説明

塗膜接着フィルム、型内塗装品の製造方法および型内塗装品

【課題】 熱硬化性塗料と樹脂成形品との間が十分に熱せられなくとも樹脂成形品と熱硬化性塗料層との密着力が高い型内塗装品を得る。
【解決手段】 樹脂成形品と熱硬化性塗料層との間に塗膜接着層が形成された型内塗装品を形成するための塗膜接着フィルムであって、ベースフィルムの片面に離型層と塗膜接着層とが順次積層されたようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内で成形した成形品の表面と金型キャビティ面との間に熱硬化性塗料を注入した後、熱硬化性塗料を金型内で硬化させて、成形品表面に熱硬化性塗料を密着一体化させる型内塗装品の製造に使用できる塗膜接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の型内塗装品の製造方法として、裏面形成金型121、表面形成金型122、塗膜形成金型123とを備える型内塗装金型を用い(図7(a)参照)、裏面形成金型121と表面形成金型122により樹脂成形品102を形成後(図7(b)参照)、型開き後に裏面形成金型121と対向する金型を塗膜形成金型123に切り替え(図7(c)、(d)参照)、型閉じして塗膜形成金型123と樹脂成形品102との間にキャビティを形成後そのキャビティに熱硬化性塗料を注入し(図7(e)参照)、型開きして樹脂成形品102の表面に熱硬化性塗料層103が形成された型内塗装品101を得る(図7(f)参照)技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許3988660号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この型内塗装品の製造方法では、裏面形成金型121と対向する金型を塗膜形成金型123に切り替える際に一旦金型を完全に開いてしまうことにより、樹脂成形品102の表面が外気温付近にまで冷却されてしまう。すると、塗膜形成金型123の熱が熱硬化性塗料と樹脂成形品102との界面にまで十分伝わらなければ、熱硬化性塗料と樹脂成形品102との化学結合ができず、また、樹脂成形品102への熱硬化性塗料の浸透が弱くなり、その結果、樹脂成形品102と熱硬化性塗料層103との密着力が弱くなってしまう場合がある。
【0005】
本発明は、一旦金型を完全に開いてしまうことにより樹脂成形品の表面が外気温付近にまで冷却されてしまっても、樹脂成形品と熱硬化性塗料層との密着力を十分得るための型内塗装品の製造方法およびこの方法に用いる塗膜接着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するため、以下のような特徴を備える。
【0007】
本発明の塗膜接着フィルムは、樹脂成形品と熱硬化性塗料層との間に塗膜接着層が形成された型内塗装品を形成するための塗膜接着フィルムであって、
ベースフィルムの片面に離型層と塗膜接着層とが順次積層された構成である。
【0008】
また、上記の発明において、塗膜接着層にアクリル酸モノマーが混入されてもよい。
【0009】
また、上記の発明において、塗膜接着層に反応触媒が混入されてもよい。
【0010】
また、上記の発明において、塗膜接着層上にさらに意匠層が積層されてもよい。
【0011】
本発明の型内塗装品の製造方法は、裏面形成金型と表面形成金型と塗膜形成金型とを備える型内塗装金型を用い、
(1)上記いずれかに記載の発明の塗膜接着フィルムをベースフィルム側がキャビティ面に向くように表面形成金型内に配置した後、裏面形成金型と表面形成金型とを型閉じして、樹脂成形品を形成するための成形キャビティを裏面形成金型と表面形成金型との間に形成し、
(2)成形キャビティ内に成形樹脂を充填し冷却固化させて塗膜接着フィルムと一体化した樹脂成形品を形成し、
(3)裏面形成金型が樹脂成形品を保持する状態で裏面形成金型と表面形成金型とを型開きし、
(4)裏面形成金型と対向する表面形成金型を塗膜形成金型に切り替え、切り替えの前もしくは後に塗膜接着フィルムと一体化した樹脂成形品からベースフィルムを剥離して樹脂成形品上の塗膜接着層を最表面に露出させ、
(5)樹脂成形品を保持する裏面形成金型と塗膜形成金型とを型閉じして、塗膜接着層が最表面に露出した樹脂成形品を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティを樹脂成形品と塗膜形成金型との間に形成し、
(6)塗装キャビティ内に熱硬化性塗料を注入して固化させることにより、塗膜接着層が最表面に露出した樹脂成形品に熱硬化性塗料層を一体被覆させる工程を備える。
