態において、固体AlCl3片の上方の約0.05〜10hPaのAlCl3蒸気圧が得られるまで、AlCl3を約0.5〜4.0s間蒸発させる。ソース入口導管780を通る不活性ガス流は、例えば1000sccmに増加する。これにより、ソース入口導管内の不活性ガスの圧力は、前駆体ガス空間754の内部のガス圧力より高い圧力値に上昇する。次に、パルス送出弁718のソース側が開かれる。不活性ガスは、不活性ガスによってソースコンテナ706の圧力が約5〜20hPaに上昇するまで、ソース入口導管780から前駆体ガス空間に、例えば0.2〜1.0s、流れる。不活性ガスはソース化学物質蒸気と混ざる。次に、ソース入口管路780内の不活性ガスのガス圧を下げるために、不活性ガスの流量を、例えば1000sccmから100sccmに、下げる。この結果、ガス流の方向は逆向きになり、ガス混合物はソースコンテナの前駆体蒸気スペース754からパルス送出弁716を通って反応炉供給管路730に流れ込む。キャリアガス流、例えば100sccmの窒素ガス、は不活性ガス/前駆体蒸気の混合物を反応空間(図示せず)内に押しやる。この実施形態の利点の1つは、前駆体ソースの被加熱領域に必要なパルス送出弁が単一であることである。
【0067】
基板が配置された反応空間の内部では、利用可能な反応性表面部位、すなわちOH基、が消費されて表面がAlCl3分子、より正確にはAlCl3分子のClAl<およびCl2Al-画分、の分子層で飽和するまで、AlCl3分子が基板表面に化学吸着される。ここで、「-」は、1つのAl原子と1つの表面酸素原子との間の1つの化学結合を示し、「<」は、1つのAl原子と複数の表面酸素原子との間の2つの化学結合を示す。元のAlCl3分子は、中心のAl原子に結合した3つの塩素Cl原子を有する。AlCl3分子が表面のヒドロキシルOH基と反応すると、1つまたは2つの塩素原子が1つの水素原子を受け取り、反応副生成物としてガス状の塩化水素HCl分子を形成する。
【0068】
これで表面は塩素原子によって覆われる。Clで覆われた表面にAlCl3分子が付着する唯一の方法は、物理的な吸着(物理吸着)による。ただし、基板温度はAlCl3蒸気の凝縮温度より上に維持されているため、物理吸着は不可能であり、余分なAlCl3分子は気相に留まる。結果として、AlCl3分子画分から成る単一分子層のみが基板表面に留まることができる。AlCl3への曝露期間が終了すると、パルス送出弁のソース側718は閉じられ、前駆体蒸気スペース754からのAlCl3蒸気と不活性ガスとの混合物はパルス送出弁716を通って流れる不活性ガス流に注入されなくなり、堆積サイクルは第1の除去期間に進む。閉じられたパルス送出弁によって前駆体蒸気スペース754が周囲のガス導管から切り離されると、ソース化学物質パルス期間中にAlCl3蒸気が枯渇した前駆体蒸気スペース754は固体AlCl3片752から蒸発するAlCl3によって回復し始める。反応炉供給導管730から到来するガスの組成は、AlCl3蒸気と不活性ガスとの混合物から純粋な不活性ガスに急速に変化する。残留AlCl3分子と反応副生成物分子(HCl)とは、流れる不活性ガスによって反応空間から排気管路に導かれる。
【0069】
堆積プロセスのための酸素ソース(より一般的には、非金属ソース)については、図1〜2を参照する。非金属への曝露期間中、H2O蒸気が温度制御された液体ソース100から(三方弁104を通って)不活性ガス流に注入され、結果として生じたガス混合物は、矢印138で示すように、反応炉供給導管108を通って流れる。このガス流は、反応炉供給導管から基板118が配置されている反応室106に導かれる。もう一方の前駆体導管、すなわちAlCl3ソース用の反応炉供給管路、には、反応室106に向かう不活性ガス流が存在する。したがって、一方の前駆体導管はソース化学物質蒸気を反応室にパルス送入するために用いられ、もう一方の前駆体導管は流れる不活性ガス雰囲気によって保護される。
【0070】
反応空間においては、利用可能な反応性表面部位、すなわち表面Cl原子、が消費されて表面がH2O分子から発生したヒドロキシルOH基の分子層で飽和するまで、前の前駆体への曝露中にAlCl3分子画分で飽和した基板118表面にH2O分子が化学吸着される。その後、H2O分子が表面に付着しうる唯一の方法は物理吸着である。ただし、基板温度はH2O蒸気の凝縮温度より上に維持されているため、物理吸着は不可能であり、余分なH2O分子は気相に留まる。結果として、H2O分子画分から成る単一分子層のみが基板表面に結合して薄膜材料を形成することができる。H2Oへの曝露期間が終了すると、H2O蒸気は不活性ガス流に注入されなくなり、堆積サイクルは第2の除去期間に進む。
【0071】
第2の除去期間中、反応炉供給導管108から到来するガスの組成は、H2O蒸気と不活性ガスとの混合物から純粋な不活性ガスに急速に変化する。残留H2O分子と反応副生成物分子、すなわちメタンCH4分子、とは、流れる不活性ガスによって反応空間から排気管路側に導かれる。これで、基板表面は最大1つの分子層から成る薄膜材料、この場合は表面OH基を有する酸化アルミニウムAl2O3、によって均一に覆われる。これで、基板は、第1の除去期間、H2Oへの曝露期間、および第2の除去期間の間に回復した加熱式前駆体ソース700からの次のAlCl3蒸気への曝露のための準備が整う。AlCl3への曝露期間と、第1の除去期間と、H2Oへの曝露期間と、第2の除去期間とで構成される堆積サイクルは、所望の厚さのAl2O3膜が得られるまで繰り返される。本プロセスによって得られるAl2O3薄膜の一般的な成長速度は、約0.9A/堆積サイクルである。
【0072】
図10は、第1の前駆体ソース管路の圧力1006と第1の前駆体ソースコンテナの圧力1008とを時間の関数として任意単位で示す。この実施形態においては、前駆体の蒸気圧が平衡レベルに回復している間、ソースコンテナの内部では比較的高いガス圧力が維持される。上に提示した加熱式前駆体ソースは、第1の前駆体ソースとして用いられる。時刻t1において、加熱式ソース700(図7)のパルス送出弁716(図7)が開かれ、前駆体コンテナのガス容積754(図7)の圧力1008が下がる。t2において、ソース進入導管780(図7)内の不活性ガスの流量が質量流量コントローラ738(図7)または不活性ガスパルス送出弁744(図7)によって増やされ、管路圧力変換器748(図7)によって測定されるソース進入導管780の内部のガス圧力1006が急速に上昇する。不活性ガスの一部はソースコンテナに流れ込み、前駆体コンテナのガス容積の圧力は、t2〜t3期間1028中に平衡圧力に達するまで上昇する。t3において、パルス送出弁716(図7)が閉じられ、ソースコンテナはソース管路から切り離される。ソース管路のパージが高速で継続する。t4において、ソース進入導管内の不活性ガス流量が減少して低レベルになる。t4〜t5期間1038中、反応炉の全てのパルス送出弁は閉じられたままであり、不活性ガスによる各ソース導管および反応室のパージが継続する。この場合、前駆体カートリッジは多くの蒸発面を有しており、したがって時刻t5において、前駆体の蒸気圧は平衡圧力、すなわちソース温度において到達可能な最大蒸気圧、に既に達しており、加熱式前駆体ソースは次の前駆体パルスを受ける準備が整っている。利用可能な前駆体蒸気の定量投与量を最大化するために、時刻t8において次のパルス送出サイクルが開始される前に、前駆体の平衡圧力に達していることが好ましい。時刻t6において、第2の前駆体ソースのパルス送出弁が開かれ、第2の前駆体蒸気が第2の前駆体ソース管路内の不活性ガス流に注入される。時刻t7において、第2の前駆体ソースのパルス送出弁が閉じられ、第2のソース管路内の不活性ガスの流量が減る。t7〜t8期間1036中、反応炉の全てのパルス送出弁は閉じており、不活性ガスによる各ソース導管および反応室のパージが継続する。1つのパルス送出サイクルはt1〜t8期間1040に及ぶ。t8において、時刻t1と同じ方法で第1の前駆体ソースのパルス送出弁を開くことによって、次のパルス送出サイクルの実行が開始される。
【0073】
