説明

増幅回路及び増幅回路の制御方法

【課題】ローパスフィルタを接続する増幅回路であって、増幅特性の補正時及び電源投入時における時間を短縮する増幅回路及びその制御方法を提供する。
【解決手段】通常動作モードMDN及び特殊動作モードMDTのうちいずれかの動作モードで動作する増幅回路10は、増幅部20と、増幅部20に接続するローパスフィルタ30と、遮断周波数fcを設定するローパスフィルタ設定部40とを備えている。遮断周波数は、通常動作モードMDNの場合には、出力信号の誤差が、許容される誤差である出力許容誤差を超えない通常遮断周波数fcnに設定され、そうでない場合には、通常遮断周波数fcnよりも高域側に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小信号を入力とし、ローパスフィルタを接続する増幅回路及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小信号を増幅する増幅回路の一例として、物理量の変化に応じて検知信号を出力するセンサに接続する増幅回路が挙げられる。センサとしては、圧力センサや加速度センサ・角速度(ジャイロ)センサなどが挙げられる。
増幅回路に入力される信号には、センサから出力される検知信号と共に1/fノイズなどのノイズも含まれている。このノイズの影響により、増幅回路の出力では、本来の検知信号の増幅出力に対する誤差が生じることになる。そこで、このようなノイズを抑制するため、増幅回路にローパスフィルタを接続することが一般的である。ただし、ローパスフィルタを接続すると、増幅回路における入出力の応答性が悪くなる。
一方、増幅回路では、温度や電源電圧の変化、また経時変化により生じた増幅特性を補正する場合がある。
特許文献1の増幅回路は、オペアンプのオフセット電圧を変化させるオフセット電圧可変手段と、オペアンプの出力電圧を所定の参照電圧と比較する比較手段と、オフセット電圧制御値を出力し、比較手段の結果に基づきオペアンプの出力電圧と参照電圧とが一致する制御値を記憶する制御手段とを備えている。特許文献1の図11に示されるように、この増幅回路は、オフセット電圧可変手段であるDACの数値を変化させながら、増幅動作を繰り返し、オフセット電圧の制御値を検知し、補正している。
【特許文献1】特開平11−88071号公報(図1、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ローパスフィルタを接続した増幅回路を対象にこの技術を利用した場合では、応答性の悪い増幅動作を繰り返すため、補正に要する時間が大きくなり、特に問題となる。
また、ローパスフィルタを接続した増幅回路では、電源投入時におけるローパスフィルタのプリチャージ時間が大きくなるといった他の問題も生じる。
【0004】
本発明は前記背景技術の課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、ローパスフィルタを接続する増幅回路であって、増幅特性の補正時及び電源投入時における時間を短縮する増幅回路及びその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための発明にかかる解決手段は、通常の増幅動作を行う通常動作モード及び特殊動作モードのうちいずれかの動作モードで動作する増幅回路であって、入力信号を増幅し、出力信号を発生する増幅部と、前記増幅部に接続し、遮断周波数よりも高域側の周波数帯域を遮断してノイズによる前記出力信号の誤差を抑制するローパスフィルタと、前記遮断周波数を設定するローパスフィルタ設定部と、を備え、前記遮断周波数は、前記通常動作モードの場合には、前記出力信号の誤差が、許容される誤差である出力許容誤差を超えない通常遮断周波数に設定され、前記特殊動作モードの場合には、前記通常遮断周波数よりも高域側に設定される増幅回路である。
【0006】
また、本発明にかかる他の解決手段は、通常の増幅動作を行う通常動作モード及び特殊動作モードのうちいずれかの動作モードで動作する増幅回路の制御方法であって、入力信号を増幅し、出力信号を発生するステップと、前記増幅部に接続し、ローパスフィルタを用いて遮断周波数よりも高域側の周波数帯域を遮断してノイズによる前記出力信号の誤差を抑制するステップと、前記遮断周波数を設定するステップと、を備え、前記遮断周波数は、前記通常動作モードの場合には、前記出力信号の誤差が、許容される誤差である出力許容誤差を超えない通常遮断周波数に設定され、前記特殊動作モードの場合には、前記通常遮断周波数よりも高域側に設定される増幅回路の制御方法である。
【0007】
本発明の増幅回路では、ローパスフィルタは、増幅部に接続し、遮断周波数よりも高域側の周波数帯域を遮断し、ノイズによる出力信号の誤差を抑制している。また、ローパスフィルタは、遮断周波数が低いほどノイズによる出力信号の誤差を抑制する効果が大きくなる反面、入出力における応答性が悪くなるという性質を有する。本発明ではこの点に着目し、出力許容誤差が大きい特殊動作モードで動作する場合には、遮断周波数を通常遮断周波数よりも高域側に設定している。従って、この場合には、ローパスフィルタの応答性が向上するため、迅速に特殊動作モードにおける処理を実行することができる。
【0008】
ローパスフィルタは、抵抗素子及び容量素子で構成された公知のパッシブフィルタであってもよいし、オペアンプを利用した公知のアクティブフィルタであってもよい。
【0009】
特殊動作モードとしては、通常動作以外の動作をするモードであればよく、例えば、具体的には、増幅部の増幅特性を検出し、補正する増幅特性補正モードや、電源投入時に前記ローパスフィルタをプリチャージするローパスフィルタ初期化モードが挙げられる。
【0010】
増幅特性補正モードでは、増幅特性を検出する際に、許容される出力の誤差が、通常動作モードにおける出力許容誤差よりも小さくて済む場合があり、このような場合には、遮断周波数が通常遮断周波数よりも高域側に設定して、ローパスフィルタの応答性を上げて迅速に処理することができる。
【0011】
また、ローパスフィルタ初期化モードでは、ローパスフィルタを構成する容量素子のプリチャージを行うことができればよく、出力信号は参照されない。このため、出力許容誤差に係わらず、遮断周波数を通常遮断周波数よりも高域側に設定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明を適用することにより、ローパスフィルタを接続する増幅回路について、増幅特性の補正及び電源投入時のローパスフィルタのプリチャージにかかる時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施にかかる増幅回路及び増幅回路の制御方法について具体化した実施形態を図1〜図11を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる増幅回路1についての原理説明図である。増幅回路1は、所定の増幅動作を行う通常動作モードMDN及び特殊動作モードMDTのうちいずれかの動作モードMDで動作する。
この増幅回路1は、入力信号VIを増幅する増幅部2と、増幅部2に接続し、遮断周波数fcよりも高域側の周波数帯域を遮断するローパスフィルタ3と、動作モードMDに応じて、ローパスフィルタ3の遮断周波数fcを切り替えるローパスフィルタ設定部4とを備えている。
【0015】
入力信号VIが、増幅部2に入力されると、増幅された増幅信号VZがローパスフィルタ3に出力される。さらに、ローパスフィルタ3は、増幅信号VZに対して、遮断周波数fcよりも高域側の周波数帯域を遮断して、増幅信号VZに含まれ、出力信号VOの誤差要因となるノイズを除去する。