【0012】
また、上記の発明において、射出成形機を回転盤が付いた回転式の射出成形機とし、回転盤の作動により、
裏面形成金型と表面形成金型との間で塗膜接着フィルムと一体化した樹脂成形品を形成後、樹脂成形品を保持する裏面形成金型と対向する金型を表面形成金型から塗膜形成金型に切り替えてもよい。
【0013】
また、上記の発明において、型内塗装金型が回転機構をさらに備え、回転機構の作動により、
裏面形成金型と表面形成金型との間で塗膜接着フィルムと一体化した樹脂成形品を形成後、樹脂成形品を保持する裏面形成金型と対向する金型を表面形成金型から塗膜形成金型に切り替えてもよい。
【0014】
また、上記の発明において、塗装キャビティ内への熱硬化性塗料の注入完了とほぼ同時に注入された熱硬化性塗料を加圧してもよい。
【0015】
本発明の型内塗装品は、樹脂成形品上に塗膜接着層と熱硬化性塗料層が順次積層形成された構成である。
【0016】
また、上記の発明において、塗膜接着層にアクリル酸モノマーが混入されてもよい。
【0017】
また、上記の発明において、塗膜接着層に反応触媒が混入されてもよい。
【0018】
また、上記の発明において、樹脂成形品と塗膜接着層との間に意匠層がさらに積層形成されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の塗膜接着フィルムは樹脂成形品と熱硬化性塗料層との間に塗膜接着層が形成された型内塗装品を形成するための塗膜接着フィルムであって、ベースフィルムの片面に離型層と塗膜接着層とが順次積層されたことを特徴とする。したがって、樹脂成形品と熱硬化性塗料層との間に塗膜接着層を設けることができるので、熱硬化性塗料と樹脂成形品との間が十分に熱せられなくとも樹脂成形品と熱硬化性塗料層との密着力が高い型内塗装品を得ることができる。
【0020】
また、本発明は塗膜接着層にアクリル酸モノマーを混入できる。したがって、塗膜接着層に熱硬化性塗料層とのラジカル重合反応活性度の高いOH基を備えることができるので、熱硬化性塗料と樹脂成形品との間が十分に熱せられなくとも樹脂成形品と熱硬化性塗料層との密着力が高い型内塗装品を得ることができる。
【0021】
また、本発明は塗膜接着層に反応触媒を混入できる。したがって、塗膜接着層と熱硬化性塗料層との反応を促進させることができるので、熱硬化性塗料と樹脂成形品との間が十分に熱せられなくとも樹脂成形品と熱硬化性塗料層との密着力を高い型内塗装品を得ることができる。
【0022】
また、本発明は塗膜接着層上にさらに意匠層を積層できる。したがって、熱硬化性塗料層および塗膜接着層を透明にすることによって熱硬化性塗料層の背面に意匠層が視認できる型内塗装品を形成できるので、奥行きと金属調なども含んだ高精細で多様性に富んだ意匠を持つ型内塗装品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0024】
まず、本発明の塗膜接着フィルムについて説明する。
【0025】
本発明の塗膜接着フィルム1は、樹脂成形品12と熱硬化性塗料層13との間に塗膜接着層5が形成された型内塗装品11(図3参照)を形成するためのものであって、ベースフィルム2の片面に少なくとも離型層4と塗膜接着層5とが順次積層形成されたものである(図1参照)。塗膜接着フィルム1には、必要に応じてベースフィルム2と離型層4との間に易接着層3、また、塗膜接着層5の形成後に意匠層6および樹脂接着層7が順次積層形成される。塗膜接着フィルム1は、後述するように、塗膜接着フィルム1と一体化した樹脂成形品12からベースフィルム2(剥離フィルム8)を剥離して樹脂成形品12上の塗膜接着層5(転写層9)を最表面に露出させる際(図2(c)および図1参照)、ベースフィルム2や易接着層3や離型層4は剥離フィルム8として樹脂成形品12から剥離除去され、塗膜接着層5や意匠層6や樹脂接着層7は転写層9として樹脂成形品12上に転写されるものである。
【0026】
ベースフィルム2としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アセテート樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのプラスチックシートを使用することができる。ベースフィルム2の厚さとしては、10〜100μmのものを使用するとよい。
【0027】