図11は、第1の前駆体ソース管路の圧力1106と第1の前駆体ソースコンテナの圧力1108とを時間の関数として任意単位で示す。この実施形態においては、前駆体の蒸気圧が平衡レベルに回復している間、ソースコンテナの内部で比較的低いガス圧力が維持される。上に提示した加熱式前駆体ソースは、第1の前駆体ソースとして用いられる。時刻t9において、ソース進入導管780(図7)内の不活性ガス流量が質量流量コントローラ738(図7)または不活性ガスパルス送出弁744(図7)によって増やされ、管路圧力変換器748(図7)によって測定されるソース進入導管780内のガス圧力1106が急速に上昇する。時刻t10において、加熱式ソース700(図7)のパルス送出弁716(図7)が開かれる。不活性ガスの一部はソースコンテナに流れ込み、前駆体コンテナのガス容積の圧力1108はt10〜t11期間1128中、平衡圧力に達するまで上昇する。これらのソースコンテナ内の圧力変動により、不活性ガスが前駆体蒸気に効率的に混合され、結果として不活性ガスと前駆体蒸気との比較的高圧力の有用な混合物が得られる。時刻t11において、ソース進入導管780内の不活性ガス流量が低レベルに減少し、ソース進入導管の圧力が急速に下がる(曲線1106)。同時に、ソース管路の圧力がソースコンテナの圧力より低下し、パルス送出弁は依然として開いており、ソースコンテナはソース管路に流体連通しているため、ソースコンテナの圧力が下がり始める。t12において、パルス送出弁716(図7)が閉じられ、ソースコンテナはソース管路から切り離される。前駆体の蒸気圧は上昇し始め、時刻t13において前駆体の平衡蒸気圧レベルに達する。ソース管路のパージが継続する。t12〜t14期間1138中、反応炉の全てのパルス送出弁は閉じられており、不活性ガスによる各ソース導管および反応室のパージが継続する。全ての残留前駆体分子と揮発性反応副生物とが反応炉の排気管路に押し出される。この場合、前駆体カートリッジは多くの蒸発面を有しており、したがって時刻t13において、前駆体の蒸気圧は平衡圧力、すなわちソース温度において到達可能な最大蒸気圧、に既に達しており、加熱式前駆体ソースは次の前駆体パルスを受ける準備が整っている。利用可能な前駆体蒸気の定量投与量を最大化するために、次のパルス送出サイクルが時刻t16において開始される前に、前駆体の平衡蒸気圧に達していることが好ましい。時刻t14において、第2の前駆体ソースのパルス送出弁が開かれ、第2の前駆体蒸気が第2の前駆体ソース管路内の不活性ガス流に注入される。時刻t15において、第2の前駆体ソースのパルス送出弁が閉じられ、第2のソース管路内の不活性ガスの流量が減少する。t15〜16期間1136中、反応炉の全てのパルス送出弁は閉じられており、不活性ガスによる各ソース導管および反応室のパージが継続する。全ての残留前駆体分子と揮発性反応副生物とが反応炉の排気管路に押し出される。1つのパルス送出サイクルはt9〜t16期間1140に及ぶ。t16において、時刻t9と同じ方法で第1の前駆体ソースのパルス送出弁を開くことによって、次のパルス送出サイクルの実行が開始される。
【0074】
図10の説明は、液体または固体前駆体自体の蒸気圧が低すぎるためにパルス期間中に反応炉に効率的に進入できず、かつ前駆体の蒸発速度が遅い実施形態に適している。一方、図11の説明は、前駆体自体の蒸気圧が低すぎるためにパルス期間中に反応炉に効率的に進入できず、かつ前駆体の蒸発速度は十分高速であるために前駆体蒸気圧の高速回復が可能な実施形態に適している。図10および図11の説明は、前駆体コンテナへの不活性ガスの搬入と不活性ガスと前駆体蒸気とを含むガス混合物の前駆体コンテナからの搬出とを調時的に行うことによる追加の圧力上昇を利用する。
【0075】
図12は、ソースの前駆体装填側から到来する強制一次キャリアガス流を有する加熱式前駆体ソース1200の概略図を示す。一次キャリアガス流は、一次不活性ガスソース1202と、不活性ガス質量流量コントローラ1204に対する設定値を受け取り、かつ質量流量読み取り値を送出するI/Oインタフェース1206を有する不活性ガス質量流量コントローラ1204と、手動調整可能な流量制限器として機能するニードル弁1210と、一次進入導管1212と、昇華物収集導管1214と、カートリッジ進入導管1216とによって構成される。二次キャリアおよびパージガス流は、二次不活性ガスソース736と不活性ガス質量流量コントローラ738とで構成される。二次不活性ガスソース736は、一次不活性ガスソース1202と同じガスソースにすることも別個のガスソースにすることもできる。一次キャリアガス流は、前駆体カートリッジ706の内部のガス空間754において前駆体蒸気と混ざり、この混合物はソースのパルス送出弁710によって分割送出される。カートリッジ進入導管1216は分子拡散用の経路を長くし、一次キャリアガス管路の上方に昇華物収集導管1214の領域まで拡散する前駆体蒸気の量を減らす。カートリッジ進入導管1216の内径は、例えば約1〜20mm、一部の実施形態においては4〜8mm、にすることができ、カートリッジ進入導管の長さは、例えば10〜100mm、一部の実施形態においては30〜50mm、にすることができる。不活性ガス流を固体または液体前駆体752に向けて導くためのカップ(図示せず)をカートリッジ進入導管の先端に設けることもできる。
【0076】
一実施形態によると、質量流量コントローラ1204は、相対的に長い設定時間を有する熱式コントローラである。ALDプロセスは一般に0.1〜1s台の短いパルスを使用するので、一次キャリアガス流のためのバイパス管路1208を配置すると都合がよい。バイパス管路1208は、パルス送出弁716が閉じているとき、パージ期間を含む全堆積期間中、不活性ガス流を質量流量コントローラ1204に通す。バイパス管路1208は流量の変動を減らす。別の実施形態によると、質量流量コントローラは、パルス送出弁716が発生させた圧力変動に十分応動できる高速な圧力ベースのコントローラである。
【0077】
前駆体カートリッジ706の温度は、第2のソース熱電対1218によって測定される。この温度読み取り値は、前駆体ソースの加熱器720に供給される加熱用電力722の量を調整するために用いられる。第2のソース熱電対1218は、前駆体ソースの被加熱容積に熱的に接触する。
【0078】
前駆体ソース1200は取り外し可能であることが好ましい。出口接続部732と、一次キャリアガス管路接続部1220と、二次キャリアおよびパージガス管路の接続部734とを開くと、前駆体ソースを堆積反応炉(図示せず)から取り外せるようになる。前駆体カートリッジ706はソース温度に加熱される。一部の実施形態においては、ソース温度は+40℃と+200℃との間の範囲から選択される。パルス送出弁716は閉じられたままである。不活性ガスは、不活性ガスソース1202から質量流量コントローラ1204を通ってバイパス導管1208に流れる。ガス空間754は、一次進入導管1212とニードル弁1210とを介して不活性ガスソースに静的に流体連通しているので、不活性ガス流は、ソースカートリッジ706のガス空間754を選択された圧力値、一部の実施形態においては5〜30mbar、に加圧し続ける。前駆体化学物質752は、この前駆体化学物質固有の蒸気圧に達するまで蒸発して前駆体カートリッジの気相754になる。ガス空間754内の前駆体分子の一部はカートリッジ進入導管1216を通って昇華物収集導管1214に拡散し、そこで前駆体分子は昇華物収集導管1214の内面に凝縮する。昇華物収集導管1214の温度は、前駆体カートリッジの706のガス空間754の温度より低い。化学物質固有の蒸気圧は、化学物質の蒸気温度に応じて決まる。昇華物収集導管1214の表面温度が十分低いとき、化学物質固有の蒸気圧は表面近くでは無視できるほど小さく、前駆体分子は一次進入導管1212まで上流に拡散できない。前駆体ソース1200の加熱、使用、および冷却中、昇華物収集導管1214の表面温度は室温より高いことが好ましく、かつ第2のソース熱電対1218で測定されたソース温度より低いことが好ましい。パルス期間が開始するとパルス送出弁716が開かれ、パルス期間が終了するとパルス送出弁716が閉じられる。パルス期間中、前駆体カートリッジのガス空間754は、開いているパルス送出弁を通してソース出口導管730に流体連通しており、前駆体蒸気は一次不活性ガス流の助けにより前駆体カートリッジから基板(図示せず)を収容している反応空間に向かって流れる。
【0079】
図13は、前駆体カートリッジ344から分離された昇華物収集導管1302と単一のパルス送出弁410とを有する加熱式前駆体ソース1300の概略図を示す。昇華物収集導管1302はシール1306と共にソース本体402に装着されている。最初は、パルス送出弁410は閉じられている。液体または固体の前駆体1328は、ソース温度、例えば+40℃と+200℃との間の範囲から選択された温度、に加熱される。前駆体1328は蒸発し、前駆体固有の蒸気圧に達するまで、前駆体カートリッジ344のガス空間1330の圧力を上昇させる。パルス期間中、パルス送出弁410は開いている。不活性キャリアガスは、外部の不活性ガスソース1304から昇華物収集空間を通って前駆体カートリッジのガス空間1330に流れ込み、そこで不活性キャリアガスと前駆体蒸気とが混ざる。結果として生じた混合物は、パルス送出弁410を通ってソース出口導管442に流れ、さらに基板(図示せず)を収容している反応空間に流れる。パージ期間中、パルス送出弁410は閉じられており、前駆体蒸気は前駆体ソースを通って流れない。一部の前駆体分子は、ガス空間1330を通って、前駆体カートリッジ344より低温に維持されている昇華物収集導管1302に拡散し、昇華物収集導管の内面に凝縮液1310を形成する。