なお、出力信号VOの誤差要因となるノイズは、1/fノイズが大きな割合を占めることが判っている。この1/fノイズは、低域周波数側ほど、出力レベルが大きくなる性質を有している。つまり、ローパスフィルタ3において、遮断周波数fcを低く設定するほど、1/fノイズを除去する効果が大きくなるが、これとは逆に、入出力の応答性は悪くなる。
【0016】
この遮断周波数fcは、ローパスフィルタ設定部4において、動作モードMDに応じて設定される。通常の増幅動作を行う通常動作モードMDNの場合には、遮断周波数fcは、出力信号VOの誤差EOが許容される出力許容誤差EAを超えない通常遮断周波数fcnに設定されている。
【0017】
一方、特殊動作モードMDTの場合には、遮断周波数fcが通常動作モードMDNの場合よりも高域側に設定される。ローパスフィルタ3は、遮断周波数fcが高いほど、入出力にかかる応答時間が短くなる。従って、この場合では、通常動作モードMDNの場合よりも、ローパスフィルタ3の入出力応答時間を短くすることができ、ひいては、増幅回路1の入出力の応答時間を短くすることができる。
【0018】
(第一実施形態)
次いで、図2に、図1の原理図に基づく増幅回路10を示す。
増幅回路10は、一対の差動入力信号V1,V2を差動増幅する増幅部20と、増幅部20に接続し、遮断周波数fcよりも高域側の周波数帯域を遮断するローパスフィルタ30と、ローパスフィルタ30の遮断周波数fcを設定するローパスフィルタ設定部40とを備えている。
【0019】
ローパスフィルタ30は、直列に接続された2つの抵抗素子RL1,RL2及び容量素子CLを含んでいる。抵抗素子RL1の一端に入力された増幅信号VZは、抵抗素子RL1,RL2を介して出力信号VOに出力される。また、容量素子CLの一端は抵抗素子RL2の出力信号VO側に接続され、他端はグランドに接続されている。このため、ローパスフィルタ30は、抵抗素子RL1,RL2を介して容量素子CLへの充放電を行うことで、ローパスフィルタとして機能する。また、このローパスフィルタ30の遮断周波数fcは、抵抗素子RL1,RL2及び容量素子CLからなる時定数により決定される。
【0020】
ローパスフィルタ設定部40は、ローパスフィルタ30の抵抗素子RL1,RL2のそれぞれの両端に接続された2つのスイッチSW1,SW2から構成される。これらのスイッチSW1,SW2は、それぞれ、制御部80からの制御信号CRL1,CRL2によりON/OFF制御される。例えば、制御信号CRL1をハイレベルにすると、スイッチSW1はONとなり、逆にローレベルにすると、スイッチSW1はOFFとなる。この制御は、制御信号CRL2及びスイッチSW2についても同様に行われる。これらの制御信号CRL1,CRL2の設定により、ローパスフィルタ30の遮断周波数fcを変化させることができる。例えば、制御信号CRL1をハイレベル(スイッチSW1=ON)にし、制御信号CRL2をローレベル(スイッチSW2=OFF)にすると、ローパスフィルタ30における時定数の抵抗値は、抵抗素子RL2の抵抗値のみ、すなわち抵抗値が小さくなるため、これに応じてローパスフィルタ30の遮断周波数fcが高域側に変化することになる。
なお、ローパスフィルタ30の遮断周波数fcは、制御信号CRL1=ローレベル、CRL2=ローレベルのとき、通常遮断周波数fcnに、制御信号CRL1=ハイレベル、CRL2=ローレベルのとき、第一遮断周波数fc1に、制御信号CRL1=ローレベル、CRL2=ハイレベルのとき、第二遮断周波数fc2にそれぞれ設定される。なお、制御信号CRL1=ハイレベル、CRL2=ハイレベルに設定すると、抵抗素子を短絡した状態となり、応答時間が最短の状態となる。
【0021】
次いで、増幅部20の具体例を図3に示す。
例は、センサをホイートストンブリッジで構成し、ブリッジの差電圧をセンサ出力として増幅する差動増幅回路である。
増幅部20は、3つの公知のオペアンプOP1〜OP3と、オペアンプOP1,OP2のゲイン補正を行うための抵抗調整部21,22と、オペアンプOP3のオフセット補正を行うための微小電圧生成部23と、抵抗素子R2,R3とを含んでいる。
このうち、微小電圧生成部23は、後述する基準信号生成部60(図6参照)と同様の回路を用いて構成される。
【0022】
オペアンプOP1,OP2は、それぞれ同じ抵抗値で変化する抵抗調整部21,22及び抵抗素子R2を負帰還抵抗と共に、負帰還差動増幅回路を構成している。差動入力信号V1,V2が入力されると、増幅信号VZには、以下の式で示される電圧が出力される。
ゲインG=(RX/R2*2)+1、出力信号VO=VOF+(V1−V2)*G
従って、抵抗調整部21,22における抵抗値RXを調整することにより、ゲインGの設定を行うことができ、微小電圧生成部23におけるオフセット電圧VOFを補正することにより、増幅信号VZのオフセットの適切な設定を行うことができる。
【0023】
また、抵抗調整部21,22は、ゲイン補正値CZ1により抵抗値を可変に設定できる回路であり、具体的には、図4に示す回路を用いて構成される。
この回路は、直列に接続されたn段の抵抗素子RX1〜RXnと、このうち抵抗素子RX1〜RXnの両端を短絡するスイッチSWX1〜SWXnとを備えている。また、スイッチSWX1〜SWXnは、ゲイン補正値CZ1によりON/OFF制御されている。スイッチがON制御されると、対応する抵抗素子の両端の抵抗値は0になる。端子RA,RB間の(合成)抵抗値RXは、抵抗素子RX1〜RXnの両端の抵抗値を加えた値であるから、ゲイン補正値CZ1のON/OFF制御の組み合わせに応じて変化することになる。すなわち、ゲイン補正値CZ1により端子RA,RB間の抵抗値RXを可変に設定することができる。
【0024】
あるいは、抵抗調整部21,22は、図5に示す回路を用いることもできる。この回路は、抵抗素子RX1〜RXn及びスイッチSWX1〜SWXnがそれぞれ1つずつ直列に接続された組が、並列に接続されて構成されている。また、スイッチSWX1〜SWXnは、ゲイン補正値CZ1によりON/OFF制御されている。スイッチがOFF制御されると、対応する抵抗素子及びスイッチの組の両端の抵抗値は無限大になる。端子RA,RB間の(合成)抵抗値RXは、抵抗素子及びスイッチの各組の並列の抵抗値であるから、ゲイン補正値CZ1のON/OFF制御の組み合わせに応じて変化することになる。すなわち、図4の回路と同様、ゲイン補正値CZ1により端子RA,RB間の抵抗値RXを可変に設定することができる。
【0025】
また、図2に戻り、増幅回路10は、出力信号VOが上限電圧値VC1及び下限電圧値VC2により設定される目標電圧許容誤差範囲VMWにあるか否かを判定するウィンドウコンパレータ51と、上限電圧値VC1及び下限電圧値VC2を発生する目標電圧生成部52とを備えている。
【0026】
ウィンドウコンパレータ51の具体的な回路を図7に示す。このウィンドウコンパレータ51は、2つのオペアンプ51A,51Bと、NORゲート51Cと、ANDゲート51Dとを備えている。オペアンプ51Aは、出力信号VO及び上限電圧値VC1を比較し、出力信号VO<上限電圧値VC1の場合に、ローレベルを出力する。また、オペアンプ51Bは、出力信号VO及び下限電圧値VC2を比較し、出力信号VO>下限電圧値VC2の場合に、ローレベルを出力する。また、オペアンプ51A,51Bの出力を入力とするNORゲート51Cは、入力が共にローレベルの場合に、ハイレベルを出力し、NORゲート51Cの出力及び比較指令信号COMPTを入力とするANDゲート51Dは、入力が共にハイレベルの場合に、ハイレベルを出力する。従って、上限電圧値VC1>出力信号VO>下限電圧値VC2であり、比較指令信号COMPTがハイレベルの場合には、比較結果比較信号COMPOはハイレベルとなる。
【0027】