ベースフィルム2上には離型層4が形成される。離型層4は、後述する樹脂成形品12上への塗膜接着層5の転写工程の際にベースフィルム2とともに塗膜接着層5から剥離除去される層である。離型層4の材質としては、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂などの硬化性樹脂を用いるとよい。離型層4の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0028】
また、ベースフィルム2と離型層4との間には、離型層4がベースフィルム2から剥がれることを防止するための易接着層3が必要に応じて設けられる。易接着層3の材質としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などを用いるとよい。易接着層3の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0029】
離型層4上には塗膜接着層5が形成される。塗膜接着層5は後述する熱硬化性塗料層13を樹脂成形品12に接着させるための層である。この塗膜接着層5により樹脂成形品12と熱硬化性塗料層13との間に塗膜接着層5を設けることができるので、熱硬化性塗料と樹脂成形品12との間が十分に熱せられなくとも樹脂成形品12と熱硬化性塗料層13との密着力が高い型内塗装品11を得ることができる。塗膜接着層5の材質としては、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂などを使用すればよい。塗膜接着層5の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコーティングや、グラビア印刷、スクリーン印刷法などを用いるとよい。塗膜接着層5の乾燥膜厚は、1〜5μmとするのが一般的である。なお、塗膜接着層5上に意匠層6および樹脂接着層7が形成されない場合には、樹脂成形品12上には塗膜接着層5が直接積層されることになる。
【0030】
塗膜接着層5にはアクリル酸モノマーを混入させるのが好ましい。このようにすると、塗膜接着層5に熱硬化性塗料層13とのラジカル重合反応活性度の高いOH基を備えるので、熱硬化性塗料と樹脂成形品との間が十分に熱せられなくとも樹脂成形品12と熱硬化性塗料層13との密着力を高い型内塗装品11を得ることができる。
【0031】
また、塗膜接着層5には反応触媒を混入させるのが好ましい。このようにすると、塗膜接着層5と熱硬化性塗料層13との反応を促進するので、熱硬化性塗料と樹脂成形品12との間が十分に熱せられなくとも樹脂成形品12と熱硬化性塗料層13との密着力が高い型内塗装品11を得ることができる。反応触媒としては、メタクリル酸金属塩などを用いるとよい。
【0032】
塗膜接着層5上には意匠層6を形成してもよい。意匠層6の材質としては、ビニル系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、エステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。意匠層6の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。意匠層6の厚さとしては、1〜30μmが好ましい。意匠層6は着色インキに限らず、金属蒸着層等を形成して金属光沢のある意匠表現をする場合もある。金属蒸着層の材質としては、アルミ、クロム、銅、スズなどを用いる。金属蒸着層の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いればよい。なお、意匠層6を形成する場合、最終的に形成される型内塗装品11の表面から意匠層6を視認できるように熱硬化性塗料層13および塗膜接着層5は透明にする。こうすることで、熱硬化性塗料層13の背面に意匠層6が視認できるので、奥行きと金属調なども含んだ高精細で多様性に富んだ意匠を持つ型内塗装品11を得ることができる。
【0033】
意匠層6を形成した場合、意匠層6上には樹脂接着層7をさらに形成するのが好ましい。樹脂接着層7は転写層9を樹脂成形品12に接着させるための層である。樹脂成形品12の材質がポリアクリル系樹脂の場合は、樹脂接着層7の材質としてポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、樹脂成形品12の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂、エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを使用すればよい。樹脂接着層7の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコーティングや、グラビア印刷、スクリーン印刷法などを用いるとよい。樹脂接着層7の乾燥膜厚は、1〜5μmとするのが一般的である。