【0080】
図14は、前駆体カートリッジ1402を備える加熱式前駆体ソース1400を示す。前駆体カートリッジ1402は、手動カートリッジ弁1408によって封止でき、取り付け具1412を開くことによって加熱式前駆体ソースから取り外すことができる。前駆体ソース1400は、堆積反応炉デバイスへの前駆体ソース1400の着脱用の第2の取り付け具1422を備える。弁本体1418を備える三方パルス送出弁1405は、空気圧によって制御される。この目的のために、パルス送出弁は、圧縮空気を受け入れるための接続部1420を有しうる。前駆体ソースは、熱伝導性のソース本体1424と、電源1428と、熱電対による温度測定部1430とを有する加熱器カートリッジ1426と、断熱層1432と、カバー1434とを備える。前駆体ソースは、前駆体カートリッジ1402の底部近くに熱伝導性の突起1406をさらに備える。突起1406は、コンピュータ制御システム(図示せず)への接続部1436を有する曲がった熱電対1438を収容するための機械加工された溝を有する。
【0081】
前駆体ソース1400は、取り付け具1412のフランジ間に、カートリッジ弁1408側に下向きの金属またはセラミック材料製の粒子フィルタ(またはガスケットフィルタ)1416を有するシール1414を備えることもできる。粒子フィルタ1416は、パルス送出弁1418への、さらには反応炉供給管路への、固体前駆体粒子の進入を防止する。上方に移動する前駆体粒子は、粒子フィルタ1416の外面で阻止され、落下して前駆体カートリッジ1402に戻る。
【0082】
前駆体カートリッジ1402の交換前に行うソース管路のパージ方法について以下に説明する。手動カートリッジ弁1408を閉じる。各導管の壁上のあらゆる固体または液体前駆体残渣から前駆体蒸気圧を発生させるために、加熱式前駆体ソースを十分高温に加熱する。パルス送出弁1405を開く。三方パルス送出弁1405を通ってソース出口導管1442に流れる不活性ガスの流量を高値、例えば1000sccm、と低値、例えば100sccm、との間で変化させる。流量を増やすと、三方パルス送出弁1405における不活性ガスの圧力が上昇し、流量を減らすと三方パルス送出弁1405における不活性ガスの圧力が下がるため、ガスのポンピング効果が生じる。可変ガス圧力は、あらゆるガス状の残留前駆体をデッドエンドおよびガスポケットから効率的に除去する。温度は、固体または液体の前駆体残渣を蒸発させるに十分な高温にする必要がある。パージ速度を上げるために、通常、少なくとも約0.1hPaの前駆体蒸気圧を発生可能なソース温度を用いることができる。一実施形態においては、反応空間の表面での前駆体蒸気の凝縮を防ぐために、反応空間を前駆体ソースと少なくとも同じ温度に加熱する。
【0083】
中間導管1444とソース出口導管1442とを不活性ガスによって、例えば5hPaから20hPaに、1分間加圧し、次に1分間排気して20hPaから5hPaに戻す。残留前駆体を各導管から除去するために、加圧および排気サイクルを複数回、例えば少なくとも5回、一部の実施形態においては少なくとも10回、繰り返す。
【0084】
前駆体ソース1400は、前駆体材料をカートリッジに充填した後で化学物質製造業者が閉じることができる第3の取り付け具1410をさらに備えることもできる。前駆体ソース1400は、カートリッジの洗浄用に開くことができる第4の取り付け具1404をさらに備えることもできる。
【0085】
図15は、別の実施形態による加熱式前駆体ソース用の取り外し可能な前駆体コンテナ1500を示す。コンテナ1500は、前駆体室1502と、前駆体を保持する前駆体容器1514と、前駆体室1514の着脱用の取り付け具1504と、前駆体室のガス空間をソース出口導管1515から切り離すための弁1508とを備える。前駆体室1502は、洗浄用に前駆体コンテナ1500を分解するための任意使用の首部取り付け具1506を有する。前駆体蒸気を取り付け具1504領域から遠ざけておくために、前駆体容器1514の壁を前駆体室1502の壁に対してシール1520によって封止することが好ましい。前駆体容器1514は、場合によっては、取り付け具1504を開いた後に容器を前駆体室1502から引き出すためのハンドル1516と、前駆体容器からの固体前駆体または粉体粒子の放出を防止するためのフィルタ1518とを備える。前駆体コンテナ1500は、取り付け具1512によって前駆体ソースの他の部分への取り付けまたは取り外しが可能である。
【0086】
図16は、別の実施形態による加熱式前駆体ソースを示す。側面1600および正面1602から図示されている加熱式前駆体ソースは、ソース本体1604と、封止可能な正面フランジ1606と、装填口1608と、不活性ガス入口弁1610と、前駆体蒸気出口弁1612と、取り付け用フランジ1614と、ソース本体の断熱部1616と、パルス送出弁の断熱部1618と、装填口の断熱部1620とを備える。不活性キャリアおよびパージガス(例えば窒素またはアルゴン)は、ガス入口接続部1622を通って加熱式ソースに達する。不活性ガス入口弁1610と前駆体蒸気出口弁1612とが閉じられているとき、不活性ガスは入口導管1624を通り、ソースバイパス導管1628を通り、さらにはソース出口導管1632を通り、反応炉供給導管1636を通って反応空間(図示せず)に流れる。不活性ガス入口弁1610と前駆体蒸気出口弁1612とが開いているとき、不活性/キャリアガス流は2つの部分に分割される。ガス流の第1の部分はバイパス管路1628を通る。ガス流の第2の部分は、蒸気スペース入口導管1626を通って加熱式ソースの蒸気スペース1650に入る。ガス流の第2の部分は、加熱式ソースの蒸気スペース1650の内部で前駆体蒸気と混ざる。結果として生じた第1のガス/蒸気混合物は、蒸気スペースの出口導管1630を通って蒸気スペースを出る。第1のガス/蒸気混合物は、ソースバイパス導管1628から到来したガス流の第1の部分に追加されて、第2のガス/蒸気混合物を形成する。第2のガス/蒸気混合物は、ソース出口導管1632を通り、反応炉供給導管1636を通って反応空間(図示せず)に流れる。横型の前駆体ボート1642が焼結カートリッジ1638内に装填される。前駆体ボート1642は、一部の実施形態においては、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、石英ガラス、SiC、またはAl2O3などの不活性材料から成る。焼結カートリッジ1638は、封止可能な正面フランジ1606に取り付け具1640によって取り付けられる。
【0087】
図17は、別の実施形態による加熱式前駆体ソースを示す。側面1700および正面1702から図示されている加熱式前駆体ソースは、ソース本体1704と、封止可能な正面フランジ1706と、装填口1708と、不活性ガス入口弁1714と、前駆体蒸気出口弁1716と、取り付け用フランジ1614と、ソース本体およびパルス送出弁の断熱部1740と、装填口の断熱部1738と、供給管路の断熱部1742とを備える。あるいは、ソース本体およびパルス送出弁の断熱部1740をそれぞれ別個の断熱部として、すなわちソース本体用に1つとパルス送出弁用に1つ、実装することもできる。
【0088】
加熱式前駆体ソース1700、1702はいくつかの利点をもたらす。パルス送出弁1714、1716は、ソース本体1704の背面に水平方向に取り付けられる。ソースの装填口1708は、反応炉の正面側にあり、加熱式ソースの操作者側にある。前駆体カートリッジ1758の着脱は容易である。
【0089】
加熱式ソースの温度は、ワイヤ1734によって制御部(図示せず)に接続された熱電対1732によって測定される。加熱カートリッジ1736は、発熱体と、加熱カートリッジの局部温度を測定するための熱電対とを備える。不活性ガス入口弁1714と前駆体蒸気出口弁1716とが閉じているとき、不活性パージ/キャリアガス(例えば窒素またはアルゴン)は、ソース入口接続部1718と、不活性ガス入口弁1714と、流量制限器を有するソースバイパス管路1722と、前駆体蒸気出口弁1716と、ソース出口導管1726と、反応炉供給導管1728とを通って流れる。
【0090】
不活性ガス入口弁1714と前駆体蒸気出口弁1716とが開いているとき、不活性/キャリアガス流は2つの部分に分割される。ガス流の第1の部分は、流量制限器を有するバイパス管路1722を通る。ガス流の第2の部分は、蒸気スペース入口導管1720を通って加熱式ソースの蒸気スペース1730に入る。ガス流の第2の部分は、加熱式ソースの蒸気スペース1730の内部で前駆体蒸気と混ざる。結果として生じた第1のガス/蒸気混合物は、蒸気スペース出口導管1724を通って蒸気スペースを出る。第1のガス/蒸気混合物は、バイパス管路から到来したガス流の第1の部分に追加されて第2のガス/蒸気混合物を形成する。第2のガス/蒸気混合物は、ソース出口導管1726を通り、反応炉供給導管1728を通って反応空間(図示せず)に流れる。