次いで、図6に目標電圧生成部52の具体的な回路を示す。電源電圧Vd及びグランドGNDの間に、n−1段からなる抵抗素子RY1〜RYn−1が直列接続されており、各接続ノードからは中間タップTY1〜TYnが取り出されている。さらに、各中間タップには、一対のスイッチの一端が接続され、それぞれのスイッチの他端にはバッファBUFA,BUFBが接続されている。例えば、中間タップTY1には、スイッチSWY1A,SWY1Bの一端が接続されている。さらに、スイッチSWY1Aの他端には、バッファBUFAが、スイッチSWY1Bの他端には、バッファBUFBが接続されている。
【0028】
さらに、スイッチSWY1A〜SWYnAは、スイッチSWY1A〜SWYnAのうち1つのスイッチのみがON制御され、残りはOFF制御される。このように制御されているため、ON制御されたスイッチに接続された中間タップの電位が、バッファBUFAを介して基準電位VAとして出力される。例えば、スイッチSWY3AがON制御されると、中間タップTY3の電位が基準電位VAとして出力されることになる。
一方、スイッチSWY1B〜SWYnBについても同様に制御されているので、同様に、ON制御されたスイッチに接続された中間タップの基準電位VBとして出力される。
【0029】
図2に戻って、増幅回路10は、一対の差動基準信号VE1,VE2を発生する基準信号生成部60と、公知の2入力セレクタからなる入力選択部70とを備えている。基準信号生成部60は、目標電圧生成部52(図7参照)と同様の回路で構成されている。また、入力選択部70は、動作モードMDに応じて生成されるセレクト信号CIにより、一対の差動入力信号VI1,VI2及び一対の差動基準信号VE1,VE2のうち一組を選択して出力する。
【0030】
また、増幅回路10は、さらに、制御部80を備えている。この制御部80は、プログラムに基づき、演算処理、比較処理及びシーケンス処理を行う公知のシーケンサ81と、第一待機時間TW1でタイマ動作する第一タイマ82と、第二待機時間TW2でタイマ動作する第二タイマ83と、計時部86及び不揮発性メモリ87を含む補正値格納部85とを備えている。
【0031】
また、シーケンサ81は、その処理に応じて、ゲイン補正値CZ1、オフセット補正信号CZ2、制御信号CRL1,CRL2、基準信号制御信号CE1、セレクト信号CI、目標電圧制御信号CE2及び比較指令信号COMPTを出力する。
【0032】
次いで、第一実施形態にかかる増幅回路10の動作について説明する。
増幅回路10は、所定の増幅動作を行う通常動作モードMDN、増幅部20の増幅特性の補正を行う増幅特性補正モードMDH、増幅回路10の故障を簡易に検出する故障検出モードMDF及び電源投入時にローパスフィルタ30における容量素子CLにプリチャージを行うローパスフィルタ初期化モードMDLで動作する。以下に、それぞれの動作モードにおける各部の状態について説明する。
【0033】
増幅回路10が、通常動作モードMDNで動作する場合には、差動入力信号V1,V2には、差動入力信号VI1,VI2が選択されて入力される。また、ローパスフィルタ設定部40では、スイッチSW1,SW2は共にOFF制御される。従って、ローパスフィルタ30には、時定数RL1+RL2及びCLで決定する通常遮断周波数fcnが設定される。前述したように、通常遮断周波数fcnが設定されたローパスフィルタ30の出力信号VOの誤差EOは、出力許容誤差EAに抑制されている。
【0034】
一方、増幅回路10が、増幅特性補正モードMDHで動作する場合には、差動入力信号V1,V2には、差動基準信号VE1,VE2が入力される。また、ローパスフィルタ設定部40では、制御部80により、スイッチSW1,SW2のうちどちらか一方がOFFになるよう制御される。従って、ローパスフィルタ30には、時定数RL1及びCL、または、RL2及びCLで決定する遮断周波数fc1、または、fc2が設定される。通常動作モードMDNの場合よりも、抵抗値が小さくなるため、この遮断周波数fc2,fc3は、通常遮断周波数fcnよりも高域側となる。また、ローパスフィルタ30における入出力の応答時間が短くなる。また、差動基準信号VE1,VE2に対して増幅特性との関係で目標電圧VMが導出され、これに応じた目標電圧制御信号CE2がシーケンサ81から出力される。目標電圧生成部52では、目標電圧制御信号CE2に応じた上限電圧値VC1及び下限電圧値VC2がウィンドウコンパレータ51に出力される。
なお、請求項5に対して本実施形態では、差動基準信号VE1,VE2が基準信号に相当し、シーケンサ81、ウィンドウコンパレータ51及び目標電圧生成部52が制御部に相当する。
【0035】
次いで、増幅特性補正モードMDHのうち増幅部20のオフセット電圧VOFを補正する具体例について説明する。
増幅部20に温度や電源電圧の変化、また経時変化による特性変動などが生じると、差動入力信号V1,V2をする際に一意に決定される目標電圧VMと、実際に出力される出力信号VOの電圧との間に差電圧VOFFが生じることになる。そこで、差電圧VOFFをオフセット電圧VOFに設定することにより、これらの間の差電圧VOFFを解消することができる。
【0036】
オフセット電圧VOFを補正する手順としては、目標電圧VM及び出力信号VOを比較しながら、オフセット電圧VOFを徐々に変化させていく。そして、最終的に目標電圧VM及び出力信号VOが一致したときのオフセット電圧VOFを設定すればよい。このオフセット電圧VOFが変化する幅を当所は大きくし、目標電圧VM及び出力信号VOが近づくにつれ、小さくすると早く目標電圧VM及び出力信号VOの一致を検出することができ好ましい。本動作例では、このような方法により、オフセット電圧VOFを補正する場合について説明する。
【0037】
図8は、上述の方法によりオフセット電圧VOFを補正する動作を示す波形図である。
図8には、動作のステップとして周期T0〜T7が示されている。増幅回路10は、周期T0及び周期T7では、通常動作モードMDNで動作し、周期T1〜T6では、増幅特性補正モードMDHで動作する。
【0038】
まず、周期T0から周期T1に移行する際、制御信号CRL1をハイレベルに,制御信号CRL2をローレベルに、上限電圧値VC1及び下限電圧値VC2で示される目標電圧許容誤差範囲VMWを第一電圧幅VW1に、オフセット電圧VOFを出力してから比較指令信号COMPTを出力するまでの待機時間を第一待機時間TW1に、それぞれ設定する。
【0039】
周期T1において、オフセット電圧VOFを電圧V10に設定する。また、第一タイマ82で発生する第一待機時間TW1後に比較指令信号COMPTをハイレベルにし、その際に出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲内となるか否かを判断する。出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲外のため、比較信号COMPOにローレベルが出力される。
【0040】
周期T2において、オフセット電圧VOFを電圧V20に設定する。また、第一タイマ82で発生する第一待機時間TW1後に比較指令信号COMPTをハイレベルにし、その際に出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲内となるか否かを判断する。出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲外のため、比較信号COMPOにローレベルが出力される。
【0041】
周期T3において、オフセット電圧VOFを電圧V30に設定する。また、第一タイマ82で発生する第一待機時間TW1後に比較指令信号COMPTをハイレベルにし、その際に出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲内となるか否かを判断する。出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲内に入るため、比較信号COMPOにハイレベルが出力される。
【0042】