【0034】
次に、上記の構成である塗膜接着フィルム1を用いた、本発明の型内塗装品11の製造方法を説明する。
【0035】
本発明の型内塗装品11の製造には、裏面形成金型21と表面形成金型22と塗膜形成金型23とを備える型内塗装金型を用いる。裏面形成金型21は樹脂成形品12の裏面形状を形成するために用いられる。表面形成金型22は樹脂成形品12の表面形状を形成するために用いられる。塗膜形成金型23は樹脂成形品12の表面に熱硬化性塗料層13を形成するために用いられる。
【0036】
まず、塗膜接着フィルム1をベースフィルム2側(剥離フィルム8側)がキャビティ面に向くように表面形成金型22内に配置した後、裏面形成金型21と表面形成金型22とを型閉じして、樹脂成形品12を形成するための成形キャビティを裏面形成金型21と表面形成金型22との間に形成する(図2(a)参照)。
【0037】
ここで、塗膜接着フィルム1を表面形成金型22内に配置する際、枚葉の塗膜接着フィルム1を1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の塗膜接着フィルム1の必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の塗膜接着フィルム1を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、塗膜接着フィルム1と表面形成金型22との見当が一致するようにするとよい。また、塗膜接着フィルム1を間欠的に送り込む際に、塗膜接着フィルム1の位置をセンサーで検出した後に塗膜接着フィルム1を裏面形成金型21と表面形成金型22とで固定するようにしてもよい。また、塗膜接着フィルム1は成形キャビティの外周を確実に覆うように若干成形キャビティの境界を越えた部分にも配置するのが好ましい(図示せず)。このようにすると、樹脂成形品12の外周端部でも樹脂成形品12と熱硬化性塗料層13との密着力が得られ、また塗膜接着フィルム1が意匠層6を備える場合は外周端部に意匠ヌケのない型内塗装品11を確実に得ることができる。
【0038】
次いで、成形キャビティ内に成形樹脂を充填し冷却固化させて塗膜接着フィルム1と一体化した樹脂成形品12を形成する(図2(b)参照)。
【0039】
樹脂成形品12に用いられる成形樹脂としては、通常の熱可塑性の射出成形樹脂やエンジニアリングプラスチックのほか、熱硬化性の成形樹脂材料など特に限定はされないが、成形しやすく熱硬化性塗料との密着が良いものが好ましい。具体的には、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂(ABS系樹脂)、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などがあげられる。ここで、後述する熱硬化性塗料層13の形成の際に90〜100℃程度といった比較的高い温度で熱硬化性塗料を硬化させる場合には、ポリカーボネート樹脂などのいわゆるエンジニアプラスチックを使用するのが好ましい。
【0040】
次いで、裏面形成金型21が樹脂成形品12を保持する状態で裏面形成金型21と表面形成金型22とを型開きし、裏面形成金型21と対向する表面形成金型22を塗膜形成金型23に切り替え、切り替えの前もしくは後に塗膜接着フィルム1と一体化した樹脂成形品12からベースフィルム2(剥離フィルム8)を剥離して樹脂成形品12上の塗膜接着層5を最表面に露出させる(図2(c)、(d)参照)。
【0041】
次いで、樹脂成形品12を保持する裏面形成金型21と塗膜形成金型23とを型閉じして、塗膜接着層5が最表面に露出した樹脂成形品12を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティを樹脂成形品12と塗膜形成金型23との間に形成し、塗装キャビティ内に熱硬化性塗料を注入して固化させることにより、塗膜接着層5が最表面に露出した樹脂成形品12に熱硬化性塗料層13を一体被覆させる(図2(e)参照)。塗膜形成金型23および裏面形成金型21の金型温度は、熱硬化性塗料の材質に応じて熱硬化性塗料が数秒以内に硬化する温度に設定する。
【0042】