【0091】
この加熱式前駆体システムは、反応室の加熱器の方向から供給導管1728を通って加熱式ソース本体1704側に漏れる熱エネルギーを利用する。加熱式ソースの首部320から周囲への熱損失は、首部の断熱部1742によって最小化される。
【0092】
サービス時は、ソース入口接続部1718と貫通取り付け具1710とを開くことによって加熱式前駆体ソース1700を反応炉から取り外す。
【0093】
図18は、一実施形態による封止可能な前駆体カートリッジを示す。前駆体カートリッジ1800(その首部領域の拡大図が図18の上部に示されている)は、カートリッジ本体1804と、カートリッジ開口部1834を有するカートリッジ首部1805と、動的シール1836、1838(例えばラジアル軸シール)によってカートリッジ首部1805に対して封止されるスライドスリーブ1806と、伸縮ばね1830と、抜け止め用隆起部1832と、任意使用のハンドル1808とを備える。固体または液体状の前駆体化学物質1824を前駆体カートリッジに充填する。ソース温度および前駆体固有の平衡蒸気圧に達するまで、前駆体をカートリッジ1826のガス空間に蒸発させる。カートリッジの炉1810は、静的シール1820(例えばOリングまたはラジアル軸シール)によってカートリッジ本体1804に対して封止可能な炉筒1822と、スリーブプッシャ1818とを備える。カートリッジの炉1810に至る導管1835に三方パルス送出弁1815が取り付けられる。パルス送出弁1815は、前駆体ソース入口1812と、不活性ガス用の入口1814と、反応空間(図示せず)側の出口1816とを有する。
【0094】
図19は、封止可能な前駆体カートリッジの使用方法を示す。図19の上部に示されているように、最初に、ソースシステムを不活性ガスによってパージする。炉の静的シール1820がカートリッジ本体1804に対して封止を形成してカートリッジ炉のガス空間を周囲のガス雰囲気(例えば室内空気)から切り離すまで、前駆体カートリッジ1804を炉筒1810に押し込む。不活性ガスが、パルス送出弁1815のパージ入口1814からソース管路を通ってパルス送出弁の出口1816に流れる。パルス送出弁の前駆体ソース入口1812が開いているとき、炉筒1822の内部のガス空間はソース管路1814、1816と流体連通している。ソース管路の不活性ガスの圧力は、質量流量コントローラ(図示せず)によって変えられる。不活性ガスの流量が小さいとき(例えば100sccm)、ソース管路の圧力は低値(例えば4hPa)に下がる。低流量を一定時間、例えば約1分間、維持する。不活性ガスの流量が大きいとき(例えば1000sccm)、ソース管路の圧力は高値(例えば15hPa)に上昇する。高流量を一定時間、例えば約1分間、維持する。この圧力変動を一定回数、例えば少なくとも10回、繰り返す。この圧力変動によるポンピング効果は、残留空気をカートリッジ炉1810のガス空間から一掃し、純粋な不活性ガスのみを炉筒1822内のガス空間に残す。パージ後、パルス送出弁入口1812を閉じる。
【0095】
次に、カートリッジ首部のカートリッジ開口部1834が露出されて前駆体カートリッジの蒸気スペース1826がカートリッジ筒1822のガス空間と流体連通するまで、前駆体カートリッジを内側に押し込む。前駆体カートリッジ1804がソース温度に加熱されると、カートリッジ炉のガス空間1826が前駆体蒸気で飽和するまで、液体または固体の前駆体1824の一部がガス空間に蒸発する。パルス送出弁の前駆体ソース入口1812を開くと、前駆体蒸気はパルス送出弁1815を通ってパルス送出弁の出口1816に流れる。パルス送出弁のパージ入口1814から三方弁を通ってパルス送出弁の出口1816に流れるキャリアガスは、前駆体蒸気を反応室(図示せず)側に押しやる。パルス送出弁入口1812が閉じられているとき、前駆体蒸気が枯渇した前駆体カートリッジのガス空間1826は、ガス空間が前駆体蒸気で再度飽和して前駆体ソースが次の前駆体パルスを送出する準備が整うまで、蒸発する液体または固体前駆体1824からの新しい前駆体蒸気を受け入れる。
【0096】
使用した前駆体カートリッジ1800を加熱式ソースから取り外すとき、または新しい前駆体カートリッジに交換するときは、前駆体カートリッジをソース温度に維持し、伸縮ばね1830がスライドスリーブ1806をカートリッジ開口部1834の先まで押して前駆体カートリッジの蒸気スペース1826をカートリッジ炉1810のガス空間から切り離せるようになるまで、カートリッジをカートリッジ炉1810から引き抜く。前駆体カートリッジ1800の表面に依然として接触している炉の静的シール1820は、カートリッジ炉1810のガス空間を室内空気から切り離し続ける。パルス送出弁1815の入口側を開き、変動圧力を有する不活性ガスによってカートリッジ炉1810のガス空間をパージする。パージによってカートリッジ筒1822の内部のガス空間から全ての残留前駆体を除去した後、パルス送出弁の入口側1812を閉じる。次に、前駆体カートリッジ1800をカートリッジ炉1810から取り外し、新しい前駆体カートリッジをカートリッジ炉に据え付ける。
【0097】
図20は、封止可能な前駆体カートリッジに適した加熱式前駆体ソース(またはソースシステム)を示す。加熱式前駆体ソース2000は、ソース本体(またはフレームワーク)302と、ソース本体用の断熱材304と、電力接続部362と加熱器カートリッジの温度を測定するための熱電対接続部364とを有する加熱器カートリッジ355と、ソース本体304の温度測定用の熱電対接続部1734と、封止可能な前駆体カートリッジ用の空間2002と、パージ入口導管371と、ソースバイパス導管336と、ソース出口導管342と、バイパス流量制限器337と、カートリッジ入口導管334と、カートリッジ出口導管338とを備える。パルス送出弁2006、2008は、前駆体ソースの被加熱領域2012の内部にある。ソース出口導管342は断熱部320によって取り囲まれ、導管は反応室の加熱器(図示せず)の方向から到来する熱エネルギーを利用して受動的に加熱される。加熱式前駆体ソース2000は、ロックナット(図21)用のねじ山2004をさらに備えてもよい。ソース入口弁2006とソース出口弁2008とが閉じられるため、不活性キャリア/パージガスは、パージ入口導管371からソースバイパス導管336に流れ、さらにソース出口導管342に流れることしかできない。流れの方向は、矢印2014、2016、および2022によって示されている。バイパス流量制限器337(例えば、0.6mm孔を有する20mm長のガラス毛細管)は、近傍の各導管に比べ、流れのコンダクタンスが限られている。したがって、バイパス流量制限器の上流側導管の圧力は、バイパス流量制限器の下流側導管の圧力より高い(例えば3〜10hPa高い)。
【0098】
図21は、閉位置にある封止可能な前駆体カートリッジを示す。一実施形態によると封止可能な前駆体カートリッジ組み立て体は、カートリッジケーシング2102と、ケーシングシール2104(例えばOリング)と、ケーシング用のロックナット2106と、カートリッジケーシング2102に対する許容誤差が厳しい取り付け具および穴2114を有するカートリッジアダプタ2108と、カートリッジキャップ2110と、カートリッジシール2112(例えばOリング)と、カートリッジ本体2116と、調整用ベローズ2118と、カートリッジ本体をカートリッジキャップ2110と共に上昇および下降させるための調整軸またはねじ2120と、カートリッジ本体2116の温度を測定するためのカートリッジ熱電対2122とを備える。カートリッジシール2112があるため、前駆体蒸気はガス空間2126から穴2114を通って昇降空間2125に進入できない。
【0099】
最初に、加熱器カートリッジ355によって前駆体ソース本体2102を十分高い温度(例えば、所望の前駆体温度に応じて80〜150℃)に加熱する。加熱器カートリッジ355の最大許容温度は、前駆体ソースの操作者によってプログラムされる。一般に、最大許容温度は、ソース本体の所望の温度より約+50℃高い。加熱器カートリッジ355への電力をオンに切り替えると、加熱器カートリッジの温度が上昇し、熱エネルギーが高温側の加熱器カートリッジ355から低温側のソース本体2102に流れ始める。加熱器カートリッジ355の温度がプログラムされた最大許容温度に達すると、加熱器カートリッジへの電力がオフに切り替えられる。ソース本体302は高い熱伝導率を有するため、ソース本体の各部間の温度は均一になりやすい。ソース本体302は断熱部304で覆われているため、ソース本体302の温度を維持するための加熱用電力は殆ど必要ない。前駆体カートリッジの底部をソース本体302より低温(例えば1〜5℃低い温度)に維持すると都合がよい。前駆体カートリッジの底部側は、ソース本体302より断熱部が少ない。したがって、前駆体ソースの最冷点は前駆体カートリッジの底部に形成される。ソース化学物質の蒸気圧は、閉じられたガス容積内の最冷点の近くで最低値を有する。ソースシステムの最冷点はカートリッジ入口334およびカートリッジ出口338の上記各導管から離れているため、上記各導管へのソース化学物質の凝縮が回避される。