周期T4において、オフセット電圧VOFを電圧V40に設定する。また、第一タイマ82で発生する第一待機時間TW1後に比較指令信号COMPTをハイレベルにし、その際に出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲内となるか否かを判断する。出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲外のため、比較信号COMPOにローレベルが出力される。
比較信号COMPOが、周期T3ではハイレベルであり、周期T4ではローレベルに変化しているため、目標電圧VMに最も近いオフセット電圧VOFは電圧V30と判断し、次周期(周期T5)では、制御信号CRL2をローレベルに、目標電圧許容誤差範囲VMWを第二電圧幅VW2に、オフセット電圧VOFを出力してから比較指令信号COMPTを出力するまでの待機時間を第二待機時間TW2に、それぞれ設定する。
【0043】
周期T5において、オフセット電圧VOFを電圧V30に設定する。また、第二タイマ83で発生する第二待機時間TW2後に比較指令信号COMPTをハイレベルにし、その際に出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲内となるか否かを判断する。出力信号VOが第二電圧幅VW2の範囲内に入るため、比較信号COMPOにハイレベルを出力する。
【0044】
周期T6において、オフセット電圧VOFを電圧V31に設定する。また、第二タイマ83で発生する第二待機時間TW2後に比較指令信号COMPTをハイレベルにし、その際に出力信号VOが第一電圧幅VW1の範囲内となるか否かを判断する。出力信号VOが第二電圧幅VW2の範囲外のため、比較信号COMPOにローレベルが出力される。
比較信号COMPOが、周期T5ではハイレベルであり、周期T6ではローレベルに変化しているため、目標電圧VMに最も近いオフセット電圧VOFは電圧V30と判断し、増幅特性補正モードMDHを終了すると共に、電圧V30をオフセット電圧VOFに設定する。すなわち、周期T7以降では、動作モードMDは通常動作モードMDNに移行する。
【0045】
なお、この動作例で示した電圧V10〜V40、V31の実際の電圧については、電圧V10=0mV、電圧V20=20mV、電圧V30=40mV、電圧V31=50mV及び電圧V40=60mVが設定されている。また、目標電圧VMに対する目標電圧許容誤差範囲VMWを示す電圧幅である第一電圧幅VW1及び第二電圧幅VW2の実際の電圧については、第一電圧幅VW1=20mV及び第二電圧幅VW2=10mVが設定されている。すなわち、オフセット電圧VOFの変化幅及び目標電圧許容誤差範囲VMWが一致している。例えば、周期T1から周期T2に移行する際のオフセット電圧VOFの変化幅(電圧V20−電圧V10)は、20mVであり、このときの目標電圧許容誤差範囲VMWは第一電圧幅VW1、すなわち、20mVである。このため、出力信号VOが目標電圧VMに対し、目標電圧許容誤差範囲VMWで一致するか否かを確実に判定することができる。
【0046】
また、本動作例では、各遮断周波数fcを設定した場合について、出力信号VOに含まれるノイズ量及びローパスフィルタ30の応答時間が予め測定されて明らかになっている。通常遮断周波数fcnを設定する場合(CRL1=ローレベル,CRL2=ローレベル)には、出力信号VOに含まれるノイズ量は2mVpp、応答時間は100msであり、第二遮断周波数fc2を設定する場合(CRL1=ハイレベル、CRL2=ローレベル)には、出力信号VOに含まれるノイズ量は10mVpp、応答時間は20msであり、遮断周波数fc1を設定する場合(CRL1,CRL2=ハイレベル)には、出力信号VOに含まれるノイズ量は20mVpp、応答時間は10msである。
【0047】
次いで、各周期において設定される目標電圧許容誤差範囲VMW及び遮断周波数fcの関係について検討する。
周期T1〜T4では、目標電圧許容誤差範囲VMWには第一電圧幅VW1(20mV)が設定され、遮断周波数fcには第一遮断周波数fc1(ノイズ量=20mVpp)が設定される。また、周期T5〜T6では、目標電圧許容誤差範囲VMWには第二電圧幅VW2(10mV)が設定され、遮断周波数fcには第二遮断周波数fc2(ノイズ量=10mVpp)が設定される。すなわち、どの周期においても、目標電圧許容誤差範囲VMWに等しいかそれ以下のノイズ量となる遮断周波数fcが決定されている。このようにされているため、出力信号VO及び目標電圧VMの比較判定を行う際、確実に判定することができる。
【0048】
さらに、増幅特性補正モードMDHの処理時間について検討する。この処理時間は、各周期において設定される待機時間TW(オフセット電圧VOFを入力してから、比較指令信号COMPTを出力するまでの時間)に基づき求めることができる。
周期T1〜T4において、各待機時間TWは第一待機時間TW1、すなわち、10msである。従って、周期T1〜T4における待機時間TWの合計は40msとなる。また、周期T5〜T6において、各待機時間TWは第二待機時間TW2、すなわち、20msである。従って、周期T5〜T6における待機時間TWの合計は40msとなり、周期T1〜T6における待機時間TWの総合計は80msとなる。
ところで、本発明を適用しない場合には、常に待機時間TWは、通常遮断周波数fcnに対応する待機時間である100msとなる。このため、周期T1〜T6における待機時間TWの総合計は600msとなる。
本発明を適用した増幅回路10では、適用しない場合に比して、増幅特性補正モードMDHの処理時間をおよそ1/8に短縮することができる。
【0049】
なお、本実施形態では説明を簡単にするため、動作ステップ数を少なくしたものを例示している。しかるに、実際の機器では、広いダイナミックレンジの中で細かなオフセット補正を行うため、多くの動作ステップ数で補正を行っている。このため、実際の機器に、本発明を適用すると、時間短縮効果はさらに大きいものとなる。
【0050】
なお、従来の増幅回路では、使用に先立ち、増幅特性を補正するキャリブレーションが不可欠であった。このため、電源投入後、すぐに増幅回路を使用することができなかった。
これに対して、本発明では、機器のアイドル時間などの僅かな時間しか許されない場合であってもキャリブレーションを行うことが可能である。例えば、キャリブレーションを機器の使用中に随時行うことにより、使用に先立つキャリブレーションを省略することができ、しかも、常に補正された精度の高い状態に増幅回路を保つことができる。
【0051】
一方、あらかじめ多大な時間をかけて取得した各使用条件における増幅特性の補正値を不揮発性メモリなどの記憶装置に格納しておき、増幅回路の使用条件に応じた補正値を取り出し、この補正値に応じて増幅回路を調整する技術が特許文献1に提案されている。特許文献1の技術を適用すれば、使用に先立つキャリブレーションを省略することが出来る。
これに対して、本発明を適用し、上述と同様にキャリブレーションを機器の使用中に随時行うことにより、不揮発性メモリなどの記憶装置を備えることや事前の各使用条件における増幅特性の補正値の取得を行うことなしに、使用に先立つキャリブレーションを省略することが出来る。
【0052】
なお、本実施例では、基準信号生成部60が生成する差動基準信号VE1,VE2を増幅部20に入力して動作させる例を示したが、図示しないセンサを標準状態にし、その際発生するセンサ基準信号を入力とすることもできる。センサ基準信号としては、例えば、センサをゼロ点にする際出力されるゼロ点出力信号が挙げられる。
【0053】
次いで、増幅特性の設定により得たオフセット電圧VOFなどの増幅特性補正値ZDについて、特徴を述べ、さらに、発明が課題を解決するための手段を説明する。
【0054】