熱硬化性塗料は、塗料タンク25から塗料注入機24に送られ、塗料注入機24から1ショット分の正確な量が適度な圧力で塗装キャビティに注入される。熱硬化性塗料の材質としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーなどの過酸化物触媒によって硬化が可能なバインダー成分を主体とする一液型塗料や、エポキシ樹脂/ポリアミン硬化系、ポリオール樹脂/ポリイソシアネート硬化系などの、金型注入直前に主剤/硬化剤を混合する二液型塗料などがあげられる。その中でも、アクリレート基を有するオリゴマー又は不飽和ポリエステル樹脂、あるいはこれらの成分と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーのうちのいずれかと架橋効率が8以上である有機過酸化物開始剤を含有する一液型塗料は、硬化性・付着性・外観・耐候性に優れており、硬化時間を短縮でき、付着力・外観・耐候性の問題から型内被覆方法を適用できなかった樹脂成形材料にも適用可能である点で非常に良好である。これらの塗料溶液は、従来型のスプレーやディッピングで使用される塗料のような揮発性有機溶剤を含んでいないか、含んでいても非常に少なくなっている。
【0043】
最後に、裏面形成金型21と塗膜形成金型23とを型開きすることによって、樹脂成形品12上に塗膜接着層5と熱硬化性塗料層13が順次積層形成された型内塗装品11を得ることができる(図2(f)、図3参照)。
【0044】
以下、裏面形成金型21と対向する表面形成金型22を塗膜形成金型23に切り替える方法をいくつか例示する。
【0045】
射出成形機を回転盤31が付いた回転式の射出成形機とし、回転盤31の作動により、裏面形成金型21と表面形成金型22との間で塗膜接着フィルム1と一体化した樹脂成形品12を形成後、樹脂成形品12を保持する裏面形成金型21と対向する金型を表面形成金型22から塗膜形成金型23に切り替える方法がある(図4参照)。回転盤31には裏面形成金型21が固定されていてもよく(図4参照)、裏面形成金型21ではなく表面形成金型22と塗膜形成金型23とが固定されていてもよい(図示せず)。ここで、裏面形成金型21を2つ以上使用すれば、1つの裏面形成金型21と表面形成金型22とを型閉じして、樹脂成形品12を形成するための成形キャビティを裏面形成金型21と表面形成金型22との間に形成し、成形キャビティ内に成形樹脂を充填し冷却固化させて樹脂成形品12を形成する工程と、樹脂成形品12を保持する他の裏面成形金型21と塗膜形成金型23とを型閉じして、塗膜接着層5が最表面に露出した樹脂成形品12を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティを樹脂成形品12と塗膜形成金型23との間に形成し、塗装キャビティ内に熱硬化性塗料を注入して固化させる工程を同時に行うことができるので、1つの樹脂成形品12を成形する間にも別の樹脂成形品12の表面に熱硬化性塗料層13を形成することができて好適である。
【0046】
また、型内塗装金型が回転機構32をさらに備え、回転機構32の作動により、裏面形成金型21と表面形成金型22との間で塗膜接着フィルム1と一体化した樹脂成形品12を形成後、樹脂成形品12を保持する裏面形成金型21と対向する金型を表面形成金型22から塗膜形成金型23に切り替える方法もある(図5参照)。ここで、裏面形成金型21を表面形成金型22と塗膜形成金型23との間に配置し、裏面形成金型21が表面と裏面のそれぞれがキャビティ形成可能な形状を有し、裏面形成金型21が表裏面を交換するように回転することによって切り替え可能とすればよい(図5参照)。裏面形成金型21を回転させるためには、例えば水平面で回転する回転機構32を用いればよい。この方法でも、1つの樹脂成形品12を成形する間にも別の樹脂成形品12の表面に熱硬化性塗料層13を形成することができて好適である。
【0047】
型内塗装品の製造にあたっては、塗装キャビティ内への熱硬化性塗料の注入完了とほぼ同時に注入された熱硬化性塗料を加圧する工程を加えてもよい。この工程を加えると、熱硬化性塗料が硬化によって大きく収縮しても、型内塗装品11の表面にヒケが発生しないようにすることができて好適である。この工程を加えるにあたり、例えば、裏面形成金型21として、圧縮ブロック41と、その周囲に位置する外周プレート42と、圧縮ブロック41が固定される取付板43と、外周プレート42と取付板43との間に例えばコイルバネ44のような弾性体を備えるものを使用できる(図6参照)。他にも、塗膜形成金型23のキャビティの製品部分に圧縮機構を設けたものを使用することによって、熱硬化性塗料層13の表面にヒケが現出させないと同時に塗膜形成金型23のキャビティ面に形成された微細形状を確実に熱硬化性塗料層13に転写することができる(図示せず)。