【0100】
一実施形態によると、最初にソース本体302をソース温度に加熱し、次にカートリッジケーシングのねじ山付きロックナット2106を締め付けることによって、液体または固体の前駆体2124が充填された前駆体カートリッジ2116を保持するカートリッジケーシング2102をケーシングのOリング2104によってソース本体302に対して封止する。空間2125を不活性ガスでパージすることによって、残留空気を昇降空間2125から除去する。変動圧力を昇降空間2125の内部と導管334および338とに発生させるために、ソース入口弁2006とソース出口弁2008とを開き、パージ入口導管371から到来する不活性ガスの流量を低値(例えば100sccm)と高値(例えば1000sccm)との間で変化させる。圧力変動によって残留空気が加熱式ソースから搬出される。
【0101】
図22は、開位置にある封止可能な前駆体カートリッジを示す。パージ後、カートリッジキャップ2110とカートリッジシール2112との間に十分大きなギャップ(例えば2〜5mm)が生じるまで、カートリッジ組み立て体(カートリッジアダプタ2108、カートリッジキャップ2110、およびカートリッジ本体2116)を調整軸またはねじ2120によって上昇させる。前駆体蒸気は、前駆体カートリッジの蒸気スペース2126から穴2114を通って上記ギャップから昇降空間2125に、さらには任意使用の粒子フィルタ2204を通ってカートリッジ入口導管334およびカートリッジ出口導管338に流れ、および/または拡散する。パルス期間中、ソース入口弁2006とソース出口弁2008とは開かれている。バイパス流量制限器2020により、パージ入口導管371における不活性ガスの圧力は、カートリッジ入口導管334における前駆体蒸気の圧力より高い値に維持される。結果として、矢印2202で示されているように入口導管334に沿って流れる不活性ガスは、矢印2206で示されているように前駆体蒸気をカートリッジ出口導管338側に押しやる。前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物は、開いているソース出口弁2008を通って流れ、次に、矢印2016で示されているようにバイパス管路336に沿って到来した小さな不活性ガス流によって、矢印2022で示されているようにソース出口導管側に押しやられ、さらに反応室(図示せず)側に押しやられる。矢印2014、2016、2022、2202、および2008の長さは、実際の流量に比例している。
【0102】
提示されている各加熱式前駆体ソースシステムは、例えば、約200℃未満の温度において少なくとも約0.5hPaの蒸気圧を有する前駆体蒸気を固体または液体化学物質から発生させるために適している。提示されている各加熱式前駆体ソースシステムに利用可能な化学物質は、金属ハロゲン化物(例えばAlCl3、TaCl5)、シクロペンタジエニル金属類およびシクロペンタジエニル金属類の誘導体(例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウムCp2Ru、トリス(メチルシクロペンタジエニル)スカンジウム(CH3Cp)3Sc、ビス(メチル-η5-シクロペンタジエニル)マグネシウム)、金属アルコキシド類(例えば、チタンイソプロポキシドTi(OiPr)4、タンタルペンタエトキシドTa(OEt)5)、金属ベータジケトネート類(例えばトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタネジオナート)ランタンLa(thd)3、ビス(アセチルアセトナート)ニッケルNi(acac)2)、アルキルアミド金属類(例えば、TEMAHとしても公知のテトラキス(エチルメチル)アミドハフニウム[(EtMe)N]4Hf)を含む。
【0103】
加熱式前駆体ソース(単数または複数)から得られた前駆体蒸気によって堆積可能な薄膜として、酸化マグネシウムMgOを含むIIA族の酸化物類、酸化スカンジウムSc2O3、酸化イットリウムY2O3を含むIIIA族の酸化物類、酸化ランタンLa2O3およびランタニド酸化物類、例えば酸化ガドリニウムGd2O3、二酸化チタンTiO2、二酸化ジルコニウムZrO2、および二酸化ハフニウムHfO2を含むIVA族の酸化物類、五酸化タンタルTa2O5を含むVA族の酸化物類、三酸化タングステンWO3を含むVIA族の酸化物類、酸化マンガン(III)Mn2O3を含むVIIA族の酸化物類、二酸化ルテニウムRuO2および酸化ニッケル(II)NiOを含むVIII族の酸化物類、酸化銅(II)CuOを含むIB族の酸化物類、酸化亜鉛ZnOを含むIIB族の酸化物類、酸化アルミニウムAl2O3を含むIIIB族の酸化物類、二酸化シリコンSiO2および二酸化スズSnO2を含むIVB族の酸化物類、ならびに酸化ビスマスBi2O3を含むVB族の酸化物類などの二成分金属酸化物類、金属アルミネートおよび金属シリケート類など上記族類の三成分および四成分金属酸化物類、Al2O3/HfO2など上記族類の金属酸化物ナノラミネート類および金属酸化物類の固溶体、窒化ランタンLaNを含むランタニド族の窒化物類、窒化チタンTiNを含むIVA族の窒化物類、窒化ニオブNbNおよび窒化タンタルTa3N5を含むVA族の窒化物類、窒化モリブデンMoNを含むVIA族の窒化物類、窒化アルミニウムAlNを含むIIIB族の窒化物類、窒化ケイ素Si3N4を含むIVB族の窒化物類、ならびにタングステン窒化物カーバイドWNxCyを含む他の金属化合物類などの金属窒化物類が挙げられる。
【0104】
加熱式前駆体ソースのソース温度は、一部の実施形態においては、約40〜200℃の範囲から選択できる。なお、この範囲は現時点で代表的な範囲であるに過ぎず、他の実施形態においては、これより高い温度も適切でありうる。加熱式前駆体ソースの作業圧力は、通常、堆積プロセス中は約0.5〜50hPaの範囲内であるが、他の実施形態においてはこれより低い、または高い、ソース圧力が可能である。本加熱式前駆体ソース(単数または複数)は、3"〜12"シリコンウェーハなどの単一基板上に、バッチプロセス反応炉では2〜50枚の3"〜12"シリコンウェーハなど複数の基板上に、粉体カートリッジ反応炉内の1〜1000gの10μm〜1mmのSiO2などの粉体に、薄膜を堆積させるために使用できる。本加熱式前駆体ソース(単数または複数)は、CVD反応炉における前駆体蒸気の連続供給、または好ましくはALD反応炉における前駆体蒸気のパルス式供給、のために使用できる。ALD反応炉には、一般に1〜3つの加熱式前駆体ソースが取り付けられる。一部の実施形態においては、3つを超える数の加熱式前駆体ソースが反応炉に取り付けられる。本加熱式前駆体ソースの容量は、一般に1〜100gのソース化学物質であるが、一部の実施形態においては、100gを超えるソース化学物質が製造用ソースコンテナに装填される。
【0105】
構成材料の選択は、ソース化学物質に応じて異なる。アルミニウム、ステンレス鋼AISI316L、チタン、ニッケル、およびハステロイが構成材料の例として使用可能である。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態においては、ソースの補給のために、加熱式前駆体ソース全体を、加熱器および断熱材と共に、反応炉に容易に取り付けることができ、また反応炉から容易に取り外すことができる。別の利点は、ソースシステムの温度を単純な単一の加熱器によって制御できることである。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、いくつかの実施形態をさらに例示する。
【実施例1】
【0108】
〔加熱式前駆体ソースの蒸気発生容量〕
換算係数:
100cm3=0.1dm3=l*10-4m3
1mbar=100Pa=1hPa
【0109】
TEMAHとしても公知のテトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムをソース化学物質として使用する。前駆体の平衡蒸気圧が約+104℃において3hPaであり、管路圧力が15hPaであるとき、結果として生じたガスと蒸気の混合物は3hPa/15hPa*100vol.-%=20vo1.-%の前駆体蒸気を含んでいる。前駆体カートリッジの蒸気相容積は100cm3である。パルス期間中にソース圧力を5hPaに下げると、(15hPa-5hPa)/15hPa*100%=67%の前駆体蒸気が前駆体カートリッジから導き出される。67%*3hPa*100cm3=200mbar*cm3。