前述したように、特許文献1の増幅回路では、あらかじめ増幅特性の補正値を取得し、記憶装置に格納しておき、再度電源投入して起動させる際に、格納された増幅特性の補正値を用いて増幅特性を設定することで、増幅特性の補正にかかる時間を短縮あるいは省略する技術を提案している。
【0055】
しかしながら、増幅回路に接続されるセンサは、圧力や加速度・角速度などの物理量を電気信号に変換するため、可動部が設けられている場合が多く、磨耗や金属疲労などの影響による経時変化が生じやすい。このような経時変化は、本来の検知信号の増幅出力に対する誤差として現れることとなる。従って、特許文献1の増幅回路では、接続されるセンサに経時変化が生じた場合の誤差を排除することができず問題となる。
【0056】
この課題を解決するため、請求項2の増幅回路であって、時系列的に継続して発生する事象を計数し、事象計数値を出力保持する事象計数部と、前記増幅特性の計測において、不揮発性の記憶装置からなる特性値格納部であり、計測結果に応じた値を増幅特性値とし、前記増幅特性値を取得する際の事象計数値を補正時事象計数値とするとき、前記増幅特性値及び前記補正時事象計数値を格納する特性値格納部と、を含み、前記増幅特性の計測前に、前記特性値格納部に格納されてなる前記補正時事象計数値、及び、前記事象計数部から出力される事象計数値の差分値が所定値を超えるか否かを判定し、前記差分値が前記所定値を超える場合には、前記増幅特性値の取得を行い、取得した増幅特性値及び取得時の事象計数値を前記特性値格納部に格納し、前記差分値が前記所定値を超えない場合には、前記特性値格納部に格納されてなる前記増幅特性値に応じて、前記増幅回路を補正する増幅回路とすると好ましい。
【0057】
本発明の増幅回路では、増幅特性の補正の事前に、特性値格納部に格納されている補正時事象計数値と、現在の事象計数値とが比較され、その差分が所定値を超える場合には、増幅特性値の再取得が行われ、新たな増幅特性値が、その時点の事象計数値である補正時事象計数値と共に、記憶装置に格納される。一方、この差分が所定値を超えない場合には、特性値格納部に格納されている増幅特性値が増幅回路の補正値として用いられる。
例えば、センサの経時変化が予想される期間に相当する所定値を設定しておくとよい。センサの経時変化が予想される時点で、増幅特性値が再取得されるため、センサの経時変化による誤差を排除することができるからである。
【0058】
時系列的に継続して発生する事象としては、例えば、具体的には、一定の周波数で発生するクロックが挙げられる。また、事象と事象の間隔は、必ずしも一定の間隔でなくてもよい。例えば、増幅回路の電源投入時のみ発生するクロックや増幅回路の電源の投入を示す信号などを用いることができる。
【0059】
また、事象計数部としては、一定の周波数で発生するクロックを入力とするカレンダークロックや、増幅回路の電源の投入を示す信号を入力とする電源投入回数カウンタなどが挙げられる。
【0060】
不揮発性の記憶装置は、増幅回路の電源が切断された際もその内容が保持される記憶装置であり、例えば、フラッシュメモリやバッテリーバックアップが接続された揮発性メモリなどが挙げられる。
【0061】
第一実施形態にかかる増幅回路10では、センサの経時変化による誤差を排除するため、増幅特性の設定により得たオフセット電圧VOFなどの増幅特性補正値ZDを補正値格納部85に格納することができる。補正値格納部85は、バックアップ機能を有し日時を計時する計時部86と、計時部86が発生する計時値KDと共に増幅特性補正値ZDを格納する不揮発性メモリ87とを備えている。計時値KDには、増幅特性補正値ZDを格納するときの計時情報(日時)が含まれている。シーケンサ81は、増幅特性補正を行う際に、増幅特性補正値ZDと共に、この計時値KDを読み込む。また、これと共に、計時部86から現在の計時情報を読み込み、先に読み込んだ計時値KDとの差分を取る。その結果、所定の日時を経過していない場合には、増幅特性補正値ZDを用いて増幅特性の補正を行い、そうでない場合には、新たに増幅特性補正値の取得を行う。
これにより、前回の増幅特性の検出から所定の日時が経過した場合に、増幅特性補正値の取得を行うことが可能となる。これは、経時変化により生じた増幅特性の補正を可能にする。
なお、請求項6に対して、本実施形態では、計時部86が事象計数部に、計時値KDが事象計数値に、不揮発性メモリ87が特性値格納部に、増幅特性補正値ZDが増幅特性値に相当する。
【0062】
なお、このような経時変化の影響を取り除くためには、増幅部のみの増幅特性の補正ではなく、センサを含めた増幅特性の補正が必要である。
第一実施形態にかかる増幅回路10では、増幅部20に対して基準信号生成部60が、基準を与えているが、
センサを含めた増幅特性の補正の場合、基準信号生成の替わりに、センサを物理的に基準状態に設定する回路となる。
センサを物理的に基準状態に設定する回路は、図示しない公知の、静電気力によるセンサ可動部の位置決め回路などが挙げられる。
【0063】
また、センサの経時変化による誤差を排除するために、第一実施形態にかかる補正値格納部85に代わり、図9(A)に示す補正値格納部85Aを用いることもできる。この補正値格納部85Aは、計時部86に代わり、クロック発生器88Aと、クロック発生器88Aの発生するクロックを計数し、バックアップ機能を有するカウンタ86Aとを備えている。また、不揮発性メモリ87には、前回検出した増幅特性補正値ZDと共に、その際、カウンタ86Aが出力するカウント値CDが格納されている。シーケンサ81は、増幅特性補正を行う際に、増幅特性補正値ZDと共に、このカウント値CDを読み込む。また、これと共に、カウンタ86Aから現在のカウント値を読み込み、先に読み込んだ計時値KDとの比較を行う。その結果、所定のカウント数を超過していない場合には、増幅特性補正値ZDを用いて増幅特性の補正を行い、そうでない場合には、新たに増幅特性補正値ZDの取得を行う。
これにより、前回の増幅特性補正値ZDの取得から所定のカウント数を超えた場合に、増幅特性補正値ZDの取得を行うことで、センサの経時変化による誤差を排除することができる。
なお、請求項6に対して、本実施形態では、クロック発生器88A及びカウンタ86Aが事象計数部に、カウント値CDが事象計数値に、不揮発性メモリ87が特性値格納部に、増幅特性補正値ZDが増幅特性値に相当する。
【0064】
同様に、第一実施形態にかかる補正値格納部85に代わり、図9(B)に示す補正値格納部85Bを用いることもできる。この補正値格納部85Bは、計時部86に代わり、電源投入検知部88Bと、電源投入検知部88Bの発生するパルスを計数し、バックアップ機能を有するカウンタ86Bとを備えている。また、不揮発性メモリ87には、前回検出した増幅特性補正値ZDと共に、その際、カウンタ86Bが出力するカウント値CDが格納されている。シーケンサ81は、増幅特性補正を行う際に、増幅特性補正値ZDと共に、このカウント値CDを読み込む。また、これと共に、カウンタ86Bから現在のカウント値を読み込み、先に読み込んだ計時値KDとの比較を行う。その結果、所定のカウント数を超過していない場合には、増幅特性補正値ZDを用いて増幅特性の補正を行い、そうでない場合には、新たに増幅特性補正値の取得を行う。
なお、請求項6に対して、本実施形態では、電源投入検知部88B及びカウンタ86Bが事象計数部に、カウント値CDが事象計数値に、不揮発性メモリ87が特性値格納部に、増幅特性補正値ZDが増幅特性値に相当する。
これにより、前回の増幅特性補正値の取得から所定の電源投入回数が超えた場合に、増幅特性補正値の取得を行うことで、センサの経時変化による誤差を排除することができる。
【0065】
動作モードMDの説明に戻り、増幅回路10が、故障検出モードMDFで動作する場合には、差動入力信号V1,V2に、故障検出のための故障検出基準信号VF1,VF2が入力される。この故障検出基準信号VF1,VF2は、増幅回路10が正常動作するかどうかを検出するための電圧であり、制御部80の設定により基準信号生成部60から出力される。