【実施例1】
【0048】
まず、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるベースフィルム2の片面にグラビア印刷法で離型層4を積層形成した剥離フィルム8上に、転写層9として塗膜接着層5、意匠層6、樹脂接着層7を順次グラビア印刷法により積層して塗膜接着フィルム1を形成した。離型層4はエポキシ樹脂からなるインキ、塗膜接着層5は塩化ビニル系樹脂からなるインキ、意匠層6はアクリル系樹脂からなるインキ、樹脂接着層7はエチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂からなるインキを用いた。
【0049】
そして、裏面形成金型21と表面形成金型22と塗膜形成金型23とを備える型内塗装金型を用い、ベースフィルム2側がキャビティ面に向くように金型温度が70℃に設定された表面形成金型22内に塗膜接着フィルム1を配置した後、裏面形成金型21と表面形成金型22とを型閉じして、樹脂成形品12を形成するための成形キャビティを裏面形成金型21と表面形成金型22との間に形成した(図2(a)参照)。
【0050】
ここで、射出成形機として回転式の射出成形機を用い、回転盤31には2つの裏面形成金型21を配置し、射出成形機の固定盤(図示せず)には表面形成金型22と塗膜形成金型23とを配置した(図4参照)。
【0051】
次いで、成形キャビティ内には加熱溶融したポリカーボネート樹脂を充填し40秒間冷却固化させて塗膜接着フィルム1と一体化した樹脂成形品12を形成した(図2(b)参照)。
【0052】
そして、裏面形成金型21が樹脂成形品12を保持する状態で裏面形成金型21と表面形成金型22とを型開きするとともに塗膜接着フィルム1と一体化した樹脂成形品12からベースフィルム2(剥離フィルム8)を剥離することにより、塗膜接着層5が最表面に露出した長さ100mm、幅50mm、高さ3mmの直方体形状の樹脂成形品12が裏面形成金型21に保持された状態で得られた(図2(c)参照)。
【0053】
引き続き、樹脂成形品12を保持したままの裏面形成金型21を回転盤31により180度回転して、裏面形成金型21の樹脂成形品12を保持する面がキャビティの外形形状が長さ100.5mm、幅50.5mm、高さ3.2mmで金型温度が95℃に設定された塗膜形成金型23と対向するように切り替えた(図2(d)参照)。
【0054】
そして、樹脂成形品12を保持する裏面形成金型21と塗膜形成金型23とを型閉じして、塗膜接着層5が最表面に露出した樹脂成形品12を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティを樹脂成形品と塗膜形成金型との間に形成し、塗装キャビティ内に透明性を備えた熱硬化性塗料(大日本塗料(株)製、プラグラス8000)を注入し、40秒間保持して熱硬化性塗料を固化させることにより、塗膜接着層が最表面に露出した樹脂成形品に熱硬化性塗料層を一体被覆させた(図2(e)参照)。
【0055】
最後に、裏面形成金型21と塗膜形成金型23とを型開きすることによって、樹脂成形品12上に樹脂接着層7、意匠層6、塗膜接着層5、熱硬化性塗料層13が順次積層形成された型内塗装品11を得た(図2(f)、図4参照)。樹脂成形品12と熱硬化性塗料層13との間には塗膜接着層5を設けられているので、この型内塗装品11は樹脂成形品12と熱硬化性塗料層13との密着力が高いものであった。また、この型内塗装品11は透明な熱硬化性塗料層13および塗膜接着層5の背面に意匠層6が視認でき、奥行きと金属調なども含んだ高精細で多様性に富んだ意匠を持つものであった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の塗膜接着フィルムを示す断面図である。
【図2】本発明の型内塗装品の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の型内塗装品を示す断面図である。
【図4】回転式の射出成形機を使用した、本発明の型内塗装品の製造方法を示す断面図である。
【図5】回転機構を備える型内塗装金型を使用した、本発明の型内塗装品の製造方法を示す断面図である。
【図6】熱硬化性塗料を加圧する工程を備える、本発明の型内塗装品の製造方法を示す断面図である。
【図7】従来の型内塗装品の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 塗膜接着フィルム