【0110】
ソース温度が+104℃(377K)であると、理想気体の法則により、pV=nRT->n=pV/RT=200Pa*1*10-4m3/(8.31441Jmol-1K-1*377K)=200N/m2*l*10-4m3/(8.31441Nmmol-1K-1*377K)=0.02Nm/3135Nmmol-1=0.00000638molおよびm(TEMAH)=411.89g/mol*0.00000638mol=0.00263g=2.63mgになる。
【0111】
この実施例においては、前駆体蒸気の25%が基板表面に化学吸着され、前駆体蒸気の75%が反応室壁上での薄膜の成長に失われるか、またはALD反応炉の排気管路に直接失われると想定する。HfO2の最大密度は9.68g/cm3(9.68mg/mm3=9.68*10-9mg/μm3に等しい)である。文献によると、TEMAHおよびH2OからのHfO2の成長速度は、+300℃において0.06nm/サイクルである。したがって、1cm2の平滑面上に追加されるHfO2の量は0.06nm*0.01*109nm*0.01*109nm=6*1012nm3=6000μm3であり、質量は9.68*10-9mg/μm3*6000μm3=0.0000581mgである。二酸化ハフニウムのモル質量M(HfO2)は、210.49g/molであり、TEMAHのモル質量は411.89g/molである。したがって、1cm2の平滑面を覆うには411.89g/mol/210.49g/mol*0.0000581mg=0.00011mgのTEMAHが必要とされ、1cm2の平滑基板面を覆うには、25%の化学吸着効率により、0.00045mgのTEMAH蒸気を反応室に供給する必要がある。前駆体ソースは、前駆体パルス期間中に2.66mgのTEMAHを供給し、これにより、2.66mg/0.00045mg/cm2=5900cm2の平滑基板面を覆うことができるため、1回分の75枚の4インチウェーハの処理に十分である。90%縮小されて100cm3から10cm3になった蒸気スペースにソース化学物質が充填され、蒸気圧が80%下げられて3hPaから0.5hPaになった加熱式前駆体ソースでも、5900cm2*0.1*0.2=118cm2上に薄膜を堆積するために十分な前駆体蒸気を供給でき、これは100mm(4インチ)の単一ウェーハを被膜するに十分であると推定できる。ソースシステムの温度は、ソースカートリッジの底部近くに配置された熱電対によって測定する。ソースシステムは、ソースフレームワークの内部に配置された抵抗加熱器によって加熱される。加熱器は、加熱器の温度を測定するための内部熱電対を備える。加熱器の消費電力は、一般に50〜500Wの範囲内であり、好ましくは100〜200Wの範囲内である。このような低消費電力は、加熱器の駆動にPID温度コントローラ付きの24V直流電源を使用できることを意味するが、他の実施形態においては、加熱器を駆動するために温度コントローラによってライン交流パルス電圧が使用される。ソース出口導管は、二方向から受動的に加熱される。熱は伝導によってソースフレームワークからソース出口導管の底部側に流れ、放射および対流によって反応室の加熱器からソース出口導管の上部に流れる。熱損失は、断熱層と貫通突起の輪郭設計とによって最小化される。貫通突起は、反応炉の中間スペースから貫通フランジに延在する。外側の貫通突起と内側の貫通突起との間の外側の隙間は、熱伝導経路を延長し、これにより、反応炉の底部フランジへの伝導によって失われる熱の量を減らす。鍔形の首部絶縁体がシール締め付けナットを取り巻く。均熱化ブロックと内側の貫通突起との間の内側の隙間は、均熱化ブロックから反応炉の底部フランジに熱を移動させにくくする。他の実施形態においては、ソース管路温度を前駆体蒸気の凝縮温度より高く維持するために別の加熱器を貫通領域に設けることができる。
【0112】
ソースシステムを貫通突起とは別個に反応炉の底部フランジから取り外すには、首部の絶縁体を取り外し、シール締め付けナットを緩める。ソースシステムを貫通突起と共に反応炉の底フランジから取り外すには、締め付けシールを緩める。
【0113】
断熱材用に適した材料の一例として、最大200〜250℃の温度に耐えられるシリコーンゴム発泡体が使用可能である。極めてコンパクトなソースシステムにするには、断熱する表面をSupertherm(登録商標)塗料などの断熱セラミック塗料で被膜することもできる。Supertherm(登録商標)塗料は約+260℃に連続的に耐え、熱伝導と赤外線の両方を阻止する。乾燥した塗料の一体構造により、対流による熱損失も極めて小さい。比較として、約0.25〜0.5mm厚の乾燥セラミック塗料層は、100mm厚のゴム発泡体片と同じ効率でフレームワークを断熱する。
【0114】
ソースカートリッジは、カートリッジ本体と、カートリッジシールと、任意使用の粒子フィルタとを備える。先端を有するねじ山付きカートリッジフランジはカートリッジ本体をソースフレームワークに押し付け、カートリッジ本体とソースフレームワークとの間で圧迫されたカートリッジシールは室内空気に対してカートリッジを気密にする。カートリッジシールは、最大200〜230℃の温度の耐えられる例えばバイトン(Viton)ゴムまたは過フッ化ゴムKalrez(登録商標)、Simriz(登録商標)、またはChemraz(登録商標)など)のOリングにすることができる。ソース内のシールに適切な他の材料は、例えばエリックス(Eriks)社のOリング技術マニュアルから選択できる。
【0115】
ソース導管の先端を、例えば公差嵌合、VCR嵌合、または金属フェルール嵌合によって、反応室に取り付けることができる。
【実施例2】
【0116】
〔加熱式前駆体ソースによる五酸化タンタルTa2O5の堆積〕
フィンランドのピコサン・オイ(Picosun Oy)社製のSUNALE(商標)R-150 ALD反応炉の内部で4"シリコン基板上にTa2O5薄膜を堆積させるための前駆体として五酸化タンタルTa(OEt)5と水とを用いた。Ta(OEt)5は、室温近くで強粘液であり、+120℃における蒸気圧が10hPaである。1hPa=100Pa=1mbarである。Ta(OEt)5の室温近くでの蒸気圧は無視できるほど小さいため、十分なソース蒸気圧を高ソース温度で得るために加熱式前駆体ソースを用いた。加熱式前駆体ソースのラジアル軸シールに押し付けられたガラス製カートリッジにTa(OEt)5を注射器と針とを用いて充填した。水は室温において液体であり、20℃における蒸気圧は23hPaである。水を室温25℃近くで蒸発させるために液体前駆体ソースを用いた。
【0117】
100mmのシリコンウェーハを基板として用いた。この基板を基板ホルダーに配置し、ホルダーをALD反応炉の反応室に降下させた。反応空間と中間スペースとを機械的真空ポンプによって1hPa絶対圧未満に降圧した。真空ポンプの運転中、流れる窒素ガスによって反応空間の圧力を約1〜3hPaの圧力範囲に調整した。前駆体蒸気が反応空間から中間スペースに漏れないように、中間スペースの圧力を反応空間の圧力より約3〜5hPa高く維持した。他の実施形態においては、ガスを反応空間から排気管路に十分素早く除去でき、かつ反応性ガスが中間スペース側に漏れない限り、他の種類の圧力範囲を実現可能である。基板の加熱を加速するために、反応空間を300℃に予熱しておいた。反応空間内の圧力が安定化した後、反応空間内の温度が均一になるまで、プロセス制御を約5分間待機させた。
【0118】
堆積サイクルをTa(OEt)5蒸気への曝露期間(0.2s)と、第1の除去期間(2.0s)と、H2O蒸気への曝露期間(0.1s)と、第2の除去期間(4.0s)の4つの基本的な順次ステップで構成した。プロセス制御部が1000の同一堆積サイクルから成る堆積シーケンスを完了したとき、ポンピング弁を閉じ、反応炉に純粋な窒素ガスを大気圧に達するまで通気した。基板ホルダーを反応室から上昇させ、測定のために基板を基板ホルダーから取り外した。堆積実験の結果として、厚さ40nmのTa2O5薄膜が基板上に得られた。Ta2O5の成長速度は、300℃において0.07nm/サイクルであった。
【実施例3】
【0119】
〔3つの前駆体ソースによる不純物添加金属酸化物薄膜の堆積〕
ジエチル亜鉛(DEZ)を充填した1つのPicosolution(商標)前駆体ソースと、精製水を充填した1つのPicosolution(商標)前駆体ソースと、ビス(メチル-η5-シクロペンタジエニル)マグネシウム(CPMM)を充填した1つのPicohot(商標)ソースシステムとをALD反応炉に据え付けた。CPMMソースを+95℃に加熱した。これにより、蒸気圧が約10hPaになった。水源温度が好ましくは僅かに室温未満になるように、水源温度をペルチェ素子冷却器によって制御したが、他の実施形態においては、水の凝縮を防止するためにソース管路が十分に断熱されている限り、室温より高い温度を使用できる。この堆積例において、冷却された水源の温度は+18℃であった。