また、差動基準信号VE1,VE2に対して増幅特性との関係で故障検出目標電圧VFMが導出され、これに応じた目標電圧制御信号CE2がシーケンサ81から出力される。目標電圧生成部52では、目標電圧制御信号CE2に応じた上限電圧値VC1及び下限電圧値VC2がウィンドウコンパレータ51に出力される。また、故障検出のため故障検出基準信号VF1,VF2が印加された後、制御信号CRL1,CRL2を共にハイレベルにして、ローパスフィルタ30の応答速度を上げ、出力信号VO及び故障検出目標電圧VFMとの比較判定を迅速に行う。
なお、請求項4に対して本実施形態では、故障検出基準信号VF1,VF2が基準信号に相当し、シーケンサ81、ウィンドウコンパレータ51及び目標電圧生成部52が制御部に相当する。
以下に、図10を参照して故障検出モードMDFの動作について説明を行う。
【0066】
図10には、動作のステップとして、周期T10〜T14が示されている。増幅回路10は、周期T10及び周期T14では通常動作モードMDNで動作し、周期T11〜T13では故障検出モードMDFで動作する。
【0067】
まず、周期T10から周期T11に移行する際、差動入力信号V1,V2に故障検出基準信号VF1,VF2を入力し、制御信号CRL1,CRL2を共にハイレベルに、目標電圧許容誤差範囲VMWを故障検出電圧幅VWFに、それぞれ設定する。
【0068】
周期T11において、制御信号CRL1,CRL2が共にハイレベルに設定されているため、増幅回路10に動作の異常がない場合には、出力信号VOは急速に故障検出目標電圧VFMに向かい変化する。
【0069】
周期T12において、出力信号VOを精度よく故障検出目標電圧VFMと比較するため、制御信号CRL1,CRL2共にローレベルにする。また、比較指令信号COMPTがハイレベルにし、出力信号VOが故障検出電圧幅VWFの範囲内となるか否かを判断する。出力信号VOが故障検出電圧幅VWFの範囲内に入っているため、比較信号COMPOにハイレベルが出力される。
なお、出力信号VOが故障検出電圧幅VWFの範囲外である場合には、比較信号COMPOにローレベルが出力される。制御部80では、これを受けて、故障通知信号を発信する。
【0070】
周期T13において、差動入力信号V1,V2にセンサからの差動入力信号VI1,VI2を入力し、制御信号CRL1,CRL2を共にハイレベルにする。これにより、出力信号VOは急速に元のレベル(周期T10)に向って変化する。
【0071】
周期T14において、制御信号CRL1,CRL2を共にローレベルにする。これにより、増幅回路10は、通常動作モードMDNに移行する。
【0072】
以上により、増幅回路10は、故障検出モードMDFにおいても、遮断周波数fcを通常遮断周波数fcnよりも高周波側に設定し、迅速に故障検出を行うことができる。
なお、本実施例では、基準信号生成部60が生成する故障検出基準信号VF1,VF2を増幅部20に入力して動作させる例を示したが、図示しないセンサを標準状態にし、その際発生するセンサ基準信号を入力としてもよい。
【0073】
再び、動作モードMDの説明に戻り、増幅回路10が、ローパスフィルタ初期化モードMDLで動作する場合には、差動入力信号V1,V2に、ローパスフィルタ30の容量素子CLをプリチャージするための初期化電圧VL1,VL2が入力される。この初期化電圧VL1,VL2が増幅部20に入力され、出力される増幅信号VZにより、容量素子CLがプリチャージされる。このプリチャージの際、制御信号CRL1,CRL2を共にハイレベルにして、ローパスフィルタ30の応答速度を上げ、プリチャージを迅速に行う。なお、出力信号VO及び初期化目標電圧VLMとの比較判定をローパスフィルタ初期化許容誤差範囲VWLで行い、この判定結果に応じて、通常動作モードMDNに移行する。
以下に、図11を参照してローパスフィルタ初期化モードMDLの動作について説明を行う。
【0074】
図11には、動作のステップとして、周期T20〜T23が示されている。周期T20は、電源投入前の状態であり、周期T23は、通常動作モードMDNの状態である。増幅回路10は、周期T21〜T22において、ローパスフィルタ初期化モードMDLで動作する。
【0075】
まず、周期T21において、電源の投入を検知すると共に、制御信号CRL1,CRL2を共にハイレベルにし、差動入力信号V1,V2に初期化電圧VL1,VL2を入力する。また、目標電圧許容誤差範囲VMWに、ローパスフィルタ初期化許容誤差範囲VWLを設定し、比較指令信号COMPTにハイレベルを設定する。
出力信号VOは、制御信号CRL1,CRL2が共にハイレベルになっているため、急速に初期化目標電圧VLMに向って変化する。
なお、電源の投入を検知する手段として、図示しない公知のパワーオンリセット回路などが挙げられ、このような手段から制御部80に伝達される。
【0076】
周期T22において、出力信号VOがローパスフィルタ初期化許容誤差範囲VWLの範囲内に到達すると、比較信号COMPOがハイレベルに変化する。ローパスフィルタ初期化が完了し、次周期(周期T23)から通常動作モードMDNに移行する。
【0077】
以上により、増幅回路10は、ローパスフィルタ初期化モードMDLにおいて、ローパスフィルタ30の遮断周波数fcを通常遮断周波数fcnよりも高域側に設定しているため、迅速にローパスフィルタの初期化を行うことができる。
【0078】
また、本動作例では、出力信号VO及び初期化目標電圧VLMの比較判定により通常動作モードMDNに移行する動作について例示した。
ローパスフィルタ初期化モードMDLから通常動作モードMDNに移行する手段としては、電源の投入を検知する手段から出力される信号をトリガにして、所定の待機期間後に動作モードMDを切り替える手段を採用してもよい。このような回路を採用することで、ウィンドウコンパレータ51及び目標電圧生成部52が不要となり、簡易な回路構成とすることができる。
【0079】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、特殊動作モードの説明のため、増幅特性補正モード・故障検出モード・ローパスフィルタ初期化モードを記載しているが、必ず、3種のモードが必要ではなく、実施形態に合わせ、1つが選択されても良い。
また、本実施形態の増幅特性の動作例において、オフセット補正について例示した。このようなオフセット補正の場合と同様に、帰還抵抗の抵抗値を調整してゲイン補正を行うことも可能である。本発明はこのようなゲイン補正を行う場合、あるいは、ゲイン補正及びオフセット補正を同時に行う場合についても適用することができる。
さらに、本実施形態においては、増幅部にオペアンプを用いて構成する増幅回路について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バイポーラトランジスタ、FET素子などを用いて構成して同様に機能するものを用いたものについても適用することができる。
【0080】
ここで、本発明の技術思想により、背景技術における課題を解決するための手段を以下に列記する。
(付記1) 通常の増幅動作を行う通常動作モード及び特殊動作モードのうちいずれかの動作モードで動作する増幅回路であって、入力信号を増幅し、出力信号を発生する増幅部と、前記増幅部に接続し、遮断周波数よりも高域側の周波数帯域を遮断してノイズによる前記出力信号の誤差を抑制するローパスフィルタと、前記遮断周波数を設定するローパスフィルタ設定部と、を備え、前記遮断周波数は、前記通常動作モードの場合には、前記出力信号の誤差が、許容される誤差である出力許容誤差を超えない通常遮断周波数に設定され、前記特殊動作モードの場合には、前記通常遮断周波数よりも高域側に設定される増幅回路。