2 ベースフィルム
3 易接着層
4 離型層
5 塗膜接着層
6 意匠層
7 樹脂接着層
8 剥離フィルム
9 転写層
11 型内塗装品
12 樹脂成形品
13 熱硬化性塗料層
21 裏面形成金型
22 表面形成金型
23 塗膜形成金型
24 塗料注入機
25 塗料タンク
31 回転式射出成形機の回転盤
32 回転機構
41 圧縮ブロック
42 外周プレート
43 取付板
44 コイルバネ
101 型内塗装品
102 樹脂成形品
103 熱硬化性塗料層
121 裏面形成金型
122 表面形成金型
123 塗膜形成金型
124 塗料注入機
125 塗料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品と熱硬化性塗料層との間に塗膜接着層が形成された型内塗装品を形成するための塗膜接着フィルムであって、
ベースフィルムの片面に離型層と塗膜接着層とが順次積層されたことを特徴とする塗膜接着フィルム。
【請求項2】
塗膜接着層にアクリル酸モノマーが混入された請求項1に記載の塗膜接着フィルム。
【請求項3】
塗膜接着層に反応触媒が混入された請求項1または2に記載の塗膜接着フィルム。
【請求項4】
塗膜接着層上にさらに意匠層が積層された請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜接着フィルム。
【請求項5】
裏面形成金型と表面形成金型と塗膜形成金型とを備える型内塗装金型を用い、
(1)請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜接着フィルムをベースフィルム側がキャビティ面に向くように表面形成金型内に配置した後、裏面形成金型と表面形成金型とを型閉じして、樹脂成形品を形成するための成形キャビティを裏面形成金型と表面形成金型との間に形成し、
(2)成形キャビティ内に成形樹脂を充填し冷却固化させて塗膜接着フィルムと一体化した樹脂成形品を形成し、
(3)裏面形成金型が樹脂成形品を保持する状態で裏面形成金型と表面形成金型とを型開きし、
(4)裏面形成金型と対向する表面形成金型を塗膜形成金型に切り替え、切り替えの前もしくは後に塗膜接着フィルムと一体化した樹脂成形品からベースフィルムを剥離して樹脂成形品上の塗膜接着層を最表面に露出させ、
(5)樹脂成形品を保持する裏面形成金型と塗膜形成金型とを型閉じして、塗膜接着層が最表面に露出した樹脂成形品を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティを樹脂成形品と塗膜形成金型との間に形成し、
(6)塗装キャビティ内に熱硬化性塗料を注入して固化させることにより、塗膜接着層が最表面に露出した樹脂成形品に熱硬化性塗料層を一体被覆させることを特徴とする型内塗装品の製造方法。
【請求項6】
射出成形機を回転盤が付いた回転式の射出成形機とし、回転盤の作動により、
裏面形成金型と表面形成金型との間で塗膜接着フィルムと一体化した樹脂成形品を形成後、樹脂成形品を保持する裏面形成金型と対向する金型を表面形成金型から塗膜形成金型に切り替える請求項5に記載の型内塗装成形品の製造方法。
【請求項7】
型内塗装金型が回転機構をさらに備え、回転機構の作動により、
裏面形成金型と表面形成金型との間で塗膜接着フィルムと一体化した樹脂成形品を形成後、樹脂成形品を保持する裏面形成金型と対向する金型を表面形成金型から塗膜形成金型に切り替える請求項5に記載の型内塗装成形品の製造方法。
【請求項8】
塗装キャビティ内への熱硬化性塗料の注入完了とほぼ同時に注入された熱硬化性塗料を加圧する請求項3〜5のいずれかに記載の型内塗装品の製造方法。
【請求項9】
樹脂成形品上に塗膜接着層と熱硬化性塗料層が順次積層形成されたことを特徴とする型内塗装品。
【請求項10】
塗膜接着層にアクリル酸モノマーが混入された請求項9に記載の型内塗装品。
【請求項11】
塗膜接着層に反応触媒が混入された請求項9または10に記載の型内塗装品。
【請求項12】
樹脂成形品と塗膜接着層との間に意匠層がさらに積層形成された請求項9〜11のいずれかに記載の型内塗装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−83009(P2010−83009A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254844(P2008−254844)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】