【0120】
ALD反応炉の反応室を+250℃に加熱した。6インチのシリコンウェーハを反応室に装填した。ウェーハの温度を反応室の温度に安定化させるために、安定化タイマを約5分に設定した。
【0121】
最初に、基板表面をヒドロキシル(OH)基で飽和させるために、水蒸気パルスを反応室に供給した。他の実施形態によると、基板表面は一般に、薄膜成長を開始させるに十分なOH基を含んでいるので、金属前駆体パルスの供給を直接開始することも可能である。
【0122】
次に、堆積プログラムは、窒素パージガスによってそれぞれ分離されたDEZ、CPMM、および水蒸気の各パルスを反応室に供給した。結果として、Mgが添加されたn型ZnO薄膜がウェーハ上に2A/サイクルの成長速度で成長した。
【0123】
いくつかの利点を上で説明したことに留意されたい。勿論、本発明の何れか特定の実施形態によっては、このような利点の全てが必ずしも実現されないこともあり得ることを理解されたい。したがって、例えば、本願明細書に教示されているように1つの利点または利点群を、本願明細書に教示または示唆されているような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、実現または最適化するように本発明を具現化または実施しうることを当業者は認識されるであろう。
【0124】
さらに、この発明はいくつかの好適な実施形態および実施例の文脈で開示されているが、本発明は具体的に開示された実施形態を超えて本発明の他の代替実施形態および/または用途、およびその自明の変更物ならびに等価物にまで及ぶことを当業者は理解されるであろう。また、本発明のいくつかの変形例を図示し詳細に説明してきたが、この開示に基づき当業者には本発明の範囲に含まれる他の変更物も容易に明らかになるであろう。例えば、各実施形態の特定の特徴および側面のさまざまな組み合わせまたは部分的組み合わせが可能であり、これらの組み合わせまたは部分的組み合わせも本発明の範囲に含まれると考えられる。したがって、開示されている発明の変形モードを形成するために、開示されている実施形態のさまざまな特徴および側面を互いに組み合わせることも入れ替えることもできることを理解されたい。したがって、本願明細書に開示されている本発明の範囲は、開示されている上記の特定の実施形態によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を公正に閲読することによってのみ判断されるべきものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室に、前記前駆体ソースからの前駆体蒸気を供給する供給管路と、
前記前駆体ソースと前記反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防止するために反応室加熱器からの熱を利用するように構成された構造と、
を備える装置。
【請求項2】
前記前駆体ソースは、
前記反応炉からの熱を受けるように構成された突起を備える、
請求項1に記載の前記装置。
【請求項3】
前記突起内の内側首部と前記突起の周囲の外側首部とを備え、前記内側首部と前記外側首部とはその間にギャップを形成する、
請求項2に記載の前記装置。
【請求項4】
前記突起から周囲への熱エネルギーの損失を減らすように構成された熱伝導部を前記供給管路の周囲に備える、
請求項2に記載の前記装置。
【請求項5】
着脱可能なソースカートリッジを受け入れるように構成されたソースフレームワークを備える、
請求項1に記載の前記装置。
【請求項6】
前記ソースカートリッジを加熱するための加熱器を備える、
請求項5に記載の前記装置。
【請求項7】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室への前記前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を制御するように構成される、前記前駆体ソースに搭載された2つのパルス送出弁と、
1つのパルス送出弁から別のパルス送出弁に不活性ガスを供給するための、前記パルス送出弁間のバイパス管路と、
を備える装置。
【請求項8】
流量制限器を前記バイパス管路に備える、請求項7に記載の前記装置。
【請求項9】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室への前記前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を制御するように構成される、前記前駆体ソースに搭載されたパルス送出弁と、
を備える装置であって、前記装置は、
圧力を上昇させて前記反応室に向かう前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物の順次流を容易にするために、不活性ガスを前記パルス送出弁経由で前駆体ソースカートリッジに搬送するように構成される、
装置。
【請求項10】
前記装置は、
前記圧力上昇後、次の前駆体パルス期間の開始まで前記前駆体カートリッジを閉じるように構成され、さらに、
前記次の前駆体パルス期間の開始時に前記パルス送出弁経由で前記反応室に向かうルートを開くように構成される、
請求項9に記載の前記装置。
【請求項11】
前駆体ソースであって、
着脱可能な前駆体カートリッジと、
前記前駆体カートリッジを前記前駆体ソースに着脱するための第1の取り付け具と、
堆積反応炉デバイスへ前記前駆体ソース着脱するための第2の取り付け具と、
を備える前駆体ソース。
【請求項12】
前記第1の取り付け具に接続された粒子フィルタを備える、
請求項11に記載の前記前駆体ソース。
【請求項13】
前駆体材料が前記前駆体カートリッジの内側から前記第1の取り付け具に流れるのを防ぐために、前記前駆体カートリッジを封止するように構成された封止部または弁を備える、請求項11に記載の前記前駆体ソース。
【請求項14】
前記封止部または弁の第1の側にある第3の取り付け具と、
前記封止部または弁の別の側にある第4の取り付け具と、
を備え、
前記第3および第4の取り付け具は、前記封止部または弁を取り外すため、および前記カートリッジを洗浄するために開くように構成される、
請求項13に記載の前記前駆体ソース。
【請求項15】
請求項11に記載の前記前駆体ソースで使用される着脱可能な前駆体カートリッジ。
【請求項16】
前駆体材料を備える前駆体ボートと、
内部に装填される前記前駆体ボートを受け入れる焼結カートリッジと、
を備える前駆体カートリッジ。
【請求項17】
ソース化学物質が装填された前記前駆体ボートは、前記焼結カートリッジに装填口から入りうるように、横向きに配置される、請求項16に記載の前記前駆体カートリッジ。
【請求項18】
前駆体蒸気を堆積反応炉の前駆体ソースから供給管路に沿って、加熱された基板を収容する反応室に供給することと、
前記堆積反応炉内の前記加熱された基板に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させることと、
前記前駆体ソースと前記反応室との間で前記前駆体蒸気が液相または固相に凝結することを防止するために反応室加熱器からの熱を使用することと、
を含む方法。
【請求項19】
前記ソース内の突起内に前記反応炉からの熱を受け入れること
を含み、前記突起は前記供給管路を有し、前記受け入れた熱が前記供給管路を加熱する、
請求項18に記載の前記方法。
【請求項20】
前記突起から周囲への熱エネルギーの損失を減らすために熱伝導部を前記供給管路の周囲に配置すること、
を含む、請求項19に記載の前記方法。
【請求項21】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積することと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を、前記前駆体ソースに搭載された2つのパルス送出弁によって制御することと、
1つのパルス送出弁から別のパルス送出弁にバイパス管路経由で不活性ガスを供給することと、
を含む方法。
【請求項22】
前記バイパス管路は流量制限器を備える、請求項21に記載の前記方法。
【請求項23】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積することと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を、前記前駆体ソースに搭載されたパルス送出弁によって制御することと、