(付記2) 付記1に記載の増幅回路であって、動作モードは、所定の基準信号または基準状態のセンサから出力されるセンサ基準信号を入力して得られる電圧値を実出力電圧値とするとき、所定の目標電圧値に対する前記実出力電圧値の誤差の電圧値判定を含む前記特殊動作モードであり、前記目標電圧値に対する許容誤差を目標電圧許容誤差とするとき、前記基準信号または前記センサ基準信号が入力されてから、前記遮断周波数に応じて設定される待機時間後に、前記出力電圧値が前記目標電圧値に対し、前記目標電圧許容誤差の範囲内であるか否かを判断する電圧値判定部を含み、前記遮断周波数は、前記目標電圧許容誤差に基づき決定される増幅回路。
(付記3) 付記2に記載の増幅回路であって、前記基準信号を発生する基準信号生成部と、前記基準信号を切り替える入力選択部と、を含む増幅回路。
(付記4) 付記2に記載の増幅回路であって、前記ローパスフィルタは、抵抗素子及び容量素子をそれぞれ少なくとも一つ含み、前記ローパスフィルタ設定部は、前記ローパスフィルタに含まれる前記抵抗素子の抵抗値及び前記容量素子の容量値のうち少なくともいずれかをバイパスする増幅回路。
(付記5) 付記2に記載の増幅回路であって、前記特殊動作モードは、前記電圧値判定に基づき、前記増幅部の故障を判定する故障検出モードであり、前記目標電圧値を前記基準信号または前記センサ基準信号に基づき一意に決定される電圧値とするとき、前記目標電圧値及び前記出力電圧値が前記目標電圧許容誤差の範囲で一致するか否かを判定し、一致しない場合に、故障を通知する故障判定部を含む増幅回路。
(付記6) 付記2に記載の増幅回路であって、前記特殊動作モードは、検出した増幅特性に基づき補正する増幅特性補正モードであり、前記増幅部は、前記増幅特性を可変に補正可能であり、前記目標電圧値を前記基準信号または前記センサ基準信号に基づき一意に決定される電圧値とするとき、前記目標電圧値及び前記出力電圧値が前記目標電圧許容誤差の範囲で一致するまで、所定の変化幅で前記増幅特性を変化させて補正を行う制御部を含む増幅回路。
(付記7) 付記2に記載の増幅回路であって、時系列的に継続して発生する事象を計数し、事象計数値を出力保持する事象計数部と、前記増幅特性の計測において、不揮発性の記憶装置からなる特性値格納部であり、計測結果に応じた値を増幅特性値とし、前記増幅特性値を取得する際の事象計数値を補正時事象計数値とするとき、前記増幅特性値及び前記補正時事象計数値を格納する特性値格納部と、を含み、前記増幅特性の計測前に、前記特性値格納部に格納されてなる前記補正時事象計数値、及び、前記事象計数部から出力される事象計数値の差分値が所定値を超えるか否かを判定し、前記差分値が前記所定値を超える場合には、前記増幅特性値の取得を行い、取得した増幅特性値及び取得時の事象計数値を前記特性値格納部に格納し、前記差分値が前記所定値を超えない場合には、前記特性値格納部に格納されてなる前記増幅特性値に応じて、前記増幅回路を補正する増幅回路。
(付記8) 付記1に記載の増幅回路であって、前記動作モードは、前記特殊モードのうち電源投入時に前記ローパスフィルタをプリチャージするローパスフィルタ初期化モードであり、前記ローパスフィルタは、少なくとも一つの抵抗素子を含み、前記ローパスフィルタ設定部は、前記プリチャージ動作において、少なくとも一つの前記抵抗素子について、バイパスする増幅回路。
(付記9) 付記8に記載の増幅回路であって、電源投入の際に、入力を所定の初期化電圧に切り替える入力選択部と、出力電圧値及び所定の初期化目標電圧値を比較判定する電圧値判定部と、を含み、前記初期化電圧が入力される際の前記出力電圧値が、前記初期化目標電圧値に達した場合には、動作モードが前記通常動作モードに移行する増幅回路。
(付記10) 通常の増幅動作を行う通常動作モード及び特殊動作モードのうちいずれかの動作モードで動作する増幅回路の制御方法であって、入力信号を増幅し、出力信号を発生するステップと、前記増幅部に接続し、ローパスフィルタを用いて遮断周波数よりも高域側の周波数帯域を遮断してノイズによる前記出力信号の誤差を抑制するステップと、前記遮断周波数を設定するステップと、を備え、前記遮断周波数は、前記通常動作モードの場合には、前記出力信号の誤差が、許容される誤差である出力許容誤差を超えない通常遮断周波数に設定され、前記特殊動作モードの場合には、前記通常遮断周波数よりも高域側に設定される増幅回路の制御方法。
(付記11) 付記10に記載の増幅回路の制御方法であって、動作モードは、所定の基準信号または基準状態のセンサから出力されるセンサ基準信号を入力して得られる電圧値を実出力電圧値とするとき、所定の目標電圧値に対する前記実出力電圧値の誤差の電圧値判定を含む前記特殊動作モードであり、前記目標電圧値に対する許容誤差を目標電圧許容誤差とするとき、前記基準信号または前記センサ基準信号が入力されてから、前記遮断周波数に応じて設定される待機時間後に、前記出力電圧値が前記目標電圧値に対し、前記目標電圧許容誤差の範囲内であるか否かを判断するステップを含み、前記遮断周波数は、前記目標電圧許容誤差に基づき決定される増幅回路の制御方法。
(付記12) 付記11に記載の増幅回路の制御方法であって、前記特殊動作モードは、前記電圧値判定に基づき、前記増幅部の故障を判定する故障検出モードであり、前記目標電圧値を前記基準信号または前記センサ基準信号に基づき一意に決定される電圧値とするとき、前記目標電圧値及び前記出力電圧値が前記目標電圧許容誤差の範囲で一致するか否かを判定し、一致しない場合に、故障を通知するステップを含む増幅回路の制御方法。
(付記13) 付記11に記載の増幅回路の制御方法であって、前記特殊動作モードは、検出した増幅特性に基づき補正する増幅特性補正モードであり、前記入力信号を増幅するステップにおいて、増幅特性は可変に補正可能であり、前記目標電圧値を前記基準信号または前記センサ基準信号に基づき一意に決定される電圧値とするとき、前記目標電圧値及び前記出力電圧値が前記目標電圧許容誤差の範囲で一致するまで、所定の変化幅で前記増幅特性を変化させて補正を行うステップを含む増幅回路の制御方法。
(付記14) 付記11に記載の増幅回路の制御方法であって、所定の事象を計数し、事象計数値を出力するステップと、前記増幅特性の補正において、不揮発性の記憶装置からなる特性値格納部に対して、得られる前記増幅特性の補正結果を増幅特性補正値とし、前記増幅特性補正値が得られる際の事象計数値を補正時事象計数値とするとき、前記増幅特性補正値及び前記補正時事象計数値を格納するステップと、前記増幅特性の補正の事前に、前記特性値格納部に格納されてなる前記補正時事象計数値、及び、前記事象計数部から出力される事象計数値の差分値が所定値を超えるか否かを判定するステップであり、前記差分値が前記所定値を超える場合には、前記増幅特性を補正した後、得られた増幅特性補正値及び前記事象計数部から出力される事象計数値を前記特性値格納部に格納し、前記差分値が前記所定値を超えない場合には、前記特性値格納部に格納されてなる前記増幅特性値を前記増幅回路に設定するステップを含む増幅回路の制御方法。
(付記15) 付記10に記載の増幅回路の制御方法であって、前記動作モードは、前記特殊モードのうち電源投入時に前記ローパスフィルタをプリチャージするローパスフィルタ初期化モードであり、前記ローパスフィルタは、少なくとも一つの抵抗素子を含み、前記遮断周波数を設定するステップは、前記プリチャージ動作において、少なくとも一つの前記抵抗素子について、バイパスする増幅回路の制御方法。
(付記16) 付記10に記載の増幅回路の制御方法であって、電源投入の際に、入力を所定の初期化電圧に切り替えるステップと、出力電圧値及び所定の初期化目標電圧値を比較判定するステップと、を含み、前記初期化電圧が入力される際の前記出力電圧値が、前記初期化目標電圧値に達した場合には、動作モードが前記通常動作モードに移行する増幅回路の制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の原理説明図である。