圧力を上昇させて前記反応室に向かう前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物の順次流を容易にするために、不活性ガスを前記パルス送出弁経由で前駆体ソースカートリッジに搬送することと、
を含む方法。
【請求項24】
前記圧力上昇後、次の前駆体パルス期間の開始まで、前記前駆体カートリッジを閉じることと、
前記次の前駆体パルス期間の開始時に前記パルス送出弁経由で前記反応室に向かうルートを開くことと、
を含む、請求項23に記載の前記方法。
【請求項25】
前駆体ソースを作動させることと、
ソース化学物質が装填された横型の前駆体ボートを前記前駆体ソースの焼結カートリッジで受けることと、
を含む方法。
【請求項1】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室に、前記前駆体ソースからの前駆体蒸気を供給する供給管路と、
前記前駆体ソースと前記反応室との間で前駆体蒸気が液相または固相に凝縮することを防止するために反応室加熱器からの熱を利用するように構成された構造と、
を備える装置。
【請求項2】
前記前駆体ソースは、
前記反応炉からの熱を受けるように構成された突起を備える、
請求項1に記載の前記装置。
【請求項3】
前記突起内の内側首部と前記突起の周囲の外側首部とを備え、前記内側首部と前記外側首部とはその間にギャップを形成する、
請求項2に記載の前記装置。
【請求項4】
前記突起から周囲への熱エネルギーの損失を減らすように構成された熱伝導部を前記供給管路の周囲に備える、
請求項2に記載の前記装置。
【請求項5】
着脱可能なソースカートリッジを受け入れるように構成されたソースフレームワークを備える、
請求項1に記載の前記装置。
【請求項6】
前記ソースカートリッジを加熱するための加熱器を備える、
請求項5に記載の前記装置。
【請求項7】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室への前記前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を制御するように構成される、前記前駆体ソースに搭載された2つのパルス送出弁と、
1つのパルス送出弁から別のパルス送出弁に不活性ガスを供給するための、前記パルス送出弁間のバイパス管路と、
を備える装置。
【請求項8】
流量制限器を前記バイパス管路に備える、請求項7に記載の前記装置。
【請求項9】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させるように構成された前駆体ソースと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室への前記前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を制御するように構成される、前記前駆体ソースに搭載されたパルス送出弁と、
を備える装置であって、前記装置は、
圧力を上昇させて前記反応室に向かう前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物の順次流を容易にするために、不活性ガスを前記パルス送出弁経由で前駆体ソースカートリッジに搬送するように構成される、
装置。
【請求項10】
前記装置は、
前記圧力上昇後、次の前駆体パルス期間の開始まで前記前駆体カートリッジを閉じるように構成され、さらに、
前記次の前駆体パルス期間の開始時に前記パルス送出弁経由で前記反応室に向かうルートを開くように構成される、
請求項9に記載の前記装置。
【請求項11】
前駆体ソースであって、
着脱可能な前駆体カートリッジと、
前記前駆体カートリッジを前記前駆体ソースに着脱するための第1の取り付け具と、
堆積反応炉デバイスへ前記前駆体ソース着脱するための第2の取り付け具と、
を備える前駆体ソース。
【請求項12】
前記第1の取り付け具に接続された粒子フィルタを備える、
請求項11に記載の前記前駆体ソース。
【請求項13】
前駆体材料が前記前駆体カートリッジの内側から前記第1の取り付け具に流れるのを防ぐために、前記前駆体カートリッジを封止するように構成された封止部または弁を備える、請求項11に記載の前記前駆体ソース。
【請求項14】
前記封止部または弁の第1の側にある第3の取り付け具と、
前記封止部または弁の別の側にある第4の取り付け具と、
を備え、
前記第3および第4の取り付け具は、前記封止部または弁を取り外すため、および前記カートリッジを洗浄するために開くように構成される、
請求項13に記載の前記前駆体ソース。
【請求項15】
請求項11に記載の前記前駆体ソースで使用される着脱可能な前駆体カートリッジ。
【請求項16】
前駆体材料を備える前駆体ボートと、
内部に装填される前記前駆体ボートを受け入れる焼結カートリッジと、
を備える前駆体カートリッジ。
【請求項17】
ソース化学物質が装填された前記前駆体ボートは、前記焼結カートリッジに装填口から入りうるように、横向きに配置される、請求項16に記載の前記前駆体カートリッジ。
【請求項18】
前駆体蒸気を堆積反応炉の前駆体ソースから供給管路に沿って、加熱された基板を収容する反応室に供給することと、
前記堆積反応炉内の前記加熱された基板に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積させることと、
前記前駆体ソースと前記反応室との間で前記前駆体蒸気が液相または固相に凝結することを防止するために反応室加熱器からの熱を使用することと、
を含む方法。
【請求項19】
前記ソース内の突起内に前記反応炉からの熱を受け入れること
を含み、前記突起は前記供給管路を有し、前記受け入れた熱が前記供給管路を加熱する、
請求項18に記載の前記方法。
【請求項20】
前記突起から周囲への熱エネルギーの損失を減らすために熱伝導部を前記供給管路の周囲に配置すること、
を含む、請求項19に記載の前記方法。
【請求項21】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積することと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を、前記前駆体ソースに搭載された2つのパルス送出弁によって制御することと、
1つのパルス送出弁から別のパルス送出弁にバイパス管路経由で不活性ガスを供給することと、
を含む方法。
【請求項22】
前記バイパス管路は流量制限器を備える、請求項21に記載の前記方法。
【請求項23】
堆積反応炉内の加熱された基板上に順次自己飽和表面反応によって材料を堆積することと、
前記基板を収容し前記反応炉に備えられた反応室への前駆体ソースからの前駆体蒸気の供給を、前記前駆体ソースに搭載されたパルス送出弁によって制御することと、
圧力を上昇させて前記反応室に向かう前駆体蒸気と不活性ガスとの混合物の順次流を容易にするために、不活性ガスを前記パルス送出弁経由で前駆体ソースカートリッジに搬送することと、
を含む方法。
【請求項24】
前記圧力上昇後、次の前駆体パルス期間の開始まで、前記前駆体カートリッジを閉じることと、
前記次の前駆体パルス期間の開始時に前記パルス送出弁経由で前記反応室に向かうルートを開くことと、
を含む、請求項23に記載の前記方法。
【請求項25】
前駆体ソースを作動させることと、
ソース化学物質が装填された横型の前駆体ボートを前記前駆体ソースの焼結カートリッジで受けることと、
を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2011−518256(P2011−518256A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505541(P2011−505541)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050280
【国際公開番号】WO2009/130375
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510275024)
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI−02150 Espoo, Finland
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050280
【国際公開番号】WO2009/130375
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510275024)
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI−02150 Espoo, Finland
【Fターム(参考)】
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