【図2】本実施形態の回路ブロック図である。
【図3】増幅部の具体例を示す回路ブロック図である。
【図4】抵抗値調整部の具体例を示す回路図である。
【図5】抵抗値調整部の具体例を示す回路図である。
【図6】微小電圧発生部の具体例を示す回路図である。
【図7】ウィンドウコンパレータの具体例を示す回路図である。
【図8】増幅特性補正モードの動作を示す波形図である。
【図9】補正格納部の変形例を示すブロック図である。
【図10】故障検出モードの動作を示す波形図である。
【図11】ローパスフィルタ初期化モードの動作を示す波形図である。
【符号の説明】
【0082】
1 増幅回路
2 増幅部
3 ローパスフィルタ
4 ローパスフィルタ設定部
10 増幅回路
20 増幅部
30 ローパスフィルタ
40 ローパスフィルタ設定部
51 ウィンドウコンパレータ
60 基準信号生成部
70 入力選択部
80 制御部
COMPO 比較信号
COMPT 比較指令信号
CRL1,CRL2 制御信号
fc 遮断周波数
fcn 通常遮断周波数
MD 動作モード
MDF 故障検出モード
MDH 増幅特性補正モード
MDL ローパスフィルタ初期化モード
MDN 通常動作モード
MDT 特殊動作モード
VC1 上限電圧値
VC2 下限電圧値
VE1,VE2 差動基準信号
VF1,VF2 故障検出基準信号
VFM 故障検出目標電圧
VI 入力信号
VI1,VI2 差動入力信号
VL1,VL2 初期化電圧
VLM 初期化目標電圧
VM 目標電圧
VMW 目標電圧許容誤差範囲
VO 出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の増幅動作を行う通常動作モード及び特殊動作モードのうちいずれかの動作モードで動作する増幅回路であって、
入力信号を増幅し、出力信号を発生する増幅部と、
前記増幅部に接続し、遮断周波数よりも高域側の周波数帯域を遮断してノイズによる前記出力信号の誤差を抑制するローパスフィルタと、
前記遮断周波数を設定するローパスフィルタ設定部と、
を備え、
前記遮断周波数は、
前記通常動作モードの場合には、前記出力信号の誤差が、許容される誤差である出力許容誤差を超えない通常遮断周波数に設定され、
前記特殊動作モードの場合には、前記通常遮断周波数よりも高域側に設定される
増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の増幅回路であって、
動作モードは、所定の基準信号または基準状態のセンサから出力されるセンサ基準信号を入力して得られる電圧値を実出力電圧値とするとき、所定の目標電圧値に対する前記実出力電圧値の誤差の電圧値判定を含む前記特殊動作モードであり、
前記目標電圧値に対する許容誤差を目標電圧許容誤差とするとき、
前記基準信号または前記センサ基準信号が入力されてから、前記遮断周波数に応じて設定される待機時間後に、前記出力電圧値が前記目標電圧値に対し、前記目標電圧許容誤差の範囲内であるか否かを判断する電圧値判定部を含み、
前記遮断周波数は、前記目標電圧許容誤差に基づき決定される
増幅回路。
【請求項3】
請求項2に記載の増幅回路であって、
前記基準信号を発生する基準信号生成部と、
前記基準信号を切り替える入力選択部と、
を含む
増幅回路。
【請求項4】
請求項2に記載の増幅回路であって、
前記特殊動作モードは、前記電圧値判定に基づき、前記増幅部の故障を判定する故障検出モードであり、
前記目標電圧値を前記基準信号または前記センサ基準信号に基づき一意に決定される電圧値とするとき、前記目標電圧値及び前記出力電圧値が前記目標電圧許容誤差の範囲で一致するか否かを判定し、一致しない場合に、故障を通知する故障判定部を含む
増幅回路。
【請求項5】
請求項2に記載の増幅回路であって、
前記特殊動作モードは、検出した増幅特性に基づき補正する増幅特性補正モードであり、
前記増幅部は、前記増幅特性を可変に補正可能であり、
前記目標電圧値を前記基準信号または前記センサ基準信号に基づき一意に決定される電圧値とするとき、前記目標電圧値及び前記出力電圧値が前記目標電圧許容誤差の範囲で一致するまで、所定の変化幅で前記増幅特性を変化させて補正を行う制御部を含む
増幅回路。
【請求項6】
請求項2に記載の増幅回路であって、
時系列的に継続して発生する事象を計数し、事象計数値を出力保持する事象計数部と、
前記増幅特性の計測において、
不揮発性の記憶装置からなる特性値格納部であり、
計測結果に応じた値を増幅特性値とし、
前記増幅特性値を取得する際の事象計数値を補正時事象計数値とするとき、
前記増幅特性値及び前記補正時事象計数値を格納する特性値格納部と、
を含み、
前記増幅特性の計測前に、前記特性値格納部に格納されてなる前記補正時事象計数値、及び、前記事象計数部から出力される事象計数値の差分値が所定値を超えるか否かを判定し、
前記差分値が前記所定値を超える場合には、前記増幅特性値の取得を行い、取得した増幅特性値及び取得時の事象計数値を前記特性値格納部に格納し、
前記差分値が前記所定値を超えない場合には、前記特性値格納部に格納されてなる前記増幅特性値に応じて、前記増幅回路を補正する
増幅回路。
【請求項7】
請求項1に記載の増幅回路であって、
前記動作モードは、前記特殊モードのうち電源投入時に前記ローパスフィルタをプリチャージするローパスフィルタ初期化モードであり、
前記ローパスフィルタは、少なくとも一つの抵抗素子を含み、
前記ローパスフィルタ設定部は、前記プリチャージ動作において、少なくとも一つの前記抵抗素子についてバイパスする
増幅回路。
【請求項8】
通常の増幅動作を行う通常動作モード及び特殊動作モードのうちいずれかの動作モードで動作する増幅回路の制御方法であって、
入力信号を増幅し、出力信号を発生するステップと、
前記増幅部に接続し、ローパスフィルタを用いて遮断周波数よりも高域側の周波数帯域を遮断してノイズによる前記出力信号の誤差を抑制するステップと、
前記遮断周波数を設定するステップと、
を備え、
前記遮断周波数は、
前記通常動作モードの場合には、前記出力信号の誤差が、許容される誤差である出力許容誤差を超えない通常遮断周波数に設定され、
前記特殊動作モードの場合には、前記通常遮断周波数よりも高域側に設定される
増幅回路の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の増幅回路の制御方法であって、
動作モードは、所定の基準信号または基準状態のセンサから出力されるセンサ基準信号を入力して得られる電圧値を実出力電圧値とするとき、所定の目標電圧値に対する前記実出力電圧値の誤差の電圧値判定を含む前記特殊動作モードであり、
前記目標電圧値に対する許容誤差を目標電圧許容誤差とするとき、
前記基準信号または前記センサ基準信号が入力されてから、前記遮断周波数に応じて設定される待機時間後に、前記出力電圧値が前記目標電圧値に対し、前記目標電圧許容誤差の範囲内であるか否かを判断するステップを含み、
前記遮断周波数は、前記目標電圧許容誤差に基づき決定される
増幅回路の制御方法。
【請求項10】
請求項8に記載の増幅回路の制御方法であって、
前記動作モードは、前記特殊モードのうち電源投入時に前記ローパスフィルタをプリチャージするローパスフィルタ初期化モードであり、
前記ローパスフィルタは、少なくとも一つの抵抗素子を含み、
前記遮断周波数を設定するステップは、前記プリチャージ動作において、少なくとも一つの前記抵抗素子についてバイパスする
増幅回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−279768(P2006−279768A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98582(P2005−98582)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】